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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】切削タップ
(51)【国際特許分類】
   B23G 5/06 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
B23G5/06 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018115410
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019217577
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】596132709
【氏名又は名称】酒井精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 仁史
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154121(WO,A1)
【文献】特開平07-060546(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0059336(US,A1)
【文献】特開2012-061577(JP,A)
【文献】特開2005-279832(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0867252(EP,A2)
【文献】特開平3-149127(JP,A)
【文献】実開平1-148229(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒面(2)を外周にもつシャンク(3)と、前記シャンク(3)の軸方向前側に連なる完全山部(4)と、前記完全山部(4)の軸方向前側に連なる食付き部(5)とを有し、
前記完全山部(4)の外周には、軸方向に沿って外径が一定の完全形状の複数のねじ山(8)が形成され、
前記食付き部(5)の外周には、軸方向前方に向かって外径が次第に小さくなるように山の頂が斜めに取り除かれた不完全形状の複数のねじ山(7)が形成され、
前記完全山部(4)および前記食付き部(5)は、周方向に間隔をおいて形成された軸方向に延びる複数の溝(11)で複数のランド(9~9)に分割され、
前記各ランド(9~9)の、食付き部(5)のねじ山(7)のタップ回転方向前側の縁に、雌ねじの下穴に雌ねじを加工する切れ刃(12)が形成され
前記食付き部(5)のねじ山(7)の山数が13~40山の範囲で設定された、ナット製造用の切削タップにおいて、
少なくとも1つの前記ランドの、完全山部(4)のねじ山(8)の少なくともタップ回転方向後側の部分を除去することで、そのランドに隣接する前記溝(11)の容積を拡大させる溝容積拡大部(13)を形成し
記ランド(9~9)の数が偶数であり、
前記溝容積拡大部(13)は、すべての前記ランド(9~9)のうち1つおきの各ランド(9,9,9)の完全山部(4)のすべてのねじ山(8)をランド(9,9,9)の全幅にわたって除去するとともに、そのランド(9,9,9)の食付き部(5)のねじ山(7)のうち完全山部(4)に近い側の端部に位置するねじ山(7)も前記切れ刃(12)が除去されるようにランド(9,9,9)の全幅にわたって除去したものであることを特徴とするナット製造用の切削タップ。
【請求項2】
円筒面(2)を外周にもつシャンク(3)と、前記シャンク(3)の軸方向前側に連なる完全山部(4)と、前記完全山部(4)の軸方向前側に連なる食付き部(5)とを有し、
前記完全山部(4)の外周には、軸方向に沿って外径が一定の完全形状の複数のねじ山(8)が形成され、
前記食付き部(5)の外周には、軸方向前方に向かって外径が次第に小さくなるように山の頂が斜めに取り除かれた不完全形状の複数のねじ山(7)が形成され、
前記完全山部(4)および前記食付き部(5)は、周方向に間隔をおいて形成された軸方向に延びる複数の溝(11)で複数のランド(9~9 )に分割され、
前記各ランド(9~9 )の、食付き部(5)のねじ山(7)のタップ回転方向前側の縁に、雌ねじの下穴に雌ねじを加工する切れ刃(12)が形成され
前記食付き部(5)のねじ山(7)の山数が13~40山の範囲で設定された、ナット製造用の切削タップにおいて、
少なくとも1つの前記ランドの、完全山部(4)のねじ山(8)の少なくともタップ回転方向後側の部分を除去することで、そのランドに隣接する前記溝(11)の容積を拡大させる溝容積拡大部(13)を形成し
記溝容積拡大部(13)は、すべての前記ランド(9~9)の完全山部(4)のすべてのねじ山(8)のタップ回転方向後側の部分を除去するとともに、すべての前記ランド(9~9)の食付き部(5)のねじ山(7)のうち完全山部(4)に近い側の端部に位置するねじ山(7)もタップ回転方向後側の部分を除去したものであることを特徴とするナット製造用の切削タップ。
