(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60T 7/12 20060101AFI20220329BHJP
B60T 7/14 20060101ALI20220329BHJP
B60W 40/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B60T7/12 B
B60T7/12 F
B60T7/14
B60W40/00
(21)【出願番号】P 2018086413
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】崔 耿秀
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190048(JP,A)
【文献】特開2011-145266(JP,A)
【文献】特開2008-279924(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114625(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
B60T 7/14
B60W 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動停止条件が成立した場合に、制動制御を実施することにより車両を自動的に停止させる車両制御装置であって、
地図情報から複数の停車地点候補を検索する停車地点候補検索部と、
前記車両の速度が所定値になるように減速しながら、前記車両の走行抵抗に関する抵抗パラメータ、及び、前記車両の慣性に関する慣性パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記抵抗パラメータ及び前記慣性パラメータに基づいて前記車両の制動距離を算出する制動距離算出部と、
前記複数の停車地点候補から前記制動距離に基づいて目標停車地点を設定する目標停車地点設定部と、
前記抵抗パラメータ及び前記慣性パラメータに基づく減速プロファイルに従って、前記制動距離に基づいて設定される制動開始位置から減速することにより、前記目標停車地点に停車するように前記制動制御を実施する制御部と、
を備える、車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動停止条件が成立した場合に、制動制御を実施することにより車両を自動的に停止させる車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行中の車両において所定の自動停止条件が成立した場合に、制動制御を実施することにより車両を自動的に停止させる車両制御を行う車両が知られている。この種の車両制御を行うシステムとしては、例えば、走行中の運転者をモニタリングし、運転者に異常が確認された場合に、車両を自動停車させるデッドマンシステムが知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、上述のようなデッドマンシステムにおいて、車両の乗員状態に異常が発生した場合に、車両の横加速度及び横ジャークが所定の閾値以下となるように車両のステアリングを制御することで、自動停止における車両挙動を支援することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、このような自動的な制動制御を実施するシステムでは、自動停止条件が成立した場合に、予め設定された所定の目標減速プロファイルに従った制動が実施される。ここで目標減速プロファイルは、典型的な走行状態を想定して一律に設定されることが一般的である。しかしながら、車両の制動特性は、走行路の勾配や摩擦などの路面状況、又は、車両重量の増減によって変化する。そのため、一律に設定された目標減速プロファイルに基づく制動制御では、実際の車両の速度プロファイルが目標減速プロファイルから乖離してしまい、停車地点が目標からずれてしまうおそれがある。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、車両の走行状態に応じた制動制御を実施することにより、目標停車地点に対して精度のよい停車が可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る車両制御装置は上記課題を解決するために、
自動停止条件が成立した場合に、制動制御を実施することにより車両を自動的に停止させる車両制御装置であって、
地図情報から複数の停車地点候補を検索する停車地点候補検索部と、
前記車両の速度が所定値になるように減速しながら、前記車両の走行抵抗に関する抵抗パラメータ、及び、前記車両の慣性に関する慣性パラメータを算出するパラメータ算出部と、
前記抵抗パラメータ及び前記慣性パラメータに基づいて前記車両の制動距離を算出する制動距離算出部と、
前記複数の停車地点候補から前記制動距離に基づいて目標停車地点を設定する目標停車地点設定部と、
前記抵抗パラメータ及び前記慣性パラメータに基づく減速プロファイルに従って、前記制動距離に基づいて設定される制動開始位置から減速することにより、前記目標停車地点に停車するように前記制動制御を実施する制御部と、
