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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】腸管内器具固定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/11 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
A61B17/11
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020515640
(86)(22)【出願日】2017-05-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 KR2017005421
(87)【国際公開番号】W WO2018216830
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】519418293
【氏名又は名称】ジェイエスアールメディカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ヒョン
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0114466(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0239195(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0009936(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1649351(KR,B1)
【文献】特開2011-110259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0097584(US,A1)
【文献】国際公開第2013/185484(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11
A61F 2/04- 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の臓器の切除手術後、吻合部位保護のために腸管内に設けられる器具を腸管の外部で取り囲んで固定するための固定装置であって、
所定の厚さ及び幅を有する帯状の胴体を含み、前記胴体は生体吸収性物質又は生体非吸性物質で、生体適合性を有する材料から構成され、胴体の長手方向に10%未満の伸び率を有し、
前記固定装置の胴体の幅方向の両縁端は、腸管の外表面に接触したとき、腸管の外表面に傷を付けないように柔軟な形態に処理され、ラウンド形凹凸部からなることを特徴とする、腸管内器具固定装置。
【請求項2】
管状の臓器の切除手術後、吻合部位保護のために腸管内に設けられる器具を腸管の外部で取り囲んで固定するための固定装置であって、
所定の厚さ及び幅を有する帯状の胴体を含み、前記胴体は生体吸収性物質又は生体非吸性物質で、生体適合性を有する材料から構成され、胴体の長手方向に10%未満の伸び率を有し、
前記固定装置の胴体の幅方向の両縁端は、腸管の外表面に接触したとき、腸管の外表面に傷を付けないように柔軟な形態に処理され、胴体の中心部より相対的に緩く製織された形態を有することを特徴とする、腸管内器具固定装置。
【請求項3】
管状の臓器の切除手術後、吻合部位保護のために腸管内に設けられる器具を腸管の外部で取り囲んで固定するための固定装置であって、
所定の厚さ及び幅を有する帯状の胴体を含み、前記胴体は生体吸収性物質又は生体非吸性物質で、生体適合性を有する材料から構成され、胴体の長手方向に10%未満の伸び率を有し、
前記固定装置の胴体の幅方向の両縁端は、腸管の外表面に接触したとき、腸管の外表面に傷を付けないように柔軟な形態に処理され、両縁端部位の一定領域が胴体の中心部の織物より柔軟度(softness)が相対的に高い他の織物からなることを特徴とする、腸管内器具固定装置。
【請求項4】
管状の臓器の切除手術後、吻合部位保護のために腸管内に設けられる器具を腸管の外部で取り囲んで固定するための固定装置であって、
所定の厚さ及び幅を有する帯状の胴体を含み、前記胴体は生体吸収性物質又は生体非吸性物質で、生体適合性を有する材料から構成され、胴体の長手方向に10%未満の伸び率を有し、
前記固定装置の胴体の幅方向の両縁端は、腸管の外表面に接触したとき、腸管の外表面に傷を付けないように柔軟な形態に処理され、
