(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】小型水力発電用水車装置
(51)【国際特許分類】
F03B 17/06 20060101AFI20220329BHJP
F03B 3/04 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
F03B17/06
F03B3/04
(21)【出願番号】P 2018197035
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018080235
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507092344
【氏名又は名称】大原 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大原 幸雄
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-226803(JP,A)
【文献】特開2018-091457(JP,A)
【文献】実開昭59-047397(JP,U)
【文献】特開2012-229687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/04
F03B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
前記圧力管の流入口が形成された一端側には取水桝が設置され、前記取水桝は、流水の上流側を頂部とした略5角形の箱型に形成され、上流側の頂部には
離間させて二重にした壁が形成され、上流側の壁の上端は水面より高くし、下流側の壁は流水面より低くし、上流側と下流側の前記壁
との間の底部を開口した請求項1に記載の小型水力発電用水車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高低差の小さな用水路等に設置して発電機を駆動する為の小型水力発電用水車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、用水路などの流れている水の中に入れた水車や、パイプを設置して落差を利用してパイプの下流部で発電していた。水量の不安定や小落差では発電する為の水力が不十分なことから、十分な発電ができない。これは、用水路などの落差が小さい為に水車を駆動する為の水圧や水量が小さいことに起因している。このような、落差が小さい場合にも発電効率を高めるために、サイフォンの原理を応用した水力発電装置である。
【0003】
サイフォン式水力発電装置としては、例えば、実開昭59-184382号公報に示すように、水源の水を発電装置の水車にサイフォン管をもって導水するとともに、サイフォン管の最高部上面に、空気溜を連設することにより、水流に混入してサイフォン管に流入した空気を集めるようにし、その水位を探知して、自動的に真空ポンプにより排気することが示されている。このように、従来一般のサイフォン式水力発電装置は、サイフォン管の最高部に溜まる空気を真空ポンプ等によって排気し、サイフォン管内部の空気を排除することにより、サイフォン現象を機能させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サイフォン式水力発電装置は、特許文献1に示されているようにサイフォン現象を機能させるために、サイフォン管の最高部の空気を排気し、サイフォン管内部を水で充満させるために、真空ポンプ等の排気装置を設置する必要があり、装置が複雑になり、しかも高額になる問題があった。
【0006】
また、サイフォン管内に導水された水流により回転する水車は、一般には、プロペラ型や螺旋形が多用されているが、構成が複雑なうえに、所定の内径の小さなサイフォン管 には不向きであり、所定の効率が得られない問題がある・
【0007】
さらに、用水路などに設置した場合、浮遊ごみや小石がサイフォン管内に流入する事が多々あり、これらによって水車を停止或いは制動させて、発電できなくなることもあった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、簡易な構成により、特別な装置を設ける事もなく、サイフォンを作用させることができ、高効率で水車を回転駆動する事ができる小型水力発電用水車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による小型水力発電用水車は、円筒状に形成された圧力管と、この圧力管の内部に回転自在に配設され、内方に向けて突出した複数の羽根を形成するとともに、一端側に発電機に連結されるシャフトが取り付けられた円筒型水車を備え、前記圧力管の流入口から流水を流入させて前記円筒型水車を回転駆動する小型水力発電用水車であって、前記圧力管の一端側に形成された流入口は、川に浸漬して水面より水面下とし、前記流入口の開口面が下側を向くように傾斜させて形成し、前記円筒型水車を配設した前記圧力管の他端側を流入口よりも川底側にさげて配置することを要旨としている。
