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特許7048059電動車両用オンボード双方向AC急速充電器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】電動車両用オンボード双方向AC急速充電器
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220329BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220329BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220329BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02M7/48 E
H01M10/44 Q
H01M10/48 P
【請求項の数】 61
(21)【出願番号】P 2020520763
(86)(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 CA2018051292
(87)【国際公開番号】W WO2019071360
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】62/572,120
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512080756
【氏名又は名称】ザ ガバニング カウンシル オブ ザ ユニバーシティ オブ トロント
【氏名又は名称原語表記】THE GOVERNING COUNCIL OF THE UNIVERSITY OF TORONTO
(73)【特許権者】
【識別番号】519446089
【氏名又は名称】イーリープパワー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】レーン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】スーング,セオドア
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】セムサー,セファー
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-104227(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1494343(EP,A2)
【文献】特開2009-296843(JP,A)
【文献】特開平5-207664(JP,A)
【文献】特開2013-115975(JP,A)
【文献】特開2011-15495(JP,A)
【文献】特開2010-45961(JP,A)
【文献】特開2008-219956(JP,A)
【文献】特開2011-91898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02M 7/48
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のトラクションコンバータスイッチを有する1つ以上のトラクションコンバータを有する電動車両が静止している時に使用されない前記電動車両の1つ以上のモータの磁気部品を再利用するために適合された電動車両急速充電器であって、前記電動車両急速充電器は、
波形および周波数を有するグリッド電圧を提供する電力グリッドに結合するために構成された差動端子ペアであって、前記差動端子ペアは、前記電力グリッドと前記電動車両急速充電器との間でグリッド電流を搬送する差動端子ペアと、
前記電力グリッドによってもたらされる波形および周波数を追跡するために前記電力グリッドに結合された1つ以上のセンサと、
前記差動端子を介して前記電力グリッドに結合され、1つ以上のエネルギ蓄積デバイスのうちの対応するエネルギ蓄積デバイスに結合された1つ以上のスイッチセットであって、各スイッチセットは、電流単方向スイッチおよび電流双方向二象限スイッチのうちの少なくとも1つを含むスイッチセットと、
記1つ以上のスイッチセットのうちの対応するスイッチセットに各々結合され、前記1つ以上のトラクションコンバータのうちの対応するトラクションコンバータに結合された、前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスと、
切り換えコントローラであって、
(i)前記グリッド電圧の周波数で前記グリッド電流の反転を行うように前記グリッド電圧の周波数で動作するため、または(ii)前記グリッド電圧の波形に近似するように前記グリッド電流を整流するべく、前記グリッド電流の電流成形を行うように前記グリッド電圧の周波数よりも高い周波数で動作するために、前記1つ以上のスイッチセットのうちのスイッチを制御することと、
(i)前記グリッド電圧の周波数で前記グリッド電流の反転を行うように前記グリッド電圧の周波数で動作するため、または(ii)前記グリッド電圧の波形に近似するように前記グリッド電流を整流するべく、前記グリッド電流の電流成形を行うように前記グリッド電圧の周波数よりも高い周波数で動作するために、前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチを制御することと
のためにゲート信号を生成するために構成された切換えコントローラと
を備え、前記1つ以上のスイッチセットおよび前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチは反転をもたらし、前記1つ以上のスイッチセットおよび前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチは電流成形をもたらす、電動車両急速充電器。
【請求項2】
前記切換えコントローラは更に、前記1つ以上のスイッチセットまたは前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちどちらのスイッチが反転をもたらすかを決定するために構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項3】
前記切換えコントローラは更に、前記電動車両急速充電器の動作特性を監視するために構成され、前記1つ以上のスイッチセットまたは前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちどちらのスイッチが反転をもたらすかの決定は、少なくとも監視された動作特性に基づいて動的に行われる、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項4】
前記切換えコントローラは更に、前記電動車両急速充電器の動作特性を監視するために構成され、前記1つ以上のスイッチセットまたは前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちどちらのスイッチが電流成形をもたらすかの決定は、少なくとも監視された動作特性に基づいて動的に行われる、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項5】
前記1つ以上のスイッチセットは、2つのスイッチセットを含み、
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、2つのエネルギ蓄積デバイスを含み、
前記1つ以上のトラクションコンバータは、2つのトラクションコンバータを含み、
スイッチセットの各々は、対応するエネルギ蓄積デバイスおよび対応するトラクションコンバータに関連付けられる、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項6】
前記2つのエネルギ蓄積デバイスの各動作電圧は、前記グリッド電圧よりも小さい、請求項5に記載の電動車両急速充電器。
【請求項7】
前記1つ以上のスイッチセットの各々は、高調波を低減するために異なる変調搬送波位相シフトで動作する、請求項5に記載の電動車両急速充電器。
【請求項8】
前記2つのトラクションコンバータの各々に対応するスイッチの各々は、高調波を低減するために、異なる変調搬送波位相シフトで動作する、請求項5に記載の電動車両急速充電器。
【請求項9】
前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルを監視し、前記エネルギ蓄積デバイス間の充電レベルの不均衡を検出する際に、前記切換えコントローラに、前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルが経時的に平衡化されるように変調バイアスを適用させるために構成されたエネルギ蓄積デバイス監視回路を備える、請求項5に記載の電動車両急速充電器。
【請求項10】
前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルを監視し、前記エネルギ蓄積デバイス間の充電レベルの不均衡を検出すると、前記切換えコントローラに、前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルが経時的に平衡化されるように前記トラクションコンバータのモータ位相間に循環電流を導入させるために構成されたエネルギ蓄積デバイス監視回路を備える、請求項5に記載の電動車両急速充電器。
【請求項11】
前記グリッド電圧の反転をもたらすスイッチは、前記グリッド周波数で動作し、前記グリッド電流の電力成形をもたらすスイッチは、少なくとも前記グリッド周波数よりも大きい第2の周波数で動作する、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項12】
前記電動車両急速充電器は、前記電動車両のハウジング内に設置され、前記電動車両の1つ以上のモータに結合される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項13】
前記電動車両急速充電器は、前記電動車両のハウジングの外部に設置され、前記電動車両の1つ以上のモータに結合される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項14】
前記1つ以上の電気モータの1つ以上の磁気部品は、前記電動車両のドライブモードの間、推進力を提供するために用いられ、前記1つ以上の磁気部品は、前記電動車両が静止している時、前記電動車両の1つ以上のエネルギ蓄積デバイスと前記電力グリッドとの間の電力潮流を制御するために用いられる、請求項12に記載の電動車両急速充電器。
【請求項15】
前記切換えコントローラは、複数の力率での動作のために構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項16】
前記切換えコントローラは、双方向電力潮流動作のために構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項17】
前記切換えコントローラは、前記電力グリッドへ電力を供給するために構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項18】
前記切換えコントローラは、前記電力グリッドへの無効電力の潮流を制御するように構成される、請求項に記載の電動車両急速充電器。
【請求項19】
前記切換えコントローラは、前記グリッド電圧を測定するように、および前記グリッド電流を前記グリッド電圧の波形と同期させるように構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項20】