を備える。
【0008】
上記構成によれば、車両の速度が所定値になるように減速しながら抵抗パラメータ及び慣性パラメータを求めることで、その後、目標停車地点に向けて減速する際に、抵抗パラメータ及び慣性パラメータによって減速プロファイルを補正し、精度のよい停車制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の車両制御装置で実施される車両制御方法を工程毎に示すフローチャートである。
【
図4】第1制動制御の実施時における車両移動距離及び車両速度の時間的変化の一例を示すグラフである。
【
図6】第2制動制御の実施時における車両移動距離及び車両速度の時間的変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る車両制御装置1の構成を示すブロック図である。車両制御装置1は、車両に搭載されるコントロールユニットであり、例えば電子演算装置に所定のプログラムがインストールされることにより構成される。車両制御装置1が搭載される車両は、内燃機関や電動機(モータ)などの動力源から出力される動力によって走行可能な任意の車両を含むが、本実施形態では特に、乗員や積載物によって車重が変動しやすいトラックやバスなどの商用車を例示説明する。
【0012】
車両には、自動停止条件が成立した場合に、車両を自動的に停止させるための自動停止制御装置2が搭載される。自動停止制御装置2は、例えばデッドマンシステムであり、不図示のモニタリング装置(カメラ等)によって車両の運転者をモニタリングし、運転者に異常が発生した場合に自動停止条件が成立した判断し、車両を停止させるための命令を車両制御装置1に対して送信する。車両制御装置1は、自動停止制御装置2から受信した命令に従って制動制御を実施することで、車両は停止状態に至るまで制動制御がなされる。
【0013】
尚、上述の実施形態では自動停止制御装置2としてデッドマンシステムを搭載した車両について説明したが、デッドマンシステムに代えて又は加えて、他の自動停止制御装置を搭載してもよい。自動停止制御装置として、例えば定速走行路に自車が他車や障害物に接近した際に自動的に制動制御を行うオートクルーズコントロールなどを採用してもよい。
【0014】
車両制御装置1は、車両の速度を検出する車両速度検出部4を備える。車両速度検出部4は、車両に搭載された車速センサ6からの信号を取得することにより、車両の速度を検出する。
【0015】
車両制御装置1は、メモリ等の記憶部8を備える。記憶部8には、車両制御装置1の制御実施に必要な各種情報が記憶されており、特に目標減速プロファイル10が記憶されている。目標減速プロファイル10は、自動停止制御装置2で異常が検知されることで制動制御を実施する際に、制動開始時点の速度から制動終了時点の速度(ゼロ)に至るまでの典型的な速度変化が、車両の典型的な走行状態(走行路の摩擦や勾配、車両重量など)を前提として規定される。本実施形態では特に、目標減速プロファイル10は、制動開始時点の近傍と制動終了時点の近傍において、それらの中間時点に比べて速度変化が緩やかになるプロファイル(例えばTrapezoidalプロファイル)が設定される。これにより、制動制御が実施された際に、車両を安定した挙動で停止させられるようになっている。
【0016】
また記憶部8は、地図情報11が記憶されている。地図情報11は車両周辺の地理的情報を含んでおり、特に、車両が適切に停車可能な停車地点候補が予め登録されている。記憶部8に記憶された地図情報11は、停車地点候補検索部13によって読み出し可能であり、停車地点候補検索部13は、位置情報取得部15によって取得された車両の位置情報(例えばGPS信号)に基づいて、地図情報11から車両の近傍にある停車地点候補を検索可能に構成されている。
【0017】
車両制御装置1は、自動停止条件が成立した場合、車両の速度が目標減速プロファイル10に追従するように制動制御を実施する制御部12を備える。制御部12は、目標減速プロファイル10に基づいて求められる目標速度と、車両速度検出部4で取得した車速センサ6の測定値との偏差に基づいて、制動装置の駆動制御を実施するブレーキECU14に対してフィードバック制御を行う。
【0018】
ブレーキECU14は、車両に搭載されたブレーキシステムを制御対象とするコントロールユニットであり、車両(制御部12)からの制御信号に応じて、所定の制動力が発揮可能に構成されている。尚、ブレーキECU14の制御対象となるブレーキシステムは、ディスクブレーキやドラムブレーキなど、各種方式が採用可能である。
【0019】
制御部12は、ゲインKを含む伝達関数f(x)を有するPID制御器であり、入力値(車両速度検出部4で取得した車速センサ6の測定値との偏差x)に対して、所定の制御信号Fを出力する。ここで車両制御装置1は、車両の走行状態に応じて、制御部12の伝達関数f(x)に対して補正を行うための第1補正部16及び第2補正部18を備える。第1補正部16及び第2補正部18は、パラメータ算出部19で算出されるパラメータに基づいて制御部12の伝達関数f(x)に対して補正を行う。
