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特許7047852ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリイミドフィルム、ワニス、及び基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリイミドフィルム、ワニス、及び基板
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/12 20060101AFI20220329BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220329BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220329BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C08G73/12
B32B17/10
B32B27/34
H05K1/03 610P
H05K1/03 670
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019562176
(86)(22)【出願日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2018048191
(87)【国際公開番号】W WO2019131894
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017254392
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】岡 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小濱 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】中川 美晴
(72)【発明者】
【氏名】久野 信治
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/179727(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体であって、
下記一般式(1)のAが、下記式(A-1)で表される4価の基を含み、且つ、下記一般式(1)のBが、下記式(B-1)で表される2価の基を含み、
さらに、下記一般式(1)のB が、下記式(2)で表される構造を含む2価の基を含および任意成分として下記一般式(1)のAが、下記式(2)で表される構造を含む4価の基、下記式(3)で表される4価の基および/または下記式(4)で表される4価の基を含み、
一般式(1)のA100モル%中の式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計の含有比率と、一般式(1)のB100モル%中の式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計の含有比率の和が、120モル%以上であり、
ただし、式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の比率が、80モル%以下であり、且つ、
式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む2価の基の比率が、20モル%以上80モル%以下であることを特徴とするポリイミド前駆体。
【化1】
(式中、Aは芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、Bは芳香族環または脂環構造を有する2価の基であり、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数3~9のアルキルシリル基である。ただし、各繰り返し単位に含まれるAおよびBは、同一であっても異なっていてもよい。)
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】

【化6】
【請求項2】
下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含むポリイミドであって、
下記一般式(5)のAが、下記式(A-1)で表される4価の基を含み、且つ、下記一般式(5)のBが、下記式(B-1)で表される2価の基を含み、
さらに、下記一般式(5)のB が、下記式(2)で表される構造を含む2価の基を含および任意成分として下記一般式(5)のAが、下記式(2)で表される構造を含む4価の基、下記式(3)で表される4価の基および/または下記式(4)で表される4価の基を含み、
一般式(5)のA100モル%中の式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計の含有比率と、一般式(5)のB100モル%中の式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計の含有比率の和が、120モル%以上であり、
ただし、式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の比率が、80モル%以下であり、且つ、
式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む2価の基の比率が、20モル%以上80モル%以下であることを特徴とするポリイミド。
【化7】
(式中、Aは芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、Bは芳香族環または脂環構造を有する2価の基である。ただし、各繰り返し単位に含まれるAおよびBは、同一であっても異なっていてもよい。)
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【請求項3】
請求項1に記載のポリイミド前駆体から得られるポリイミド。
【請求項4】
請求項1に記載のポリイミド前駆体、または請求項2に記載のポリイミドを含むワニス。
【請求項5】
請求項1に記載のポリイミド前駆体、または請求項2に記載のポリイミドを含むワニスを用いて得られたポリイミドフィルム。
【請求項6】
請求項2または3に記載のポリイミドを含むフィルム、または請求項5に記載のポリイミドフィルムがガラス基材上に形成されていることを特徴とする積層体。
【請求項7】
請求項2または3に記載のポリイミド、または請求項5に記載のポリイミドフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ用、タッチパネル用、または太陽電池用の基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い透明性と、低い線熱膨張係数を有し、厚み方向位相差(レタデーション)も小さいポリイミド、及び、その前駆体に関する。また、本発明は、ポリイミドフィルム、ポリイミド前駆体またはポリイミドを含むワニス、及び基板にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会の到来に伴い、光通信分野の光ファイバーや光導波路等、表示装置分野の液晶配向膜やカラーフィルター用保護膜等の光学材料の開発が進んでいる。特に表示装置分野で、ガラス基板の代替として軽量でフレキシブル性に優れたプラスチック基板の検討が行なわれたり、曲げたり丸めたりすることが可能なディスプレイの開発が盛んに行われている。このため、その様な用途に用いることができる、より高性能の光学材料が求められている。
【0003】
芳香族ポリイミドは、分子内共役や電荷移動錯体の形成により、本質的に黄褐色に着色する。このため着色を抑制する手段として、例えば分子内へのフッ素原子の導入、主鎖への屈曲性の付与、側鎖として嵩高い基の導入などによって、分子内共役や電荷移動錯体の形成を阻害して、透明性を発現させる方法が提案されている。
【0004】
また、原理的に電荷移動錯体を形成しない半脂環式または全脂環式ポリイミドを用いることにより透明性を発現させる方法も提案されている。特に、テトラカルボン酸成分として芳香族テトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分として脂環式ジアミンを用いた、透明性が高い半脂環式ポリイミド、及びテトラカルボン酸成分として脂環式テトラカルボン酸二無水物、ジアミン成分として芳香族ジアミンを用いた、透明性が高い半脂環式ポリイミドが多く提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、テトラカルボン酸成分として、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(略称:CpODA)を用い、ジアミン成分として、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(略称:TFMB)、または、TFMBと、その他の芳香族ジアミン(例えば、TFMB:4,4’-ジアミノベンズアニリド:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン=5:4:1(モル比))を用いたポリイミドが開示されている。特許文献2には、テトラカルボン酸成分として、特定の立体異性体の比率を有するCpODAを用い、ジアミン成分として、TFMBと、その他の芳香族ジアミン(例えば、TFMB:4,4’-ジアミノベンズアニリド=5:5(モル比)等)を用いたポリイミドが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位Aと、ジアミン化合物に由来する構成単位Bとを含むポリイミド樹脂であって、構成単位Aが、CpODAに由来する構成単位(A-1)、ピロメリット酸二無水物に由来する構成単位(A-2)、及び1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位(A-3)の少なくともいずれか1種を含み、構成単位Bが、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンに由来する構成単位(B-1)を含み、構成単位Bにおける構成単位(B-1)の比率が、60モル%以上であるポリイミド樹脂が開示されている。より具体的には、特許文献3の実施例4では、CpODA(A-1)と9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(B-1)とからポリイミド樹脂が製造されている。特許文献3の実施例5では、CpODA(A-1)と1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(A-3)と9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(B-1)とからポリイミド樹脂((A-1):(A-3)=1:1(モル比))が製造されている。特許文献3の実施例6では、CpODA(A-1)と9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(B-1)と2,2’-ジメチルベンジジン(B-2)とからポリイミド樹脂((B-1):(B-2)=4:1(モル比))が製造されている。