前記胴体の幅方向の両縁端部位には、縁端部分の鋭さ(sharpness)又は剛性(stiffness)を緩和するための緩衝物質が塗布されていることを特徴とする、腸管内器具固定装置。
【請求項5】
前記生体吸収性物質は、PGA(pterolyglutamic acid)、PLA(Poly Lactic Acid)、PLGA(Polylactic-co-Glycolic acid)、PDO(palladium oxide)の少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項6】
前記胴体は生体吸収性物質又は生体非吸性物質で、生体適合性を有する材料からなる原糸からメッシュ形態に製織された構造を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項7】
前記メッシュ形態の織物は糸と緯糸からなり、USP(原糸の太さ)1~7のサイズが使われることを特徴とする、請求項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項8】
前記胴体の所定部位には、前記固定装置が人体の腸管に適用されて縫合される場合、X線(X-ray)装備によって固定装置の位置を正確に確認することができるようにするためのX線造影剤が含まれていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項9】
前記X線造影剤は、X線によって区別可能な固形物質からなることを特徴とする、請求項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項10】
前記胴体の所定部位には、前記固定装置を用いて施術者が施術するとき、固定装置の長さを正確な数値に計算することができるようにするための目盛り又は色で区分可能な標識が形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項11】
前記胴体の少なくとも一側端部には、胴体の両端部の結合手段として接着剤が塗布されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項12】
前記胴体の両端部の結合手段として、胴体の一端には少なくとも一つの突起が形成され、胴体の他端には前記突起との結合のための少なくとも一つの挿入ホールが形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【請求項13】
前記器具を腸管の外部で取り囲んで固定する固定装置の長さを“L”とするとき、この“L”は下記の数式関係によって求められることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【数1】

ここで、Dは固定装置が装着された部位の器具の直径、Tは腸管の腸壁の厚さ、Hは器具の外周面から当該器具の外側へ突出した突起部の突出方向の長さをそれぞれ示す。
【請求項14】
前記器具は、当該器具の外周面から外側へ突出した突起部を有し、前記突起部は、前記器具の軸方向に沿って間隔をあけて複数設けられ、
前記器具を腸管の外部で取り囲んで固定する固定装置の幅を“WB”とするとき、この“WB”は下記の数式関係によって求められることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の腸管内器具固定装置。
【数2】

ここで、Wは前記器具の前記複数の突起部間の距離、Tは腸管の腸壁の厚さをそれぞれ示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腸管内器具固定装置に関するもので、より詳しくは腸管の切断施術後、吻合部位を保護するために腸管内に設けられるチューブ型器具を腸壁の形態を維持しながらも腸管に影響を与えないように固定することができる腸管内器具固定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人体内部の管状の臓器(食道、直腸、大腸など)の切断後の吻合の際、吻合部位の漏出発生の可能性が疑心される場合、現在まで最良の保護方法は、腹部人工肛門を造成することである。吻合部位の漏出は敗血症を引き起こし、癌の再発を増加させるなど、非常に危ないから、臨床では普通一時的な腹部人工肛門造設術を施行する。腹部人工肛門はたいてい修復時まで最小限3ヶ月以上がかかり、約30~60%の場合にはさまざまな理由で一生修復することができないと言われる。一番有り勝ちな理由は、人工肛門の修復時にも施術を再び施行しなければならないから、老弱者又は心肺の同伴疾患がある場合には施術自体の危険性が高いので、修復施術を避けることになるからである。
【0003】