【0020】
第1補正部16は、制御部12の伝達関数f(x)を車両の走行抵抗に関する抵抗パラメータGに基づいて補正する。ここで抵抗パラメータGは、走行路の勾配や摩擦などの路面状況を含む車両の走行抵抗に関するパラメータであり、パラメータ算出部19は、自動停止条件の成立時から所定期間における速度の変化に基づいて求める。尚、抵抗パラメータGの算出方法については後述する。
【0021】
第2補正部18は、車両の速度と目標減速プロファイル10との偏差が最小になるように慣性パラメータMを求める。ここで慣性パラメータMは、車両重量を含む車両の慣性に関するパラメータであり、パラメータ算出部19は、第1補正部16によって補正された伝達関数に基づいて、車両の速度と目標減速プロファイル10との偏差が最小になるように求める。尚、慣性パラメータMの算出方法については後述する。
【0022】
制御部12の伝達関数f(x)は、パラメータ算出部19で求められる抵抗パラメータG、及び、慣性パラメータMによって補正される。その結果、ブレーキECU14への制御信号Fは、次式
F=M・f(x)-G (1)
により得られる。ブレーキECU14は、このように補正された伝達関数f(x)に基づく制御信号Fに基づいて制御されることで、走行路の勾配や摩擦などの路面状況、又は、車両重量の増減による制動特性の変化を考慮した車両制御が可能となる。
【0023】
続いて上記構成を有する車両制御装置1で実施される車両制御方法について説明する。
図2は
図1の車両制御装置1で実施される車両制御方法を工程毎に示すフローチャートである。
【0024】
まず車両制御装置1は、自動停止制御装置2において自動停止条件が成立したか否かが判断される(ステップS100)。つまり、デッドマンシステムである自動停止制御装置2で、運転者に異常が発生し、車両を停止させる状況にあるか否かが判断される。このような判断は、自動停止制御装置2から車両制御装置1において制動制御を開始するためのトリガーとなる異常信号を取得したか否かに基づいて行われる。
【0025】
自動停止条件が成立したと判定された場合(ステップS100:YES)、車両制御装置1は、ドライバーによる車両加速操作を禁止する(ステップS101)。具体的には加速ペダル(不図示)による加速操作や、ACC(オートクルーズコントロール)機能が強制的に禁止される。これにより、例えばドライバーが体調不良等によって異常な状態に陥ったときに、意図しない車両操作によって車両が加速してしまう事態が効果的に回避される。
【0026】
続いて、車両制御装置1は、ドライバーによる手動解消スイッチ21の操作が無いか判定される(ステップS102)。手動解消スイッチ21は、ドライバーの操作によって以下の制御実行を中止するためのスイッチである。ステップS100における自動停止条件の成否判定は自動的に実施されるため、ドライバーが自動停止条件の成立判定が誤りであると判断した場合には、ドライバーが手動解消スイッチ21を操作することで、以下の制御実行を中止して、車両を通常状態に復帰させることができる。そのため、手動解消スイッチ21の操作が有る場合(ステップS102:YES)、以下の制御は実施されることなく、一連の処理は終了する(END)。
【0027】
手動解消スイッチの操作が無い場合(ステップS102:YES)、停車地点候補検索部13は、記憶部8に記憶された地図情報11と、位置情報取得部15で取得された車両の位置情報位置情報に基づいて、複数の停車地点候補を検索する(ステップS103)。上述したように、地図情報11には予め停車地点候補が登録されており、例えば、位置情報によって特定される車両の現在位置から所定範囲内に存在する停車地点候補が複数抽出される。
【0028】
続いて車両制御装置1は、車両速度検出部4で検出された車両速度Vが基準速度Vthより大きいか否かを判定する(ステップS104)。基準速度Vthは、車両速度Vの大きさによって、以下に説明する2つの制動制御(第1制動制御、又は、第2制動制御)のどちらを実施するかを判定するための閾値であり、所定の記憶装置に予め記憶されたものを読み出すことによって取得される。
【0029】
車両速度Vが基準速度Vthより大きい場合(ステップS104:YES)、第1制動制御が実施される(ステップS105)。一方、車両速度Vが基準速度Vth以下である場合(ステップS104:NO)、第2制動制御が実施される(ステップS106)。このように本実施形態では、車両速度Vと基準速度Vthとの大小関係に応じて、2種類の制動制御が実施される。尚、第1制動制御、及び、第2制動制御の具体的内容については、後に詳述する。
【0030】
第1制動制御又は第2制動制御が実施されると、車両速度は次第に低下し、やがてゼロに達する。このとき、車両速度Vが継続的に監視されることにより、ゼロに到達したか否かが判定される(ステップS107)。第1制動制御又は第2制動制御は車両速度Vがゼロに到達するまで継続される。車両速度Vがゼロになると(ステップS107:YES)、車両制御装置1は一連の処理を終了する(END)。
【0031】
<第1制動制御>
