(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】制御装置、該制御装置に搭載された基板、及び該制御装置が適用された真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20220329BHJP
F04D 19/04 20060101ALI20220329BHJP
H01L 23/36 20060101ALN20220329BHJP
【FI】
H05K7/20 F
F04D19/04 Z
H01L23/36 D
(21)【出願番号】P 2017050495
(22)【出願日】2017-03-15
【審査請求日】2020-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105201
【氏名又は名称】椎名 正利
(72)【発明者】
【氏名】深美 英夫
(72)【発明者】
【氏名】江澤 由雅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】小川 智優
(72)【発明者】
【氏名】舘野 泰
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-261199(JP,A)
【文献】特開2012-195525(JP,A)
【文献】特開2015-172358(JP,A)
【文献】特開2005-317798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0247823(US,A1)
【文献】特開2010-196926(JP,A)
【文献】特開2005-129820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
F04D 19/04
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱の必要な複数の電子部品が一方の面に搭載され、放熱の必要のない複数の電子部品が他方の面に搭載された基板と、
外部に熱を放熱する放熱板と、
該放熱板と前記基板間に挟まれた、可とう性を有する放熱部材とを備え、
該放熱部材が前記放熱の必要な複数の電子部品と前記基板の面を覆いつつ該放熱の必要な複数の電子部品と前記基板とに接触し
、
前記放熱板は、前記放熱部材の弾力性の許容範囲を超える高さの前記放熱の必要な複数の電子部品に対応する位置に窪みが形成されていることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記窪みは前記放熱の必要な複数の電子部品の前記基板面からの部品高さが所定の高さを超えるまでは形成され
ないことを特徴とする請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記放熱の必要な複数の電子部品が前記基板の片側面にまとめて配置されたことを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記放熱部材が前記放熱の必要な複数の電子部品のそれぞれの周囲で前記基板と接触していることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記放熱部材がシート状で、かつ、一枚で構成されたことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記基板と前記放熱板間の高さ間隔は前記放熱板又は前記制御装置の筐体から突設されたボスにより規制されることを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記ボスが複数個均等配置されたことを特徴とする請求項
6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記放熱板が前記制御装置の筐体と兼用されたことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記基板は、前記放熱部材と接触している部分には、表面にレジストが形成されていないことを特徴とする請求項1~
8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記基板には磁気軸受に電流を流す磁気軸受用駆動電流増幅器とモータに電流を流すモータ用駆動電流増幅器のいずれか少なくとも一つが搭載されたことを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の制御装置に搭載されたことを特徴とする基板。
【請求項12】
請求項1~
10のいずれか1項に記載の制御装置を適用したことを特徴とする真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置、該制御装置に搭載された基板、及び該制御装置が適用された真空ポンプに係わり、特に放熱効率が高く小型で組み立て作業が容易であり、放熱シートとの接触の際に基板のゆがみが少ない制御装置、該制御装置に搭載された基板、及び該制御装置が適用された真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの発展に伴い、メモリや集積回路といった半導体の需要が急激に増大している。
これらの半導体は、きわめて純度の高い半導体基板に不純物をドープして電気的性質を与えたり、エッチングにより半導体基板上に微細な回路を形成したりなどして製造される。
【0003】
そして、これらの作業は空気中の塵等による影響を避けるため高真空状態のチャンバ内で行われる必要がある。このチャンバの排気には、一般に真空ポンプが用いられているが、特に残留ガスが少なく、保守が容易等の点から真空ポンプの中の一つであるターボ分子ポンプが多用されている。
【0004】
