IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ケーブル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-エレベータ式駐車装置 図1
  • 特許-エレベータ式駐車装置 図2
  • 特許-エレベータ式駐車装置 図3
  • 特許-エレベータ式駐車装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】エレベータ式駐車装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
E04H6/18 601C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017250630
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019116741
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】大川 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】吉野 直也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓実
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-041698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を搭載する搬器の四隅にワイヤロープの一端を連結して前記搬器を吊下し、前記ワイヤロープを機械室に備えた駆動シーブに巻回した後、前記ワイヤロープの他端をカウンターウエイトに連結し、前記駆動シーブを回転駆動することで前記ワイヤロープを駆動して前記搬器を昇降させるエレベータ式駐車装置であって、
前記機械室の前記搬器の前方側又は後方側のいずれか一の壁面近傍の一角に前記駆動シーブが配置され
前記壁面近傍の他方の一角に前記ワイヤロープを前記カウンターウエイトへ誘導するとともに、水平方向の軸を中心として回転可能なカウンターウエイト側そらせシーブ配置され
前記駆動シーブと前記カウンターウエイト側そらせシーブとの間に配設され、前記壁面側で前記搬器を吊下する前記ワイヤロープを前記駆動シーブへ誘導するとともに、水平方向の軸を中心として回転可能な第1そらせシーブ及び第2そらせシーブが配置され、
前記壁面に対向する壁面側で前記搬器を吊下する前記ワイヤロープを前記搬器から略水平方向へ誘導するとともに、水平方向の軸を中心として回転可能な一対の搬器側そらせシーブが配置され、
前記第1そらせシーブと前記第2そらせシーブとの間に配設され、前記一対の搬器側そらせシーブにより誘導された前記ワイヤロープを前記駆動シーブへ誘導するとともに、略垂直方向の軸を中心として回転可能な水平そらせシーブが配置され、
前記第1そらせシーブが前記カウンターウエイト側そらせシーブの近傍に配置される一方、前記第2そらせシーブが前記駆動シーブの近傍に配置され、前記第2そらせシーブが前記第1そらせシーブよりも下方に配置され、
前記搬器の一方側の一隅に一端が連結された前記ワイヤロープの1本が前記第1そらせシーブの外側から巻き掛けられた後に、前記駆動シーブの下側から巻き掛けられて前記カウンターウエイト側そらせシーブ側へ延長され、該カウンターウエイト側そらせシーブから下方に屈曲して前記カウンターウエイトに連結されるように構成され、
前記搬器の一方側の他の一隅に一端が連結された前記ワイヤロープの1本が前記第2そらせシーブの外側から巻き掛けられた後に前記第1そらせシーブ側に延長され、該第1そらせシーブに下側から巻き掛けられて、さらに前記駆動シーブの下側から巻き掛けられて前記カウンターウエイト側そらせシーブ側へ延長され、該カウンターウエイト側そらせシーブから下方に屈曲して前記カウンターウエイトに連結されるように構成され、
