(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 121
B41J2/01 129
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2018519181
(86)(22)【出願日】2017-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2017017854
(87)【国際公開番号】W WO2017203991
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2016106706
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 隆
(72)【発明者】
【氏名】冠城 光男
(72)【発明者】
【氏名】池田 征史
【審査官】四垂 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/098143(WO,A1)
【文献】特開2014-000724(JP,A)
【文献】特開2009-241277(JP,A)
【文献】特開2007-030217(JP,A)
【文献】特開2015-047798(JP,A)
【文献】特開2013-129187(JP,A)
【文献】特開2005-288905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0138288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を載置する搬送部材を用いて前記記録媒体を搬送する搬送部と、
搬送される記録媒体上にインクを吐出する記録部と、
記録媒体上に着弾したインクを定着させる定着部と、
前記記録媒体のうち前記記録部のインク吐出面と対向した記録面を読み取る読取部と、
を備え、
前記記録部は所定のエネルギー線により硬化するインクを吐出し、
前記定着部は、前記記録媒体上のインクに前記所定のエネルギー線を照射し、
前記搬送部は、
搬送対象の記録媒体を複数の前記搬送部材の間で受け渡しながら、各搬送部材の移動動作により各々平面内で移動させ、
前記複数の搬送部材のうちの第1の搬送部材に載置された記録媒体を当該第1の搬送部材の移動動作により前記記録部のインク吐出面に対向させながら所定の第1の平面内で移動させ、
前記第1の搬送部材により移動された記録媒体を前記複数の搬送部材のうちの第2の搬送部材に載置して、当該第2の搬送部材の移動動作により所定の第2の平面内で移動させて、前記定着部による前記所定のエネルギー線の照射範囲を通過させ、
前記第2の搬送部材の移動動作により移動された記録媒体を前記複数の搬送部材のうちの第3の搬送部材に載置して、当該第3の搬送部材の移動動作により所定の第3の平面内で移動させて、前記読取部による読み取り範囲を通過させる
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記搬送部は、前記複数の搬送部材の移動動作により各々記録媒体が移動される前記平面の位置を調節する調節部を有することを特徴とする請求項
1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記複数の搬送部材の移動動作により各々前記記録媒体が移動される前記平面は、単一平面内に定められることを特徴とする請求項1
又は2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記複数の搬送部材の間での前記記録媒体の受け渡しは、前記単一平面内で行われることを特徴とする請求項
3記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
設定されたサイズの複数の記録媒体を順次前記搬送部に供給する媒体供給部を備えることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記搬送部は、載置される記録媒体の前記搬送部材からの浮き上がりを抑制する浮上抑制部を有することを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記浮上抑制部は、前記搬送部材の各々に記録媒体を吸着させる吸引部を有することを特徴とする請求項
6記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記搬送部材は、記録媒体が載置される載置面と、当該載置面の反対面とを貫通する開口を各々有し、
前記吸引部は、前記反対面の側から前記開口を介して前記載置面側の空気を吸引することで前記記録媒体を前記搬送部材に吸着させる
ことを特徴とする請求項
7記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記浮上抑制部は、記録媒体を前記搬送部材に押さえつけるローラーを有することを特徴とする請求項
6~
8の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記第1の搬送部材に記録媒体が載置される前に当該記録媒体の温度を調節する温度調節部を備えることを特徴とする請求項1~
9の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記第1の搬送部材に記録媒体が載置される位置よりも当該記録媒体の搬送方向について上流側には、記録媒体にコロナ処理を行うコロナ処理部が設けられていることを特徴とする請求項1~
10の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
前記複数の搬送部材は、各々別個の無端状のベルトであることを特徴とする請求項1~
11の何れか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
前記無端状のベルトのうち少なくとも一部はスチールベルトであることを特徴とする請求項
