(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20220329BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220329BHJP
A01N 59/20 20060101ALI20220329BHJP
A01N 25/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A01N59/16 Z
A01P1/00
A01N59/20 Z
A01N25/08
(21)【出願番号】P 2021063353
(22)【出願日】2021-04-02
(62)【分割の表示】P 2019062748の分割
【原出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2018066891
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月30日 東京理科大学神楽坂キャンパス1号館17階(東京都新宿区神楽坂1-3)において開催された第24回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月12日 日本防菌防黴学会第45回年次大会要旨集に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年11月14日 タワーホール船堀(東京都江戸川区船堀4-1-1)において開催された日本防菌防黴学会第45回年次大会で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月15日 関西大学千里山キャンパス第4学舎3号館3402室(大阪府吹田市山手町3-3-35)において開催された「ナノシート科学:ナノシートの表面・界面科学と機能創発研究会」で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂田 香矢乃
(72)【発明者】
【氏名】畑山 靖佳
(72)【発明者】
【氏名】石黒 斉
(72)【発明者】
【氏名】永井 武
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-205254(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094573(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/094572(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/002151(WO,A1)
【文献】特開2013-166705(JP,A)
【文献】米国特許第06117337(US,A)
【文献】特表2015-513306(JP,A)
【文献】特開2016-190808(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105854901(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒性担体100重量部に対して0.01重量部から5重量部のMoO
3が担持された光触媒性担体である抗ウイルス剤。
【請求項2】
前記光触媒性担体に対するMoO
3の担持量が0.1重量部から0.5重量部である請求項1に記載の抗ウイルス剤。
【請求項3】
前記光触媒性担体がZnO又はTiO
2である、請求項1又は2に記載の抗ウイルス剤。
【請求項4】
前記光触媒性担体がルチル型TiO
2である、請求項3に記載の抗ウイルス剤。
【請求項5】
銅化合物をさらに含む請求項4に記載の抗ウイルス剤
【請求項6】
請求項1~5に記載の抗ウイルス剤を添加した、又は当該抗ウイルス剤を表面に担持させた抗ウイルス製品若しくは材料。
【請求項7】
フィルム、プラスチック樹脂材料、建材、不織布又は繊維である請求項6に記載の抗ウイルス製品若しくは材料。
【請求項8】
前記建材が、コンクリート、モルタル、タイル又はガラスである、請求項7に記載の抗ウイルス製品若しくは材料。
【請求項9】
光触媒性担体と水溶性のMo化合物の水溶液とを80度から120度の温度で3時間から24時間加熱しながら混合した後、空気中で80度から120度の温度で3時間から24時間加熱乾燥することにより、MoO3を光触媒担持体に担持させる抗ウイルス剤の製造方法。
【請求項10】
前記加熱温度及び加熱乾燥温度が100度から110度、並びに前期加熱時間及び加熱乾燥時間が18時間から24時間である請求項10に記載の抗ウイルス剤の製造方法。
【請求項11】
