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特許7048026雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置
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  • 特許-雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/14 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
G01W1/14 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017114692
(22)【出願日】2017-06-09
(65)【公開番号】P2019002684
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】517205734
【氏名又は名称】iシステムリサーチ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517205745
【氏名又は名称】水文技術コンサルタント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500178924
【氏名又は名称】株式会社アーステック東洋
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】大西 有三
(72)【発明者】
【氏名】西川 啓一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健二
(72)【発明者】
【氏名】中井 卓巳
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-172786(JP,A)
【文献】特開2000-019262(JP,A)
【文献】小山倫史ほか,ゲリラ豪雨による斜面安定性評価のためのリアルタイム雨量計の開発,地盤工学ジャーナル,2010年03月26日,第5巻、第1号,第61-67ページ,DOIhttps://doi.org/10.3208/jgs.5.61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00-1/18
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
降雨等の水を水容器部に溜めて降雨等の水量を定量するための水量定量部と、
下記i)、ii)及びiii)のうち何れか1以上
とを備えることを特徴とする雨量等変化率計測システム。
i) 前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎にその時刻に対応する時刻信号を出力する時刻信号出力部、及び、
前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する、前記時刻信号出力部が出力する一連の時刻信号に応じた時刻情報と、前記所定水量に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出する雨量変化率等導出部;
ii) 前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に定量したことを示す定量信号を出力する定量信号出力部、及び、
時刻情報を得ることができる雨量変化率等導出部であって、前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に前記定量信号出力部から出力される定量信号の一連の出力時刻に応じた時刻情報と、前記所定水量に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出する雨量変化率等導出部;
iii) 前記水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量に対応する水量信号を出力する水量信号出力部、及び、
前記水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量にそれぞれ対応する、前記水量信号出力部が出力する一連の水量信号に応じた水量情報と、前記所定時間に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出する雨量変化率等導出部
【請求項2】
上記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に定量信号を出力する定量信号出力部を有し、
上記時刻信号出力部が、定量信号出力部から出力された定量信号を入力することにより、その時刻に対応する時刻信号を出力するものである請求項1記載の雨量等変化率計測システム。
【請求項3】
降雨等の水を水容器部に溜めて降雨等の水量を定量することにより、所定水量の降雨等を定量する毎にその時刻を特定するか、又は、所定時間毎に降雨等の水量若しくは積算水量を定量することと、
