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特許7048042圧力測定用シート、圧力測定用シートの製造方法及び圧力測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】圧力測定用シート、圧力測定用シートの製造方法及び圧力測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 9/06 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
G01M9/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017211558
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2019086287
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】510108205
【氏名又は名称】東京流研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】香西 政孝
(72)【発明者】
【氏名】横川 譲
(72)【発明者】
【氏名】山本 一臣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖
(72)【発明者】
【氏名】重谷 秀夫
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-035235(JP,A)
【文献】特開2002-206987(JP,A)
【文献】特開2006-184215(JP,A)
【文献】特開2005-221410(JP,A)
【文献】特開2006-133163(JP,A)
【文献】米国特許第04372157(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00- 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の表面に沿って配置されるシート状の圧力測定用シートであって、
圧力測定面に設けられた複数の圧力測定用ポートと、
圧力測定器側に接続される少なくとも1つの接続用ポートと、
前記複数の圧力測定用ポートと前記接続用ポートとを貫通し、互いに非平行に配列された領域を有する複数の貫通孔を有する連結部と
を具備し、
前記複数の貫通孔は、当該圧力測定用シートの長手方向に沿って設けられ、
当該圧力測定用シートは、長手方向に積層された積層構造体からなる
圧力測定用シート。
【請求項2】
測定対象の表面に沿って配置されるシート状の圧力測定用シートであって、
圧力測定面に設けられた複数の圧力測定用ポートと、
圧力測定器側に接続される少なくとも1つの接続用ポートと、
前記複数の圧力測定用ポートと前記接続用ポートとを貫通し、互いに非平行に配列された領域を有する複数の貫通孔を有する連結部と、
デバイスが収容されるデバイス収容部
を具備し、
前記連結部は、前記デバイス収容部に収容されるデバイスに接続される配線を引き回すための連結溝を前記測定対象の表面と対向する面に有する
圧力測定用シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧力測定用シートであって、
前記複数の圧力測定用ポートは、前記測定対象の表面を流れる流体の流れの方向に沿って当該圧力測定用シートの上面からみて一直線上に配列されている
圧力測定用シート。
【請求項4】
測定対象の表面に沿って配置されるシート状の圧力測定用シートであって、
圧力測定面に設けられた複数の圧力測定用ポートと、
圧力測定器側に接続される少なくとも1つの接続用ポートと、
前記複数の圧力測定用ポートと前記接続用ポートとを貫通し、互いに非平行に配列された領域を有する複数の貫通孔を有する連結部と
を具備し、
前記測定対象は、航空機のフラップであり、
当該圧力測定用シートは、前記航空機のフラップの表側、縁部及び裏側を沿うように配置されるものであり、
前記接続用ポートは、前記航空機のフラップの裏側に位置するものである
圧力測定用シート。
【請求項5】
測定対象の表面に沿って配置され、圧力測定面に設けられた複数の圧力測定用ポートと、圧力測定器側に接続される少なくとも1つの接続用ポートと、前記複数の圧力測定用ポートと前記接続用ポートとを貫通し、長手方向に沿って設けられた貫通孔を有する連結部とを有し、複数の前記貫通孔が互いに非平行に配列された領域を有する圧力測定用シートを製造する方法であって、
積層造形法により、前記圧力測定用シートの長手方向に薄い積層体を積層して、前記圧力測定用ポート、前記接続用ポート及び前記連結部を含めて一体的に造形する
