(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】多層容器、その製造方法、及び再生ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20220329BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220329BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220329BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20220329BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220329BHJP
C08K 5/08 20060101ALI20220329BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B65D1/02 110
B65D1/02 BRH
B65D1/02 BSG
B32B27/00 H
B32B27/36
B32B27/34
B32B27/18 Z
C08K5/08
C08L77/00
(21)【出願番号】P 2020139566
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2021-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩介
(72)【発明者】
【氏名】大東 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓海
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-123051(JP,A)
【文献】特開2018-188177(JP,A)
【文献】特開2016-078373(JP,A)
【文献】特開2010-254811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B32B 27/00-27/36
C08K 5/08
C08L 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、
ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有する多層容器であって、
ポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、
黄変抑制剤(A)が、
アントラキノン系染料であり、
黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、
多層容器のL
*値が87.5以上である、多層容器。
【請求項2】
ポリエステル樹脂(X)が、テレフタル酸に由来する構成単位を80モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を80モル%以上含有するジオールに由来する構成単位とを有する、請求項1に記載の多層容器。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(Y)が、キシリレンジアミンに由来する構成単位を80モル%以上含有するジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を80モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位とを有する、請求項1又は2に記載の多層容器。
【請求項4】
前記ポリアミド層が、緑変抑制剤(B)を更に含む、請求項1~
3のいずれか1つに記載の多層容器。
【請求項5】
緑変抑制剤(B)が、アントラキノン系染料及びアゾ系染料からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項
4に記載の多層容器。
【請求項6】
前記ポリエステル層が、実質的にリヒート剤を含まない、請求項1~
5のいずれか1つに記載の多層容器。
【請求項7】
多層容器が多層中空容器である、請求項1~
6のいずれか1つに記載の多層容器。
【請求項8】
多層容器が2~5層構造を有し、最外層がポリエステル層である、請求項1~
7のいずれか1つに記載の多層容器。
【請求項9】
多層容器が3~5層構造を有し、最外層と最内層がポリエステル層である、請求項1~
8のいずれか1つに記載の多層容器。
【請求項10】
下記工程1~3を含む、多層容器の製造方法であって、該多層容器が、
ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、
ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有し、
ポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、
黄変抑制剤(A)が、
アントラキノン系染料であり、
黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、
該多層容器のL
*値が87.5以上である、多層容器の製造方法。
工程1:ポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)とを混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製する工程、
工程2:前記ポリアミド樹脂混合物と、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル樹脂組成物を共射出成形して、多層プリフォームを得る工程、
工程3:前記多層プリフォームをブロー成形する工程
【請求項11】
工程1において、ペレット状のポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)を230℃以下で混合する、請求項
10に記載の多層容器の製造方法。
【請求項12】
工程1において、緑変抑制剤(B)を更に混合する、請求項
10又は
11に記載の多層容器の製造方法。
【請求項13】
工程1において、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂、黄変抑制剤(A)及び緑変抑制剤(B)を混練した後、ポリアミド樹脂(Y)と混合する、請求項
12に記載の多層容器の製造方法。
【請求項14】
黄変抑制剤(A)が、粉末状、分散液又は溶液である、請求項
10~
13のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
【請求項15】
請求項1~
9のいずれか1つに記載の多層容器からポリエステルを回収する工程を有する、再生ポリエステルの製造方法。
【請求項16】
ポリエステルを回収する工程の後に、結晶化工程及び固相重合工程から選ばれる1つ以上の工程を行う、請求項
15に記載の再生ポリエステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層容器、その製造方法、及び再生ポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジカルボン酸化合物と脂肪族ジオール化合物とをモノマーとして使用して得られる芳香族ポリエステル樹脂は、透明性、機械的性能、溶融安定性、耐溶剤性、保香性、ガスバリア性、リサイクル性等に優れるという特長を有している。そのため、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステル樹脂は、フィルム、シート、中空容器等の各種包装材料に広く利用されている。ポリエステル樹脂は高いガスバリア性を有するが、更なる酸素、炭酸ガス等に対するガスバリア性が求められる用途にとっては必ずしも十分ではない。そのため、ポリエステル樹脂のガスバリア性を改善する手段として、酸化アルミニウムや酸化珪素をポリエステル樹脂からなる成形体や包装容器に蒸着することや、高いガスバリア性能を有する樹脂をポリエステル樹脂からなる成形体や包装容器に塗布、積層、あるいは溶融混合することが行われている。
【0003】
ガスバリア性樹脂としては、ナイロン6,ナイロン66等のポリアミド樹脂やエチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリアミド樹脂のなかでも、とりわけキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分とアジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重合して得られるポリキシリレンアジパミドはガスバリア性に優れる。ポリキシリレンアジパミドは、高いガスバリア性を有する上に、広く利用されているポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレートと、ガラス転移温度、融点、結晶性が近似していることから、ポリエステル樹脂に積層、溶融混合しやすい。このことから、ポリエステル樹脂のガスバリア性を改善するための材料として、ポリキシリレンアジパミドは非常に適している。
【0004】
しかしながら、ポリアミドを含有するポリエステル樹脂組成物は、熱履歴による黄変がポリエステル単体と比較して進行しやすい。そのため、特に容器を回収して樹脂を再利用するリサイクル工程で黄色化が生じる。これは包装容器の商品価値を低下させる要因となるため、黄変を抑制する検討が行われている。
たとえば、特許文献1には、ポリエステル樹脂及び黄変抑制能を有するアミノ基含有化合物を含むポリエステル樹脂組成物層と、ポリアミド樹脂を含むポリアミド樹脂層とを有する多層容器と、再生ポリエステルの製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、リサイクルPETの黄変による透明度の低下の改善と、成形性、耐熱性、強伸度特性の向上を目的として、ポリエステル樹脂成形物からリサイクルされたポリエステル樹脂と、ポリエステル以外の樹脂とを含み、さらに特定量の顔料を含む樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/057463号
【文献】特開2004-359914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のようにポリアミドを含有するポリエステル樹脂の容器は黄変が進行しやすく、これをリサイクルして得られる再生ポリエステルも黄色味を帯びるものとなっていた。その黄色を打ち消すための方法として、たとえば、特許文献2に挙げられるように、反対色(補色)である青色の顔料等の着色剤を添加することが考えられる。
黄色を低減するためには、再生ポリエステルの原料となる容器に黄変を抑制するための着色剤を添加することが必要であるが、青色が目立つこととなり、無色性に劣るものとなり、意匠性の自由度に劣るものとなる。
一方、ポリアミドを含有するポリエステル樹脂の容器のなかでも、ポリエステル樹脂からなる容器にポリアミド樹脂を含む層を積層させた多層容器は、ポリアミド樹脂層がバリア層として機能するため、バリア性に優れている。
そのため、黄色が効果的に打ち消された再生ポリエステルを得ることができ、かつ青みの少ないポリアミド層を有するポリエステル樹脂の多層容器が求められていた。