前記切換えコントローラは、単方向電力潮流動作のために構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項21】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、同じ型式のエネルギ蓄積デバイスを含む、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項22】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、少なくとも2つ以上の型式のエネルギ蓄積デバイスを含む、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項23】
前記2つ以上の型式のエネルギ蓄積デバイスは、電力高密度デバイスおよびエネルギ高密度デバイスの組み合わせを含む、請求項22に記載の電動車両急速充電器。
【請求項24】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、バッテリである、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項25】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、キャパシタである、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項26】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、2つのエネルギ蓄積デバイスを含み、前記2つのエネルギ蓄積デバイスのうちの一方はバッテリであり、前記2つのエネルギ蓄積デバイスのうちの他方はキャパシタである、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項27】
前記電力グリッドは、交流電力のために構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項28】
前記電力グリッドは、直流電力のために構成される、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項29】
前記グリッド電圧の波形は、高調波成分を含む、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項30】
前記切換えコントローラは、パルス幅変調器である、請求項1に記載の電動車両急速充電器。
【請求項31】
1つ以上のトラクションコンバータスイッチを有する1つ以上のトラクションコンバータを有する電動車両が静止している時に使用されない前記電動車両の1つ以上のモータの磁気部品を再利用するための方法であって、前記方法は、
前記電動車両を電力グリッドに結合することであって、前記電力グリッドは、前記電力グリッドと前記電動車両との間にグリッド電流を確立するために波形および周波数を有するグリッド電圧を供給し、前記結合は、1つ以上のスイッチセットのうちの対応するスイッチセットに各々結合され、前記1つ以上のトラクションコンバータのうちの対応するトラクションコンバータに結合された、1つ以上のエネルギ蓄積デバイスのうちの対応するエネルギ蓄積デバイスに結合された1つ以上のスイッチセットにわたることと、
前記電力グリッドによってもたらされる波形および周波数を追跡することと、
(i)前記グリッド電圧の周波数で前記グリッド電流の反転を行うように前記グリッド電圧の周波数で動作するため、または(ii)前記グリッド電圧の波形に近似するように前記グリッド電流を整流するべく、前記グリッド電流の電流成形を行うように前記グリッド電圧の周波数よりも高い周波数で動作するために、前記1つ以上のスイッチセットのうちのスイッチを制御するためにゲート信号の第1のセットを生成することと、
(i)前記グリッド電圧の周波数で前記グリッド電流の反転を行うように前記グリッド電圧の周波数で動作するため、または(ii)前記グリッド電圧の波形に近似するように前記グリッド電流を整流するべく、前記グリッド電流の電流成形を行うように前記グリッド電圧の周波数よりも高い周波数で動作するために、前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチを制御するためにゲート信号の第2のセットを生成することと、
を備え、
前記1つ以上のスイッチセットおよび前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチは反転をもたらし、前記1つ以上のスイッチセットおよび前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちの少なくとも1つのスイッチは電流成形をもたらす、方法。
【請求項32】
前記1つ以上のスイッチセットまたは前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちどちらのスイッチが反転をもたらすかを決定することを備える、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記電動車両の動作特性を監視することと、
少なくとも監視された動作特性に基づいて、(i)前記1つ以上のスイッチセットまたは(ii)前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちどちらのスイッチが反転をもたらすかを動的に割り当てることと
を備える、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記電動車両の動作特性を監視することと、
少なくとも監視された動作特性に基づいて、(i)前記1つ以上のスイッチセットまたは(ii)前記1つ以上のトラクションコンバータスイッチのうちどちらのスイッチが成形をもたらすかを動的に割り当てることと
を備える、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記1つ以上のスイッチセットは、2つのスイッチセットを含み、前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、2つのエネルギ蓄積デバイスを含み、前記1つ以上のトラクションコンバータは、2つのトラクションコンバータを含み、スイッチセットの各々は、対応するエネルギ蓄積デバイスおよび対応するトラクションコンバータに関連付けられる、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記2つのエネルギ蓄積デバイスの各動作電圧は、前記グリッド電圧よりも小さい、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1つ以上のスイッチセットの各スイッチは、高調波を低減するために異なる変調搬送波位相シフトで動作する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記2つのトラクションコンバータの各々に対応するスイッチの各々は、高調波を低減するために、異なる変調搬送波位相シフトで動作する、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルを監視し、前記エネルギ蓄積デバイス間の充電レベルの不均衡を検出する際に、切換えコントローラに、前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルが経時的に平衡化されるように変調バイアスを適用させるために構成されたエネルギ蓄積デバイス監視回路を備える、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルを監視し、前記エネルギ蓄積デバイス間の充電レベルの不均衡を検出する際に、切換えコントローラに、前記エネルギ蓄積デバイスの充電レベルが経時的に平衡化されるように前記トラクションコンバータのモータ位相間に循環電流を導入させるために構成されたエネルギ蓄積デバイス監視回路を備える、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記グリッド電圧の反転をもたらすスイッチは、前記グリッド周波数で動作し、前記グリッド電流の電力成形をもたらすスイッチは、少なくとも前記グリッド周波数よりも大きい第2の周波数で動作する、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記1つ以上のスイッチセットおよび前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、前記電動車両のハウジング内に設置され、前記電動車両の1つ以上のモータに結合される、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上のスイッチセットは、前記電動車両のハウジングの外部に設置され、前記電動車両の1つ以上のモータおよび前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスに結合される、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記1つ以上の電気モータの1つ以上の磁気部品は、前記電動車両のドライブモードの間、推進力を提供するために用いられ、前記1つ以上の磁気部品は、前記電動車両が静止している時、前記電動車両の1つ以上のエネルギ蓄積デバイスと前記電力グリッドとの間の電力潮流を制御するために用いられる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記ゲート信号の第1のセットまたは前記ゲート信号の第2のセットは、複数の力率での動作のために適合される、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記ゲート信号の第1のセットまたは前記ゲート信号の第2のセットは、双方向電力潮流動作のために適合される、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
前記ゲート信号の第1のセットまたは前記ゲート信号の第2のセットは、前記電力グリッドへ電力を供給するために適合される、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
前記ゲート信号の第1のセットまたは前記ゲート信号の第2のセットは、前記電力グリッドへの無効電力の潮流を制御するように適合される、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
前記グリッド電圧を測定することと、少なくとも測定されたグリッド電圧に基づいて前記グリッド電流を前記グリッド電圧の波形と同期させることとを備える、請求項31に記載の方法。
【請求項50】
前記ゲート信号の第1のセットまたは前記ゲート信号の第2のセットは、単方向電力潮流動作のために適合される、請求項31に記載の方法。
【請求項51】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、同じ型式のエネルギ蓄積デバイスを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項52】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、少なくとも2つ以上の型式のエネルギ蓄積デバイスを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項53】
前記2つ以上の型式のエネルギ蓄積デバイスは、電力高密度デバイスおよびエネルギ高密度デバイスの組み合わせを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、バッテリである、請求項31に記載の方法。