前記所定水量の降雨等を定量する毎の一連の時刻と前記所定水量、又は、前記定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量と前記所定時間に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出することを備えることを特徴とする雨量等変化率計測方法。
【請求項4】
上記雨量等変化率の程度が、雨量等変化率について設定された等級である請求項記載の雨量等変化率計測方法。
【請求項5】
降雨等の水を水容器部に溜めて降雨等の水量を定量するための水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に、その時刻に対応する時刻信号を出力する時刻信号出力装置からの前記時刻信号を、入力して処理する装置であって、
前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する、前記時刻信号出力装置からの一連の時刻信号に応じた時刻情報と、前記所定水量に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出する雨量変化率等導出装置。
【請求項6】
降雨等の水を水容器部に溜めて降雨等の水量を定量するための水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に、定量したことを示す定量信号を出力する定量信号出力装置からの前記定量信号を、入力して処理する装置であって、
時刻情報を得ることができ、前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に前記定量信号出力装置から出力される定量信号の一連の出力時刻に応じた時刻情報と、前記所定水量に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出する雨量変化率等導出装置。
【請求項7】
降雨等の水を水容器部に溜めて降雨等の水量を定量するための水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量に対応する水量信号を出力する水量信号出力装置からの前記水量信号を、入力して処理する装置であって、
前記水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量にそれぞれ対応する、前記水量信号出力装置からの一連の水量信号に応じた水量情報と、前記所定時間に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出する雨量変化率等導出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面の崩壊、様々な土砂災害、その他の災害の発生予測及び予防等に利用することができる雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006-195650号公報には、被測定斜面に配設される雨量計および変位計と、これらの測定器から測定データを収集するデータ収集装置と、このデータ収集装置から第1通信手段を介して随時測定データを取得し、この測定データに基づいて有限要素法による浸透流解析と斜面安定解析における斜面崩壊の安全率を解析する監視装置とを備えたことを特徴とする斜面崩壊監視予測システムの発明が開示されており、この発明によれば、
「被測定斜面に配設された雨量計と変位計とによる測定データに基づいて、斜面崩壊の安全率が解析されるため、より正確な安全率が解析(算出)される。すなわち、被測定斜面に直接配設された変位計(傾斜計や伸縮計など)によって、被測定斜面での変位が精度高く測定され、この高い精度の測定変位に基づいて安全率が解析されるため、より正確な安全率が得られる。しかも、被測定斜面に直接配設された雨量計によって測定された雨量も、安全率の解析にパラメータとして考慮されるため、さらに正確な安全率が得られる。また、データ収集装置から第1通信手段を介して随時測定データを取得するため、リアルタイムに安全率を解析することができ、斜面崩壊の監視、予測体制がリアルタイム化される。そしてこれらの結果として、斜面崩壊をより正確かつリアルタイムに予測して、被害を未然に防ぎ、あるいは、被害を最小限に抑えることが可能となり、また、誤った判断に基づく交通路の閉鎖などを引き起こすこともない。」と述べられている。
【0003】
このような斜面崩壊監視予測等に用いられる雨量計について、特開2005-49339号公報には、
「標高が高い山岳等においては、降雨時に強い風を伴う場合が多く、鉛直方向に降り注ぐ雨滴だけでなく、斜め方向や横方向から飛来したり、極端な場合には下方から吹き上げる雨滴も無視できない。このような鉛直方向以外からの雨滴は、山岳稜線や斜面を浸潤させて土砂災害に少なからぬ影響を与える。そこで、鉛直方向からの雨滴に加えて、鉛直方向以外からの雨滴も計測して、土砂災害の予測に役立てる必要がある。
【0004】
従来の雨量計は、周囲の横向き開口部Hに複数の細い棒Sを簾状に配列した構造となっているため、この棒Sに衝突した雨滴が跳ね返って確実に捕捉できない恐れがあった。
また、山側方向から飛来して斜面の浸潤に寄与しない雨滴をも捕捉してしまう場合もあって、正確な観測ができない等の問題点があった。」ことに鑑み、
