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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】バグフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20220329BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B01D46/52 C
B01D39/16 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018028922
(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2019141794
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505037648
【氏名又は名称】株式会社相模商会
(74)【代理人】
【識別番号】100088731
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】古尾谷 昌弘
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-086119(JP,A)
【文献】実開昭53-091073(JP,U)
【文献】特開2007-054752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0216496(US,A1)
【文献】特開2007-237160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D46/00-46/54
B01D39/00-41/04
D04H1/00-18/04
B01D33/044
D04H1/00-18/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなし、プリーツ状の布帛よりなる濾布本体と、筒状をなし、濾布本体の長手方向一端に縫着された口元布と、有底筒状をなし濾布本体の長手方向他端に縫着された底布とを具備したバグフィルタであって、濾布本体を内側から補強する補強具を具備し、この補強具は、バグフィルタの内部における長手方向の少なくとも一箇所に配置され、金属を素材とし、バグフィルタの内周面に全周において対向するように配置され、濾布本体の筒形状及びプリーツを確保するための環状補強部材と、布帛より構成され、前記環状補強部材をバグフィルタに逢着構造にて連結する連結具とを具備し、前記連結具は、環状補強部材の周において環状補強部材を包囲しつつ、対向長手方向縁部が縫着された被覆布と、バグフィルタの略々全長に亘り延設された縦布とを具備し、前記縦布は、長手方向の中間部においては少なくとも対向する部位にて前記被覆布に縫着され、長手方向の一端においては口元布の対向内面に縫着され、長手方向の他端においては底布の対向内面に縫着されたバグフィルタ。
【請求項2】
請求項1記載の発明において、濾布本体を構成するプリーツ状の布帛は、素材としてポリエステル樹脂を素材とするスパンボンド布より構成されるバグフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリーツ形状の布帛よりなるバグフィルタに関し、焼却炉の集塵装置等に好適に使用することができるものである。
【背景技術】
【0002】
焼却炉の集塵装置等における使用を意図したバグフィルタとしては、ろ過効率の観点から被処理ガスとの接触面積の増大を図る必要がありプリーツ形状はその形態としては望ましい。他方、耐久性が必要とされることから、従来は固体状の成形フィルタが主流であったが、コストの観点から濾布の素材として不織布を採用するようになってきている。この技術的トレンドの中で、本出願人等は、筒状をなし、プリーツ状の布帛よりなる濾布本体と、筒状をなし、濾布本体の長手方向一端に縫着された口元布と、有底筒状をなし濾布本体の長手方向他端に縫着された底布とを具備したバグフィルタを提案している(特許文献1)。濾布本体用の布帛としては、不織布にニードルパンチングされたものを採用している。事前処理として熱硬化性の樹脂を含浸した不織布がプリーツ成形機を通されることによりプリーツ形状が加熱下固定され、プリーツ形状の確保を図っている。
【0003】
また、熱硬化性の樹脂の含浸処理を行なうことなく、布帛のプリーツ形状を確保するためプリーツの山及び谷の突端部分を縫製するようにした技術も本出願人等により提案されている(特許文献2)。