水溶性銅を水溶性のMo化合物とともに加える、請求項9又は10に記載の抗ウイルス剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンベロープを有するウイルスにも有さないウイルスにも抗ウイルス活性を発揮する新規な抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、Cu2O等の一価銅化合物が抗ウイルス活性を有することが知られている。しかしながら、空気中の水分等により、空気中で経時的に二価に酸化されてしまい、一価銅の高い抗ウイルス性が失われるという問題もある。さらにCu2Oは赤色であるので、添加剤として種々の材料に添加すると、その材料が赤みを帯びてしまうという問題もある。
【0003】
また、銀や銀化合物も抗ウイルス活性を有することが知られている。しかしながら、銀が抗ウイルス活性を発揮するためには、銀イオンとして溶け出す必要があり、固体のままでは抗ウイルス活性はほとんど発揮されない。また、銀イオンとして溶け出したとしても、エンベロープをもたないウイルスに対しては、抗ウイルス活性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO 2011/078203 A1
【文献】JP 6200571 B
【非特許文献】
【0005】
【文献】Materials Science and Engineering C 32 (2012) 47-54, Nanotechnology 25 (2014) 315101
【文献】J. Phys. Chem. C 2009, 113, 10761-10766
【文献】ACS Nano, 2012, 6, 1609-1618
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エンベロープを有するウイルスにも有さないウイルスにも高い抗ウイルス活性を発揮し、かつ、固体状態のままで抗ウイルス活性を発揮する、新規な抗ウイルス剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、酸化モリブデンのようなモリブデン化合物が、エンベロープを有するウイルスにも有さないウイルスにも高い抗ウイルス活性を発揮し、かつ、固体状態のままで抗ウイルス活性を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) MoO3を有効成分として含有する抗ウイルス剤。
(2) 銅化合物をさらに含む(1)記載の抗ウイルス剤。
(3) 光触媒性担体に担持された形態にある(1)又は(2)記載の抗ウイルス剤。
(4) 前記光触媒性担体がZnO又はTiO2である、(3)記載の抗ウイルス剤。
(5) 前記光触媒性担体がルチル型TiO2である、(4)記載の抗ウイルス剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗ウイルス剤は、エンベロープを有するウイルスにも有さないウイルスにも高い抗ウイルス活性を発揮し、かつ、固体状態のままで抗ウイルス活性を発揮する。さらに、モリブデン化合物は、安定であるので、経時的に安定して抗ウイルス活性を発揮する。したがって、本発明の抗ウイルス剤を、各種プラスチック材料や建材等に添加剤として添加することにより、抗ウイルス活性を発揮する材料を得ることができる。特に、MoO3は灰色であり、目立たない色合いであるので広範囲の物に含有させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】下記実施例で行った、MoO
3の抗ウイルス活性評価結果を示す図である(左図:バクテリオファージQβに対して、右図:バクテリオファージφ6に対して、WL:光照射下、Dark:暗所下)
【
図2】下記実施例で作製した各種材料の拡散反射スペクトルを示す図である。
【
図3】下記実施例において作製したCu,Mo/ZnOのXPS分析の結果を示す図である(左;Cu2p,右;Mo3d)。
【
図4】下記実施例において作製したZnO, Cu/ZnO, Mo/ZnO, Cu,Mo/ZnOのXRD分析結果を示す図である。
【
図5】下記実施例で行った、Cu,Mo/ZnO等の抗ウイルス活性評価結果を示す図である(左図:バクテリオファージQβに対して、右図:バクテリオファージφ6に対して、WL:光照射下、Dark:暗所下)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記のとおり、本発明の抗ウイルス剤は、MoO3を有効成分として含有する。本発明の抗ウイルス剤は、MoO3のみから成っていてもよい。
【0013】