【0010】
また前記円筒型水車に形成される羽根は、円筒の周面に軸方向と円周方向に切り込みを入れて内方向に向けて折曲することにより三角形状に形成する事が望ましい。
【0011】
さらに、前記圧力管の流入口が形成された一端側には取水桝が設置され、前記取水桝は、流水の上流側を頂部とした略5角形の箱型に形成され、上流側の頂部には離間させて二重にした壁が形成され、上流側の壁の上端は水面より高くし、下流側の壁は流水面より低くし、上流側と下流側の前記壁との間の底部を開口する事が望ましい。
【0012】
本発明の小型水力発電用水車によれば、円筒状に形成された圧力管の一端側に形成された流入口を、川に浸漬して水面より水面下とし、流入口の開口面が下側に向かうように傾斜させて形成しているので、流入口に流入した水が圧力管に向けて押し込められ、しかも、水に含まれる気泡等の空気が流入口の内側から浮上するので、圧力管内は空気が排除されることからサイフォン現象が生じる。この結果、圧力管内が真空状態になるので、用水路の流速より早くなり、圧力管内の内部に回転自在に配設された円筒型水車をより高速で回転駆動する事ができ、円筒型水車に連結した発電機を効率よく駆動して発電する事が可能となる。
【0013】
また、円筒型水車に形成される羽根は、円筒の周面に軸方向と円周方向に切り込みを入れて対角線を内方向に折曲することにより三角形状に形成しているので、構成が簡単で、しかも複数の羽根を容易に製作できる。しかも三角形状に形成された複数の羽根によって水流を回転方向に駆動するので、円筒型水車を効率よく回転させることができる。
【0014】
さらに、圧力管の流入口が形成された一端側に配設した取水桝が、離間した二重の壁の高さを変え、二つの壁の管の底面側から水を流入するようにしているので、上流側の壁では浮遊ごみを阻止し、下流川の壁では小石の流入を阻止することが可能となり、浮遊ごみや小石による円筒型水車の停止を未然に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の小型水力発電用水車の実施例を示す側面図である
【
図2】
図1に示す小型水力発電用水車の平面図である。
【
図4】圧力管によるサイフォン現象を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による小型水力発電用水車は、円筒状に形成された圧力管と、この圧力管の内部に回転自在に配設され、内方に向けて突出した複数の羽根を形成するとともに、一端側に発電機に連結されるシャフトが取り付けられた円筒型水車を備え、前記圧力管の流入口から流水を流入させて前記円筒型水車を回転駆動する小型水力発電用水車であって、前記圧力管の一端側に形成された流入口は、川に浸漬して水面より水面下とし、前記流入口の開口面が下側を向くように傾斜させて形成し、前記円筒型水車を配設した前記圧力管の他端側を流入口よりも川底側にさげて配置している。
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。
図1、
図2は、本発明による小型水力発電用水車の実施例を示している。圧力管1は、塩化ビニール製の長さが概ね1m~4mのパイプ等のプラスチックによって円筒状に形成され、図示右方の一端側には、流入口1aが形成されている。この流入口1aは、図示のように、開口面の切り口が下側に向くように傾斜させて形成され、楕円型の流入口1aの開口面積Mは、圧力管1の内径よりも大きくなっている。また傾斜角は、圧力管1の上面に対して概ね30度から60度としているが、後述する円筒型水車2に取り付けられるシャフト3が導出されるような角度に設定することが望ましい。一方、圧力管1の他端側は、直角に形成されている。なお、圧力管1の流入口1aと他端側との高低差を大きくする場合には、圧力管1 の他端側に追加の圧力管1を連結することが望ましい。
【0018】
この圧力管1の内部には、円筒型水車2が回転自在に配設されている。円筒型水車2は圧力管1と同様に塩化ビニール製の長さが概ね1m~4mのパイプ等のプラスチックによって円筒状に形成されている。さらに、円筒型水車2の外形は圧力管1の内径よりも小さく、圧力管1内で自由に回転できるように設定されている。
【0019】
円筒型水車2の内面には、
図3に示すように、複数の羽根2aが内方に向けて突出するように形成されている。これらに羽根2aは、円筒型水車2の周面に対して軸方向と円周方向に各各1本の切り込みを入れその対角に直線を円筒型水車2の内方に向けて折曲することにより三角状に形成され、三角状の先端側が内方に向けて突出される。この羽根2aは必要に応じて任意の数に設定され、また形成する円周方向の位置は、回転バランスを考慮して2~4個の羽根2aを等間隔に配置することが望ましい。なお、複数の羽根2aは、同一円上でなくとも、軸方向にずらしながら螺旋状に配置しても良い。
【0020】
この円筒型水車2の圧力管1の流入口1a側には、