【0007】
さらに、特許文献4の実施例1、及び比較例1には、CpODAと4,4’-ジアミノ-2,2’-ジメチルビフェニル及び9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(モル比:1/1)とから得られたポリイミド、及び、CpODAと9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンとから得られたポリイミドが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/179727号
【文献】国際公開第2014/046064号
【文献】国際公開第2017/191822号
【文献】特開2017-133027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
用途によっては、例えば、ディスプレイ用途などにおいては、高い透明性と、低い線熱膨張係数を有することに加え、厚み方向位相差(レタデーション)が小さいポリイミド、及びポリイミドフィルムが求められている。厚み方向位相差が大きいフィルムを光が透過すると、透過光の色が正しく表示されない、色がにじむ、視野角が狭くなるといった問題が起こることがある。そのため、特にディスプレイ用途などにおいては、厚み方向位相差を低下させることが望まれている。
【0010】
本発明は、高い透明性と、低い線熱膨張係数を有し、厚み方向位相差(レタデーション)も小さいポリイミド、及び、その前駆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の各項に関する。
1. 下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体であって、
下記一般式(1)のAが、下記式(A-1)で表される4価の基を含み、且つ、下記一般式(1)のBが、下記式(B-1)で表される2価の基を含み、
さらに、下記一般式(1)のAおよび/またはBが、下記式(2)で表される構造を含む4価または2価の基を含むか、または、下記一般式(1)のAが、下記式(3)で表される4価の基および/または下記式(4)で表される4価の基を含み、
一般式(1)のA100モル%中の式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計の含有比率と、一般式(1)のB100モル%中の式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計の含有比率の和が、120モル%以上であり、
ただし、式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の比率が、80モル%以下であり、且つ、
式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む2価の基の比率が、80モル%以下であることを特徴とするポリイミド前駆体。
【0012】
【化1】
(式中、Aは芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、Bは芳香族環または脂環構造を有する2価の基であり、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数3~9のアルキルシリル基である。ただし、各繰り返し単位に含まれるAおよびBは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
2. 下記一般式(5)で表される繰り返し単位を含むポリイミドであって、
下記一般式(5)のAが、下記式(A-1)で表される4価の基を含み、且つ、下記一般式(5)のBが、下記式(B-1)で表される2価の基を含み、
さらに、下記一般式(5)のAおよび/またはBが、下記式(2)で表される構造を含む4価または2価の基を含むか、または、下記一般式(5)のAが、下記式(3)で表される4価の基および/または下記式(4)で表される4価の基を含み、
一般式(5)のA100モル%中の式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計の含有比率と、一般式(5)のB100モル%中の式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計の含有比率の和が、120モル%以上であり、
ただし、式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の比率が、80モル%以下であり、且つ、
式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む2価の基の比率が、80モル%以下であることを特徴とするポリイミド。
【0019】
【化7】
(式中、Aは芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、Bは芳香族環または脂環構造を有する2価の基である。ただし、各繰り返し単位に含まれるAおよびBは、同一であっても異なっていてもよい。)
【0020】
【化8】
【0021】
【化9】
【0022】
【化10】
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
3. 前記項1に記載のポリイミド前駆体から得られるポリイミド。
4. 前記項1に記載のポリイミド前駆体、または前記項2に記載のポリイミドを含むワニス。
5. 前記項1に記載のポリイミド前駆体、または前記項2に記載のポリイミドを含むワニスを用いて得られたポリイミドフィルム。
6. 前記項2または3に記載のポリイミドを含むフィルム、または前記項5に記載のポリイミドフィルムがガラス基材上に形成されていることを特徴とする積層体。
7. 前記項2または3に記載のポリイミド、または前記項5に記載のポリイミドフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ用、タッチパネル用、または太陽電池用の基板。
【発明の効果】
【0026】
本発明によって、高い透明性と、低い線熱膨張係数を有し、厚み方向位相差(レタデーション)も小さいポリイミド、及び、その前駆体を提供することができる。
【0027】
本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド、及び本発明のポリイミドは、透明性が高く、低い線熱膨張係数を有し、厚み方向位相差(レタデーション)も小さいため、ディスプレイ用途などの基板を形成するために好適に用いることができる。また、本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド、及び本発明のポリイミドは、タッチパネル用、太陽電池用の基板を形成するためにも好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のポリイミド前駆体は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体である。前記一般式(1)で表される繰り返し単位の合計含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、特に100モル%であることが好ましい。一般式(1)中のAは芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、脂環構造を有する4価の基であることが好ましい。一般式(1)中のBは芳香族環または脂環構造を有する2価の基であり、芳香族環を有する2価の基であることが好ましい。
【0029】
そして、本発明のポリイミド前駆体は、前記一般式(1)中のAが、前記式(A-1)で表される4価の基を含み、且つ、前記一般式(1)中のBが、前記式(B-1)で表される2価の基を含み、さらに、前記一般式(1)のAおよび/またはBが、前記式(2)で表される構造を含む4価または2価の基を含むか、または、前記一般式(1)のAが、前記式(3)で表される4価の基および/または前記式(4)で表される4価の基を含む。Aおよび/またはBが、前記式(2)で表される構造を含む4価または2価の基を含み、且つ、Aが、前記式(3)で表される4価の基および/または前記式(4)で表される4価の基を含むものであってもよい。
【0030】
さらに、それらの含有量は、一般式(1)のA100モル%中の式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計の含有比率と、一般式(1)のB100モル%中の式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計の含有比率の和が、120モル%以上であり、好ましくは160モル%以上、より好ましくは180モル%以上であることが好ましい。ただし、一般式(1)のAにおける式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の比率は80モル%以下であり、且つ、一般式(1)のBにおける式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む2価の基の比率は80モル%以下である。また、この2つの比率の和は、125モル%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明のポリイミドは、前記一般式(5)で表される繰り返し単位を含むポリイミドである。前記一般式(5)で表される繰り返し単位の合計含有量は、全繰り返し単位に対して、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、特に100モル%であることが好ましい。一般式(5)中のAは芳香族環または脂環構造を有する4価の基であり、脂環構造を有する4価の基であることが好ましい。一般式(5)中のBは芳香族環または脂環構造を有する2価の基であり、芳香族環を有する2価の基であることが好ましい。
【0032】
そして、本発明のポリイミドは、前記一般式(5)中のAが、前記式(A-1)で表される4価の基を含み、且つ、前記一般式(5)中のBが、前記式(B-1)で表される2価の基を含み、さらに、前記一般式(5)のAおよび/またはBが、前記式(2)で表される構造を含む4価または2価の基を含むか、または、前記一般式(5)のAが、前記式(3)で表される4価の基および/または前記式(4)で表される4価の基を含む。Aおよび/またはBが、前記式(2)で表される構造を含む4価または2価の基を含み、且つ、Aが、前記式(3)で表される4価の基および/または前記式(4)で表される4価の基を含むものであってもよい。