そこで、本発明は、黄色度が低く、無色性に優れる再生ポリエステルを得ることができることができ、かつ青みが少なく無色性に優れる多層容器、及び無色性に優れる再生ポリエステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、ポリエステル層と、ポリアミド樹脂、及び黄変抑制剤である染料を特定量含有するポリアミド層を有し、L*値が特定の値である多層容器が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の〔1〕~〔17〕を提供する。
【0008】
〔1〕ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有する多層容器であって、ポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、黄変抑制剤(A)が、染料であり、黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、多層容器のL*値が87.5以上である、多層容器。
〔2〕ポリエステル樹脂(X)が、テレフタル酸に由来する構成単位を80モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を80モル%以上含有するジオールに由来する構成単位とを有する、〔1〕に記載の多層容器。
〔3〕ポリアミド樹脂(Y)が、キシリレンジアミンに由来する構成単位を80モル%以上含有するジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を80モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位とを有する、〔1〕又は〔2〕に記載の多層容器。
〔4〕黄変抑制剤(A)が、アントラキノン系染料である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔5〕前記ポリアミド層が、緑変抑制剤(B)を更に含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔6〕緑変抑制剤(B)が、アントラキノン系染料及びアゾ系染料からなる群より選ばれる少なくとも1つである、〔5〕に記載の多層容器。
〔7〕前記ポリエステル層が、リヒート剤を実質的に含まない、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔8〕多層容器が多層中空容器である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔9〕多層容器が2~5層構造を有し、最外層がポリエステル層である、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔10〕多層容器が3~5層構造を有し、最外層と最内層がポリエステル層である、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の多層容器。
〔11〕下記工程1~3を含む、多層容器の製造方法であって、該多層容器が、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有し、ポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、黄変抑制剤(A)が、染料であり、黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、該多層容器のL*値が87.5以上である、多層容器の製造方法。
工程1:ポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)とを混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製する工程、
工程2:前記ポリアミド樹脂混合物と、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル樹脂組成物を共射出成形して、多層プリフォームを得る工程、
工程3:前記多層プリフォームをブロー成形する工程
〔12〕工程1において、ペレット状のポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)を230℃以下で混合する、〔11〕に記載の多層容器の製造方法。
〔13〕工程1において、緑変抑制剤(B)を更に混合する、〔11〕又は〔12〕に記載の多層容器の製造方法。
〔14〕工程1において、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂、黄変抑制剤(A)及び緑変抑制剤(B)を混練した後、ポリアミド樹脂(Y)と混合する、〔13〕に記載の多層容器の製造方法。
〔15〕黄変抑制剤(A)が、粉末状、分散液又は溶液である、〔11〕~〔14〕のいずれか1つに記載の多層容器の製造方法。
〔16〕〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の多層容器からポリエステルを回収する工程を有する、再生ポリエステルの製造方法。
〔17〕ポリエステルを回収する工程の後に、結晶化工程及び固相重合工程から選ばれる1つ以上の工程を行う、〔16〕に記載の再生ポリエステルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、黄色度が低く、無色性に優れる再生ポリエステルを得ることができることができ、かつ青みが少なく無色性に優れる多層容器、及び無色性に優れる再生ポリエステルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[多層容器]
本発明の多層容器は、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有する多層容器であって、ポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、黄変抑制剤(A)が、染料であり、黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、多層容器のL*値が87.5以上である。
「全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量」とは、多層容器を構成する全てのポリアミド層と全てのポリエステル層の質量の合計量であり、それぞれ複数の層が存在する場合には、それら全ての合計量である。
【0011】
<ポリエステル層>
ポリエステル層は、ポリエステル樹脂(X)を含む。
【0012】
(ポリエステル樹脂(X))
ポリエステル層が含有するポリエステル樹脂(X)は、ジカルボン酸とジオールとの重縮合ポリマーが好ましく、ジカルボン酸に由来する構成単位(ジカルボン酸単位)とジオールに由来する構成単位(ジオール単位)とを有することが好ましい。
【0013】
ジカルボン酸単位としては、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位、脂環式ジカルボン酸に由来する構成単位、脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位が挙げられ、芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテル-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-ジカルボン酸、ジフェニルケトン-ジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸及び2,7-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、コストと製造の容易性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸がより好ましく、成形性の観点から、テレフタル酸及びイソフタル酸が更に好ましく、テレフタル酸がより更に好ましい。
本発明の多層容器をリサイクルする際には、従来のポリエステル樹脂からなる単層容器と溶融混練されることがある。ジカルボン酸単位として、テレフタル酸由来の単位を有することで、本発明の多層容器と従来の単層容器の相溶性が良好となり、良好なリサイクル性が得られる。
【0014】
芳香族ジカルボン酸として、スルホフタル酸、スルホフタル酸金属塩を用いてもよい。スルホフタル酸金属塩は、スルホフタル酸の金属塩であり、該金属原子としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸及びトリシクロデカンジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等が挙げられる。
【0015】
ジオール単位としては、脂肪族ジオールに由来する構成単位、脂環式ジオールに由来する構成単位、芳香族ジオールに由来する構成単位が挙げられ、脂肪族ジオールに由来する構成単位が好ましい。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール及びジエチレングリコールが挙げられる。これらの中では、エチレングリコールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、スピログリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ノルボルネンジメタノール及びトリシクロデカンジメタノールが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、ビスフェノール化合物及びヒドロキノン化合物が挙げられる。
【0016】
ポリエステル樹脂(X)は、ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位を有していてもよい。
ヒドロキシカルボン酸としては、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂環式ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、10-ヒドロキシオクタデカノイル酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸及びヒドロキシブチル酸等が挙げられる。
脂環式ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸、ヒドロキシメチルノルボルネンカルボン酸及びヒドロキシメチルトリシクロデカンカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシトルイル酸、ヒドロキシナフト酸、3-(ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、ヒドロキシフェニル酢酸及び3-ヒドロキシ-3-フェニルプロピオン酸等が挙げられる。
【0017】
ポリエステル樹脂(X)は、単官能性化合物由来の構成単位及び多官能性化合物由来の構成単位を有していてもよい。
単官能性化合物としては、モノカルボン酸、モノアルコールが挙げられ、具体的には、芳香族モノカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノアルコール、脂肪族モノアルコール、脂環式モノアルコール等が挙げられる。