【請求項55】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、キャパシタである、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
前記1つ以上のエネルギ蓄積デバイスは、2つのエネルギ蓄積デバイスを含み、前記2つのエネルギ蓄積デバイスのうちの一方はバッテリであり、前記2つのエネルギ蓄積デバイスのうちの他方はキャパシタである、請求項31に記載の方法。
【請求項57】
前記電力グリッドは、交流電力のために構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項58】
前記電力グリッドは、直流電力のために構成される、請求項31に記載の方法。
【請求項59】
前記グリッド電圧の波形は、高調波成分を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項60】
換え制御は、パルス幅変調器によって行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項61】
実行される時に、プロセッサまたは構成可能回路に、請求項31~60のいずれか1項に記載の方法のステップを行わせる械解釈可能命令を格納する機械可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によってその全体が本願に組み込まれる、2017年10月13日に出願された“On-board bidirectional AC fast charger for electric vehicles”と題された米国特許出願第62/572120号の本出願であり、同出願に対する優先権を含む、全ての利益を主張するものである。
【0002】
本開示のいくつかの実施形態は、一般にパワーエレクトロニクスの分野に関し、具体的には、電動車両または他の可搬式エレクトロニクスとともに用いるための充電器技術に関する。
【背景技術】
【0003】
パワーエレクトロニクスによる充電の提供は、特にたとえば電動車両(EV)またはポータブル発電機などの電動ポータブル物品に伴う課題であり得る。電動車両は、持続的な期間にわたり、推進力、制御システム、娯楽システムのために大量の電力を必要とする。電動車両は多くの場合、電動車両バッテリ/トラクションバッテリを有し、最適な電力対重量比とともに、高い電力対重量比およびエネルギ対重量比のために構成され得る。
【0004】
場合によっては、たとえば複数のモータを駆動するために、複数のバッテリが用いられる。たとえばある種のトラックなどの重荷重業務は、効率の向上に役立ち得るより高い電圧のモータとともに用いるためのより高い電圧が起こり得るため、デュアルインバータを必要とし得る。より高い電圧が可能であれば、追加のモータの必要性を低減し得る潜在的な効率改善が生じ得る。
【0005】
電動車両は、特に、車両に動力供給するためのよりクリーンかつ環境に優しいエネルギ源をもたらすために望ましい。しかし電動車両は、電動車両技術に関する、特にエネルギ蓄積および充電に関する制限によって、比較的緩慢に採択されてきた。より急速な充電は、より広い範囲が得られることを可能にし、常用的な輸送機関としての電動車両の有効性に影響を与える。
【0006】
電動車両用充電器は多くの場合、専用エレクトロニクスが必要とされる嵩高く重量な設計で充電ステーションが実装されるため、非常に高費用である。
【0007】
したがって、改善された充電器技術を提供することへの要望がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
外部電源コンセント(たとえば、様々な実施形態によると、交流電源コンセントまたは直流電源コンセント)からのコスト効果が高く便利なEVの充電手段を提供するEV急速充電器が説明される。急速充電器は、いくつかの実施形態においてオンボード充電のために最適化され、たとえば急速充電器は、たとえば電動車両といったポータブル電子デバイスのハウジングに存在し、または結合される。EV急速充電器は、単相交流または直流電源から充電することができる。いくつかの実施形態において、(たとえば充電器がハウジングの外部にある)オフボード充電も考えられる。
【0009】
電動車両急速充電器は、電動車両が静止している時に使用されない、1または複数のトラクションコンバータスイッチを有する1または複数のトラクションコンバータを有する電動車両の1または複数のモータの磁気部品を再利用するために適合される。特に、電動車両急速充電器は、波形および周波数を有するグリッド電圧を提供する電力グリッドに結合するために構成された差動端子ペアを含む。
【0010】
電力グリッドと電動車両急速充電器との間にグリッド電流が確立される。グリッド電流の波形および/または周波数に関連して相互動作性に伴う課題が生じ、技術的目的は、グリッド電流がグリッド電圧と同じ(または極めて類似した)波形および/または周波数を有するようにグリッド電流を与える(たとえば調整する)ための技術的機構を用いることである。
【0011】
第1の切換えステージを提供する1または複数のスイッチセットが提供される。これらのスイッチは、差動端子を介して電力グリッドに結合され、1または複数のエネルギ蓄積デバイスのうちの対応するエネルギ蓄積デバイスに結合される。様々な実施形態において、各スイッチセットは、電流単方向スイッチまたは電流双方向二象限スイッチの少なくとも1つを含んでよい。
【0012】
急速充電器は、各々が、1または複数のスイッチセットのうちの対応するスイッチセットに結合され、1または複数のトラクションコンバータのうちの対応するトラクションコンバータに結合された、1または複数のエネルギ蓄積デバイスを含む。
【0013】
(i)グリッド電圧の反転をもたらし、または(ii)グリッド電流にグリッド電圧と同じ波形または周波数を与えるために電流成形をもたらすように切換えステージのスイッチを制御し、また相補的に、(i)グリッド電圧と同期する反転をもたらし、または(ii)グリッド電流にグリッド電圧と同じ波形または周波数を与えるために電流成形をもたらすように1または複数のトラクションコンバータを制御するゲート信号を生成するために構成された切換えコントローラが提供される。したがって、コントローラは、切換えステージが反転をもたらし、トラクションコンバータスイッチが電流成形をもたらすように、またはその逆であるように、スイッチの動作を操作する。電流成形は、反転とともに、グリッド電流がグリッド電圧と同じまたは類似した波形または周波数を有することを効果的に強いる。
【0014】
説明されるいくつかの実施形態は、その商業化により、環境への影響の解消または緩和、または自然環境および資源の保護が促進される技術に向けられる。この技術は、より汚染が少なく影響が小さいエネルギ源の利用によってエネルギ保護を進めることにより、温室効果ガスの低減を含む環境技術に関与するものであり、再生可能なエネルギ資源を重んじる採択および効率の増加を含む。説明されるいくつかの実施形態は、(たとえば、改善された制御技術および回路トポロジによって既存の磁気部品を再利用することにより)物理的構成要素の要件全体を低減する。また、柔軟性のある力率および無効電力要件は、たとえば特定の状況において必要とされるように、電力グリッドに電力を還元するために電力グリッドとの接続を確立することに役立つ。改善された制御特性は、より柔軟な動作範囲を可能にする。
【0015】
急速充電器は、(いくつかの実施形態において、電気回路、ハードウェアデバイス、またはそれらの電子部品を格納する回路板の形式で提供される)改善されたコンバータトポロジの形式で提供され、その結果、双方向電力潮流および/または様々な力率における柔軟な動作のために適合されたコンバータが提供される。これを動作させる方法および提供する方法がいくつかの実施形態において考えられ、更に、いくつかの実施形態において、機械可読命令セットを格納する機械可読媒体(たとえばコンピュータ可読媒体)が考えられる。これらの命令セットは、波形コントローラを含むハードウェア回路で実行されると、本明細書で説明される方法の一部を実行する。
【0016】
いくつかの実施形態において、双方向電力潮流は、様々な力率における柔軟な動作から独立して提供され、他の実施形態において、様々な力率における柔軟な動作は、双方向電力潮流なしで提供される。いくつかの実施形態において、双方向電力潮流の組み合わせが提供され、様々な力率における柔軟な動作が提供される。
【0017】
双方向充電器は、エネルギ蓄積デバイス(たとえばバッテリ、キャパシタ)の充電および放電の両方が可能であり、したがって、車両のバッテリが様々な用途の中でも特にバックアップ電源として用いられ得るように、他の素子(たとえば電力グリッド)へ有効および/または無効電力を供給してよい。双方向性は、たとえば、電力が欠乏し、車両のバッテリが、(たとえば暴風雨時に病院の運営を維持するために)たとえば発電機などの他のデバイスを駆動するための最後の手段である場合といった緊急事態において有用である。
【0018】
いくつかの実施形態において、単一トラクションコンバータバージョンが説明される。他の実施形態において、互いに相互動作する2つのトラクションコンバータが提供される。2つのトラクションコンバータは、様々な利点の中でも特に、増加した電圧範囲を提供する。
【0019】
急速充電器は、「切換えステージ」および「トラクションコンバータ」の構成要素を有するものとしてモデル化されてよく、組み合わせると、エネルギ蓄積デバイスを有する「切換えステージ」および「トラクションコンバータ」構成要素は、「充電ステージ」とみなされてよく、「オンボード急速充電器」は、1または複数の「充電ステージ」およびモータで構成される。
【0020】
切換えステージは、様々な実施形態により、(1)反転または(2)電流成形のいずれか、またはそれらの組み合わせをもたらすために用いられ得るスイッチのセットであり、トラクションコンバータのスイッチは、他方の機能のために用いられる。電流成形は、波形が入力源(たとえば特定の波形および周波数を有する交流電源)の波形を追跡する(たとえば一致するよう試みる)ように、高調波を低減するために用いられる。
【0021】
留意すべき重要な点として、切換えステージのスイッチは、切換え効率を最適化するように選択され得るが、トラクションステージのスイッチは、多くの場合、電動車両に既存であり、またはたとえば(電動車両に関して)移動力あるいは(発電機に関して)一般にトルクを提供するなどの様々な機能のために最適化するように既に選択されているため、選択に関する柔軟性が低い。したがって、トラクションステージのスイッチは、切換えステージのスイッチと比較すると、トラクションステージにおいて用いられる特定のスイッチに依存して反転機能または電流成形機能のいずれかを提供する方が好ましい可能性が高い。
【0022】
本明細書において、切換えステージは反転ステージと称され得るが、様々な実施形態において、反転ステージおよびトラクションステージの機能は、反転ステージが電流成形をもたらし、トラクションコンバータが電流反転をもたらすように逆にされてもよい。追加の実施形態において、切換えステージおよびトラクションステージのどちらがどちらの機能を提供するかの選択は、コントローラ回路によって事前決定または動的に決定されて決定される。コントローラ回路は、いくつかの実施形態において、切換えステージおよびトラクションステージに機能を選択し割り当てるために(たとえばセンサを介して)デバイスの動作特性またはスイッチ動作パラメータを監視する。この機能は、特定のステージのスイッチが、どのスイッチがどのような回数(たとえばどのような周波数で)行うかを決定するゲート信号に従って動作するように制御されるように、スイッチに適用される制御機構を修正することによって実行される。