続いてステップS105で実施される第1制動制御の具体的内容について説明する。
図3は第1制動制御のフローチャートであり、
図4は第1制動制御の実施時における車両移動距離及び車両速度の時間的変化の一例を示すグラフである。
【0032】
ステップS105の第1制動制御が時刻t0で開始すると、車両制御装置1は、時刻t0から所定期間Twの間、慣性走行(自由減速)を実施し(ステップS200)、パラメータ算出部19は、当該所定期間Twにおける車両の速度変化に基づいて、抵抗パラメータGを算出する(ステップS201)。ここで所定期間Twは、ブレーキECU14によって駆動制御されるブレーキシステムで制動力が発揮されることで車両の速度が減少し始めるまでに要する期間(すなわち制動制御が開始された時点から実際に制動力が発揮されるまでに要する期間)に比べて、短く設定される。
尚、所定期間Twは例えば1秒未満である。
【0033】
ステップS201における抵抗パラメータGの算出は、例えば次式
により行われる。ここでM0は慣性パラメータMの初期値であり、kは反応を調整するゲイン、hは車両制御装置のサンプリングタイム、
は0秒からt
1までの車両移動距離、
は予め定義された望ましい反応をするモデルによる速度、
は
を積分した望ましい反応の移動距離であり、r(t)は目標減速プロファイルである。
【0034】
続いてパラメータ算出部19は、先に求められた抵抗パラメータGを用いて制御部12の伝達関数f(x)を補正し(ステップS202)、当該補正後の伝達関数に基づいて、車両の速度と目標減速プロファイル10との偏差が最小になるように慣性パラメータMを算出する(ステップS203)。そして慣性パラメータMを用いて、伝達関数を更に補正する(ステップS204)。
【0035】
ここでステップS204における慣性パラメータMの演算は、抵抗パラメータGによって補正された伝達関数を用いて、車両の速度と目標減速プロファイル10との偏差が最小になるように行われる。このような演算は、例えば最小二乗法のような逐次演算により行われる。本実施形態では抵抗パラメータG及び慣性パラメータMの2種類の補正パラメータが用いられるが、ステップS201において先に抵抗パラメータGを特定することで、ステップS203では逐次演算の変数を一つ(慣性パラメータM)のみとすることができる。これにより、逐次演算に要する期間や精度が向上できるため、緊急停車時のような状況下においても、正確且つレスポンスのよい制動制御が実現できる。
【0036】
続いて制御部12は、第1補正部16及び第2補正部18によってパラメータ算出部19で算出された抵抗パラメータG及び慣性パラメータMを用いて補正された伝達関数に基づいて第1段階の制動制御を実施する(ステップS205)。第1補正部16及び第2補正部18で補正された伝達関数から出力される制御信号Fは、ステップS201で求められた抵抗パラメータG及びステップS203で求められた慣性パラメータMを用いて、上記(1)式から得られる。
【0037】
続いて車両制御装置1は、車両の速度が定速走行速度Vccになったか否かを判定する(ステップS206)。すなわち、上述の制動制御が実施されることで車両が所定の定速走行状態に至ったか否かが判定される。
【0038】
時刻t1において車両の速度が定速走行速度Vccになった場合(ステップS206:YES)、車両制御装置1は当該定速走行状態を維持する(ステップS207)。
【0039】
定速状態が維持されている間、ステップS203で算出された慣性パラメータMが道路状態判断値Mthより小さいか否かが判定される(ステップS208)。慣性パラメータMが道路状態判断値Mthより小さい場合(ステップS208:YES)、最大減速度としてAmax1(例えば-2.5m/s2)が設定される(ステップS209)。一方、慣性パラメータMが道路状態判断値Mth以上である場合(ステップS208:NO)、最大減速度としてAmax2(例えば-1m/s2)を設定する(ステップS210)。
【0040】
続いて、制動距離算出部20は、パラメータ算出部19で算出された抵抗パラメータG及び慣性パラメータMに基づいて車両の制動距離d1を算出する(ステップS211)。このような制動距離の算出は、最大減速度AmaxがステップS209又はS210で設定された値になる制約条件のもとで行われる。
【0041】
続いて目標停車地点設定部22は、ステップS103で検索された複数の停車地点候補から、ステップS211で算出された制動距離d1に基づいて目標停車地点を設定する。目標停車地点設定部22による目標地点の選択は、まずステップS103で検索された複数の停車地点候補から、車両の現在地点から最も近い停車候補地点が選択される(ステップS212)。ここで車両の現在地点は、位置情報取得部15で取得される車両の位置情報(例えばGPS情報など)によって特定される。
【0042】
続いてステップS212で選択された停車地点候補に対して、車両の現在地点からの距離dを算出し(ステップS213)、当該距離dがステップS211で推定された制動距離d1より大きいかが判定される(ステップS214)。距離dが制動距離d1より大きい場合(ステップS214:YES)、目標停車地点設定部22は、十分なマージンを含む制動距離を確保できるためステップS213で選択された停車候補地点を目標停車地点として設定する(ステップS215)。
