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特許7048050アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
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  • 特許-アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法 図1
  • 特許-アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法 図2
  • 特許-アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20220329BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H02N1/00
H02N11/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018073799
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019187038
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】310001067
【氏名又は名称】ストローブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】實吉 敬二
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一雄
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-243805(JP,A)
【文献】特開平06-311767(JP,A)
【文献】特開平06-270257(JP,A)
【文献】米国特許第06420814(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0139628(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上に所定の間隔で並行して配置された複数の第1帯状電極を有する第1電極群と、前記第1電極群の前記複数の第1帯状電極が配置された方向と交差する方向に、前記第1電極群の平面上に前記所定の間隔で並行して配置され、前記第1電極群と逆極性の電圧が印加される複数の第2帯状電極を有する第2電極群と、前記第1電極群とは反対側で対向する前記第2電極群の平面上で前記複数の第1帯状電極の各々の間に並行して配置され、前記第1電極群と同じ極性の電圧が印加される複数の第3帯状電極を有する第3電極群と、前記第2電極群とは反対側で対向する前記第3電極群の平面上で前記複数の第2帯状電極の各々の間に並行して配置され、前記第1電極群と逆極性の電圧が印加される複数の第4帯状電極を有する第4電極群との組を複数備え、
複数の前記組は、前記第1電極群の平面の垂直方向に積層され、
前記第1電極群と前記第2電極群とは、前記複数の第1帯状電極と前記複数の第2帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合され、
前記第2電極群と前記第3電極群とは、前記複数の第2帯状電極と前記複数の第3帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合され、
前記第3電極群と前記第4電極群とは、前記複数の第3帯状電極と前記複数の第4帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合され、
前記第4電極群と隣接する組の前記第1電極群とは、前記複数の第4帯状電極と前記隣接する組の前記複数の第1帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合される
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記第1帯状電極、前記第2帯状電極、前記第3帯状電極および前記第4帯状電極は、互いに同じ幅を有し、
前記所定の間隔は、前記第1帯状電極の幅である
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアクチュエータにおいて、
前記第1帯状電極、前記第2帯状電極、前記第3帯状電極および前記第4帯状電極は、誘電体で覆われていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
所定の厚みを有する誘電体に挟み込まれた複数の帯状電極を形成し、
前記複数の帯状電極のうち一部を第1電極群として所定の間隔で並行に平面上に配置し、
前記複数の帯状電極のうちの一部を第2電極群として、前記第1電極群の複数の帯状電極が配置された方向と交差する方向に、前記第1電極群の平面上に前記所定の間隔で並行して配置して、前記第1電極群の複数の第1帯状電極と前記第2電極群の複数の第2帯状電極とがそれぞれ交差する位置において前記第1電極群と前記第2電極群とを接合し、
前記複数の帯状電極のうちの一部を第3電極群として、前記第1電極群とは反対側で対向する前記第2電極群の平面上で前記複数の第1帯状電極の各々の間に並行して配置して、前記複数の第2帯状電極と前記第3電極群の複数の第3帯状電極とがそれぞれ交差する位置において前記第2電極群と前記第3電極群とを接合し、
前記複数の帯状電極のうちの残りを第4電極群として、前記第2電極群とは反対側で対向する前記第3電極群の平面上で前記複数の第2帯状電極の各々の間に並行して配置して、前記複数の第3帯状電極と前記第4電極群の複数の第4帯状電極とがそれぞれ交差する位置において前記第3電極群と前記第4電極群とを接合し、
前記第1電極群、前記第2電極群、前記第3電極群および前記第4電極群との組の複数を、前記複数の第4帯状電極と隣接する組の前記複数の第1帯状電極とがそれぞれ交差する位置において前記第4電極群と前記隣接する組の前記第1電極群とを接合して、前記隣接する組の前記第1電極群の平面の垂直方向に積層する
