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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】コーティング剤、硬化物及びフィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20220329BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220329BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220329BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220329BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/63
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019222152
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091764
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2021-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐希
(72)【発明者】
【氏名】東本 徹
【審査官】▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-226814(JP,A)
【文献】特開2013-053304(JP,A)
【文献】特開2018-178082(JP,A)
【文献】特開2000-230127(JP,A)
【文献】特開2015-214673(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017778(WO,A1)
【文献】特開2018-024744(JP,A)
【文献】特開2018-058913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が30~110℃、水酸基価が30~150mgKOH/gかつ酸価が0~0.7mgKOH/gである水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー(A)、
芳香族ポリイソシアネート(B)、並びに
体積平均粒子径が1.5~6.5μmであるシリカ粒子、及び窒素原子を含む有機粒子からなる群から選択される1つ以上の粒子(C)を含み、
前記芳香族ポリイソシアネート(B)としてブロックされていないポリイソシアネートのみを用い、
前記芳香族ポリイソシアネート(B)は、キシレンジイソシアネートのアダクト体、キシレンジイソシアネートのヌレート体、トルエンジイソシアネートのアダクト体及びトルエンジイソシアネートのヌレート体からなる群から選択される1つ以上である、
コーティング剤。
【請求項2】
水酸基含有有機変性シリコーン(D)を含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコーティング剤の硬化物。
【請求項4】
請求項3に記載の硬化物を含む、フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コーティング剤、硬化物及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
斯界では、粒子を含むコーティング剤が開発されている。例えば、特許文献1(特開2018-027642号公報)は、このようなコーティング剤を用いて製造したフィルムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-027642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、粒子を含むコーティング剤では、粒子の沈降や分離が生じ、コーティング剤の安定性が悪くなるという問題点がある。
【0005】
また、昨今コーティング剤の基材はコスト面から薄膜化する傾向がある。そのため、コーティング剤を塗布後、硬化させる際に収縮等の基材ダメージを防ぐにはより低温でコーティング剤が硬化すること(低温硬化性)が求められている。
【0006】
さらに、安定性、低温硬化性に加え、未処理の基材に対する基材密着性、被着体が溶剤系である場合は塗布時の耐溶剤性もコーティング剤には求められている。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題を、良好な安定性、低温硬化性、基材密着性、耐溶剤性を有するコーティング剤を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の成分を含むコーティング剤により、上記課題が解決されることを見出した。
【0009】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
ガラス転移温度が30~110℃かつ水酸基価が30~150mgKOH/gである水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー(A)、
ポリイソシアネート(B)、並びに
体積平均粒子径が1.5~6.5μmであるシリカ粒子、及び窒素原子を含む有機粒子からなる群から選択される1つ以上の粒子(C)
を含む、コーティング剤。
(項目2)
水酸基含有有機変性シリコーン(D)を含む、上記項目に記載のコーティング剤。
(項目3)
上記項目に記載のコーティング剤の硬化物。
(項目4)
上記項目に記載の硬化物を含む、フィルム。
【0010】
本開示において、上述した1又は複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るコーティング剤は、良好な安定性、低温硬化性、基材密着性、耐溶剤性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αについて、数値αの上限及び下限としてA1、A2、A3、A4(A1>A2>A3>A4とする)等が例示される場合、数値αの範囲は、A1以下、A2以下、A3以下、A2以上、A3以上、A4以上、A1~A2、A1~A3、A1~A4、A2~A3、A2~A4、A3~A4等が例示される。
【0013】
[コーティング剤]
本開示は、ガラス転移温度が30~110℃かつ水酸基価が30~150mgKOH/gである水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー(A)、
ポリイソシアネート(B)、並びに
体積平均粒子径が1.5~6.5μmであるシリカ粒子、及び窒素原子を含む有機粒子からなる群から選択される1つ以上の粒子(C)
を含む、コーティング剤を提供する。
【0014】
<水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー(A):(A)成分ともいう。>
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーは、水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位及び水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を含む共重合体等が例示される。(A)成分は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0015】
(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート)
水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートは、
【化1】
(式中、Ra1は水素原子、又はメチル基であり、Ra2はアルキル基である。)
