(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】吸収性補助パッド及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20220329BHJP
A61F 13/505 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61F13/494 300
A61F13/505 100
(21)【出願番号】P 2018032683
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】前田 智恵子
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-072612(JP,A)
【文献】実開平06-021626(JP,U)
【文献】特開2008-079866(JP,A)
【文献】特開2011-067407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/494
A61F 13/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体及び液透過性の表面材を有し、吸収性物品に配置される吸収性補助パッドであって、
前記吸収性補助パッドは、可撓性を有する柱状の形態であり、
少なくとも、前記吸収体の長手方向は、前記表面材に覆われており、
前記吸収性補助パッドの長手方向の寸法は、800mm以上1500mm以下であり、
前記吸収性補助パッドの高さ方向の断面の形状は、略矩形又は略円形であり、
前記吸収性補助パッドの高さ方向の断面の外周は、95mm以上140mm以下であり、
前記吸収性補助パッドの、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部と、にそれぞれ切り込みが設けられている、吸収性補助パッド。
【請求項2】
前記表面材が、親水性サーマルボンド不織布又は親水性スパンボンド不織布である、請求項1に記載の吸収性補助パッド。
【請求項3】
前記吸収体が、少なくとも吸収性繊維を含有する、請求項1又は2に記載の吸収性補助パッド。
【請求項4】
前記吸収性繊維が、フラッフパルプあり、
前記表面材の長手方向両端部が、閉塞されており、
前記表面材が、前記吸収体の全体を覆っている、請求項3に記載の吸収性補助パッド。
【請求項5】
前記吸収体が、一種又は二種以上の親水性嵩高不織布であり、前記親水性嵩高不織布が積層され又は蛇腹状に折り畳まれる、請求項1又は2に記載の吸収性補助パッド。
【請求項6】
圧縮率が、30%以上60%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【請求項7】
前記切り込みが、少なくとも、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に、複数設けられている、請求項1から6のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【請求項8】
前記切り込みが、吸収体の存在領域に至るまで形成されている、請求項1から7のいずれかに記載の吸収性補助パッド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の吸収性補助パッドを、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に設けられた切り込みと長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部に設けられた切り込みをかみ合わせて接合して、略O字状に形成し、
平面視において、略O字状に形成された吸収性補助パッドの内周が、少なくとも、吸収性物品の吸収体存在領域上に位置するように、吸収性補助パッドを吸収性物品のトップシートの身体側表面に配置することで吸収性物品からの軟便等の漏れを防止する、吸収性補助パッドの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟便等の漏れを適切に防止することができる低コストの吸収性補助パッド及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大人用紙おむつには、テープ止めタイプ、パンツタイプ等があり、これらの紙おむつは使用者の排泄における介護の必要度に応じて適宜選択されて使用される。これらの吸収性物品は、一般的に、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、両シートの間に配置された吸収体と、で構成されている。このような構成を採用することにより、尿等の体液は、吸収性物品のトップシートを透過して吸収体に吸収され、バックシートにより外部へ漏れないようになっている。
【0003】
ところで、テープ止めタイプやパンツタイプの紙おむつ(以下、紙おむつと称する)は、それ自体を単独で使用する場合と、その内側に尿取りパッドを併用する場合があるが、現在は、尿取りパッドと併用し、尿取りパッドを、トップシート上に重ねて使用する場合がほとんどである。これは、紙おむつ1枚当たりのコストが高いためで、紙おむつに比して安価な尿取りパッドで排泄物を吸収して保持した後、尿取りパッドのみを交換することで、排泄後においても、よりコストの高い紙おむつを交換せずに済み、経済的に低いコストで吸収性物品を使用できるためである。
