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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】男性用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/471 20060101AFI20220329BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220329BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20220329BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61F13/471
A61F13/15 200
A61F13/475 111
A61F13/56 110
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017167858
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019042070
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】蓑田 哲宏
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-195521(JP,A)
【文献】特開2015-62576(JP,A)
【文献】特開2015-58326(JP,A)
【文献】特開2017-6303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部と股部とを有し、腹側部から股部にかけて、幅方向の寸法が漸減し、
長手方向の対角線の長さに対する、幅方向の対角線の長さの比が0.5以上0.9以下であり、長手方向の対角線と幅方向の対角線の交点は長手方向の腹側部端部と股部側端部を1:4以上1:7以下の比に分割するように位置する、略凧型形状を有し、2本の折り線により3つ折りにされて個別包装される男性用吸収性物品であって、
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に保持された吸収体とを有し、
吸収体の総吸収量が70g以上900g以下であり、かつ厚みが6mm以下であり、
吸収性物品の幅方向の最大寸法が、130mm以上200mm以下であり、
長手方向の最大寸法が、210mm以上290mm以下であり、
略凧型形状の腹側部端部を含む辺が、外側に凸となるように弧を描き、幅方向両端部から股部に至る辺が、内側に凸となるように弧を描いており、
バックシートの衣類側表面には、長手方向に平行に3列の粘着層が設けられるとともに、中央の粘着層が、2本の折り線を跨ぐように設けられており、両端の2列の粘着層が、2本の折り線のうちの腹側部側の1本の折り線を跨ぐように設けられており、
股部側端部から腹側部端部に向けて、
長手方向の総寸法の50%の位置における、吸収体の幅方向の寸法が10cm以上11cm以下、
長手方向の総寸法の25%の位置における、吸収体の幅方向の寸法が8cm以上9cm以下、
長手方向の総寸法の10%の位置における、吸収体の幅方向の寸法が6cm以上7cm以下である、男性用吸収性物品。
【請求項2】
さらに、立体ギャザーを有しており、2本の立体ギャザーの身体側端部の間隔が20mm以上80mm以下である、請求項1に記載の男性用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型で幅広の形態を有するとともに、着用時の違和感を生じくい男性用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化の進行に伴い、尿失禁に悩む中高年者が増加している。一般に、女性中高年者の場合、出産に伴う骨盤底筋の障害に伴って、咳やくしゃみをしたときや、重いものを持ったときに尿失禁を起こす腹圧性尿失禁が一般的である。一方、男性の場合においても、加齢に伴う前立腺肥大症の発症により、尿失禁を起こす場合がある。このような尿失禁をきたした場合、たとえ少量の尿失禁であっても下着で吸収しきれないことも多く、ボトムスや下着へのシミになったり、においが生じたりすることから、その対策として、尿吸収パッドのような吸収性物品を装着することが勧められている。
【0003】
尿失禁用の吸収性物品は、生理用ナプキン等の吸収性物品と同形状の、略長方形かつ平面状のものが多い(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、男性中高年者の場合、略長方形状かつ平面状の吸収性物品は、局部へのフィット感が得られにくいため、尿失禁が生じた際に、横漏れが起こりやすい、という問題があった。このため、男女間における局部の構造上の相違点を踏まえた吸収性物品も開発されており、男性用の、尿失禁用の吸収性物品も多く市販されている。
【0004】