このような問題に対する代案として、他の方式の排便装置が提示されたことがある。すなわち、薄い弾力性防水素材から作られたチューブを腸管の吻合部位の上部に約5~10cmの位置に糸で腸内壁に縫合することにより、排出される便が腸管の吻合部位と直接接触せずに排便されるようにする排便装置である。
【0004】
しかし、以上のような排便装置も次のような問題があるため、広く使われていることができない実情である。すなわち、シリコン又はゴムを腸内壁に縫合する作業が易しくなく、作業に長い時間がかかり、特に腸内壁に縫合した薄いチューブがいつも完全に縫合された状態に維持されなければならないものの、そうではなくて使用上の安全性が保障されないからである。また、排便装置に使用された薄いチューブはたいてい5~10日後に自然に脱落するから、チューブを除去することは容易であるが、所望の時間だけ持続的に便を迂回させにくいという問題点がある。
【0005】
一方、本出願人と同一の出願人によって先に出願された韓国特許公開第10-2002-0028506号明細書の“腸管施術患者の便迂回のための医療用腸管管理器”(特許文献1)には腸管管理器が腸管内に結合された状態で腸管の外側で固定用バルーンの間に構成された係止部に固定用バンドを結合して腸管管理器を腸管内に固定する技術内容が開示されている。
【0006】
しかし、以上のような特許文献1の場合、固定用バルーンの間に構成された係止部に固定用バンドを結合することにより、腸管管理器を腸管内に固定する効果があるものの、固定用バンドの弾力性程度によって腸に必要以上の圧力を加えることになって腸が壊死する問題が発生するか、固定用バンドの幅方向の両側縁部のエッジが鋭く仕上げ処理されている場合、その部分が腸の外壁表皮に傷を付けて腸が侵食する問題を引き起こすことができる。腸管は圧力に特に弱いので、腸管内に位置する器具を長期間固定させる腸管の外部の器具などの装置はいまだ紹介されたことがないし使用されたこともない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような従来技術の問題点を改善するために創出されたもので、人体内の管状の臓器の切断施術後、吻合部位を保護するために吻合部隣近部位の腸管内に取り付けられる器具を臓器の外部で固定するものの、臓器の腸壁の形態を維持しながらも腸管には悪い影響を与えない腸管内器具固定装置を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明による腸管内器具固定装置は、管状の臓器の切除手術後、吻合部位保護のために腸管内に設けられる器具を腸管の外部で取り囲んで固定するための固定装置であって、所定の厚さ及び幅を有する帯状の胴体を含み、前記胴体は生分解性(吸水性)物質又は非吸水性物質で、人体内で異物反応がない素材から構成され、胴体の長手方向に低い伸び率を有し、胴体の幅方向の両縁端は、腸管の外表面に接触したとき、腸管の外表面に傷を付けないように柔軟な形態に処理されていることに特徴がある。
【0009】
ここで、前記胴体は、胴体の長手方向に10%未満の伸び率を有するように構成できる。
【0010】
また、前記胴体は生分解性(吸水性)物質又は非吸水性物質で、人体内で異物反応がない素材からなる原糸からメッシュ形態に製織された構造を有することができる。
【0011】
また、前記胴体の幅方向の両縁端は、ラウンド形凹凸部からなることができる。
【0012】
また、前記胴体の幅方向の両縁端は、胴体の中心部より相対的に製織形態の緻密度が低く製織された形態を有することができる。
【0013】
また、前記胴体の幅方向の両縁端は、両縁端部位の一定領域が胴体の中心部の織物より柔軟度(softness)が相対的に高い他の織物からなることができる。
【0014】
また、前記胴体の幅方向の両縁端部位には、縁端部分の鋭さ(sharpness)又は剛性(stiffness)を緩和するための緩衝物質が塗布されることができる。
【0015】
また、前記胴体の所定部位には、前記固定装置が人体の腸管に適用されて縫合される場合、X線(X-ray)装備によって固定装置の位置を正確に確認することができるようにするためのX線造影剤が含まれることができる。
【0016】
ここで、前記X線造影剤としては、硫酸バリウム、ヨウ化油、有機ヨード化合物、ポリ架橋型フタロシアニン化合物などが使われることができる。
【0017】
また、前記X線造影剤としては、X線によって区別可能な固形物質が使われることができる。
【0018】
また、前記胴体の所定部位には、前記固定装置を用いて施術者が施術するとき、固定装置の長さを正確な数値に計算することができるようにするための目盛り又は色で区分可能な標識が形成されることができる。
【0019】