MoO3は、単独でも抗ウイルス活性を発揮するが、銅化合物をさらに含んでいてもよい。銅化合物としては酸化第一銅、酸化第二銅及び水酸化第二銅が好ましい。これらの銅化合物は単独で用いることもできるし、複数のものを組み合わせて用いることもできる。下記実施例に具体的に記載されるように、銅化合物をさらに含むことにより、MoO3単独及びCu化合物単独の場合に比べて、早期(下記実施例では2時間)の抗ウイルス活性がさらに高くなる。
【0014】
抗ウイルス剤が銅化合物をさらに含む場合、Mo金属100重量部に対するCu金属の含有量は、0.01重量部~80重量部が好ましく、さらには、0.1重量部~70重量部が好ましい。
【0015】
MoO3又はMoO3と銅化合物との混合物は、そのままで抗ウイルス活性を発揮するが、光触媒性担体に担持させてもよい。光触媒性担体に担持させることにより、光照射下での早期(下記実施例では2時間)の抗ウイルス活性がさらに高くなる。
【0016】
光触媒性担体としては、TiO2やZnOを挙げることができ、特にルチル型のTiO2が好ましい。これらの光触媒性担体は単独で用いることもできるし、複数種類を組み合わせて用いることもできる。光触媒性担体に担持させる場合、光触媒性担体100重量部に対するMo金属化合物の担持量は、0.01重量部~5重量部が好ましく、さらには、0.1重量部~0.5重量部が好ましい。
【0017】
光触媒性担体に担持させる場合、光触媒性担体と、例えばNa2MoO4ような水溶性のMo化合物の水溶液とを加熱しながら混合し、空気中で加熱乾燥することにより、MoO3を光触媒性担体に担持させることができる。銅化合物をさらに担持させる場合には、Mo化合物水溶液に加え、例えば塩化第二銅などの銅化合物の水溶液を光触媒性担体と混合することにより、MoO3とCu化合物の両者を光触媒性担体に担持させることができる。この場合の加熱乾燥の条件としては、空気中で、通常、温度80℃~120℃、好ましくは100℃~110℃で、通常、3時間~24時間、好ましくは、18時間~24時間とすることができる。
【0018】
本発明の抗ウイルス剤は、例えば、フィルムや各種プラスチック樹脂材料や、コンクリート、モルタル、タイル、ガラス等の建材あるいは不織布や繊維に添加剤として添加することができる。これにより、抗ウイルス性の材料を得ることができる。この場合、添加量は、抗ウイルス活性が発揮される添加量であればよく、各材料について適宜設定することが可能である。一般的には、材料全体に練りこむよりは、表面に担持する方が効果的であり、表面におけるMo化合物の存在量は、通常、2.5mmol/m2~20mmol/m2、特には、5mmol/m2~10mmol/m2程度であるが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の抗ウイルス剤を添加した材料から作製される物としては、抗ウイルス活性が望まれる物であれば何でもよいが、特に人体に接触する物が好ましく、例えば、手すり、ドアノブ、カウンターテーブル表面、洗面台、ハンドドライヤー、エレベーターボタンなどの各種プッシュボタン、キャッシュディスペンサーなどの操作画面、マスク、病院用カーテン、シーツ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
下記実施例に具体的に記載されるように、本発明の抗ウイルス剤は、エンベロープを持つウイルス(下記実施例ではバクテリオファージφ6)及びエンベロープを持たないウイルス(下記実施例ではバクテリオファージQβ)の両方に対して高い抗ウイルス活性を発揮する。また、MoO3は安定であるので、経時的に安定して抗ウイルス活性を発揮することができる。さらに、MoO3は灰色であり、添加剤として各種材料に添加した場合に目立たないので、添加剤としての適用範囲も広い。
【0021】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1、比較例1~6
金属酸化物の抗ウイルス評価
【0023】
[方法]
市販のFe2O3(比較例1)、MnO2(比較例2)、CeO2(比較例3)、MoO3(実施例1)、SnO2(比較例4)、NiO(比較例5)、ZnO(比較例6)の7種の金属酸化物の粉末を、それぞれ純水で洗浄し、100℃で乾燥させた。その粉末を99%エタノールに分散させて、25mm×25mmのガラスに6μmolの量が担持できるように粉体の分散液をガラスにのせ、100℃で15分間乾燥させることにより、粉体をガラスに担持した。
【0024】
抗ウイルス評価は、JIS R 1756に沿って行い、バクテリオファージQβとバクテリオファージφ6を対象に行った。光照射は、白色蛍光灯を用いて、TypeB(N169:380nm以下の波長をカット)のフィルター下、1000 lxの照度で行った。JIS R 1756では、1/500NBを使って接種ファージ液を調製するが、ここでは、1/60NBを使って調製した。
