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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】布団
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/12 20060101AFI20220329BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20220329BHJP
   D03D 15/47 20210101ALI20220329BHJP
   D03D 11/00 20060101ALI20220329BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20220329BHJP
   D04H 1/4358 20120101ALI20220329BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20220329BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220329BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20220329BHJP
   A41D 31/02 20190101ALI20220329BHJP
【FI】
A47C27/12 C
D04H1/728
D03D15/47
D03D11/00 Z
D03D15/56
D04H1/4358
B32B5/26
B32B27/40
A41D31/00 502B
A41D31/00 502C
A41D31/00 502E
A41D31/02 A
A41D31/00 503K
A41D31/00 503L
A41D31/00 502K
A41D31/02 E
A41D31/00 502Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019097908
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020191970
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】309013336
【氏名又は名称】日清紡テキスタイル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517008858
【氏名又は名称】株式会社ナフィアス
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】勝野 晴孝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭
(72)【発明者】
【氏名】大澤 道
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-070098(JP,A)
【文献】特開2007-170224(JP,A)
【文献】国際公開第2008/111294(WO,A1)
【文献】特開2017-095852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/12
D04H 1/728
D03D 15/47
D03D 11/00
D03D 15/56
D04H 1/4358
B32B 5/26
B32B 27/40
A41D 31/00
A41D 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともその一部が多層繊維構造物から構成される袋体を有し、
該多層繊維構造物が、
織編物と、
該織編物の少なくとも片面に配置されたファイバー不織布層とを備え、
該織編物と該ファイバー不織布層とが直接配置され、
該ファイバー不織布層を構成するファイバーの少なくとも一部と、該織編物の構成繊維の少なくとも一部が、同種の溶媒に可溶であり、
該ファイバー不織布層が、密度の異なる複数の層から構成されている、
布団。
【請求項2】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドである、請求項に記載の布団。
【請求項3】
前記織編物の構成繊維の少なくとも一部が、ポリウレタン弾性繊維である、請求項1または2に記載の布団。
【請求項4】
前記ファイバー不織布層が、ポリウレタンナノファイバーを含む、請求項1からのいずれかに記載の布団。
【請求項5】
前記ファイバー不織布層が、融点が210℃以下のファイバーを含む、請求項1からのいずれかに記載の布団。
【請求項6】
前記袋体に羽毛が封入された、請求項1からのいずれかに記載の布団。
【請求項7】
前記袋体が縫製部を有し、該縫製部に熱処理による目止めがされている、請求項1からのいずれかに記載の布団。
【請求項8】