前記搬器の他方側の両隅にそれぞれ一端が連結された前記ワイヤロープの2本が前記一対の搬器側そらせシーブによって略水平方向へ誘導され、これら2本のワイヤロープが前記壁面近傍で前記水平そらせシーブによって略水平方向に屈曲されて前記駆動シーブに誘導された後に前記カウンターウエイト側そらせシーブ側へ延長され、該カウンターウエイト側そらせシーブから下方に屈曲して前記カウンターウエイトに連結されるように構成されていることを特徴とするエレベータ式駐車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車塔上部の機械室に備えた巻き上げ装置によりワイヤロープを駆動し、このワイヤロープに連結された搬器により車両を移送するエレベータ式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なエレベータ式駐車装置は、駐車塔の中央部にエレベータ昇降用の昇降路を形成し、この昇降路の左右両側のスペースに駐車棚を階層状に設けるとともに、昇降路の最下部あるいは中段部に入出庫階を形成している。上記昇降路には、略矩形状に枠組み構成された搬器が昇降自在に設けられており、搬器と各駐車棚との間で車両搭載用パレット又は車両自体の移載が行われるように構成されている。搬器の4隅部分には、4組のワイヤロープが連結されており、これら4組のワイヤロープは、それぞれ昇降路最上部に設けられたそらせシーブを経て、機械室の巻き上げ装置の駆動シーブに誘導されて巻掛けられ、さらに転向シーブを経て他端側でカウンタウエイトに連結されている。そして、駆動シーブを回転駆動することにより搬器が昇降路を昇降し、車両の移送が行われる。
【0003】
上記したようにワイヤロープの巻き上げ装置を有する機械室は、駐車塔の最上階に設けられることが一般的であり、また、機械室は、減速機や電動機等の重量物及び複数のそらせシーブが配設されるため、これらの機器類が合理的に配設されることが求められる。このようなことから、従来さまざまな機械室内の機器類のレイアウトが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-291482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示された機械室内のレイアウトにおいては、減速機や電動機等の重量物が室内の中央部付近に設置されるため、これを支えるための構造物に補助梁等を設けなければならずコスト高となる。また、このレイアウトにおいてはワイヤロープが減速機や電動機付近を通過しているので、保守等において作業性が悪いという難点があった。さらには、ワイヤロープは、そらせシーブや駆動シーブによって繰り返し折り曲げられるため疲労を生じ、ワイヤロープの寿命を延ばすためには配置するシーブ数をなるべく少なくしたいという要望があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、減速機や電動機を支持する構造物のコストを抑えるとともに、保守等の作業性を損なうことのないエレベータ式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、車両を搭載する搬器の四隅にワイヤロープの一端を連結して前記搬器を吊下し、前記ワイヤロープを機械室に備えた駆動シーブに巻回した後、前記ワイヤロープの他端をカウンターウエイトに連結し、前記駆動シーブを回転駆動することで前記ワイヤロープを駆動して前記搬器を昇降させるエレベータ式駐車装置であって、前記機械室の前記搬器の前方側又は後方側のいずれか一の壁面近傍の一角に前記駆動シーブが配置され、前記壁面近傍の他方の一角に前記ワイヤロープを前記カウンターウエイトへ誘導するとともに、水平方向の軸を中心として回転可能なカウンターウエイト側そらせシーブ配置され前記駆動シーブと前記カウンターウエイト側そらせシーブとの間に配設され、前記壁面側で前記搬器を吊下する前記ワイヤロープを前記駆動シーブへ誘導するとともに、水平方向の軸を中心として回転可能な第1そらせシーブ及び第2そらせシーブが配置され、前記壁面に対向する壁面側で前記搬器を吊下する前記ワイヤロープを前記搬器から略水平方向へ誘導するとともに、水平方向の軸を中心として回転可能な一対の搬器側そらせシーブが配置され、前記第1そらせシーブと前記第2そらせシーブとの間に配設され、前記一対の搬器側そらせシーブにより誘導された前記ワイヤロープを前記駆動シーブへ誘導するとともに、略垂直方向の軸を中心として回転可能な水平そらせシーブが配置され、前記第1そらせシーブが前記カウンターウエイト側そらせシーブの近傍に配置される一方、前記第2そらせシーブが前記駆動シーブの近傍に配置され、前記第2そらせシーブが前記第1そらせシーブよりも下方に配置され、前記搬器の一方側の一隅に一端が連結された前記ワイヤロープの1本が前記第1そらせシーブの外側から巻き掛けられた後に、前記駆動シーブの下側から巻き掛けられて前記カウンターウエイト側そらせシーブ側へ延長され、該カウンターウエイト側そらせシーブから下方に屈曲して前記カウンターウエイトに連結されるように構成され、前記搬器の一方側の他の一隅に一端が連結された前記ワイヤロープの1本が前記第2そらせシーブの外側から巻き掛けられた後に前記第1そらせシーブ側に延長され、該第1そらせシーブに下側から巻き掛けられて、さらに前記駆動シーブの下側から巻き掛けられて前記カウンターウエイト側そらせシーブ側へ延長され、該カウンターウエイト側そらせシーブから下方に屈曲して前記カウンターウエイトに連結されるように構成され、前記搬器の他方側の両隅にそれぞれ一端が連結された前記ワイヤロープの2本が前記一対の搬器側そらせシーブによって略水平方向へ誘導され、これら2本のワイヤロープが前記壁面近傍で前記水平そらせシーブによって略水平方向に屈曲されて前記駆動シーブに誘導された後に前記カウンターウエイト側そらせシーブ側へ延長され、該カウンターウエイト側そらせシーブから下方に屈曲して前記カウンターウエイトに連結されるように構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、械室の一の壁面に近接して巻き上げ装置や多数のそらせシーブを設置するので、これらを支持する構造物の強度部材を極力少なくすることができコストを抑えることができる。また、巻き上げ装置の電動機や減速機の付近をワイヤロープが通過しないので、点検や修理等の保守作業を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エレベータ式駐車装置の概略を示す側面図
図2】エレベータ式駐車装置の概略を示す正面図
図3】機械室の平面図
図4】シーブの配置を示す正面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。。図1及び図2は、エレベータ式駐車装置の概略を示す正面図及び側面図である。
【0011】
エレベータ式駐車装置10には、中央を上下に貫通する昇降路11が形成されており、この昇降路11を昇降可能に昇降リフト12を設けている。昇降リフト12は、車両19を搬送するための搬器13と、この搬器13を懸垂するワイヤロープ14と、昇降路11上端部の機械室25に設置した巻き上げ装置15と、ワイヤロープ14を介して搬器13の重量とバランスを保つカウンターウエイト16とを有しており、次のように構成されている。搬器13の四隅には、ワイヤロープ14の一端部がそれぞれ連結されており、このワイヤロープ14は、昇降路11の上端部に備えた巻き上げ装置15に巻き掛けられて、他端部がカウンターウエイト16に連結されている。巻き上げ装置15には、電動機21、減速機22、駆動シーブ23を備え、電動機21の動力により駆動シーブ23を回転駆動するようにしており、前記ワイヤロープ14は駆動シーブ23に巻き掛けられている。そして、電動機21を正転又は逆転に回転制御することにより、搬器13が昇降路11内を上昇又は下降する。
【0012】
昇降路11の両側方には、複数の駐車室17が上下多段に形成されており、搬器13により搬送された車両19が格納される。各駐車室17には、車両19の前端部付近と後端部付近とに位置するように、二本の横行ガイドレール20が昇降路11側から側方に向けて延出して固設されている。各横行ガイドレール20の長手方向に沿っては、所定の間隔で複数のガイドローラ24が回転可能に支持されており、対向する二本の横行ガイドレール20に備えたこれらのガイドローラ24上に掛け渡されてパレット18が載置され、それぞれの駐車室17においてパレット18が昇降路11方向にスライド可能に備えられている。一方、昇降リフト12の搬器13は、その上面において駐車室17と同様にパレット18をスライド可能に支持するように構成するとともに、パレット18を駐車室17と搬器13上との間で往復移動させる横行駆動装置を備えている。
【0013】
このような構成において、車両19は、パレット18に搭載されてパレット18とともに搬送及び格納される。すなわち、車両19の入庫時には、空車の駐車室17から空パレット18を引き出して搬器13上に搭載し、この後、搬器13が入出庫階層まで昇降して停止した後、車両19が搬器13上のパレット18に乗り込む。次いで、搬器13は、搭載したパレット18及び車両19とともに昇降し、所定の駐車室17で停止してパレット18及び車両19を共に駐車室17へ送り込んで格納する。これとは逆に出庫時には、車両19を搭載したパレット18が搬器13上に引き出された後、搬器13が入出庫階層まで昇降して停止した後に車両19が自走して出庫する。