【0004】
ここで、尿取りパッドは、尿量に応じて様々なサイズや形状があり、排泄された尿を確実に吸収して漏れを防止することができる。しかしながら、軟便、水様便、下痢便(以下、軟便等と称する)に対しては、吸収性が不十分であり、軟便等が尿取りパッド及び紙おむつの外部に漏れることがあったため、軟便等の漏れを防止することを目的とした尿取りパッドについても検討がなされている。
【0005】
軟便等の漏れを防止することを目的とした尿取りパッドとしては、例えば、特許文献1に、トップシートと、バックシートと、吸収体と、立体ギャザーと、を備えた尿取りパッドにおいて、少なくとも股間部の前端よりも後側の範囲内における、立体ギャザーの突出部位より側方に延在する部分に、衣類側表面から見てカップ状に窪んだカップ部が設けられていることを特徴とする尿取りパッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の尿取りパッドにおいても、大量の軟便等が排泄された場合には、尿取りパッドの漏れやすい箇所から紙おむつにまで軟便等が漏れ、さらに、紙おむつから軟便等が衣服や寝具に漏れてしまう可能性があった。また、尿取りパッドは、紙おむつに補助的に用いられるものであるが、広範囲で軟便等の漏れを防止しようとするが故に、必然的にサイズが大きくなることから、原材料コストが高くなり、使用者としては、コスト的に十分に満足できないという問題もあった。したがって、本発明は以上の点の課題に鑑みてなされたものであり、軟便等の漏れを適切に防止することができる低コストの吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、吸収体及び液透過性の表面材から構成した、可撓性を有する柱状の形態を有し、寸法等を所定の範囲に調整し、さらに、所定の位置に切り込みを設けた吸収性補助パッドによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1)本発明の第1の態様は、吸収体及び液透過性の表面材を有し、吸収性物品に配置される吸収性補助パッドであって、前記吸収性補助パッドは、可撓性を有する柱状の形態であり、少なくとも、前記吸収体の長手方向は、前記表面材に覆われており、前記吸収性補助パッドの長手方向の寸法は、800mm以上1500mm以下であり、前記吸収性補助パッドの高さ方向の断面の形状は、略矩形又は略円形であり、前記吸収性補助パッドの高さ方向の断面の外周は、95mm以上140mm以下であり、前記吸収性補助パッドの、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部と、にそれぞれ切り込みが設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の吸収性補助パッドであって、前記表面材が、親水性サーマルボンド不織布又は親水性スパンボンド不織布であることを特徴とするものである。
【0011】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性補助パッドであって、
前記吸収体が、少なくとも吸収性繊維を含有することを特徴とするものである。
【0012】
(4)本発明の第4の態様は、(3)に記載の吸収性補助パッドであって、前記吸収性繊維が、フラッフパルプあり、前記表面材の長手方向両端部が、閉塞されており、前記表面材が、前記吸収体の全体を覆っていることを特徴とするものである。
【0013】
(5)本発明の第5の態様は、(1)又は(2)に記載の吸収性補助パッドであって、前記吸収体が、一種又は二種以上の親水性嵩高不織布であり、前記親水性嵩高不織布が積層され又は蛇腹状に折り畳まれることを特徴とするものである。
【0014】
(6)本発明の第6の態様は、(1)から(5)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、圧縮率が、30%以上60%以下であることを特徴とするものである。
【0015】
(7)本発明の第7の態様は、(1)から(6)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、前記切り込みが、少なくとも、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に、複数設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
(8)本発明の第8の態様は、(1)から(7)のいずれかに記載の吸収性補助パッドであって、前記切り込みが、吸収体の存在領域に至るまで形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
