(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20220329BHJP
G02B 7/10 20210101ALI20220329BHJP
【FI】
G02B7/02 E
G02B7/10 C
(21)【出願番号】P 2017207709
(22)【出願日】2017-10-27
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】田内 久真
(72)【発明者】
【氏名】並木 晴史
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-010909(JP,U)
【文献】特開2013-228515(JP,A)
【文献】特開2011-039115(JP,A)
【文献】実開平01-085812(JP,U)
【文献】特開2007-264156(JP,A)
【文献】特開2004-037825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0161002(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G02B 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシとパターン電極とが接触位置の変化により得られる電気信号を検出することで可動レンズの位置を検出するレンズ位置検出手段を備えたレンズ鏡筒において、
前記可動レンズを光軸と沿った方向に移動させる際に使用者が前記光軸周りに回転させる操作に連動して前記光軸周りに回転可能な回転筒と、
前記回転筒を径方向にて保持する固定筒と、
を有し、
前記回転筒及び前記固定筒のいずれか一方は、前記ブラシと爪部が取り付けられ、
前記ブラシの先端部は、前記回転筒及び前記固定筒の他方に突出し、
前記爪部は、前記ブラシの先端部と前記光軸周りに同位相に配置され、
前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記光軸周方向に前記ブラシと接触する前記パターン電極が取り付け固定され、
前記パターン電極の端部周辺には溝部を備え、
前記溝部は、前記回転筒及び前記固定
筒の他方と曲面にて接続され、
前記爪部は、前記
ブラシよりも前記溝部へ突出している
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
ブラシとパターン電極とが接触位置の変化により得られる電気信号を検出することで可動レンズの位置を検出するレンズ位置検出手段を備えたレンズ鏡筒において、
前記可動レンズを光軸と沿った方向に移動させる際に使用者が前記光軸周りに回転させる操作に連動して前記光軸周りに回転可能な回転筒と、
前記回転筒を径方向にて保持する固定筒と、
を有し、
前記回転筒及び前記固定筒のいずれか一方は、前記ブラシが取り付けられ、
前記ブラシの先端部は、前記回転筒及び前記固定筒の他方に突出し、
前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記ブラシを避ける第1溝部を有し、
前記回転筒及び前記固定筒のいずれか一方は、爪部を有し、
前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記爪部をガイドする第2溝部を有し、
前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記光軸周方向に前記ブラシと接触するパターン電極が取り付け固定され、
前記第1溝部は、前記パターン電極の端部周辺に位置し、
前記第1溝部は、前記回転筒及び前記固定筒の他方と曲面にて接続されており、
前記爪部の前記第2溝部への突出量は、前記
ブラシの前記第1溝部への突出量より大きいことを特徴とするレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシとプリント基板上にパターンが形成されたエンコーダとを用いてフォーカシングやズーミングなど可動レンズ群の位置検出を備えた交換レンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交換レンズ鏡筒では、フォーカスレンズやズーミングレンズなどの可動レンズ群の位置制御を行うために、可動レンズ群の位置検出装置が必要となる。特許文献1は、位置検出装置の例を開示している。
【0003】