例えば、特許文献2には、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートの間に配置される吸収体と、を有し、吸収体が、フラッフパルプと高吸水性ポリマーとを少なくとも有する、男性用吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-148441号公報
【文献】特開2013-523358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、吸収性物品については、一般に、その薄型化により、吸収性物品の着用時に、吸収性物品を着用していることを外部から認識しづらくし、かつ着用感を改善することが求められているものの、特許文献2の男性用吸収性物品も含めた従来公知の吸収性物品については、薄型のものは知られていなかった。さらに、男性用吸収性物品の場合には、身体の運動により、排尿部位が移動するため、より幅広の吸収性物品を提供することが求められていた。
【0007】
しかしながら、このような課題に鑑みて、男性用吸収性物品を、薄型・幅広化した場合、身体の運動にともない、男性用吸収性物品のずれが生じ、男性用吸収性物品が両脚の内側に接触して、違和感を生じさせることがあった。
【0008】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、薄型で幅広の形態を有するとともに、万が一位置づれが生じた場合においても、着用時の違和感を生じにくい男性用吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、幅広で薄型の吸収性物品であって、略凧型形状の腹側部端部を含む辺、及び幅方向端部から股部に至る辺の形状を調整した男性用吸収性物品によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)腹側部と股部とを有し、腹側部から股部にかけて、幅方向の寸法が漸減し、長手方向の対角線の長さに対する、幅方向の対角線の長さの比が0.5以上0.9以下であり、長手方向の対角線と幅方向の対角線の交点は長手方向の腹側部端部と股部側端部を1:4以上1:7以下の比に分割するように位置する、略凧型形状を有し、2本の折り線により3つ折りにされて個別包装される男性用吸収性物品であって、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に保持された吸収体とを有し、吸収体の総吸収量が70g以上900g以下であり、かつ厚みが6mm以下であり、吸収性物品の幅方向の最大寸法が、130mm以上200mm以下であり、長手方向の最大寸法が、210mm以上290mm以下であり、略凧型形状の腹側部端部を含む辺が、外側に凸となるように弧を描き、幅方向両端部から股部に至る辺が、幅方向内側に凸となるように弧を描いていることを特長とする男性用吸収性物品。
【0011】
(2)バックシートの衣類側表面には、複数の粘着層が設けられるとともに、前記複数の粘着層のうちの全ての粘着層が、2本の折り線のうちの少なくとも1本の折線を跨ぐように設けられている、請求項1に記載の男性用吸収性物品。
【0012】
(3)股部側端部から腹側部端部に向けて、長手方向の総寸法の50%の位置における、吸収体の幅方向の寸法が10cm以上11cm以下、長手方向の総寸法の25%の位置における、吸収体の幅方向の寸法が8cm以上9cm以下、長手方向の総寸法の10%の位置における、吸収体の幅方向の寸法が6cm以上7cm以下である、請求項1又は2に記載の男性用吸収性物品。
【0013】
(4)さらに、立体ギャザーを有しており、2本の立体ギャザーの身体側端部の間隔が20mm以上80mm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の男性用吸収性物品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の男性用吸収性物品は、薄型のものであり、幅方向の最大寸法が大きく、幅広のものである。このため、男性用吸収性物品の着用時においても、これを着用していることを外部から認識しづらく、着用感にも優れるとともに、身体の運動に伴って、尿漏れ等が生じることもない。さらに、本発明の男性用吸収性物品は、略凧型形状の腹側部端部を含む辺、及び幅方向端部から股部に至る辺の形状が調整されているので、万が一、男性用吸収性物品の位置ずれが生じた場合においても、着用時の違和感を生じにくいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の男性用吸収性物品の表面図である。
図2】本発明の男性用吸収性物品の裏面図である。
図3図1のX-X線における本発明の男性用吸収性物品の断面図である。
図4】本発明の男性用吸収性物品が個別包装された状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の男性用吸収性物品1について、図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<男性用吸収性物品>
