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  • 特許-パイロットロープの延線及び回収装置 図1
  • 特許-パイロットロープの延線及び回収装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】パイロットロープの延線及び回収装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20220329BHJP
   B64D 1/22 20060101ALI20220329BHJP
   B64F 3/00 20060101ALI20220329BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H02G1/02
B64D1/22
B64F3/00
B64C39/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018032885
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019149880
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】庄司 剛
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-081965(JP,A)
【文献】特開2008-236953(JP,A)
【文献】特開平07-143628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B64D 1/22
B64F 3/00
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上側に備えてパイロットロープを巻き取り及び送り出しする巻取・送出装置と、前記パイロットロープを接続した無人航空機と、該無人航空機と前記パイロットロープとの接続部に備えて前記パイロットロープの張力を測定する張力計と、前記無人航空機に備えて前記張力計の測定値を無線発信する送信と、前記地上側に備えて前記送信器から無線発信された前記張力計の測定値を受信して表示する受信器と、を備えたことを特徴とするパイロットロープの延線及び回収装置。
【請求項2】
地上側に備えてパイロットロープを巻き取り及び送り出しする巻取・送出装置と、前記パイロットロープを接続した無人航空機と、該無人航空機と前記パイロットロープとの接続部に備えて前記パイロットロープの張力を測定する張力計と、前記無人航空機に備えて前記張力計の測定値を無線発信する送信器と、前記地上側に備えて前記送信器から無線発信された前記張力計の測定値を受信して前記巻取・送出装置の運転を制御する制御装置を備えたことを特徴とするパイロットロープの延線及び回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道のワイヤーロ-プや送電線等を張架するとき、及び撤去するときに使用されるパイロットロープを延線及び回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
索道のワイヤーロープや送電線を線路中あるいは鉄塔に延線するときには、最初に直径の細いパイロットロープを延線し、これに接続されるワイヤーロ-プを順次太くしてゆき、最終的に実際に使用するワイヤーロ-プや電線を張架する。また、このように張架されたワイヤーロ-プや電線を回収するときには、上記と逆の手順にて回収する。すなわち、張架されている正規のワイヤーロ-プや電線をウインチやリールワインダで巻き取るとともに、順次細くなるようにワイヤーロ-プを接続してゆき、最終的にパイロットロープが接続されて回収される。このようにすることによりワイヤーロ-プや電線は、空中に張り渡されたままの状態で延線または回収することができる。
【0003】
索道の線路や送電線の張架軌道下は、山岳地帯の起伏の激しい地形であったり、河川や海を横断するといった人力による延線や回収が困難な場合があり、このような場合に従来は、有人ヘリコプターによるパイロットロープの延線や回収が主流であったが、この方法はチャーター料金が高価であったり、安全面や騒音などの環境面で問題があり、代替えの方法としてラジオコントロールのヘリコプターによる延線や回収も行われている。そして近時では、マルチコプタによって延線や回収を行う方法が提案され、また実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一般的に、このような無人航空機によってパイロットロープの延線や回収を行う場合には、パイロットロープの張力や垂下量が適正になるように、無人航空機の操縦者がウインチやリールワインダの張力計を確認したりパイロットロープの垂下量を目視で確認して、ウインチやリールワインダの回転速度や制動力を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-77047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無人航空機の進行にともなって無人航空機の牽引するパイロットロープの長さは変化するために、実際に無人航空機に作用する張力も変化し、ウインチやリールワインダで計測される張力値とは異なってしまう。例えば、ウインチやリールワインダからパイロットロープを繰り出して無人航空機が遠ざかって行く場合には、繰り出したパイロットロープの長さ分の荷重が張力として付加されるので、無人航空機に作用する張力は増加する。したがって、ウインチやリールワインダで計測される張力値よりも無人航空機に作用する張力は高いことになる。
【0007】