【請求項3】
前記溝(11)の数が5本以上である請求項1または2に記載のナット製造用の切削タップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、切削により雌ねじを加工する切削タップに関する。
【背景技術】
【0002】
雌ねじを形成するタップとして、一般に切削タップが使用される。切削タップとして、例えば、ナットの製造に用いられるナットタップが知られている(例えば、特許文献1、2)。図7に、ナットタップの一例を示す。
【0003】
図7に示すナットタップ31(以下、単に「タップ31」という)は、円筒面32を外周にもつシャンク33と、シャンク33の軸方向前側に連なる完全山部34と、完全山部34の軸方向前側に連なる食付き部35とを有する。完全山部34の外周には、軸方向に沿って外径が一定の完全形状の複数のねじ山36が形成され、食付き部35の外周には、軸方向前方に向かって外径が次第に小さくなるように山の頂が斜めに取り除かれた不完全形状の複数のねじ山37が形成されている。
【0004】
完全山部34および食付き部35は、周方向に間隔をおいて形成された軸方向に延びる複数の溝38で複数のランド39に分割されている。各ランド39の食付き部35のねじ山37のタップ回転方向前側の縁には、ナットブランクNの内周に雌ねじを加工する切れ刃40が形成されている。ナットの製造に使用するタップ31は、一般的なハンドタップよりも長い食付き部35を有するように形成され、通常、ハンドタップでは、食付き部のねじ山の山数が9山以下に設定されるのに対し、タップ31では、食付き部35のねじ山37の山数が13山以上に設定される。
【0005】
このタップ31でナットを製造するにあたっては、タップ31を定位置で一定方向に回転させ、そのタップ31の軸方向前方からタップ31にナットブランクNを送り込む。そして、そのナットブランクNの回転を規制しながら、ナットブランクNをタップ31の食付き部35から完全山部34に向かって軸方向後方に移動させる。このとき、タップ31の食付き部35の切れ刃40は、ナットブランクNの内周を切削して雌ねじを加工する。また、タップ31の完全山部34のねじ山36は、食付き部35で加工されたナットブランクNの内周の雌ねじに嵌合することで、タップ31の1回転あたりのナットブランクNの軸方向の進み量を安定させる。そして、ナットブランクNが、食付き部35および完全山部34を完全に通過するとねじ立てされたナットになり、そのナットが、シャンク33の外周の円筒面32に嵌合した状態となる。
【0006】
ここで、ナットブランクNの内周にタップ31で雌ねじを加工するとき、ナットブランクNの内周から切屑41が生じる。この切屑41は、ナットブランクNの内周とタップ31の溝38の内面とで囲まれた空間から、主にナットブランクNの進行方向の後側(タップ31の軸方向前側)に排出される。そして、その排出された切屑41は、タップ31の回転に伴う遠心力等によって速やかに落下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-202663号公報
【文献】特開平10-80825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、自動車部品等の電子化が進む中、タップ31の溝38の数(溝数)が増える傾向にある。
【0009】
すなわち、従来、タップ31の溝数は、3本程度とすることが一般的であった。溝数が3本程度と少ない場合、1本1本の溝38の容積が大きいので、切屑41が詰まりにくいという利点がある。
【0010】
しかしながら、溝数が3本程度と少ない場合、切屑41の形状がカールせずに長く延びたものとなりやすく、その結果、製品としてのナットに切屑41が紛れ込んだり、ナットの内周に切屑41が付着して残ったりしやすいという問題があった。製品としてのナットに切屑41が混入すると、そのナットを自動車等の分野で使用するときに、切屑41が電子部品の中に入り込み、電子回路の短絡を引き起こすおそれがある。
【0011】
そこで、近年、自動車等の分野に使用されるナットを製造するに際しては、製品としてのナットに切屑41が混入するのを防止するため、5本~8本といった溝数の多い溝38をもつタップ31が採用される傾向にある。溝数を増やすと、切屑41がカールして細分化しやすくなるため、切屑41がナットから円滑に落ち、ナットに切屑41が残りにくくなる。
【0012】
ところが、5本~8本といった溝数の多いタップ31を使用して多数のナットブランクNを加工すると、ナットブランクNの雌ねじとタップ31との間への切屑41の噛み込みによってタップ31の回転抵抗が過大となり、トルクリミッタが作動してねじ立て盤が停止したり、ナットブランクNの外周を把持するナットチャックでナットブランクNの回転を抑えきれずにナットチャックに対してナットブランクNが回転してしまったり、最悪の場合、タップ31が折損したりすることがあった。