多官能性化合物としては、芳香族ポリカルボン酸、脂環式ポリカルボン酸、脂肪族多価アルコール、脂環式多価アルコール及びそれらのエステル体が挙げられる。
【0018】
ポリエステル樹脂(X)は、テレフタル酸に由来する構成単位を含有するジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を含有するジオールに由来する構成単位とを有することが好ましく、テレフタル酸に由来する構成単位を80モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を80モル%以上含有するジオールに由来する構成単位とを有することがより好ましく、テレフタル酸に由来する構成単位を90モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を90モル%以上含有するジオールに由来する構成単位とを有することが更に好ましく、テレフタル酸に由来する構成単位を98モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位と、エチレングリコールに由来する構成単位を実質的に100モル%含有するジオールに由来する構成単位とを有することがより更に好ましい。
ポリエステル樹脂(X)の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0019】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含んでもよい。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸から選ばれる1種以上であることが好ましい。これらはコストが低く、また、これらを含む共重合ポリエステル樹脂は、製造が容易である。
なかでも、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。イソフタル酸由来の構成単位を含むポリエチレンテレフタレートは、成形性に優れ、また、結晶化速度が遅くなることによって、成形品の白化を防ぐという点で優れている。また、ナフタレンジカルボン酸由来の構成単位を含むポリエチレンテレフタレートは、樹脂のガラス転移点を上昇させ、耐熱性が向上するうえ、紫外線を吸収するため、紫外線に対して耐性が求められる多層容器の製造に好適に使用される。なお、ナフタレンジカルボン酸としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸成分が、製造が容易であり経済性が高いことから好ましい。
ポリエチレンテレフタレートがテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を含む場合、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸由来の構成の割合は、ジカルボン酸単位の1~20モル%であることが好ましく、1~10モル%であることがより好ましく、1~5モル%であることが更に好ましい。
【0020】
なお、ポリエステル樹脂(X)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上の樹脂を併用してもよい。
ポリエステル樹脂(X)は、公知の方法である直接エステル化法やエステル交換法で製造することができる。
【0021】
ポリエステル樹脂(X)の固有粘度は、好ましくは0.5~2.0dL/g、より好ましくは0.6~1.5dL/gである。固有粘度が0.5dL/g以上であると容器の機械的性質が優れる。
なお、固有粘度は、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(=6/4質量比)混合溶媒に、ポリエステル樹脂を溶解して0.2、0.4、0.6g/dL溶液を調製し、25℃にて自動粘度測定装置(マルバーン製、Viscotek)により測定する。
【0022】
(その他の成分)
ポリエステル層には、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、滑剤、展着剤などが挙げられる。
ポリエステル層には、本発明の効果を損なわない範囲で、主成分であるポリエステル樹脂(X)以外の樹脂を含有してもよい。ポリエステル樹脂(X)の含有量は、ポリエステル層全体の樹脂量に対して、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%である。
一方、ポリエステル層は、実質的にリヒート剤を含まないことが好ましい。具体的には、ポリエステル層がリヒート剤を含む場合であっても、リヒート剤の含有量は、ポリエステル層に対して、好ましくは5ppm以下であり、より好ましくは3ppm以下であり、更に好ましくは1ppm以下であり、より更に好ましくは0ppmであり、リヒート剤を含まないことがより更に好ましい。
リヒート剤は、成形時に赤外線を吸収して熱を発し、昇温速度を向上させ、製造速度を向上させるものであり、赤外線吸収剤、リヒートアディティブ(Reheat Additive)と呼ばれることもある。リヒート剤の例として、カーボンブラック等が挙げられる。
【0023】
<ポリアミド層>
ポリアミド層は、ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含む。また、ポリアミド層に含まれるポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmである。
ポリアミド層を設けることで、多層容器は高いガスバリア性を有する。そのため、外部からの酸素の侵入を防止し、炭酸飲料の二酸化炭素の外気への気散も抑制できる。また、ポリアミド層を使用することで、成形性を良好にしつつポリエステル樹脂を分離回収しやすくなる。
更に、リサイクル樹脂の黄変の原因となりやすい、窒素を含有するポリアミド層に黄変抑制剤(A)を含むことにより、効果的に黄変を抑制することができるものと考えられる。特に、リサイクル時に回収されるポリエステル樹脂中に残存するポリアミド樹脂の量に対応した黄変抑制剤が残留するため、再生ポリエステル樹脂中に適切な量の黄変抑制剤を含有させることができ、無色の再生ポリエステルが得られるものと考えられる。
【0024】
(ポリアミド樹脂(Y))
ポリアミド樹脂(Y)としては、キシリレン基含有ポリアミド樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン666、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのなかでも、ガスバリア性能を向上させることができ、リサイクルの際にポリエステル層と分離しやすいことから、キシリレン基含有ポリアミド樹脂が好ましい。キシリレン基含有ポリアミド樹脂は、キシリレンジアミン由来の構成単位を含むポリアミド樹脂であることが好ましい。
【0025】
キシリレン基含有ポリアミド樹脂は、キシリレンジアミンを含むジアミンと、ジカルボン酸とを重縮合したものであり、キシリレンジアミンに由来する構成単位と、ジカルボン酸に由来する構成単位を有する。キシリレン基含有ポリアミド樹脂は、ジアミンに由来する構成単位(ジアミン単位)のうち、キシリレンジアミンに由来する構成単位を50モル%以上有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましく、80~100モル%含有することが更に好ましく、90~100モル%含有することがより更に好ましい。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、又はその両方が好ましいが、メタキシリレンジアミンがより好ましい。そして、キシリレン基含有ポリアミド樹脂を構成するジアミン単位は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位を50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましく、80~100モル%含有することが更に好ましく、90~100モル%含有することがより更に好ましい。ジアミン単位中のメタキシリレンジアミン由来の構成単位が上記範囲内であることで、ポリアミド樹脂はガスバリア性がより良好になる。
【0026】
キシリレン基含有ポリアミド樹脂におけるジアミン単位は、キシリレンジアミン由来の構成単位のみからなっていてもよいが、キシリレンジアミン以外のジアミン由来の構成単位を含有していてもよい。ここで、キシリレンジアミン以外のジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン等の直鎖又は分岐構造を有する脂肪族ジアミン;1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン;ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等が挙げられる。
【0027】
キシリレン基含有ポリアミド樹脂において、ジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の炭素数4~20のα,ω-直鎖状脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;ダイマー酸等のその他の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、炭素数4~20のα,ω-直鎖状脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸がより好ましく、バリア性能を良好にする観点からアジピン酸が更に好ましい。
キシリレン基含有ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位(ジカルボン酸単位)のうち、アジピン酸由来の構成単位を50モル%以上含有することが好ましく、70モル%以上含有することがより好ましく、80~100モル%含有することが更に好ましく、90~100モル%含有することがより更に好ましい。
【0028】
すなわち、ポリアミド樹脂(Y)は、キシリレンジアミンに由来する構成単位を50モル%以上含有するジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を50モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位とを有することが好ましく、キシリレンジアミンに由来する構成単位を80モル%以上含有するジアミンに由来する構成単位と、アジピン酸に由来する構成単位を80モル%以上含有するジカルボン酸に由来する構成単位とを有することがより好ましい。
キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミンが好ましい。
また、アジピン酸を除く残部のジカルボン酸単位としては、炭素数4~20のα,ω-直鎖状脂肪族ジカルボン酸に由来する構成単位が好ましい。
【0029】