で表わされる。水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0016】
アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基等が例示される。
【0017】
直鎖アルキル基は、-C2n+1(nは1以上の整数)の一般式で表される。直鎖アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカメチル基等が例示される。
【0018】
分岐アルキル基は、直鎖アルキル基の少なくとも1つの水素がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキル基は、ジエチルペンチル基、トリメチルブチル基、トリメチルペンチル基、トリメチルヘキシル基等が例示される。
【0019】
シクロアルキル基は、単環シクロアルキル基、架橋環シクロアルキル基、縮合環シクロアルキル基等が例示される。
【0020】
単環シクロアルキル基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル基等が例示される。
【0021】
架橋環シクロアルキル基は、トリシクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が例示される。
【0022】
縮合環シクロアルキル基は、ビシクロデシル基等が例示される。
【0023】
水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートは、水酸基非含有直鎖アルキル(メタ)アクリレート、水酸基非含有分岐アルキル(メタ)アクリレート、水酸基非含有シクロアルキル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0024】
水酸基非含有直鎖アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等が例示される。
【0025】
水酸基非含有分岐アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が例示される。
【0026】
水酸基非含有シクロアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が例示される。
【0027】
これらの中でも、レベリング性、密着性に寄与することから、アルキル基の炭素数が1~20程度のアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。また、アルキル基の炭素数が異なる水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートを併用することによって、水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーのガラス転移温度等の物性が調節可能となる。
【0028】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの全構成単位100モル%に占める水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、95、90、85、80、75、70、65モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は65~95モル%が好ましい。
【0029】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの全構成単位100質量%に占める水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、94、90、85、80、75、70質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は70~94質量%が好ましい。
【0030】
(水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート)
水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートは、下記構造式
【化2】
(式中、Ra3は水素原子、又はメチル基であり、Ra4は直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、又はシクロアルキレン基である。)
で表わされる。水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0031】
水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートは、水酸基含有直鎖アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有分岐アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有シクロアルキル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0032】
水酸基含有直鎖アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が例示される。
【0033】
水酸基含有分岐アルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル等が例示される。
【0034】
水酸基含有シクロアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル等が例示される。
【0035】
水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートは、ポットライフ等の観点から、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1~4程度のものが好ましい。
【0036】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの全構成単位100モル%に占める水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、35、32、30、25、20、18、15、10、5モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は5~35モル%が好ましい。
【0037】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの全構成単位100質量%に占める水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、40、35、30、25、20、19、15、10、7、6質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は6~40質量%が好ましい。
【0038】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位と水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とのモル比(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmol/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmol)の上限及び下限は、19、17、15、13、11、10、9、7、5、3、2、1.9等が例示される。1つの実施形態において、上記モル比は、1.9~19が好ましい。