前記ファイバー不織布層が、前記織編物側から順に、低密度ファイバー不織布層と、高密度ファイバー不織布層とを有する、請求項1から7のいずれかに記載の布団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布団に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛布団等の羽毛製品においては、羽毛を充填する袋体からの羽毛の吹き出しを防止することが求められている。羽毛の吹き出しを防止するため、袋体を構成する生地として、極細の繊維を高密度に織った、いわゆるダウンプルーフ加工された生地が用いられることがある。しかしながら、ダウンプルーフ加工された生地は、通気性が著しく低く、羽毛の呼吸を阻害する、蒸れによる不快感の原因となる等の問題がある。また、ダウンプルーフ加工された生地は、高密度であるため、触れると冷たく感じることがあるという特性を有し、布団用途の生地として、使用し難いという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-89865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、充填物(例えば、羽毛)の吹き出し防止性能と通気性とを兼ね備えた布団を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の布団は、少なくともその一部が多層繊維構造物から構成される袋体を有し、該多層繊維構造物が、織編物と、該織編物の少なくとも片面に配置されたファイバー不織布層とを備え、該織編物と該ファイバー不織布層とが直接配置されている。
1つの実施形態においては、上記ファイバー不織布層を構成するファイバーの少なくとも一部と、上記織編物の構成繊維の少なくとも一部が、同種の溶媒に可溶である。
1つの実施形態においては、上記溶媒が、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドである。
1つの実施形態においては、上記織編物の構成繊維の少なくとも一部が、ポリウレタン弾性繊維である。
1つの実施形態においては、上記ファイバー不織布層が、ポリウレタンナノファイバーを含む。
1つの実施形態においては、上記ファイバー不織布層が、密度の異なる複数の層から構成されている。
1つの実施形態においては、上記ファイバー不織布層が、融点が210℃以下のファイバーを含む。
1つの実施形態においては、上記布団は、上記袋体に羽毛が封入されている。
1つの実施形態においては、上記袋体が縫製部を有し、該縫製部に熱処理による目止めがされている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、充填物(例えば、羽毛)の吹き出し防止性能と通気性とを兼ね備えた布団を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態における多層繊維構造物の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態における多層繊維構造物の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.多層繊維構造物
本発明の布団は、少なくとも一部が多層繊維構造物から構成される袋体を有する。図1は、本発明の1つの実施形態における多層繊維構造物の概略断面図である。多層繊維構造物100は、織編物10と、織編物10の少なくとも片面に配置されたファイバー不織布層20とを備える。織編物10とファイバー不織布層20とは直接配置している。本明細書において、「直接配置している」とは、織編物10とファイバー不織布層20との間にその他の層(織編物10およびファイバー不織布層20を構成する成分以外の成分を含む層)が存在しないことを意味する。より具体的には、上記多層繊維構造物においては、織編物10と不織布層20とが、接着剤を介さずに、直接配置している。1つの実施形態においては、織編物10と不織布層20とは、溶着(溶媒による溶着)により固定されている。当該溶着は、織編物の構成繊維の一部と不織布層を構成するファイバーの一部とが、不織布層形成時に用いる溶媒に溶解して生じる部分的な溶着である。
【0010】
1つの実施形態においては、ファイバー不織布層を構成するファイバーの少なくとも一部と、織編物の構成繊維の少なくとも一部が、同種の溶媒に可溶である。可溶であるとは、20℃で5重量%以上の溶解度を示すことを意味する。1つの実施形態においては、ファイバー不織布層を構成するファイバーの少なくとも一部および織編物の構成繊維の少なくとも一部は、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドに可溶であり、好ましくはジメチルホルムアミドに可溶である。
【0011】
1つの実施形態においては、上記織編物がポリウレタン弾性繊維を含み、上記不織布層がポリウレタンファイバーを含む。
【0012】
多層繊維構造物の厚みは、好ましくは0.2mm~5mmであり、より好ましくは0.4mm~4mmである。
【0013】