【0013】
図12に、ナットブランクNの雌ねじとタップ31との間への切屑41の噛み込みによってタップ31が折損するトラブルが実際に生じたときに、ナットブランクNの内周を撮影した写真を示す。この写真は、ナットブランクNの雌ねじとタップ31との間への切屑41の噛み込みによってタップ31が折損したときに、ナットブランクNを切断してタップ31から取り外し、その切断されたナットブランクNの内周を撮影したものである。
【0014】
図12に示すように、ナットブランクNの雌ねじのねじ山42に、切屑41が食い込んでいる。また、切屑41の食い込んでいる位置に対してナットブランクNの進行方向の後側(図の右側)のねじ山42は、光沢をもつ切削面となっているのに対し、切屑41の食い込んでいる位置に対してナットブランクNの進行方向の前側(図の左側)のねじ山42は、光沢をもたない破断面となっている。この破断面は、切屑41がナットブランクNの雌ねじのねじ山42に干渉することで、ナットブランクNの雌ねじのねじ山42の頂部がむしり取られた部分である。
【0015】
上述のようなナットブランクNの雌ねじとタップ31との間への切屑41の噛み込みが生じる原因は、以下のように考えられる。
【0016】
図7に示すように、ナットブランクNの内周をタップ31で切削すると、ナットブランクNの内周から切屑41が生じる。ここで、タップ31の食付き部35の完全山部34から遠い側の部分で、ナットブランクNを切削することにより生じる切屑41は、切屑41の幅が比較的大きいため、強くカールして小さくまとまる傾向がある。これに対し、タップ31の食付き部35の完全山部34に近い側の部分で、ナットブランクNを切削することにより生じる切屑41(すなわち、ナットのねじ溝の底部を加工するときに生じる切屑41)は、切屑41の幅が細いため、カールせずに細長く延びたヒゲ状となる傾向がある。
【0017】
そのため、タップ31の食付き部35の完全山部34から遠い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑41(強くカールして小さくまとまった切屑41)は、ナットブランクNの内周とタップ31の溝38の内面とで囲まれる空間から、ナットブランクNの進行方向の後側に円滑に排出されやすい。これに対し、タップ31の食付き部35の完全山部34に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑41(カールせずに細長く延びたヒゲ状の切屑41)は、ナットブランクNの内周とタップ31の溝38の内面とで囲まれた空間から排出されにくい。そのため、タップ31の食付き部35の完全山部34に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑41は、ナットブランクNの内周とタップ31の溝38の内面とで囲まれた空間から、ナットブランクNの進行方向の後側だけでなく、ナットブランクNの進行方向の前側にも溢れ出ることがある。
【0018】
そして、図8に示すように、ナットブランクNの内周とタップ31の溝38の内面とで囲まれた空間から、ナットブランクNの進行方向の前側(タップ31の軸方向後側)に切屑41が溢れ出ると、その切屑41が、ナットブランクNの進行方向の前側の穴縁の面取り部43とタップ31の外周のねじ山36との間の隙間に入り込むおそれが生じる。
【0019】
ここで、ナットブランクNの穴縁の面取り部43は、リード角をもたない円すい状であるのに対し、タップ31の外周のねじ山36は、リード角をもつ螺旋状である。そのため、ナットブランクNの進行方向の前側の穴縁の面取り部43と、タップ31の外周のねじ山36との間の隙間は、タップ31の回転方向に沿って次第に狭くなるくさび状となっている。
【0020】
そのため、切屑41が、ナットブランクNの進行方向の前側の穴縁の面取り部43とタップ31の外周のねじ山36との間の隙間に入ると、図9に示すように、回転するタップ31の外周をナットブランクNが軸方向移動したときに、タップ31の外周のねじ溝44の底部とナットブランクNの雌ねじのねじ山42の頂部との間の微小な隙間45に切屑41が押し込まれて圧縮される。
【0021】
さらに、回転するタップ31の外周をナットブランクNが軸方向移動すると、図10図11に示すように、タップ31の外周のねじ溝44の底部に圧縮された切屑41が、ナットブランクNの雌ねじのねじ山42の頂部に干渉することで、そのねじ山42の頂部がむしり取られ、このときむしり取られたナットブランクNの材料によって切屑41がさらに大きくなり、その大きくなった切屑41によって、ナットブランクNの雌ねじのねじ山42の頂部がより大きくむしり取られる、という悪循環が生じる。