また、前記胴体の少なくとも一側端部には、胴体の両端部の結合手段として接着剤が塗布されることができる。
【0020】
また、前記胴体の両端部の結合手段として、胴体の一端には少なくとも一つの突起が形成され、胴体の他端には前記突起との結合のための少なくとも一つの挿入ホールが形成されることができる。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明によれば、管状の臓器の切除手術後、吻合部位の保護のために腸管内に取り付けられる器具を腸管の外部で取り囲んで固定するための帯状の固定装置が10%未満の長さ伸び率を有し、帯の両縁端部が柔軟な形態になっているので、器具を臓器の外部で適当な圧力で固定して臓器の腸壁の形態を維持しながらも腸管には影響を与えなくなる。
【0022】
これにより、従来の固定用バンドのように腸に必要以上の圧力を加えることによって腸が壊死する問題又は固定用バンドの両側縁端部位の鋭さによって腸が侵食される問題などを前もって予防することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本発明の実施例による腸管内器具固定装置の構成を示す外観斜視図である。
図1b】本発明の実施例による腸管内器具固定装置の幅方向の両縁端がラウンド形凹凸部に構成された例を示す図である。
図2図1aに示した腸管内器具固定装置が腸管に適用されて腸管の外部を取り囲んでいる状態を示す断面図である。
図3】本発明による腸管内器具固定装置を用いて腸の外部を取り囲んだ後、仕上げ作業を行った状態の固定装置を示した図である。
図4】本発明の他の実施例による腸管内器具固定装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書及び請求範囲に使用された用語や単語は通常的又は辞書的な意味に限定されて解釈されてはいけなく、発明者は自分の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に合う意味と概念に解釈されなければならない。
【0025】
明細書全般にわたり、ある部分がある構成要素を“含む”というとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0026】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。
【0027】
図1a~図2は本発明の実施例による腸管内器具固定装置を示した図であり、図1aは全体的な構成を示す外観斜視図、図1bは幅方向の両縁端がラウンド形凹凸部に構成された例を示す図、図2は腸に適用されて腸管の外部を取り囲んでいる状態を示す断面図である。
【0028】
図1a~図2を参照すると、本発明による腸管内器具固定装置100(以下、‘固定装置’という)は、管状の臓器(例えば、直腸又は大腸)の切除手術後、吻合部位保護のために腸管250内に設けられる器具200を腸管250の外部で取り囲んで固定するための固定装置であり、図示のように、所定の厚さ及び幅を有する帯状の胴体を有する。ここで、特に、このような胴体は生分解性(吸水性)物質、又は非吸水性物質で、人体内で異物反応がない素材から構成され、胴体の長手方向に低い伸び率を有し、胴体の幅方向の両縁端E1、E2は、腸管250の外表面に接触したとき、腸管250の外表面に傷を付けないように柔軟な形態に仕上げ処理される。ここで、前記生分解性物質としては、PGA(pterolyglutamic acid)、PLA(Poly Lactic Acid)、PLGA(Polylactic-co-Glycolic acid)、PDO(palladium oxide)などが使われることができる。ここで、もちろん、このように列挙された3種の物質の他にも、人体に無害でありながらも人体内で組職反応がない吸水性物質(素材)であればいずれも使用可能である。
【0029】
また、以上のような胴体は、場合によっては分解されずに永久に維持される物質(すなわち、非吸水性物質)からなることもできる。例えば、腸管内器具又は機械を永久に固定するための目的で固定装置100を使う場合がこれに相当する。
【0030】
ここで、前記胴体は、胴体の長手方向に10%未満の伸び率を有するように構成されることができる。また、前記胴体は生分解性(吸水性)物質又は非吸水性物質で、人体内で異物反応がない素材からなる原糸からメッシュ(mesh)形に製織された構造を有することができる。ここで、このようなメッシュ形の製織は軽糸と緯糸からなり、USP(原糸の太さ)1~7のサイズが使われることができる。また、軽糸と緯糸に使われるUSP(原糸の太さ)は同一であっても異なってもよい。しかし、場合によっては、必ずしもこのような製織形態ではなく、板状又は円筒状の形態も可能である。