多層繊維構造物の通気度は、好ましくは3cm/cm・s以上であり、より好ましくは5cm/cm・s以上である。多層繊維構造物の通気度は高いほど好ましいが、その上限は、例えば、50cm/cm・sである。なお、通気度は、JIS L1096:2010 8.26通気性A法(フラジール法)により測定され得る。
【0014】
本発明においては、織編物上に不織布層を配置し、かつ、これらを接着剤を介さずに直接配置して構成された多層繊維構造物を用いることにより、充填物(例えば、羽毛)の吹き出しが抑制され、さらに、通気性にも優れる布団を得ることができる。また、多層繊維構造物は、綿糸等のその他の構成繊維を含み得ることから、本発明の布団は、接触冷感性が低いという特徴を有する点でも有利である。
【0015】
図2は、本発明の別の実施形態における多層繊維構造物の概略断面図である。多層繊維構造物200においては、ファイバー不織布層20が、2層構成であり、織編物10側から順に、第1のファイバー不織布層21と第2のファイバー不織布層22とを備える。第1のファイバー不織布層21と第2のファイバー不織布層22とはそれぞれ、低密度ファイバー不織布層(第1のファイバー不織布層21)および高密度ファイバー不織布層(第2のファイバー不織布層22)、あるいは、マイクロファイバー不織布層(第1のファイバー不織布層21)およびナノファイバー不織布層(第2のファイバー不織布層22)であり得る。詳細は後述する。
【0016】
A-1.織編物
1つの実施形態においては、上記織編物は、不織布層と溶着(溶媒による溶着)可能な構成繊維を含む。不織布層と溶着可能な構成繊維の混用率は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは20%以上であり、特に好ましくは30%以上である。混用率は、JIS L1030に準拠して測定され得る。
【0017】
不織布層と溶着可能な構成繊維としては、例えば、ポリウレタン弾性繊維、ポリフッ化ビニリデン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、酢酸セルロース繊維、ポリ乳酸繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、塩化ビニル繊維、ポリアミド繊維等が挙げられる。これらの構成繊維は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
1つの実施形態においては、織編物は、融点が210℃以下の構成繊維を含み、好ましくは融点が170℃以下の構成繊維を含む。融点が210℃以下の構成繊維としては、融点が210℃以下のポリウレタン弾性繊維が好ましく用いられ得る。上記のように低融点の構成繊維を用いて織編物を構成することにより、熱融着性に優れる多層繊維構造物を得ることができる。このような多層繊維構造物を用いれば、目止めを熱処理により行うことのできる布団を得ることができる。融点が210℃以下の構成繊維とそれ以外の構成繊維とを併用してもよい。1つの実施形態においては、融点が210℃以下(好ましくは170℃以下)の構成繊維の混用率は、10%以上であり、好ましくは15%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
【0019】
1つの実施形態においては、上記織編物の構成繊維の少なくとも一部が、ポリウレタン弾性繊維である。1つの実施形態においては、ポリウレタン弾性繊維の混用率は、10%以上であり、好ましくは15%以上であり、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
【0020】
上記ポリウレタン弾性繊維を構成するポリウレタンは、任意の適切なポリウレタンが用いられる。ポリウレタン弾性繊維の製造方法としては、例えば、ポリオールと過剰モル量のジイソシアネートを反応させ、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタン中間重合体を製造し、該中間重合体のイソシアネート基と容易に反応し得る活性水素を有する低分子量ジアミンや低分子量ジオールを不活性な有機溶剤中で反応させてポリウレタン溶液(ポリマー溶液)を製造した後、溶剤を除去し糸条に成形する方法や、ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジアミン又は低分子量ジオールとを反応させたポリマーを固化し溶剤に溶解させた後、溶剤を除去し糸条に成形する方法、前記固化したポリマーを溶剤に溶解させることなく加熱により糸条に成形する方法、前記ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させてポリマーを得、該ポリマーを固化することなく糸条に成形する方法、更には、上記のそれぞれの方法で得られたポリマー又はポリマー溶液を混合した後、混合ポリマー溶液から溶剤を除去し糸条に成形する方法等がある。好ましくは、(A)ポリオールとジイソシアネートとを反応させて得られる両末端イソシアネート基プレポリマー(以下、「両末端NCO基プレポリマー」と称する)と、(B)ポリオールとジイソシアネートと低分子量ジオールとを反応させて得られる両末端水酸基プレポリマー(以下、「両末端OH基プレポリマー」と称する)とを反応させて得られるポリマー(紡糸用ポリマー)を固化することなく溶融紡糸する方法である。