このように、ウインチやリールワインダの張力計によっては、無人航空機に作用する正確な張力は知ることが出来ず、これにより無人航空機の操縦者が操作を誤ってしまうと、無人航空機に過剰な張力が付加して墜落したり、張力が不足して地上側の障害物等にパイロットロープが接触してしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、無人航空機に作用する張力を適正に保持することのでき、無人飛行機を安全に飛行させることができるパイロットロープの延線及び回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、地上側に備えてパイロットロープを巻き取り及び送り出しする巻取・送出装置と、前記パイロットロープを接続した無人航空機と、該無人航空機と前記パイロットロープとの接続部に備えて前記パイロットロープの張力を測定する張力計と、前記無人航空機に備えて前記張力計の測定値を無線発信する送信と、前記地上側に備えて前記送信機から無線発信された前記張力計の測定値を受信して表示する受信器と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、地上側に備えてパイロットロープを巻き取り及び送り出しする巻取・送出装置と、前記パイロットロープを接続した無人航空機と、該無人航空機と前記パイロットロープとの接続部に備えて前記パイロットロープの張力を測定する張力計と、前記無人航空機に備えて前記張力計の測定値を無線発信する送信器と、前記地上側に備えて前記送信器から無線発信された前記張力計の測定値を受信して前記巻取・送出装置の運転を制御する制御装置を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無人航空機に作用するパイロットロープの張力に基づいてパイロットロープの延線および回収を行うことができるので、無人航空機を安全に飛行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】索道の線路を示す概略図
図2】延線及び回収装置の概略図
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、索道の線路を示す概略図である。山麓停留場50と山頂停留場51との間には、支索52およびえい索53が張架されており、この支索52およびえい索53は、停留場50,51間に立設された支柱54により支承されている。支索52には、搬器55が走行可能に懸垂されており、この搬器55をえい索53により牽引して両停留場50,51間で搬器55を運行する。
【0014】
これら支索52およびえい索53を両停留場50,51間に張架するときには、まず、ナイロンロープ等の直径の細いパイロットロープ56を両停留場50,51間に延線する。次いで、パイロットロープ56の下端部に直径の太いワイヤロープ57を連結し、山頂停留場51に備えたウインチ58によりパイロットロープ56を巻き取ってワイヤロープ57を延線する。そして、このように順次太いワイヤロープ57に引き替えてゆき、最終的に支索52およびえい索53が線路中に張り渡される。なお、張架された支索52およびえい索53を撤去するときは、概略上記と逆の手順により撤去される。
【0015】
図2は、支索52およびえい索53の延線時、または撤収時に用いられるパイロットロープの延線及び回収装置の概略図である。パイロットロープ56を延線する場合には、巻取・送出装置10に巻き込まれているパイロットロープ56を、無人航空機11によって牽引し、線路中へと延線する。
【0016】
巻取・送出装置10は、ウインチやリールワインダの機能を有しており、電動機、内燃機関、油圧機器等の駆動装置により回転駆動される巻取ドラム12を備えている。巻取ドラム12は、正転および逆転方向へ回転自在であり、また、回転速度を調整することが可能となっており、巻取ドラム12に巻き付けたパイロットロープ56を繰り出す速度および巻き取る速度を調整することができる。また、巻取・送出装置10には制動機を備えており、これにより巻取ドラム12に制動力を負荷することもできるようになっている。巻取・送出装置10の運転は、係員がレバーやペダルを操作することによる手動運転が可能であり、また、別途設けた制御装置13による自動運転も可能である。
【0017】
無人航空機11は、地上の操縦者14がコントローラー15を操作して無線により遠隔操縦する飛行体であって、シングルローターのヘリコプターや複数のローターを有するマルチコプターを用いることができるが、姿勢の安定性や操縦の容易性および騒音性を勘案すると、マルチコプターを用いるのが好ましい。無人航空機11には、カメラ16を備えるとともに、コントローラー15にはカメラ16から送信された映像を表示するディスプレイを備えており、操縦者14はカメラ16からの映像と実物の目視とにより無人航空機11の飛行状況を確認し、無人航空機11を遠隔操縦することができる。この無人航空機11の下部には、巻取・送出装置10の巻取ドラム12に巻き付けたパイロットロープ56の一端部が接続されている。
【0018】
無人航空機11とパイロットロープ56との接続部には、パイロットロープ56の張力を計測する張力計17を備えており、これによる計測値を無人航空機11に備えた送信機18へ電気信号により出力し、送信器18がこれを無線信号にて発信する。地上側には、送信器18からの無線信号を受信する受信器19を備えており、これにより張力計17の計測値、すなわちパイロットロープ56の張力が表示部20に表示されるようになっている。受信器19ないし表示部20は、独立した単体のものであってもよいが、無人航空機11を遠隔操作するコントローラー15に内蔵してもよく、また巻取・送出装置10に設けてもよい。
【0019】
以上の構成によりパイロットロープ56の延線時には、操縦者14が操作することにより無人航空機11がパイロットロープ56を牽引して線路中へ飛行するとともに、巻取・送出装置10を運転して巻取ドラム12からパイロットロープ56を送り出す。この作業に際して巻取・送出装置10の運転操作者は、受信器19の表示部20に表示されるパイロットロープ56の張力を監視し、張力が適正な値になるように巻取・送出装置10の運転速度や制動負荷等を手動運転にて調節する。以上はパイロットロープ56の延線時の手順であるが、撤収時には上記と逆の手順でパイロットロープ56を回収すればよい。
【0020】
以上の説明は、巻取・送出装置10を手動運転する実施形態で説明したが、以下のようにして巻取・送出装置10を自動運転することもできる。巻取・送出装置10の運転を制御する制御装置13には、巻取・送出装置10の巻取ドラム12の回転数や回転方向、巻取量、制動負荷等の情報が逐次入力されており、パイロットロープ56の送り出し又は巻取の速度が算出されている。また、制御装置13は、無人航空機11からの張力計17の計測値を受信し、この計測値が適正な範囲内にあるかどうかを判定する。そして、計測値が適正な範囲から外れた場合には、制御装置13は計測値が適正な範囲内になるように巻取・送出装置10の巻取ドラム12の回転数を早めたり又は遅めたり、あるいは制動負荷を調整して巻取・送出装置10の運転状態を制御し自動運転を行う。
【符号の説明】
【0021】
10 巻取・送出装置
11 無人航空機
12 巻取ドラム
13 制御装置
14 操縦者
15 コントローラー
16 カメラ
17 張力計
18 送信
19 受信器
20 表示部
50 山麓停留場
51 山頂停留場
52 支索
53 えい索
54 支柱
55 搬器
56 パイロットロープ
57 ワイヤロープ
58 ウイン
図1
図2