【0039】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位と水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位との質量比(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmass/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmass)の上限及び下限は、16、15、13、11、10、9、7、5、3、2、1.8等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、1.8~16が好ましい。
【0040】
(水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマー:その他のモノマーともいう)
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーを製造する際には、水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートのいずれにも該当しないモノマーを用いてもよい。その他のモノマーは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0041】
その他のモノマーは、(メタ)アクリル酸、α,β-不飽和カルボン酸、エポキシ基含有(メタ)アクリレート、スチレン類、α-オレフィン、不飽和アルコール、アリール(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びそれらの塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド及びそれらの塩、連鎖移動性モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド類、ビニルアミン、上記以外の単官能性モノマー、ビス(メタ)アクリルアミド、ジ(メタ)アクリルエステル、ジビニルエステル、上記以外の二官能性モノマー、三官能性モノマー、四官能性モノマー等が例示される。
【0042】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの全構成単位100モル%に占めるその他のモノマー由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、20、15、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0モル%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~20モル%が好ましい。
【0043】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの全構成単位100質量%に占めるその他のモノマー由来の構成単位の含有量の上限及び下限は、20、15、10、9、5、4、1、0.9、0.5、0.1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~20質量%が好ましい。
【0044】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位とのモル比(その他のモノマーmol/水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmol)の上限及び下限は、0.30、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0等が例示される。1つの実施形態において、上記モル比は、0~0.30が好ましい。
【0045】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー中の水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位との質量比(その他のモノマーmass/水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレートmass)の上限及び下限は、0.29、0.25、0.20、0.15、0.10、0.05、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~0.29が好ましい。
【0046】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー中の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位とのモル比(その他のモノマーmol/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmol)の上限及び下限は、4、3、2、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記モル比は、0~4が好ましい。
【0047】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー中の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位とその他のモノマー由来の構成単位との質量比(その他のモノマーmass/水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートmass)の上限及び下限は、3.3、3、2、1、0.7、0.5、0.3、0.1、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は、0~3.3が好ましい。
【0048】
<水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの物性等>
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーのガラス転移温度の上限及び下限は、110、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30℃等が例示される。1つの実施形態において、上記ガラス転移温度は30~110℃が好ましい。
【0049】
ガラス転移温度は市販の示差走査熱量測定器具(例えば製品名「DSC8230B」、理学電機(株)製)を用いて、適切な条件(昇温速度:10℃/分)の下測定される。
【0050】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの水酸基価(固形分換算)の上限及び下限は、150、145、140、135、130、125、120、115、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基価(固形分換算)は30~150mgKOH/gが好ましい。
【0051】
水酸基価はJIS K1557-1に準拠する方法により測定される。
【0052】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの水酸基当量の上限及び下限は、2.4、2、1.9、1.7、1.5、1.3、1.0、0.9、0.7meq/g等が例示される。1つの実施形態において、上記水酸基当量は0.7~2.4meq/gが好ましい。
【0053】
本開示において、水酸基当量は固形1g中に存在する水酸基の物質量である。
【0054】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの酸価の上限及び下限は、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記酸価は、特に硬化性を考慮すると、0~0.7mgKOH/gが好ましい。
【0055】
酸価はJIS K0070に準拠する方法により測定される。
【0056】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの重量平均分子量(Mw)の上限及び下限は、100000、90000、80000、70000、60000、50000、40000、30000、20000、10000、5000、4000、3000等が例示される。1つの実施形態において、上記重量平均分子量(Mw)は、3000~100000が好ましく、10000~80000がより好ましい。