【0021】
上記ポリオールは、好ましくは、数平均分子量が800~3,000程度のポリマージオールである。ポリマージオールとしては、例えば、ポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール等が挙げられる。上記両末端NCO基プレポリマーを構成するポリオールと、両末端OH基プレポリマーを構成するポリオールとは、同じであってもよいし違っていてもよい。
【0022】
上記ポリエーテルグリコールとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの開環重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコールの重縮合物等が挙げられる。
【0023】
上記ポリエステルグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等のグリコール類から選ばれる少なくとも1種と、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の二塩基酸類から選ばれる少なくとも1種との重縮合物;ε-カプロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類の開環重合体等が挙げられる。
【0024】
上記ポリカーボネートグリコールとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート等から選ばれる少なくとも1種の有機カーボネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ジオールとのエステル交換反応によって得られるカーボネートグリコール等が挙げられる。
【0025】
上記ジイソシアネートとしては、脂肪族系、脂環式系、芳香族系、芳香脂肪族系等の任意の適切なジイソシアネートが用いられる。具体例としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メタ-テトラメチルキシレンジイソシアネート、パラ-テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0026】
鎖長延長剤である上記低分子量ジオールや低分子量ジアミンは、反応速度が適当であり、適度な耐熱性を与え得るものが好ましく、イソシアネートと反応し得る2個の活性水素原子を有し、一般に分子量が500以下の低分子量化合物が用いられる。
【0027】
上記低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の脂肪族ジオール類が挙げられる。紡糸性を阻害しない範囲内でグリセリン等の3官能グリコール類も用いられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。作業性や得られる繊維に適度な物性を与える点から、エチレングリコール、1,4-ブタンジオールが好ましい。上記低分子量ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ブタンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルメタン、ヒドラジン等が挙げられる。
【0028】
上記反応に際し、反応調整剤または重合度調整剤として、ブタノール等の1官能性のモノオールやジエチルアミンやジブチルアミン等の1官能性のモノアミンが用いられ得る。
【0029】
上記反応の際し、もしくは、紡糸溶液として用いられる不活性溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、N-メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド等の極性溶媒が挙げられる。
【0030】
ポリウレタン弾性繊維は、耐候性、耐熱酸化性、耐黄変性改善のために、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の任意成分を含み得る。任意成分は、上記反応の任意の適切なタイミングで添加される。
【0031】
上記紡糸用ポリマーを得る上で、全ジイソシアネートのモル量と、全ポリオールおよび全低分子量ジオールの合計モル量とのモル比は、好ましくは1.02~1.20である。上記両末端NCO基プレポリマーと上記両末端OH基プレポリマーとの比率は、紡糸した直後の糸中にNCO基が好ましくは0.05~1.0質量%、さらに好ましくは0.10~0.60質量%残るように調整される。なお、紡糸した繊維中のNCO基の含有率は、紡糸した繊維(約1g)をジブチルアミン/ジメチルホルムアミド/トルエン溶液で溶解した後、過剰のジブチルアミンと試料中のNCO基を反応させ、残ったジブチルアミンを塩酸で滴定して求められる。
【0032】
ポリウレタン弾性繊維の市販品としては、例えば、日清紡テキスタイル社製のモビロン(登録商標)R、R-L、K-L、R-LL等が挙げられる。
【0033】
上記織編物は、不織布層と溶着可能な構成繊維以外の他の繊維を含み得る。他の繊維としては、用途に応じて、任意の適切な繊維が採用され得る。例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維;レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化学合成繊維等が挙げられる。
【0034】
不織布層と溶着可能な構成繊維(例えば、ポリウレタン弾性繊維)は、任意の適切な形態で織編物に含まれる。具体的には、原糸(未加工糸)、仮撚糸、染色糸等の形態が挙げられる。また、裸糸;カバリング糸(代表的には、ポリウレタン弾性繊維を芯糸とする)、合撚糸、エア交絡糸等の他の繊維との複合糸等の形態が挙げられる。カバリング糸としては、シングルカバリングヤーン(SCY)、ダブルカバリングヤーン(DCY)が挙げられる。これらの形態は、単独でまたは2種以上組み合わせて採用される。
【0035】
上記織編物は、任意の適切な組織が採用される。具体的には、織物である場合、平織、綾織、朱子織等の織組織が挙げられる。編物は、緯編と経編とに大別される。緯編の場合、平編、ゴム編、パール編、両面編等の編組織が挙げられる。経編の場合、鎖編、デンビ編、コード編、アトラス編等が挙げられる。
【0036】
上記多層繊維構造物は、別の織編物をさらに含み得る。別の織編物の構成繊維としては、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維;レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維、アセテート等の半再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、塩化ビニル等の化学合成繊維等が挙げられる。別の織編物と、後述のようにして得られた織編物とファイバー不織布層との積層体とは、任意の適切な方法により一体化され得る。別の織編物と当該積層体とは、例えば、水流交絡処理等により一体化され得る。
【0037】
A-2.ファイバー不織布層
ファイバー不織布層を構成するファイバーとしては、ポリウレタンファイバー、ポリフッ化ビニリデンファイバー、ポリアクリロニトリルファイバー、酢酸セルロースファイバー、ポリ乳酸ファイバー、ポリプロピレンファイバー、ポリエステルファイバー、塩化ビニルファイバー、ポリアミドファイバー、ポリイミドファイバー等が挙げられる。これらのファイバーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。1つの実施形態においては、上記ファイバー不織布層は、ポリウレタンファイバーを含む。ポリウレタンファイバーを用いれば、ファイバー不織布層と織編物(特に、ポリウレタン弾性繊維を含む織編物)との接着強度に優れる多層繊維構造物を得ることができる。
【0038】
1つの実施形態においては、ファイバー不織布層は、融点が210℃以下のファイバーを含み、好ましくは融点が200℃以下のファイバーを含む。融点が210℃以下のファイバーとしては、融点が210℃以下のポリウレタンファイバーが好ましく用いられ得る。また、1つの実施形態においては、融点が210℃以下のポリウレタンファイバーは、ナノファイバーの形態で用いられ得る。上記のように低融点のファイバーを用いてファイバー不織布層を構成することにより、熱融着性に優れる多層繊維構造物を得ることができる。このような多層繊維構造物を用いれば、目止めを熱処理により行うことのできる布団を得ることができる。
【0039】
上記ファイバーの繊維径は、好ましくは1nm~500μmであり、より好ましくは10nm~300μmであり、さらに好ましくは20nm~200μmである。1つの実施形態においては、ファイバー不織布層は、ナノファイバー(好ましくは、ポリウレタンナノファイバー)を含む。ナノファイバーの繊維径は、好ましくは1nm~1000nmであり、より好ましくは50nm~900nmであり、さらに好ましくは200nm~800nmである。1つの実施形態においては、ファイバー不織布層は、マイクロファイバー(好ましくは、ポリウレタンマイクロファイバー)を含む。マイクロファイバーの繊維径は、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは1μm~300μmであり、さらに好ましくは1μm~200μmである。ナノファイバーとマイクロファイバーとは併用され得る。ファイバー(ナノファイバー、マイクロファイバー)の繊維径は、走査型電子顕微鏡写真(SEM)より100ヶ所の繊維径を計測し、その平均値を平均繊維径とする。繊維径の計測にはImageJ等の計測ソフトにより測定され得る。
【0040】