図1は、本発明の男性用吸収性物品1の表面図であり、図2は、本発明の男性用吸収性物品1の裏面図であり、図3は、図1のX-X線における本発明の男性用吸収性物品1の断面図である。本発明の男性用吸収性物品1は、腹側部Aと股部Bとを有し、2本の折り線61により3つ折りにされて個別包装されるものであり、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート5と、トップシート2及びバックシート5の間に保持された吸収体4と、を有する。
【0018】
[男性用吸収性物品の形状及び寸法]
本発明の男性用吸収性物品1の形状は、腹側部Aから股部Bにかけて、幅方向の寸法が漸減する略凧型形状を有するものである。男性用吸収性物品1が、このような略凧型形状を有することにより、男性用吸収性物品1が、男性の局部を効果的に包み込むことができるとともに、身体の運動に伴って、排尿位置が移動したとしても、腹側部Aで尿を効果的に受け止めることができる。
【0019】
本発明の男性用吸収性物品1は腹側部Aに位置する腹側部端部11を含む辺が、外側に凸となるように弧を描き、幅方向両端部13から股部Bに至る辺が、内側に凸となるように弧を描いている。特に、幅方向両端部13から股部Bに至る辺が、内側に凸となるように弧を描いていることにより、男性用吸収性物品1が両脚の内側と接触せず、通常の着用時においても、万が一位置ずれが生じたときにおいても、着用時の圧迫感が生じることを効果的に回避することができる。
【0020】
本発明の男性用吸収性物品1の寸法は、幅方向の最大寸法が、130mm以上200mm以下であり、長手方向の最大寸法が、210mm以上290mm以下である。幅方向の最大寸法が上記の範囲内のものであることにより、男性用吸収性物品1の着用時の違和感を一定程度以下に抑えつつ、男性用吸収性物品1の着用時に、着用者の運動に伴って排尿部位が移動したとしても、男性用吸収性物品1が、全ての移動部位を覆うことができ、尿漏れが生じることを有効に防止することができる。また、男性用吸収性物品1の長手方向の最大寸法が、上記の範囲内のものであることにより、尿漏れを効果的に防止しつつ、座位における股間部の圧迫感を効果的に低減することができる。
【0021】
本発明の男性用吸収性物品1は、長手方向の対角線の長さに対する、幅方向の対角線の長さの比が0.5以上0.9以下であり、長手方向の対角線と幅方向の対角線の交点は長手方向の腹側部端部と股部側端部を1:4以上1:7以下の比に分割するように位置している。男性用吸収性物品1が、このような寸法を有することにより、男性用吸収性物品1が、男性の局部を効果的に包み込むことができるとともに、身体の運動に伴って、排尿位置が移動したとしても、腹側部Aで尿を効果的に受け止めることができる。
【0022】
[折り線]
本発明の男性用吸収性物品1は、2本の折り線61により3つ折りにされて個別包装されるものである。ここで、2本の折り線61は、幅方向に平行に延びるように設けられているものであることが好ましく、2本の折り線61のうちの腹側部側の折り線は、腹側部端部11から70mm以上90mm以下の位置に設けられていることが好ましく、2本の折り線61のうちの股部側の折り線は、股部側端部12から70mm以上90mm以下の位置に設けられていることが好ましい。折り線61の位置を上記の範囲内のものとすることにより、男性用吸収性物品1をコンパクトに折り畳むことができるとともに、着用時の折り癖が、男性用吸収性物品1の下着への固定に与える影響をより低減することができる。
【0023】
[トップシート]
トップシート2は、体液が吸収体4へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルムや、これらを積層した複合シート等の材料から形成される。また、トップシート2には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート2には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート2の坪量は、18g/m以上40g/m以下であることが好ましい。
【0024】
[バックシート]
バックシート5は、吸収体4が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布とを積層した複合シートといった材料から形成される。複合シートに用いられる不織布としては、製法を特に限定せず、例えば、スパンボンド不織布やメルトブロー不織布、あるいは、スパンボンド/メルトブロー、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンドを積層した複合不織布及びこれらの複合材料が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。
【0025】