【0057】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの数平均分子量(Mn)の上限及び下限は、100000、90000、80000、70000、60000、50000、40000、30000、20000、10000、5000、4000、3000等が例示される。1つの実施形態において、上記数平均分子量(Mn)は、3000~100000が好ましく、10000~80000がより好ましい。
【0058】
重量平均分子量及び数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により適切な溶媒下で測定したポリスチレン換算値として求められ得る。
【0059】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの分子量分布(Mw/Mn)の上限及び下限は、10、9、7.5、5、2.5、2、1.5等が例示される。1つの実施形態において、上記分子量分布(Mw/Mn)は、1.5~10が好ましい。
【0060】
水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーは、各種公知の方法で製造され得る。水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの製造方法は、水酸基非含有アルキル(メタ)アクリレート及び水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート、並びに必要に応じてその他のモノマーを、無溶媒下又は有機溶媒中で、通常は重合開始剤の存在下、80~180℃程度において、1~10時間程度共重合反応させる方法等が例示される。水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーを製造する際に用いられる有機溶媒及び重合開始剤は、後述のもの等が例示される。
【0061】
コーティング剤固形分100質量%中の水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの含有量の上限及び下限は、70、65、60、55、50、45、40質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は40~70質量%が好ましい。
【0062】
<ポリイソシアネート(B):(B)成分ともいう。>
本開示において、「ポリイソシアネート」とは、2個以上のイソシアネート基(-N=C=O)を有する化合物である。
【0063】
ポリイソシアネートは、直鎖脂肪族ポリイソシアネート、分岐脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート並びにこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、アロファネート体、アダクト体等が例示される。ポリイソシアネートは単独又は2種以上で使用され得る。
【0064】
直鎖脂肪族基は、直鎖アルキレン基等が例示される。直鎖アルキレン基は一般式:-(CH-(nは1以上の整数)で表される。直鎖アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカメチレン基等が例示される。
【0065】
直鎖脂肪族ポリイソシアネートは、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0066】
分岐脂肪族基は、分岐アルキレン基等が例示される。分岐アルキレン基は、直鎖アルキレン基の少なくとも1つの水素原子がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキレン基は、ジエチルペンチレン基、トリメチルブチレン基、トリメチルペンチレン基、トリメチルヘキシレン基(トリメチルヘキサメチレン基)等が例示される。
【0067】
分岐脂肪族ポリイソシアネートは、ジエチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルブチレンジイソシアネート、トリメチルペンチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示される。
【0068】
脂環族基は、シクロアルキレン基等が例示される。シクロアルキレン基は、単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基等が例示される。またシクロアルキレン基は、1個以上の水素原子が直鎖又は分岐アルキル基によって置換されていてもよい。
【0069】
本開示において、単環とは、炭素の共有結合により形成された内部に橋かけ構造を有しない環状構造を意味する。また、縮合環とは、2つ以上の単環が2個の原子を共有している(すなわち、それぞれの環の辺を互いに1つだけ共有(縮合)している)環状構造を意味する。架橋環とは、2つ以上の単環が3個以上の原子を共有している環状構造を意味する。
【0070】
単環シクロアルキレン基は、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロデシレン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基等が例示される。
【0071】
架橋環シクロアルキレン基は、トリシクロデシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基等が例示される。
【0072】
縮合環シクロアルキレン基は、ビシクロデシレン基等が例示される。
【0073】
脂環族ポリイソシアネートは、単環脂環族ポリイソシアネート、架橋環脂環族ポリイソシアネート、縮合環脂環族ポリイソシアネート等が例示される。
【0074】
単環脂環族ポリイソシアネートは、水添キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、シクロヘプチレンジイソシアネート、シクロデシレンジイソシアネート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示される。
【0075】
架橋環脂環族ポリイソシアネートは、トリシクロデシレンジイソシアネート、アダマンタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等が例示される。
【0076】
縮合環脂環族ポリイソシアネートは、ビシクロデシレンジイソシアネート等が例示される。
【0077】
芳香族基は、単環芳香族基、縮合環芳香族基等が例示される。また芳香族基は、1個以上の水素原子が直鎖又は分岐アルキル基によって置換されていてもよい。
【0078】
単環芳香族基は、フェニル基(フェニレン基)、トリル基(トリレン基)、メシチル基(メシチレン基)等が例示される。また縮合環芳香族基は、ナフチル基(ナフチレン基)等が例示される。
【0079】
芳香族ポリイソシアネートは、単環芳香族ポリイソシアネート、縮合環芳香族ポリイソシアネート等が例示される。
【0080】
単環芳香族ポリイソシアネートは、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等のジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネート等のテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が例示される。
【0081】
縮合環芳香族ポリイソシアネートは、1,5-ナフチレンジイソシアネート等が例示される。
【0082】
ポリイソシアネートのビウレット体は、
下記構造式:
【化3】