圧力測定用シートの製造方法。
【請求項6】
測定対象である航空機のフラップの表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力測定面に圧力測定用シートの上面からみて一直線上に複数の圧力測定用ポートが少なくとも設けられた圧力測定用シートを前記測定対象である航空機のフラップの表面、縁部及び裏側を沿うように配置し、
前記圧力測定用シートに設けられたそれぞれの貫通孔を介して各前記圧力測定用ポートと貫通され、前記航空機のフラップの裏側に位置するそれぞれの接続用ポートを圧力測定器側に接続し、
前記圧力測定器により各前記圧力測定用ポートにおける圧力を測定する
圧力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航空機のフラップの表面の圧力分布を測定するために用いられる圧力測定用シート、そのような圧力測定用シートの製造方法及びそのような圧力測定用シートを用いた圧力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機のフラップの表面の圧力分布を測定する際に、フラップの表面に圧力検出孔を設ける方法がある。しかし、このような方法は、フラップを加工する必要があり、望ましくない。
【0003】
圧力検出用の孔を設けたチューブを束にしたものを流れの方向に沿ってフラップの表面に貼り付ける方法もあるが、圧力検出用の孔を所望の位置に正確に配置されるようにこれらのチューブをフラップの表面に貼り付けることに手間を要し作業性が悪く、加えてチューブの存在がフラップの表面の流れを乱す要素となり、正確にフラップの表面の圧力分布を測定することができない。
【0004】
これに対して、平行に延びる複数の圧力通路のそれぞれの圧力検出孔を開設した柔軟なシート状の部材を航空機のフラップの表面に配置する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-184215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のシート状の部材は、押し出し成形に成形される。従って、圧力通路の方向は押し出し方向に制限され、圧力検出孔を所望の位置に配置できないことがある。例えば、上記のシート状の部材では、測定対象の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力測定面に当該圧力測定用シートの上面からみて一直線上に複数の圧力検出孔を配置することができない。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、測定対象の表面を加工することなく、測定対象の表面における所望の位置の圧力分布を簡単にかつ正確に検出することができる圧力測定用シート、そのような圧力測定用シートの製造方法及びそのような圧力測定用シートを用いた圧力測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る圧力測定用シートは、測定対象の表面に沿って配置されるシート状の圧力測定用シートであって、圧力測定面に設けられた複数の圧力測定用ポートと、圧力測定器側に接続される少なくとも1つの接続用ポートと、前記複数の圧力測定用ポートと前記接続用ポートとを貫通し、互いに非平行に配列された領域を有する複数の貫通孔を有する連結部とを具備する。
【0009】
本発明では、測定対象の表面に沿って配置されるシート状の圧力測定用シートにおいて、複数の貫通孔を互いに非平行に配列したことで、圧力測定用ポートを所望の位置に自由に配置できる。従って、測定対象の表面を加工することなく、測定対象の表面における所望の位置の圧力分布を簡単にかつ正確に検出することができる。
【0010】
本発明では、当該圧力測定用シートは、前記複数の貫通孔が当該圧力測定用シートの長手方向に沿って設けられ、長手方向に積層された積層構造体からなることが好ましい。測定対象の表面の圧力を正確に測定するためには、シートを可能な限り薄くしたい。そのため貫通孔が細くなるが、長手方向に積層された積層構造体からなるので、詰まりなどが生じないように精度よく貫通孔を設けることができる。
【0011】
本発明では、デバイスが収容されるデバイス収容部を更に具備し、前記連結部は、前記デバイス収容部に収容されるデバイスに接続される配線を引き回すための連結溝を前記測定対象の表面と対向する面に有してもよい。これにより、デバイスの収容やデバイスに対する配線を容易にできる。そして、デバイスとして、非定常圧力センサや温度測定素子などを収容することで、測定対象の表面の様々な物理量を測定することができる。