【0004】
以上の従来技術では、濾布はPTFE等の高耐熱性の短繊維(ステープル繊維)を素材としており、ニードルパンチングにより濾布用の不織布に仕立てた状態では剛性が足りないため、特許文献1の熱硬化樹脂の含浸や特許文献2のようなプリーツ形状の確保のための縫製等の手段が必須であったが、布帛自体でプリーツ形状を確保し得る濾布用の繊維素材として、スパンボンド不織布が注目されている。即ち、スパンボンド不織布は、紡糸ノズルから押出し成形されたポリエステル等のフィラメント(無限長繊維)を直接堆積して成形するため強度(剛性)が高い不織布とすることができ、そのため、プリーツ成形後の形状保持性が高く、特許文献1や特許文献2のようなプリーツ形状を維持するための樹脂含浸や縫製といった手段が不要である。バグフィルタ用の布帛素材としてのスパンボンド不織布については特許文献3や特許文献4等を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-237160号公報
【文献】特開2012-223701号公報
【文献】特開2012-17529号公報
【文献】特開2012-86119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
布帛をプリーツ成形することにより濾布を形成する場合、剛性が高い布帛であるスパンボンド不織布であっても濾布の剛性は、焼却炉の集塵装置用のバグフルタとしては必須となる逆洗操作時(濾布の内側より空気パルスを印加することにより濾布場のダストの叩き落としを行なう操作)に濾布の筒形状はもとよりプリーツ形状をも損なうことがないように、濾布の内側にリテーナを配設することが必須である。しかしながら、リテーナとしては、鋼線を溶接により籠型構造にしたものが通常であるが、高温の廃棄物処理の厳しい使用環境では腐食等の早期の損傷の恐れがあり、濾布の交換と同時にリテーナの補修が必要となったり、場合によってはリテーナそのものの交換が必要となることもあった。リテーナの素材としてステンレス鋼線を採用することにより耐久性向上を実現することができようが、コストが著しく増大する。そこで、布帛を素材とするプリーツ形状の濾布を採用したバグフィルタにおいて、本発明は、バグフィルタ自身にプリーツ形状の維持機能を兼備させるような構造上の工夫を加えることにより、従来は必要であったリテーナを必要とすることなく、また、従来の別体型のリテーナとの対比において、コスト上の増加を伴うことなく、逆洗操作においてもプリーツ形状を維持し得るバグフィルタの新規な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にあっては、筒状をなし、プリーツ状の布帛よりなる濾布本体と、筒状をなし、濾布本体の長手方向一端に縫着された口元布と、有底筒状をなし濾布本体の長手方向他端に縫着された底布とを具備したバグフィルタであって、濾布本体を内側から補強する補強具を具備し、この補強具は、バグフィルタの内部における長手方向の少なくとも一箇所に配置され、金属を素材とし、バグフィルタの内周面に全周において対向するように配置され、濾布本体の筒形状及びプリーツ確保するための環状補強部材と、布帛より構成され、前記環状補強部材をバグフィルタに逢着構造にて連結する連結具とを具備したバグフィルタが提供される。
【0008】
布帛より成る連結具は、環状補強部材の実質的全長において環状補強部材を包囲しつつ、対向長手方向縁部が縫着された被覆布と、バグフィルタの略々全長に亘り延設された縦布とから構成することができ、この場合、縦布は、長手方向の中間部においては少なくとも対向する被覆布に縫着され、長手方向の一端においては口元布の対向内面に縫着され、長手方向の他端においては底布の対向内面に縫着される。縦布は、バグフィルタの長手方向に延びる所要の外径の金属製棒状体等の補強部材を包囲逢着するようにすることも可能である。環状補強部材を包囲する被覆布を濾布本体の対向内面に直接縫着する構造も可能である。
【0009】