また、半導体の製造工程では、さまざまなプロセスガスを半導体の基板に作用させる工程が数多くあり、ターボ分子ポンプはチャンバ内を真空にするのみならず、これらのプロセスガスをチャンバ内から排気するのにも使用される。
さらに、ターボ分子ポンプは、電子顕微鏡等の設備において、粉塵等の存在による電子ビームの屈折等を防止するため、電子顕微鏡等のチャンバ内の環境を高度の真空状態にするのにも用いられている。
【0005】
このターボ分子ポンプは、ポンプ本体とそのポンプ本体を制御する制御装置とからなる。
制御装置の内部構造の例を
図4に示す。
図4において、制御装置20の内部には基板1が配設されている。そして、この基板1の上下両面には電子部品3が搭載されている。この電子部品3の内、特に発熱量が大きく放熱の必要な素子については放熱シート5が載置され、その放熱シート5の上面には放熱板7が配設されている。放熱板7は制御装置の筐体9より立設された熱伝導率の高い図示しない支持部材により支持されている。
【0006】
一方、この放熱の必要な素子の搭載された基板1の裏側には放熱量の大きな素子からの熱を直接逃がすための放熱シート11が筐体9との間に間装されている。このように基板1と筐体9との間に放熱部材を介した先行技術の例としては特許文献1がある。
図4において、基板1の上下両面には導体部分である配設パターンが形成されており、通常はこの配線パターンは腐食対策等のためレジストで被覆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板1で発生した熱を放熱シートに効率よく逃がすと言う点で考えると伝熱性の良くないレジストは形成されていないことが望ましい。このため、放熱シート11に面する基板1の裏側にはこのレジストは形成されておらず、基板1が直接放熱シート11と接触していた。従って、従来はこの放熱シート11に面する基板1の裏側には電子部品は搭載できなかった。
【0009】
また、
図4の構成では放熱シート5、11や放熱板7が配設されている分、部品点数は多く、組み立ては複雑であった。
更に、電子部品3はその基板1からの高さが部品により様々であるため、放熱シート5を選定する際には高さの高い部品と高さの低い部品のすべてについて放熱シートが接触できるようにする必要があり設計が煩雑であった。高さの相違に合わせて複数の放熱シートを用意することも可能であるが、放熱シートは柔らかく、複数となった分位置決めが難しくなり作業性も悪くなる。
【0010】
また、従来は
図5に示すように電子部品3の搭載された基板1の全体をモールド材13で固めた上で筐体9に対し直接接触させることで放熱させていた例がある。
しかしながら、
図5の場合には回路に故障原因があった場合であっても故障の調査は出来ず、故障があった場合には電子部品3をモールド材13毎交換する必要があり修理交換の費用が高かった。
【0011】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、放熱効率が高く小型で組み立て作業が容易であり、放熱シートとの接触の際に基板のゆがみが少ない制御装置、該制御装置に搭載された基板、及び該制御装置が適用された真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため本発明(請求項1)は制御装置の発明であって、放熱の必要な複数の電子部品が一方の面に搭載され、放熱の必要のない複数の電子部品が他方の面に搭載された基板と、外部に熱を放熱する放熱板と、該放熱板と前記基板間に挟まれた、可とう性を有する放熱部材とを備え、該放熱部材が前記放熱の必要な複数の電子部品と前記基板の面を覆いつつ該放熱の必要な複数の電子部品と前記基板とに接触し、前記放熱板は、前記放熱部材の弾力性の許容範囲を超える高さの前記放熱の必要な複数の電子部品に対応する位置に窪みが形成されていることを特徴とする。
【0013】
放熱シートは可とう性を有するものを採用する。そして、放熱シートは電子部品と基板の面を覆いつつ電子部品と基板とに接触させる。このことにより、放熱シートと基板間の接触面積が増え放熱の効率は高くできる。また、従来は、放熱シートが基板と接触する部分には基板上に電子部品は搭載出来なかったので基板サイズが大きくなってしまっていたが、本発明では放熱シート部分にも電子部品を搭載出来るため基板サイズを小さくできる。更に、従来と異なり、放熱シートと放熱板の必要数も少なくなるため回路高さも低く構成できる。
また、基板面からの高さの高い電子部品であったとしても放熱シート側が変形され、基板にストレスがかかり基板がゆがむと言うことは無くなる。
放熱板面に窪みを設けたことで、放熱シートは各電子部品の周囲においても基板に接触できるようになった。このため、放熱シートと基板間の接触面積が増え放熱の効率は高くできる。
【0016】
更に、本発明(請求項2)は制御装置の発明であって、前記窪みは前記放熱の必要な複数の電子部品の前記基板面からの部品高さが所定の高さを超えるまでは形成されないことを特徴とする。
【0017】
電子部品の基板面からの高さが所定の高さを超えるまでは放熱シートの有する可とう性により放熱シートが変形することで電子部品を吸収できる。一方、所定の高さを超えたときには窪みを形成することで基板にストレスがかかり基板がゆがむと言うことは無くなる。
【0019】
更に、本発明(請求項3)は制御装置の発明であって、前記放熱の必要な複数の電子部品が前記基板の片側面にまとめて配置されたことを特徴とする。
【0020】
基板の片側面に放熱の必要な複数の電子部品を配置したことで放熱シートの設置がし易くなる。放熱対策もこの片側面だけで済むので簡単である。
【0021】
更に、本発明(請求項4)は制御装置の発明であって、前記放熱部材が前記放熱の必要な複数の電子部品のそれぞれの周囲で前記基板と接触していることを特徴とする。
【0022】
各電子部品の周囲は放熱シートと基板間で接触出来ているので放熱の心配は無く設計の自由度が増す。放熱に必要な接触面積も増大できる。従って、放熱のためだけに必要な面積は減り、小型に構成できる。