【0012】
本発明では、前記複数の圧力測定用ポートは、前記測定対象の表面を流れる流体の流れの方向に沿って当該圧力測定用シートの上面からみて一直線上に配列されていることが典型的な形態である。これにより、測定対象の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力分布を正確に測定することができる。
【0013】
本発明では、前記測定対象は、航空機のフラップであり、当該圧力測定用シートは、前記航空機のフラップの表側、縁部及び裏側を沿うように配置されるものであり、前記接続用ポートは、前記航空機のフラップの裏側に位置するものが好ましい形態である。これにより、航空機のフラップの表面の圧力分布をより正確に測定することができる。また、縁部に圧力測定用ポートを設けることで、縁部表面の圧力分布を測定することができる。
【0014】
本発明の一形態に係る圧力測定用シートの製造方法は、測定対象の表面に沿って配置され、圧力測定面に設けられた複数の圧力測定用ポートと、圧力測定器側に接続される少なくとも1つの接続用ポートと、前記複数の圧力測定用ポートと前記接続用ポートとを貫通する貫通孔をシートの長手方向に有する連結部とを有する圧力測定用シートを製造する方法であって、積層造形法により、前記圧力測定用シートの長手方向に薄い積層体を積層して、前記圧力測定用ポート、前記接続用ポート及び前記連結部を含めて一体的に造形する。この製造方法により、貫通孔に詰まりなどが生じないように、精度よく貫通孔を設けることができる。
【0015】
本発明の一形態に係る圧力測定方法は、測定対象の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力測定面に圧力測定用シートの上面からみて一直線上に複数の圧力測定用ポートが少なくとも設けられた圧力測定用シートを前記測定対象の表面に配置し、前記圧力測定用シートに設けられたそれぞれの貫通孔を介して各前記圧力測定用ポートと貫通されたそれぞれの接続用ポートを圧力測定器側に接続し、前記圧力測定器により各前記圧力測定用ポートにおける圧力を測定する。これにより、測定対象の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力分布を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定対象の表面を加工することなく、測定対象の表面における所望の位置の圧力分布を簡単にかつ正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る航空機のフラップに圧力測定用シートを配置した状態を示す斜視図である。
図2図1に示したフラップの中央部に配置された圧力測定用シートの斜視図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図2の符号Bで示す領域の拡大平面図である。
図5図2の符号Cで示す領域の拡大平面図である。
図6図1に示したフラップの外舷に配置された圧力測定用シートの斜視図である。
図7図6のD-D断面図である。
図8図6のE-E断面図ある。
図9】本発明の一実施形態に係る圧力測定用シートを製造する光造形機の概略図である。
図10】本発明の変形例を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
本発明に係る圧力測定用シートを用いて航空機のフラップの圧力分布を測定する例を示して一実施形態を説明する。
【0019】
〈圧力測定用シートの構成〉
図1は航空機のフラップに圧力測定用シートを配置した状態を示す斜視図である。
圧力測定用シート1、4、5は、航空機のフラップ2の表裏にベルト状に配置される。圧力測定用シート1はフラップ2の中央部に配置され、圧力測定用シート4はフラップ2の外舷に配置され、圧力測定用シート5はフラップ2の内舷に配置される。
【0020】
圧力測定用シート1、4、5の厚さは、例えば2mm~3mm程度であり、フラップ2のコード長の0.1%以下であることが好ましい。これにより、気流の乱れを抑制できる。圧力測定用シート1、4、5は、典型的にはエポキシ系やウレタン系の光硬化性樹脂材料からなり、光造形法などの積層造形法により造形される。圧力測定用シート1、4、5は、例えばフラップ2の表面に接着剤により接着して固定される。圧力測定用シート1、4、5は、エポキシ系やウレタン系の光硬化性樹脂材料の他に、金属材料などを用いることができる。
【0021】
図2はフラップ2の中央部に配置された圧力測定用シート1の斜視図である。