【0014】
図3は機械室の平面図、図4はシーブの配置を示す正面図である。機械室25の一方の壁面40に近接して搬器前方側そらせシーブ30、31が回転自在に配置されており、他方の壁面41付近には、水平そらせシーブ32と、搬器後方側そらせシーブ33、34と、カウンターウエイト側そらせシーブ35、36とが壁面41と平行に回転するように設置されている。水平そらせシーブ32と、搬器後方側そらせシーブ33、34と、カウンターウエイト側そらせシーブ35、36と、駆動シーブ23とは、ワイヤロープ14が張り渡されたときに壁面41と平行して張架されるように配置されている。
搬器前方側そらせシーブ30、31は、本実施形態の搬器側そらせシーブを構成し、搬器後方側そらせシーブ33、34のうちの搬器後方側そらせシーブ33が本実施形態の第1そらせシーブを構成し、搬器後方側そらせシーブ34が本実施形態の第2そらせシーブを構成する。搬器後方側そらせシーブ33がカウンターウエイト側そらせシーブ35、36の近傍に配置される一方、搬器後方側そらせシーブ34が駆動シーブ23の近傍に配置され、搬器後方側そらせシーブ34が搬器後方側そらせシーブ33よりも下方に配置されている。
搬器前方側そらせシーブ30、31と、搬器後方側そらせシーブ33、34と、カウンターウエイト側そらせシーブ35、36は、それぞれ水平方向の軸を中心として回転可能に構成されている。水平そらせシーブ32は、略垂直方向の軸を中心として回転可能に構成されている。
【0015】
搬器13の前方側に一端を連結されたワイヤロープ14a、14bは、搬器13から上方へ延びた後、搬器前方側そらせシーブ30、31により略水平方向へ屈曲して後方側へ延び、次いで後方側中央位置に備えた水平そらせシーブ32により水平方向へ屈曲して壁面41と平行に延びた後、駆動シーブ23に巻き掛けられる。この後ワイヤロープ14a、14bは、駆動シーブ23により折り返されて再び壁面41と平行して延び、カウンターウエイト側そらせシーブ36により下方へ屈曲した後、端部をカウンターウエイト16に連結されている。
【0016】
一方、搬器13の後方側に一端を連結されたワイヤロープ14c、14dのうち一方のワイヤロープ14cは、搬器13から上方へ延びた後、搬器後方側そらせシーブ33により屈曲した後壁面41と平行に延びて駆動シーブ23に巻き掛けられる。この後ワイヤロープ14cは、駆動シーブ23により折り返されて再び壁面41と平行に延びた後、カウンターウエイト側そらせシーブ35により下方へ屈曲し、端部をカウンターウエイト16に連結している。他方のワイヤロープ14dは、搬器13から上方へ延びた後、もう一方の搬器後方側そらせシーブ34により屈曲して搬器後方側そらせシーブ33へ延び、搬器後方側そらせシーブ33によって折り返された後、駆動シーブ23に巻き掛けられる。その後ワイヤロープ14dは、駆動シーブ23により折り返されて再び壁面41と平行に延びた後、カウンターウエイト側そらせシーブ35により下方へ屈曲し、端部をカウンターウエイト16に連結している。
【0017】
この構成によれば、機械室25の一箇所の壁面41付近に巻き上げ装置15や多数のそらせシーブを設置するので、これらを支持する構造物の強度部材を極力少なくすることができる。また、巻き上げ装置15の電動機21や減速機22の付近をワイヤロープ14が通過しないので、点検や修理等の保守作業を安全に行うことができる。また、使用するそらせシーブの数を極力少なくすることにより、ワイヤロープ14の曲げ回数を少なくでき、ワイヤロープ14の寿命を延ばすことができる。
【符号の説明】
【0018】
10 エレベータ式駐車装置
11 昇降路
12 昇降リフト
13 搬器
14、14a、14b、14c、14d ワイヤロープ
15 巻き上げ装置
16 カウンターウエイト
17 駐車室
18 パレット
19 車両
20 横行ガイドレール
21 電動機
22 減速機
23 駆動シーブ
25 機械室
30、31 搬器前方側そらせシーブ
32 水平そらせシーブ
33、34 搬器後方側そらせシーブ
35、36 カウンターウエイト側そらせシーブ
図1
図2
図3
図4