【0033】
さらに、それらの含有量は、一般式(5)のA100モル%中の式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計の含有比率と、一般式(5)のB100モル%中の式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計の含有比率の和が、120モル%以上であり、好ましくは160モル%以上、より好ましくは180モル%以上であることが好ましい。ただし、一般式(5)のAにおける式(A-1)で表される4価の基、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む4価の基、式(3)で表される4価の基、および、式(4)で表される4価の基の比率は80モル%以下であり、且つ、一般式(5)のBにおける式(B-1)で表される2価の基、および、式(2)で表される構造を含む2価の基の合計に対する、式(2)で表される構造を含む2価の基の比率は80モル%以下である。また、この2つの比率の和は、125モル%以下であることが好ましい。
【0034】
本明細書において、適宜、以下の略称を使用する。
【0035】
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物
CpODA等:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸類等(テトラカルボン酸類等とは、テトラカルボン酸と、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等のテトラカルボン酸誘導体を表す)
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
前記式(A-1)で表される4価の基を与えるテトラカルボン酸成分は、CpODA等であり、前記式(B-1)で表される2価の基を与えるジアミン成分は、TFMBである。CpODA等とTFMBとから得られるポリイミド、すなわち、Aが前記式(A-1)で表される4価の基であり、Bが前記式(B-1)で表される2価の基である前記一般式(1)の繰り返し単位からなるポリイミド前駆体から得られるポリイミド、及び、Aが前記式(A-1)で表される4価の基であり、Bが前記式(B-1)で表される2価の基である前記一般式(5)の繰り返し単位からなるポリイミドは、透明性が高く、線熱膨張係数も低いが、厚み方向位相差(レタデーション)が比較的大きい傾向がある。ポリイミドフィルムをディスプレイ用途などに用いる場合、上記のように、厚み方向位相差が大きいと、透過光の色が正しく表示されない、色がにじむ、視野角が狭くなるといった問題が起こることがある。これに対して、上記の含有量(比率)で、テトラカルボン酸成分に由来する構造である一般式(1)のA、一般式(5)のA、および/または、ジアミン成分に由来する構造である一般式(1)のB、一般式(5)のBに前記式(2)で表される構造を含む基を導入するか、または、テトラカルボン酸成分に由来する構造である一般式(1)のA、一般式(5)のAに前記式(3)で表される4価の基および/または前記式(4)で表される4価の基を導入することで、高い透明性と、低い線熱膨張係数を維持しながら、厚み方向位相差(レタデーション)を低下させることができる。その結果として、高い透明性と、低い線熱膨張係数を有し、厚み方向位相差(レタデーション)も小さいポリイミドを得ることができる。
【0036】
ここで、前記式(2)で表される構造は、隣接する芳香族環がさらに直接結合、エーテル結合等で連結されていてもよく、例えば、下記式(2’)で表される構造であってもよい。
【0037】
【化13】
(式中、Rは直接結合、またはエーテル結合(-O-)である。)
【0038】
また、前記式(2)で表される構造に含まれる芳香族環は、メチル基等のアルキル基、トリフルオロメチル基等のフッ素化アルキル基、ハロゲノ基等の置換基で置換されていてもよいが、通常、置換基を有さないことが好ましい。なお、置換位置は特に限定されない。
【0039】
前記式(2)で表される構造を含む4価の基を与えるテトラカルボン酸成分は、前記式(2)で表される構造を含むテトラカルボン酸類等であり、例えば、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や、その他の誘導体(テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の、テトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸誘導体)等が挙げられる。前記式(2)で表される構造を含む2価の基を与えるジアミン成分は、前記式(2)で表される構造を含むジアミンであり、例えば、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4’-(スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]-3’,6’-ジイルビス(オキシ))ジアニリン等が挙げられる。
【0040】
また、前記式(3)で表される4価の基を与えるテトラカルボン酸成分は、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸類等である。
【0041】
前記式(4)で表される4価の基を与えるテトラカルボン酸成分は、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類等である。
【0042】
換言すれば、本発明のポリイミド前駆体、及び本発明のポリイミドは、
(a-1)CpODA等と、
(a-2)前記式(2)で表される構造を含むテトラカルボン酸類等、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸類等、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類等のいずれか1種以上と
を含むテトラカルボン酸成分と、
(b)TFMBを含むジアミン成分、または、TFMBと、前記式(2)で表される構造を含むジアミンとを含むジアミン成分と
から得られるか、
あるいは、
(a)CpODA等を含むテトラカルボン酸成分と、
(b)TFMBと、前記式(2)で表される構造を含むジアミンとを含むジアミン成分と
から得られる。
【0043】
ここで用いるテトラカルボン酸成分のCpODA等としては、6種類の立体異性体のうち、trans-endo-endo-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸類等(trans-endo-endo体)および/またはcis-endo-endo-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸類等(cis-endo-endo体)を含むものが好ましいことがある。ある実施態様においては、CpODA等中のtrans-endo-endo体および/またはcis-endo-endo体の割合は、合計で、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは99モル%以上であることが好ましい。
【0044】
ここで用いるテトラカルボン酸成分の1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸類等としては、6種類の立体異性体のうち、1R,2S,4S,5R-シクロヘキサンテトラカルボン酸類等を含むものが好ましいことがある。ある実施態様においては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸類等中の1R,2S,4S,5R-シクロヘキサンテトラカルボン酸類の割合は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であることが好ましい。
【0045】
CpODA等は、1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。また、前記式(2)で表される構造を含むテトラカルボン酸類等、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸類等、及び、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類等も、1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。前記式(2)で表される構造を含むジアミンも、1種を単独で使用してもよく、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位または前記一般式(5)で表される繰り返し単位を与える、他のテトラカルボン酸成分としては、他の芳香族または脂環式テトラカルボン酸類のいずれをも使用することができる。特に限定するものではないが、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-オキシジフタル酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、スルホニルジフタル酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、オクタヒドロペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、6-(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸、および、これらのテトラカルボン酸の誘導体(テトラカルボン酸二無水物など)等が挙げられる。これらのうちでは、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-オキシジフタル酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸等の誘導体や、これらの酸二無水物がより好ましい。これらのテトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0047】