「鉛直方向から降り注ぐ雨滴を受け入れる上向き受水口に加えて、鉛直方向以外から飛来する雨滴を確実かつ効率よく受け入れ、また、斜面等の浸潤に寄与する雨滴のみを観測することができる雨量計」として、
「鉛直方向から降り注ぐ雨滴を受け入れる上向き受水部と、鉛直方向以外の方向から飛来する雨滴を受け入れる横向き受水部と、これらの受水部により受け入れた雨量を計測する計測器から成り、上記横向き受水部が、円周面に沿った横向き開口部と、該開口部から内部に入ってきた雨滴を受け止める受水板と、該受水板により受け止められて落下または流下する雨滴を集水する受水漏斗と、該受水漏斗により集水された雨水を上記計測器に排出する排出手段から構成される雨量計」
が提案されている。
【0005】
しかしながら、限られた地域に急激に大量の降雨が生じることも珍しくない近年の状況においては、従来の雨量計による降雨量の観測のみでは、斜面の崩壊、様々な土砂災害、その他の災害の発生予測及び予防を必ずしも的確に行い難い点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-195650号公報
【文献】特開2005-49339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、降雨の状態をより詳細にまたできるだけ即時的に把握することができ、降雨によりもたらされる様々な災害の発生予測や予防に活かすことができる雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置は、次のように表すことができる。
【0009】
(1) 降雨等の水量を定量するための水量定量部と、
前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎にその時刻に対応する時刻信号を出力する時刻信号出力部、
前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に定量したことを示す定量信号を出力する定量信号出力部、
及び、
前記水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量に対応する水量信号を出力する水量信号出力部の何れか1以上と、
前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する一連の時刻信号に応じた時刻情報と前記所定水量、
前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に出力される定量信号の一連の出力時刻に応じた時刻情報と前記所定水量、
又は、
前記水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量にそれぞれ対応する一連の水量信号に応じた水量情報と前記所定時間
に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出する雨量変化率等導出部を備えることを特徴とする雨量等変化率計測システム。
【0010】
このシステムにおいては、降雨等の水量を定量するための水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する一連の時刻信号に応じた時刻情報と前記所定水量、
前記水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に出力される定量信号の一連の出力時刻に応じた時刻情報と前記所定水量、
又は、
前記水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量にそれぞれ対応する一連の水量信号に応じた水量情報と前記所定時間
に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出することができる。
【0011】
(2) 上記水量定量部として、降雨等の水を溜めて水量を定量するための水容器部を有し、
上記時刻信号出力部として、前記水容器部が所定水量を溜めてその所定水量の降雨等が定量される毎にその時刻に対応する時刻信号を出力するものを有し、
上記雨量変化率等導出部は、前記所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する一連の時刻信号に応じた時刻情報と前記所定水量に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出するものである上記(1)記載の雨量等変化率計測システム。
【0012】
(3) 上記水容器部が所定水量を溜めてその所定水量の降雨等が定量される毎に定量信号を出力する定量信号出力部を有し、
上記時刻信号出力部が、定量信号出力部から出力された定量信号を入力することにより、その時刻に対応する時刻信号を出力するものである上記(2)記載の雨量等変化率計測システム。
【0013】
(4) 上記水量定量部として、降雨等の水を溜めて水量を定量するための水容器部を有し、
上記定量信号出力部として、前記水容器部が所定水量を溜めてその所定水量の降雨等が定量される毎に定量信号を出力するものを有し、