【0023】
監視された動作特性は、切換え損失の決定を含み、動作パラメータは、特に、スイッチ等級、(たとえばトランジスタ型式などの)スイッチ動作機構を含んでよい。いくつかの実施形態において、急速充電器は、(たとえばフィードバックを介して制御を提供するために)たとえばグリッド電流波形がグリッド電圧において観測されたものとどの程度一致するかを追跡するために、グリッド電圧およびその特性を監視するために用いられるセンサを含む。
【0024】
反転ステージは、単一象限デバイスではなく電流双方向二象限スイッチで実装されてよく、これらのスイッチが用いられる場合、反転ステージは、コンバータの差動端子における最大想定入力電圧が2つのエネルギ蓄積素子電圧の合計よりも小さいという前提の下、基本グリッド周波数の任意の位相でAC急速充電器の電圧を反転させてよい。他の実施形態が可能であり、たとえば、電流双方向二象限スイッチではなくダイオードが用いられ得るが、ダイオードが用いられる場合、充電器は、双方向充電を提供することができず、力率1で動作する。
【0025】
電流双方向二象限切換え機能を有する切換えデバイスの例は、特に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、電力金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)を含む。電流単方向切換え機能を有する切換えデバイスの例は、特に、ダイオードを含む。単一インバータ実施形態の場合、バッテリ電圧は、全ての条件下でピーク電圧よりも大きい必要がある。デュアルインバータ実施形態の場合、バッテリ電圧の合計は、全ての充電状態条件下でピーク電圧よりも大きい必要がある。
【0026】
双方向電力潮流は、一般的なコンバータと比較して、より広い範囲の用途を可能にし、(たとえばグリッドのためのエネルギ源が車両のバッテリから得られる)充電ステージを有する車両のモータが(たとえば輸送用ではなく)たとえば電圧サポート、周波数調整、およびピークシェービングなどのグリッドサポート用途のためのエネルギ源として用いられ得る。充電器の構造はまた、本質的に、グリッド側の故障に対し耐故障性を有するので、オンボード部品への損傷を潜在的に防止する。
【0027】
同様に、様々な力率における動作は、EV急速充電器のための潜在的なグリッド接続に関する改善された柔軟性(たとえば、力率1、力率0.7)を可能にする。力率1における動作が必要とされる代替アプローチと比較すると、いくつかの実施形態の充電器は、有効および無効電力に関して動作するように構成される。無効電力を生成または吸収するように動作する能力は、電力柔軟性を提供する。反転ステージは、様々な力率で動作するための柔軟性を充電器に提供するために適合される。動作の柔軟性は、たとえば、各電力ユーティリティが様々な特性で動作し、充電器が特定の電力ユーティリティに適合するように力率を柔軟に修正することを可能にし得るものとして有用である。無効電力に関連して動作する能力は、グリッドサポート機能を提供するために役立つ。無効電力の投入は、様々な利益の中でも特に、グリッドの電圧プロファイルが規制条件または安全要件を満たすことを確実にするために役立ち得る。無効電力はますます望ましいものになりつつあり、いくつかのユーティリティは、たとえば電力需要などによって電圧を増加させるために、グリッドに無効電力が供給されることを要求することができる。無効電力は、グリッドにおいて電圧を安定させるために用いられ得る。
【0028】
高速充電器の構成は、代替アプローチと比較して改善された制御特性を提供するので、力率補正機構は、フロントエンド整流器を含み、基本成分の第6の高調波までの制御帯域幅(たとえば、60Hzシステムの場合、最大720Hzの制御帯域幅)を必要とする。比較すると、本明細書で説明される急速充電器のいくつかの実施形態は、単一周波数(たとえば、グリッド周波数に依存して、60Hzシステムの場合は60Hz、または50Hz)しか追跡する必要がない。
【0029】
いくつかの態様において、コンバータは、ドライブとしてもAC急速充電器としても動作することができる。オンボード急速充電器の実施形態は、特に、モータ、トラクションコンバータ、エネルギ蓄積デバイス(たとえばバッテリ、キャパシタ)、および反転ステージを含む4つの主要部品を含み得る。提案されるコンバータは、電動車両のモータの漏洩インダクタンスを有利に利用し、充電器が、(以下のいくつかの態様において反転ステージと記載される)切換えステージと併用して、従来は車両が静止している時に用いられないモータの磁気部品を充電のために再利用することを可能にする、オンボードAC急速充電器である。
【0030】
提案されるオンボードAC急速充電器は、いくつかの実施形態によると、(i)車両が静止している時の単相AC急速充電器、および(ii)車両の移動中のトラクションコンバータの両方として、二重の目的を果たすように構成される。急速充電器として、このトポロジは、様々な商業用入力AC電圧に適応することができる。オンボードAC急速充電器は、静止時にバッテリのAC急速充電に用いるためにトラクションコンバータおよびモータを再配置する。絶縁変圧器は、いくつかの状況において必要でない場合もあり、必要な場合、変圧器自体が充電ステーションに取り付けられ得る。したがって、充電ステーションのために、ケーブルまたは絶縁変圧器付きケーブルのいずれかに限定された最小限の充電インフラしか必要ではない。
【0031】
いくつかの実施形態の提案されるAC急速充電器は、専用バッテリ充電器を用いることなくAC電動車両充電を可能にし、潜在的コスト、重量、効率の節約、および利用者(たとえば電動車両の運転者)に改善された利便性をもたらす。単一トラクションコンバータを用いるいくつかの実施形態に関して、EVは、静止時にバッテリのAC急速充電に用いるためにトラクションコンバータおよびモータを動的に再配置する。上述したように、モータの漏洩インダクタンスは、いくつかの実施形態において、電動車両が静止している時に部品を再利用するために用いられる。充電時、反転ステージおよびトラクションコンバータは、バッテリを充電するために制御される。バッテリの充電以外にも、このシステムは、いくつかの実施形態において、双方向動作を可能にし、様々な力率で動作することができる。
【0032】
他の態様において、コンバータシステムは、2つのインバータシステムを用いる。2つのインバータシステムが存在する場合、移動中の車両を駆動するための2つのトラクションコンバータとともにデュアルインバータドライブが提供され得る。このトポロジの構造は、2つのより低い電圧のバッテリが2つのトラクションコンバータを介して間接的に直列接続されることを可能にする。これは、電圧範囲が拡大することにより、たとえば昇圧コンバータの必要なく、充電中、より高い入力交流電圧に適応することが可能であることを暗示する。
【0033】
モータドライブとして、デュアルインバータドライブは、モータドライブの定格電圧を高めることにより、駆動システム効率を高めるという利点を有する。またそのような実施形態は、2つの個別のエネルギ蓄積ユニットを有し、これらのエネルギ蓄積ユニットの1または両方が、同種または異種の化学的性質のバッテリであってよい。様々な追加の態様において、本開示は、対応するシステムおよびデバイス、およびそのようなシステム、デバイス、および方法を実装するためのたとえば機械実行可能符号化命令セットなどの論理構造を提供する。
【0034】
一態様において、電動車両が静止している時に使用されない電動車両のモータの磁気部品およびトラクションコンバータを再利用するために適合された電動車両急速充電器が提供され、この電動車両急速充電器は、モータに結合し、電力グリッドに取外し可能に結合するために構成され、力率1動作を維持するために電圧を反転させるように構成された電流単方向スイッチ、または急速充電器の差動端子における最大想定入力電圧が交流電源のピーク電圧であることを前提として基本グリッド周波数の任意の位相でトラクションコンバータの電圧を反転させるように構成された電流双方向二象限スイッチのいずれかを含む反転ステージを備える。
【0035】
他の態様において、電動車両急速充電器は、電動車両のハウジング内に設置され、(i)電動車両の1または複数の電気モータおよび(ii)電動車両の1または複数のエネルギ蓄積デバイスの両方に結合される。
【0036】
他の態様において、1または複数の電動モータの1または複数の磁気部品は、電動車両のドライブモード中に推進力を提供するために、または充電モード中に電動車両の1または複数のエネルギ蓄積デバイスへの、またはそこから電力グリッドへの電力潮流を制御するために用いられる。
【0037】
他の態様において、電動車両急速充電器は、複数の力率での動作のために構成される。
【0038】
他の態様において、電動車両急速充電器は、双方向電力潮流動作のために構成される。
【0039】
他の態様において、電動車両急速充電器は、電力グリッドへの電力潮流を提供するために構成される。
【0040】
他の態様において、電動車両急速充電器は、電力グリッドへの無効電力の潮流を制御するように構成される。
【0041】
他の態様において、2つ以上のトラクションコンバータは、互いとの相互動作のために構成される。
【0042】
他の態様において、上述した態様のいずれかの反転ステージで構成される電動車両急速充電器変形例は、エネルギ蓄積デバイス、トラクションインバータ、およびモータに接続され、電力グリッドは、反転ステージおよびモータに接続され、反転ステージは、急速充電器の差動端子における最大想定交流電源入力電圧がエネルギ蓄積デバイスの電圧を下回るように構成される。
【0043】
他の態様において、2つの反転ステージ、2つのエネルギ蓄積デバイス、2つのトラクションインバータ、およびモータで構成された異なる形の充電器が提供され、電力グリッドは、2つの反転ステージに接続され、反転ステージは、急速充電器の差動端子における最大想定交流電源入力電圧が2つのエネルギ蓄積デバイスの総和電圧を下回るように接続される。
【0044】
他の態様において、充電器は、グリッド周波数における信号しか追跡する必要がない制御ハードウェアによって制御される。
【0045】
他の態様において、実施形態のいずれかの電動車両急速充電器を含む電動車両が提供される。
【0046】
この点に関して、少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、実施形態は、応用において、以下の説明に記載された、または図面に例示された構造の細部および構成要素の配置に限定されないことを理解すべきである。また、本明細書において用いられる表現および用語は、説明を目的としたものであり、限定的とみなされてはならないことを理解すべきである。
【0047】
本明細書で説明された実施形態に関する多数の追加の特徴およびそれらの組み合わせは、本開示を閲読した後、当業者に明らかになる。
【0048】
図面において、実施形態は、例示的に示される。本説明および図面は例示を目的としたものでしかなく、理解を支援するものであることを明確に理解すべきである。
【0049】
以下、実施形態は、添付図面を参照して、単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1A】代替オンボード充電器アプローチの概略図である。
図1B】代替オンボード充電器アプローチの概略図である。
図1C】代替オンボード充電器アプローチの概略図である。
図1D】代替オンボード充電器アプローチの概略図である。
図2A】いくつかの実施形態に係る、アクセス可能な中立点を有するモータを用いる、提案される一体型バッテリ充電器を示すトポロジ図である。