圧力測定用シート1は、フラップ2の前縁を跨ぐようにフラップ2の表裏の前半分の領域に配置された第1の圧力測定用シート10と、フラップの2の後縁を跨ぐようにフラップ2の表裏の後ろ半分の領域に配置された第2の圧力測定用シート20とを有する。このように圧力測定用シート1を分割することで、フラップ2の全周にわたる領域に当該圧力測定用シート1を簡単な作業で配置することができる。圧力測定用シート4、5についても同様に構成される。なお、圧力測定用シート1、4、5は、フラップ2の全周にわたる領域でなく、一部の任意の領域に配置してもよい。
【0022】
第1の圧力測定用シート10は、フラップ2の表側の表面に配置されるほぼ平面状の表側部11と、フラップ2の前縁側の表面に配置される長手方向に湾曲する前縁側部12と、フラップ2の裏側の表面に配置されるほぼ平面状の裏側部13とを有する。これら表側部11と前縁側部12と裏側部13とは、一体的に構成されている。第1の圧力測定用シート10を一体的に構成することで、配管接続などの接続のための作業を削減でき、また強度を向上させることができる。
【0023】
第1の圧力測定用シート10は、圧力測定面14に設けられた複数の圧力測定用ポート15と、圧力測定器側に接続される複数の接続用ポート16と、圧力測定用ポート15と接続用ポート16を連結する連結部17とを有する。
【0024】
複数の圧力測定用ポート15は、典型的にはフラップ2の表面を流れる流体の流れの方向(典型的には図2の符号3の点線)に沿ってまっすぐ(圧力測定用シート1の上面から見て直線上)に配列されている。これにより、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力分布を正確に測定することができる。
【0025】
複数の接続用ポート16は、裏側部13の端部のインターフェース部19に設けられている。複数の接続用ポート16は、典型的にはフラップ2の裏側に設けられた取り込み口からそれぞれステンレスパイプ及びビニールチューブを介して圧力計測器に接続される(いずれも図示を省略)。圧力計測器は、フラップ2の内部に配置される。圧力計測器は、圧力変換器と圧力分布モニターにより構成される。圧力変換器は、圧力変化を電圧として計測し、計測データは圧力への変換係数を用いて圧力データとして保存される。
【0026】
インターフェース部19は、裏側部13と連続して一体的に設けられ、フラップ2の裏側で内部に向けて段付き状に沈んでいる。このようにインターフェース部19が沈んでいることで、インターフェース部19に対する配管などの接続構造物による流体の流れの乱れを抑えることができる。
【0027】
図3図2のA-A断面図である。
連結部17は、各圧力測定用ポート15と各接続用ポート16とをシート内で貫通する複数の貫通孔18を有する。
本実施形態に係る貫通孔18の穴径は、1.2mmとしている。貫通孔18の穴径は、当該圧力測定シートの厚みをできる限り抑えるために、細くする必要がある一方で、長さがかなり長くなることもある貫通孔18に詰まりが生じないように造形するためにはその穴径を細くするのにも限界があり、当該圧力測定シートの厚み2mmに対して穴径として1.2mmを採用した。また、本発明者らは、穴径1.2mm、両側の板厚0.4mmの合計2.0mmの厚さで試験に十分な強度が確保されていることも強度試験にて確認をしている。
圧力測定用ポート15の穴径R15は、例えば貫通孔18の穴径R18よりも小さい方が好ましい。本実施形態に係る圧力測定用ポート15の穴径R15は、0.5mmとしている。圧力測定用ポート15の穴径R15が大きいと翼の表面形状を変えてしまうため、できる限り小さい方が好ましく、実際に造形が可能な穴径R15として0.5mmを採用した。
図4図2の符号Bで示す領域の拡大平面図、図5図2の符号Cで示す領域の拡大平面図である。
複数の貫通孔18は、図4に示すように互いに平行に配置された領域18aと、図5に示すように互いに非平行に配列された領域18bとを有する。
互いに平行に配置された領域18aは、典型的には第1の圧力測定用シート10の長手方向の一致する方向に沿っている。
【0028】
互いに非平行に配列された領域18bは、その領域付近に少なくとも1つの貫通孔18が残りの貫通孔18と非平行に配列される。非平行となった少なくとも1つの貫通孔18は、典型的には第1の圧力測定用シート10の長手方向とは所定の角度をもった方向に配列されている。
【0029】