前記一般式(1)の繰り返し単位または前記一般式(5)で表される繰り返し単位を与える、他のジアミン成分としては、他の芳香族または脂環式ジアミンのいずれをも使用することができる。特に限定するものではないが、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジアミノ-ビフェニル、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、m-トリジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-p-フェニレンビス(p-アミノベンズアミド)、4-アミノフェノキシ-4-ジアミノベンゾエート、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ビス(4-アミノフェニル)エステル、p-フェニレンビス(p-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジカルボキシレート、[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(4-アミノベンゾエート)、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、p-メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3-ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-プロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソプロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-sec-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-tert-ブチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノシクロへキサン等やこれらの誘導体が挙げられる。これらのうちでは、p-フェニレンジアミン、m-トリジン、4,4’-オキシジアニリン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル等がより好ましい。これらのジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0048】
本発明のポリイミド前駆体、及び本発明のポリイミドは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位または前記一般式(5)で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位の1種以上を含むものであってもよい。他の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分およびジアミン成分としては、特に限定されず、他の公知のテトラカルボン酸類、公知のジアミン類いずれも使用することができる。また、組み合わせるジアミン成分が前記一般式(1)で表される繰り返し単位または前記一般式(5)で表される繰り返し単位を与えるジアミン成分でない場合、他の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位または前記一般式(5)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分として例示したもの(CpODA等、前記式(2)で表される構造を含むテトラカルボン酸類等、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸類等、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類等も含む)であってもよい。また、組み合わせるテトラカルボン酸成分が前記一般式(1)で表される繰り返し単位または前記一般式(5)で表される繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分でない場合、他の繰り返し単位を与えるジアミン成分は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位または前記一般式(5)で表される繰り返し単位を与えるジアミン成分として例示したもの(TFMB、前記式(2)で表される構造を含むジアミンも含む)であってもよい。
【0049】
本発明のポリイミド前駆体において、前記一般式(1)中のR、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のアルキル基(特に好ましくはメチル基もしくはエチル基)、または炭素数3~9のアルキルシリル基(特に好ましくはトリメチルシリル基もしくはt-ブチルジメチルシリル基)のいずれかである。R、Rは、後述する製造方法によって、その官能基の種類、及び官能基の導入率を変化させることができる。
【0050】
官能基の導入率は、特に限定されないが、アルキル基もしくはアルキルシリル基を導入する場合、R、Rはそれぞれ、25%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは75%以上をアルキル基もしくはアルキルシリル基にすることができる。R、Rのそれぞれの25%以上をアルキル基もしくはアルキルシリル基にすることで、ポリイミド前駆体の保存安定性が優れる。
【0051】
本発明のポリイミド前駆体は、それぞれ独立に、RとRが取る化学構造によって、1)ポリアミド酸(RとRが水素)、2)ポリアミド酸エステル(R、Rの少なくとも一部がアルキル基)、3)4)ポリアミド酸シリルエステル(R、Rの少なくとも一部がアルキルシリル基)に分類することができる。そして、本発明のポリイミド前駆体は、この分類ごとに、以下の製造方法により容易に製造することができる。ただし、本発明のポリイミド前駆体の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0052】
1)ポリアミド酸
本発明のポリイミド前駆体は、溶媒中でテトラカルボン酸成分としてのテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを略等モル、好ましくはテトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比[ジアミン成分のモル数/テトラカルボン酸成分のモル数]が好ましくは0.90~1.10、より好ましくは0.95~1.05の割合で、例えば120℃以下の比較的低温度でイミド化を抑制しながら反応することによって、ポリイミド前駆体溶液組成物として好適に得ることができる。
【0053】
本発明のポリイミド前駆体の合成方法は、限定するものではないが、より具体的には、有機溶剤にジアミンを溶解し、この溶液に攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。上記製造方法でのジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序は、ポリイミド前駆体の分子量が上がりやすいため、好ましい。また、上記製造方法のジアミンとテトラカルボン酸二無水物の添加順序を逆にすることも可能であり、析出物が低減することから、好ましい。
【0054】
また、テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比がジアミン成分過剰である場合、必要に応じて、ジアミン成分の過剰モル数に略相当する量のカルボン酸誘導体を添加し、テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比を略当量に近づけることができる。ここでのカルボン酸誘導体としては、実質的にポリイミド前駆体溶液の粘度を増加させない、つまり実質的に分子鎖延長に関与しないテトラカルボン酸、もしくは末端停止剤として機能するトリカルボン酸とその無水物、ジカルボン酸とその無水物などが好適である。
【0055】
2)ポリアミド酸エステル
テトラカルボン酸二無水物を任意のアルコールと反応させ、ジエステルジカルボン酸を得た後、塩素化試薬(チオニルクロライド、オキサリルクロライドなど)と反応させ、ジエステルジカルボン酸クロライドを得る。このジエステルジカルボン酸クロライドとジアミンを-20~120℃、好ましくは-5~80℃の範囲で1~72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。また、ジエステルジカルボン酸とジアミンを、リン系縮合剤や、カルボジイミド縮合剤などを用いて脱水縮合することでも、簡便にポリイミド前駆体が得られる。
【0056】
この方法で得られるポリイミド前駆体は、安定なため、水やアルコールなどの溶剤を加えて再沈殿などの精製を行うこともできる。
【0057】
3)ポリアミド酸シリルエステル(間接法)
あらかじめ、ジアミンとシリル化剤を反応させ、シリル化されたジアミンを得る。必要に応じて、蒸留等により、シリル化されたジアミンの精製を行う。そして、脱水された溶剤中にシリル化されたジアミンを溶解させておき、攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。
【0058】
ここで用いるシリル化剤として、塩素を含有しないシリル化剤を用いることは、シリル化されたジアミンを精製する必要がないため、好適である。塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。フッ素原子を含まず低コストであることから、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
【0059】
また、ジアミンのシリル化反応には、反応を促進するために、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミンなどのアミン系触媒を用いることができる。この触媒はポリイミド前駆体の重合触媒として、そのまま使用することができる。
【0060】
4)ポリアミド酸シリルエステル(直接法)
1)の方法で得られたポリアミド酸溶液とシリル化剤を混合し、0~120℃、好ましくは5~80℃の範囲で1~72時間攪拌することで、ポリイミド前駆体が得られる。
【0061】
ここで用いるシリル化剤として、塩素を含有しないシリル化剤を用いることは、シリル化されたポリアミド酸、もしくは、得られたポリイミドを精製する必要がないため、好適である。塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。フッ素原子を含まず低コストであることから、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
【0062】
前記製造方法は、いずれも有機溶媒中で好適に行なうことができるので、その結果として、本発明のポリイミド前駆体のワニスを容易に得ることができる。
【0063】