図1に示す発電機4に連結されるシャフト3が取り付けられている。そして、円筒型水車2の回転によってシャフト3を介して発電機4を回転駆動する事により発電が行われる。
【0021】
一方、圧力管1の流入口1aには取水桝5が設置され、この取水桝5を介して流入口1aに水が流入される。取水桝5は、
図1図2及び
図5に示すように、例えば用水路のような川6の上流側を頂部とした略5角形の箱型に形成され、上流側の頂部には離間させて壁5a,5bが二重に形成されている。そして上流側の壁5aの上端は、川6の流水面6aよりも高くし、下流側の壁5bは流水面6aよりも低く形成され、上流側と下流側の壁5a5bとの間の底部は開口され、さらに、両側も壁を設ける事が無き解放されている、この取水桝5は、プラスチック。金属板、木製のいずれかでも良い。
【0022】
次に、本発明による小型水力発電用水車の動作について説明する。この小型発電用水車は、
図1、
図4に示すように、例えば、用水路の中に浸漬する。この時、図示のように、圧力管1の他端側が流入口1aよりも下流側の川底に下げて配設する。
【0023】
用水路のような川6から流れる水は、まず取水桝5に流入して、圧力管1の流入口1aに流入する。このとき、圧力管1は川6に浸漬しているので、流入口1aは水面6aの水面下になる。水面6aには大気圧により押圧される一方、水には反力としての浮力が生ずる。圧力管1に流入口1aは、図示のように、開口面の切り口が下側に向かうように傾斜させた開口面積Mを有していることから、
図4に示すように、流入口1aの垂直方向の開口上部には、浮力を生じた水が、矢示のように、流入口1aの内面上部に上昇する。この現象は、前述した、従来一般に知られたサイフォン式水力発電装置におけるサイフォン管の最
上部の空気瑠を排気することと同じであり、流入口1aを傾斜させているので、開口面積Mの開口の上部には空気が排除された真空状態になる。この時、流入口1aの開口以外の場所では、点線で示すように、圧力管1の周面により水の上昇は阻止される。この結果、圧力管1の流入口1aには、川6の水が勢いを増して流入する。
【0024】
圧力管1に勢いを増して流入した水は、円筒型水車2に流入する。水は、円筒型水車2の内部に流入する事により、内方に向けて突出するように形成された複数の羽根2aを押圧する事によって回転する。複数の羽根2aは、軸方向に対して傾斜した三角状に形成されているので、この羽根2aによって回転駆動力が得られる。一方、水は圧力管1の内面と円筒型水車2の内面にも流入する。このとき、円筒型水車2の回転によって周囲に浮力が生じ、一種の動圧軸受けと同等の機能が生じることから、接触負荷が大幅に軽減される。このように、円筒型水車2の回転によってシャフト3を介して発電機4に回転駆動される。
【0025】
圧力管1の流入口1aには、取水桝5を経由して水が流入する。取水桝5は、前述したように、略5角形の箱型に形成され、上流側の頂部には、離間させて壁5a、5bが二重に形成され、上流側の壁5aの上端は、川6の流水面6aよりも高くし、下流側の壁5bは流水面、6aよりも低く形成され、上流側と下流側に壁5a5bとの間の底部は開口され、両側も解放されている。用水路のような川6には、種種の浮遊物7及び小石等の固形物8が流れ、これらが円筒型水車2に侵入した場合には、回転不能の事故が発生する。例えば、川6の水面6aに浮遊物7が流れた場合には、取水桝5の上流側の壁5aの上端を川の6流水面6aよりも高くして頂部を矢のように形成されているので、浮遊物7は上流側の壁5aの左右いずれかに振り分けられて下流方向に流れる。
【0026】
一方、小石等の固形物8は比重が大きく沈殿するため、頂部を矢のように形成された下流側の壁5bの外面によって、
図2及び
図5に示すように、左右いずれかに振り分けられる。上流側の壁5aと下流側の壁5bとの間の両側が解放されているので、固形物8は壁の5bの外面に沿って押し流され、取水桝5の外方に流出する。このため、固形物8も圧力管1に到達させないようにしている。
【0027】
このように、取水桝5は、上流側の壁5aによって浮遊物7を排除し、下流側の壁5bによって小石等の固形物8を排除するので、圧力管1の流入口1aには川6の流水のみが流され、圧力管1にサイフォン現象をさせる事ができ、この結果、円筒型水車2を最大限に効率よく回転駆動させることが可能となる。
【0028】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種種変形可能であることは言うまでもない。例えば上述した実施例において、圧力管の流入口の傾斜角度は、図示の角度よりも鋭角または鈍角にしても良くまた、開口面は直線でなく、湾曲させても良い。さらに取水桝の形状も川の状態に応じて適宜に変更しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 圧力管
1a 流入口
2 円筒型水車
2a 羽根
3 シャフト
4 発電機
5 取水桝
5a 壁
5b 壁
6 川
6a 流水面
7 浮遊物
8 小石