【0025】
[結果]
抗ウイルス評価結果を表1及び表2に示す。ここでは、抗ウイルス活性値(R)は、接種直後の0時間での感染価からの低下率を対数値で示した(式1)。また、光照射効果(ΔR)は、光照射下と暗所下での抗ウイルス活性値の差で示した(式2)。
【0026】
抗ウイルス活性値:R=log(N0)- log(N)
N0: 接種直後の感染価、N: 2, 4時間後の光照射下ならびに暗所下での感染価
光照射効果:ΔR= RL- RD
RL: 光照射下での抗ウイルス活性値、RD: 暗所下での抗ウイルス活性値
【0027】
【表1】
* 数値は、いずれも小数点2桁目を四捨五入して小数点以下1桁で表示
【0028】
【表2】
* 数値は、いずれも小数点2桁目を四捨五入して小数点以下1桁で表示
【0029】
エンベロープを持たないバクテリオファージQβ、エンベロープを持つバクテリオファージφ6のどちらに対しても高い抗ウイルス活性を示した金属酸化物は、7種の中では、MoO
3であることが明らかとなった(
図1)。一方、MoO
3では、暗所下でも可視光照射下でも同じ抗ウイルス活性を示すことから、光照射効果すなわち可視光応答性はほとんどないことも判明した。MoO
3は、抗菌性をもつことは知られている(非特許文献1)が、高い抗ウイルス活性も示すことが新たにわかった。
【0030】
実施例2~実施例4、比較例7、8
高い抗ウイルス活性をもつ可視光応答型光触媒の作製
【0031】
[方法]
可視光応答型光触媒の作製は、次のように行った。担体となる金属酸化物(ZnO又はTiO2)0.5gに6mMになるようにCuCl2溶液を、及び/又は7.5mMになるようにNa2MoO4溶液を加え、80℃に加温して3時間攪拌した。次いで、純水で洗浄した。CuCl2溶液を用いた場合は、洗浄後の液にAgNO3液を加え、白い沈殿が生成しないところまで洗浄した。Moの場合は、Cuの場合と同量の水で洗浄した。その後、100℃で乾燥し、それをサンプルとした。作製したサンプルは、Cu/ZnO(比較例7)、Mo/ZnO(実施例2)、Cu,Mo/ZnO(実施例3)、Mo/TiO2(実施例4)であった。実施例4で用いたTiO2は、ブルッカイト型であった。なお、比較のため、ZnOについても試験した(比較例8)。
【0032】
[材料の分析]
1.ZnO, Cu/ZnO, Mo/ZnO, Cu,Mo/ZnOの4種の材料について、UH4150形分光光度計(標準積分球)を使って、拡散反射スペクトルを測定した。結果を
図2に示す。
【0033】
ZnOに比較して、Cu/ZnO, Mo/ZnO, Cu,Mo/ZnOは、400-500nmの可視光吸収が増加した。
【0034】
2.Cu,Mo/ZnOのX線光電子分光分析(XPS:Quantera SXM(アルバック・ファイ社製))による分析を行った。X線源は、単色化AlKα(1486.6eV)を用いた。結果を
図3に示す。これまでの報告(非特許文献2)にあるように、銅は、酸化銅(CuO, Cu
2O)や水酸化銅(Cu(OH)
2)の形でZnOに担持されていると示唆された。一方、モリブデンは、酸化モリブデン(MoO
3)の形で担持されていると考えられた。
【0035】
3.ZnO、Cu/ZnO、Mo/ZnO、Cu,Mo/ZnOの4種の材料のXRD分析(X’Pert-MPD, PHILIPS社製)を行い、結果を
図4に示した。
図4中、上から順に、ZnO、Cu/ZnO、Mo/ZnO、Cu,Mo/ZnOについての結果を示す。どの場合もZnOの結晶構造は保たれていることがわかった。また、解析パターンからのピークサーチより、Cu,Mo/ZnO の材料では、XPS分析においても観察された酸化銅(CuO, Cu
2O)や水酸化銅(Cu(OH)
2)のピークパターン、あるいは、酸化モリブデン(MoO
2, MoO
3, Mo
2O
5(OH))のピークパターンが観察された。
【0036】
以上の材料分析の結果から、Cu,Mo/ZnO の材料は、ベースのZnOの表面に、銅は、CuO, Cu2O, Cu(OH)2などの形で担持され、モリブデンは、MoO3などの酸化物の形で担持されていることがわかった。
【0037】
実施例5
実施例2~4、比較例7、8で作製した可視光応答型光触媒の抗ウイルス活性評価
【0038】
[方法]
実施例2~4、比較例7、8で作製したZnO, Cu/ZnO, Mo/ZnO, Cu,Mo/Zn, Mo/TiO2の粉末を、実施例1と同様に、99%エタノールに分散させた。25mm×25mmのガラスにベースの金属酸化物が6μmolの量を担持できるように粉体の分散液をガラスにのせ、100℃で15分間で乾燥させることにより、粉体をガラスに担持した。
【0039】