【0023】
更に、本発明(請求項5)は制御装置の発明であって、前記放熱部材がシート状で、かつ、一枚で構成されたことを特徴とする。
【0024】
放熱シートは基板に接触する機能と電子部品に接触する機能の両方の機能を備えているので一枚で済む。このように一枚となったことで放熱シートと基板を含む回路高さが低く抑えられ、また、部品の点数が少なくなったので作業性がよくできる。そして、空間のレイアウトもし易くできる。
【0025】
更に、本発明(請求項6)は制御装置の発明であって、前記基板と前記放熱板間の高さ間隔は前記放熱板又は前記制御装置の筐体から突設されたボスにより規制されることを特徴とする。
【0026】
このことにより、放熱シート側がボスで規制された高さの範囲内に納まるように弾力性により多少ゆがむため基板にはストレスがかからないようにできる。
【0027】
更に、本発明(請求項7)は制御装置の発明であって、前記ボスが複数個均等配置されたことを特徴とする。
【0028】
放熱シートと基板間の接触圧を均等にすることで、基板がゆがまないようにすることができる。
【0029】
更に、本発明(請求項8)は制御装置の発明であって、前記放熱板が前記制御装置の筐体と兼用されたことを特徴とする。
【0030】
放熱板を筐体と兼用することで制御装置が簡素に構成できる。
【0031】
更に、本発明(請求項9)は制御装置の発明であって、前記基板は、前記放熱部材と接触している部分には、表面にレジストが形成されていないことを特徴とする。
【0032】
レジストを形成しないことで放熱効率を向上できる。
【0033】
更に、本発明(請求項10)は制御装置の発明であって、前記基板には磁気軸受に電流を流す磁気軸受用駆動電流増幅器とモータに電流を流すモータ用駆動電流増幅器のいずれか少なくとも一つが搭載されたことを特徴とする。
【0034】
磁気軸受に流す電流やモータの電流は大きいため電子部品からの発熱量は大きいが本発明により簡素な構成で効率よく放熱ができる。
【0035】
更に、本発明(請求項11)は基板の発明であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の制御装置に搭載されたことを特徴とする。
【0036】
更に、本発明(請求項12)は真空ポンプの発明であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の制御装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように本発明(請求項1)によれば、可とう性を有する放熱シートが電子部品と基板の面を覆いつつ電子部品と基板とに接触するように構成したので、放熱シートと基板間の接触面積が増え放熱の効率は高くできる。また、従来は、放熱シートが基板と接触する部分には基板上に電子部品は搭載出来なかったので基板サイズが大きくなってしまっていたが、本発明では放熱シート部分にも電子部品を搭載出来るため基板サイズを小さくできる。更に、従来と異なり、放熱シートと放熱板の必要数も少なくなるため高さも低く構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図5】基板の全体をモールド材で固めた上で筐体に対し直接接触させた例(従来)
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の実施形態の全体構成図を
図1に示す。
図1において、ターボ分子ポンプ10は、ポンプ本体100と制御装置200とが一体化されている。但し、ポンプ本体100と制御装置200とは分離されていても本実施形態の適用は可能である。
【0040】
ポンプ本体100の円筒状の外筒127の上端には吸気口101が形成されている。外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードによる複数の回転翼102a、102b、102c・・・を周部に放射状かつ多段に形成した回転体103を備える。
【0041】
この回転体103の中心にはロータ軸113が取り付けられており、このロータ軸113は、例えば、いわゆる5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。
【0042】
上側径方向電磁石104は、4個の電磁石が、ロータ軸113の径方向の座標軸であって互いに直交するX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104に近接かつ対応されて4個の電磁石からなる上側径方向センサ107が備えられている。この上側径方向センサ107は回転体103の径方向変位を検出し、制御装置200に送るように構成されている。
【0043】
制御装置200においては、上側径方向センサ107が検出した変位信号に基づき、PID調節機能を有する補償回路を介して上側径方向電磁石104の励磁を制御し、ロータ軸113の上側の径方向位置を調整する。
【0044】
ロータ軸113は、高透磁率材(鉄など)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。
【0045】
また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
【0046】
更に、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向変位信号が制御装置200に送られるように構成されている。
【0047】
そして、軸方向電磁石106A、106Bは、この軸方向変位信号に基づき制御装置200のPID調節機能を有する補償回路を介して励磁制御されるようになっている。軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bは、磁力により金属ディスク111をそれぞれ上方と下方とに吸引する。