図2B】いくつかの実施形態に係る、2つのトラクションコンバータを用いる代替実施形態のトポロジ図である。
図3A】いくつかの実施形態に係る、単一インバータ(図3A)およびデュアルインバータシステム(図3B)を用いる、提案された一体型バッテリ充電器のいくつかの実施形態のトポロジ図である。図3Aは、モータからの単一折り返し接続(すなわち、アクセス可能な中立点)を含み、図3Bは、モータからの3相折り返し接続(オープンステータ)を含む。
図3B】いくつかの実施形態に係る、単一インバータ(図3A)およびデュアルインバータシステム(図3B)を用いる、提案された一体型バッテリ充電器のいくつかの実施形態のトポロジ図である。図3Aは、モータからの単一折り返し接続(すなわち、アクセス可能な中立点)を含み、図3Bは、モータからの3相折り返し接続(オープンステータ)を含む。
図4】いくつかの実施形態に係る、たとえば力率1における動作時のシステム(デュアルインバータバージョン)波形を示す波形図のセットである。
図5】いくつかの実施形態に従って、(各々がトラクションコンバータの各相に関する)充電状態が3つのバイポーラ電圧源として目視され得ることを示し、3つのバイポーラ電圧源は、従属する電流減への電力平衡によって結び付けられる、デュアルインバータ実施形態の平均モデルである。
図6】いくつかの実施形態に係る、充電コントローラが、グリッド電流が最小限の高調波を有することを確実にし、所望の力率が実現されることを確実にし、グリッドから適切な電力が抽出されることを確実にする制御アプローチを示す制御図である。この制御アプローチは、上側および下側充電ステージ間の電力の循環を制御するためにエネルギ平衡コントローラを用い、いくつかの実施形態に従って、変調ブロックは、上側および下側充電ステージへ伝送されるゲート信号を決定するように構成される。
図7】いくつかの実施形態に係る、基本成分の第6の高調波までを含む周波数成分から構成される必要な制御帯域幅を示す、整流電流波形およびそのフーリエ分解を示す代替アプローチの波形図である。本明細書中のいくつかの実施形態は、図7の代替アプローチと比較してより容易な制御を提供する。
図8】いくつかの実施形態に係る、力率1で動作するオンボード急速充電器に関する波形シミュレーション結果を含む。
図9】いくつかの実施形態に係る、進み力率0.7で動作するオンボード急速充電器に関する波形シミュレーション結果を含む。
図10】システムが双方向である(エネルギ蓄積デバイスの充電および放電が可能である)いくつかの実施形態に係る、グリッドへ電力を供給するオンボード急速充電器に関する波形シミュレーション結果を含む。
図11】充電ステージ間で相対電圧を変更することによってエネルギ変更が実現され得るいくつかの実施形態に係る、トラクションコンバータ間の電圧差を用いてバッテリパック間で電力を伝達するオンボード急速充電器に関する波形シミュレーション結果を含む。上側充電ステージは、図4を用いて上述したように50%ではなくグリッド電圧の60%を生成する。図11の場合、各トラクションコンバータ相は同じ電流を搬送し、トラクションコンバータによる電圧出力のみが変化する。最後のグラフに示された平均電力は、上側充電ステージの平均電力が下側より大きいことを示す。
図12A】機械内の循環電流によってエネルギ平衡が実現され得るいくつかの実施形態に係る、循環電流を用いてバッテリパック間で電力を伝達するオンボード急速充電器に関する波形シミュレーション結果を含む。ただし、電圧も同様に変更される必要がある。この場合、各相の電流は異なり、各相による電圧出力もまた異なる。
図12B】機械内の循環電流によってエネルギ平衡が実現され得るいくつかの実施形態に係る、循環電流を用いてバッテリパック間で電力を伝達するオンボード急速充電器に関する波形シミュレーション結果を含む。ただし、電圧も同様に変更される必要がある。この場合、各相の電流は異なり、各相による電圧出力もまた異なる。
図12C】機械内の循環電流によってエネルギ平衡が実現され得るいくつかの実施形態に係る、循環電流を用いてバッテリパック間で電力を伝達するオンボード急速充電器に関する波形シミュレーション結果を含む。ただし、電圧も同様に変更される必要がある。この場合、各相の電流は異なり、各相による電圧出力もまた異なる。
図13】いくつかの実施形態に係る、単一インバータドライブ変形例に関してシステムがDCグリッドにインタフェース接続された場合を示すトポロジ図である。
図14A】通常動作(すなわち、充電ステージ1と2との間でエネルギを伝達する必要がない場合)において、3相全ての出力(u、v、およびw)が等しいことを示す波形図である。
図14B】通常動作(すなわち、充電ステージ1と2との間でエネルギを伝達する必要がない場合)において、3相全ての出力(u、v、およびw)が等しいことを示す波形図である。
図14C】通常動作(すなわち、充電ステージ1と2との間でエネルギを伝達する必要がない場合)において、3相全ての出力(u、v、およびw)が等しいことを示す波形図である。
図15】いくつかの実施形態に係る、進み力率0.7におけるより高電力の充電動作を示す波形シミュレーション結果を含む。
図16】いくつかの実施形態に係る、実験構成の一部として用いられた、液体冷却された110kWの機械の画像である。
図17】いくつかの実施形態に係る、2つの充電状態を示す液体冷却されたデュアルインバータドライブコンバータの画像である。
図18】いくつかの実施形態に係る、力率1における充電動作を示す、実験的に得られた波形結果のセットである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
一般的なオンボード充電器は、DC/ACステージと、ACグリッドに接続された絶縁DC/DCステージとで構成される。あるいは、オフボード変圧器によって絶縁がもたらされ得る。絶縁DC/DCステージは、バッテリ電圧における変動に適応することができる。そのようなオンボード充電器は、車両への付加的部品であり、車両の移動中には使用されないコストおよび重量を車両に付与する。
【0052】
本明細書でいくつかの実施形態において説明するように、急速充電機能を提供するために(たとえば移動中でない時の車両の)既存の磁気部品を用いるための改善されたアプローチ。いくつかの実施形態の提案されるコンバータは、電動車両のモータの漏洩インダクタンスを有利に利用し、従来は車両が静止している時に用いられないモータの磁気部品を充電のために充電器が再利用することを可能にする、オンボードAC急速充電器である。追加の(1または複数のスイッチセットを有する)切換ステージが提供される。追加の切換ステージのスイッチセットは、グリッドと急速充電器との間に流れる電流の波形制御が行われ得るように、トラクション部品のスイッチとともに相補的に制御される。切換コントローラによるそれらの部品スイッチの同調的制御によって、切換ステージまたはトラクション部品のいずれかが反転を行い、他方が電流成形を行う。
【0053】
切換コントローラは、グリッドから到来する電圧波形を追跡(たとえば一致)するように電流に制御を課すことを試み、これにより、本明細書で言及するように、相互動作性が改善される。様々な実施形態において説明される解決策は、いくつかの代替アプローチに比べて切換え損失の低減および制御性の改善をもたらす。いくつかの実施形態は、DCグリッド電源との改善された相互動作を提供することができ、他の実施形態は、ACグリッド電源との改善された相互動作を提供することができる。いくつかの実施形態において、回路は、交流および直流グリッド電源と同じ意味で用いられ得る。交流および直流電源は、以下で説明され、非限定的例であることが意図される。
【0054】
いくつかの実施形態において、技術的特異点は、モータ巻線内で正弦波電流を維持しながら同時に正弦波グリッド電圧が実現され得る点である。整流正弦波モータ電流が流れることを必要とするダイオードコンバータと比較すると、いくつかの実施形態のトポロジにおける、正弦波モータ電流で動作する能力は、モータにおける著しい高調波損失(たとえば、管轄により、非50/60Hz成分など)を削減し、ACグリッド電流における歪みを低減する。
【0055】
モータ内でわずか50/60Hzの電流しか流れる必要がないことにより、任意の関連制御システムの必要な帯域幅が著しく低減され、より低い切換え周波数の使用も可能になり得るので、損失が更に低減される。
【0056】
ACレベル充電の概要を表Iに示す。
【0057】
ACレベル1充電の場合、整流器およびDC/DCコンバータは一般に、単純な「プラグインおよび充電」機能を提供するために車両にオンボードで搭載される。この電力レベルにおける充電器は、最大1.4kWをバッテリに送給し、利用可能な任意の120Vの単相住宅用電源コンセントにプラグインされ得る。
【0058】
ACレベル2充電器は、240Vの単相または3相私用または公用コンセントから4kW~19.2kWのEV充電を提供する。
【0059】
ACレベル3充電は、業務用急速充電ステーションにおいて利用可能であるが、50kWを上回る電力レベルを供給するために専用オフボードハードウェアを必要とする。
【0060】
充電器の複雑性に対処するために、結合型トラクションおよび充電システムは、出願人によって広範囲にわたり研究されてきた。目的は、オンボードトラクション部品を充電用に構成し、それによってバッテリ充電器の複雑性を削減または大幅に低減することである。代替アプローチは、9相トラクションシステムに基づく一体型充電器を提案した。オンボードトラクション部品は、いくつかの実施形態に従って、複数の業務用入力AC電圧に適応し得るトポロジを提供することによって、急速充電に適応する。
【0061】
図1Aの回路図100Aに示すように、機械の中立点は、3相AC入力102に直接接続され得るので、ACグリッドとトラクションシステムとの間に追加のハードウェアは必要ない。またこのトポロジは、充電プロセスにおいて車両推進のための正味トルクを生成しない。
【0062】
一体型充電のための他の多相機械が考えられてきた。単相ACシステムを介した一体型充電に関して、図1Bは、第2のアプローチによって提案されるトポロジを示す。これは、整流器104を介して単相交流電源にインタフェース接続されたPFC昇圧コンバータとしてトラクションシステムを利用する。図1Cにおいて、また他の代替アプローチは、単相交流電源から充電することによって整流器の必要性を排除するために、並列接続されたトラクションコンバータおよび2つのモータのセットを用いた。
【0063】
いずれのトポロジにおいても、充電器は、追加のDC/DCコンバータを必要としないので、電動車両供給装置(EVSE)の重量、容積、およびコスト要件に対処する必要がない。ただし、両方の場合、最小許容可能バッテリ電圧は、交流電源のピーク電圧を常に超える必要がある。たとえば、図2Bのデュアルインバータ実施形態において、交流電圧の2倍が所与のレベルのバッテリ電圧に関してサポートされてよく、これは、図1A~1Cに示すトポロジに対する改善である。いくつかの実施形態において、これは、専用バッテリ/エネルギ蓄積デバイスの必要なく標準的バッテリ/エネルギ蓄積デバイスの適応を可能にすることにより、重要な点である。たとえば、より高い電圧階級の半導体ではなく、示されたトポロジを実現するために、標準的な600V階級の半導体が用いられ得る。たとえば、図1A~1Cに示すトポロジにおいて、より高い階級の半導体およびエネルギ蓄積デバイスが必要であり、コストおよび複雑性が増加し、安全性が低下し得る。
【0064】
ドライブ用途の場合、デュアルインバータトラクションシステムは、DC/DCコンバータまたは追加の磁気材料を用いることなく速度範囲およびバッテリ積算を増加させるために2つのトラクションコンバータを用いることにより、電動車両にとって魅力的な高効率かつ軽量の解決策を提供する。
【0065】