また、好ましいキシリレン基含有ポリアミド樹脂としては、ジアミン単位の70モル%以上がキシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミン)に由来する構成単位であり、ジカルボン酸単位の70~99モル%がアジピン酸に由来する構成単位であり、かつ、1~30モル%がイソフタル酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂を例示することもできる。前記ポリアミド樹脂は、ジアミン単位の80モル%以上がメタキシリレンジアミン(好ましくはメタキシリレンジアミン)に由来する構成単位であり、ジカルボン酸単位の80~99モル%がアジピン酸に由来する構成単位であり、かつ、1~20モル%がイソフタル酸に由来する構成単位であるポリアミド樹脂であることが好ましい。
ジカルボン酸単位としてイソフタル酸単位を加えることで融点が低下し、成形加工温度を下げることができるため成形中の熱劣化を抑制することができ、また、結晶時間を遅延することより延伸成形性が向上する。
【0030】
前記のジアミン及びジカルボン酸以外にも、キシリレン基含有ポリアミド樹脂を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類;p-アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸も共重合成分として用いることができる。
【0031】
キシリレン基含有ポリアミド樹脂は、溶融状態での重縮合反応(以下、「溶融重縮合」と記載することがある。)により製造することが好ましい。例えば、ジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩を水の存在下に、加圧法で昇温し、水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造することが好ましい。また、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によって製造してもよい。この場合、反応系を均一な液体状態で保つために、ジアミンをジカルボン酸に連続的に加え、その間、反応温度が、生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合を進行させることが好ましい。また、キシリレン基含有ポリアミドは、必要に応じて溶融重縮合により得られたものを更に固相重合することにより分子量を高めることもできる。
【0032】
キシリレン基含有ポリアミド樹脂は、リン原子含有化合物の存在下で重縮合することが好ましい。キシリレン基含有ポリアミド樹脂は、リン原子含有化合物の存在下で重縮合すると、溶融成形時の加工安定性が高められ、着色が抑制されやすくなる。
リン原子含有化合物としては、次亜リン酸化合物、亜リン酸化合物が好ましく、次亜リン酸化合物がより好ましい。
リン原子含有化合物は有機金属塩が好ましく、中でもアルカリ金属塩がより好ましい。
【0033】
次亜リン酸化合物としては、重合反応を促進する観点及び着色防止の観点から、次亜リン酸、次亜リン酸金属塩、フェニル亜ホスホン酸金属塩、次亜リン酸エチル、ジメチルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸エチル等が挙げられ、次亜リン酸金属塩が好ましい。
次亜リン酸金属塩としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カルシウムが挙げられ、次亜リン酸ナトリウムがより好ましい。
フェニル亜ホスホン酸金属塩としては、フェニル亜ホスホン酸ナトリウム、フェニル亜ホスホン酸カリウム、フェニル亜ホスホン酸リチウムが挙げられる。
【0034】
亜リン酸化合物としては、亜リン酸、ピロ亜リン酸、亜リン酸金属塩、フェニルホスホン酸金属塩、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジエチル等が挙げられる。
亜リン酸金属塩としては、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム等が挙げられる。
フェニルホスホン酸金属塩としては、エチルホスホン酸ナトリウム、エチルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸ナトリウム、フェニルホスホン酸カリウム、フェニルホスホン酸リチウム等が挙げられる。
リン原子含有化合物は、1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、キシリレン基含有ポリアミド樹脂の重縮合は、リン原子含有化合物及びアルカリ金属化合物の存在下で行うことが好ましい。リン原子含有化合物の使用量が多いとポリアミド樹脂がゲル化するおそれがある。そのため、アミド化反応速度を調整する観点から、アルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酢酸塩が挙げられる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられ、アルカリ金属酢酸塩としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウムが挙げられる。
ポリアミド樹脂を重縮合する際にアルカリ金属化合物を使用する場合、アルカリ金属化合物の使用量は、ゲルの生成を抑制する観点から、アルカリ金属化合物のモル数をリン原子含有化合物のモル数で除した値は、0.5~1が好ましく、0.55~0.95がより好ましく、0.6~0.9が更に好ましい。
【0036】
ポリアミド樹脂の数平均分子量は、多層容器の用途や成形方法により適宜選択されるが、多層容器の成形性や強度の観点から、10,000~60,000が好ましく、11,000~50,000がより好ましい。
なお、ポリアミド樹脂の数平均分子量については、下式(X)から算出される。
数平均分子量=2×1,000,000/([COOH]+[NH2])・・・・(X)
(式中、[COOH]はポリアミド樹脂中の末端カルボキシル基濃度(μmol/g)を表し、[NH2]はポリアミド樹脂中の末端アミノ基濃度(μmol/g)を表す。)
ここで、末端カルボキシル基濃度は、ポリアミドをベンジルアルコールに溶解したものを水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定して算出した値を用いる。
【0037】
本発明において、ポリアミド樹脂(Y)の末端アミノ基濃度は、再生ポリエステルの黄変を抑制する観点から、50μmol/g以下が好ましく、45μmol/g以下がより好ましく、40μmol/g以下が更に好ましく、30μmol/g以下がより更に好ましく、20μmol/g以下がより更に好ましい。
ポリアミド樹脂(Y)の末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂を精秤し、フェノール/エタノール=4/1容量溶液に20~30℃で撹拌溶解させ、完全に溶解した後、撹拌しつつ、メタノール5mLで容器内壁を洗い流し、0.01mol/L塩酸水溶液で中和滴定することで求められる。
ポリアミド樹脂(Y)の末端アミノ基濃度の調整方法は特に限定されないが、ジアミンとジカルボン酸の仕込み比(モル比)を調整して重縮合反応を行う方法、アミノ基をキャップするモノカルボン酸類をジアミンとジカルボン酸と共に仕込んで重縮合反応を行う方法、重縮合反応を行った後、アミノ基をキャップするカルボン酸と反応させる方法等により、末端アミノ基濃度を低く抑えることができる。
【0038】
ポリアミド層に含まれるポリアミド樹脂(Y)の含有量は、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、ガスバリア性と再生ポリエステルの黄変抑制の観点から、0.5~6.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましく、1.5~4.5質量%が更に好ましい。
【0039】
(黄変抑制剤(A))
多層容器のポリアミド層には黄変抑制剤(A)を含み、その含有量は、ポリアミド層に対して、400~800ppmである。
なお、本発明において「ppm」とは、質量百万分率である。
黄変抑制剤(A)の含有量は、効果的に再生ポリエステルの黄変を抑制し、多層容器の青みを抑える観点から、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、好ましくは500~700ppmである。
黄変抑制剤(A)の含有量は、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、好ましくは1~20ppmであり、より好ましくは7~19ppmであり、更に好ましくは10~18ppmであり、より更に好ましくは13~17ppmである。
【0040】
黄変抑制剤(A)は、染料であり、好ましくは、青色染料である。
染料を用いることで、透明性に優れる再生ポリエステルを得ることができる。
【0041】
染料としては、アントラキノン系染料、ピラゾロン系染料、クマリン系染料、ペリノン系染料、メチン系染料、キノフタロン系染料が挙げられ、アントラキノン系染料が好ましい。
アントラキノン系染料としては、芳香環の水素原子が、芳香族アミン、脂肪族アミン、水酸基及びハロゲンで置換されたアントラキノン系染料が挙げられ、芳香環の水素原子が芳香族アミンで置換されたアントラキノン系染料が好ましい。
アントラキノン系染料を用いることで、極めて微量で本発明の多層容器から得られる再生ポリエステルの黄変を抑制することができる。
アントラキノン系染料としては、アントラキノン系青色染料であることがより好ましい。
アントラキノン系染料としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0042】
【化1】
(式中、nはRの数を表し、2つのnはそれぞれ独立して1~5である。Rはそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基を示す。2つのXはそれぞれ独立して水素原子又は水酸基を示す。)
【0043】
式(1)において、nは1~5であり、2~5が好ましく、2~3がより好ましい。nを前記範囲とすることで、再生ポリエステルの黄変(Δb*値)を抑制できる。Rはそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基を示し、メチル基及びエチル基からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。Rが、アミノ基に対して少なくともパラ位もしくはオルト位を置換していることが好ましく、少なくともオルト位を置換していることがより好ましく、オルト位とパラ位を置換していることがさらに好ましい。2つのXはそれぞれ独立して水素原子又は水酸基を示し、水素原子が好ましい。
式(1)で示される具体的な化合物としては、1,4-bis[(2-ethyl-6-methylphenyl)amino]anthraquinone、Solvent Blue 97、Solvent Blue 104、Solvent Green 3、Solvent Green 28が挙げられ、1,4-bis[(2-ethyl-6-methylphenyl)amino]anthraquinone、Solvent Blue 97、Solvent Blue 104が好ましい。
黄変抑制剤(A)は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