強度及び加工性の点から、バックシート5の坪量は、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、バックシート5は、通気性を持たせることが好ましい。バックシート5に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート5にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0026】
[吸収体]
吸収体4は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(SAP)と、を含有することが好ましい。なお、本発明の男性用吸収性物品1は、高い吸収量で、かつ薄型のものであって、吸収体4の総吸収量が70g以上900g以下であり、厚みが6mm以下である。総吸収量は、予め重量を測定しておいた吸収性物品を、20リットルの0.9%、37度の食塩水に5分間浸漬し、水切りした後の重量変化の値である。
吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。
【0027】
吸収体4の高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体4のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、吸収性物品90g/m以上500g/m以下の坪量とすることが好ましく、30質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0028】
(吸収体の寸法)
本発明の男性用吸収性物品1においては、股部側端部12から腹側部端部11に向けて、長手方向の総寸法の50%の位置における、吸収体4の幅方向の寸法が10cm以上11cm以下であることが好ましく、長手方向の総寸法の25%の位置における、吸収体4の幅方向の寸法が8cm以上9cm以下であることが好ましく、長手方向の総寸法の10%の位置における、吸収体の幅方向の寸法が6cm以上7cm以下であることが好ましい。吸収体4の幅方向の寸法を、上記の範囲内のものとすることにより、男性用吸収性物品1の着用時における、違和感を効果的に防止することができる。また、男性用吸収性物品1は地面に対して鉛直方向に位置する状態で保持される一方で、排泄された体液は主に下に向かい拡散する。吸収体4の幅方向の寸法を上記の範囲内のものとすることにより、そのような体液を効果的に吸収することができる。
【0029】
[吸収性シート]
本発明の男性用吸収性物品1は、さらに、吸収性シート3を有していることが好ましい。吸収性シート3は、親水性不織布(上層親水性不織布及び下層親水性不織布)の間に高吸水性ポリマーを含む吸水層が挟持されたものである。吸収性シート3は、フラッフパルプ等の吸収性繊維を含んでいないため、所定以上の吸収量であっても厚みが薄く、これを用いることにより、男性用吸収性物品1を薄型化することができる。また、本発明において、男性用吸収性物品1は、2本の折り線61により3つ折りにされるが、吸収性シート3を用いていることにより、通常の吸収体を使用した場合と比較し、3つ折りにしても折り癖がつきにくくなる傾向にあり、男性用吸収性物品1の下着への固定をより容易にすることができる。
【0030】
吸収性シート3が有する吸水層は、高吸水性ポリマー及びホットメルト接着剤を含んでいてもよく、このホットメルト接着剤によって、上記上層親水性不織布、吸水層、及び下層親水性不織布は、相互に接着されていることが好ましい。
【0031】
吸収性シート3に使用される高吸水性ポリマーの中位粒子径は、100μm以上600μm以下が好ましく、200μm以上500μm以下がより好ましい。高吸水性ポリマーの中位粒子径を斯かる数値の範囲内のものとすることにより、流動性の悪い微粉末の使用を避けて、吸収性シート3の基本性能を高めつつも、吸収性シート3が堅くなることを防ぐとともに、ゴツゴツした感触を低減して、触感を改善することができる。
【0032】
吸収性シート3が含有する高吸水性ポリマーの含有量は、要求される吸収性能に応じて適宜設定することができるが、100g/m以上1000g/m以下であることが好ましく、200g/m以上800g/m以下であることがより好ましい。高吸水性ポリマーの含有量を斯かる数値の範囲内のものとすることにより、十分な吸収性能を発揮できる上に、体液吸収後のさらさら感も保持され、かつ超薄型に成形可能で、柔らかく動きやすい着用感を有する吸収性シート3を提供することができる。
【0033】
高吸水性ポリマーとしては、吸収体4に用いたものと同様のものを用いることができる。
【0034】
親水性不織布と高吸水性ポリマーとの接着のために用いることができるホットメルト接着剤としては、融点が100℃から180℃程度の、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系接着剤、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系接着剤等を使用することができる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、溶融状態のホットメルト接着剤をノズルから非接触で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法を使用することができる。