(9)本発明の第9の態様は、(1)から(8)のいずれかに記載の吸収性補助パッドの使用方法であって、請求項1から8のいずれかに記載の吸収性補助パッドを、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に設けられた切り込みと長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部に設けられた切り込みをかみ合わせて接合して、略O字状に形成し、平面視において、略O字状に形成された吸収性補助パッドの内周が、少なくとも、吸収性物品の吸収体存在領域上に位置するように、吸収性補助パッドを吸収性物品のトップシートの身体側表面に配置することで吸収性物品からの軟便等の漏れを防止する、吸収性補助パッドの使用方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明において、吸収性補助パッドの、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部と、にそれぞれ切り込みが設けられている。このため、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に設けられた切り込みと長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部に設けられた切り込みをかみ合わせて接合して、略O字状に形成することができ、吸収性補助パッドを吸収性物品のトップシートの身体側表面に配置することで吸収性物品からの軟便等の漏れを防止することができる。本発明の吸収性補助パッドは、吸収体を表面材で覆うシンプルな構成であるため、原材料コスト及び加工コストを抑えることができる。よって、本発明によれば、軟便等の漏れを適切に防止することができ、かつ、低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】吸収体が蛇腹状に折り畳まれている親水性不織布である場合の、
図1のY
1-Y
1断面図である。
【
図4】本発明の吸収性補助パッドの使用例を示す図面である。
【
図6】本発明の吸収性補助パッドの使用例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、本発明の実施形態の説明の全体を通して、同じ要素には同じ符号を付している。
【0021】
本明細書の説明において、吸収性補助パッド1の着用時とは、吸収性補助パッド1の装着時及び装着後の少なくとも一方をいう。なお、吸収性補助パッド1について、正面図である
図1及び
図2を用いて、長手方向及び高さ方向という文言で寸法等を表現している。具体的には、吸収性補助パッド1の長手方向とは、正面図において、直線状の第一の接合部31に平行な方向であり、図中Xで表す方向である。一方、吸収性補助パッド1の高さ方向とは、正面図において、長手方向に対して直交する方向であり、図中Yで表す方向である。吸収性補助パッド1が後述するように略O字状に形成され、吸収性物品に配置される際には、吸収性補助パッド1の高さ方向のいずれか一方の端部が吸収性物品に接するように配置される。さらに、身体側表面とは、紙おむつや尿取りパッドなどの吸収性物品におけるトップシート等の各部材の表裏両面のうち、着用時に着用者の肌側に配される面であり、衣類側表面とは、着用時に着用者の肌側とは反対側に向けられる面である。
【0022】
<吸収性補助パッド>
図1及び
図2は本発明の吸収性補助パッド1の正面図、
図3は本発明の吸収性補助パッド1の断面図(
図1のY
1-Y
1の断面図)、
図4及び
図6は本発明の吸収性補助パッド1の使用例を示す図面、
図5は
図4のA
1-A
1断面図、
図7は
図6のB
1-B
1断面図である。なお、
図4から
図7において、紙おむつ40や尿取りパッド50の吸収体及びバックシートの記載は省略した。本発明の吸収性補助パッド1は、
図4及び
図5に示すように、紙おむつ40に、直接配置させることもでき、また、
図6及び
図7に示すように、紙おむつ40に尿取りパッド50を装着させ、尿取りパッド50の身体側に、配置させることもできる。吸収性補助パッド1は、
図1から
図3に示すように、吸収体20及び液透過性の表面材30を有し、可撓性を有する柱状の形態であり、さらに、吸収性補助パッド1の、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部と、にそれぞれ切り込み33が設けられている。このため、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に設けられた切り込み33と長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部に設けられた切り込み33をかみ合わせて接合して、略O字状に形成することができ、平面視において、略O字状に形成された吸収性補助パッド1の内周が、少なくとも、吸収性物品の吸収体存在領域上に位置するように、吸収性補助パッド1を吸収性物品のトップシートの身体側表面に配置することで、軟便等を堰き止め、吸収性物品からの軟便等の漏れを防止することができる。この場合に、軟便を堰き止める堤防としての吸収性補助パッド1の機能を十分に発揮させるために、臀部で吸収性補助パッドの高さ方向を潰さないように、臀部の周囲に沿うように配置させることが好ましい。また、吸収性補助パッド1が略O字状の形態を有することにより、軟便等を全方から取り囲むことができ、着用者の、側臥位、仰臥位、座位等の体位にかかわらず、軟便等の漏れを適切に防止することができる。
【0023】
具体的には、
図4から
図7に示すように、紙おむつ40や尿取りパッド50等の吸収性物品の股部bに位置する排便領域を前部aから後部cにかけて囲い、かつ、紙おむつの立体ギャザー41や尿取りパッドの立体ギャザー51の内側に沿うように、略O字状に配置することが好ましい。また、本発明の吸収性補助パッド1は、可撓性を有するため、着用する吸収性物品の態様、大きさ、形状に合わせて、適切に吸収性補助パッド1を配置することができ、軟便等の漏れを適切に防止することができる。さらに、本発明の吸収性補助パッド1は、吸収体20と表面材30とからなるシンプルな構成であるため、可撓性を有するだけでなく、原材料コスト及び加工コストを抑えることができる。