ポリイミド前駆体を調製する際に使用する溶媒は、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が好ましく、特にN,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましいが、原料モノマー成分と生成するポリイミド前駆体が溶解すれば、どんな種類の溶媒であっても問題はなく使用できるので、特にその構造には限定されない。溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o-クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。なお、溶媒は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0064】
本発明において、ポリイミド前駆体の対数粘度は、特に限定されないが、30℃での濃度0.5g/dLのN,N-ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上、より好ましくは0.8dL/g以上、特に好ましくは0.9dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.2dL/g以上では、ポリイミド前駆体の分子量が高く、得られるポリイミドの機械強度や耐熱性に優れる。
【0065】
本発明において、ポリイミド前駆体のワニス(ポリイミド前駆体溶液組成物)は、少なくとも本発明のポリイミド前駆体と溶媒とを含み、溶媒とテトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量に対して、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との合計量が5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上の割合であることが好適である。なお、通常は60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることが好適である。この濃度は、ポリイミド前駆体に起因する固形分濃度にほぼ近似される濃度であるが、この濃度が低すぎると、例えばポリイミドフィルムを製造する際に得られるポリイミドフィルムの膜厚の制御が難しくなることがある。
【0066】
本発明のポリイミド前駆体のワニスに用いる溶媒としては、ポリイミド前駆体が溶解すれば問題はなく、特にその構造は限定されない。ポリイミド前駆体のワニスの溶媒としては、上記のポリイミド前駆体を調製する際に使用した溶媒と同様のものが挙げられ、ポリイミド前駆体を調製する際に使用した溶媒をそのまま、ポリイミド前駆体のワニスの溶媒として使用することができる。また、必要に応じて、上記のようにして調製したポリイミド前駆体溶液から溶媒を除去、または溶媒を加えてもよい。
【0067】
本発明において、ポリイミド前駆体のワニスの粘度(回転粘度)は、特に限定されないが、E型回転粘度計を用い、温度25℃、せん断速度20sec-1で測定した回転粘度が、0.01~1000Pa・secが好ましく、0.1~100Pa・secがより好ましい。また、必要に応じて、チキソ性を付与することもできる。上記範囲の粘度では、コーティングや製膜を行う際、ハンドリングしやすく、また、はじきが抑制され、レベリング性に優れるため、良好な被膜が得られる。
【0068】
本発明のポリイミド前駆体のワニスは、必要に応じて、化学イミド化剤(無水酢酸などの酸無水物や、ピリジン、イソキノリンなどのアミン化合物)、酸化防止剤、フィラー(シリカ等の無機粒子など)、染料、顔料、シランカップリング剤などのカップリング剤、プライマー、難燃材、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤(流動補助剤)、剥離剤などを含有することができる。
【0069】
本発明のポリイミドは、前記のような本発明のポリイミド前駆体を脱水閉環反応(イミド化反応)することで好適に製造することができる。イミド化の方法は特に限定されず、公知の熱イミド化、または化学イミド化の方法を好適に適用することができる。
【0070】
得られるポリイミドの形態は、フィルム、ポリイミドフィルムと他の基材との積層体、コーティング膜、粉末、ビーズ、成型体、発泡体およびワニスなどを好適に挙げることができる。
【0071】
以下では、本発明のポリイミド前駆体を用いた、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムの製造方法の一例について述べる。ただし、以下の方法に限定されるものではない。
【0072】
本発明のポリイミド前駆体のワニスを基材上に流延・塗布し、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で、熱風もしくは赤外線を用いて、20~180℃、好ましくは20~150℃の温度範囲で乾燥する。次いで、得られたポリイミド前駆体フィルムを基材上で、もしくはポリイミド前駆体フィルムを基材上から剥離し、そのフィルムの端部を固定した状態で、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で、熱風もしくは赤外線を用い、200~500℃、より好ましくは250~450℃程度の温度で加熱イミド化することでポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムを製造することができる。なお、得られるポリイミドフィルムが酸化劣化するのを防ぐため、加熱イミド化は、真空中、或いは不活性ガス中で行うことが望ましい。加熱イミド化の温度が高すぎなければ空気中で行なっても差し支えない。
【0073】
ここで、基材としては、特に限定されず、例えばセラミック(ガラス、シリコン、アルミナ)、金属(銅、アルミニウム、ステンレス)、耐熱プラスチックフィルム(ポリイミドフィルム)などの基材を用いることができる。ある実施態様においては、基材としては、ガラスが好ましく、ポリイミドフィルムをガラス基材上に形成したポリイミドフィルム/ガラス基材積層体は、例えば、ディスプレイ用の基板などを製造するために好適に用いられる。
【0074】
また、ポリイミド前駆体のイミド化反応は、前記のような加熱処理による加熱イミド化に代えて、ポリイミド前駆体をピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬するなどの化学的処理によって行うことも可能である。また、これらの脱水環化試薬をあらかじめ、ポリイミド前駆体のワニス中に投入・攪拌し、それを基材上に流延・乾燥することで、部分的にイミド化したポリイミド前駆体を作製することもでき、これを更に前記のような加熱処理することで、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムを得ることができる。
【0075】
本発明のポリイミドは、また、溶媒中で、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させて、本発明のポリイミドを含む溶液組成物(ワニス)を調製し、加熱等により、調製したポリイミド溶液組成物から溶媒を除去することでも好適に製造することができる。
【0076】
以下では、本発明のポリイミド溶液組成物(ポリイミドを含むワニス)の製造方法、及び、このポリイミド溶液組成物を用いた、ポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムの製造方法の一例について述べる。ただし、以下の方法に限定されるものではない。
【0077】
本発明のポリイミド溶液組成物は、溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを略等モル、好ましくはテトラカルボン酸成分に対するジアミン成分のモル比[ジアミン成分のモル数/テトラカルボン酸成分のモル数]が好ましくは0.90~1.10、より好ましくは0.95~1.05の割合で反応させることによって、好適に得ることができる。
【0078】
より具体的には、溶剤にジアミン成分を溶解し、この溶液に攪拌しながら、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分を徐々に添加し、必要に応じて、好ましくは室温~80℃の範囲で0.5~30時間攪拌した後、昇温してイミド化反応を行うことで、ポリイミド溶液が得られる。テトラカルボン酸成分を添加した後、直ちに昇温してイミド化反応を行うこともできる。また、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分の添加順序を逆にすることも可能であり、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分を同時に溶剤に添加することも可能である。
【0079】
イミド化の方法は特に限定されず、公知の熱イミド化、または化学イミド化の方法を好適に適用することができる。例えば、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを含む溶液を100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150~250℃の範囲の温度で、0.5~72時間攪拌して、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを反応させることで、イミド化反応を行うことができる。化学イミド化の場合は、反応溶液に化学イミド化剤(無水酢酸などの酸無水物や、ピリジン、イソキノリン、トリエチルアミンなどのアミン化合物)を加えて反応を行う。必要に応じて、イミド化触媒などを反応溶液に加えて反応を行ってもよい。
【0080】
また、反応時に生成する水を除去しながらイミド化反応を行ってもよい。
【0081】
テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比がジアミン成分過剰である場合、必要に応じて、ジアミン成分の過剰モル数に略相当する量のカルボン酸誘導体を添加し、テトラカルボン酸成分とジアミン成分のモル比を略当量に近づけることができる。ここでのカルボン酸誘導体としては、実質的にポリイミド溶液の粘度を増加させない、つまり実質的に分子鎖延長に関与しないテトラカルボン酸、もしくは末端停止剤として機能するトリカルボン酸とその無水物、ジカルボン酸とその無水物などが好適である。
【0082】