デュアルインバータドライブに関連する課題は、2つの独立したバッテリを充電する必要性である。代替アプローチは、両方のバッテリを充電するために単一の充電器が用いられ得ることを示した。図1Dに示すように、一次バッテリ106は、スタンドアロン充電器108を用いて充電され、二次バッテリは、最初からトラクションシステム110を介して充電される。
【表1】
【0066】
図2Aおよび図2Bは、オンボードEV急速充電器の2つの実施形態を示す概略図200Aおよび200Bである。図2Aは、エネルギ蓄積装置(バッテリ)204に接続された単一のインバータ回路202を有するオンボードAC急速充電器200に関する。図2Bは、デュアルインバータ回路202を有する反転ステージに関し、各インバータ回路は、対応するバッテリ204およびトラクションコンバータに接続される。
【0067】
図2Bに示すように、反転ステージは、電源(たとえばグリッド)から供給された電流の高周波数切換えおよび成形を行うために用いられ得る。(たとえば図1Bの)整流器アプローチと比較すると、整流器は電流を成形することができず、トラクションインバータに電流を成形させることにより、改善がもたらされる。これは、トラクションコンバータスイッチの等級が高いほど、電流成形のためのトラクションインバータの利用が、高い切換え損失および低いシステム効率をもたらすことにより、潜在的に重要であり得る。高周波数反転ステージが用いられる場合、このアプローチはグリッドへの双方向電力交換で動作することも可能であり、これは、ダイオード整流器アプローチの場合、可能ではない。
【0068】
図2Aの単一反転ステージとは対照的に、図2Bのデュアル反転ステージは、反転ステージにおけるより低い電圧定格の部品(たとえば、よりコスト効率が高い半導体)を可能にし、効果的な(切換え損失を低減し得る)切換え周波数を向上させるために活用されるインタリーブ型スイッチング技術を可能にする。ダイオードアプローチと比較すると、バッテリ電圧レベルを大幅に高めることなく、より高い電圧のACネットワークへの接続が実現され得る。たとえば、いくつかの実施形態のアプローチにおいて、安全上の理由のために車両内でバッテリ電圧レベルを低く、たとえば450Vに維持することが重要である場合、このアプローチは、(システム内の潜在的な短絡電流に起因する危険度を増加させる)900Vバッテリを必要とする図1Bのダイオード整流器アプローチとは対照的に、反転ステージで動作する2つの450Vバッテリを用いることができる。
【0069】
オンボードEV急速充電器が導入され、交流電源コンセントから充電するコスト効果が高く便利なEVを提供する。コンバータは、(たとえば電動車両が位置間を走行する際にトルクによって移動運動をもたらす)駆動装置としても、DCまたはAC急速充電器としても動作することができる。
【0070】
オンボード急速充電器の実施形態は、モータ、トラクションコンバータ、バッテリ、および切換えステージ(「反転ステージ」として同じ意味で言及されるが、これは必ずしも反転に限定されず、成形のためにも用いられ得ることに留意する)という4つの主要部品から構成される。図2Aおよび図2Bに示す両方の実施形態において、交流電源コンセントは、提案されるオンボード一体型充電および駆動システムに直接接続される。
【0071】
絶縁変圧器は、特定の使用シナリオの要件に依存して、必要でないこともある。必要である場合、変圧器自体が充電ステーションに取り付けられ得る。これは、充電ステーションに最小限の充電インフラしか必要ではないことを暗示する。これは、ケーブルまたは絶縁変圧器付きケーブルのいずれかに限定される。
【0072】
いくつかの実施形態の提案されるオンボードAC急速充電器は、車両が静止している時の単相AC急速充電器および車両の移動中のトラクションコンバータの両方として、二重の目的を果たす。急速充電器として、トポロジは、充電時、商業用208V、商業用277V/480V(米国)、240/400V(EU)、および商業用347V/600V(カナダ)を含む全ての一般的な商業用入力AC電圧に適応することができる。これは、専用バッテリ充電器を用いることなくAC電動車両充電を可能にし、コスト、重量、効率の節約、および利用者の利便性に、顕著な発展性をもたらす。
【0073】
図2Aに示すような単一トラクションコンバータを用いるいくつかの実施形態の場合、EVは、静止時にバッテリのAC急速充電に用いるためにトラクションコンバータおよびモータを動的に再配置する。
【0074】
モータの漏洩インダクタンスを用いると、充電器は、車両が静止している時に使用されない部品を再利用することができる。充電時、反転ステージおよびトラクションコンバータは、バッテリを充電するように制御される。バッテリの充電以外に、システムは、双方向動作を可能にし、複数の力率で動作することができる。
【0075】
コンバータシステムの他の実施形態は、図2Bに示すように、2つのインバータシステム202を用いる。この実施形態は、移動中に車を駆動するために2つのトラクションコンバータを有するデュアルインバータドライブを用いる。トポロジの構造は、2つのトラクションコンバータを介して間接的に直列接続される2つのより低い電圧バッテリ204を可能にする。この構造は、電圧範囲が拡大されることにより、たとえば昇圧型コンバータを必要とせずに、充電中、より高い入力交流電圧が適応されることを可能にする。
【0076】
モータドライブとして、デュアルインバータドライブは、モータドライブの定格電圧を増加させ、その結果、ドライブシステム効率を増加させるという潜在的利点を有する。そのような実施形態は、2つの個別のエネルギ蓄積ユニットも有し、これらのエネルギ蓄積ユニットの1または両方は、同種または異種の化学的性質のバッテリ(または他のエネルギ蓄積デバイス)であってよい。
【0077】
図内の2つのエネルギ蓄積源はバッテリであるが、任意のエネルギ蓄積源(すなわち、バッテリ、スーパーキャパシタ、燃料電池、またはそれらの任意の組み合わせ)が用いられてよい。説明目的のため、バッテリ型のエネルギ蓄積源が本明細書において言及される。
【0078】
2つの反転ステージは、実施形態において、エネルギ蓄積ユニットを充電するために、2つのトラクションコンバータとともに用いられる。単一のインバータを用いる実施形態と比較して、デュアルインバータ実施形態は、図2Bに示すような開放型機械を必要とするが、いくつかの実施形態は、多相機械を用いてよい。単一インバータ実施形態およびデュアルインバータ実施形態の両方は、同じ原理を用いて、ACグリッド(またはいくつかの実施形態においてDCグリッド)からの単相急速充電を実現する。
【0079】
たとえば図2Aおよび図2Bに示す充電器のいくつかの実施形態の動作は、以下で説明される。コンバータトポロジは、オンボード充電器として動作している。ドライブとして、このトポロジは、EVの移動中にインバータドライブとして正常に動作する。
【0080】
提案されるAC急速充電器の2つの典型的な実施形態は、図3Aおよび図3Bに示され、これらは、図3Aにおける単一インバータ実施形態および図3Bにおけるデュアルインバータ実施形態を示す概略図である。これらの典型的な実施形態において、反転ステージ(たとえばインバータ回路)は、IGBTアクティブスイッチ302、304で実装されるが、別の切換装置が用いられてよい。
【0081】
図3Bを参照すると、電流の成形は、反転ステージ(この図において、ハーフブリッジ1または2)の変調によって、またはトラクションコンバータ(たとえばトラクションコンバータ1または2)によって、あるいはそれらの組み合わせによって実現され得る。電流の成形は、電流が所望の信号形状(たとえば交流電源において正弦波、または直流電源において直流信号)を追跡する形状になるように、反転ステージおよび/またはトラクションコンバータのスイッチの動作を制御することによって行われる。
【0082】
重要な点として、反転ステージは、必ずしも反転に限定されるわけではなく、いくつかの実施形態において、成形ステージとみなされてもよい(たとえば、スイッチが電流成形のために用いられる)ことに留意する。そのような場合、トラクションインバータは、反転ステージの役割を果たす。反転ステージが成形のために用いられる場合、本明細書において様々な実施形態で説明される実施形態(およびそれらの組み合わせおよび並べ替え)は、成形ステージの代わりに反転ステージという用語を用いる。
【0083】
反転ステージおよびトラクションステージは、(1)反転および(2)成形のために用いられる。実施形態において、一方のステージが反転のために、他方が成形のために用いられ、コントローラは、(たとえば、一方が50/60Hzで切り換わり(これは反転を行う)、他方がより高い周波数で切り換わる(これは成形を行う)切換えパターンを変更することによって)どちらのステージが反転のために用いられ、どちらが成形のために用いられるかを効果的に割り当てるために用いられ得る。実施形態において、より高い切換え損失を有するステージが、より低い周波数で動作し、これは、いくつかの実施形態のコントローラ回路によって選択され得る。
【0084】
特定の実施形態において、一般に、トラクションコンバータは、(たとえば自動車に)駆動機能を提供するための二重用途によってより高い切換え損失を有するので、トラクションコンバータが反転のために用いられ、反転ステージが成形のために用いられる。代替実施形態において、反転ステージは、反転機能を提供する(たとえば切換え制御に従ってグリッド電圧を反転させる)ために用いられ、トラクションコンバータは、成形機能のために用いられる(たとえばこれは、損失分析が、そのようなアプローチがより効率的であることを示す場合に起こり、これはたとえば、選択され、予め決定され、またはコントローラ回路によって動的に決定され得る)。反転ステージがダイオードで構成される場合、成形は、トラクションコンバータによって行われる必要がある。
【0085】
一般に、トラクションコンバータは反転ステージよりも大きく、これは、トラクションコンバータステージにおける切換えがより高い損失を有することを意味する。そのような場合、切換えは反転ステージにおいて優先的に行われ、損失を最適化する機構をもたらす(たとえば、最初にドライブおよびトラクションコンバータの効率を最適化し、その後、改善された充電効率(たとえば最大充電効率)のために反転ステージを設計および最適化する)。代替ダイオードアプローチの欠点は、大きなドライブと一体化されたより小さな充電器は、比較的高い切換え損失(これはたとえば、どの程度の電流が流れるかにかかわらず一定であり得るので、この問題は、充電電流が小さいほど悪化する)を有する大きな半導体を用いてトラクションコンバータによって小さな充電電流の成形が実行されなければならないことにより非常に非効率であり得る点である。
【0086】
提案されるシステムの実施形態は、IGBTの代わりにダイオードを用い得るが、機能性が低下する。単一インバータ実施形態は適切な微調整を行い同様に動作するので、本明細書の以下の部分に関して、論点は、AC急速充電器のデュアルインバータ実施形態である。
【0087】
典型的な波形は、図3Bに基づいて図4に提供される。図3Bに示すデュアルインバータ実施形態は、上側充電ステージ306および下側充電ステージ308に分割され、各充電ステージは、トラクションコンバータ、バッテリ、および反転ステージで構成される。この例において、トラクションコンバータが成形機能を提供している。
【0088】
事実上、反転ステージ電圧Vinv1は、反転ステージのオンオフ状態をもたらし、トラクションインバータ電圧は、反転ステージの変調指数に比例する。
【0089】