【0024】
また、図示しないが、吸収性補助パッド1を紙おむつ40や尿取りパッド50等の吸収性物品の股部bに位置する排便領域を前部aから後部cにかけて囲い、かつ、紙おむつ40の立体ギャザー41や尿取りパッドの立体ギャザー51の内側に沿うように、略U字状に配置することにより、吸収性補助パッド1が軟便等を堰き止め、吸収性物品からの軟便等の漏れを防止することもできる。
【0025】
また、本発明において、フィット性を向上させるために、吸収性補助パッド1の高さ方向の断面(
図1におけるY
1-Y
1断面)の形状は、略矩形又は略円形である。また、吸収性補助パッド1の長手方向の寸法(
図1におけるX方向の寸法)は、800mm以上1500mm以下であり、1000mm以上1200mm以下であることが好ましく、吸収性補助パッド1の高さ方向の断面の外周(
図3における外周)は、95mm以上140mm以下であり、100mm以上120mm以下であることがより好ましい。吸収性補助パッド1の長手方向の寸法と高さ方向の断面の外周を上記の範囲にすることで、着用する吸収性物品の態様、大きさ、形状に合わせて、軟便等の漏れを適切に防止できる吸収性補助パッド1を提供することができる。
【0026】
(切り込み)
本発明において、吸収性補助パッド1の、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部と、にそれぞれ切り込み33が設けられている。このため、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に設けられた切り込み33と長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部に設けられた切り込み33をかみ合わせて接合して、略O字状に形成することができ、平面視において、略O字状に形成された吸収性補助パッドの内周が、少なくとも、吸収性物品の吸収体存在領域上に位置するように、吸収性補助パッド1を吸収性物品のトップシートの身体側表面に配置することで、軟便等を堰き止め、吸収性物品からの軟便等の漏れを防止することができる。なお、切り込み33は、ダイカッターや刃などにより形成することができ、切り込み33を設けた部分については、フラッフパルプ等の吸収性繊維が外に漏れないように、ヒートシール、超音波シール、ホットメルト等の公知の方法により、閉合していることが好ましい。
【0027】
切り込み33は、少なくとも、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に、おいて、複数設けられていることが好ましい。切り込み33が、少なくとも、長手方向の一方端部において、複数設けられていることにより、略O字状に形成する際のサイズを、着用する吸収性物品の態様、大きさ、形状や着用者の体形に合わせて、調整することができ、軟便等の漏れを適切に防止することができる。なお、この場合において、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部の切り込み33の本数は、吸収性補助パッド1を略O字状の形態にする際のサイズをより調整しやすくするために、1本以上5本以下であることが好ましく、隣接する切り込み33同士の間隔は、20mm以上150mm以下であることが好ましい。切りこみ33の本数や隣接する切り込み33同士の間隔を上記の範囲に調整することにより、切り込み33同士をかみ合わせて接合しやすく、かつ、かみ合わせて接合することにより形成された略O字状の形態を維持しやすくすることができる。また、かみ合わせやすく、かつ、切り込み33を設けた領域からの軟便等の漏れを防止するために、切り込み33の深さ(
図1及び
図2におけるY方向の切り込み33の寸法)は、高さ方向の断面の外周の40パーセント以上60パーセント以下であることが好ましく、切り込み33の幅(
図1及び
図2におけるX方向の切り込み33の寸法)は1mm以上10mm以下であることが好ましい。
なお、切り込み33同士をかみ合わせて接合して、略O字状に形成する際に、段差が生じずに平坦な形状となるように、かつ、略O字状の形態が安定するように、
図1及び
図2に示すように、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に設けられた切り込み33の深さ(1本あたり)と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部に設けられた切り込み33の深さ(1本あたり)と、の合計が、吸収性補助パッド1の高さ方向の寸法(
図1及び2において、吸収性補助パッド1のY方向の寸法)と、略同一であることが好ましい。また、同様の観点から、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部に設けられた切り込み33の幅と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部に設けられた切り込み33の幅は、略同一であることが好ましい。このように、切り込み33の高さ方向の寸法と幅を調整することにより、軟便等の漏れを効果的に防止することができる。