12記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクをノズルから吐出させて記録媒体に着弾させ、画像を記録するインクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置では、通常の紙材に加えて厚紙、段ボール紙、アクリル板などの樹脂素材や布帛などといった多様な記録媒体上に画像を記録させることが可能となっている。インクジェット記録装置における記録媒体の搬送は、無端状のベルトなどを用いて平面上で行われるものや、円筒状のドラムを用いて回転させながら行われるものなどが広く用いられている。これらのうち、特に、記録媒体の屈曲や湾曲を行わせたくない場合や材質上困難な場合には、無端状ベルトなどを用いて平面上で当該記録媒体の搬送が行われる。
【0003】
インクジェット記録装置では、記録媒体に着弾した液体のインクを確実に当該記録媒体に定着されるために種々の技術が用いられている。そのような技術の一つとして、UV硬化型のインクを用いて、当該インクが着弾した記録媒体に紫外線を照射することでインクを確実に記録媒体上で固化定着させる技術がある。しかしながら、紫外線が画像の記録時や読取時に混入するとこれら画像の記録や読み取りに悪影響を及ぼすという問題がある。特許文献1には、読み取り対象画像の読み取りに悪影響を与えないための紫外線照射動作制御に係る技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紫外線などのエネルギー線によるインクの硬化に係る化学反応は、熱の出入、主に発熱を伴う。従って、紫外線だけではなく、記録媒体上の熱量の変化が搬送部材を経てこの搬送部材に載置された新たな記録媒体に及んで温度に影響が生じたり、或いは、このような熱量の変化を抑えるような更なる構成の動作の影響が周囲に広がったりすることで、当該記録媒体へのインクの着弾精度や着弾したインクの性質に影響し、画質が低下するという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、記録媒体に対してより安定して適切な画質の画像を記録し、確実に定着させることが出来るインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
記録媒体を載置する搬送部材を用いて前記記録媒体を搬送する搬送部と、
搬送される記録媒体上にインクを吐出する記録部と、
記録媒体上に着弾したインクを定着させる定着部と、
前記記録媒体のうち前記記録部のインク吐出面と対向した記録面を読み取る読取部と、
を備え、
前記記録部は所定のエネルギー線により硬化するインクを吐出し、
前記定着部は、前記記録媒体上のインクに前記所定のエネルギー線を照射し、
前記搬送部は、
搬送対象の記録媒体を複数の前記搬送部材の間で受け渡しながら、各搬送部材の移動動作により各々平面内で移動させ、
前記複数の搬送部材のうちの第1の搬送部材に載置された記録媒体を当該第1の搬送部材の移動動作により前記記録部のインク吐出面に対向させながら所定の第1の平面内で移動させ、
前記第1の搬送部材により移動された記録媒体を前記複数の搬送部材のうちの第2の搬送部材に載置して、当該第2の搬送部材の移動動作により所定の第2の平面内で移動させて、前記定着部による前記所定のエネルギー線の照射範囲を通過させ、
前記第2の搬送部材の移動動作により移動された記録媒体を前記複数の搬送部材のうちの第3の搬送部材に載置して、当該第3の搬送部材の移動動作により所定の第3の平面内で移動させて、前記読取部による読み取り範囲を通過させる
ことを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送部は、前記複数の搬送部材の移動動作により各々記録媒体が移動される前記平面の位置を調節する調節部を有することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の搬送部材の移動動作により各々前記記録媒体が移動される前記平面は、単一平面内に定められることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の搬送部材の間での前記記録媒体の受け渡しは、前記単一平面内で行われることを特徴としている。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、請求項1~4の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
設定されたサイズの複数の記録媒体を順次前記搬送部に供給する媒体供給部を備えることを特徴としている。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送部は、載置される記録媒体の前記搬送部材からの浮き上がりを抑制する浮上抑制部を有することを特徴としている。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載のインクジェット記録装置において、
前記浮上抑制部は、前記搬送部材の各々に記録媒体を吸着させる吸引部を有することを特徴としている。
【0015】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送部材は、記録媒体が載置される載置面と、当該載置面の反対面とを貫通する開口を各々有し、
前記吸引部は、前記反対面の側から前記開口を介して前記載置面側の空気を吸引することで前記記録媒体を前記搬送部材に吸着させる
ことを特徴としている。
【0016】
また、請求項9記載の発明は、請求項6~8の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記浮上抑制部は、記録媒体を前記搬送部材に押さえつけるローラーを有することを特徴としている。
【0017】
また、請求項10記載の発明は、請求項1~9の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1の搬送部材に記録媒体が載置される前に当該記録媒体の温度を調節する温度調節部を備えることを特徴としている。
【0018】
また、請求項11記載の発明は、請求項1~10の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記第1の搬送部材に記録媒体が載置される位置よりも当該記録媒体の搬送方向について上流側には、記録媒体にコロナ処理を行うコロナ処理部が設けられていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項12記載の発明は、請求項1~11の何れか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記複数の搬送部材は、各々別個の無端状のベルトであることを特徴としている。