黄変抑制剤(A)の市販品としては、MACROLEX Blue RR Gran(アントラキノン系染料、LANXESS社製)、MACROLEX Blue 3R(1,4-bis[(2-ethyl-6-methylphenyl)amino]anthraquinone、アントラキノン系染料、LANXESS社製)、Oracet Blue 690(アントラキノン系染料、BASF社製)等が挙げられる。
【0045】
(緑変抑制剤(B))
多層容器のポリアミド層は、緑変抑制剤(B)を含むことが好ましい。
緑変抑制剤(B)は、本発明の多層容器をリサイクルして再生ポリエステルとしたときに色差計で測定した際の-a*方向の緑色を抑制する
緑変抑制剤(B)の含有量は、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、1~30ppmであり、効果的に再生ポリエステルの緑変を抑制する観点から、1.5~25ppmが好ましく、製造時の混合性と成形性の観点から、2~22ppmがより好ましく、3~20ppmが更に好ましい。
なお、本発明において「ppm」とは、質量百万分率である。
緑変抑制剤(B)の含有量は、効果的に再生ポリエステルの緑変を抑制する観点から、ポリアミド層中、0.001~1.0質量%が好ましく、0.005~0.5質量%がより好ましく、0.008~0.1質量%が更に好ましく、0.01~0.08質量%がより更に好ましい。
【0046】
本発明の多層容器のポリアミド層における、黄変抑制剤(A)と緑変抑制剤(B)の質量比[(A)/(B)]は、好ましくは20/80~80/20であり、より好ましくは30/70~70/30であり、更に好ましくは40/60~60/40である。
前記質量比がこの範囲であると、リサイクル後に得られる再生ポリエステルの色相変化が小さくなり、特に無色性に優れるポリエステルが得られる。
【0047】
緑変抑制剤(B)は、染料及び顔料からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、透明性の観点から、染料であることがより好ましい。
染料のなかでも、アントラキノン系染料及びアゾ系染料からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、耐熱性の観点から、アントラキノン系染料がより好ましい。
また、緑変抑制剤(B)は、赤色染料であることが好ましく、アントラキノン系赤色染料及びアゾ系赤色染料からなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましく、耐熱性の観点から、アントラキノン系赤色染料が更により好ましい。
アントラキノン系赤色染料及びアゾ系赤色染料を用いることで、極めて微量で本発明の多層容器から得られる再生ポリエステルの緑変を抑制することができる。
アントラキノン系染料としては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0048】
【化2】
(式(2)中、2つのYはそれぞれ独立して水素原子又は式(2a)で示される基を表し、2つのXはそれぞれ独立して水素原子又は水酸基を示す。ただし、少なくとも1つのYは式(2a)で示される基である。
式(2a)中、Rは炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【0049】
式(2)において、2つのYはそれぞれ独立して水素原子又は式(2a)で示される基を表すが、少なくとも1つのYは式(2a)で示される基であり、1つのYが式(2a)で示される基であって、残りのYが水素原子であることが好ましい。
2つのXはそれぞれ独立して水素原子又は水酸基を示すが、1つのYが式(2a)で示される基である場合、同一の芳香環に結合するXは水酸基であることが好ましい。
式(2a)において、Rは炭素数1~4のアルキル基を示し、メチル基及びエチル基からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。なお、2つのYが式(2a)で示される基である場合、2つの式(2a)で示される基におけるRは同一でも異なっていてもよい。Rは、アミノ基に対してパラ位を置換していることが好ましい。
式(2)で示される具体的な化合物としては、Solvent Violet 36、Solvent Violet 13が挙げられ、Solvent Violet 36が好ましい。
緑変抑制剤(B)は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
緑変抑制剤(B)の市販品としては、MACROLEX Violet 3R Gran(アントラキノン系染料、LANXESS社製)、MACROLEX Violet B Gran(アントラキノン系染料、LANXESS社製)、MACROLEX Red Violet R Gran(Disperse Violet 31、Disperse Violet 26、Solvent Violet 59、アントラキノン系染料、LANXESS社製)、MACROLEX Red 5B Gran(Disperse Violet 31、Disperse Violet 26、Solvent Violet 59、アントラキノン系染料、LANXESS社製)、MACROLEX Red B(Solvent Red 195、アゾ系染料、LANXESS社製)が挙げられる。
【0051】
(その他の成分)
ポリアミド層には、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、熱安定剤、光安定剤、防湿剤、防水剤、滑剤、展着剤などが挙げられる。
ポリアミド層には、本発明の効果を損なわない範囲で、主成分であるポリアミド樹脂(Y)以外の樹脂を含有してもよい。
特に、後述のマスターバッチ法を用いて黄変抑制剤(A)を混合する場合には、マスターバッチに用いられるポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を含有することが好ましい。その場合、マスターバッチに用いられるポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂は、ポリアミド層全体の樹脂量に対して、1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。ポリアミド樹脂(Y)の含有量は、ポリアミド層全体の樹脂量に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
【0052】
<多層容器の構造・特性>
本発明の多層容器は、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有する多層構造を有し、多層容器のL*値が87.5以上である。
本発明の多層容器には、前記ポリエステル層と前記ポリアミド層以外の樹脂層を含んでもよいが、リサイクル時の分別を容易にする観点及び無色性を向上させる観点から、前記ポリエステル層と前記ポリアミド層以外の樹脂層の含有量は少ないことが好ましく、前記ポリエステル層と前記ポリアミド層以外の樹脂層は実質的に含まないことが好ましい。また、接着剤からなる接着層や無機物からなる無機層を設けてもよいが、これらについてもリサイクル時の分別を容易にする観点及び黄変抑制効果を向上させる観点から、接着層や無機層の含有量は少ないことが好ましく、接着層や無機層は実質的に含まないことが好ましい。
【0053】
本発明の多層容器は、2層以上の多層構造を有し、2~5層構造を有することが好ましく、3~5層構造を有することがより好ましく、3層構造又は5層構造を有することが更に好ましく、3層構造を有することがより更に好ましい。
本発明の多層容器の最外層はポリエステル層であることが好ましい。また、最内層もポリエステル層であることが好ましく、最外層と最内層がポリエステル層であることがより好ましい。
最外層がポリエステル層であると、多層容器は、耐衝撃性や外観、意匠性に優れるものとなる。
したがって、多層容器の構造としては、多層容器が2~5層構造を有し、最外層がポリエステル層であることが好ましく、多層容器が3~5層構造を有し、最外層と最内層がポリエステル層であることがより好ましい。
【0054】
2層構造の場合、最内層から、ポリアミド層/ポリエステル層であることが好ましく、3層構造の場合、最内層から、ポリエステル層/ポリアミド層/ポリエステル層であることが好ましく、5層構造の場合、最内層から、ポリエステル層/ポリアミド層/ポリエステル層/ポリアミド層/ポリエステル層であることが好ましい。
【0055】
本発明の多層容器は、多層容器のL*値が87.5以上であり、好ましくは89.0以上であり、より好ましくは89.5以上であり、更に好ましくは90.0以上である。また、100.0以下である。
L*値は明度を表し、L*値が大きい場合、白色度が高く、L*値が小さい場合、黒色度が高い。
多層容器のL*値が前記範囲であることによって、青みを効率的に低減させることができる。
多層容器のL*値が前記範囲であることによって、青みを低減させることができ、無色性に優れる理由は定かではないが、多層容器の表面や内部で吸収や散乱を受ける光が少なくなり、多層容器を透過もしくは反射する光に対する黄変抑制剤の影響が小さくなるためと推測される。
多層容器のL*値を前記範囲に調整する方法としては、たとえば、ポリエステル層及びポリアミド層が含む顔料の含有量を低減する方法、好ましくはポリエステル層及びポリアミド層に実質的に顔料を含まないようにする方法、また、容器の成形条件を調整する方法、ポリエステル層にリヒート剤を実質的に含まないようにする方法が挙げられる。
多層容器のL*値は、JIS K 7105に準じて測定することで求めることができる。具体的には、実施例に記載の測定方法によって求めることができる。
【0056】
本発明の多層容器は、中空容器であることが好ましく、該多層容器が中空容器である場合、胴部が、少なくとも多層構造を有する。そして、胴部におけるポリエステル層の厚さ(W)のポリアミド層の厚さ(S)に対する比(厚さ比W/S)は、2.5以上200以下が好ましい。なお、ポリエステル層の厚さとは、平均厚さを意味し、胴部においてポリエステル層が複数層ある場合には、その複数層の厚さを平均して1層あたりの平均厚さを求めたものである。ポリアミド層の厚さも同様である。
厚さ比W/Sが2.5以上であると、再生ポリエステルの製造方法における分別工程、特に風選分離や比重分離において、ポリアミド樹脂を、ポリエステル樹脂から分別し易いので好ましい。また、厚さ比W/Sが200以下であると、中空容器のガスバリア性に優れ、内容物を長期保存することができる。
分別工程における分別性を高めつつ、中空容器のガスバリア性を良好にする観点から、上記厚さ比(W/S)は、3~50がより好ましく、4~15が更に好ましい。
【0057】
また、多層容器が中空容器である場合、中空容器の胴部における総厚さ(すなわち、胴部の全層の合計厚さ)は、100μm~5mmが好ましく、150μm~3mmがより好ましく、200μm~2mmが更に好ましい。また、各ポリエステル層の厚さ(W)は、30μm~2mmが好ましく、40μm~1mmがより好ましく、50μm~500μmが更に好ましい。各ポリアミド層の厚さ(S)は、1~200μmが好ましく、3~100μmがより好ましく、8~50μmが更に好ましい。本発明では、ポリアミド層の厚さをこの範囲とすることで、ガスバリア性を確保しつつ、分別工程において、ポリアミド層がポリエステルから分別しやすくなる。
【0058】