互いに非平行に配列された領域18bを有することで、圧力測定用ポート15を所望の位置に自由に配置できる。典型的には、複数の圧力測定用ポート15を、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向(図2の符号3の点線)に沿ってまっすぐに配列することができる。これにより、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力分布を正確に測定することができる。特許文献1に記載された技術では、このように複数の圧力測定用ポート15を、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向に沿ってまっすぐに配列することができないので、ある程度ずらして配置するしかなく、それでは測定精度が不十分である。航空機のフラップなどにおいては騒音の低減のための設計が極めて重要になってきており、そのためにフラップの表面の圧力をこれまでになく正確に測定することが要求されるようになってきており、重要な課題となっていた。この実施形態では、複数の圧力測定用ポート15を、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向に沿ってまっすぐに配列することができるので、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力分布を正確に測定することができる。
第2の圧力測定用シート20は、上記の第1の圧力測定用シート10とほぼ同様の構成であり、同様の構成部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0030】
第2の圧力測定用シート20は、フラップ2の表側の表面に配置されるほぼ平面状の表側部21と、フラップ2の後縁側の表面に配置される長手方向に湾曲する後縁側部22とが一体的に構成され、フラップ2の裏側の表面に配置されるほぼ平面状の裏側部23がこれらと分離している。後縁側部22の貫通孔18と裏側部23の貫通孔18とは、ステンレスパイプ(図示を省略)を介して連結されている。このように分離する構成を採用することで、1つの圧力測定器による測定範囲が長くなるような場合にも対応することが可能となる。
【0031】
加えて、第1の圧力測定用シート10の裏側部13の端部のインターフェース部19が長手方向を向いていたのに対して、第2の圧力測定用シート20の裏側部23の端部のインターフェース部29は、長手方向と直交する方向を向いている。また、インターフェース部29は、インターフェース部19と比べてよりフラップ2の内部に配置されるようにフラップ2側により突き出ている。このように、この実施形態に係る圧力測定用シート1では、所望の位置、所望の方向にインターフェース部19を設けることができる。
【0032】
次に、図1に示したフラップ2の外舷に配置された圧力測定用シート4について説明する。図6は、圧力測定用シート4の斜視図である。
圧力測定用シート4は、フラップ2の前縁を跨ぐようにフラップ2の表裏の前半分の領域に配置された第1の圧力測定用シート50と、フラップの2の後縁を跨ぐようにフラップ2の表裏の後ろ半分の領域に配置された第2の圧力測定用シート60とを有する。
なお、圧力測定用シート4において、圧力測定用シート1と同様の構成部分に同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
第1の圧力測定用シート50及び第2の圧力測定用シート60は、表側部11、21、前縁側部12、22及び裏側部13、23の他に、前縁側部12と裏側部13との間、或いは分割された裏側部23、23の間を接続するする接続部71が一体的に設けられている。接続部71は、典型的には、フラップ2の裏側の取り込み口の位置が表側部11における圧力測定用ポート15の位置から翼長方向に大きくずれていても、第1の圧力測定用シート50や第2の圧力測定用シート60を介して圧力測定用ポート15と圧力計測器とを接続することが可能である。つまり、フラップ2の裏側の取り込み口の位置に左右されずに所望の位置に圧力測定用ポート15を設けることが可能となる。
図7図6のD-D断面図、図8図6のE-E断面図ある。
【0034】
第1の圧力測定用シート50及び第2の圧力測定用シート60では、連結部17が、デバイス収容部72に収容されるデバイス(図示を省略)に接続される配線(図示を省略)を引き回すための連結溝73を測定対象としてのフラップ2の表面と対向する面に有する。例えばデバイスとして非定常圧力センサや温度測定素子などをデバイス収容部72に収容することで、測定対象としてのフラップ2の表面の様々な物理量を測定することができる。また、連結溝73は配線に対する保護管としても機能する。
【0035】
〈圧力測定用シートを用いた測定方法〉
本実施形態では、図1に示したように、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力測定面にまっすぐに複数の圧力測定用ポート15が設けられた圧力測定用シート1、4、5をフラップ2の表面に配置する。
【0036】