【0020】
また、請求項13記載の発明は、請求項12記載のインクジェット記録装置において、前記無端状のベルトのうち少なくとも一部は、スチールベルトであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従うと、インクジェット記録装置により記録媒体に対してより安定して適切な画質の画像を記録し、確実に定着させることが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】第1搬送部から第2搬送部にかけての構造を側面から見た場合を示す模式図である。
【
図4】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態のインクジェット記録装置の変形例の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置1の全体構成を示す模式図である。
インクジェット記録装置1は、媒体供給部50と、媒体加熱部60(温度調節部)と、第1搬送部11及び記録部12と、第2搬送部21、定着部23及び冷却部24と、第3搬送部31及び読取部35と、媒体排出部55などを備える。
【0024】
媒体供給部50は、媒体積載部501と、位置合わせ部502などを有する。媒体積載部501には、平面状のプレート(トレー)が設けられて記録媒体P、ここでは、特に限られるものではないが設定されたサイズのダンボール紙が複数積載され、積載量に応じてプレートが上下することで、最上部の記録媒体Pが略水平に位置合わせ部502に順次送り出される。
位置合わせ部502は、記録媒体Pの位置、特に記録媒体の搬送方向に垂直な幅方向について所定の位置に合わせるガイド部材などを備え、適切な位置及びタイミングで第1搬送部11に記録媒体Pを送り出す。
【0025】
媒体加熱部60は、複数の加熱ローラー601が記録媒体Pを両側から挟み込み、回転動作により当該記録媒体Pを搬送させながら当該記録媒体Pを加熱する。複数の加熱ローラー601には、軸芯状の媒体ヒーター611が設けられており、当該加熱ローラー601の表面が加熱されて熱を記録媒体Pに伝えることで記録媒体Pを加熱する。媒体ヒーター611としては、例えば、電流によりジュール熱を生じる電熱シートなどが用いられる。
【0026】
また、加熱ローラー601から第1搬送部11の一部に亘って加熱室605が設けられており、空気ヒーター612により加熱室605の温度が一定に保たれて、媒体ヒーター611により加熱された記録媒体Pの温度むらを軽減して略一様な温度とする。空気ヒーター612としては、例えば、赤外線を照射する赤外線ヒーターなどが挙げられる。
【0027】
第1搬送部11は、駆動ローラー111と、従動ローラー112と、無端状の搬送ベルト113(第1の搬送部材、無端状のベルト)と、第1吸着部114と、押圧ローラー115(ローラー)と、第1押圧モーター117などを備える。
【0028】
図2は、第1搬送部11から第2搬送部21にかけての構造を側面から見た場合を示す模式図である。
無端状の搬送ベルト113は、ここでは、例えば、スチールベルトである。搬送ベルト113は、駆動ローラー111と従動ローラー112との間に架け渡されて周回動作(移動動作)する。媒体加熱部60から加熱ローラー601の回転に伴って送られた搬送対象の記録媒体Pは、搬送ベルト113の外周側の面(記録媒体Pの載置面)が上向きで水平に(第1の平面内で)移動する区間において当該載置面に載置されて搬送ベルト113の周回移動に伴って搬送される。この区間では、記録媒体P及び搬送ベルト113(載置面)は、記録部12の各ヘッドユニット12Y、12M、12C、12Kのノズルからインクが吐出される面(インク吐出面)と対向する。搬送ベルト113は、載置面側から当該載置面とは反対側の面へと空気が通過可能に両面間を貫通する多数の開口が所定のパターンで設けられた構造となっている。第1搬送部11、特には限られないが、例えば、駆動ローラー111の駆動軸には、図示略の動作量(回転量)計測部、ここでは、エンコーダー(ロータリーエンコーダー)が設けられ、周回移動距離を計測可能とされている。
【0029】
加熱室605は、上述のように、記録媒体Pが搬送ベルト113の載置面上に載置される区間のうち搬送方向について上流部分の一部を囲うように設けられ、記録媒体Pは、この加熱室605の内部で搬送ベルト113上に載置される。なお、
図1では、加熱室605の壁面を透過して内部が視認可能とされているが、内部が視認可能である必要はない。
【0030】
押圧ローラー115は、記録媒体Pが搬送ベルト113の載置面に載置される際に第1押圧モーター117の動作に従って当該記録媒体Pの載置面からの浮き上がりを防止(抑制)して載置面に密着させながら記録媒体Pを搬送方向に移動させる。押圧ローラー115は、記録媒体Pが圧縮されない程度、特に、ここでは段ボール紙の中芯が不可逆的に潰れない範囲で押圧し、押圧ローラー115の表面の移動速度が搬送ベルト113の移動速度と同一となるように回転速度が制御される。なお、押圧ローラー115は、回転駆動されず、記録媒体Pの移動に従って回転するのみの構成であっても良い。
【0031】
第1吸着部114は、記録媒体Pを載置面に吸着させる。第1吸着部114は、例えば、載置面をなす搬送ベルト113を載置面と反対側の面で支える支持板1142と、第1吸引ファン1143(吸引部)などを有する。第1吸引ファン1143は、搬送ベルト113の内周面に囲まれた内部に設けられ、支持板1142には、第1吸引ファン1143の動作により搬送ベルト113の載置面側から第1吸引ファン1143まで吸引された空気が通過可能に多数の透過孔が設けられている。或いは、人工的に設けられた透過孔を有する支持板の代わりに多孔質体が用いられても良い。
【0032】
記録部12は、記録媒体Pの搬送方向について加熱室605よりも下流側に設けられている。記録部12は、複数のノズルを有し、当該複数のノズルから各々インクを吐出させる。記録部12は、搬送ベルト113の外周面と対向する面がノズルの開口面となっていて、複数のノズルの開口部から吐出されたインクは、記録媒体Pの記録部12と対向する面(記録面)に着弾する。ここでは、記録部12は、複数のノズル開口部がノズルの開口面に沿って記録媒体Pの搬送方向に垂直な幅方向について、本実施形態のインクジェット記録装置1で画像記録が可能な最大サイズとして設定された最大幅に亘って所定の間隔で設けられたラインヘッド構造となっている。即ち、インクの吐出時には、搬送ベルト113に対して記録部12が固定され、記録媒体Pを搬送方向に移動させながら各ノズルから順次インクを吐出させることで、二次元画像を記録することが可能となっている。