上記雨量変化率等導出部は、前記所定水量の降雨等が定量される毎に出力される定量信号の一連の出力時刻に応じた時刻情報と前記所定水量に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出するものである上記(1)記載の雨量等変化率計測システム。
【0014】
(5) 降雨等の水量を定量するための水量定量部として、降雨等の水を溜めて水量を定量するための水容器部を有し、
所定水量の降雨等が定量される毎にその時刻に対応する時刻信号を出力する時刻信号出力部を有することを特徴とする雨量等変化率計測用装置。
【0015】
(6) 所定水量の降雨等を定量する毎にその時刻を特定するか、又は、所定時間毎に降雨等の水量若しくは積算水量を定量することと、
前記所定水量の降雨等を定量する毎の一連の時刻と前記所定水量、又は、前記定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量と前記所定時間に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出することを備えることを特徴とする雨量等変化率計測方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置によれば、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出することができ、降雨の状態をより詳細にまたできるだけ即時的に把握して降雨によりもたらされる様々な災害の発生予測や予防に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】雨量等変化率計測システムの構成の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1] 本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。 図面は本発明の実施の形態の一例としての雨量等変化率計測システム、雨量等変化率計測方法、及び雨量等変化率計測用装置についてのものである。
【0019】
この雨量等変化率計測システムは、水量定量部A1、時刻信号出力部A2、記録部A3、情報出力部A4、及び雨量変化率等導出部Bを備える。このうち水量定量部A1、時刻信号出力部A2、記録部A3及び情報出力部A4が、一つの装置としてまとめられて雨量等変化率計測用装置Aを構成する。
【0020】
(1) 水量定量部A1は、受水器A10の下側に転倒枡A11を有するものである。
【0021】
受水器A10は、所定範囲の降雨を受水して転倒枡A11に導くものであり、略漏斗形状をなす。
【0022】
転倒枡A11は、シーソー状構造をなし、その一方側及び他方側にそれぞれ水容器部A1a(すなわち「枡」)が形成されてなるものである。各水容器部A1aは上方位置と下方位置を取り得、降雨等は上方位置にある方の水容器部A1aに受容される。
【0023】
一方の側の水容器部A1aが上方位置にある状態において、その水容器部A1aが受水器A10を通じて所定量(この例では降雨量0.5mmに相当する量であるが、これに限らない。)の水を受容すると、シーソー状構造をなす転倒枡A11が重力により一方の側へ下降傾斜してその水容器部A1aは下方位置に位置すると共に実質上全量の水を排出し、下方位置に位置していた他方の側の水容器部A1aが上方位置に位置することとなる。
【0024】
上方位置に位置することとなった水容器部A1aが所定量(降雨量0.5mmに相当する量)の水を受容すると、シーソー状構造をなす転倒枡A11が他方の側へ下降傾斜してその水容器部A1aは下方位置に位置すると共に実質上全量の水を排出し、一方の側の水容器部A1aが再び上方位置に位置することとなる。これが繰り返されて降雨等の水量の定量が継続される。
【0025】
(2) 転倒枡A11における両水容器部A1aの何れかが下方位置(下方位置に限らず、他の所定位置とすることもできる)に達すると、近接スイッチA21によりそれが検出され、時刻信号出力部A2における定量信号出力部から、水量定量部A1において所定水量の降雨等が定量されたことを示す定量信号が出力される。
【0026】
時刻信号出力部A2は、時刻信号を自ら発生する時刻信号発生部を有し、定量信号出力部から出力された定量信号を入力することにより、定量の時刻に対応する時刻信号を出力する。時刻信号は所定時間毎(例えば0.1秒またはそれよりも短い時間毎、好ましくは0.01秒またはそれよりも短い時間毎。なお、所定時間に特に下限はないが、例えば0.1マイクロ秒以上とすることができる。)に発生し得、時刻信号出力部A2が出力する時刻信号は、前記定量の時刻に、前記所定時間刻みで対応する。
【0027】
(3) 所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する一連の時刻信号に応じた時刻情報は、記録部A3に記録され、所定時間毎(例えば10分毎、より好ましくは1乃至5分毎とすることができる。或いは、例えば、遡る一定時間における雨量等の、所定の指標に基づいて必要と判定される場合に間隔が短くなるようにすることもできる。)に、情報出力部A4から無線通信(他の通信手段を採用することもできる。)を介して雨量変化率等導出部Bに伝送される。