ファイバー不織布層の目付けは、好ましくは0.1g/m~20g/mであり、より好ましくは0.5g/m~10g/mである。このような範囲であれば、充填物(例えば、羽毛)の吹き出しが特に抑制され、かつ、通気性に優れる布団を得ることができる。また、ファイバー不織布層の目付けが上記範囲であれば、耐突き刺し性に優れる多層繊維構造物が形成され、例えば、フェザーのような芯部を有する充填物が充填されている場合においても、当該充填物の吹き出しを防止することができる。
【0041】
ファイバー不織布層の厚みは、好ましくは1μm~500μmであり、より好ましくは2μm~300μmであり、さらに好ましくは3μm~200μmであり、特に好ましくは4μm~100μmである。このような範囲であれば、充填物(例えば、羽毛)の吹き出しが特に抑制され、かつ、通気性に優れる布団を得ることができる。
【0042】
1つの実施形態においては、上記ファイバー不織布層は、密度の異なる複数層から構成される。好ましくは、ファイバー不織布層は、織編物側から順に、低密度ファイバー不織布層(第1のファイバー不織布層)と、高密度ファイバー不織布層(第2のファイバー不織布層)とを有し得る。別の実施形態においては、上記ファイバー不織布層は、繊維径(平均繊維径)の異なる複数層から構成される。好ましくは、ファイバー不織布層は、織編物側から順に、マイクロファイバーから構成されるマイクロファイバー不織布層(第1のファイバー不織布層)と、ナノファイバーから構成されるナノファイバー不織布層(第2のファイバー不織布層)とを有し得る。また、ファイバー不織布層においては、上記低密度ファイバー不織布層がマイクロファイバー不織布層であり、上記高密度ファイバー不織布層がナノファイバー不織布層であってもよい。
【0043】
上記のように、織編物上に直接、第1のファイバー不織布層(低密度ファイバー不織布層またはマイクロファイバー不織布層)を設け、第1のファイバー不織布層上に、第2のファイバー不織布層(高密度ファイバー不織布層またはナノファイバー不織布層)を設けることにより、ファイバー不織布層と織編物とが剥離し難く、かつ、多層繊維構造物同士あるいは別の生地に対する接着強度に優れた多層繊維構造物を得ることができる。第1のファイバー不織布層と第2のファイバー不織布層とはそれぞれ、同じ樹脂から構成されていてもよく、異なる樹脂から構成されていてもよい。好ましくは、同じ樹脂から構成される。
【0044】
上記低密度ファイバー不織布層およびマイクロファイバー不織布層の密度は、好ましくは0.0025g/cm~20g/cmであり、より好ましくは0.003g/cm~20g/cmであり、さらに好ましくは0.005g/cm~20g/cmである。このような範囲であれば、上記の効果はより顕著となる。
【0045】
上記低密度ファイバー不織布層およびマイクロファイバー不織布層の厚みは、好ましくは1μm~40μmであり、より好ましくは1μm~30μmであり、さらに好ましくは1μm~20μmである。
【0046】
上記高密度ファイバー不織布層およびナノファイバー不織布層の密度は、好ましくは0.0025g/cm~200g/cmであり、より好ましくは0.05g/cm~40g/cmであり、さらに好ましくは0.01g/cm~20g/cmである。このような範囲であれば、上記の効果はより顕著となる。
【0047】
上記高密度ファイバー不織布層およびナノファイバー不織布層の厚みは、好ましくは0.1μm~40μmであり、より好ましくは0.5μm~20μmであり、さらに好ましくは1μm~10μmである。
【0048】
1つの実施形態においては、上記不織布層は、エレクトロスピニング法により形成され得る。エレクトロスピニング法としては、溶液型エレクトロスピニング法が好ましく用いられ得る。溶液型エレクトロスピニング法は、不織布層を構成するファイバーの材料となる樹脂の溶液に高電圧(例えば、5kV~40kV)を印加し、当該樹脂溶液をノズルから噴霧し、アースされたコレクターとしての上記織編物で樹脂を捕集し、その過程で樹脂を繊維化する方法である。不織布層を構成するファイバーの材料となる樹脂は、ノズルから押し出され、ノズル/コレクター(織編物)間での電界による延伸作用および溶媒の揮発により、所定の繊維径にまで繊維化される。ファイバーの繊維径は、樹脂溶液の濃度、印加電圧、ノズル径、ノズルとコレクターとの距離、加工速度等により調整することができる。
【0049】
本発明においては、樹脂溶液中の溶媒が残存した状態のファイバーを織編物に到達させ、その後、当該溶媒を揮発させて、不織布層を形成することが好ましい。このようにすれば、織編物の構成繊維(例えば、ポリウレタン弾性繊維)と不織布層を構成するファイバーとを部分的に溶着させることができ、織編物と不織布層との接着強度に優れ、かつ、通気性に優れた多層繊維構造物を得ることができる。溶媒の残存量は、ノズルとコレクター(織編物)との距離、樹脂溶液の濃度、溶媒の種類(沸点)等により、調整することができる。
【0050】