[式中、nは、1以上の整数であり、RbA~RbEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Rbα~Rbβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化4】
(nb1は、0以上の整数であり、Rb1~Rb5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R''はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRbα~Rbβ自身の基である。Rb4~Rb5、R''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RbD~RbE、Rbβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0083】
ポリイソシアネートのビウレット体は、デュラネート24A-100、デュラネート22A-75P、デュラネート21S-75E(以上旭化成(株)製)、デスモジュールN3200A(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体)(以上住友バイエルウレタン(株)製)等が例示される。
【0084】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体は、
下記構造式:
【化5】
[式中、nは、0以上の整数であり、RiA~RiEはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Riα~Riβはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化6】
(ni1は、0以上の整数であり、Ri1~Ri5はそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R'' はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRiα~Riβ自身の基である。Ri5、R''は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。RiD~RiE、Riβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0085】
ポリイソシアネートのイソシアヌレート体の市販品は、デュラネートTPA-100、デュラネートTKA-100、デュラネートMFA-75B、デュラネートMHG-80B(以上旭化成(株)製)、コロネートHXR(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)(以上東ソー(株)製)、タケネートD-127N(水添キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)(以上三井化学(株)製)、VESTANAT T1890/100(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体(以上エボニック・ジャパン(株)製)、タケネートD-204EA-1(トリレンジイソイアネートのイソシアヌレート体)(以上三井化学(株)製)、コロネート2037(以上東ソー(株)製)等が例示される。
【0086】
ポリイソシアネートのアロファネート体は、
下記構造式:
【化7】
[式中、nは、0以上の整数であり、Rは、アルキル基又はアリール基であり、R~Rはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、Rα~Rγはそれぞれ独立に、イソシアネート基又は
【化8】
(n1は、0以上の整数であり、R~Rはそれぞれ独立に、アルキレン基又はアリーレン基であり、R’~R’’’はそれぞれ独立に、イソシアネート基又はRα~Rγ自身の基である。R~R、R’~R’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)である。R~R、Rα~Rβは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]で表される化合物等が例示される。
【0087】
ポリイソシアネートのアロファネート体の市販品は、コロネート2793(東ソー(株)製)、タケネートD-178N(三井化学(株)製)等が例示される。
【0088】
ポリイソシアネートのアダクト体は、
下記構造式:
【化9】
[式中、nadは0以上の整数であり、RadA~RadEは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、Rad1~Rad2は、それぞれ独立に
【化10】
(式中、nad’は0以上の整数であり、
ad’~Rad’’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
ad’’’は、Rad1~Rad2自身の基であり、
ad’~Rad’’’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
であり、RadD~RadE、Rad2は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
で示されるトリメチロールプロパンとポリイソシアネートのアダクト体、
下記構造式
【化11】
[式中、nad1は0以上の整数であり、
adα~Radεは、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
adA~RadBは、それぞれ独立に
【化12】
(式中、nad1’は0以上の整数であり、
adδ’~Radε’は、それぞれ独立にアルキレン基又はアリーレン基であり、
adB’は、RadA~RadB自身の基であり、
adδ’~Radε’、RadB’は、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。)
adδ~Radεは、各構成単位ごとに基が異なっていてもよい。]
で示されるグリセリンとポリイソシアネートのアダクト体等が例示される。
【0089】
ポリイソシアネートのアダクト体は、デュラネートP301-75E(以上旭化成(株)製)、タケネートD110N、タケネートD160N(以上三井化学(株)製)、コロネートL(以上東ソー(株)製)等が例示される。
【0090】
ポリイソシアネートのNCO含有率(NCO%)の上限及び下限は、30、25、20、15、10%等が例示される。1つの実施形態において、上記NCO含有率(NCO%)は、10~30%が好ましい。
【0091】
ポリイソシアネートのイソシアネート基当量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1meq/g等が例示される。1つの実施形態において、上記イソシアネート基当量は1~10meq/gが好ましい。
【0092】
本開示において、イソシアネート基当量は、固形1g中に存在するイソシアネート基の物質量を意味する。
【0093】
ポリイソシアネートのイソシアネート基当量と水酸基含有ポリ(メタ)アクリルコポリマー(A)の水酸基当量との比(NCO/OH)の上限及び下限は、4、3、2、1.75、1.5、1.25、1、0.75、0.5、0.25、0.1、0.05等が例示される。1つの実施形態において、上記比(NCO/OH)は、0.05~4が好ましい。
【0094】
消費OH基量の上限及び下限は、150、125、100、75、50、25、10mgKOH/g等が例示される。1つの実施形態において、上記消費OH基量は10~150mgKOH/gが好ましい。
【0095】
本開示において、消費OH基量は、主剤中のOH基をどれだけ消費するNCOを加えたかを示す指標である。消費OH基量は下記式
消費OH基量=イソシアネート基当量×56.1
により算出される。
【0096】