記録部12は、複数のインク種別(色)、ここでは、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒色)の4色について各々ヘッドユニット12Y、12M、12C、12Kが設けられて順番に各種別のインクを記録媒体Pに吐出する。或いは、記録部12は、これら4色以外のインク種別、例えば、オレンジ、グリーン、バイオレット、レッド、ブルー、ホワイトなど各色のインク(特色インク組成物)や、淡色インク組成物、濃色インク組成物、及び/又は透明インク組成物などを用いて/追加して記録媒体Pに吐出する構成であっても良い。ここで吐出されるインクは、紫外線(所定のエネルギー線)が照射されることで安定的に硬化する紫外線硬化型インクである。
【0033】
第2搬送部21は、第1搬送部11により搬送された記録媒体Pを受けて搬送し、当該記録媒体Pを、定着部23による紫外線の照射範囲を通過させる。第2搬送部21は、駆動ローラー211と、従動ローラー212と、無端状の搬送ベルト213(第2の搬送部材)と、第2吸着部214と、押圧ローラー215、216と、第2押圧モーター217と、冷却部24などを有する。これらの構成は、押圧ローラー115の代わりに2つの押圧ローラー215、216が設けられ、冷却部24を有している点を除き、第1搬送部11における駆動ローラー111(及び動作量計測部)、従動ローラー112、搬送ベルト113、第1吸着部114及び第2押圧モーター217の構成と同一であり、これらについては詳しい説明を省略する。
【0034】
押圧ローラー215、216は、記録媒体Pの幅方向両端をそれぞれ押圧する。第1搬送部11上で記録部12により吐出されて記録媒体Pに着弾したインクは、第2搬送部21に受け渡された時点ではまだ定着されていない。従って、この状況でインクの着弾部分を押圧して着弾したインクを乱さないように、押圧ローラー215、216は、幅方向両端の余白部分のみを押圧する。押圧ローラー215、216の幅方向についての位置は、ユーザーにより及び/又は制御部40の制御により変更可能となっている。
【0035】
搬送ベルト213の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置されて平行移動される区間の高さ(第2の平面)は、搬送ベルト113の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置されて平行移動される区間の高さと等しく定められ、また、記録媒体Pが搬送ベルト113から搬送ベルト213に直接受け渡されることで、当該記録媒体Pの高さが変化せずに単一平面内で移動搬送される。
ここでいう等しいとは、厳密に等しい場合に限られず、通常の機械装置の組み立て設定で目視上略等しい程度の精度で十分であり、例えば、1cm以下程度、より好ましくは1mm以下程度の範囲内で等しいことをいう。
【0036】
定着部23は、搬送ベルト213により搬送される記録媒体Pに着弾したインクを定着させる。定着部23は、紫外線の照射部を備え、記録媒体P上の紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射する。
定着部23から照射される紫外線は、搬送ベルト213の載置面に記録媒体Pが載置される区間で当該載置された記録媒体Pに対して大きなむら(強度のばらつき)なく照射されるのが好ましい。一方で、当該区間外に漏れる紫外線強度を低減させるために、定着部23による紫外線の照射範囲の周囲を覆うように遮光板231が設けられている。
これら搬送ベルト213の載置面上における少なくとも紫外線照射範囲及び定着部23は、インクの種別などに応じて筐体内に収容され、当該筐体内部(或いは、筐体を設けずに遮光板231で覆われた領域)に特定の気体、例えば、窒素ガスなどを充填することで定着の効果を維持向上させることが出来る。この場合、筐体(遮光板231)内部に熱が篭らないように、上述の特定の気体の循環冷却や、筐体の冷却などが適宜行われれば良い。
【0037】
冷却部24は、定着部23の動作による記録媒体P上のインクの定着に係る発熱、及び定着部23自体の発熱に伴って加熱された搬送ベルト213を冷却する。冷却部24は、例えば、冷却ファンを有し、当該冷却ファンの動作により搬送ベルト213を空冷する。冷却部24は、搬送ベルト213の載置面に記録媒体Pが載置されない区間において当該載置面と対向して設けられる。
なお、冷却部24は、ここでは、搬送ベルト213を冷却する構成として設けられたが、定着部23の紫外線の照射部自体を冷却する構成を備えて、長時間の画像記録時における照射部の過熱を防止する構成であっても良い。
【0038】
第3搬送部31は、駆動ローラー311と、従動ローラー312と、無端状の搬送ベルト313(第3の搬送部材)と、第3吸着部314と、押圧ローラー315と、第3押圧モーター317などを有し、第2搬送部21により搬送された記録媒体Pを受けて読取部35の読み取り範囲内を通過させる。これらの駆動ローラー311、従動ローラー312及び搬送ベルト313の構成は、駆動ローラー111(及び動作量計測部)、従動ローラー112、搬送ベルト113、第1吸着部114、押圧ローラー115及び第1押圧モーター117と同一であり、詳しい説明を省略する。
【0039】
搬送ベルト313の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置されて平行移動される区間(第3の平面)の高さは、搬送ベルト213の外周面(載置面)のうち記録媒体Pが載置される区間の高さと等しく定められ、記録媒体Pは、搬送ベルト213の載置面から搬送ベルト313の載置面に対して直接同一平面内で受け渡される。即ち、記録媒体Pは、第1搬送部11で搬送ベルト113に載置されてから第3搬送部31で搬送ベルト313から取り除かれるまで単一平面内で移動及び受け渡しがなされる。
【0040】
読取部35は、搬送ベルト313により搬送される記録媒体Pの記録面を読み取る。読取部35は、例えば、ラインセンサーなどの撮像部を有する。ラインセンサー(撮像部)は、搬送ベルト313の載置面と対向する面に撮像素子が記録部12によるインク吐出可能な幅に亘って配列され、一次元画像を撮像する。また、ラインセンサーは、記録媒体Pの搬送速度(即ち、各搬送部11、21、31のエンコーダーの計測値と経過時間)に応じた間隔で撮像を繰り返すことで、二次元画像を取得することが出来る。