上記樹脂溶液に用いられる溶媒としては、不織布層を構成するファイバーの材料となる樹脂を溶解し得る限り、任意の適切な溶媒が用いられ得る。好ましくは、樹脂溶液に用いられる溶媒として、不織布層を構成するファイバーの材料となる樹脂(例えば、ポリウレタン系樹脂)と織編物の構成繊維(例えば、ポリウレタン弾性繊維)とを溶解し得る溶媒が用いられる。このような溶媒を選択すれば、織編物の構成繊維と不織布層を構成するファイバーとを好ましく溶着させることができ、織編物と不織布層との接着強度に優れた多層繊維構造物を得ることができる。
【0051】
不織布層を構成するファイバーの材料となる樹脂としてポリウレタン系樹脂が用いられ(すなわち、不織布層がポリウレタンファイバーを含み)、かつ、織編物がポリウレタン弾性繊維を含む場合、上記溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メチルエチルケトン、アセトン等が用いられ得る。なかでも好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミドであり、より好ましくはジメチルホルムアミドである。これらの溶媒を用いれば、織編物と不織布層との接着強度が特に優れた多層繊維構造物を得ることができる。また、上記溶媒は、高沸点溶媒であり、樹脂溶液中の溶媒が残存した状態のファイバーを織編物に到達させ、織編物と不織布層とを溶着させるための条件設定が容易である点でも有利である。
【0052】
上記樹脂溶液は、含有される樹脂および溶媒の種類、所望とするファイバーの繊維径、不織布層の密度等に応じて任意の適切な樹脂濃度とされ得る。1つの実施形態においては、樹脂溶液の樹脂濃度は、樹脂溶液の全重量を基準として、好ましくは1wt%~30wt%であり、より好ましくは5wt%~20wt%である。
【0053】
不織布層を構成するファイバーの材料となる樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万~100万であり、より好ましくは5万~50万である。重量平均分子量がこのような範囲の樹脂は、好ましく繊維化し得る点で有利である。前記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定され得る。
【0054】
上記ノズルのノズル径は、例えば、0.1mm~2.0mmである。また、ノズルからコレクターまでの距離は、例えば、3cm~30cmである。
【0055】
B.布団
上記のとおり、本発明の布団は、少なくとも一部が多層繊維構造物から構成される袋体を有する。当該袋体は、その全部が上記多層繊維構造物から構成されていてもよく、その一部が上記多層繊維構造物から構成されていてもよい。例えば、接触冷感性が低い(冷たくない)性能を活かし、内側(使用者側)に多層繊維構造物を用い、表生地はプリント用の任意の適切な生地を用いて、上記袋体を形成してもよい。
【0056】
1つの実施形態においては、本発明の布団は、袋体に羽毛が封入されている。
【0057】
1つの実施形態においては、上記袋体は、開口部から充填物(例えば、羽毛)を充填し、開口部を縫製して形成される。さらに、袋体は、袋体内に複数の区画室を設けるように縫製されていてもよい。1つの実施形態においては、上記袋体は、上記例示のように縫製部を有し、縫製部に熱処理による目止めがされている。縫製部においては、熱処理により多層繊維構造物が熱融着して目止めがされる。この実施形態においては、目止め処理に目止めテープが用いられておらず、目止めテープを有さない袋体(結果として布団)が得られる。熱処理の条件としては、任意の適切な条件が採用される。具体的には、乾熱処理でもよいし、湿熱処理でもよい。乾熱処理の場合、処理温度は、好ましくは100~200℃、さらに好ましくは110~190℃である。処理時間は、代表的には30~120秒である。一方、湿熱処理の場合、処理温度は、好ましくは90~140℃、さらに好ましくは95~130℃である。処理時間は、代表的には10~30秒である。また、熱処理の方法としては、上記以外にも、アイロン等の熱媒体に、多層繊維構造物を直接押し当てて熱処理する方法が挙げられる。この場合、処理温度は、好ましくは80~180℃、さらに好ましくは80~120℃である。処理時間は、代表的には5~20秒である。
【0058】
別の実施形態においては、上記縫製に代えて、熱処理により、袋体を形成してもよい。具体的には、上記袋体は、開口部から充填物(例えば、羽毛)を充填し、開口部を熱処理により多層繊維構造物を熱融着することにより、形成されていてもよい。また、対向する生地を熱処理により融着させるようにして、上記複数の区画室を設けてもよい。縫製に代えて、熱処理により、袋体を形成することにより、充填物の吹き出し抑制効果をさらに高めることができる。熱処理の条件としては、上記で説明した条件が採用され得る。
【実施例
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0060】
<実施例1>