本発明の多層容器が中空容器である場合、中空容器の内部に液体を充填して使用される液体用包装容器であることがより好ましく、飲料用包装容器であることが更に好ましい。内部に充填される液体としては、飲料、液体調味料、化学品、医薬品、洗剤等が挙げられ、本発明の多層容器によって酸素による劣化を有効に防止できる飲料が好ましい。
飲料としては、水、炭酸水、酸素水、水素水、牛乳、乳製品、ジュース、コーヒー、コーヒー飲料、炭酸ソフトドリンク類、茶類、アルコール飲料等が挙げられる。
液体調味料としては、ソース、醤油、シロップ、みりん類、ドレッシング等が挙げられる。
化学品としては、農薬、殺虫剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の多層容器の酸素バリア性は、ASTM D3985に準じて、MOCON法による酸素透過度試験により評価することができる。本発明の多層容器の酸素透過度(cc/(bottle・0.21atm・day))は、ポリエステル層とポリアミド層の質量割合が97:3となる全量25gの樹脂を内容積500mLの3層中空容器としたときに、0.040以下が好ましく、0.035以下がより好ましく、0.030以下が更に好ましい。なお、3層中空容器の製造は実施例の方法によることができる。
測定にはMOCON社製OX-TRAN2/61を使用し、前記500mLの容器に100mLの水を充填し、酸素分圧0.21atmの条件下で温度23℃、容器内部湿度100%RH、外部湿度50%RHにて、容器内部に1atmの窒素を20mL/minで流通し、クーロメトリックセンサーにて容器内部を流通後の窒素中に含まれる酸素を検出することで測定する。
【0060】
[多層容器の製造方法]
本発明の多層容器の製造方法は、下記工程1~3を含み、該多層容器が、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有し、ポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、黄変抑制剤(A)が、染料であり、黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、該多層容器のL*値が87.5以上である。
工程1:ポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)とを混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製する工程、
工程2:前記ポリアミド樹脂混合物と、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル樹脂組成物を共射出成形して、多層プリフォームを得る工程、
工程3:前記多層プリフォームをブロー成形する工程
【0061】
<工程1(ポリアミド樹脂混合物を調製する工程)>
工程1では、ポリアミド樹脂(Y)と、黄変抑制剤(A)とを混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製する。
通常、黄変抑制剤を容器全体に行きわたらせるためには、黄変抑制剤と全ての樹脂を攪拌混合あるいは混練する設備が必要となるが、本発明の多層容器の製造方法においては、少量のポリアミド樹脂(Y)に黄変抑制剤(A)を混合することによって、小スケールかつ短時間の混合で効率的に容器全体に黄変抑制剤を行きわたらせることができ、生産性に優れる。
混合する方法は、ドライブレンドでもよく、メルトブレンド(溶融混練)でもよいが、熱履歴を少なくし、樹脂や黄変抑制剤の劣化を防ぐ観点から、ドライブレンドやマスターバッチ法のメルトブレンドが好ましい。また、工程2で黄変抑制剤が成形機や成形機周辺に付着して残留することを防ぐ観点からは、メルトブレンドが好ましく、なかでも熱履歴を少なくし、樹脂や黄変抑制剤の劣化を防ぐ観点から、マスターバッチ法が好ましい。
【0062】
工程1においては、ペレット状のポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)を230℃以下で混合することが好ましく、150℃以下で混合することがより好ましく、100℃以下で混合することが更に好ましい。230℃以下で混合することで、熱履歴を少なくし、樹脂や黄変抑制剤の劣化を防ぐことができる。これは、ポリアミド樹脂がペレット状の形態を維持することができるため、熱劣化が少ないものと考えられる。230℃以下で混合する際には、ドライブレンドを行うことが好ましい。
工程1で好適に用いられる黄変抑制剤(A)は、前記(黄変抑制剤(A))の項に記載したものと同様であり、染料であり、アントラキノン系染料であることが好ましい。
また、黄変抑制剤(A)は、粉末状、分散液又は溶液であることが好ましく、粉末状であることがより好ましい。黄変抑制剤(A)が、これらの形態であることで、より容易かつ均一にポリアミド樹脂(Y)と混合することができる。
このように低温でペレット状のポリアミド樹脂(Y)と粉末状の黄変抑制剤(A)を混合することで、樹脂や黄変抑制剤の劣化を防ぎつつ、均一に黄変抑制剤を樹脂と混合することができる。
【0063】
また、工程1において、緑変抑制剤(B)を更に混合することが好ましい。
工程1で好適に用いられる緑変抑制剤(B)は、前記(緑変抑制剤(B))の項に記載したものと同様であり、染料及び顔料からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、アントラキノン系染料及びアゾ系染料からなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましく、アントラキノン系赤色染料及びアゾ系赤色染料からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが更に好ましく、耐熱性の観点から、アントラキノン系赤色染料であることがより更に好ましい。
また、緑変抑制剤(B)は、粉末状、分散液又は溶液であることが好ましく、粉末状であることがより好ましい。緑変抑制剤(B)が、これらの形態であることで、より容易かつ均一にポリアミド樹脂(Y)と混合することができる。
【0064】
ドライブレンドに用いられる混合装置としては、タンブラーミキサー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0065】
工程1において、ポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)をメルトブレンドで混合する方法としては、マスターバッチ法、フルコンパウンド法が挙げられ、マスターバッチ法が好ましい。
マスターバッチ法は、工程1において、少量のポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂と黄変抑制剤(A)を混練してマスターバッチとした後、残部のポリアミド樹脂(Y)と混合する方法である。また、マスターバッチを得る際には緑変抑制剤(B)も同時に混練することができる。すなわち、工程1において、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂と黄変抑制剤(A)を混練した後、ポリアミド樹脂(Y)と混合することが好ましく、工程1において、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂、黄変抑制剤(A)及び緑変抑制剤(B)を混練した後、ポリアミド樹脂(Y)と混合することがより好ましい。
マスターバッチには、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂を用いることが好ましく、ポリアミド樹脂(Y)との混和性の点からはポリアミド樹脂を用いることが好ましく、熱履歴による黄変を抑える点からはポリエステル樹脂を用いることが好ましい。なお、これらを混合して用いてもよい。
マスターバッチに用いるポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂(Y)が好ましく、残部のポリアミド樹脂(Y)と同じものがより好ましい。
マスターバッチに用いるポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂(X)が好ましく、ポリエステル層のポリエステル樹脂(X)と同じものがより好ましい。
マスターバッチに用いるポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂の量は、ポリアミド層全体の樹脂量に対して、1~20質量%を用いることが好ましく、3~15質量%を用いることがより好ましい。
【0066】
マスターバッチを得る方法として、ポリアミド樹脂又はポリエステル樹脂と黄変抑制剤(A)を混練する場合、マスターバッチに用いる樹脂の融点をTmとすると、混練温度(℃)は、混合を十分行う観点から、Tm+5~Tm+60が好ましく、Tm+10~Tm+50がより好ましく、Tm+15~Tm+40が更に好ましい。具体的には、245~300℃がより更に好ましく、250~290℃がより更に好ましく、255~280℃がより更に好ましい。また、混練時間は、混合を十分行う観点から、10~600秒が好ましく、20~400秒がより好ましく、30~300秒が更に好ましい。混練に使用される装置としては、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、ニーダー、連続混練機(単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等)等が挙げられる。
【0067】
また、マスターバッチと、残部のポリアミド樹脂(Y)と混合する方法としては、ドライブレンド、更に混練する方法が挙げられ、ドライブレンドが好ましい。ドライブレンドは、マスターバッチのペレットと残部のポリアミド樹脂(Y)のペレットをタンブラーミキサー等の混合装置で混合することが好ましい。
【0068】
フルコンパウンド法は、ポリアミド層に用いられる全量のポリアミド樹脂(Y)と黄変抑制剤(A)を混練して混合する方法である。
混練温度は、混合を十分行う観点から、245~300℃が好ましく、250~290℃がより好ましく、255~280℃が更に好ましい。また、混練時間は、混合を十分行う観点から、10~600秒が好ましく、20~400秒がより好ましく、30~300秒が更に好ましい。混練に使用される装置としては、開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、ニーダー、連続混練機(単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等)等が挙げられる。
本工程で得られるポリアミド樹脂混合物は、前記<ポリアミド層>と同様の組成であることが好ましい。
【0069】
<工程2(多層プリフォームを得る工程)>
工程2では、前記ポリアミド樹脂混合物と、ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル樹脂組成物を共射出成形して、多層プリフォームを得る。
前記ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(X)以外に前記<ポリエステル層>と同様の組成であることが好ましい。
共射出成形では、ポリエステル樹脂及びポリアミド樹脂混合物を金型にそれぞれ押し出し、共射出成形して、多層プリフォームを成形する。
【0070】
<工程3(ブロー成形する工程)>
工程3では、前記多層プリフォームをブロー成形する。