特許文献1にて開示されている位置検出装置は、固定筒にフレキシブルプリント基板上にパターンが形成されたエンコーダを張り付け、このパターン上をズーミング時やフォーカシング時に回転する回転筒に固定されたブラシが摺動することでパターンを読み可動レンズ群の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にて開示されている位置検出装置は、レンズ鏡筒を組み立ての際、距離リングにブラシを固定した後、固定筒に組み込もうとすると、ブラシの先端が、固定筒などと接触することで折れ曲がってしまうという課題を有する。
【0006】
そのため、特許文献1にて開示されている位置検出装置は、組み立て時にブラシの先端が折れ曲がってしまうことを避けるために、フレキシブルプリント基板上にパターンが形成されているエンコーダが設けられている固定筒へ距離リングを組み込んだ後、ブラシを固定するという順番で組み立てていた。
【0007】
さらには、組み込み時と同様に分解時もブラシの先端が、周辺のパーツに触れることで曲がってしまうという課題を有する。
【0008】
そのため、分解時は組み込み時とは逆にブラシを距離リングから外した後、固定筒から距離リングを外す。加えて、組み立て時にブラシを距離リングに固定する際に、ブラシとエンコーダとの接触を調整してから固定するものがある。そうすると、組み立て直す毎に再度調整する必要があるという課題を有する。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、組み立て及び分解が容易であり、ブラシの先端が破損することのないレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段である第1の発明は、ブラシとパターン電極とが接触位置の変化により得られる電気信号を検出することで可動レンズの位置を検出するレンズ位置検出手段を備えたレンズ鏡筒において、前記可動レンズを光軸と沿った方向に移動させる際に使用者が前記光軸周りに回転させる操作に連動して前記光軸周りに回転可能な回転筒と、前記回転筒を径方向にて保持する固定筒と、を有し、前記回転筒及び前記固定筒のいずれか一方は、前記ブラシと爪部が取り付けられ、前記ブラシの先端部は、前記回転筒及び前記固定筒の他方に突出し、前記爪部は、前記ブラシの先端部と前記光軸周りに同位相に配置され、前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記光軸周方向に前記ブラシと接触する前記パターン電極が取り付け固定され、前記パターン電極の端部周辺には溝部を備え、前記溝部は、前記回転筒及び前記固定筒の他方と曲面にて接続され、前記爪部は、前記ブラシよりも前記溝部へ突出していることを特徴とするレンズ鏡筒。
【0011】
また、上述の課題を解決するための手段である第2の発明は、ブラシとパターン電極とが接触位置の変化により得られる電気信号を検出することで可動レンズの位置を検出するレンズ位置検出手段を備えたレンズ鏡筒において、前記可動レンズを光軸と沿った方向に移動させる際に使用者が前記光軸周りに回転させる操作に連動して前記光軸周りに回転可能な回転筒と、前記回転筒を径方向にて保持する固定筒と、を有し、前記回転筒及び前記固定筒のいずれか一方は、前記ブラシが取り付けられ、前記ブラシの先端部は、前記回転筒及び前記固定筒の他方に突出し、前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記ブラシを避ける第1溝部を有し、前記回転筒及び前記固定筒のいずれか一方は、爪部を有し、前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記爪部をガイドする第2溝部を有し、前記回転筒及び前記固定筒の他方は、前記光軸周方向に前記ブラシと接触するパターン電極が取り付け固定され、前記第1溝部は、前記パターン電極の端部周辺に位置し、前記第1溝部は、前記回転筒及び前記固定筒の他方と曲面にて接続されており、前記爪部の前記第2溝部への突出量は、前記ブラシの前記第1溝部への突出量より大きいことを特徴とするレンズ鏡筒。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組み立て及び分解が容易であり、ブラシの先端が破損することのないレンズ鏡筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の実施例に係る固定筒とスケールリングとその付属パーツの組み立て時の構成図
【
図3】本発明の実施例に係る固定筒とスケールリングを組んだ状態での断面図
【
図4】本発明の実施例に係る固定筒とスケールリングを組んだ状態での溝部周辺の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施例のレンズ鏡筒の断面図である。尚、
図1は、本発明の説明を簡単にするために簡略化されている。また、特に説明がない場合、各図左側が被写体側、右側が像側となる。
【0016】