濾布本体を構成する布帛としては、強度が高いプリーツ成形性の良好な素材としてポリエステルを素材とするスパンボンド布をプリーツ成形することにより構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明バグフィルタにおいては、布帛より成る外皮をバグフィルタに逢着構造とした金属製環状補強部材が濾布の内周に沿って配置された一体構造となっており、濾布の筒形状及びプリーツ形状を金属製環状補強部材により簡易かつ確実に維持することができる。本発明によるプリーツ補強構造の一体化は、従来のバグフィルタにおいて濾布の筒形状及びプリーツ形状維持のため使用されていた、別体のリテーナを不要とすることができる。本発明における環状補強部材の縫製による一体化は、従来のバグフィルタとの比較ではバグフィルタ単品とみればコストの明らかな増大要因であるが、リテーナのような追加部品を省くことができ、リテーナも含めた単純比較ではコストの大幅な削減が可能である。本発明のバグフィルタにおいて、金属製環状補強部材は交換時に再利用は不可能ではないが、基本的には使い捨てであり、再使用を前提とする従来のリテーナと比較した弱点となり得るが、普通鋼材よりなる通常のリテーナは耐久性は現実にはそれほどでもなく、バグフィルタ交換時の補修は必要であり、そのコストも加味するとトータルのランニングコストとしては低減を期待することができる。そして、濾布の素材としてスパンボンドを使用した場合は、濾布自体の剛性が非常に高いため、環状補強部材を直接濾布対向面に逢着する最も簡易な連結構造を採用することができ、構成の簡易化を実現しつつ逆洗操作に対しても高い耐久性を得ることができ、それ故に長寿命であることからランニングコストの一層の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1はこの布帛にプリーツ形状を付し縦方向の縫製により形成された筒状の濾布本体の側面図である。
図2図2図1のII-II線に沿った模式的矢視断面図及びこの断面図のA部の拡大図を示す。
図3図3図1の上、下端部においてプリーツを折り畳みかつミシンがけすることにより平坦化した状態の濾布本体の側面図である。
図4図4は濾布の端部のプリーツ部分のミシンがけによる平坦化を説明する模式的斜視図である。
図5図5図3により上、下端部を平坦化した濾布本体に口元布及び底布を逢着若しくは逢着準備した状態を示す縦断面図であり、本発明の補強具は未逢着であるが、濾布本体及び口元布及び底布に対する位置関係の説明のため図示されている。
図6図6はバグフルタ一体型の本発明の第1の実施形態の補強具の全体を模式的に示す斜視図である。
図7図7図6の補強具において、金属製環状帯材を被覆布により包囲するように逢着しかつ被覆布の余白部分を長手方向連結帯に逢着した状態を模式的に示す拡大斜視図である。
図8図8は、金属製環状補強部材として、円形断面のリングを使用した場合の模式的横断面図である。
図9図9は、補強具の逢着を行うことによりバグハウスにワンタッチ取付け可能な完成したバグフィルタを示す模式的縦断面図である。
図10図10は別実施形態における本発明の補強具の全体を模式的に示す斜視図である。
図11図11図10の補強具において、金属製縦棒を逢着した被覆布により包囲するように逢着しかつ被覆布の余白部分を長手方向連結帯に逢着した状態を模式的に示す拡大斜視図である。
図12図12は、補強具の逢着並びに口元布及び底布の逢着を行うことによりバグハウス取付け可能な完成したバグフィルタを示す模式的縦断面図である。
図13図13は本発明の別実施形態を示し、金属製環状補強部材を包囲した被覆布を濾布のプリーツ部に直接逢着した構造のバグフィルタの要部を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、焼却炉の集塵装置の用途に適合させた場合についてこの発明になるバグフィルタを詳細に説明すると、バグフィルタを構成する濾布は織布若しくは不織布としては、耐熱性及び形態(筒形状及びプリーツ形状)保持性の観点から剛性が高くかつ耐熱性にも優れる紡糸ノズルからのマルチフィラメント(無限長繊維)を堆積交絡形成して成るスパンボンド不織布とすることが好ましい。スパンボンド不織布としては、目付けとして、200g/m2~400g/m2の範囲のものが好ましく、荷重1kg屈曲試験、曲げ角度135°, 170回/分でトータル10000回の曲試験にて20~30MPaの強度を確保することができるものを使用することが好ましい。スパンボンド不織布としては、東レ株式会社より"アクスター"なるの商品名(東レ株式会社の登録商標)で市販されているものや、東洋紡株式会社より"ベストショット" なるの商品名(東洋紡株式会社の登録商標)で市販されているものを採用可能である。
【0013】
スパンボンド不織布は必要幅にカットされ、加熱下でのプリーツ成形工程に付される。即ち、プリーツ成形のためスパンボンド不織布はプリーツ加工機を通される。プリーツ加工の温度としては150~200℃の範囲である。このタイプのスパンボンド不織布はそのプリーツ形状を含めた筒形状が非常に高剛性であり、後述の通り、バグフィルタにおける濾布に採用した場合に、逆洗工程時の変形防止手段の構造の簡略化を図ることができる。