オンボード急速充電器の一部として動作する場合、u、v、およびwと表された各トラクションコンバータ位相は、モータの各相にわたり同じ電流を駆動するために、等しい電圧を生成する。したがって図4は、isu、isv、およびiswがiacの3分の1であることを示す。これらの等しい電流は、零相電流と称され、この機械は、零相電流のみがモータを流れる場合、平均トルクを一切生成しない。したがって、この構成は、バッテリの定置充電に適している。特定の実施形態において、零相電流は、交流電源から充電する場合、50/60Hzの正弦波状態であってよく、あるいは直流電源から充電する場合、直流電流である。いずれの場合も、機械のロータが回転磁束に晒されることはなく、回転トルクは生成されない。
【0090】
同じ電流を追跡することに加えて、いくつかの実施形態において、機械における切換え高調波を低減するために、上下の充電ステージ(たとえば、どちらが成形を行うとしても、反転ステージまたはトラクションコンバータ)間で相補的変調も適用され得る。たとえば、図3Bを参照すると、ハーフブリッジ1およびハーフブリッジ2が成形を行う場合、ハーフブリッジ1のスイッチは、ハーフブリッジ2のスイッチと相補的に動作し、逆もしかりである。たとえば、デバイスは高い周波数で切り換わり、高調波を低減するために様々な変調搬送波位相で動作し得る(高調波の影響を低減するように位相シフトがたとえば180度で調整され得る)。
【0091】
トラクションコンバータが成形を行う実施形態において、各コンバータレッグにおける変調搬送波の各位相は、入力充電電流(たとえば、様々な実施形態に従って、ACまたはDC)における高調波を更に最小化するために、隣り合うレッグから(たとえば、3相トラクションコンバータの場合120度)オフセットされる。
【0092】
図4における波形は、オンボード急速充電器がグリッド電圧Vacおよび電流iacに接続されている場合、上側充電ステージによって生成された電圧を示す。説明するように、
chg,u1=vinv1-vu1 (1)
chg,v1=vinv1-vv1 (2)
chg,w1=vinv1-vw1 (3)
として定義される、上側充電ステージによって生成された電圧vchg;u1、vchg;v1、およびvchg;w1は等しく、ACグリッド電圧の約半分である。
【0093】
この非限定的例(反転機能および成形機能は、図3Bのハーフブリッジおよびトラクションコンバータの異なる組み合わせによって行われ得ることに留意する)において、反転ステージ(たとえば、どちらのステージが反転機能を行うとしても)電圧vinv1は、充電ステージがバイポーラ電圧を生成することを可能にするために、反転ステージが半サイクルごとにしか動作しないことを示す。電圧反転は、半ラインサイクルごとにしか起こらないので、反転ステージは最小の60Hz(または50Hz)で切り換わる必要があるが、同様の結果を生成しながら、所望に応じてより高い周波数で切り換わることもできる。これは、反転ステージが導電損失のみに関して最適化され得るために冷却を最小限にし、冷却要件およびシステム重量を低減させる。
【0094】
グリッド電圧および電流は、グリッドからの想定入力を示す。下側充電ステージは同一であるため、(下付き文字1で表される)上側充電ステージ波形のみが図にされる。上側および下側充電ステージは等しい電圧を生成することが予想される。これが、上側充電ステージ電圧がグリッド電圧の半分に等しい理由である。
【0095】
反転ステージおよびトラクションコンバータ電圧は、各ハーフブリッジの端子で生成された電圧を示す。これら2つの電圧の組み合わせは、充電ステージ電圧全体に等しい。トラクションコンバータに対し3相が存在するため、トラクションコンバータ電圧、上側充電ステージ電圧、およびモータ電流は、3つの波形を示す。この例において、3相全てが等しく動作する。したがって、3相における電流は同一であり、グリッド電流の3分の1に等しい。
【0096】
この図において、システムは、充電ステージが全体としてバイポーラ電圧を生成することを可能にするために60Hz(グリッド周波数において、あるいは50Hz)で動作する。ただし、動作は一例として示され、充電器は、60Hz(または50Hz)で反転ステージを動作させることに限定されない。充電ステージ(反転ステージおよびトラクションコンバータともに)は、バイポーラ電圧源とみなされ得る。動作要件は、充電ステージが交流電圧の半分を生成する限り、満たされる。
【0097】
最終的に、トラクションコンバータ単独では、単一極性の電圧を生成することしかできない。トラクションコンバータが、反転ステージ出力とともに図4に示すように、等しいvu1、vv1、およびvw1を生成する場合、所望のvchg;u1、vchg;v1、およびvchg;w1が生成される。トラクションコンバータは、基本グリッド周波数を追跡し、グリッド要件を満たすために十分な周波数で動作する必要がある。
【0098】
AC動作に加えて、提案されるシステムは、図内で1300Aと示される、図13に示すようなDCシステムにも適用可能である。これは、代替アプローチの動作と同様であるが、ここでは反転ステージによって双方向障害阻止機能が追加される。たとえば、図2Bのトポロジは、いくつかの実施形態において、直流電源または交流電源のいずれにも適応するように柔軟に展開され得る。電源が直流である場合、反転が必要なく、直流電流がモータ巻線を流れる場合でもなお、回路は電流を調整し得る。
【0099】
オンボード急速充電器の公称動作は、上側および下側充電ステージ間のエネルギ平衡化を可能にするために更に拡張され得る。これは、図5に示す平均モデル500を用いて最適に説明された、いくつかの手段によって実現され得る。このモデルにおいて、充電ステージの各位相は、バイポーラ可変電圧源によって表される。通常動作において、上述したように、上側および下側充電ステージは等しい電圧を出力する。
【0100】
上側および下側充電ステージエネルギ蓄積デバイス(たとえばバッテリ)間の充電状態(SOC)が(たとえば、エネルギ蓄積デバイスの一方のみに関して蓄積容量に到達し他方ではそうでない場合の非理想性または一致しないエネルギ蓄積デバイスに起因して)均等化される必要がある場合、それらの間でエネルギを平衡化するために、いくつかの様々な方法が用いられ得る。いくつかの実施形態において、エネルギ蓄積デバイス監視機構(たとえば回路)が切換えコントローラと相互接続され、それによって切換えコントローラは、不均衡を補正するために動作特性を修正することができる。
【0101】
通常動作において、充電ステージの結合電圧は、Vchgでなくてはならず、したがってシステムの電圧および電流は、式(5)~(7)によって求められる。
【0102】
1u=v1v=v1w=0.5Vchg (5)
【0103】
2u=v2v=v2w=0.5Vchg (6)
【0104】
【数1】
【0105】
上側および下側充電ステージの電力は、式(8)および(9)から分かるように等しい。
【0106】
=Re{0.5vchgchg} (8)
【0107】
=Re{0.5vchgchg} (9)
【0108】
提案されるオンボード急速充電器のいくつかの実施形態は、相対電圧を修正することまたはモータ位相内で電流を循環させることのいずれかによって、上側および下側充電ステージのエネルギ蓄積デバイス間でエネルギを平衡化させ得る。
【0109】
相対電圧を修正する例は、電圧および電流が式(10)~(12)において求められるように生成された場合である。
【0110】
1u=v1v=v1w=0.6Vchg (10)
【0111】
2u=v2v=v2w=0.4Vchg (11)
【0112】
【数2】
【0113】
上側および下側充電ステージの電力は、式(13)および(14)から分かるように等しくない。
【0114】
=Re{0.6vchgchg} (13)
【0115】
=Re{0.4vchgchg} (14)
【0116】
合計して1.0になることを前提として、上側および下側充電ステージの他の電圧比が用いられてよい。
【0117】
電流を循環させる例は、電圧および電流が式(15)~(20)において求められるように生成される場合である。
【0118】
1u=0.6Vchg (15)
【0119】
1v=v1w=0.5Vchg (16)
【0120】
2u=0.4Vchg (17)
【0121】
2v=v2w=0.5Vchg (18)
【0122】
【数3】
【0123】
【数4】
【0124】
上側および下側充電ステージの電力は、式(21)および(22)から分かるように等しくない。
【0125】
【数5】
【0126】
【数6】
【0127】
この例において、全ての電流は基本周波数におけるものであるが、電流は、基本周波数電流に限定される必要はない。
【0128】
これらの例は、上側および下側充電ステージ間でエネルギを伝達するためにオンボード急速充電器の構造によって可能となる、考えられる2つのアプローチを示す。
【0129】
以下、双方向電力潮流およびグリッドサポート動作が説明される。
【0130】
いくつかの実施形態において、反転ステージは、単一象限切換えデバイスではなく、電流双方向二象限スイッチで実装され得る。これらのスイッチが用いられる場合、反転ステージは、コンバータの差動端子における最大想定入力電圧がエネルギ蓄積素子電圧の合計よりも小さいことを前提として、基本グリッド周波数の任意の位相でAC急速充電器の電圧を反転させてよい。単一インバータ実施形態において、エネルギ蓄積デバイス電圧は、全ての条件下で、ピーク電圧よりも大きい必要がある。デュアルインバータ実施形態において、エネルギ蓄積デバイス電圧の合計は、全ての充電状態条件下で、ピーク電圧よりも大きい必要がある。これは、より大きな範囲のエネルギ蓄積デバイス(たとえば安全性の高い蓄積デバイス)がデュアルインバータ実施形態に関して用いられ得るほど、電圧要件は容易であることにより、デュアルインバータ実施形態に関する潜在的利点である。
【0131】
これは、充電器が、任意の力率での双方向電力潮流を可能にし、それをグリッドサポート用途に適したものにすることを暗示する。ここで、EV充電器は、たとえば負荷平準、ピークシェービング、周波数制御、バックアップ電力供給としての動作などのサービスのためにグリッドを提供することができる。加えて、システムは、グリッド電圧サポートのための無効電力を提供することができる。付加的利益として、システムは、グリッド故障の場合における障害阻止機能を可能にする。
【0132】
いくつかの実施形態に係る制御方策が以下で説明される。充電器の動作は、たとえば、充電器がグリッド要件を満たしながらEVバッテリの充電を可能にするように構成されるように制御される。
【0133】
要件はフィルタ部品によって満たされ得るが、より軽量の解決策は、低歪みの電圧および電流を生成するようにオンボード急速充電器を制御することである。低減された重量は、走行範囲の増加またはより長い動作を可能にするので、重量の減少は、電動車両の開発および設計における重要な要件である。
【0134】
オンボード急速充電器の場合、各充電ステージは、低歪みのACグリッド電流を制御するために用いられ得るバイポーラ電圧源とみなされ得る。この目的に適した高レベルの制御スキームは、図6図600に示される。この図は、オンボード急速充電器を制御するために用いられる変調ブロック606に接続された充電コントローラ602およびエネルギ平衡コントローラ604を示す。
【0135】
充電コントローラ602は、モータの位相間で電流を均等に駆動しながらも、基本周波数電流がグリッドコードを満たすように調整されることを確実にする。反転ステージによって、コントローラは、バイポーラ電流を追跡することが可能であり、その結果、グリッド周波数における電流のみを追跡する。
【0136】
エネルギ平衡コントローラ604は、グリッド電圧または電流に影響を及ぼすことなく、上側および下側充電ステージ間で電力を内部伝達する。最終的に、変調ブロック606は、コントローラからの入力を用いて、図4に示すような所望の波形を生成するために必要なゲート信号を生成する。代替制御方法も可能であり得る。