【0031】
また、図1bに示したように、前記胴体の幅方向の両縁端E1、E2は、柔軟な形態に仕上げ処理される一例として、ラウンド形凹凸部100eに構成されることができる。
【0032】
ここで、前記胴体の長手方向の伸び率が10%未満というものに関連してもう少し説明を付け加えれば、胴体の長手方向だけではなく幅方向の伸び率も最小化することが好ましい。何故ならば、固定装置100が伸び率の良い素材から製作されれば、器具200を取り囲む場合、器具200の遊動性が高くて器具200を正常に固定しにくいからである。
【0033】
また、前記胴体の幅方向の両縁端E1、E2は柔軟な形態に仕上げ処理される一環として、胴体の中心部より製織形態の緻密度が相対的に低く(すなわち、中心部に比べて緩く)製織された形態に構成されることができる。
【0034】
また、前記胴体の幅方向の両縁端E1、E2は柔軟な形態に仕上げ処理される一環として、両縁端部位の一定領域が胴体の中心部の織物より柔軟度(softness)が相対的に高い他の織物から構成されることができる。
【0035】
また、同様に、前記胴体の幅方向の両縁端E1、E2が柔軟な形態に仕上げ処理される一環として、前記胴体の幅方向の両縁端部位には縁端部分の鋭さ(sharpness)又は剛性(stiffness)を緩和するための緩衝物質が塗布されることができる。ここで、このような緩衝物質は人体内で生分解可能な物質からなり、好ましくは固定装置100の胴体を構成する生分解性物質より分解速度が相対的に遅い生分解性物質が選択される。
【0036】
また、前記胴体の所定部位には、固定装置100が人体の腸管に適用されて縫合される場合、X線(X-ray)装備によって固定装置100の位置を正確に確認することができるようにするためのX線造影剤100bが含まれることができる。ここで、このようなX線造影剤としては、硫酸バリウム、ヨウ化油、有機ヨード化合物、ポリ架橋型フタロシアニン化合物などが使われることができる。
【0037】
また、前記X線造影剤としては、X線によって区別可能な固形物質(例えば、鉄及非鉄合金など)が使われることもできる。ここで、このように必ずしも造影剤ではなくても、造影可能な物質も使われることができる。
【0038】
また、前記胴体の所定部位には、固定装置100を用いて施術者が施術するとき、固定装置100の長さを正確な数値に計算することができるようにするための目盛り100a又は色で区分することができる標識が形成されることができる。ここで、このような目盛り100aは前述した造影剤100bの機能を兼ねることもできる。すなわち、胴体に目盛り100aを形成するにあたり、X線造営物質で目盛り100aを形成する。
【0039】
以上のような構成の本発明による腸管内器具固定装置100は、人体の腸管250に適用された場合、生分解性物質から構成されているので、人体内で徐々に分解が進み、固定装置100の物性は一定の期間(例えば、約3~5週間)維持される。このような物性が維持される期間は、固定装置100の生分解性物質、固定装置100の作り方、サイズ、装着方法によって違うことができる。また、固定装置100は器具200の形状によって多様なサイズに製作することができ、突起部200tの間に湾曲させて器具200の位置を固定することを基本とする。
【0040】
腸管250の吻合部(図示せず)が回復するうちに固定装置100の物性が維持され、吻合部の回復後には固定装置100の物性は消滅し、器具200は人体の外部に連結された別途の装置によって除去される。このような一連の過程において、固定装置100は、器具200を固定するために、腸壁に圧力を加えて一定の期間の間にその状態を維持しなければならないが、この間に腸壁の組職が壊死してはいけない。このために、固定装置100は前述したように、人体内で生分解可能な物質(素材)から製造される。
【0041】
また、腸管250の外部を取り囲む固定装置100の長さは、臓器内の器具200の直径と臓器の腸壁の厚さを考慮して設定される。例えば、大腸の正常な腸壁の厚さは約1~2.6mmであると報告されているが、腸管閉塞などの病的な状態では腸壁の厚さはもっと厚くなることができる。また、器具200の形状によって単一器具200に複数の固定装置100を取り付けることもできる。
【0042】
ここで、固定装置100の長さを設定することに関連して敷延して説明する。
【0043】
固定装置100は、器具200の形状によって装着位置が違い、それによって長さも調整される。すなわち、腸管250内の器具200に固定装置100が装着された部位の器具200の直径を“D”、腸管250の腸壁の厚さを“T”、固定装置100の長さを“L”、器具200の突起部200tの高さを“H”とすれば、固定装置100の長さLは次のような数式関係によって求められることができる。