コーティング剤固形分100質量%中のポリイソシアネートの含有量の上限及び下限は、40、35、30、25、20質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は20~40質量%が好ましい。
【0097】
<体積平均粒子径が1.5~6.5μmであるシリカ粒子、及び窒素原子を含む有機粒子からなる群から選択される1つ以上の粒子(C):(C)成分ともいう。>
(C)成分は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0098】
(体積平均粒子径が1.5~6.5μmであるシリカ粒子:(C1)成分ともいう)
(C1)成分は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状のものを用いることができる。(C1)成分は、単独又は2種以上で使用され得る。1つの実施形態において、(C1)成分は、疎水性シリカ粒子が好ましく、シリコーン変性疎水性シリカ粒子がより好ましい。
【0099】
(C1)成分のDBA値の上限及び下限は、150、125、100、90、75、50、40、25、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0mmol/kg等が例示される。1つの実施形態において、上記DBA値は、0~150mmol/kgが好ましい。
【0100】
DBA値は、1kgのシリカ粒子の表面に存在している水酸基に吸着されるジ-n-ブチルアミン(DBA)のmmol数を意味する。DBA値が大きい程シリカ粒子表面に水酸基が存在していることを意味する。
【0101】
1つの実施形態において、安定性の観点から、DBA値0~4050mmol/kgmmol/kgのシリカ粒子と、DBA値50~15050mmol/kgmmol/kgのシリカ粒子とを併用することが好ましい。
【0102】
(C1)成分の市販品は、Nipsil SS-50A、SS-50B、SS-50C、SS-50F、SS-50、SS-178B(以上東ソー・シリカ(株)製)、サイロホービック 100、200、702、704、507、505(富士シリシア化学(株)製)等が例示される。
【0103】
(窒素原子を含む有機粒子:(C2)成分ともいう)
(C2)成分は、メラミン粒子、ポリメチルウレア粒子、アクリロニトリル粒子等が例示される。(C2)成分は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0104】
メラミン粒子の市販品は、エポスターMS、エポスターM30、エポスターM05(以上、(株)日本触媒製)等が例示される。
【0105】
ポリメチルウレア粒子の市販品は、Deuteron MK-F6(Deuteron社製)等が例示される。
【0106】
アクリロニトリル粒子の市販品は、タフチックASF(日本エクスラン工業(株)製)等が例示される。
【0107】
本開示において、体積平均粒子径は、レーザー散乱法を用いて測定された体積基準の粒度分布について、小粒径側から積算したときにおいて、体積基準の粒径分布が50%となる粒径である。
【0108】
体積基準の粒度分布は下記の手順により測定され得る。
(1)測定溶液の調製
酢酸エチル(純度99質量%以上:例えば、和光純薬製)に、測定試料濃度0.1質量%となるように測定試料(粒子)を添加して溶液を調製する。次いで、かかる溶液に対し高速分散機(製品名「ホモディスパー」、プライミクス製)を用いて4000rpm、5分の条件にて混合分散させることにより、測定溶液を調製する。
(2)体積基準の粒度分布の測定
体積基準の粒度分布はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックNT3300」(日機装社製)を使用して測定され得る。なお、測定条件は以下のものとする。
測定回数 :3
測定温度 :25±5℃
測定時間 :30秒
粒径区分 :標準
計算モード:MT3000II
測定上限 :2000μm
測定下限 :0.021μm
残分比 :0.00%
通過分比 :0.00%
残分比設定:無効
粒子透過性:透過
粒子形状 :非球形
測定溶媒(酢酸エチル)の屈折率:1.372
なお、測定試料(粒子)の屈折率は、文献値(「A GUIDE FOR ENTERING MICROTRAC ”RUN INFORMATION”(F3)DATA」、Leeds&Northrup社作成)等を参照しうる。
【0109】
上記(C)成分の体積平均粒子径の上限及び下限は、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2.2、2、1.5μm等が例示される。1つの実施形態において、上記体積平均粒子径は1.5~6.5μmが好ましい。
【0110】
上記(C1)成分の体積平均粒子径の上限及び下限は、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2.2、2、1.5μm等が例示される。1つの実施形態において、上記体積平均粒子径は1.5~6.5μmが好ましい。
【0111】
上記(C2)成分の体積平均粒子径の上限及び下限は、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2.2、2、1.5μm等が例示される。1つの実施形態において、上記体積平均粒子径は1.5~6.5μmが好ましい。
【0112】
コーティング剤固形分100質量%中の(C)成分の含有量の上限及び下限は、40、35、30、25、20、15、10、9、5、2、1質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は1~40質量%が好ましい。
【0113】
コーティング剤固形分100質量%中の(C1)成分の含有量の上限及び下限は、40、35、30、25、20、15、10、9、5、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~30質量%が好ましい。
【0114】
コーティング剤固形分100質量%中の(C2)成分の含有量の上限及び下限は、40、35、30、25、20、15、10、9、5、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~30質量%が好ましい。
【0115】
<水酸基含有有機変性シリコーン:(D)成分ともいう。>
本開示において、「水酸基含有有機変性シリコーン」は、例えば、水酸基含有有機基を有するシリコーンを意味する。水酸基含有有機変性シリコーンは、単独又は2種以上で使用され得る。水酸基を含有することにより、ポリイソシアネートと反応し硬化物中に固定されるため、軽剥離化が可能になる。
【0116】
水酸基含有有機変性シリコーンは、水酸基含有アクリルポリマー変性シリコーン、水酸基含有ポリエステル変性シリコーン、水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン、水酸基含有カルビノール変性シリコーン等が例示される。なお、上記変性部位は、シリコーン鎖の片末端、両末端、及び側鎖のいずれかに導入されていればよい。
【0117】
水酸基含有アクリルポリマー変性シリコーンの市販品は、ZX-028-G((株)T&K TOKA製)、BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン(株)製)、サイマックUS-270(東亞合成(株)製)等が例示される。
【0118】
水酸基含有ポリエーテル変性シリコーン又は水酸基含有ポリエステル変性シリコーンの市販品は、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-SILCLEAN3720(ビックケミー・ジャパン(株)製)、X-22-4952、KF-6123(信越化学工業(株)製)等が例示される。
【0119】