【0022】
その結果、タップ31の回転抵抗が過大となり、タップ31が折損する。図12には、ナットブランクNの雌ねじのねじ山42の頂部がむしり取られることで大きくなった切屑41と、切屑41との干渉によって頂部がむしり取られたナットブランクNの雌ねじのねじ山42(切屑41よりも左側に位置する光沢のないねじ山42)とが示されている。
【0023】
また、ナットブランクNとタップ31との間への切屑41の噛み込みがありながら、トルクリミッタが作動してねじ立て盤が停止したり、タップ31が折損したりせずに雌ねじを加工することができた場合でも、その切屑41によってナットブランクNの雌ねじのねじ山42の頂部がむしり取られるので、ナットの品質は低下するという問題がある。
【0024】
この発明が解決しようとする課題は、雌ねじとタップの間への切屑の噛み込みが生じにくい切削タップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成の切削タップを提供する。
円筒面を外周にもつシャンクと、前記シャンクの軸方向前側に連なる完全山部と、前記完全山部の軸方向前側に連なる食付き部とを有し、
前記完全山部の外周には、軸方向に沿って外径が一定の完全形状の複数のねじ山が形成され、
前記食付き部の外周には、軸方向前方に向かって外径が次第に小さくなるように山の頂が斜めに取り除かれた不完全形状の複数のねじ山が形成され、
前記完全山部および前記食付き部は、周方向に間隔をおいて形成された軸方向に延びる複数の溝で複数のランドに分割され、
前記各ランドの、食付き部のねじ山のタップ回転方向前側の縁に、雌ねじの下穴に雌ねじを加工する切れ刃が形成されている切削タップにおいて、
少なくとも1つの前記ランドの、完全山部のねじ山の少なくともタップ回転方向後側の部分を除去することで、そのランドに隣接する前記溝の容積を拡大させる溝容積拡大部を形成したことを特徴とする切削タップ。
【0026】
このようにすると、溝容積拡大部を形成することで除去されたランドの容積の分、そのランドに隣接する溝の容積が拡大し、雌ねじの下穴の内周とタップの溝の内面との間の空間の容積が大きくなる。そのため、タップの食付き部の完全山部に近い側の部分で雌ねじの下穴の内周を切削することにより生じる切屑が、雌ねじの下穴の内周とタップの溝の内面とで囲まれた空間から溢れ出るのを抑制することができ、雌ねじとタップの間への切屑の噛み込みを効果的に防止することが可能となる。
【0027】
前記ランドの数が偶数である場合、前記溝容積拡大部としては、すべての前記ランドのうち1つおきの各ランドの完全山部のねじ山を、ランドの全幅にわたって除去したものを採用すると好ましい。
【0028】
このようにすると、ランドの全幅にわたって完全山部のねじ山を除去しているので、そのランドのタップ回転方向前側の溝とタップ回転方向後側の溝とが溝容積拡大部を介して連通し、ひとつながりの空間を形成する。そのため、タップの食付き部の完全山部に近い側の部分で雌ねじの下穴の内周を切削することにより生じる切屑(カールせずに細長く延びたヒゲ状の切屑)の排出性に優れ、タップの食付き部の完全山部に近い側の部分で雌ねじの下穴の内周を切削することにより生じる切屑が、雌ねじの下穴の内周とタップの溝の内面とで囲まれた空間から溢れ出るのを効果的に抑制することができる。また、ねじ山を除去するランドが、すべてのランドのうち1つおきの各ランドなので、残りの各ランドの完全山部のねじ山で雌ねじを確実に案内することが可能である。
【0029】
前記ランドの数が偶数である場合、前記溝容積拡大部としては、すべての前記ランドのうち1つおきの各ランドの完全山部のすべてのねじ山をランドの全幅にわたって除去するとともに、そのランドの食付き部のねじ山のうち完全山部に近い側の端部に位置するねじ山もランドの全幅にわたって除去したものを採用すると好ましい。
【0030】
このようにすると、ランドの全幅にわたって完全山部のねじ山を除去しているので、そのランドのタップ回転方向前側の溝とタップ回転方向後側の溝とが溝容積拡大部を介して連通し、ひとつながりの空間を形成する。しかも、完全山部のすべてのねじ山だけでなく、食付き部のねじ山のうち完全山部に近い側の端部に位置するねじ山も併せて除去しているので、ねじ山を除去することにより生じる空間が大きい。そのため、タップの食付き部の完全山部に近い側の部分で雌ねじの下穴の内周を切削することにより生じる切屑(カールせずに細長く延びたヒゲ状の切屑)の排出性に優れ、タップの食付き部の完全山部に近い側の部分で雌ねじの下穴の内周を切削することにより生じる切屑が、雌ねじの下穴の内周とタップの溝の内面とで囲まれた空間から溢れ出るのを効果的に抑制することができる。また、ねじ山を除去するランドが、すべてのランドのうち1つおきの各ランドなので、残りの各ランドの完全山部のねじ山で雌ねじを確実に案内することが可能である。また、1つおきの各ランドにおいて、食付き部の完全山部に近い側の端部に位置するねじ山を除去しているので、食付き部の完全山部に近い側の端部で生じる切屑が、比較的大きい厚みをもつものとなる。そのため、食付き部の完全山部に近い側の端部で生じる切屑がカールせずに細長く延びたヒゲ状となるのを抑制することができる。