ポリイミド溶液を調製する際に使用する溶媒は、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性溶媒が好ましく、特にN,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましいが、原料モノマー成分と生成するポリイミドが溶解すれば、どんな種類の溶媒であっても問題はなく使用できるので、特にその構造には限定されない。溶媒として、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが好ましく採用される。さらに、その他の一般的な有機溶剤、即ちフェノール、o-クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用できる。なお、溶媒は、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0083】
上記のようにイミド化反応を行った後、得られた反応溶液をそのまま、または濃縮もしくは希釈して、さらに必要に応じて後述する添加剤等を添加して、本発明のポリイミド溶液組成物として使用することができる。あるいは、得られた反応溶液から可溶性のポリイミドを単離し、単離したポリイミドを溶媒に加えて、本発明のポリイミド溶液組成物(ワニス)を得ることもできる。ポリイミドの単離は、例えば、得られた可溶性のポリイミドを含む反応溶液を水などの貧溶媒に滴下または混合して、ポリイミドを析出(再沈殿)させることで行うことができる。
【0084】
本発明のポリイミド溶液組成物(ポリイミドのワニス)は、少なくとも本発明のポリイミドと溶媒とを含み、溶媒とポリイミドの合計量に対して、ポリイミドが5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上の割合であることが好適である。この濃度が低すぎると、例えばポリイミドフィルムを製造する際に得られるポリイミドフィルムの膜厚の制御が難しくなることがある。なお、通常は、ポリイミドが60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることが好適である。
【0085】
本発明のポリイミド溶液組成物の溶媒としては、ポリイミドが溶解すれば問題はなく、特にその構造は限定されない。ポリイミド溶液組成物の溶媒としては、上記のポリイミド溶液を調製する際に使用した溶媒と同様のものが挙げられ、ポリイミド溶液を調製する際に使用した溶媒をそのまま、ポリイミド溶液組成物の溶媒として使用することができる。また、必要に応じて、上記のようにして調製したポリイミド溶液組成物から溶媒を除去、または溶媒を加えてもよい。
【0086】
本発明において、ポリイミドの対数粘度は、特に限定されないが、30℃での濃度0.5g/dLのN,N-ジメチルアセトアミド溶液における対数粘度が0.2dL/g以上、より好ましくは0.4dL/g以上、特に好ましくは0.5dL/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.2dL/g以上では、得られるポリイミドの機械強度や耐熱性に優れる。
【0087】
本発明において、ポリイミド溶液組成物の粘度(回転粘度)は、特に限定されないが、E型回転粘度計を用い、温度25℃、せん断速度20sec-1で測定した回転粘度が、0.01~1000Pa・secが好ましく、0.1~100Pa・secがより好ましい。また、必要に応じて、チキソ性を付与することもできる。上記範囲の粘度では、コーティングや製膜を行う際、ハンドリングしやすく、また、はじきが抑制され、レベリング性に優れるため、良好な被膜が得られる。
【0088】
本発明のポリイミド溶液組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、フィラー(シリカ等の無機粒子など)、染料、顔料、シランカップリング剤などのカップリング剤、プライマー、難燃材、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤(流動補助剤)、剥離剤などを含有することができる。
【0089】
本発明のポリイミドは、上記のようにして調製したポリイミド溶液組成物から溶媒を除去することによって、好適に得ることができる。例えば、ポリイミド溶液組成物を基材上に流延・塗布し、ポリイミド溶液組成物を基材上で加熱して、溶媒を除去することにより、ポリイミドフィルム/基材積層体を製造することができる。加熱処理の温度は、特に限定されないが、通常、80~500℃、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~450℃程度の温度である。加熱処理は、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で行うことができるが、通常、真空中、或いは不活性ガス中で行うことが望ましい。そして、この基材上に形成されたポリイミドフィルムを基材から剥離することにより、ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0090】
ここで、基材としては、特に限定されず、例えばセラミック(ガラス、シリコン、アルミナ)、金属(銅、アルミニウム、ステンレス)、耐熱プラスチックフィルム(ポリイミドフィルム)などの基材を用いることができる。ある実施態様においては、基材としては、ガラスが好ましく、ポリイミドフィルムをガラス基材上に形成したポリイミドフィルム/ガラス基材積層体は、例えば、ディスプレイ用の基板などを製造するために好適に用いられる。
【0091】
また、ポリイミド溶液組成物を基材上に流延・塗布し、基材上のポリイミド溶液組成物を自己支持性となる程度にまで乾燥し、得られた自己支持性フィルムを基材上から剥離し、そのフィルムの端部を固定した状態で加熱して、溶媒を除去することによっても、ポリイミドフィルムを好適に製造することができる。自己支持性フィルム製造時の乾燥条件は適宜決めることができるが、例えば、ポリイミド溶液組成物を基材上で50~300℃程度の温度範囲で乾燥すればよい。自己支持性フィルムの加熱処理の温度は、特に限定されないが、通常、80~500℃、好ましくは100~500℃、より好ましくは150~480℃程度の温度である。この方法においても、加熱処理は、真空中、窒素等の不活性ガス中、或いは空気中で行うことができるが、通常、真空中、或いは不活性ガス中で行うことが望ましい。
【0092】
なお、ポリイミド溶液組成物から得られるポリイミドの形態は、フィルム、ポリイミドフィルムと他の基材との積層体に限定されるものではなく、コーティング膜、粉末、ビーズ、成型体、発泡体なども好適に挙げることができる。
【0093】
このようにして得られる本発明のポリイミドは、厚みが10μmのフィルムで測定した場合の100~250℃の間の線熱膨張係数は、特に限定されないが、好ましくは40ppm/K以下、より好ましくは35ppm/K以下、より好ましくは30ppm/K以下、特に好ましくは25ppm/K以下であることが好ましい。線熱膨張係数が大きいと、金属などの導体との線熱膨張係数の差が大きく、回路基板を形成する際に反りが増大するなどの不具合が生じることがある。
【0094】
本発明のポリイミドは、また、厚みが10μmのフィルムで測定した場合の波長400nmの光透過率は、特に限定されないが、好ましくは80%以上、より好ましくは83%以上、特に好ましくは85%以上であることが好ましい。ポリイミドフィルムをディスプレイ用途等で使用する場合、光透過率が低いと光源を強くする必要があり、エネルギーがかかるといった問題等を生じることがある。
【0095】
本発明のポリイミドは、厚みが10μmのフィルムで測定した場合のヘイズが、特に限定されないが、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下であることが好ましい。ポリイミドフィルムをディスプレイ用途等で使用する場合、ヘイズが高いと、光が散乱して画像がぼやけることがある。
【0096】
本発明のポリイミドは、厚みが10μmのフィルムで測定した場合の厚み方向位相差(Rth)が、特に限定されないが、好ましくは500nm以下、より好ましくは350nm以下、特に好ましくは400nm以下であることが好ましい。ポリイミドフィルムをディスプレイ用途等で使用する場合、厚み方向の位相差が大きいと、透過光の色が正しく表示されない、色がにじむ、視野角が狭くなるといった問題が起こることがある。
【0097】
本発明のポリイミドからなるフィルムは、用途にもよるが、フィルムの厚みとしては、好ましくは1μm~250μm、より好ましくは1μm~150μm、さらに好ましくは1μm~100μm、特に好ましくは1μm~80μmである。ポリイミドフィルムを光が透過する用途に使用する場合、ポリイミドフィルムが厚すぎると光透過率が低くなる恐れがある。
【0098】
上記のようにして得られたポリイミドフィルム/基材積層体、もしくはポリイミドフィルムは、その片面もしくは両面に導電性層を形成することによって、フレキシブルな導電性基板を得ることができる。
【0099】
フレキシブルな導電性基板は、例えば次の方法によって得ることができる。すなわち、第一の方法としては、ポリイミドフィルム/基材積層体を基材からポリイミドフィルムを剥離せずに、そのポリイミドフィルム表面に、スパッタ、蒸着、印刷などによって、導電性物質(金属もしくは金属酸化物、導電性有機物、導電性炭素など)の導電層を形成させ、導電性層/ポリイミドフィルム/基材の導電性積層体を製造する。その後必要に応じて、基材より導電性層/ポリイミドフィルム積層体を剥離することによって、導電性層/ポリイミドフィルム積層体からなる透明でフレキシブルな導電性基板を得ることができる。
【0100】
第二の方法としては、ポリイミドフィルム/基材積層体の基材からポリイミドフィルムを剥離して、ポリイミドフィルムを得、そのポリイミドフィルム表面に、導電性物質(金属もしくは金属酸化物、導電性有機物、導電性炭素など)の導電層を、第一の方法と同様にして形成させ、導電性層/ポリイミドフィルム積層体、または導電性層/ポリイミドフィルム/導電性層積層体からなる透明でフレキシブルな導電性基板を得ることができる。
【0101】
なお、第一、第二の方法において、必要に応じて、ポリイミドフィルムの表面に導電層を形成する前に、スパッタ、蒸着やゲル-ゾル法などによって、水蒸気、酸素などのガスバリア層、光調整層などの無機層を形成しても構わない。
【0102】
また、導電層は、フォトリソグラフィ法や各種印刷法、インクジェット法などの方法によって、回路が好適に形成される。
【0103】
このようにして得られる本発明の基板は、本発明のポリイミドによって構成されたポリイミドフィルムの表面に、必要に応じてガスバリア層や無機層を介し、導電層の回路を有するものである。この基板は、フレキシブルであり、高い透明性、折り曲げ性、耐熱性が優れ、さらに低い線熱膨張係数を有するので微細な回路の形成が容易である。したがって、この基板は、ディスプレイ用、タッチパネル用、または太陽電池用の基板として好適に用いることができる。
【0104】
すなわち、この基板に、蒸着、各種印刷法、或いはインクジェット法などによって、さらにトランジスタ(無機トランジスタ、有機トランジスタ)が形成されてフレキシブル薄膜トランジスタが製造され、そして、表示デバイス用の液晶素子、EL素子、光電素子として好適に用いられる。