水酸基含有カルビノール変性シリコーンの市販品は、X-22-4039、X-22-4015、X-22-4952、X-22-4272、X-22-170BX、X-22-170DX、KF-6000、KF-6001、KF-6002、KF-6003、KF-6123、X-22-176F(信越化学工業(株)製)、サイラプレーンFM-4411、サイラプレーンFM-4421、サイラプレーンFM-4425、サイラプレーンFM-0411、サイラプレーンFM-0421、サイラプレーンFM-DA11、サイラプレーンFM-DA21、サイラプレーンFM-DA26(JNC(株)製)等が例示される。
【0120】
コーティング剤固形分100質量%中の(D)成分の含有量の上限及び下限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~10質量%が好ましい。
【0121】
<硬化触媒:(E)成分ともいう。>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は、硬化触媒を含み得る。硬化触媒は単独又は2種以上で使用され得る。
【0122】
硬化触媒は、有機金属触媒、有機アミン触媒等が例示される。
【0123】
有機金属触媒は、有機典型金属触媒、有機遷移金属触媒等が例示される。
【0124】
有機典型金属触媒は、有機錫触媒、有機ビスマス触媒等が例示される。
【0125】
有機錫触媒は、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等が例示される。
【0126】
有機ビスマス触媒は、オクチル酸ビスマス等が例示される。
【0127】
有機遷移金属触媒は、有機チタン触媒、有機ジルコニウム触媒、有機鉄触媒等が例示される。
【0128】
有機チタン触媒は、チタンエチルアセトアセテート等が例示される。
【0129】
有機ジルコニウム触媒は、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が例示される。
【0130】
有機鉄触媒は、鉄アセチルアセトネート等が例示される。
【0131】
有機アミン触媒は、ジアザビシクロオクタン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン及びトリエチレンジアミン等が例示される。
【0132】
コーティング剤固形分100質量%中の(E)成分の含有量の上限及び下限は、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.1、0質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は0~1質量%が好ましい。
【0133】
<有機溶媒:(F)成分ともいう。>
1つの実施形態において、上記コーティング剤は、有機溶媒を含み得る。有機溶媒は単独又は2種以上で使用され得る。
【0134】
有機溶媒は、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等のアルコール溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート及びセロソルブアセテート等のエステル溶媒;ソルベッソ#100及びソルベッソ#150(いずれも商品名。エクソンモービル社製。)等の石油系溶媒;クロロホルム等のハロアルカン溶媒;ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒等が例示される。
【0135】
コーティング剤100質量%中の(F)成分の含有量の上限及び下限は、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35質量%等が例示される。1つの実施形態において、上記含有量は35~90質量%が好ましい。
【0136】
<各成分の相対比>
コーティング剤に含まれる(B)成分と(A)成分との質量比[(B)成分の質量/(A)成分の質量]の上限及び下限は、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.28等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は0.28~1が好ましい。
【0137】
コーティング剤に含まれる(C)成分と(A)成分との質量比[(C)成分の質量/(A)成分の質量]の上限及び下限は、1、0.9、0.8、0.75、0.5、0.25、0.1、0.05,0.01等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は0.01~1が好ましい。
【0138】
コーティング剤に含まれる(D)成分と(A)成分との質量比[(D)成分の質量/(A)成分の質量]の上限及び下限は、0.25、0.2、0.1、0.05、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は0~0.25が好ましい。
【0139】
コーティング剤に含まれる(C)成分と(B)成分との質量比[(C)成分の質量/(B)成分の質量]の上限及び下限は、2、1.5、1、0.5、0.1、0.05、0.025等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は0.025~2が好ましい。
【0140】
コーティング剤に含まれる(D)成分と(B)成分との質量比[(D)成分の質量/(B)成分の質量]の上限及び下限は、0.5、0.25、0.1、0.05、0等が例示される。1つの実施形態において、上記質量比は0~0.5が好ましい。
【0141】
コーティング剤に含まれる(D)成分と(C)成分との質量比[(D)成分の質量/(C)成分の質量]の上限及び下限は、10、9、7、5、3、1、0等が例示される。
1つの実施形態において、上記質量比は0~10が好ましい。
【0142】
<添加剤>
上記コーティング剤には、上記(A)~(F)成分のいずれにも該当しない剤を添加剤として含み得る。
【0143】
添加剤は、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、表面調整剤、顔料、帯電防止剤、金属酸化物微粒子分散体等が例示される。
【0144】
1つの実施形態において、添加剤の含有量は、組成物固形分100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。また、(A)~(F)成分のいずれか100質量部に対して、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が例示される。
【0145】
上記コーティング剤は、(A)~(C)成分、並びに必要に応じて(D)~(F)成分及び添加剤が、各種公知の手段により分散・混合されることにより製造され得る。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。また、分散・混合手段としては、各種公知の装置(乳化分散機、超音波分散装置等)を用いることができる。
【0146】
上記コーティング剤は、熱硬化性コーティング剤、マットコーティング剤、熱硬化性マットコーティング剤として使用され得る。
【0147】
[硬化物]
本開示は、上記コーティング剤の硬化物を提供する。
【0148】
1つの実施形態において、上記硬化物は熱硬化により得られる。熱硬化は、コーティング剤を塗布した後に乾燥させる方式で行われうる。条件は後述のもの等が例示される。
【0149】
[フィルム]
本開示は、上記硬化物を含む、フィルムを提供する。
【0150】
基材は各種公知のものが採用される。基材はポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム(ポリメチルメタクリレートフィルム等)、ポリスチレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、エポキシ樹脂フィルム、メラミン樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ABSフィルム、ASフィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、環状オレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)フィルム等が例示される。