また、切り込み33を、長手方向の他方端部にも複数設ける場合の、切り込み33の本数、隣接する切り込み33の本数、切り込み33の本数も、上記の範囲とすることが好ましい。
【0028】
また、切り込み33が、吸収体20の存在領域に至るまで形成されていることが好ましい。切り込み33が、吸収体20の存在領域に至るまで形成されていることにより、吸収体20が吸収により膨潤して体積が増加するSAP等の成分を含む場合は、軟便等を吸収体20が吸収した際に、吸収体20の膨潤により切り込み33の領域も膨らみ、切り込み33を設けた部分からの軟便を堰き止めることができる。
【0029】
(圧縮率)
本発明の吸収性補助パッド1の無荷重の厚さ(以下、「圧縮前の厚さ」とする)は、15mm以上35mm以下であることが好ましく、20mm以上30mm以下であることがより好ましい。ここで、「厚さ」とは、
図1及び
図2における吸収性補助パッド1の高さ方向(Y方向)断面において、高さ方向と直交する方向(
図3において、Y方向と直交する方向)の寸法を指す。また、吸収性補助パッド1に、厚さ方向を上下にした状態で、縦及び横の寸法が50mmであるアクリルプレートを乗せ、さらに、アクリルプレートの上に688gの重りを乗せた状態での吸収性補助パッド1の厚さ(以下、「圧縮後の厚さ」とする)は、5mm以上15mm以下であることが好ましく、8mm以上10mm以下であることがより好ましい。さらに、{圧縮前の厚さ(mm)-圧縮後の厚さ(mm)}/圧縮前の厚さ(mm)×100の式で算出される数値を、吸収性補助パッド1の圧縮率(%)とし、圧縮率(%)は、フィット性の観点から、30%以上60%以下であることが好ましく、45%以上55%以下であることがより好ましい。
本発明の吸収性補助パッド1は、上記した通り、軟便を堰き止める堤防としての吸収性補助パッド1の機能を十分に発揮させるために、臀部で吸収性補助パッド1の高さ方向を潰さないように、臀部の周囲に沿うように配置させることが好ましい。このように配置させた場合において、着用時の体圧は、上記の厚さ方向に強くかかる傾向にある。そのため、
圧縮前後の厚さ及び圧縮率を上記の範囲とすることで、吸収性補助パッド1が、体圧がかかった状態で身体に隙間なくフィットし、軟便等の漏れを効果的に防止することができ、かつ、着用時の痛みや褥瘡を防止することができる。
【0030】
[吸収体]
本発明に用いられる吸収体20は、次の態様のいずれかを用いることが好ましい。
【0031】
(吸収体の第一の態様)
本発明に用いる吸収体20の基材は、軟便等を吸収できるものであれば、特に限定されないが、第一の態様として、吸収体20は、少なくとも吸収性繊維を含有することが好ましい。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンや紙おむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティッシュ、吸収紙等が挙げられるが、これらの中でも、適度な通液性及び吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、100g/m2以上800g/m2以下の坪量とすることが好ましい。
【0032】
さらに、当該態様において、吸収体20は、吸収性繊維に加えて、高吸収性ポリマー(SAP)を含有することが好ましい。SAPを含有させることにより、SAPが軟便等に含まれる水分を吸収して膨潤し、上記のように切り込み33同士をかみ合わせて接合した部分の隙間を埋めることができ、軟便の漏れをより効果的に防止することができる。SAPとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体20にSAPを含有させる場合には、吸収体20のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、500g/m2以下の坪量とすることが好ましい。また、肌触り、吸収速度及び吸収量の観点から、吸収体20の重量に対するSAPの重量は、50質量%以下であることが好ましい。なお、吸収体20において、吸収性繊維の他にSAPを混合する場合には、吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成すればよい。
【0033】
(吸収体の第二の態様)
また、上記の第一の態様とは異なる吸収体20の第二の態様として、吸収体20が、一種又は二種以上の親水性嵩高不織布であり、親水性嵩高不織布が積層され又は
図3に示すように蛇腹状に折り畳まれていることが好ましい。
【0034】
親水性嵩高不織布の素材としては、親水化処理したポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維を用いることができ、親水性嵩高不織布の加工法としては、スパンボンド法、スパンレース法、エアレイド法、メルトブロー法等の公知の加工法を用いることができる。これらの素材及び加工法で作られる親水性嵩高不織布のうち、本発明の吸収性補助パッド1に用いる親水性嵩高不織布としては、適度な通液性及び吸収性の観点から、パルプ含有エアレイド不織布、バインダーを使用せずに木材パルプを交絡させたポリプロピレンメルトブローン不織布、又は、レーヨンスパンレース不織布を用いることが好ましい。
【0035】
なお、吸収体20の吸収性の観点から、上記のパルプ含有エアレイド不織布に含まれるパルプの重量は、吸収体20の重量に対して、80%以上であることが好ましく、上記のバインダーを使用せずに木材パルプを交絡させたポリプロピレンメルトブローン不織布に含まれる木材パルプの重量は、吸収体20の重量に対して、60%以上80%以下であることが好ましい。