抗ウイルス評価も実施例1と同様に、JIS R 1756にそって行い、バクテリオファージQβとバクテリオファージφ6を対象に行った。光照射は、白色蛍光灯を用いて、TypeB(N169:380nm以下の波長をカット)のフィルター下、1000 lxの照度で行った。バクテリオファージQβの接種ファージ液は、1/60NBを使って調製し、バクテリオファージφ6の接種ファージ液は1/500NBを使って調製した。
【0040】
[結果]
評価結果を表3及び4並びに
図5に示す。実施例1と同様に、接種直後の0時間での感染価からの低下率を抗ウイルス活性値(R)として対数値で示した。また、光照射下と暗所下での抗ウイルス活性値の差を光照射効果(ΔR)として示した。
【0041】
これまでの報告(非特許文献3など)にあるように、Cu/ZnOは、可視光応答性を示すことが推測されたが、Mo/ZnOやMo/TiO2も可視光応答性をもつことが、新たに明らかになった。また、バクテリオファージQβ、バクテリオファージ φ6のどちらに対しても可視光応答性を示した。さらに、MoとCuを共担持したCu, Mo/ZnOは、MoO3の2時間暗所下での抗ウイルス活性より、また、Cuを単独で担持したCu/ZnOの2時間暗所下でわずかに高い抗ウイルス活性を示すことも明らかとなった。
【0042】
【表3】
* 数値は、いずれも小数点2桁目を四捨五入して小数点以下1桁で表示
** 接種ファージ液は、1/500NBを使って作製
【0043】
【表4】
* 数値は、いずれも小数点2桁目を四捨五入して小数点以下1桁で表示
【0044】
実施例6 ネコカリシウイルス及びインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果
MoO3の抗ウイルス評価を、実ウイルスであるエンベロープをもたないネコカリシウイルス(ノロウイルス代替ウイルス)、エンベロープをもつインフルエンザウイルスを対象に行った。
【0045】
[方法]
サンプルは実施例1と同様に作製した。また、抗ウイルス評価も、実施例1と同様に行い、対象のウイルスをバクテリオファージから、ネコカリシウイルス(F-9株)、及びインフルエンザウイルス((H1N1)A/PR/8/34株)に変えて行った。接種ウイルス液は、PBSで希釈して調製した。さらに、MoO3自体に光照射効果はないことがわかっていたため、評価は、暗所のみで行った。
【0046】
[結果]
実施例1と同様に、接種直後の0時間での感染価からの低下率を抗ウイルス活性値(R)として対数値で示した。
【0047】
【表5】
* 数値は、いずれも小数点2桁目を四捨五入して小数点以下1桁で表示
【0048】
表5に示されるように、実ウイルスであるエンベロープをもたないネコカリシウイルス(ノロウイルス代替ウイルス)及びエンベロープをもつインフルエンザウイルスを対象とした場合でも、バクテリオファージQβ及びバクテリオファージφ6と同様に、高い抗ウイルス活性を示した。
【0049】
実施例7 高い抗ウイルス活性をもつ可視光応答型光触媒(Mo/TiO2)の作製
[方法]
Mo/TiO2は、ベースのTiO2をブルッカイト型からルチル型TiO2に変えて実施例4と同様に作製した。すなわち、0.5gのルチル型TiO2に7.5mMになるようにNa2MoO4溶液加え、80℃に加温して3h攪拌した。3h後、純水で洗浄し、100℃で乾燥し、それをサンプル(Mo/TiO2)とした。
【0050】
抗ウイルス活性評価は、実施例1と同様にサンプルを作製し、JIS R 1756に沿って行い、バクテリオファージQβとバクテリオファージφ6を対象に行った。光照射は、白色蛍光灯を用いて、TypeB(N169:380nm以下の波長をカット)のフィルター下、1000 lxの照度で行った。接種ファージ液は1/500NBを使って調製した。
【0051】
実ウイルスに対する抗ウイルス活性評価は、MoO3単独での評価と同様に、ネコカリシウイルス(F-9株)、並びにインフルエンザウイルス((H1N1)A/PR/8/34株)を対象に行った。接種ウイルス液は、PBSで希釈して調製した。光照射条件は、上記のバクテリオファージの場合と同様とした。
【0052】
[結果]
評価結果を表6に示す。実施例1と同様に、接種直後の0時間での感染価からの低下率を抗ウイルス活性値(R)として対数値で示した。また、光照射下と暗所下での抗ウイルス活性値の差を光照射効果(ΔR)として示した。
【0053】
【表6】
* 数値は、いずれも小数点2桁目を四捨五入して小数点以下1桁で表示
【0054】
表6に示されるように、TiO2をブルッカイト型からルチル型に変更することにより、抗ウイルス活性が大幅に高くなった。また、実ウイルスであるネコカリシウイルス及びインフルエンザウイルスに対しても抗ウイルス活性が認められた。