【0151】
基材の厚みは特に限定されないが、20~300μm程度が好ましい。また、硬化物層の厚みも特に限定されないが、1~10μm程度が好ましい。
【0152】
上記フィルムは各種公知の方法で製造される。1つの実施形態において、フィルムの製造方法は、上記コーティング剤を基材の少なくとも片面に塗工する工程(塗工工程)、熱硬化して硬化物層を形成する工程(熱硬化工程)を含む。
【0153】
(塗工工程)
塗工方法は、バーコーター塗工、ワイヤーバー塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が例示される。
【0154】
塗工量は特に限定されない。塗工量は、乾燥後の質量が1~10g/m程度が好ましく、2~8g/m程度がより好ましい。
【0155】
(熱硬化工程)
乾燥方法は、循風乾燥機等による乾燥が例示される。乾燥条件は100℃で1分静置等が例示される。
【0156】
フィルムを製造する際、必要に応じて乾燥の後にエージング処理が行われる。一例として、40℃で72時間のエージング処理等が例示される。
【実施例
【0157】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明及び以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、各実施例及び比較例において、特に説明がない限り、部、%等の数値は質量基準である。
【0158】
<(A)成分>
製造例1:水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの製造
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、メタクリル酸メチル275.6部(モノマー成分中79.9質量%)、アクリル酸n-ブチル10.3部(モノマー成分中3質量%)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル58.6部(モノマー成分中17質量%)、及びスチレン0.4部(モノマー成分中0.1質量%)並びにメチルエチルケトン125部及び酢酸エチル525部を仕込み、反応系を80℃に設定した。次いで、2,2’-アゾビス(2,メチルバレロニトリル)2.1部を仕込み、80℃付近で5時間保温した。次いで、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルブチロニトリル)5.2部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後、反応系を室温まで冷却することにより、水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーの溶液(不揮発分35%)を得た。
【0159】
製造例1以外の水酸基含有(メタ)アクリルコポリマーは、モノマーの使用量を下記表のように変更したことを除き、製造例1と同様にして製造した。
【表1】
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸n-ブチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
BMA:メタクリル酸n-ブチル
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
St:スチレン
【0160】
実施例1:コーティング剤の製造
製造例1の水酸基含有(メタ)アクリルコポリマー100部、シリカ粒子(製品名「Nipsil SS-50F」、東ソー・シリカ(株)製、以下「SS50F」ともいう)5部を仕込み、高速分散機(製品名「ホモディスパー」、プライミクス製)を用いて4000rpm、15分の条件にて混合分散することにより、粒子分散液を得た。さらに、キシレンジイソシアネートのアダクト体(製品名「タケネートD-110N」、三井化学(株)製)22.4部、メチルエチルケトン(以下、MEK)93.8部を混合することによって、固形分濃度25%のコーティング剤を製造した。
【0161】
実施例1以外の実施例、及び比較例は、下記表のように変更した以外は、実施例1と同様にして製造した。
【0162】
製造したコーティング剤それぞれについて下記試験を行い評価した。
【0163】
(安定性)
○:25℃で4ヵ月間コーティング剤を放置した後も粒子の沈降、分離は見られない。
△:25℃で1ヵ月間コーティング剤を放置した後では粒子の沈降、分離は見られない。しかし、2ヵ月以降コーティング剤を放置すると経時での沈降が見られる。
×:25℃で1ヵ月間コーティング剤を放置した後には粒子の沈降、分離が見られる。
【0164】
(低温硬化性)
PETフィルムにバーコーターにて3μmとなるように塗工した後に、60℃で1分間の乾燥を実施した。その後、8kg/cmの荷重をかけつつ40℃で72時間のエージングを実施し、下記基準にて評価した。
○:ブロッキング、及びエージング前後において60°グロス値の変化が無い。
△:ブロッキングは見られないが、エージング前後において60°グロス値の変化が見られる。
×:ブロッキングが見られる。
【0165】
(基材密着性)
PETフィルムにバーコーターにて3μmとなるように塗工した後に、60℃×1分乾燥を実施し、その後40℃で72時間エージングした。
密着性は、その後碁盤目テープ剥離試験を行い下記基準にて評価した。
○:基材からの剥がれが見られない。
×:基材からの剥がれがある。
【0166】
(耐溶剤性)
メチルエチルケトンを含侵させた綿棒を用いてラビングを10往復実施し、下記基準にて評価した。
○:素地が見えない
×:素地が見える
【0167】
(60°グロス)
GlossMeter VG7000(日本電色工業(株)製)にて測定した。
【0168】
【表2】
【表3】
【0169】
<(B)成分>
XDI:キシレンジイソシアネート
TDI:トルエンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
XDIアダクト:製品名「タケネートD-110N」、三井化学(株)製
TDIヌレート:製品名「コロネート2037」、東ソー(株)製
HDIヌレート:製品名「コロネートHX」、東ソー(株)製

メラミン1:製品名「サイメル303LF」、オルネクス製

<(C)成分>
SS50F:製品名「Nipsil SS-50F」、東ソー・シリカ(株)製、粒子径2.0μm、DBA値:1450mmol/kgmmol/kg
SS50C:製品名「Nipsil SS-50C」、東ソー・シリカ(株)製、粒子径6.0μm、DBA値:950mmol/kgmmol/kg
SS50B:製品名「Nipsil SS-50B」、東ソー・シリカ(株)製、粒子径4.5μm、DBA値:1650mmol/kgmmol/kg
S100:製品名「サイロホービック100」、富士シリシア化学(株)製、粒子径2.2μm、DBA値:5050mmol/kgmmol/kg
SS178B:製品名「Nipsil SS-178B」、東ソー・シリカ(株)製、粒子径6.7μm、DBA値:1250mmol/kgmmol/kg

エポスターM30:製品名「エポスターM30」、(株)日本触媒製、メラミン樹脂粒子、粒子径4.0μm

MX300:製品名「MX-300」、綜研化学(株)製、架橋アクリル単分散粒子、粒子径3.0μm
SX-350H:製品名「SX-350H」、綜研化学(株)製、架橋スチレン樹脂粒子、粒子径3.5μm

<(D)成分>BYK-SILCLEAN3700(ビックケミー・ジャパン(株)製)BYK-SILCLEAN3700:製品名「BYK-SILCLEAN3700」、ビックケミー・ジャパン(株)製、水酸基含有アクリルポリマー変性シリコーンBYK-377:製品名「BYK-377」、ビックケミー・ジャパン(株)製、水酸基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、