【0031】
前記ランドの数が奇数または偶数である場合、前記溝容積拡大部としては、すべての前記ランドの完全山部のねじ山のタップ回転方向後側の部分を除去したものを採用すると好ましい。
【0032】
このようにすると、ランドのタップ回転方向後側の部分を除去し、ランドのタップ回転方向前側の部分は、除去せずに残しているので、その除去せずに残した部分で雌ねじを確実に案内することが可能である。
【0033】
前記ランドの数が奇数または偶数である場合、前記溝容積拡大部としては、すべての前記ランドの完全山部のすべてのねじ山のタップ回転方向後側の部分を除去するとともに、すべての前記ランドの食付き部のねじ山のうち完全山部に近い側の端部に位置するねじ山もタップ回転方向後側の部分を除去したものを採用すると好ましい。
【0034】
このようにすると、完全山部のすべてのねじ山だけでなく、食付き部のねじ山のうち完全山部に近い側の端部に位置するねじ山も併せて除去しているので、ねじ山を除去することにより生じる空間が大きい。そのため、タップの食付き部の完全山部に近い側の部分で雌ねじの下穴の内周を切削することにより生じる切屑(カールせずに細長く延びたヒゲ状の切屑)の排出性に優れる。また、ランドのタップ回転方向後側の部分を除去し、ランドのタップ回転方向前側の部分は、除去せずに残しているので、その除去せずに残した部分で雌ねじを確実に案内することが可能である。
【0035】
この発明は、前記溝の数が5本以上である切削タップに適用すると、特に効果的に上記課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0036】
この発明の切削タップは、溝容積拡大部を形成することで除去されたランドの容積の分、そのランドに隣接する溝の容積が拡大し、雌ねじの下穴の内周とタップの溝の内面との間の空間の容積が大きくなっている。そのため、タップの食付き部の完全山部に近い側の部分で雌ねじの下穴の内周を切削することにより生じる切屑が、雌ねじの下穴の内周とタップの溝の内面とで囲まれた空間から溢れ出るのを抑制することができ、雌ねじとタップの間への切屑の噛み込みを効果的に防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】この発明の第1実施形態の切削タップを示す図
図2図1のII-II線に沿った断面図
図3図2のIII-III線に沿った断面図
図4図2のIV-IV線に沿った断面図
図5】この発明の第2実施形態の切削タップを図2に対応して示す図
図6図5のVI-VI線に沿った断面図
図7】従来の切削タップを示す図
図8図7のナットブランクの進行方向の前側の穴縁に設けられた面取り部の近傍を示す拡大断面図
図9図8に示す切削タップの回転によりナットブランクが切削タップの外周を軸方向に進行し、切屑が圧縮された状態を示す図
図10図9に示すナットブランクが切削タップの外周をさらに軸方向に進行し、このときナットブランクと切削タップの間に噛み込んだ切屑によって、ナットブランクの雌ねじのねじ山の頂部がむしり取られた状態を示す図
図11図10に示すナットブランクの断面図
図12】ナットブランクと切削タップの間への切屑の噛み込みによって切削タップが折損するトラブルが生じたときに、そのナットブランクを切断してタップから取り外し、その切断されたナットブランクの内周を撮影した写真
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1~4に、この発明の第1実施形態の切削タップ1(以下、単に「タップ1」という)を示す。このタップ1は、ねじ立て盤によるナットの製造に用いられるナットタップであり、円筒面2を外周にもつシャンク3と、シャンク3の軸方向前側に連なる完全山部4と、完全山部4の軸方向前側に連なる食付き部5と、食付き部5の軸方向前側に連なる案内部6とを有する。
【0039】
図3に示すように、食付き部5の外周には、軸方向前方に向かって外径が次第に小さくなるように山の頂が斜めに取り除かれた不完全形状の複数のねじ山7が形成されている。食付き部5のねじ山7は、軸方向に沿ってねじ山の有効径が変化せず一定の平行ねじである。食付き部5のねじ山7の山数は、13~40山の範囲で設定される。
【0040】
完全山部4の外周には、軸方向に沿って外径が一定の完全形状の複数のねじ山8が形成されている。完全山部4のねじ山8は、軸方向に沿ってねじ山の有効径が変化せず一定の平行ねじである。完全山部4のねじ山8の有効径は、食付き部5のねじ山7の有効径と等しい。
【0041】