【0041】
図3は、第3搬送部31とそのフレームを示す斜視図である。
第3搬送部31は、記録媒体Pの搬送方向に垂直な幅方向両端を柵部321で囲われ、当該柵部321から鉛直方向下方に伸びる脚部322で床面に対して支持されている。脚部322には、高さを調節するための調節部323が設けられており、ユーザーが高さを変更して隣り合う第2搬送部21の搬送面と同じ高さになるように調整を行うことが出来る。第1搬送部11及び第2搬送部21についても、同様の構成とすることが出来る。
【0042】
なお、調節部323の動作は、ここではユーザーが手作業で行うものとしたが、ラックレールと歯車などを用いて歯車を電気的に動作させることで調整を行わせても良い。また、この設定される移動先もユーザーが手動で定めても良いし、センサーなどを用いて隣り合う搬送面との高さの差を検出して自動で行われることとしても良い。
【0043】
媒体排出部55は、第3搬送部31により搬送された記録媒体Pをユーザーに取り出されるまで載置して保持する。媒体排出部55は、排出トレー551(プレート)を備え、この排出トレー551上に画像記録の終了した記録媒体Pが順番に重ねられていく。排出トレー551は、記録媒体Pが第3搬送部31の搬送面から送出可能なように当該搬送面より低く設定されており、載置された記録媒体Pの分量によって上下可能であっても良い。
【0044】
上述の搬送ベルト113、213、313が搬送部材をなす。
また、第1搬送部11では、第1吸着部114及び押圧ローラー115が浮上抑制部を構成している。第2吸着部214、押圧ローラー215、216が第2搬送部21の浮上抑制部を構成している。第3吸着部314、押圧ローラー315が第3搬送部31の浮上抑制部を構成している。
【0045】
第1搬送部11、第2搬送部21及び第3搬送部31において記録媒体Pが搬送ベルト113、213、313にそれぞれ載置される区間の長さは、特に、各搬送部における機能動作(記録、定着、読み取り)に係る構成の前後での長さが確保された方が各機能動作(主に記録及び読み取り)の間に記録媒体Pが搬送部の間を跨いだり搬送面上から外れたりしなくなることにより、当該記録媒体Pが折れ曲がったり搬送速度が変化したりすることによる位置精度の低下の影響を低減、抑止することが出来るので、長いほうが記録媒体Pの安定性が増す。その一方で、これらの区間が長くなると、インクジェット記録装置1の配置スペースとして当該区間に応じた長さ(搬送距離)を確保する必要があり、また、搬送距離の延長に応じた動力、即ち、電力消費の増大にも繋がり、更に、長さに応じた精度の低下(膨張、伸縮、移動速度の均一さなど)の影響も大きくなる。従って、これらの区間の長さは、必要以上には長くせずにバランスをとって定められる。例えば、第1搬送部11の載置面上の記録媒体Pに対して画像の記録が開始されるタイミングでは、既に加熱ローラー601と当該記録媒体Pとが接触しない状態になっており、及び/又は、画像の記録が終了するタイミング前には記録媒体Pが第2搬送部21の搬送ベルト213に接触しないように長さ及び配置を定めることが出来る。
【0046】
図4は、本実施形態のインクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、制御部40と、第1搬送モーター118、第2搬送モーター218、第3搬送モーター318及び搬送制御部418と、第1押圧モーター117、第2押圧モーター217、第3押圧モーター317及び押圧制御部417と、第1吸引ファン駆動部1141、第2吸引ファン駆動部2141、第3吸引ファン駆動部3141及び吸引制御部414と、ヘッド駆動部121及びヘッド制御部421と、媒体ヒーター611、空気ヒーター612、搬送面温度計測部619及び搬送部加熱制御部413と、インクヒーター123、インク温度計測部122及びインク加熱制御部422と、定着部23及び定着制御部43と、冷却制御部44及び冷却ファン駆動部241と、読取部35及び読取制御部45と、操作表示部71と、通信部72などを備える。
【0047】
これらのうち、搬送制御部418、押圧制御部417、吸引制御部414、ヘッド制御部421、搬送部加熱制御部413、インク加熱制御部422、読取制御部45、定着制御部43及び冷却制御部44をまとめて個別動作制御部と記す。これらの個別動作制御部は、制御部40の各ハードウェア構成が併用されても良いし、別個に専用のCPU、メモリーや論理回路などが用意されていても良い。
【0048】
制御部40は、CPU(Central Processing Unit)401と、RAM(Random Access Memory)402と、記憶部403などを有する。制御部40は、記憶部403から読み出された制御用のプログラム403aや設定データをRAM402に一時記憶させて、当該一時記憶データに基づいてCPU401が制御処理を行う。記憶部403は、繰り返し読み書きが可能な不揮発性メモリーやHDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶部を有する。記憶部403の一部には、読み出しのみが可能なROMが用いられても良い。
【0049】
制御部40(CPU401)は、インクジェット記録装置1の動作を統括制御する。制御部40は、通信部72を介して外部から取得された画像記録に係る命令及び当該記録画像データ、即ち、プリントジョブに基づいて、個別動作制御部を介してインクジェット記録装置1の各部の動作制御を行う。
【0050】
操作表示部71は、ユーザー操作を受け付けたり、ユーザーにステータス情報や動作メニューなどを示すための表示を行ったりする。操作表示部71は、操作受付部としての操作検出部711と、表示部712とを有する。表示部712は、表示画面、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)を備え、制御部40からの制御信号に応じて当該LCDに各種表示を行わせる。また、操作検出部711は、例えば、LCD上に重ねて配置されたタッチセンサーを備え、LCDの表示位置と対応した位置座標における操作を検出して検出信号を制御部40に出力する。
【0051】