ことを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクチュエータは、軽量でありながら大きな駆動力を得ることができるため、磁力を利用したモータ等に代わるものとして期待されている。
【0003】
例えば、多数の電極を積層し、電極と電極の間に印加される電圧に応じて伸縮させる積層型静電アクチュエータの技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-243805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、同じ極性の電圧が印加される電極は、積層される方向で互いに接合されるが、異なる極性の電圧が印加される電極とは接合されないため、重力等の外力によりアクチュエータの構造が変形し易く、アクチュエータの出力が安定しないという問題がある。
【0006】
本発明は、従来と比べて安定した構造を有し大きな力を出力できるアクチュエータおよびアクチュエータの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明を例示するアクチュエータの一態様は、平面上に所定の間隔で並行して配置された複数の第1帯状電極を有する第1電極群と、第1電極群の複数の第1帯状電極が配置された方向と交差する方向に、第1電極群の平面上に所定の間隔で並行して配置され、第1電極群と逆極性の電圧が印加される複数の第2帯状電極を有する第2電極群と、第1電極群とは反対側で対向する第2電極群の平面上で複数の第1帯状電極の各々の間に並行して配置され、第1電極群と同じ極性の電圧が印加される複数の第3帯状電極を有する第3電極群と、第2電極群とは反対側で対向する第3電極群の平面上で複数の第2帯状電極の各々の間に並行して配置され、第1電極群と逆極性の電圧が印加される複数の第4帯状電極を有する第4電極群との組を複数備え、複数の組は、第1電極群の平面の垂直方向に積層され、第1電極群と第2電極群とは、複数の第1帯状電極と複数の第2帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合され、第2電極群と第3電極群とは、複数の第2帯状電極と複数の第3帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合され、第3電極群と第4電極群とは、複数の第3帯状電極と複数の第4帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合され、第4電極群と隣接する組の第1電極群とは、複数の第4帯状電極と隣接する組の複数の第1帯状電極とがそれぞれ交差する位置において接合される。
【0008】
また、第1帯状電極、第2帯状電極、第3帯状電極および第4帯状電極は、互いに同じ幅を有し、所定の間隔は、第1帯状電極の幅であってもよい。
【0009】
また、第1帯状電極、第2帯状電極、第3帯状電極および第4帯状電極は、誘電体で覆われていてもよい。
【0010】
本発明を例示するアクチュエータの製造方法の一態様は、所定の厚みを有する誘電体に挟み込まれた複数の帯状電極を形成し、複数の帯状電極のうち一部を第1電極群として所定の間隔で並行に平面上に配置し、複数の帯状電極のうちの一部を第2電極群として、第1電極群の複数の帯状電極が配置された方向と交差する方向に、第1電極群の平面上に所定の間隔で並行して配置して、第1電極群の複数の第1帯状電極と第2電極群の複数の第2帯状電極とがそれぞれ交差する位置において第1電極群と第2電極群とを接合し、複数の帯状電極のうちの一部を第3電極群として、第1電極群とは反対側で対向する第2電極群の平面上で複数の第1帯状電極の各々の間に並行して配置して、複数の第2帯状電極と第3電極群の複数の第3帯状電極とがそれぞれ交差する位置において第2電極群と第3電極群とを接合し、複数の帯状電極のうちの残りを第4電極群として、第2電極群とは反対側で対向する第3電極群の平面上で複数の第2帯状電極の各々の間に並行して配置して、複数の第3帯状電極と第4電極群の複数の第4帯状電極とがそれぞれ交差する位置において第3電極群と第4電極群とを接合し、第1電極群、第2電極群、第3電極群および第4電極群との組の複数を、複数の第4帯状電極と隣接する組の複数の第1帯状電極とがそれぞれ交差する位置において第4電極群と隣接する組の第1電極群とを接合して、隣接する組の第1電極群の平面の垂直方向に積層する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来と比べて安定した構造を有し大きな力を出力できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】アクチュエータの一実施形態を示す図である。
図2図1に示した電極フィルムの配置のパターンと、塗布される接着剤のパターンとの一例を示す図である。
図3図1に示したアクチュエータの製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて実施形態を説明する。
【0014】
図1は、アクチュエータの一実施形態を示す。
【0015】
図1に示したアクチュエータ100は、網掛けで示した接着剤がそれぞれ塗布された電極フィルム10-40の順序に積層された一組がZ軸方向に積層され、アクリル板等の2つの端部材50で挟まれた積層型静電アクチュエータである。
【0016】
電極フィルム10-40の各々は、例えば、銅等の金属膜をPET(Polyethylene Terephthalate)フィルム等の誘電体膜で挟まれた帯状の電極板である。電極フィルム10-40の厚さは、例えば、4マイクロメートル等である。そして、電極フィルム10-40のZ軸上方の面の各々には、例えば、互いに異なるパターンでシリル化ウレタン等の接着剤が塗布される。なお、電極フィルム10-40の各々の長さおよび幅は、互いに同じとする。
【0017】
図2は、図1に示した電極フィルム10-40の配置のパターンと、塗布される接着剤のパターンの一例を示す。図2(a)は、電極フィルム10の配置のパターンと、電極フィルム10に塗布される接着剤のパターンとを示し、図2(b)は、電極フィルム20の配置のパターンと、電極フィルム20に塗布される接着剤のパターンとを示す。図2(c)は、電極フィルム30の配置のパターンと、電極フィルム30に塗布される接着剤のパターンとを示し、図2(d)は、電極フィルム40の配置のパターンと、電極フィルム40に塗布される接着剤のパターンとを示す。