案内部6の外周には、円筒状のガイド面10が形成されている。ガイド面10は、ナットブランクNの内周に嵌合することでナットブランクNの傾きを矯正し、食付き部5がナットブランクNに食い付くときのナットブランクNの姿勢を安定させる。
【0042】
図1図2に示すように、完全山部4、食付き部5、案内部6は、周方向に間隔をおいて形成された軸方向に延びる複数の溝11によって、複数のランド9~9に分割されている。溝11は、タップ1の軸方向前端から案内部6と食付き部5と完全山部4とを順に通ってシャンク3に至っている。各ランド9~9の、食付き部5のねじ山7のタップ回転方向前側の縁に、ナットブランクNの内周に雌ねじを加工する切れ刃12が形成されている。切れ刃12は、食付き部5のねじ山7の表面と、その食付き部5のタップ回転方向前側に隣接する溝11の内面とが交差する稜線である。溝11は、食付き部5の各ねじ山7を周方向に分断すると同時に、完全山部4の各ねじ山8も周方向に分断している。
【0043】
図2に示すように、複数の溝11の周方向間隔は一定間隔とされている。ランド9~9は、周方向に隣り合う溝11の間の部分である。各ランド9~9と溝11は、周方向に交互に隣接して配置されている。ランド9~9の数は、溝11の数と同数である。この実施形態では、ランド9~9の数は6つ(偶数)であり、溝11の数も6本(偶数)である。軸方向に延びる溝11としては、タップ1の軸線と平行に延びるストレート溝、またはタップ1の軸線とねじれの位置にある直線に沿って延びる傾斜溝、タップ1の軸線を中心とする螺旋状のスパイラル溝を採用することができる。
【0044】
溝11は、軸方向に直角な断面が凹曲線状となるように形成されている。具体的には、タップ1を軸方向に直角な面に沿って破断したときの溝11の断面が、すべて凹曲線、または凹曲線とその凹曲線に滑らかに接続する直線となるように形成されている。
【0045】
図1に示すシャンク3の外周の円筒面2は、完全山部4からシャンク3に移動したナットの内周に嵌合する面である。円筒面2の外径は、ナットの内周の雌ねじ内径の最小寸法(具体的には、メートルねじでは、JISB0209-2:2001に規定されるめねじ内径の最小の許容限界寸法、ユニファイ並目ねじでは、JISB0210-1973に規定されるめねじ内径の最小の許容限界寸法、ユニファイ細目ねじでは、JISB0212-1973に規定されるめねじ内径の最小の許容限界寸法、等)よりも小径とされ、具体的には、ナットの内周の雌ねじ内径の最小寸法の92~98%程度の大きさに設定されている。
【0046】
図2に示すように、すべてのランド9~9のうち1つおきの各ランド9,9,9には、完全山部4のねじ山8の少なくともタップ回転方向後側の部分(この実施形態ではねじ山8のタップ回転方向前端から後端までの全体)を除去することで、そのランド9,9,9に隣接する溝11の容積を拡大させる溝容積拡大部13が形成されている。
【0047】
図1図4に示すように、溝容積拡大部13は、ランド9,9,9の完全山部4のすべてのねじ山8をランド9,9,9の全幅にわたって除去するとともに、このランド9,9,9の食付き部5のねじ山7のうち完全山部4に近い側の端部に位置するねじ山7も、ランド9,9,9の全幅にわたって除去した部分であり、この溝容積拡大部13を設けることで、ランド9,9,9に対してタップ回転方向前側の溝11の容積とタップ回転方向後側の溝11の容積とがそれぞれ拡大されている。
【0048】
溝容積拡大部13は、ランド9,9,9の完全山部4を、研削盤の回転砥石で削り取ることで形成されている。そのため、図4に示すように、溝容積拡大部13は、軸方向に沿った断面において、凹円弧形状、または凹円弧とその凹円弧に滑らかに接続する直線とを組み合わせた形状を有する。
【0049】
このタップ1でナットを製造するにあたっては、図1に示すタップ1を定位置で一定方向に回転させ、そのタップ1の軸方向前方(図の右側)からタップ1にナットブランクNを送り込む。そして、そのナットブランクNの回転を規制しながら、ナットブランクNをタップ1の食付き部5から完全山部4に向かって軸方向後方に移動させる。このとき、タップ1の食付き部5の切れ刃12は、ナットブランクNの内周を切削して雌ねじを加工する。また、タップ1の完全山部4のねじ山8は、食付き部5で加工されたナットブランクNの内周の雌ねじに嵌合することで、タップ1の1回転あたりのナットブランクNの軸方向の進み量を安定させる。そして、ナットブランクNが、食付き部5および完全山部4を完全に通過するとナットになり、そのナットが、シャンク3の外周の円筒面2に嵌合した状態となる。
【0050】