【0014】
本発明においては、バグフィルタを構成する濾布濾布としては、上述のようにスパンボンドによるものが好ましいが、濾布を構成する布帛として短繊維(ステープル繊維)を使用したニードルパンチ等による不織布を採用することも可能である。焼却炉の集塵装置用とには繊維素材としては耐熱性が要求され、基布層と、基布層の片面における有機耐熱繊維より成る濾過層とにより濾布を構成することができる。基布層に採用する無機繊維としてはガラス繊維やセラミック繊維やカーボン繊維や玄武岩繊維のような高温時の寸法安定性に優れたものが好ましく、また、これらの無機繊維を織製することにより織布(無機繊維と有機繊維の交撚及び交織も含む)とすることが高温時の形態安定性の観点からより好ましい。濾布を構成する有機耐熱性繊維としてはポリテトラフルオロエチレン(PTFE) 繊維やポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維やmアラミド繊維やポリイミド繊維やポリフルオロカーボン繊維を挙げることができる。これらの有機耐熱性繊維は無機繊維基布に植設一体化され、濾布層を形成せしめられる。植設一体化の技術としては周知のニードルパンチを採用することができる。即ち、有機耐熱繊維は所定ステープル長の有機耐熱繊維ウエブとされ、有機耐熱繊維ウエブは基布となる無機繊維織布上に積層されニードルパンチによってガラス繊維織布としての基布に交絡一体化せしめられる。
【0015】
濾布用の布帛として、短繊維のニードルパンチによる不織布を採用した場合、その低剛性ゆえに、プリーツ加工後の形状安定性が足りず、プリーツ形状の早期の潰れによるダストの補修効率の低下を見ることから特許文献1に記載のように、プリーツ加工前のポリイミド系樹脂等の熱硬化樹脂の含浸によるプリーツ形状の保持性を高める工程の実施が本発明の濾布用の布帛としては好ましい。また、特許文献2に記載のように、プリーツ形状の確保手段として、プリーツの山、谷の先端部分を縫製により一体化する技術によるプリーツ形状濾布も本発明の布帛として採用可能である。
【0016】
以上本発明の実施において使用されるプリーツ成形された濾布によるバグフィルタの構造について図面を参照しながら説明すると、図1は、規定縦寸法に裁断された布帛をプリーツ成形後に縦方向に縫製(ミシンがけ)して筒形状にした濾布10を示す。図2には濾布10の断面形状を模式的に示しす。図2において筒状濾布10の縦方向の接続部Aを拡大して示しており、筒状に成形された濾布10の長手方向端部に耐熱性繊維(セラミックやPTFE等)の織布や不織布より成る当布11が当てられ、筒状濾布10の長手方向に縫製(縫製ライン(ミシン目)を21にて示す)され、これにより濾布10の筒形状が形成される。
【0017】
図3及び図4はプリーツ形状の筒状濾布10の後述する口元布及び底布に対する接合部の端部処理を示す。まず、筒状濾布10の端部はプリーツが平坦に折り畳まれ、平坦に折り畳まれた筒状濾布10の端部は図4に示すように縫製(ミシンがけ)され、縫製ラインを13, 15にて示す。そのため、筒状濾布10に実質的に平坦化された筒状上端部10-1及び筒状下端部10-2が形成される。そして、図5に示すように、筒状濾布10の筒状上端部10-1には筒状の口元布12が被せられ縫製され、筒状濾布10に対する口元布12のミシン目(縫製)部分を17にて示す。また、筒状濾布10の下端部10-2には底布14の一部となる筒状連結布14´が被せられ縫製され、筒状濾布10に対する筒状連結布14´のミシン目部分を19にて示す。口元布12及び底布14, 14'は強度的には濾布10と同程度であればよいが濾布本体10と同程度の耐熱性は必要であり、PTFE等の耐熱繊維の織布や不織布(ニードルパンチしたもの又はプレーンなもの)により構成することができる。
【0018】