【0035】
本発明においては、上層親水性不織布、吸水層、及び下層親水性不織布をホットメルト接着剤によって一体化した吸収性シート3全体に熱エンボス加工を施すことが好ましい。これにより、吸収性シート3全体への体液の拡散の効率を高めることができ、吸収性シート3中での高吸水性ポリマーの固定が強化される。エンボス形状としては、直線、曲線、ドット状等、特に限定されず、またエンボスパターン形状も格子状、波状、エイコンパターン(どんぐりの連続形状)等、液体の拡散を効率よくするためのものが適宜選択される。
【0036】
吸収性シート3を構成する上層親水性不織布、及び下層親水性不織布は、20g/m以上の、親水性材料から構成された不織布や、親水化処理がなされた不織布を制限なく使用できるが、少なくとも1枚は、親水性が高く、それ自身が保水して一時的に液体を保持するスパンレース不織布であることが好ましく、バックシート側に位置する下層親水性不織布がスパンレース不織布であることが更に好ましい。スパンレース不織布はレーヨンやコットンのセルロース系、及び合成繊維系等の不織布を使用することができ、その坪量は適宜選択できるものの、20g/m以上のものが好ましい。スパンレース不織布以外としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の合成繊維系からなるエアスルー不織布、ポイントボンド不織布、スパンボンド不織布を使用することができる。本発明においては、特に液戻りの防止性能に優れるエアスルー不織布を使用することが好ましい。
【0037】
[立体ギャザー]
本発明の男性用吸収性物品1においては、男性の局部が男性用吸収性物品1の吸収エリアから外れないよう、立体ギャザー8が設けられていることが好ましい。ここで、幅方向両側に位置する2つの立体ギャザー8の身体側端部の間隔(図1中のL)は20mm以上80mm以下であることが好ましく、40mm以上60mm以下であることが更に好ましい。立体ギャザー8の間隔が上記の範囲内のものであることにより、男性の局部を効果的に吸収エリア内に収めつつ、男性の局部の全体を立体ギャザー8で覆うことができる。これにより、男性用吸収性物品1における体液の漏れを効果的に防止することができる。
【0038】
[粘着層]
図2は、本発明の男性用吸収性物品1の裏面図であり、図4は、本発明の男性用吸収性物品1が個別包装された状態を示す図面である。粘着層7は、男性用吸収性物品1を下着に確実に固定し、男性用吸収性物品1の位置ずれを防止する機能を発揮するものである。本発明の男性用吸収性物品1においては、バックシート5の衣類側表面には、複数の粘着層が設けられているところ、これらの複数の粘着層7の全てが、2本の折り線61のうちの少なくとも1本の折り線61を跨ぐように設けられている。本発明の好ましい態様においては、粘着層7は、長手方向に平行に3列設けられており、中央の粘着層7が、2本の折り線61を跨ぐように設けられており、両端の2列の粘着層7が、2本の折り線61のうちの腹側部側の1本の折り線61を跨いでいることが好ましい。男性用吸収性物品1が薄型のものである場合、折り線61による折りじわが残りやすくなり、男性用吸収性物品1が下着から浮いて、これが、位置ずれの原因にもなるが、折り線61を跨いで粘着層7が設けられていることにより、男性用吸収性物品1を効果的に、下着に固定することができる。なお、通常、従来の男性用吸収性物品は、幅広のものではないため、幅方向両端部近傍に粘着層を設けることはない。本発明の男性用吸収性物品1においては、幅方向両端部13近傍の2か所に粘着層7を設けることにより、幅方向の全体にわたって男性用吸収性物品1を下着に固定することができる。
【0039】
<男性用吸収性物品の製造方法>
男性用吸収性物品1の製造方法としては、吸収体4をトップシート2とバックシート5との間に挟持し、必要に応じて、立体ギャザー8等を設け、トップシート2とバックシート5とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することにより製造することができる。そして、バックシート5の表面に複数の粘着層7を設ければよい。
【0040】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた発明も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0041】
A 腹側部
B 股部
1 男性用吸収性物品
11 腹側部端部
12 股部側端部
13 幅方向両端部
14 長手方向両端部
2 トップシート
3 吸収性シート
4 吸収体
5 バックシート
6 包装体
61 折り線
7 粘着層
8 立体ギャザー
図1
図2
図3
図4