圧力測定用シート1、4、5に設けられたそれぞれの貫通孔18を介して各圧力測定用ポート15と貫通されたそれぞれの接続用ポート16を、インターフェース部19を介して圧力測定器側に接続する。
圧力測定器において、各圧力測定用ポート15における圧力を測定する。
これにより、フラップ2の表面を流れる流体の流れの方向に沿って圧力分布を正確に測定することができる。
【0037】
〈圧力測定用シートの製造方法〉
図9はこの実施形態に係る圧力測定用シートを製造する光造形機の概略図である。
光造形機100は、光硬化性樹脂101を貯留する容器102と、容器102内を昇降可能に配置されたプラットフォーム103と、プラットフォーム103の下部に取り付けられたピストン104とを有する。ピストン104は、図示を省略した駆動機構により昇降動作するように構成されている。プラットフォーム103は、造形時に、駆動機構によって所定の距離、例えば0.1mm程度、順次下降するように構成される。
【0038】
光造形機100は、レーザ光源105と、レーザ光源105から出力されたレーザ光106を容器102内に貯留された光硬化性樹脂101の液面107を走査させるスキャナーシステム108とを有する。この光造形機100では、レーザ光106が光硬化性樹脂101の液面107を走査することで、走査に応じた形状の層(薄い積層体)を形成し、その層を積層しすることで造形物が造形される。
この光造形機100により第1の圧力測定用シート10を一体的に造形する典型例を説明する。
【0039】
第1の圧力測定用シート10は、この光造形機100において、符号109で示す第1の方向に積層して造形される。第1の方向109は、実質的には表側部11及び裏側部13の長手方向である。この長手方向が本発明に係る長手方向である。表側部11及び裏側部13の長手方向は、貫通孔18の軸方向の長さが最も長い第1の方向109である。すなわち、本発明に係る製造方法では、光造形法により、第1の圧力測定用シート10を貫通孔18の軸方向の長さが最も長い第1の方向109に積層して造形する。これにより、貫通孔18に詰まりなどが生じないように精度よく貫通孔18を設けることができる。
【0040】
〈その他〉
本実施形態に係る圧力測定用シート1、4、5は、光造形法により造形され、乃至、互いに非平行に配列された領域18bを有することから、形状と圧力計測位置に関する制約がほとんどなく、圧力測定点が自由にレイアウトでき、測定対象としてのフラップ2の表面の流体現象がより詳細に把握することが可能となる。典型的には、気流の流れ方向に対して圧力測定点をまっすぐに配置できる。また、後縁側部22にも圧力測定用ポート15を設けることが可能であって後縁側にも圧力測定点を設けることができる。つまり、気流方向だけでなく、気流と垂直な方向にも圧力測定点を配置することができる。更に、図10に示すように、測定対象としてのフラップ2の表面にリベットなどの突起部81があるような場合にも、これを避けるように貫通孔18を設けることができ、突起部81の後流となる位置にも圧力測定点(圧力測定用ポート15)を設けることができる。これにより、後縁側や突起部81の後ろの圧力も計測することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態に係る圧力測定用シート1、4、5は、角にスロープや隅アールを持った形状の加工が可能であり、かつ、厚さが薄いことから、気流の流れを乱すことがない。このため、試験の安全性が向上し、また精度のよい計測ができる。
【0042】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、様々変形や応用が可能であり、その範囲も本発明の技術的範囲に属する。
例えば、上記の実施形態は、本発明に係る圧力測定用シートを航空機のフラップの圧力分布計測に用いた例を示したが、航空機の他の部位の圧力分布を測定するために用いることが可能であり、また航空機以外の宇宙機、鉄道、自動車などの運輸機械、空調機、ファン、風車などの流体機械などの広い分野にわたり、圧力分布計測を必要とする場面に用いることができる。
【0043】
また、本発明に係る圧力測定用シートは、試験用に用いるだけでなく、通常の計測に用いることも可能である。例えば、本発明に係る圧力測定用シートを航空機のフラップに取り付けたままとして、通常の飛行時の計測に用いても構わない。
【符号の説明】
【0044】
1、4、5:圧力測定用シート
2:フラップ
14:圧力測定面
15:圧力測定用ポート
16:接続用ポート
17:連結部
18:貫通孔
18a:平行な領域
18b:非平行な領域
72:デバイス収容部
73:連結溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10