ところで、ナットブランクNの内周をタップ1で切削すると、ナットブランクNの内周から切屑が生じる。この切屑は、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面とで囲まれた空間から、主にナットブランクNの進行方向の後側(タップ1の軸方向前側)に排出される。ここで、タップ1の食付き部5の完全山部4から遠い側の部分で、ナットブランクNを切削することにより生じる切屑は、切屑の幅が比較的大きいため、強くカールして小さくまとまる傾向がある。これに対し、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分で、ナットブランクNを切削することにより生じる切屑(すなわち、ナットのねじ溝の底部を加工するときに生じる切屑)は、切屑の幅が細いため、カールせずに細長く延びたヒゲ状となる傾向がある。
【0051】
そのため、タップ1の食付き部5の完全山部4から遠い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑(強くカールして小さくまとまった切屑)は、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面とで囲まれる空間から、ナットブランクNの進行方向の後側に円滑に排出されやすい。これに対し、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑(カールせずに細長く延びたヒゲ状の切屑)は、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面とで囲まれた空間から排出されにくい。そのため、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑は、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面とで囲まれた空間から、ナットブランクNの進行方向の後側(図の右側)だけでなく、ナットブランクNの進行方向の前側(図の左側)にも溢れ出ることがある。
【0052】
この点に関し、この実施形態のタップ1は、溝容積拡大部13を形成することで除去されたランド9,9,9の容積の分、そのランド9,9,9に隣接する溝11の容積が拡大し、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面との間の空間の容積が大きくなっている。そのため、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑が、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面とで囲まれた空間から、ナットブランクNの進行方向の前側に溢れ出るのを抑制することができ、ナットブランクNとタップ1の間への切屑の噛み込みを効果的に防止することが可能である。
【0053】
また、このタップ1は、図2に示すように、ランド9,9,9の全幅にわたって完全山部4のねじ山8を除去しているので、そのランド9,9,9のタップ回転方向前側の溝11とタップ回転方向後側の溝11とが溝容積拡大部13を介して連通し、ひとつながりの空間を形成する。そのため、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑(カールせずに細長く延びたヒゲ状の切屑)の排出性に優れ、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑が、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面とで囲まれた空間からナットブランクNの進行方向の前側に溢れ出るのを効果的に抑制することができる。また、ねじ山8を除去するランド9,9,9が、すべてのランド9~9のうち1つおきの各ランド9,9,9なので、残りの各ランド9,9,9の完全山部4のねじ山8でナットブランクNの内周の雌ねじを確実に案内することが可能である。
【0054】
また、このタップ1は、1つおきの各ランド9,9,9において、食付き部5の完全山部4に近い側の端部に位置するねじ山7を除去しているので、食付き部5の完全山部4に近い側の端部で生じる切屑が、比較的大きい厚みをもつものとなる。そのため、食付き部5の完全山部4に近い側の端部で生じる切屑がカールせずに細長く延びたヒゲ状となるのを抑制することができ、ナットブランクNとタップ1の間への切屑の噛み込みを効果的に防止することが可能である。
【0055】
また、このタップ1は、完全山部4と食付き部5の全長にわたって溝11の容積を大きくするのではなく、完全山部4とこれに連続する食付き部5の一部のみにおいて溝11の容積を拡大するように溝容積拡大部13を設けている。そのため、食付き部5では、溝11の容積が比較的小さいので、ナットブランクNの内周から生じる切屑が小さくカールして細分化され、排出性の高い切屑が得られるとともに、切屑が生じない完全山部4では、溝容積拡大部13がある分、溝11の容積が拡大されているので、食付き部5で生じた切屑が、溝11から完全山部4の側に溢れ出るのを効果的に防止することが可能となっている。