通信部72は、PCなどの外部機器との通信接続を行い、各種通信規格に従ってデータ通信を行うためのインターフェイスである。この通信部72としては、例えば、LAN接続用のネットワークカードや、ブルートゥース通信(登録商標:Bluetooth)などを利用した無線通信インターフェイスなどが挙げられる。或いは、通信部72は、USBによる外部機器との直接接続に係る接続端子及びドライバーなどであっても良い。制御部40は、通信部72を介して外部機器からプリントジョブやインクジェット記録装置1の各種制御設定データなどを取得する。
【0052】
ヘッド駆動部121は、ヘッド制御部421からの制御信号や記録対象の画像データに応じて各ヘッドユニット12Y、12M、12C、12Kに設けられた負荷(ピエゾ型のインクジェット記録装置における圧電素子やサーマル型のインクジェット記録装置における発熱体など)に適切なタイミングで電力を供給して動作させ、各ノズルの開口部からインクを吐出させる。
【0053】
冷却ファン駆動部241は、冷却制御部44の制御に基づいて冷却部24の冷却ファンを適切な回転速度で回転動作させる。
第1吸引ファン駆動部1141は、吸引制御部414の制御に基づいて第1吸着部114の第1吸引ファンを適切な回転速度で回転動作させる。
第2吸引ファン駆動部2141は、吸引制御部414の制御に基づいて第2吸着部214の第2吸引ファンを適切な回転速度で回転動作させる。
第3吸引ファン駆動部3141は、吸引制御部414の制御に基づいて第3吸着部314の第3吸引ファンを適切な回転速度で回転動作させる。
【0054】
媒体ヒーター611は、搬送部加熱制御部413の制御に基づいてインク着弾時に記録媒体Pが適切な温度範囲となるように加熱ローラー601の表面を介して記録媒体Pを加熱する。空気ヒーター612は、加熱室605の内部を適切な温度に加熱する。インクヒーター123は、インク加熱制御部422の制御に基づいてインクタンクから各ヘッドユニット12Y、12M、12C、12Kに供給されたインクが適切な温度で吐出されるようにインク流路やその周辺部材を加熱する。
【0055】
搬送面温度計測部619及びインク温度計測部122は、これら媒体ヒーター611、空気ヒーター612及びインクヒーター123による加熱状況を適切に保つために搬送ベルト113又は当該搬送ベルト113上に載置された記録媒体Pの表面温度、及びインク流路又は当該インク流路内のインク温度をそれぞれ計測して、搬送部加熱制御部413及びインク加熱制御部422に各計測結果を出力する。
搬送面温度計測部619及び搬送部加熱制御部413は、温度調節部に含まれても良い。
【0056】
搬送制御部418は、第1搬送モーター118、第2搬送モーター218及び第3搬送モーター318の動作を制御して記録媒体Pを適切な速度で搬送させる。この場合、各搬送部11、21、31や媒体加熱部60の加熱ローラー601による搬送速度は、適切に維持される必要がある。各搬送速度が全て同一とされるか、少なくとも搬送方向について下流側での搬送速度の方が僅かに(1%以内など)速くなる程度に設定される。
押圧制御部417は、第1押圧モーター117、第2押圧モーター217及び第3押圧モーター317の動作を制御して、記録媒体Pにしわや浮き上がりが生じないようにしながら当該記録媒体Pを第1搬送部11の搬送ベルト113、第2搬送部21の搬送ベルト213、第3搬送部31の搬送ベルト313の外周面にそれぞれ載置させる。
読取制御部45は、読取部35の動作を制御して、記録媒体Pの搬送タイミング及び速度に応じて適切な位置の記録画像を撮像させる。
定着制御部43は、定着部23の動作を制御して、記録媒体P上に記録された画像に係るインクを定着させる。
【0057】
本実施形態のインクジェット記録装置1では、上述のように、機能構成ごとに異なる搬送部11、21、31の搬送ベルト113、213、313の間で記録媒体Pが受け渡されながら搬送されていくので、組立時には適切な位置関係で配置され、また、各機能構成の動作タイミングが適切に設定される必要がある。組み立て時の位置設定精度は、インク吐出位置に要求される位置精度(例えば20μm)などと比較して遥かに低い。従って、ここでは、第1搬送部11の搬送ベルト113上で搬送方向に幅を有して又は搬送方向に異なる複数の位置に各々形成された所定のテスト画像や記録媒体Pの上流側/下流側端部が第3搬送部31の搬送ベルト313上で読取部35により読み取られたタイミングまでの経過時間及び上述の各搬送部11、21、31に設けられた動作量計測部(エンコーダー)の計測値に基づいて、記録媒体Pの媒体供給部50からの送出タイミング、記録部12の記録位置、及び読取部35の読取位置の間の距離及び速度がそれぞれ同定される。或いは、位置合わせ部502、各搬送部11、31(及び、必要に応じて第2搬送部21)が各々記録媒体Pを検知する検出センサーを有していても良い。同定された距離や速度ずれデータなどは、記憶部403に記憶され、また、必要に応じて補正され、これらを用いて高精度で位置やタイミングの調整が行われる。
【0058】
なお、テスト画像の記録動作自体にノズルからのインク吐出動作に係る動作不良が含まれると、正確な設定が出来なくなるので、距離などの同定動作と、動作不良の検出動作とは、並行して行われ得る。
【0059】
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置の変形例の一部を示す図である。
この変形例のインクジェット記録装置1aでは、媒体供給部50の位置合わせ部502と媒体加熱部60の加熱室605との間にコロナ処理部が設けられている。
【0060】
コロナ処理部は、第4搬送部91と、電極914などを備える。第4搬送部91は、駆動ローラー911及び従動ローラー912と、これらの間に架け渡された搬送ベルト913などを備え、搬送ベルト913が接地されて電極914との間に高電位差を生じさせてコロナ放電を行わせる。これにより、特に記録媒体Pが各種樹脂製のシートなどでインクの定着に向かない材質の場合などに、これらシートの表面改質を行ってインクによる画像記録に適した材質とさせるコロナ処理を行うことが出来る。この場合、必要に応じてコロナ処理部を筐体で封止し、当該筐体の内部を特定の雰囲気で充満させることが出来る。
【0061】
このような場合でも、第4搬送部91による記録媒体Pの搬送面は、媒体加熱部60や第1搬送部11などで搬送される際の搬送面の高さに揃えられる。
【0062】