【0028】
(4) 雨量変化率等導出部Bは、各種機器等の制御や各種データの読み書きや演算などの処理を行うCPU(中央処理装置)、前記時刻情報や所定時間などのデータ等を一時的に又は継続的に記憶するためのRAM、演算や周辺機器等の制御などのためのプログラム及び各種データが書き込まれたROM又はRAM、並びに周辺機器等との接続のための入出力インターフェイス等を備える。
【0029】
雨量変化率等導出部Bは、水量定量部A1において所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する一連の時刻信号に応じた時刻情報、及び、その所定水量に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率を導出する。
【0030】
(5) 例えば、斜面等の測定対象における1又は2以上の必要な個所に雨量等変化率計測用装置Aを設置することにより、各雨量等変化率計測用装置Aの時刻情報は、所定時間毎に、情報出力部A4から無線通信を介して対応する一つの雨量変化率等導出部Bに伝送され、その雨量変化率等導出部Bにおいてそれぞれの雨量等変化率計測用装置Aにおける雨量等変化率が導出されるものとすることができる。
【0031】
これらの雨量等変化率は、斜面の安定性の監視や危険予測などを始めとする、降雨によりもたらされる様々な災害の発生予測や予防に活かすことができる。
【0032】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0033】
本発明の雨量等変化率計測システムは、水量定量部;時刻信号出力部、定量信号出力部及び水量信号出力部の何れか1以上;並びに、雨量変化率等導出部を備える。
【0034】
また本発明の雨量等変化率計測用装置は、水量定量部としての水容器部と、時刻信号出力部を有する。
【0035】
(1) 水量定量部
【0036】
水量定量部は、降雨等の水量を定量するためのものである。
【0037】
降雨等というのは、降雨、降水又は降雨や降水に準ずる現象を言うものとし、降雨等の水量というのは、降雨量、降水量又は降雨や降水に準ずる現象による水量を言うものとする。
【0038】
水量定量部の例としては、降雨等の水を溜めて水量を定量するための水容器部(例えば所定水量を溜めてその所定水量の降雨等を定量するもの)を有するものを挙げることができる。より具体的には、
降雨等を受容し得る水容器部を有し、
その水容器部の受容量(「受容量の増加」であってもよい)が所定量(雨量等変化率又は雨量等変化率の程度やそれらの変化を可及的に詳細に導出する等の上で多すぎず、誤差や機構的な負担が大きくならないようにする等の上で少なすぎない適切な量とすることが望ましい。例えば0.1乃至2mmの降雨量に対応する量、好ましくは0.2乃至1mm又は0.5mmの降雨量に対応する量とすることができる。)に達することによって、例えば受容した降雨等の水に作用する重力による、水容器部の姿勢及び位置(垂直方向若しくは水平方向位置)の両方又は何れか一方(すなわち姿勢および/または位置)の変化(水容器部の姿勢や位置が変化し得る場合、例えば従来の雨量計に用いられている転倒枡)、開閉部若しくは開栓部(水容器部が開閉部若しくは開栓部を有する場合)の開閉、又はその他の変化がもたらされ、それが降雨等の水量の定量となるもの、好ましくは、所定水量が定量される毎に、水容器部の姿勢の変化や開閉部若しくは開栓部の開閉等により水容器部から実質上全量の水又は所定量の水が排出され、新たな降雨等を水容器部に受容し得るもの、
又は、
前記水容器部の受容量(「受容量の増加」であってもよい)を、対応する重量、体積(例えば体積に対応する水位)又はその他の物理量等により計測するものを挙げることができる。
【0039】
前記水容器部は、例えば受水器等を用いることにより、降雨等の測定として適切に降雨等を受容するものとすることが望まれる。
【0040】
(2) 時刻信号出力部、定量信号出力部及び水量信号出力部
【0041】
(2-1) 時刻信号出力部
【0042】
時刻信号出力部は、水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎にその時刻(単位を問わない)に対応する時刻信号(時刻信号を含むと共にそれ以外の内容を含むものでもよい。)を出力するものである。また水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に定量信号を出力する定量信号出力部を有し、時刻信号出力部は、定量信号出力部から出力された定量信号を入力することにより、その時刻に対応する時刻信号を出力するものとすることもできる。
時刻信号出力部が出力する時刻信号は、所定水量の降雨等が定量される毎の時刻に、例えば、所定時間刻み(好ましくは0.1秒又はそれよりも短い時間刻み、より好ましくは0.01秒又はそれよりも短い時間刻み。なお、所定時間に特に下限はないが、例えば0.1マイクロ秒以上とすることができる。)で対応するものとすることができる。
【0043】