【0044】
【数1】
【0045】
また、固定装置100の広さは器具200の突起部200tの位置によって調整される。器具200の突起部200t間の距離を“W”、腸管250の腸壁の厚さを“T”、固定装置100の幅を“WB”とすると、固定装置100の幅WBは次のような数式関係によって求められることができる。
【0046】
【数2】
【0047】
前記規格は器具200の形状及び寸法、腸管250の厚さによって可変的であり、このような規格が必要な理由は腸壁の安全のためである。すなわち、腸壁に分布する血管に対する圧力を最小化することにより、器具200の装着中の腸壁の壊死及び侵食を予防しようとするものである。
【0048】
一方、図3は本発明による腸管内器具固定装置を用いて腸の外部を取り囲んだ後、仕上げ作業した状態での固定装置を示した図である。
【0049】
図3を参照すると、固定装置100を用いて腸管内の器具200を固定するために、前述したように、器具200の突起部200t 間の腸管250の外表面に固定装置100を取り囲み、表示された規格によって結合する方式として、図示のように、縫合糸310による縫合固定が可能である。また、外科手術に多く使うステープルを用いた縫合も可能である。
【0050】
しかし、このような縫合糸310による縫合方式は縫合状態が不完全であり、作業に比較的長い時間がかかり、作業が煩わしい欠点がある。したがって、本発明では、このような欠点を補完した対策として、次の図4のような他の実施例の固定装置を提供する。
【0051】
図4は本発明の他の実施例による腸管内器具固定装置を示した図である。
【0052】
図4を参照すると、(A)のように、固定装置400の胴体の少なくとも一側端部には、胴体の両端部の結合手段として接着剤400aが塗布されることができる。これは、固定装置400を用いて施術者が施術後に固定装置400の端部に対して仕上げ作業を行うとき、接着剤400aによって両端部を簡単に接着すれば良いので、仕上げ作業を容易にするためのものである。
【0053】
また、(B)のように、前記胴体の両端部の結合手段として、前記固定装置400の胴体の一端には少なくとも一つの突起400tが形成され、胴体の他端には前記突起400tとの結合のための少なくとも一つの挿入ホール400hが形成されることができる。これも、固定装置400を用いて施術者が施術した後、固定装置400の端部に対する仕上げ作業を行うとき、突起400tを挿入ホール400hに簡単に挿入して締結すれば良いので、仕上げ作業を容易にするためのものである。ここで、前記胴体は前記特徴を有する限り、必ずしも製織メッシュ形態ではなくても使用可能である。
【0054】
一方、臓器の内部に器具を永久的に持っていなければならない場合もある。この場合には、前述したような規格及び特性を有するが、吸水性ではない非吸水性材料からバンド(すなわち、本発明の腸管内器具固定装置)を作ることもできる。
【0055】
以上のように、固定装置400に接着剤400aを塗布して接着剤400aによる仕上げ作業を行うか、突起400tと挿入ホール400hによる結合方式で仕上げ作業を行う場合、施術者は縫合糸310による仕上げ方式に比べて一層容易に、かつより短い時間内に作業を仕上げることができるようになる。
【0056】
以上の説明のように、本発明による腸管内器具固定装置は、管状の臓器の切除手術後、吻合部位保護のために腸管内に設けられる器具を腸管の外部で取り囲んで固定するための帯状の固定装置が10%未満の長さ伸び率を有し、帯の両縁端が柔軟な形態になっているので、器具を臓器の外部で適当な圧力で固定して臓器の腸壁の形態を維持しながらも臓器には影響を与えなくなる。
【0057】
したがって、従来の固定用バンドのように腸に必要以上の圧力を加えて腸が壊死する問題又は固定用バンドの両側縁端部位の鋭さによって腸が侵食される問題などを前もって予防することができる効果がある。
【0058】
以上、好適な実施例に基づいて本発明について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な変更及び応用が可能であることは当該技術分野の通常の技術者に明らかである。したがって、本発明の真正な保護範囲は以下の請求範囲によって解釈されなければならなく、それと同等な範囲内にある全ての技術的思想は本発明の権利範囲に含まれるものに解釈されなければならないであろう。
図1a
図1b
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】