本発明の多層容器の製造方法においては、工程2により得られた多層プリフォーム(多層パリソン)を延伸ブローにより成形することが好ましい。
これらの中でも、工程2において、共射出成形にて得られた多層プリフォームを延伸ブロー成形することが好ましく、共射出成形により得られた多層プリフォームを二軸延伸ブロー成形することがより好ましい。なお、二軸延伸ブロー成形の条件としては、プリフォーム加熱温度を95~110℃、一次ブロー圧力を0.5~1.2MPa、二次ブロー圧力を2.0~2.6MPaとすることが好ましく、これにより、厚さムラや延伸ムラの発生が抑制され、優れた強度の多層容器を得ることができる。
【0071】
[再生ポリエステルの製造方法]
本発明の多層容器は、前記のようにリサイクルに適したものであり、本発明の多層容器を原料として、再生ポリエステルを製造することができる。
本発明の再生ポリエステルの製造方法は、前記多層容器からポリエステルを回収する工程を有することが好ましい。
すなわち、 ポリエステル樹脂(X)を含むポリエステル層と、ポリアミド樹脂(Y)及び黄変抑制剤(A)を含むポリアミド層とを有し、ポリアミド樹脂(Y)の含有量が、全ポリアミド層及び全ポリエステル層の合計量に対して、0.05~7.0質量%であり、黄変抑制剤(A)が、染料であり、黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400~800ppmであり、多層容器のL*値が87.5以上である、多層容器からポリエステルを回収する工程を有することが好ましい。
多層容器からの再生ポリエステルの製造方法は、前記多層容器から、ポリアミド層の全部又は一部を除去して、ポリエステル層を構成するポリエステルを回収して、そのポリエステルを再生ポリエステルとするものであることが好ましい。なお、多層容器からの再生ポリエステルの製造方法は、上記の方法に限定されるものではなく、ポリアミド樹脂を除去する工程を経ずに、再生ポリエステルを製造する方法であってもよい。
本製造方法で得られた再生ポリエステルは、樹脂成形体、繊維等様々な用途に用いることができる。
以下、本発明の再生ポリエステルの製造方法を詳述する。
【0072】
本製造方法において、多層容器は、使用済みのものが通常使用されるが、未使用品のものであってもよい。使用済みの多層容器としては、市場に一旦流通したものを回収したものが挙げられる。
本製造方法では、まず、多層容器に蓋が取り付けられている場合には、蓋を多層容器から取り外すことが好ましい。
次に容器を粉砕し、必要に応じて洗浄し、必要に応じてポリエステルを選択的に取り出す分離を行い、再生ポリエステルとして回収する(回収工程)。
次に、必要に応じて、造粒化を行い、ペレットとする(造粒工程)。
更に、必要に応じて、結晶化工程及び固相重合工程を行う(結晶化/固相重合工程)。
以下に各工程について説明する。
【0073】
<回収工程>
回収工程は、多層容器を粉砕して、再生ポリエステルを回収する工程である。
なかでも、多層容器を粉砕した後、ポリアミド層の全部又は一部を除去して、ポリエステルを選択的に取り出すことが好ましく、ポリエステルとポリアミド層を構成するポリアミド樹脂とを分別することがより好ましい。
多層容器の粉砕は、単軸粉砕機、二軸粉砕機、三軸粉砕機、カッターミル等の粉砕機を用いて行うことができる。粉砕して得られた粉砕物は、例えば、フレーク状、粉末状、塊状のものとなる。ただし、多層容器は、胴部等、厚さが数mm以下の薄厚状の多層積層構造となる部分が大部分であるため、通常、粉砕物の大部分がフレーク状のものとなる。なお、フレーク状である粉砕物とは、厚さが2mm以下程度の薄片状ないし扁平状であるものをいう。
【0074】
また、多層容器において、ポリエステル層とポリアミド層とは構造上一体となっているが、通常、これらは互いに接着しているものではなく、粉砕工程において、ポリエステルとポリアミド樹脂は別体の粉砕物として分離されやすい。また、フレーク状とすることで、後述する風選分離の気流により巻き上げて分離しやすくなる。
ただし、ポリエステルと、ポリアミド樹脂は、粉砕工程において必ずしも完全に分離できるものではなく、粉砕物には、ポリエステルの含有率が相対的に高いものと、ポリエステルの含有率が相対的に低くて、ポリアミド樹脂の含有率が比較的高いものに分離される。なお、以下では、説明の便宜上、ポリエステルの含有率が相対的に高いものを単にポリエステル、ポリアミド樹脂の含有率が比較的高いものを単にポリアミド樹脂という。
【0075】
前記のように、粉砕した粉砕物は、ポリエステルとポリアミド樹脂に分別する(分別工程)。
その分別方法としては、ポリエステルとポリアミド樹脂の比重の違いを利用した比重選別を使用することが好ましい。
すなわち、ポリアミド層の除去を、前記多層容器を粉砕した後、風選分離にて行うことが好ましい。
比重選別としては、具体的には、風力による粉砕物の選別を行う風選分離が挙げられる。風選分離は、例えば、内部に回転気流を発生させることが可能な分離装置内で、該分離装置によって生じた気流に当てられた粉砕物のうち、比重が大きいあるいは比表面積が小さく自重によって自然落下するものと、比重が小さいあるいは比表面積が大きく、気流によって巻き上げられるものとに分別回収する方法が挙げられる。
この方法では、ポリエステルの粉砕物が自重によって自然落下する一方、ポリアミド樹脂の粉砕物が巻き上げられることになるので、それにより、ポリエステルとポリアミド樹脂とを分別して回収することが可能になる。
このような風選分離においては、同じ粉砕物に対して、同様の操作を繰り返し行ってもよい。例えば、自然落下したものを更に風選分離して、再生ポリエステル中におけるポリエステルの含有率を高めてもよい。
なお、分別方法は、風選分離に限定されず、粉砕物を水等の液体に浸し、液体に対する粉砕物の比重差によって分別する方法、粉砕物に一定の振動を与えて比重の異なる粉砕物を分離し分別する方法等が挙げられる。
【0076】
<造粒工程>
回収された再生ポリエステルは、成形加工時等における取扱いを容易にするため、造粒化を行い、ペレットとすることが好ましい。
造粒化は、後述する結晶化/固相重合工程の前でも後でもよいが、結晶化/固相重合工程の前に行ったほうがよい。結晶化/固相重合工程の前に行うことで、結晶化/固相重合工程における取り扱い性も良好となる。
造粒工程では、粉砕物をメルトブレンドによって可塑化して造粒化することが好ましい。可塑化及び造粒化するための造粒装置としては、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等が挙げられるが、公知のものであればいずれのものも使用することができる。ペレットの形状としては、円柱状、球状、楕円球状であることが好ましい。
造粒化は、例えば、可塑化した再生ポリエステルをストランド状に押出し、水槽にて冷却しつつペレタイザーにてカットしてペレット化することが好ましい。水槽より取り出したペレットは、通常、表面に付着した水分を取り除くために乾燥される。
【0077】
<結晶化/固相重合工程>
前記のポリエステルを回収する工程の後に、結晶化工程及び固相重合工程から選ばれる1つ以上の工程を行うことが好ましく、結晶化工程及び固相重合工程の両方を行うことがより好ましい。結晶化/固相重合工程は、上記したペレット化したポリエステルに対して行うことが好ましいが、ペレット化されていないもの(例えば、粉砕物)に対して行ってもよい。
なお、結晶化と固相重合の両方を行う場合、ポリエステルを結晶化した後に、固相重合することが好ましい。
ポリエステルの結晶化は、ポリエステルを一定の加熱下に保持すること行う。結晶化は、ポリエステルを例えば100~230℃にて加熱して行うことが好ましい。ポリエステルは、結晶化することで、固相重合時や成形加工時に、ポリエステル同士が融着したり、ポリエステルが装置内面へ付着したりすることが防止される。
【0078】
固相重合は、(ポリエステルの融点-80℃)以上、ポリエステルの融点未満の温度で一定時間保つことで行われることが好ましい。融点未満とすることでポリエステルが溶融することを防止し、例えば、ポリエステルが装置表面に付着して作業効率が低下することを防止する。また、(融点-80℃)以上とすることで、十分な重合速度で重合が進行して所望の物性が得られやすくなる。
【0079】
固相重合は、真空下で実施してもよく、窒素やアルゴンなどの不活性ガス気流下で実施してもよい。真空下で実施する場合は、1.0torr以下が好ましく、0.5torr以下がより好ましく、0.1torr以下が更に好ましい。また、真空下あるいは窒素やアルゴンなどの不活性ガス気流下いずれにおいても、極力系中に残存する酸素濃度を低くすることが好ましく、酸素濃度は好ましくは300ppm以下、より好ましくは30ppm以下である。酸素濃度が30ppm以下とすることで、黄色化などの外観不良を起こしにくくなる。
固相重合を真空下で実施する場合は、ポリエステルの攪拌又は混合を常に繰り返しながら伝熱を均一に保つことが好ましい。不活性ガス存在下で実施する場合は、乾燥したガス気流下で常にポリエステルの表面が乾燥した気体に接した状態を保つことが好ましい。
【0080】
結晶化/固相重合工程を行うための固相重合装置は、加温ジャケットを装着したタンブラー型のバッチ式装置や、不活性ガス気流設備を備えた乾燥サイロ型、内部に撹拌翼及び排出スクリューを備えた結晶化装置及びリアクター等が挙げられる。なお、結晶化及び固相重合は、同じ装置で連続的に又は同時に行われることが好ましい。
固相重合の加熱時間は、装置、他条件を踏まえて適時決定するが、ポリエステルが十分な物性を得る時間であればよい。
固相重合は、高温下でポリエステルを長時間保持するため、ポリエステル中に不純物が存在すると色調等の品質を悪化させることがある。上記した除去工程において大部分のポリアミド樹脂が除去されていることが好ましく、この場合、固相重合時に生じるおそれがある品質の悪化が最小限に抑えられる。
【0081】
本発明の再生ポリエステルの製造方法においては、前記で説明した工程以外の工程を実施してもよく、多層容器内部に付着した内容物を除去するために、洗浄工程を行ってもよい。洗浄は、液体によってリンスすることが好ましく、水による洗浄、アルカリ性水溶液による洗浄、あるいはその両方を行ってもよい。
また、洗浄は、多層容器が粉砕物に粉砕される前に行ってもよいし、粉砕後に行ってもよいが、造粒、結晶化、固相重合のいずれかが行われる前に行う方が好ましい。更に、洗浄工程は、湿式粉砕機と呼ばれる洗浄と粉砕を同時に行う粉砕機で粉砕工程と同時に行ってもよい。
また、洗浄工程が行われる場合、洗浄工程の後に、乾燥工程が行われてもよい。乾燥工程を行うことで、本方法で得られる再生ポリエステルの水分量を少なくすることができるため、熱安定性等が高く、高品質の再生ポリエステルを提供することが可能になる。乾燥工程は、例えば、ドライヤーによる送風又は熱風等を用いて行うことができる。
【0082】
再生ポリエステルの製造方法が、ポリアミド樹脂の除去工程を有する場合には、得られた再生ポリエステルにおいて、ポリアミド樹脂の含有量は、好ましくは1質量%未満であり、より好ましくは0.8質量%未満、更に好ましくは0.6質量%未満である。このように、ポリアミド樹脂の含有量を少なくすることで、再生ポリエステルの品質が良好となる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に制限されるものではない。
【0084】
[原料]
実施例及び比較例で使用したポリエステル樹脂、黄変抑制剤及び緑変抑制剤は以下のとおりである。また、ポリアミド樹脂は以下の製造例1で製造したものを用いた。