【0018】
図2(a)に示すように、例えば、4本の電極フィルム10は、第1電極群として、端部材50のXY平面上のY軸方向に延在して、X軸方向に電極フィルム10の幅の間隔で配置される。そして、各電極フィルム10には、Z軸方向に積層する4本の電極フィルム20がX軸方向に延在して、Y軸方向に電極フィルム20の幅の間隔で配置される位置に、網掛けで示した接着剤が塗布される。なお、接着剤が塗布される代わりに、両面テープ等が配置されてもよい。
【0019】
図2(b)に示すように、4本の電極フィルム20の各々は、図2(a)で塗布された接着剤で電極フィルム10と接合され、第2電極群として配置される。そして、各電極フィルム20には、Z軸方向に積層する3本の電極フィルム30がY軸方向に延在して、1層目の4本の電極フィルム10それぞれの間に、すなわち電極フィルム30の幅の間隔で配置される位置に接着剤が塗布される。なお、図2(b)では、電極フィルム20は、電極フィルム10に印加される電圧と逆極性の電圧が印加されるため、網掛けで示す。
【0020】
図2(c)に示すように、3本の電極フィルム30の各々は、図2(b)で塗布された接着剤で電極フィルム20と接合され、第3電極群として配置される。そして、各電極フィルム30には、Z軸方向に積層する3本の電極フィルム40がX軸方向に延在して、2層目の4本の電極フィルム20それぞれの間に、すなわち電極フィルム40の幅の間隔で配置される位置に接着剤が塗布される。
【0021】
図2(d)に示すように、3本の電極フィルム40の各々は、図2(c)で塗布された接着剤で電極フィルム30と接合され、第4電極群として配置される。そして、各電極フィルム40には、Z軸方向に積層する次の組の1層目の4本の電極フィルム10それぞれが配置される位置に接着剤が塗布される。なお、図2(a)に示した4本の電極フィルム10は、図2(d)に示したパターンで接着剤が塗布された端部材50のXY平面上に配置されるのが好ましい。
【0022】
このように、互いに異なる極性の電圧が印加される電極フィルム10と電極フィルム20、電極フィルム20と電極フィルム30、電極フィルム30と電極フィルム40、電極フィルム40と隣接する組の電極フィルム10とが互いに接着される。これにより、アクチュエータ100は、X軸またはY軸方向等から外力が加えられたとしても構造を安定して維持できる。
【0023】
また、同じ極性の電圧が印加される電極フィルム10と電極フィルム30、および電極フィルム20と電極フィルム40とは、X軸またはY軸方向に、電極フィルムの幅の間隔で交互に配置されるため、従来のヒンジ部として動作する部分を省略できる。これにより、アクチュエータ100は、Z軸方向に伸びにくい構造となり、Z軸方向の電極フィルム間の距離を小さくすることができ、従来と比べて大きな力を出力できる。
【0024】
なお、図2では、第1電極群の電極フィルム10は4つ、第2電極群の電極フィルム20は4つ、第3電極群の電極フィルム30は3つ、第4電極群の電極フィルム40は3つとしたが、これに限定されない。電極フィルム10-40の各々の数は、アクチュエータ100のXY平面の大きさや、アクチュエータ100に要求される出力の大きさ等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0025】
また、アクチュエータ100のXY平面の形状は、正方形としたが、長方形等の矩形でもよい。そして、電極フィルム10-40の各々の数は、アクチュエータ100のXY平面の形状や、アクチュエータ100に要求される出力の大きさ等に応じて適宜決定されることが好ましい。
【0026】
図3は、図1に示したアクチュエータ100の製造方法の一例を示す。例えば、電極フィルム10-40を生成するために、銅薄膜をPETフィルムで挟んだ電極シートが生成される(図3(a))。図3(a)に示した電極シートは、例えば、図中の破線に沿って帯状に切断される(図3(b))。そして、図3(b)に示した帯状に切断された電極シート(すなわち電極フィルム10-40)には、エッチング処理が施され、切断面に露出している銅薄膜が除去される(図3(c))。図3(c)に示したエッチングされた電極シートは、切断面がPETフィルムで接合され、電極フィルム10-40として生成される。
【0027】
生成された電極フィルム10-40の各々は、図2(a)から図2(d)に示した順序で配置され、Z軸方向に積層される。これにより、アクチュエータ100は生成される。
【0028】
以上、図1から図3に示した実施形態では、アクチュエータ100は、互いに異なる極性の電圧が印加される電極フィルム10と電極フィルム20、電極フィルム20と電極フィルム30、電極フィルム30と電極フィルム40、電極フィルム40と隣接する組の電極フィルム10とがZ軸方向で互いに接着される。これにより、アクチュエータ100は、重力等の外力が加えられたとしても構造を安定して維持できる。
【0029】
また、同じ極性の電圧が印加される電極フィルム10と電極フィルム30、および電極フィルム20と電極フィルム40とは、X軸またはY軸方向に、電極フィルムの幅の間隔で交互に配置されることで、従来のヒンジ部として動作する部分を省略できる。これにより、アクチュエータ100は、Z軸方向に伸びにくい構造となり、Z軸方向の電極フィルム間の距離を小さくすることができ、従来と比べて大きな力を出力できる。
【0030】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲が、その精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図する。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずであり、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物によることも可能である。
【符号の説明】
【0031】
10,20,30,40…電極フィルム;50…端部材;100…アクチュエータ
図1
図2
図3