このような時刻信号出力部の例としては、水量定量部が、水容器部の受容量が所定量に達することによって水容器部の姿勢および/または位置等が変化して所定水量を定量するものである場合、所定水量の降雨等が定量される毎に生じる水容器部の姿勢および/または位置等の変化をリードスイッチ等の近接スイッチやその他の各種スイッチ又はセンサ等によりその都度検出し、それぞれの検出に応答して(又は、それぞれの検出に応答して出力される定量信号に応答して)、定量時刻に対応する時刻信号を自ら発生する時刻信号発生部又は他から受信する時刻信号受信部等から出力するものを挙げることができる。時刻信号発生部が発生し又は他から受信等し得る時刻信号は、所定時間毎(好ましくは0.1秒又はそれよりも短い時間毎、より好ましくは0.01秒又はそれよりも短い時間毎。なお、所定時間に特に下限はないが、例えば0.1マイクロ秒以上とすることができる。)であるものとすることができる。
前記時刻信号発生部については、生じ得る誤差を、他から受信した時刻データ等(例えばGPSやインターネット時刻サーバー等から受信したデータ)に基づき、(例えば定期的に又はその他のタイミングで)修正して正確性を期し得るものとすることもできる。
また前記時刻信号受信部が他から受信するものとしては、例えば、GPSデータやインターネットを介する時刻データを挙げることができる。
【0044】
(2-2) 定量信号出力部
【0045】
定量信号出力部は、水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に定量したことを示す定量信号を出力するものである。
【0046】
このような定量信号出力部の例としては、水量定量部が、水容器部の受容量が所定量に達することによって水容器部の姿勢および/または位置等が変化して所定水量を定量するものである場合、所定水量の降雨等が定量される毎に生じる水容器部の姿勢および/または位置等の変化をリードスイッチ等の近接スイッチやその他の各種スイッチ又はセンサ等によりその都度検出し、それぞれの検出信号を定量信号として出力するもの、又は、それぞれの検出に応答して定量信号発生部から定量信号を出力するものを挙げることができる。
【0047】
(2-3) 水量信号出力部
【0048】
水量信号出力部は、水量定量部において定量された降雨等の所定時間(雨量等変化率又は雨量等変化率の程度やそれらの変化を可及的に詳細に導出する等の上で長すぎないことが望ましい。例えば5乃至60秒程度とすることができる。好ましくは10乃至30秒程度である。)毎の水量若しくは積算水量に対応する水量信号を出力するものである。水量信号と共にその時刻に対応する時刻信号を出力するものとすることもできる。
【0049】
水量信号出力部の例としては、水量定量部が水容器部の受容量(「受容量の増加」を含む)を、対応する重量、体積(例えば体積に対応する水位)又はその他の物理量等により計測するものである場合、受容量に対応する信号を水量信号として出力するものを挙げることができる。なお、水容器部については、例えば、受容水量が所定量に達した場合に水容器部から全量又は所定量を排出するための機構(傾倒排出機構、開栓排出機構等)を備えることが望まれる。
【0050】
(3) 雨量変化率等導出部
【0051】
雨量変化率等導出部は、下記(i)、(ii)及び(iii)の何れか1又は2以上に基づき、単位時間(時間の単位は問わない)当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度(例えば雨量等変化率について所定幅毎に設定された何れの等級に該当するかを判定する)を導出するためのものである。
【0052】
(i) 水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する一連の時刻信号(時刻信号出力部からの出力)に応じた時刻情報(時刻信号そのものでもよい)、及び、その所定水量
【0053】
(ii) 水量定量部において所定水量の降雨等が定量される毎に定量信号出力部から出力される定量信号の一連の出力時刻に応じた時刻情報、及び、その所定水量
【0054】
(iii) 水量定量部において定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量にそれぞれ対応する一連の水量信号(水量信号出力部からの出力)に応じた水量情報、及び、その所定時間
【0055】
雨量等変化率を導出するもの、雨量等変化率の程度を導出するもの、又は雨量等変化率と雨量等変化率の程度を何れも導出し得るものの何れであってもよい。
【0056】
なお、前記雨量等変化率又は雨量等変化率の程度は、雨量の減少を含まないもの(雨量等増加率又は雨量等増加率の程度)とすることもできる。
【0057】
(i)における時刻信号若しくは時刻情報、(ii)における定量信号若しくは時刻情報、及び(iii)における水量信号若しくは水量情報は、雨量変化率等導出部に対し、必要に応じ例えば無線又は有線による通信(ネットワーク通信を含む)を介して又は介さずに、入力され、雨量変化率等導出部において所要の演算が行われて雨量等変化率又は雨量等変化率の程度が導出される。
【0058】