経糸を綿糸(50番手)、緯糸を綿糸(50番手)とポリウレタン弾性繊維カバリング糸(芯糸 モビロンR110-LL、日清紡テキスタイル製、鞘糸 ナイロン33dtex/10f、東レ性)を使用し、表面は綿糸のみ、裏面の緯糸に綿糸とポリウレタン弾性繊維カバリング糸が1本交互に配置されるようにして経二重織ガーゼを得た。この綿織物(ポリウレタン弾性繊維(モビロン)混率20%)を基布として、エレクトロスピニングによりポリウレタン溶液を直接紡糸して多層繊維構造物を得た。マイクロファイバー不織布用ポリウレタン溶液は、ジメチルホルムアミドを溶媒として固形分濃度15wt%となるように作製した。ナノファイバー不織布用ポリウレタン溶液は、ジメチルホルムアミドおよびメチルエチルケトンを70:30の比率で混合した混合溶媒を用いて固形分濃度13wt%となるように作製した。エレクトロスピニングはES300(株式会社ナフィアス社製)を用いた。ES300は紡糸ノズルが上部の金属平板コレクタに向かって5本ついており、紡糸ノズルは紡糸チャンバーの長手方向に平行に取り付けられている。マイクロファイバー不織布層は、300mm幅の基布ロールをES300にセットし、ノズルを幅方向に300mm、3m/minの速度でスウィングさせ、巻取り速度1.88cm/minで加工した。印加電圧は10kV、ノズル-コレクタ間距離は8cmとした。ナノファイバー不織布層は、マイクロファイバー不織布層を加工した基布ロールをES300にセットし、巻取り速度1.88cm/minで加工した。印加電圧は10kV、ノズル―コレクタ間距離は6cmとした。
【0061】
<実施例2>
マイクロファイバー不織布層を設ける際の紡糸速度を2倍としたこと以外は、実施例1と同様にして、多層繊維構造物を得た。
【0062】
<実施例3>
マイクロファイバー層を設けず、ナノファイバー層を設ける際の紡糸速度を0.75cm/minとしたこと以外は、実施例1と同様にして、多層繊維構造物を得た。
【0063】
<比較例1>
経糸、緯糸ともに綿糸(80番手)とした綿サテン織生地を基布とし、片面に細孔直径3μm、空孔率91%、厚み12μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)樹脂フィルム(重量:2.4g/m2、通気性:4.7cm/cm・s)を接着面積比15%(接着剤転写量:3.6g/m)で接着してePTFEラミネート生地を得た。
【0064】
<比較例2>
経糸、緯糸ともに綿糸(80番手)として形成した高密度綿サテン織生地に、カレンダー加工を施し、羽毛布団用生地を得た。
【0065】
<比較例3>
経糸を綿糸(50番手)、緯糸を綿糸(50番手)とポリウレタン弾性繊維カバリング糸(芯糸:日清紡テキスタイル製の商品名「モビロンR110-LL」;鞘糸:東レ社製、ナイロン33dtex/10f)を使用し、表面は綿糸のみ、裏面の緯糸に綿糸とポリウレタン弾性繊維カバリング糸が1本交互に配置されるようにして経二重織ガーゼ生地を得た。
【0066】
<評価>
実施例および比較例で得られた多層繊維構造物を、下記評価に供した。結果を表1に示す。
(1)通気度
JIS L 1096 A法 フラジール形法により、通気度を測定した。
(2)洗濯試験
洗濯試験機にて水200ml、スチールボール20個と10cm×10cmの試験生地を入れ40℃、30分の条件で洗濯試験を行い生地の剥離と洗濯後の通気度を確認した。
(3)羽毛吹き出し試験
日羽協タンブルドライ法に準じて、羽毛吹き出し試験を行った。具体的には、実施例および比較例で得られた生地(多層繊維構造物)を袋状とし、当該生地で構成された袋に羽毛を封入して評価用サンプルを作製し、ISO6330適合タンブル乾燥機に当該サンプルとICI型ピリング試験用ゴム管(JIS L 1076)10本を入れ、温度を40℃にして60分間運転した。操作後、吹き出した羽毛、製品に付着している羽毛、吹き出し途中の羽毛、全てを回収し、日本羽毛製品協同組合基準に照らして判定した。
(4)接触冷温感試験
カトーテック社製の商品名「KES-F7サーモラボII試験機」を用いて試験を実施した。熱板にセンサーを重ね、試験片との温度差(ΔT:20℃)を一定にした後、センサーを試験片に接触させた時の瞬間的な熱の移動量である最大熱吸収速度(q-max)を測定した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から明らかなように、本発明の多層繊維構造物は通気度が高く、羽毛の吹き出しを防止し得、かつ、接触温冷感も低く、すなわち、保温性、蒸れ感、触った瞬間の温かさという評価項目いずれも良好である。比較例1の生地は、ゴアテックス(登録商標)として知られるラミネート生地であるが、通気度は著しく低く、接触温冷感も0.3に近い大きな値となっている。比較例2は一般に羽毛布団用生地として用いられる綿100%高密度織物のダウンプルーフ加工生地であるが、比較例1同様、通気度が著しく低く、接触温冷感は0.3を超える高い値となっており、触ると冷たく感じるレベルである。また、片面にファイバー不織布層を積層しなかった比較例3は、通気度が高く、接触温冷感は低いため、触った瞬間の温かさは感じることができるが、羽毛の吹き出しは防止することができないことが示された。
図1
図2