<ポリエステル樹脂>
8912:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.85dL/g)、商品名:TYPE 8912、Indorama Ventures製、リヒート剤を含まない
BK2180:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.83dL/g、融点:248℃)、商品名:BK2180、三菱ケミカル株式会社製、リヒート剤を含まない
1101:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.83dL/g)、商品名:TYPE 1101、Indorama Ventures製、リヒート剤を含む
<黄変抑制剤>
Blue RR:Solvent Blue 97(アントラキノン系染料)、商品名:MACROLEX Blue RR Gran、LANXESS社製、
Blue 690:Solvent Blue 104(アントラキノン系染料)、商品名:Oracet Blue 690、BASF社製
<緑変抑制剤>
Violet 3R:Solvent Violet 36(アントラキノン系染料)、商品名:MACROLEX Violet 3R Gran、LANXESS社製
【0085】
<ポリアミド樹脂>
製造例1(ポリアミド樹脂(Y1)の製造)
撹拌機、分縮器、全縮器、温度計、滴下ロート、窒素導入管、及びストランドダイを備えた内容積50リットルの反応容器に、精秤したアジピン酸15,000g(102.6mol)、次亜リン酸ナトリウム一水和物(NaH2PO2・H2O)13.06g(123.3mmol、ポリアミド中のリン原子濃度として151ppm)、酢酸ナトリウム6.849g(83.49mmol、次亜リン酸ナトリウム一水和物に対するモル数比として0.68)を入れ、十分に窒素置換した後、更に少量の窒素気流下で系内を撹拌しながら170℃まで加熱した。これにメタキシリレンジアミン13,896g(102.0mol、仕込みモル比として0.994)を撹拌下に滴下し、生成する縮合水を系外へ除きながら系内を連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下終了後、内温を260℃として40分反応を継続した。その後、系内を窒素で加圧し、ストランドダイからポリマーを取り出してこれをペレット化し、約24kgのポリアミドを得た。
次いで、窒素ガス導入管、真空ライン、真空ポンプ、内温測定用の熱電対を設けたジャケット付きのタンブルドライヤーに前記ポリアミドを仕込み、一定速度で回転させつつ、タンブルドライヤー内部を純度が99容量%以上の窒素ガスで十分に置換した後、同窒素ガス気流下でタンブルドライヤーを加熱し、約150分かけてペレット温度を150℃に昇温した。ペレット温度が150℃に達した時点で系内の圧力を1torr以下に減圧した。更に昇温を続け、約70分かけてペレット温度を200℃まで昇温した後、200℃で30~45分保持した。次いで、系内に純度が99容量%以上の窒素ガスを導入して、タンブルドライヤーを回転させたまま冷却してポリアミド樹脂(Y1)を得た。アミノ末端基濃度を測定した結果、14.4μmol/gであった。
【0086】
<マスターバッチ法によるポリアミド樹脂混合物の製造>
製造例2
ポリアミド樹脂(Y1)98.8質量%、黄変抑制剤(A)としてBlue RR 0.6質量%、及び緑変抑制剤(B)としてViolet 3R 0.6質量%をあらかじめドライブレンドした。次にこのドライブレンド混合物を、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SX)を用いて、260℃で溶融混練してマスターバッチペレットを得た。その後、ペレットを真空乾燥機にて、150℃で5時間乾燥してマスターバッチAを得た。
次に、得られたマスターバッチAと残部のポリアミド樹脂(Y1)を、質量比率10/90(マスターバッチA/残部のポリアミド樹脂=10/90)で混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製した。
【0087】
製造例3
ポリアミド樹脂(Y1)99.2質量%、黄変抑制剤(A)としてBlue RRを0.4質量%、及び緑変抑制剤(B)としてViolet 3Rを0.4質量%の配合比とした以外は製造例2と同様にして、マスターバッチBを得た。
次に、得られたマスターバッチBと残部のポリアミド樹脂(Y1)を、質量比率10/90(マスターバッチB/残部のポリアミド樹脂=10/90)で混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製した。
【0088】
製造例4
ポリアミド樹脂(Y1)98.8質量%、黄変抑制剤(A)としてBlue 690を0.6質量%、及び緑変抑制剤(B)としてViolet 3Rを0.6質量%の配合比とした以外は製造例2と同様にして、マスターバッチCを得た。
次に、得られたマスターバッチCと残部のポリアミド樹脂(Y1)を、質量比率10/90(マスターバッチC/残部のポリアミド樹脂=10/90)で混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製した。
【0089】
製造例5
ポリアミド樹脂(Y1)98.0質量%、黄変抑制剤(A)としてBlue RRを1.0質量%、及び緑変抑制剤(B)としてViolet 3Rを1.0質量%の配合比とした以外は製造例2と同様にして、マスターバッチDを得た。
次に、得られたマスターバッチDと残部のポリアミド樹脂(Y1)を、質量比率10/90(マスターバッチD/残部のポリアミド樹脂=10/90)で混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製した。
【0090】
製造例6
ポリアミド樹脂(Y1)99.6質量%、黄変抑制剤(A)としてBlue RRを0.2質量%、及び緑変抑制剤(B)としてViolet 3Rを0.2質量%の配合比とした以外は製造例2と同様にして、マスターバッチEを得た。
次に、得られたマスターバッチEと残部のポリアミド樹脂(Y1)を、質量比率10/90(マスターバッチE/残部のポリアミド樹脂=10/90)で混合して、ポリアミド樹脂混合物を調製した。
【0091】
[多層容器]
実施例1~4及び比較例1~4(多層容器の製造)
<プリフォーム成形>
2本の射出シリンダーを有する射出成形機(住友重機械工業株式会社製、型式DU130CI)、及び、2個取りの金型(Kortec製)を使用して、一方の射出シリンダーから表1に示すポリエステル樹脂を、他方の射出シリンダーから、表1に示すポリアミド樹脂混合物を射出して、以下に示した条件で、ポリエステル層/ポリアミド層/ポリエステル層からなる3層プリフォーム(プリフォーム1つ当たり、25g相当の設定)を、プリフォーム全体に対するポリアミド層の質量が表1の記載となるように、射出成形して製造した。プリフォームの形状は、全長95mm、外径22mm、肉厚4.0mmであった。3層プリフォーム成形条件は、以下に示したとおりである。
スキン側射出シリンダー温度 :285℃
コア側射出シリンダー温度(3層のみ):265℃
金型内樹脂流路温度 :285℃
金型冷却水温度 :15℃
サイクルタイム :40秒
【0092】
<ボトル成形>
前記で得られたプリフォームをブロー成形装置(EFB1000ET、フロンティア製)により二軸延伸ブロー成形しボトル(中空多層容器)を得た。ボトルの全長は223mm、外径は65mm、内容積は500mLであり、底部はペタロイド形状である。胴部にディンプルは設けなかった。2軸延伸ブロー成形条件は以下に示したとおりである。
プリフォーム加熱温度:103℃
延伸ロッド用圧力:0.7MPa
一次ブロー圧力:1.1MPa
二次ブロー圧力:2.5MPa
一次ブロー遅延時間:0.30秒
一次ブロー時間:0.30秒
二次ブロー時間:2.0秒
ブロー排気時間:0.6秒
金型温度:30℃
【0093】
[再生ポリエステルの製造]
<回収・造粒工程>
前記実施例1~4及び比較例1~4で得られた中空多層容器10kgをメッシュ径8mmの粉砕機で粉砕し、得られたフレーク状の粉砕物を再生ポリエステルとして回収した。
回収した再生ポリエステルを二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SX)で、ヒーター温度270℃、吐出速度20kg/時間にて押し出し、ストランド状とし、水槽内にて冷却しつつペレタイザーにてカットを行ってペレット化した。なお、ポリアミド層の風選分離は行わなかった。
【0094】
<結晶化/固相重合工程>
前記造粒工程で得られたペレットを200℃にて7時間、1torr以下に減圧した真空下にて加熱した。加熱処理後のペレットを取り出し、黄色度Δb*を評価した。結果を表1に示す。
【0095】
[測定方法]
<L*値>
前記の実施例及び比較例で得られたボトル(多層容器)の底部から5~9cmの高さの胴部を切り出し、JIS K 7105に従って、ヘーズメーターCOH400(日本電色工業製)を用いて測定し、ボトル胴部のL*値を測定した。
【0096】
<b*値>
前記の実施例及び比較例で得られたボトル(多層容器)の底部から5~9cmの高さの胴部を切り出し、JIS K 7105に従って、ヘーズメーターCOH400(日本電色工業製)を用いて測定し、ボトル胴部のb*値を測定した。
なお、b*値は色度を表す。+b*は黄方向、-b*は青方向を表す。b*値が大きく、b*値の絶対値が小さいほど、青みが少なく、無色性に優れる。
【0097】
<青み官能評価>
白色の照明を点灯した部屋において、前記の実施例及び比較例で得られたボトル(多層容器)を白色の紙の上に立てて、ボトルの背後10cmの位置に白色の紙を立てて、立てた紙の対面からボトルを目視で観察し、ボトルの青みを下記の基準で評価した。
A:青みを感じない。
B:青みを感じる。
C:著しい青みを感じる。
【0098】
<黄色度Δb*>
[再生ポリエステルの製造]で得られた再生ポリエステルペレットの黄色度Δb*は、以下の方法により測定し、下記基準で評価した。
ペレットの色調はJIS Z 8722に基づき、色差計ZE-2000(日本電色工業製、12V 20Wのハロゲンランプ光源)を用い、30mmφのセル容器にペレットを満注し、反射法にて4回測定した平均値として測定した。
なお、b*値は色度を表す。+b*は黄方向、-b*は青方向を表す。Δb*値の絶対値が小さいほど、黄変が抑制されており、無色度が高い。Δb*値は、前記の実施例及び比較例の試料(ボトルから回収した再生ポリエステル)のb*値と、実施例及び比較例と同じ処理を行ったポリエステル樹脂単体のb*値との差を示す。
【0099】
【0100】
表1に示す通り、本発明の多層容器は、青みが少なく無色性に優れ、当該多層容器からリサイクルして得られた再生ポリエステルの黄色度が小さく、無色性に優れることがわかる。
一方、多層容器のL*値が87.5未満である比較例1の多層容器と、黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、800ppmを超える比較例2の多層容器は、青みがあり、無色度に劣ることがわかる。黄変抑制剤(A)の含有量が、ポリアミド層に対して、400ppm未満の比較例3、4の多層容器は、当該多層容器からリサイクルして得られた再生ポリエステルの黄色度が高く、無色度に劣ることがわかる。