以上のように、本実施形態のインクジェット記録装置1、1aは、記録媒体Pを載置する搬送ベルト113、213、313を用いて当該記録媒体Pを搬送する搬送部11、21、31と、搬送される記録媒体P上にインクを吐出する記録部12と、記録媒体P上に着弾したインクを定着させる定着部23と、を備え、記録部12は紫外線により硬化するインクを吐出し、定着部23は、記録媒体P上のインクに紫外線を照射し、搬送部11、21、31は、搬送対象の記録媒体Pを複数の搬送ベルト113、213、313の間で受け渡しながら、各搬送ベルト113、213、313の移動動作により各々平面内で移動させ、複数の搬送ベルトのうちの搬送ベルト113に載置された記録媒体Pを当該搬送ベルト113の移動動作により記録部12のインク吐出面に対向させながら所定の第1の平面内で移動させ、搬送ベルト113により移動された記録媒体Pを搬送ベルト213に載置して、当該搬送ベルト213の移動動作により所定の第2の平面内で移動させて、定着部23による紫外線の照射範囲を通過させる。
このように、無端状のベルトなどによる記録媒体Pの平面搬送がなされるインクジェット記録装置1において、搬送部をユニット化して複数に分け、特に定着部23の動作に係る第2搬送部21と画像の記録に係る第1搬送部11とを別個に分けることで、定着部23による紫外線(エネルギー線)とインクとの反応による発熱やエネルギー線の照射に係る構成の発熱の影響を画像記録時に及ぼさずに、より適切な環境で画像記録動作を行うことが出来る。従って、インクジェット記録装置1では、記録媒体Pに対してより安定して適切な画質の画像を記録し、確実に定着させることが出来る。
また、搬送部もユニット化することにより、用途などに応じて必要な機能構成と対応する搬送部のみを組み合わせてインクジェット記録装置を構成することが出来る。
また、搬送ベルトを必要に応じて各々別個に交換することが出来るので部分的な損傷や劣化などに対する交換コストを低減させることが出来る。
また、定着部23を覆う筐体や遮光板231の内部(遮光範囲内)に充填される特定の気体が漏れ出す流れや、照射部を冷却する気流などが搬送ベルトに沿ってそのまま記録部12のノズル面と記録媒体Pとの間に流入して飛翔するインクの着弾位置をずらしたりするのを防ぐことが出来る。
【0063】
また、記録媒体Pのうち記録部12のインク吐出面と対向した記録面を読み取る読取部35を備え、搬送部11、21、31は、搬送ベルト213の移動動作により移動された記録媒体Pを搬送ベルト313に載置して、当該搬送ベルト313の移動動作により所定の第3の平面内で移動させて、読取部35による読み取り範囲を通過させる。
このように、定着部23の動作に係る第2搬送部21と記録画像の読み取りに係る第3搬送部31とを更に別個に分けることで、定着部23の動作に係る発熱が読み取り動作に及ぼす影響を低減することが出来る。また、個々の搬送ベルトの長さが機能構成の数に比して短いので、長大な単一の搬送ベルトを用いる場合よりも記録媒体Pの位置精度を向上させることが出来る。
【0064】
また、搬送部11、21、31は、搬送ベルト113、213、313の移動動作により各々記録媒体Pが移動される平面の位置を調節する調節部(搬送部31における調節部323)を有する。これにより、インクジェット記録装置1の設置時や移動時などに適切に搬送面の高さを調節して合わせることが出来る。
【0065】
また、搬送ベルト113、213、313の移動動作により各々記録媒体Pが移動される平面は、単一平面内に定められる。即ち、搬送部が複数の搬送ベルトに分割されても、当該複数の搬送ベルトによる搬送中に記録媒体Pを単純に所定の平面内でのみ搬送させるので、記録媒体Pの受け渡しの構成を簡便に定めつつ、より確実に記録媒体Pの受け渡しを可能とし、また、当該受け渡しによる位置精度の低下を軽減させることが出来る。また、この受け渡しに係る位置ずれの発生などを抑えることが出来る。特に、画像の記録時と画像の読取時とで位置ずれ、特に回転方向に位置ずれが生じると正確な位置と対応付けた読み取りに係る手間が大きく増大するので、容易に確実な受け渡しが可能な相対位置関係で搬送ベルトを配置することで、位置ずれやこれに伴う読み取りの手間を増大させない。
【0066】
また、複数の搬送ベルト113、213、313の間での記録媒体Pの受け渡しは、単一平面内で行われるので、記録媒体Pの曲線状の移動(曲面での移動)や三次元的な移動を必要とせず、記録媒体Pの受け渡しに係る位置ずれの発生などを抑えることが出来る。特に、画像の記録時と画像の読取時とで位置ずれ、特に回転方向に位置ずれが生じると正確な位置と対応付けた読み取りに係る手間が大きく増大するので、容易に確実な受け渡しが可能な相対位置関係で搬送ベルトを配置することで、位置ずれやこれに伴う読み取りの手間を増大させない。
【0067】
また、枚葉紙、特に厚紙や段ボールなどの平面搬送が適した設定されたサイズの複数の記録媒体を順次第1搬送部11に供給する媒体供給部50を備え、個別の記録媒体を提供する場合に、このような受け渡しの容易化及び確実化や位置ずれの低減といった効果が顕著に得られる。
【0068】
また、搬送部11、21、31は、載置される記録媒体Pの搬送ベルト113、213、313からの浮き上がり(浮上)をそれぞれ抑制する押さえローラー115、215、216、315や、第1吸着部114、第2吸着部214、第3吸着部314などの構成を有する。
これにより、搬送ベルトが複数に分割されても各々で適切に記録媒体が載置されて、正確な位置を保ちながら各機能動作を行うことが出来る。
【0069】
また、搬送ベルトの各々に記録媒体Pを吸着させる吸引ファン(搬送ベルト113に吸着させる第1吸引ファン1143など)を有する。このように空気の吸引により記録媒体Pを適切に吸着させるとともに、記録媒体Pの吸着を終了する場合に、吸引動作を停止させることで速やか且つ確実に吸着状態を終了させることが出来る。
【0070】
また、搬送ベルト113、213、313は、記録媒体Pが載置される載置面と、当該載置面の反対面とを貫通する開口を各々有し、吸引部は、記録媒体Pの上記反対面の側から開口を介して載置面側の空気を吸引することで記録媒体Pを搬送ベルト113、213、313に吸着させる。このような構成により容易且つ確実に記録媒体Pを搬送ベルトの載置面に平面上で吸着させて搬送することが出来る。
【0071】
また、記録媒体Pを搬送ベルト113、213、313に押さえつける押さえローラー115、215、216、315を有する。これにより、記録媒体Pの載置時に初めから当該記録媒体Pが浮かび上がって確実に吸着されない状況の発生を防ぐことが出来る。