【0105】
また、上記第一の方法においては、ポリイミドフィルム/基材積層体の表面に、導電層だけでなく、トランジスタおよび/または、デバイスに必要な他の素子や構造の少なくとも一部を形成した後に、基材を剥離してもよい。
【実施例
【0106】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0107】
以下の各例において評価は次の方法で行った。
【0108】
<ポリイミドフィルムの評価>
[400nm光透過率]
紫外可視分光光度計/V-650DS(日本分光製)を用いて、膜厚10μm、5cm角サイズのポリイミドフィルムの波長400nmにおける光透過率を測定した。
【0109】
[ヘイズ]
濁度計/NDH2000(日本電色工業製)を用いて、JIS K7136の規格に準拠して、膜厚10μm、5cm角サイズのポリイミドフィルムのヘイズを測定した。
【0110】
[線熱膨張係数(CTE)]
膜厚10μmのポリイミドフィルムを幅4mmの短冊状に切り取って試験片とし、TMA/SS6100(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用い、チャック間距離15mm、引張荷重2g、昇温速度20℃/分で500℃まで昇温した。得られたTMA曲線から、100℃から250℃までの線熱膨張係数を求めた。
【0111】
[フィルムの厚み方向位相差(Rth)]
膜厚10μm、5cm角サイズのポリイミドフィルムを試験片とし、王子計測器社製 位相差測定装置(KOBRA-WR)を用い、入射角を40°としてフィルムの位相差測定を行った。得られた位相差より、膜厚10μmのフィルムの厚み方向の位相差を求めた。
【0112】
[引張弾性率、破断点伸度、破断点応力]
ポリイミドフィルムをIEC-540(S)規格のダンベル形状に打ち抜いて試験片(幅:4mm)とし、ORIENTEC社製TENSILONを用いて、チャック間長30mm、引張速度2mm/分で、初期の引張弾性率、破断点伸度、破断点応力を測定した。
【0113】
以下の各例で使用した原材料の略称、純度等は、次のとおりである。
【0114】
[ジアミン成分]
TFMB: 2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン〔純度:99.83%(GC分析)〕
BAFL: 9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン
4,4’-ODA: 4,4’-オキシジアニリン〔純度:99.9%(GC分析)〕
BAPB: 4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル
SFXO: 4,4’-(スピロ[フルオレン-9,9’-キサンテン]-3’,6’-ジイルビス(オキシ))ジアニリン
[テトラカルボン酸成分]
CpODA:ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物
PMDA-H: 1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物〔純度:99.9%(GC分析)〕
a-BPDA: 2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0115】
[溶媒]
GBL: γ―ブチロラクトン
DMAc: N,N-ジメチルアセトアミド
【0116】
表1に実施例、比較例で使用したテトラカルボン酸成分、ジアミン成分の構造式を記す。
【0117】
【表1】
【0118】
〔実施例1〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 1.70g(5.3ミリモル)とBAFL 7.40g(21.3ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の94.24gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 10.20g(26.5ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0119】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0120】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0121】
〔実施例2〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 3.00g(9.4ミリモル)とBAFL 6.06g(17.4ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 17質量%となる量の94.48gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 10.29g(26.8ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0122】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0123】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0124】
〔実施例3〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 7.00g(21.9ミリモル)とBAFL 7.62g(21.9ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の94.26gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 16.80g(43.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0125】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0126】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0127】
〔実施例4〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 7.00g(21.9ミリモル)とBAFL 6.23g(17.9ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の95.44g(DMAcが31.81gとGBLが63.63g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 15.28g(39.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0128】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から450℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0129】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0130】
〔実施例5〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 9.00g(28.1ミリモル)とBAFL 6.53g(18.7ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の112.26gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 18.00g(46.8ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0131】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から430℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0132】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0133】
〔実施例6〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 9.00g(28.1ミリモル)とBAFL 4.20g(12.0ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の95.85gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 15.43g(40.2ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0134】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0135】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0136】
〔実施例7〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 10.00g(31.2ミリモル)とBAFL 2.72g(7.8ミリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の92.82gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 15.00g(39.0ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0137】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0138】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0139】
〔実施例8〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 8.00g(25.0ミリモル)とBAFL 2.90g(8.3ミリモル)と4,4’-ODA 1.67g(8.3モリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の95.66gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 16.00g(41.6ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0140】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0141】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0142】