【0036】
[表面材]
表面材30は、吸収体20に向けて体液を速やかに通過させるものであり、少なくとも、吸収体20の長手方向を覆っている。表面材30は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような基材、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。表面材30は、単層であっても、複数層積層していてもよく、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。なお、本発明に用いる表面材30としては、親水性サーマルボンド不織布、又は、親水性スパンボンド不織布であることが好ましい。不織布の素材としては、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができる。
【0037】
表面材30は、
図1に示すように、直線状の第一の接合部31を、長手方向に有しており、当該接合部により、表面材30が接合され、吸収体20の長手方向を覆うことができる。表面材30の接合は、ヒートシール、超音波シール、ホットメルト等の公知の方法により行うことができる。また、吸収体20が上記した第一の態様である場合で、かつ、吸収性繊維がフラッフパルプなどの短繊維からなる場合には、フラッフパルプなどの短繊維が吸収性補助パッド1の長手方向両端部から漏れることを防止するために、
図2に示すように、表面材30の長手方向両端部が第二の接合部32により、閉塞されており、表面材30が、吸収体20の全体を覆っていることが好ましい。
【0038】
さらに、表面材30の坪量は、加工性及び強度の点から、15g/m2以上200g/m2以下であることが好ましい。表面材30には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。
【0039】
(固定手段)
また、表面材30は、吸収性補助パッド1を吸収性物品の表面に固定する固定手段を、少なくとも一箇所に有していてもよい。固定手段としては、フック部材、粘着剤等を用いることができる。また、固定手段を保護するための剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性補助パッド1の包装シートと一体となっていてもよい。
【0040】
<吸収性補助パッドの使用方法>
本発明の吸収性補助パッド1の使用方法について、
図4から
図7を用いて説明する。本発明の吸収性補助パッド1は、前記吸収性補助パッドの、長手方向の一方端部における高さ方向の一方端部と、長手方向の他方端部における高さ方向の他方端部と、にそれぞれ設けられた切り込み33をかみ合わせて接合して、略O字状に形成したうえで、
図4及び
図5に示すように、吸収性物品である紙おむつ40に、配置させることができる。その場合、平面視において、少なくとも略O字状の吸収性補助パッド1の内周が、テープ止めタイプ等の紙おむつ40の吸収体存在領域上に位置するように、吸収性補助パッド1を紙おむつのトップシート42の身体側表面に配置することで、軟便等を堰き止め、テープ止めタイプ等の紙おむつ40からの軟便等の漏れを適切に防止することができる。さらに、軟便を堰き止める堤防としての吸収性補助パッド1の機能を十分に発揮させるために、臀部で吸収性補助パッド1の高さ方向を潰さないように、臀部の周囲に沿うように配置させることが好ましい。
【0041】
また、より具体的には、
図4から
図7に示すように、紙おむつ40の股部bに位置する排便領域を前部aから後部cにかけて囲い、かつ、紙おむつの立体ギャザー41の内側に沿うように、略O字状に配置することが好ましい。また、
図6及び
図7に示すように、本発明の吸収性補助パッド1は、テープ止めタイプ等の紙おむつ40と尿取りパッド50を併用する場合にも、使用することができる。この場合にも、紙おむつのトップシート42の身体側に吸収性物品である尿取りパッド50を、装着させ、平面視において、少なくとも略O字状の吸収性補助パッド1の内周が、尿取りパッド50の吸収体存在領域上に位置するように、吸収性補助パッド1を尿取りパッドのトップシート52の身体側表面に配置させる。また、この場合も、尿取りパッドのトップシート52上の股部bに位置する排便領域を前部aから後部cにかけて囲うように、かつ、テープ止めタイプ等の紙おむつの立体ギャザー41の内側に沿うように、さらに、尿取りパッド50が立体ギャザー51を備える場合には尿取りパッドの立体ギャザー51の内側に沿うように、略O字状に配置する。このように、吸収性補助パッド1を配置することにより、吸収性補助パッド1が軟便等を堰き止め、尿取りパッド50からテープ止めタイプ等の紙おむつ40への軟便等の漏れを適切に防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 吸収性補助パッド
20 吸収体
30 表面材
31 第一の接合部
32 第二の接合部
33 切り込み
40 吸収性物品(紙おむつ)
41 吸収性物品(紙おむつ)の立体ギャザー
42 吸収性物品(紙おむつ)のトップシート
50 吸収性物品(尿取りパッド)
51 吸収性物品(尿取りパッド)の立体ギャザー
52 吸収性物品(尿取りパッド)のトップシート
a 前部
b 股部
c 後部