【0072】
また搬送ベルト113に記録媒体Pが載置される前に当該記録媒体Pの温度を調節する媒体加熱部60を備える。従って、記録媒体Pに対するインクの着弾や定着を好適に行えるように温度調整をして適切な状態で画像の記録を行わせることが出来る。
【0073】
また、搬送ベルト113に記録媒体Pが載置される位置よりも当該記録媒体Pの搬送方向について上流側には、記録媒体Pにコロナ処理を行うコロナ処理部が設けられている。これにより、記録媒体Pが樹脂シートなどでそのままではインクの定着が好適になされない場合に、表面の材質を好適に改変してインクによる画像記録を適切に行わせることが出来るようにすることが出来る。また、このとき搬送部91による搬送が上述の単一平面内で行われるようにすることで、同様に記録媒体Pの受け渡しミスや位置ずれなどを低減させて確実に搬送動作を行うことが出来る。
【0074】
また、搬送ベルト113、213、313は、各々別個の無端状のベルトである。従って、容易に周回動作を行わせて複数の記録媒体Pを順次平面内で搬送させることが出来る。
【0075】
また、搬送ベルト113、213、313のうち少なくとも一部は、スチールベルトである。このように精度の高いスチールベルトを利用し、更に、熱が伝わりやすい材質であっても定着部23の動作や定着に係る発熱の影響をより確実に低減させることが出来るので、より精度の高い搬送位置制御を行うことが出来る。
【0076】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、記録部12の動作に係る第1搬送部11、定着部23の動作に係る第2搬送部21及び読取部35の動作に係る第3搬送部31を備える例を挙げて説明し、変形例では、更にコロナ処理に係る第4搬送部91を追加して示したがこれらに限られない。例えば、読取部35及び第3搬送部31がなくても良いし、或いは、その他の機能構成及びこれらに係る搬送部が各所に設けられていても良い。
【0077】
また、上記実施の形態では、第1の平面、第2の平面と第3の平面が全て同一平面内にあるように設定した例を示したが、これに限るものではない。例えば、定着部23が照射する紫外光が他の搬送面に照射される量をより低減するために搬送部間で段差をつけることも可能である。この場合、記録媒体が適切に受け渡されるように受け渡しに係る構成が適宜追加されても良い。
【0078】
また、上記実施の形態では、記録媒体Pとして段ボール材を例に挙げて説明したが、これに限られない。但し、通常の記録紙など曲がりやすい材質のものが用いられる場合には、搬送ベルト間で上流側の搬送ベルトから確実に外れるように、ガイド部材が設けられたり、搬送ベルトの開口から吸気の代わりに排気を行わせて記録媒体を浮かせたりすることとしても良い。
【0079】
また、上記実施の形態では、紫外線硬化型のインクを用いて紫外線を照射することで記録媒体Pに着弾したインクを硬化、定着させたが、他のエネルギー線により硬化定着するインクでも良く、この場合には当該インクを定着させるエネルギー線が定着部23から照射されれば良い。
【0080】
また、上記実施の形態では、温度調節部として媒体加熱部60が記録媒体Pを加熱することとしたが、記録媒体Pを冷却する必要が有る場合には、当該冷却を行う構成が温度調節部に含まれる。
【0081】
また、上記実施の形態では、個別の記録媒体を順次供給して画像の記録を行ったが、本発明のインクジェット記録装置は、連続的な記録媒体上に所定の間隔で記録を行った後、後処理で切断分離する構成に用いられても良い。
【0082】
また、上記実施の形態では、記録媒体Pの浮き上がりを抑制する構成として押さえローラーと空気の吸引による搬送ベルトへの吸着を組み合わせた例を挙げて説明したが、これらに限られない。例えば、押さえローラーの代わりに回転しない固定されたガイド部材が用いられても良いし、空気の吸引ではなく、静電気などを用いた吸着であっても良い。
【0083】
また、上記実施の形態では、各機能構成を全て別個の搬送部に区分けして記録媒体の搬送を行うこととしたが、定着部などの熱伝導が適切に防げれば、複数の機能構成に係る動作が一つの搬送部上で実行されても良い。
その他、上記実施の形態で示した構成、構造や配置、順序などの具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明は、インクジェット記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1、1a インクジェット記録装置
11 第1搬送部
111 駆動ローラー
112 従動ローラー
113 搬送ベルト
114 第1吸着部
1141 第1吸引ファン駆動部
1142 支持板
1143 第1吸引ファン
115 押圧ローラー
117 第1押圧モーター
118 第1搬送モーター
12 記録部
12Y、12M、12C、12K ヘッドユニット
121 ヘッド駆動部
122 インク温度計測部
123 インクヒーター
21 第2搬送部
211 駆動ローラー
212 従動ローラー
213 搬送ベルト
214 第2吸着部
2141 第2吸引ファン駆動部
215、216 押圧ローラー
217 第2押圧モーター
218 第2搬送モーター
23 定着部
231 遮光板
24 冷却部
241 冷却ファン駆動部
31 第3搬送部
311 駆動ローラー
312 従動ローラー
313 搬送ベルト
314 第3吸着部
3141 第3吸引ファン駆動部
315 押圧ローラー
317 第3押圧モーター
318 第3搬送モーター
321 柵部
322 脚部
323 調節部
35 読取部
40 制御部
401 CPU
402 RAM
403 記憶部
403a プログラム
413 搬送部加熱制御部
414 吸引制御部
417 押圧制御部
418 搬送制御部
421 ヘッド制御部
422 インク加熱制御部
43 定着制御部
44 冷却制御部
45 読取制御部
50 媒体供給部
501 媒体積載部
502 位置合わせ部
55 媒体排出部
551 排出トレー
60 媒体加熱部
601 加熱ローラー
605 加熱室
611 媒体ヒーター
612 空気ヒーター
619 搬送面温度計測部
71 操作表示部
711 操作検出部
712 表示部
72 通信部
91 搬送部
911 駆動ローラー
912 従動ローラー
913 搬送ベルト
914 電極
P 記録媒体