〔実施例9〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 8.00g(25.0ミリモル)とBAFL 4.35g(12.5ミリモル)とBAPB 1.53g(4.2モリモル)を入れ、DMAcを、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 23質量%となる量の100.07gを加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 16.00g(41.6ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0143】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0144】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0145】
〔実施例10〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 6.00g(18.7ミリモル)とSFXO 8.38g(15.3ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の82.44g(DMAcが27.48gとGBLが54.96g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 13.09g(34.1ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0146】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0147】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-1に示す。
【0148】
〔実施例11〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 11.00g(34.4ミリモル)とBAFL 5.13g(14.7ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の87.29g(DMAcが29.10gとGBLが58.19g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 4.72g(12.3ミリモル)とPMDA-H 8.25g(36.8ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0149】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0150】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0151】
〔実施例12〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 10.00g(31.2ミリモル)とBAFL 4.66g(13.4ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の84.71g(DMAcが28.24gとGBLが56.47g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 8.57g(22.3ミリモル)とPMDA-H 5.00g(22.3ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0152】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0153】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0154】
〔実施例13〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 10.00g(31.2ミリモル)とBAFL 4.66g(13.4ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の90.06g(DMAcが30.02gとGBLが60.04g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 12.86g(33.5ミリモル)とPMDA-H 2.50g(11.1ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0155】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0156】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0157】
〔実施例14〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 7.50g(23.4ミリモル)とBAFL 8.16g(23.4ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の95.40g(DMAcが31.80gとGBLが63.60g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 13.50g(35.1ミリモル)とPMDA-H 2.63g(11.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0158】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0159】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0160】
〔実施例15〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 8.00g(25.0ミリモル)とBAFL 8.70g(25.0ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の95.73g(DMAcが31.91gとGBLが63.82g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 13.50g(25.0ミリモル)とPMDA-H 2.63g(25.0ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0161】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0162】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0163】
〔実施例16〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 15.00g(46.8ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の90.00g(DMAcが30.00gとGBLが60.00g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 10.80g(28.1ミリモル)とPMDA-H 4.20g(18.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0164】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から370℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0165】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0166】
〔実施例17〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 15.00g(46.8ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の93.95g(DMAcが31.32gとGBLが62.63g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 10.80g(28.1ミリモル)とa-BPDA 5.51g(18.7ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0167】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0168】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0169】
〔比較例1〕
窒素ガスで置換した反応容器中にTFMB 40.00g(124.9ミリモル)を入れ、DMAcとGBLの混合溶媒(DMAc:GBL=1:2(重量比))を、仕込みモノマー総質量(ジアミン成分とカルボン酸成分の総和)が 25質量%となる量の264.04g(DMAcが88.01gとGBLが176.03g)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液にCpODA 48.01g(124.9ミリモル)を徐々に加えた。70℃で3時間、160℃で7時間撹拌し、均一で粘稠なポリイミド溶液を得た。得られたポリイミド溶液のイミド化率は95%以上であった。
【0170】
ポリイミド溶液をガラス基板に塗布し、窒素雰囲気下(酸素濃度200ppm以下)、そのままガラス基板上で室温から410℃まで加熱して溶媒を除去し、無色透明なポリイミドフィルム/ガラス積層体を得た。次いで、得られたポリイミドフィルム/ガラス積層体を水に浸漬した後剥離し、乾燥して、膜厚が10μmのポリイミドフィルムを得た。
【0171】
このポリイミドフィルムの特性を測定した結果を表2-2に示す。
【0172】
【表2-1】
【0173】
【表2-2】
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明によって、高い透明性と、低い線熱膨張係数を有し、厚み方向位相差(レタデーション)も小さいポリイミド、及び、その前駆体を提供することができる。本発明のポリイミド前駆体から得られるポリイミド、及び本発明のポリイミドは、透明性が高く、且つ低線熱膨張係数であって微細な回路の形成が容易であり、厚み方向位相差(レタデーション)も小さいため、特にディスプレイ用途などの基板を形成するために好適に用いることができる。