【0056】
上記実施形態では、溝容積拡大部13として、ランド9,9,9の完全山部4のすべてのねじ山8をランド9,9,9の全幅にわたって除去するとともに、そのランド9,9,9の食付き部5のねじ山7のうち完全山部4に近い側の端部に位置するねじ山7もランド9,9,9の全幅にわたって除去したものを例に挙げて説明したが、ランド9,9,9の完全山部4のねじ山8のうち一部のねじ山8(具体的には、シャンク3の側の端のねじ山8から連続する複数のねじ山8)のみを除去した溝容積拡大部13を採用してもよい。このようにすると、食付き部5のねじ山7の耐久性を高めることができる。
【0057】
上記実施形態では、食付き部5の軸方向前側に案内部6を有するタップ1を例に挙げて説明したが、この発明は、案内部6の無いタップ1に適用することも可能である。
【0058】
図5図6に、この発明の第2実施形態の切削タップ1を示す。第1実施形態に対応する部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
図5に示すように、ランド9~9の数は5つ(奇数)であり、溝11の数も5本(奇数)である。すべてのランド9~9には、完全山部4のねじ山8のタップ回転方向後側の部分を除去することで、そのランド9~9に隣接する溝11の容積を拡大させる溝容積拡大部13が形成されている。
【0060】
図5図6に示すように、溝容積拡大部13は、すべてのランド9~9の完全山部4のすべてのねじ山8のタップ回転方向後側の部分を除去するとともに、すべてのランド9~9の食付き部5のねじ山7のうち完全山部4に近い側の端部に位置するねじ山7もタップ回転方向後側の部分を除去したものであり、この溝容積拡大部13を設けることで、各ランド9~9に対してタップ回転方向後側の溝11の容積が拡大されている。
【0061】
このタップ1は、溝容積拡大部13を形成することで除去されたランド9~9の容積の分、そのランド9~9に隣接する溝11の容積が拡大し、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面との間の空間の容積が大きくなっている。そのため、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑が、ナットブランクNの内周とタップ1の溝11の内面とで囲まれた空間から、ナットブランクNの進行方向の前側に溢れ出るのを抑制することができ、ナットブランクNとタップ1の間への切屑の噛み込みを効果的に防止することが可能である。
【0062】
また、このタップ1は、図6に示すように、完全山部4のすべてのねじ山8だけでなく、食付き部5のねじ山7のうち完全山部4に近い側の端部に位置するねじ山7も併せて除去しているので、ねじ山8を除去することにより生じる空間が大きい。そのため、タップ1の食付き部5の完全山部4に近い側の部分でナットブランクNを切削することにより生じる切屑(カールせずに細長く延びたヒゲ状の切屑)の排出性に優れる。また、ランド9~9のタップ回転方向後側の部分を除去し、ランド9~9のタップ回転方向前側の部分は、除去せずに残しているので、その除去せずに残した部分でナットブランクNの内周の雌ねじを確実に案内することが可能である。
【0063】
また、このタップ1は、完全山部4と食付き部5の全長にわたって溝11の容積を大きくするのではなく、完全山部4とこれに連続する食付き部5の一部のみにおいて溝11の容積を拡大するように溝容積拡大部13を設けている。そのため、食付き部5では、溝11の容積が比較的小さいので、ナットブランクNの内周から生じる切屑が小さくカールして細分化され、排出性の高い切屑が得られるとともに、切屑が生じない完全山部4では、溝容積拡大部13がある分、溝11の容積が拡大されているので、食付き部5で生じた切屑が、溝11から完全山部4の側に溢れ出るのを効果的に防止することが可能となっている。
【0064】
第2実施形態では、ランド9~9の数が奇数の切削タップ1に溝容積拡大部13を設けた例を説明したが、この第2実施形態の溝容積拡大部13は、ランドの数が偶数の切削タップ1に設けることも可能である。
【0065】
上記各実施形態では、切削タップ1として、タップを逆転させることなく一定方向に回転させ続けて使用するナットタップを例に挙げて説明したが、この発明は、ハンドタップ(タップを回転させて雌ねじを加工した後、タップを逆転させて雌ねじから抜き取るもの)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 切削タップ
2 円筒面
3 シャンク
4 完全山部
5 食付き部
7 ねじ山
8 ねじ山
~9 ランド
11 溝
12 切れ刃
13 溝容積拡大部
N ナットブランク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12