従来は、濾布の筒形状及びプリーツ形状の確保のため、濾布と別体に鋼若しくはステンレス鋼よりなる細線を籠構造に溶接等により組み上げて構成されるリテーナが使用されるが、本発明では、このような別体のリテーナの代わりに、濾布10の筒形状及びプリーツ形状の確保のため金属製の補強材は使用するが濾布の内部に縫製により一体化された金属を主体とする補強構造を具備させている。本発明の第1の実施形態におけるこの補強構造について説明すると、図6及び図7において、補強具は符号16にてその全体を示す。補強具16は、鋼材よりなる環状バンド20を被覆布22にて包囲させた補強部を縦方向に離間して適当数設けている。この実施形態では、環状バンド20を被覆布22にて包囲させてなる補強部は2個設けられるが、バグフィルタの全長が短いものでは1個で済ませることができるし、濾布が長大なものである場合は長さに応じた個数に増加させることができる。図7に示すように、環状補強バンド20は、濾布本体10のプリーツ部の内径全周に略等しい鋼材(SS及びSUS等)より成り、補強バンド20を全長に亘って外周を包囲するPTFEやガラス繊維等の耐熱繊維の織布よりなる被覆布22が設けられる。被覆布22の余白である対向縁部を縫製(ミシン目を23にて示す)することにより、補強バンド20は被覆布22による完全包囲構造となっている。図7では補強バンド20は縦に長い断面の矩形(縦10~15mm,横(厚み)0.2~0.4mm)、即ち、帯状としているが、図8に示すような濾布の円形断面のリング20´として構成し、被覆布22により完全に包み込むように縫製することができる。図6に示すように補強具16は、環状バンド20を被覆布22にて包囲させた補強部に加えて、長手方向に延びる帯状縦布24(被覆布22とで本発明の連結布を構成する)を具備しており、この実施形態では縦布24は円周方向に等間隔に3本配置される。縦布24は、被覆布22と同様にPTFEやガラス繊維等の耐熱繊維の織布を素材とし筒状濾布10に対する環状バンド20の実質的な一体的取付構造を確保するためのものであり、環状バンド20を包囲する被覆布22に縫着され、別途縫製でもよいし、補強バンド20を介しての被覆布22の逢着のためのミシン目23と共縫いされるようにしてもよい。鋼材より成る補強バンド20は、筒状濾布10の内周に沿って位置するため、逆洗操作時に内側より加わるパルス圧によって筒状濾布10が叩かれたときに、筒状濾布10を受け止め、その筒形状及びプリーツ形状を保持する。このとき、縦布24に幾分の外力が加わり得るが、これに十分な余裕で耐え得る強度を縦布24は有する必要があり、その幅寸法、さらには本数を設計する必要がある。
【0019】
図6のようにして構成された金属製環状バンド20、被覆布22及び縦布24よりなる補強具16は、図5では筒状濾布10の内部に挿入された状態(未縫着の状態)にて示されている。そして、縦布24は、口元布12及び底布14の筒状連結布14´部分に別途縫着することによりバグフィルタに連結しても良いが、この実施形態においては、上端側では、口元布12へのスナップリング28の縫着の際に共縫い又は別途縫製され、底布14と筒状連結布14´との縫着の際に共縫いされ又は別途縫製される。即ち、図9は、補強具16を組み込むことによりバグフィルタとして組み立てた状態が示され、口元側では、特許文献1と同様なワンタッチ式スナップリング式のバグハウス装着装置(本出願人会社である株式会社相模商会のイージースナップなる商品名(株式会社相模商会の登録商標)のもの)を仕込んだ形で構成されている。図9において、金属製スナップリング28は、弾性鋼材帯片にて形成される。図5の状態から折り返された状態において口元布12により包囲され、口元布12の外側の折り返し部を対向面に縫着することによりスナップリング28は口元布12に縫いこまれる(縫着ラインを29にて示す)。縫着ライン29による縫い付けの際に、補強具16における縦布24の上端が共縫い(縫着ライン17)することができる(別縫いでも良い)。他方、底布14については、外周が筒状に窄められ、底布14の別体部分である筒状連結布14´に縫い付けられ(縫着ラインを30にて示す)、この際補強具16の縦布3本の縦布24の下端を共縫いすることができる。これにより閉鎖したバグフィルタの下端が完成されると共に、金属製環状補強バンド20を被覆布22にて包囲縫着しかつ3本の縦布24に縫着してなる補強具16のバグフィルタを構成する濾布10、口布12及び底布14への一体化が行なわれる。
【0020】
このように構成されたバグフィルタのバグハウスへの装着は、この実施形態では、特許文献1に記載と同方式であり、弾性材を素材とする円環状のスナップリング28が外周に凹部28-1を有しており、スナップリング28の外周凹部28-1が、バグハウスに多数設置されるバグフィルタ取付孔の対応の内周縁にスナップ式に嵌合することによりバグフィルタの装着がワンタッチ式に行なわれことで便利である。しかしながら、バグフィルタのバグハウスに対するこのような取付方法に限らず、本発明のバグフィルタのバグハウスに対する取り付けは公知の他の如何なる手法、例えば、ねじ式の締結バンドによる取付方式にも採用可能であることはいうまでもない。