【0043】
一方、距離dが制動距離d1以下である場合(ステップS214:NO)、十分なマージンを含む制動距離を確保できないため、ステップS103で設定された複数の停車地点候補から、車両の現在地点に対して次に近い停車地点候補を選択し直し(ステップS216)、ステップS214の判定を再度実施する。これにより、目標停車地点設定部22は、制動距離を十分に確保できる範囲で、車両の現在地点から最も近い停車地点候補を目標停車地点として設定できる。
【0044】
続いて車両の現在位置から目標地点までの距離dを監視することにより、当該距離dが制動距離d1になったか否かを判定する(ステップS217)。時刻t2において距離dが制動距離d1になった場合(ステップS217:YES)、車両が制動開始位置に到達したと判断し、車両の走行状態(路面の勾配や摩擦係数)が変化していないか否かが判定される(ステップS218)。車両の走行状態が定速走行状態から変化していない場合(ステップS218:YES)、制御部12は、ステップS201で求められた抵抗パラメータGに基づいて制動開始位置から第2段階の制動制御を実施する(ステップS219)。これにより、時刻t2からの第2段階の制動制御では、減速開始した直後から(タイムラグを伴うことなく)抵抗パラメータGに基づいた制動制御を実施できるため、目標停車地点に精度よく停車させることができる。
【0045】
一方、車両の走行状態が定速走行状態から変化している場合(ステップS218:NO)、制御部12は、ステップS201で求められた抵抗パラメータGに代えて、デフォルト値(ゼロ)の抵抗パラメータGに基づいて、第2段階の制動制御を実施する(ステップS220)。これにより、車両の走行状態が変化した場合には、ステップS219よりは精度が低下するものの、目標停車地点に対して適切な停車制御が可能となる。
【0046】
<第2制動制御>
続いてステップS106で実施される第2制動制御の具体的内容について説明する。
図5は第2制動制御のフローチャートであり、
図6は第2制動制御の実施時における車両移動距離及び車両速度の時間的変化の一例を示すグラフである。
【0047】
ステップS106の第2制動制御が時刻t0で開始すると、車両制御装置1は、時刻t0から慣性走行(自由減速)を実施し(ステップS300)、パラメータ算出部19は、慣性走行中の車両の速度変化に基づいて、抵抗パラメータGを算出する(ステップS301)。このとき車両の走行路面の勾配情報が記録される(ステップS302)。
【0048】
続いてパラメータ算出部19は、先に求められた抵抗パラメータGを車両モデルに入力し、車両速度Vの車両モデルによる演算値と実測値とを比較することにより慣性パラメータMを算出する(ステップS303)。
【0049】
続いて車両制御装置1は、慣性走行を行う車両の速度が定速走行速度Vccになったか否かを判定する(ステップS304)。すなわち、上述の制動制御が実施されることで車両が所定の定速走行状態に至ったか否かが判定される。
【0050】
時刻t1において車両の速度が定速走行速度Vccになった場合(ステップS304:YES)、車両制御装置1は当該定速走行状態を維持する(ステップS305)。
【0051】
ステップS306以降の処理は、第1制動制御におけるステップS208以降と同様である。すなわち、第1制動制御に比べて車両速度が低い状態で実施される第2制動制御は、時刻t0から時刻t1までの第1段階の制動制御が慣性走行による自由減速によって行われる点で、第1制動制御とは異なる。この場合も、慣性走行中に算出された抵抗パラメータG及び慣性パラメータMによって時刻t2以降の第2段階の制動制御時における伝達関数f(x)を補正することで、精度のよい停車制御が可能となる。
【0052】
以上説明したように本実施形態によれば、車両速度が所定値Vccになるように減速しながら抵抗パラメータG及び慣性パラメータMを求めることで、その後、目標停車地点に向けて減速する際に、抵抗パラメータG及び慣性パラメータMによって減速プロファイルを補正し、精度のよい停車制御を行うことができる。このように車両の走行状態に応じた制動制御を実施することにより、目標停車地点に対して精度のよい停車が可能な車両制御装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の少なくとも一実施形態は、自動停止条件が成立した場合に、制動制御を実施することにより車両を自動的に停止させる車両制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 車両制御装置
2 自動停止制御装置
4 車両速度検出部
6 車速センサ
8 記憶部
10 目標減速プロファイル
11 地図情報
12 制御部
13 停車地点候補検索部
15 位置情報取得部
16 第1補正部
18 第2補正部
19 パラメータ算出部
20 制動距離算出部
21 手動解消スイッチ
22 目標停車地点設定部