また、時刻信号出力部、定量信号出力部又は水量信号出力部と、雨量変化率等導出部の間に、所定水量の降雨等が定量される毎の時刻にそれぞれ対応する一連の時刻信号に応じた時刻情報、所定水量の降雨等が定量される毎に出力される定量信号の一連の出力時刻に応じた時刻情報、又は、定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量にそれぞれ対応する一連の水量信号に応じた水量情報を記録する記録部と、その記録部に記録された時刻情報又は水量情報を、例えば所定時間(例えば1乃至5分、8分又は10分)毎に出力する情報出力部を介するものとすること、更に、例えば無線又は有線による通信(ネットワーク通信を含む)を介するものとすることもできる。なお、時刻信号出力部が記録部に記録された時刻情報又は水量情報を出力する間隔は、例えば、遡る一定時間における雨量等の指標に基づいて必要と判定される場合に間隔が短くなるようにすることもできる。そのような判定は、時刻信号出力部に対し直接指令することができる判定指令部を設けて行うようにすることができる他、例えば、通信を介して遠隔的に判定に基づく指令を行うものとすることもできる。
【0059】
雨量変化率等導出部は、各種機器等の制御、各種データの読み書きや演算などの処理を行うCPU(中央処理装置)、上記(i)若しくは(ii)の時刻情報又は(iii)の水量信号、時刻、所定時間等のデータ等を一時的に又は継続的に記憶するためのRAM、演算や周辺機器等の制御などのためのプログラム及び各種データが書き込まれたROM又はRAM、並びに周辺機器等との接続のための入出力インターフェイス、必要に応じ時刻信号を自ら発生する時刻信号発生部又は他から受信する時刻信号受信部等を備えるものとすることができるが、これに限るものではない。汎用のコンピュータを用いることもでき、専用装置を用いてもよい。
【0060】
(4) 本発明の雨量等変化率計測方法は、所定水量の降雨等を定量する毎にその時刻(単位を問わない)を特定するか、又は、所定時間毎に降雨等の水量若しくは積算水量を定量することと、前記所定水量の降雨等を定量する毎の一連の時刻と前記所定水量、又は、前記定量された降雨等の所定時間毎の水量若しくは積算水量と前記所定時間に基づき、単位時間当たりの降雨等の水量の時間変化率である雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を導出することを備えるものであり、前記のような水量定量部;時刻信号出力部、定量信号出力部及び水量信号出力部の何れか;並びに、雨量変化率等導出部を用いて実施することができる。
【0061】
(5) 本発明の雨量等変化率計測システムにおいて、(1)水量定量部;(2)時刻信号出力部、定量信号出力部及び水量信号出力部の何れか1以上;並びに、(3)雨量変化率等導出部(更に必要に応じ前記記録部及び情報出力部)は、例えば、(1)、(2)及び(3)(更に必要に応じ記録部及び情報出力部)が一箇所又は近接箇所にまとめられたもの、或いは、(1)及び(2)(更に必要に応じ記録部及び情報出力部)が一箇所又は近接箇所にまとめられて(3)は離隔し、(2)(又は情報出力部)及び(3)はそれぞれ少なくとも送信部及び受信部を伴い、(2)(又は情報出力部)から(3)への信号等のデータの送信が無線又は有線による通信(ネットワーク通信を含む)を介して行われるものとすることができる。
【0062】
降雨等の水量並びに雨量等変化率又は雨量等変化率の測定対象位置は特に限定されるものではないが、一般的に必要性が高いのは安定性の監視や危険予測が必要な斜面である。複数個所に設置する場合、(1)及び(2)(更に必要に応じ記録部及び情報出力部)を複数個所に設置し、所定箇所に一つ(3)を設けてそれぞれの(2)(又は情報出力部)から(3)への信号等のデータの送信が無線又は有線による通信(ネットワーク通信を含む)を介して行われ、それぞれの(1)における雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を1箇所の(3)で導出するものとすることができる他、(1)、(2)及び(3)(更に必要に応じ記録部及び情報出力部)をまとめたものを複数個所に設置し、各(3)において導出された雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を無線又は有線による通信(ネットワーク通信を含む)を介して他に送信するものとすることもできる。
【0063】
これらの雨量等変化率又は雨量等変化率の程度は、斜面の安定性の監視や危険予測などを始めとする、降雨によりもたらされる様々な災害の発生予測や予防に活かすことができる。
【0064】
例えば、対象斜面の土壌の水分変化傾向等の特性を予め調査・把握した上で、導出される雨量等変化率又は雨量等変化率の程度を、土壌への降雨等の浸透の程度や飽和状態等の即時的な判定に利用することができる。その際、地中温度や傾斜等を同時に測定し、過去の土壌水分、地中温度、傾斜データ及び雨量データ並びに対象斜面の崩壊の基準となる閾値データに基づいて現状評価及び予測に利用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
A 雨量等変化率計測用装置
A1 水量定量部
A10 受水器
A11 転倒枡
A1a 水容器部
A2 時刻信号出力部
A21 近接スイッチ
A3 記録部
A4 情報出力部
B 雨量変化率等導出部
図1