【0021】
以上説明の第1の実施形態において、補強具16は、バグフィルタの長手方向の2箇所において位置する金属製の補強バンド20を備えており、補強バンド20は被覆布22及び縦布24(図7)によってバグフィルタの上下端の口元布12及び底布14に縫製により強固に連結した構造となっている。そのため、補強バンド20は、バグフィルタの定期的なクリーニング(逆洗操作)のため内側からかかるパルス空気圧に対により叩かれても、濾布10は補強バンド20と当たることによりそれ以上に潰れてしまうことを防止することができ、プリーツ形状も維持することができる。このような、本発明の濾布と縫製により一体化した補強具16の構造は、従来のリテーナのような高価な別部品を不要とする。
【0022】
図10は別実施形態の補強具116を示しており、補強具116は鋼材よりなる補強バンド120を被覆布122にて包囲させた補強部を縦方向に離間して適当数設けている構成は第1の実施形態の補強具16と同様である。しかしながら、帯状縦布124が、鋼線125(本発明の金属製縦補強材)を包囲し、ミシンがけにより縫着されている、より剛性の向上を図った構造の点が相違する。鋼線125の太さとしては、通常の100~200mmといった口径の濾布の場合0.7~2mmといった外径とすることができる。鋼線125の包囲・縫着のためのミシンがけのラインを図10で127にて示す。図9に示すように補強具116は円周方向に等間隔に3本配置される。そして、図13に示すように鋼線125を包囲・縫着した包囲布122の余白部分が縦布124に縫着される。被覆布122に対する縦布124の縫着は別縫製でもよいが、図10の実施形態では、金属製の補強バンド120を包囲する被覆布122の縫製ライン123と共縫いしても良い。この実施形態においては、縦布124が鋼線125を縫着しかつ円周方向に複数配置されていることから、補強具116は縦方向にも剛性を持たせることができる有利性がある。図12は底布114を図11と同様に縫着することによりバグフィルタとして完成させた状態を示す。鋼線125を包囲・縫着後の縦布124の余白部分が上端では口元布112に縫製ライン129により共縫いされ、下端では底布114に縫製ライン130により共縫いされることにより、バグフィルタ内部での補強具116の組み付け、即ち、縫着構造が得られる。
【0023】
図13はこの発明の更に別実施形態の補強具216を示しており、この実施形態においては補強具116は金属製の補強バンド220を被覆布222にて包囲させてなる補強部から構成され、第1及び第2実施形態における連結体のような縦方向の連結部材を省略し、補強バンド220を包囲・縫着(ミシンがけラインを221にて示す)する被覆布222(この実施形態における本発明の連結布を構成する)を濾布のプリーツ部に直接縫着している構成を特徴とする。この実施形態では、補強バンド220を包囲縫着した被覆布222の余白部分を濾布のプリーツ部の谷部分に縫着している。被覆布222のプリーツ部に対する縫着部を223にて示し、縫着部223はプリーツ谷部分を2つ飛びで濾布に縫着している。この実施形態のような濾布10に対する補強具216の直接縫製のような簡易補強構造でも、濾布10の素材がスパンボンド布のように剛性が高い場合には逆洗操作に対して十分な形状保持機能を確保することができる。
【0024】
尚、本発明の実施形態において、ミシン目(逢着ライン)15, 13, 17, 19, 23, 29, 30, 123,127,221,223等は1本であったり複数本であったり混在しており、これは図示の簡明を意図したものであって、必要な縫製強度が得られる本数とすることは言うまでもない。また、被覆布22, 122, 124, 22は必ずしも全周若しくは全長で金属部(バンド20, 20, 120, 220若しくはリング又は鋼線125)を包囲させる必要はなく、所期の縫製強度が得られるものであれば、周方向若しくは長さ方向に部分的に包囲状態を欠いていても本願発明の範囲を逸脱するものではないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0025】
10…濾布
12…口布
16, 116, 216…補強具
20, 120, 220…金属製補強バンド
22, 122, 222…被覆布(本発明の連結布)
24, 124…縦布(本発明の連結布)
28…スナップリング
125…鋼線(本発明の金属製縦補強材)
図1
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図13