本実施例において、100はレンズ鏡筒、101は操作環ラバー、102は操作環、103はモーターベース、104は固定筒、105はスケールリング、106は回転筒、107は移動群とし、レンズ鏡筒100の光軸をOとする。尚、光軸Oは、
図2にのみ図示される。
【0017】
レンズ鏡筒100は、不図示のカメラ本体に脱着可能であり、レンズ鏡筒100のマウント部とカメラ本体のマウント部とがバヨネット機構などにより接続される。
【0018】
操作環ラバー101は、操作環102の外周に位置し、操作環102と一体となっているので、使用者が操作環ラバー101を操作することで、操作環102と一体となってレンズ鏡筒100の周方向を移動する。
【0019】
操作環102は、使用者が合焦又はズーミングの調整を行う際に、適宜周方向に操作する。
【0020】
モーターベース103は、操作環102の光軸O側に位置し、固定筒104とビスにて締結される。
【0021】
固定筒104は、モーターベース103とビスにて締結されている。固定筒104外周部には、フレキシブルプリント基板上にパターンが形成されたエンコーダ1041が添付されている。さらには、溝部1042と突起部1043を設ける。
【0022】
スケールリング105は、操作環102と連動してレンズ鏡筒100の光軸O周り周方向を移動する。また、固定筒104と重複部分にブラシ1051を備える。
【0023】
回転筒106は、操作環102とスケールリング105と連動してレンズ鏡筒100の光軸O周り周方向を移動する。入力された回転を移動群107へ伝達する。
【0024】
移動群107は、合焦やズーミングを調整する際に移動するレンズ群である。使用者が操作環102を操作することで、入力された回転が伝達された移動群107は、レンズ鏡筒100を光軸Oに沿って移動する。
【0025】
次に、
図2は、固定筒104とスケールリング105とその付属パーツの組み立て時の構成図である。尚、
図2中のOはレンズ鏡筒100の光軸を示す。
【0026】
図2を用いて移動群107のレンズ位置を検知する位置検出装置について説明する。
【0027】
本願レンズ鏡筒100に用いる移動群107のレンズ位置を検知する位置検出装置は、特許文献1に記載されているのと同様に、固定筒104にエンコーダ1041が張り付けられており、エンコーダ1041の端部周辺には、溝部1042が設けられている。この固定筒104の外周にはスケールリング105が配置される。スケールリング105は、ブラシ1051を備えている。
【0028】
使用者が、合焦やズーミングの調整の際に操作環ラバー101を光軸Oを中心とする周方向へ回転させると、操作環102を介してスケールリング105に回転が伝達される。回転が伝達されたスケールリング105は、備えたブラシ1051と共に周方向へ回転する。この時、ブラシ1051の先端部はエンコーダ1041のパターン上を摺動する。同時に、使用者が入力した回転は回転筒106を介して移動群107へ伝達され、移動群107は、光軸Oに沿って移動する。
【0029】
従って、ブラシ1051の先端が停止しているエンコーダ1041のパターンを読むことで移動群107の位置が特定可能となる。
【0030】
次に、固定筒104とスケールリング105の組み立て方について、
図3を用いて説明する。
【0031】
図3は、固定筒104とスケールリング105をブラシ1051とエンコーダ1041の関係が見えるように、ブラシ1051をビス止めしたスケールリング105と固定筒104を組んだ状態でブラシ1051の部分を光軸と垂直な面で切断した図である。尚、左上が被写体側で右下が像側となる。
【0032】
組み立て方は、スケールリング105にブラシ1051をビスなどで留める。ブラシ1051と一体となったスケールリング105は、ブラシ1051の先端を溝部1042と光軸Oに対して同位相の位置に合わせた後、固定筒104へスケールリング105を係合させる。この時、ブラシ1051の先端は固定筒104と接触しない。詳細は後述する。
【0033】
固定筒104とスケールリング105を係合させた後、スケールリング105を時計周りに回転させると、ブラシ1051の先端はエンコーダ1041の上を摺動する。一体となった固定筒104とスケールリング105は、レンズ鏡筒100に組み込まれる。
【0034】
次に、
図4を用いてブラシ1051の先端と固定筒104が接触しないことを説明する。
【0035】
図4は、
図3と同様にスケールリング105と固定筒104を組んだ状態でブラシ1051の先端と溝部1042を光軸Oと平行な位置から見た図である。尚、光軸Oは、
図4に不図示だが、
図4外の下側に位置する。
【0036】
スケールリング105は、内径側にバヨネット爪1052(
図4中の斜線部分)を備えている。このバヨネット爪1052は、ブラシ1051と光軸Oに対して同位相に位置し、