【0137】
以下で、帯域幅要件が説明される。反転ステージを有さない実施形態に対し、これらの実施形態は、ユニポーラ電圧を生成することしかできず、代わりに、たとえばダイオード整流器に接続される必要がある。
【0138】
トラクションコンバータは、力率補正(PFC)コンバータと同様に動作し、歪みを最小限にするために整流正弦波基準を追跡する。これによりコンバータは、グリッド要件を満たすために基本グリッド周波数の周波数逓倍を追跡することを強いられる。
【0139】
図7および表IIは、整流正弦波の低周波数分類を示す。第6の高調波成分が基本成分の約2%まで減少することが決定される。したがって、コントローラは、整流波形を十分に再現するために基本の第6の高調波(すなわち60Hzグリッドの場合720Hz)まで周波数を追跡する必要がある。したがって、提案されるオンボード急速充電器の実施形態は、制御設計を単純化するのみならず最小切換え周波数要件を低減する、低い帯域幅要件を有する。
【表2】
シミュレーション結果
【0140】
一体化充電トポロジの詳細モデルは、PLECSツールボックスを用いてMATLABにおいて模擬された。システムの高レベル図は、図3Bに示される。
【0141】
2つの同じバッテリパックが、オンボード単相AC急速充電器および駆動システムを介して120Vの単相交流電源から充電される。このシミュレーションにおいて、バッテリパックは、理想的な電圧源に置き換えられる。システムパラメータは、表IIIに記載される。
【0142】
【表3】
【0143】
図8は、力率1で動作した時の充電器の電圧および電流の量を示す。この図において、トラクションコンバータ電圧および上側充電状態電圧は、電圧の低周波数切換え成分を示すためにフィルタされる。これらの図は、図4に示すような理想的な波形と一致する。通常動作の場合、トラクションコンバータの3相全てが等しい。したがって、図8は、位相uの電圧および電流のみを示す。参照として、全ての相電圧および電流が等しいことを示すために、図14A図14B図14Cにおける他の相電圧および電流が提供される。
【0144】
また、予想したように、相ごとのインダクタ電流は、入力電流の概ね3分の1を追跡する。よって、零相電流のみがモータ巻線に注入され、停止中充電間の正味トルクの最小限の生成が確実である。
【0145】
図9は、進み力率0.7で動作した時の充電器の電圧および電流の量を示す。これらのシミュレーション結果は、様々な力率で動作する充電器の能力を実証する。コンバータは、上側および下側充電ステーション間でエネルギを伝達しないので、全相電圧および電流は等しく、図示されない。
【0146】
加えて、オンボード急速充電器は、グリッドサポート用途のためにグリッドへ電力を供給することもでき、これは図10に示される。これらのシミュレーション結果は、いくつかの実施形態に従って、提案されるシステムの双方向機能を実証する。コンバータは、上側および下側充電ステーション間でエネルギを伝達しないので、全相電圧および電流は等しく、図示されない。
【0147】
単一インバータドライブおよびデュアルインバータドライブ実施形態の両方に関して、合計バッテリ電圧は、ピーク交流電圧よりも大きい必要がある。したがって、単一インバータドライブと同一のバッテリパックを用いるデュアルインバータドライブ実施形態の場合、電圧範囲は、単一インバータの2倍であり得る。
【0148】
デュアルインバータドライブを用いる実施形態の場合、様々な実施形態において説明したように、バッテリパック間で電力が伝達され得る。
【0149】
図11は、他に優先して1つのエネルギ蓄積デバイスを充電するための、上側および下側充電ステージ間での電圧オフセットを導入する。Pbatt1の平均値はPbatt2よりも高いため、これは、瞬間的バッテリ電力によって実証される。
【0150】
あるいは、図12A~12Cにおいて(たとえばエネルギ蓄積デバイス電圧を平衡化する方法として)示されるように、循環電圧が導入され得る。零相電流とは対照的に、循環電流は、ロータと相互作用してトルクを生成し得る可能性のある、機械内のステータ磁束を生成する。図12Aは、1つの位相に関して提供され、図12Bは、他の2つの位相に関して提供される。電流の様々な振幅は、循環電流の結果である。図12Cは、様々な平均電力が各蓄積デバイスに入ることを示す。
【0151】
ステータ磁束は、相電流(複数も可)によって定められた固定配向を有する。固定子磁束の配向は、循環電流の結果としてトルクが生成されないことを確実にするために、ロータ磁気軸と一直線に設定される必要がある。
【0152】
循環電流の導入は、たとえば、比較的高い電圧のACネットワークに同時にインタフェース接続されながらエネルギ蓄積デバイスの電圧間のように極端な偏りがある状況において他のアプローチが機能しない、あるいは限られた能力を有する場合、有用であり得る。
【0153】
その結果、たとえば、たとえばキャパシタおよびバッテリを用いたハイブリッドアプローチのように、異種型式または媒体のデバイスがエネルギ蓄積のために用いられる場合が生じ得る(一方がフル充電状態に達し、あるいはこれ以上の充電を受け入れることができず、充電が他方へ分岐される必要があり得る)。
【0154】
循環電流によって生成された正味磁場は、ロータ軸と一直線の角度で作用し、この場合、正味平均トルクが生成されない。
【0155】
より高い電力レベルおよびグリッド電圧におけるシミュレーション結果は、図15に示される。動作は、上述されたものと同様であることが分かる。この追加のシミュレーション結果に関するシステムパラメータは、表IVに示される。
【0156】
【表4】
実験結果
実験構成は、いくつかの実施形態の力率1動作を示すために構成された。図16および図17は、この実験セットアップにおける充電ステージならびに電気モータを示す写真である。この実験セットアップに関する主な回路パラメータの概要は、表Vに示される。
【0157】
【表5】
【0158】
図18は、システムから捕捉された実験波形を示す。グリッド電流が入力グリッド電圧と同位相であるため、力率1動作が直接観測され得る。推測し分かるように、相電流は、グリッド電流のちょうど3分の1を追跡するので等しく、機械に正味トルクは生成されない。
【0159】
シミュレーション結果とは対照的に、インタリーブされた動作はこれらの実験結果において実証されないことに留意することが重要である。このため、切換え周波数高調波は、対応するシミュレーション結果における大きさを上回る大きさで観測され得る。1806は典型的な相電流であり、1804はグリッド電流であり、1802はグリッド電圧であり、これは、モータ電流は(整流正弦波ではなく)正弦波であることを示し、グリッド電流1802の位相が正弦波に作られ、グリッド電圧と同位相であることが示され、1806の正弦波充電は正弦波モータ電流で実現されることを示す。
結論
【0160】
交流電源コンセントからのコスト効果が高く便利なEV充電を提供する新しいオンボード一体型充電器およびドライブシステムが説明される。単相オンボードEV急速充電を可能にするためのトポロジおよび関連する制御装置が開発され、検証される。移動中、このトポロジはドライブとして動作するが、静止時、システムは、単相AC充電器またはDC充電器の一部として動作するようにモータおよびトラクションコンバータを動的に再配置することができ、それによって、車の搭載部品を用いるコスト効果の高い解決策が提示される。
【0161】
いくつかの実施形態において、提案されるシステムは、任意の力率で動作してよく、双方向電力潮流さえも可能である。これにより、車両は、たとえば電圧サポート、周波数調整、およびピークシェービングなどのグリッドサポート用途のために用いられることが可能である。加えて、提案されるコンバータは、障害阻止機能を有する。
【0162】
これは、充電器として機能する場合、低周波数高調波を低減するように制御されることにより、絶縁が必要である場合、インフラ要件をただ1つのケーブルまたは変圧器付きケーブルまで低減する。ただし、ACグリッド充電の他の方法と比較すると、提案されるシステムは、ダイオード整流器に依拠しないものである。これは、整流正弦波ではなく基本周波数しか追跡される必要がないため、制御要件が単純化されることを暗示する。比較すると、コントローラは、提案されるシステムに関する60Hz信号とは対照的に、最小でも720Hz信号を追跡する必要がある。
【0163】
提案されるシステムは異なる形で説明され、1つは単一インバータ駆動システムに基づき、もう1つはデュアルインバータ駆動システムに基づく。
【0164】
デュアルインバータ駆動システムの利益は、一方が電力供給により適し、他方がエネルギ蓄積により適し得る2つの個別のエネルギ蓄積源(すなわち、バッテリ、スーパーキャパシタ、燃料電池、またはそれらの組み合わせ)の統合である。
【0165】
2つの蓄積素子を用いることにより、より高い単一の電圧蓄積素子の使用することなく、駆動列効率を高め、他のアプローチよりも高い電圧の急速充電を可能にするために、より高い電圧モータを用いることが可能である。デュアルインバータドライブの変形例の場合、グリッドに影響を及ぼすことなく、様々な実施形態で説明されたアプローチによって個別のエネルギ蓄積ユニット間のエネルギ伝達がもたらされる。
【0166】
応用に関して、提案されるトポロジの実施形態は、充電時、商業用208V、商業用277V/480V(米国)、240/400V(EU)、および商業用347V/600V(カナダ)を含む全ての一般的な商業用入力交流電圧に適応することができる。
【0167】
いくつかの実施形態で提案されるトポロジの充電速度は、モータおよびトラクション電力エレクトロニクスの熱制約によって制限されるので、既存のグリッドインフラから直接車両に充電する能力が強調され、駆動列システムによる充電機能がスケーリングされる。
【0168】
方法、システム、および装置の実施形態は、図面を参照して説明される。
【0169】
以下の説明は、本発明の主題事項の多数の実施形態例を提供するものである。各実施形態は、発明要素の単一の組み合わせを表すが、本発明の主題事項は、開示される要素の全ての可能な組み合わせを含むものとみなされる。したがって、1つの実施形態が要素A、B、およびCを備え、第2の実施形態が要素BおよびDを備える場合、本発明の主題事項は、明確に開示されなくとも、A、B、C、またはDのその他の組み合わせも含むものとみなされる。
【0170】
本明細書で説明されたデバイス、システム、および方法の実施形態は、電子ハードウェアおよびソフトウェアの両方の組み合わせで実装され得る。これらの実施形態は、たとえば特にスイッチ、トランジスタの動作を時間調整あるいは他のように制御するための制御機構など、プログラマブルコンピュータまたは他の電子制御システムにおいて実装され得る。
【0171】
制御信号を生成するためにソフトウェアが用いられる場合、データを入力するためにプログラムコードが適用される。実施形態は詳細に説明されたが、本明細書において様々な変更、代替、および改変がなされ得ることを理解すべきである。
【0172】
また、本出願の範囲は、本明細書で説明されたプロセス、機械、製品、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることが意図されたものではない。
【0173】
理解され得るように、上述し例示された例は、典型例に過ぎないことが意図される。


図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
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図14A
図14B
図14C
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図18