図4に示すようにブラシ1051の先端よりも光軸O側へ突出している。従って、組み立て時に、ブラシ1051の先端が溝部1042に接触するよりも先に、バヨネット爪1052が溝部1042と係合することでガイドの役割を果たす。そのため、ブラシ1051が溝部1042や周辺のパーツに接触することがない。
【0037】
さらには、固定筒104へスケ-ルリング105を係合した後、位置検出装置として機能するためにブラシ1051の先端をエンコーダ1041上へ移動させると、バヨネット爪1052は、固定筒104の突起部1043と係合することとなる。その結果、スケールリング105の光軸と沿った方向への移動が規制されるので、スケールリング105と固定筒104が外れることはない。
【0038】
以上のことから、本願発明の構成をすることで、組み立て時にブラシ1052が周辺パーツと接触することで曲がってしまうという課題は解決される。
【0039】
さらには、固定筒104に設けられた溝部1042について説明する。溝部1042の側面は曲面になっている。その結果、組み立て時に
図3又は
図4に示す状態から、ブラシ1051をエンコーダ1041と摺動する状態へブラシ1051を移動させる際(
図3又は
図4の状態から固定筒104を固定しスケールリング105を時計回りへ回転させる)、ブラシ1051の先端は、溝部1042の曲面に沿ってエンコーダ1041へ移るので、周辺のパーツに引っ掛かる等してブラシ1051の先端を曲げる恐れがなくなる。
【0040】
また、これまでは組み立て時について述べてきた。分解時も組み立て時と同様となる。
【0041】
別実施例について説明する。
【0042】
これまでの実施例では、ブラシ1051とバヨネット爪1052が光軸Oに対して同位相の位置に配置していた。その結果、組み立て時・分解時ともに固定筒104の溝部1042を共有することで、溝部1042は一つで問題なかった。しかし、ブラシ1051とバヨネット爪1052を異なる位相に配置しても、それぞれに溝部1042を配置する。つまり、第1溝部と第2溝部とを固定筒104の周上に配置することで本願発明の効果を得ることが可能である。
【0043】
具体的には、ブラシ1051が組み立て時・分解時に用いる第1溝部はエンコーダ1041の端部付近にあることが望ましい。なぜなら、第1溝部とエンコーダ1041の距離があると、その距離だけブラシ1051をエンコーダ1041まで移動させなければならないので望ましくない。
【0044】
また、バヨネット爪1052が組み立て時・分解時に係合する第2溝部は、エンコーダ1041などの障害がなければ、固定筒104の周上のどこに位置してもよい。
【0045】
さらに、バヨネット爪1052が用いる第2溝部の側面は、ブラシ1051の先端が摺動するわけではないので局面でなくてもよい。
【0046】
これまで、固定筒104にエンコーダ1041と溝部1042を配置し、スケールリング105にブラシ1051とバヨネット爪1052を配置する実施例を説明してきた。しかし、固定筒104の外周にブラシ1051とバヨネット爪1052を配置し、スケールリング105の内周にエンコーダ1041と溝部1042を配置することとしても問題ない。
【0047】
さらに、別実施例は、ブラシ1051とバヨネット爪1052は、固定筒104とスケールリング105とそれぞれに分かれて配置しても問題ない。その場合、バヨネット爪1052と係合する突起部1043は、ブラシ1051と同じ側となる。例えば、ブラシ1051を固定筒104へ配置し、バヨネット爪1052をスケールリング105へ配置した場合、第1溝部はスケールリング105、第2溝部と突起部1043は固定筒104へ配置することとなる。
【0048】
逆に、ブラシ1051とバヨネット爪1052をそれぞれスケールリング105と固定筒104へ配置した場合、第1溝部は固定筒104、第2溝部と突起部1043はスケールリング105へ配置することとなる。
【0049】
また、本願明細書にて説明した実施例は、各図面より固定筒104の外周側にスケールリング105を有する構成となっている。しかし、固定筒104の内周側にスケールリング105を有する構成としてもよい。その場合、
図2にあるようにスケールリング105を目盛り部分とブラシ1051部分とで分割し、固定筒104の外周側に目盛り部分を要してスケールリングと連動して回転する回転筒を配置するなどして、適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0050】
100 レンズ鏡筒
101 操作環ラバー
102 操作環
103 モーターベース
104 固定筒
1041 エンコーダ
1042 溝部
1043 突起部
105 スケールリング
1051 ブラシ
1052 バヨネット爪
106 回転筒
107 移動群