【0048】
このように、制御装置200は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。
【0049】
モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置200によって制御されている。
【0050】
回転翼102a、102b、102c・・・とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123a、123b、123c・・・が配設されている。回転翼102a、102b、102c・・・は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。
【0051】
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。
そして、固定翼123の一端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125a、125b、125c・・・の間に嵌挿された状態で支持されている。
【0052】
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。
【0053】
固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部にはベース部129が配設され、固定翼スペーサ125の下部とベース部129の間にはネジ付きスペーサ131が配設されている。そして、ベース部129中のネジ付きスペーサ131の下部には排気口133が形成され、外部に連通されている。
【0054】
ネジ付きスペーサ131は、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、又はこれらの金属を成分とする合金などの金属によって構成された円筒状の部材であり、その内周面に螺旋状のネジ溝131aが複数条刻設されている。
ネジ溝131aの螺旋の方向は、回転体103の回転方向に排気ガスの分子が移動したときに、この分子が排気口133の方へ移送される方向である。
【0055】
回転体103の回転翼102a、102b、102c・・・に続く最下部には回転翼102dが垂下されている。この回転翼102dの外周面は、円筒状で、かつネジ付きスペーサ131の内周面に向かって張り出されており、このネジ付きスペーサ131の内周面と所定の隙間を隔てて近接されている。
【0056】
ベース部129は、ターボ分子ポンプ10の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。
【0057】
ベース部129はターボ分子ポンプ10を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
【0058】
かかる構成において、回転翼102がモータ121により駆動されてロータ軸113と共に回転すると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じてチャンバからの排気ガスが吸気される。
【0059】
吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送される。このとき、排気ガスが回転翼102に接触又は衝突する際に生ずる摩擦熱や、モータ121で発生した熱の伝導や輻射などにより、回転翼102の温度は上昇するが、この熱は、輻射又は排気ガスの気体分子等による伝導により固定翼123側に伝達される。
【0060】
固定翼スペーサ125は、外周部で互いに接合しており、固定翼123が回転翼102から受け取った熱や排気ガスが固定翼123に接触又は衝突する際に生ずる摩擦熱などを外筒127やネジ付きスペーサ131へと伝達する。
ネジ付きスペーサ131に移送されてきた排気ガスは、ネジ溝131aに案内されつつ排気口133へと送られる。
【0061】
次に、制御装置200内の基板構成について説明する。
制御装置200の内部図を基板構成と共に
図2に示す。
図2に示すように、パワー基板21上には、磁気軸受の各電磁石104、105、106に対し電流を流すためのスイッチング素子としてのFETを含む駆動電流増幅器と三相のモータ121に対し電流を流すためのスイッチング素子としてのFETを含む駆動電流増幅器とを含む電子部品23が搭載されている。
【0062】
この電子部品23の内、ダイオードのように特に発熱量が大きく放熱を必要としている素子はパワー基板21の下面側にまとめられている。一方、発熱量が余り大きくなく、放熱が必要とされない素子についてはパワー基板21の上面側にまとめられている。制御装置200の筐体9からは12カ所においてボス25が突設されている。ボス25の高さは例えば2.5mmである。
【0063】
図3にパワー基板21の平面図を示す。このパワー基板21にはボス25に対応した12カ所の位置にネジ穴27が形成されている。1枚の放熱シート29がパワー基板21の全体を覆うようにパワー基板21と筐体9の間に挟装されている。放熱シート29は放熱部材に相当する。この放熱シート29はパワー基板21と筐体9の間で隙間ができないような弾力性のあるやわらかい素材が望ましく、例えば富士高分子工業株式会社のサーコンゲルタイプの型式GR-25A、厚さ3.0mmが適用される。
【0064】
ここで、放熱部材の一例として、シート状のものを紹介したが、これに限定されず、シート状の形態でない、面に対して厚みが厚いブロック状やゲル状、コンパウンド状のものであっても良い。ゲル状やコンパウンド状の場合、放熱部材が他に移動しない様に、放熱部材の周りを壁で囲った構造にしても良い。
【0065】
図2において、放熱シート29の上面はパワー基板21と接触している。そして、この接触部分についてはパワー基板21の表面にレジストは形成されていない。即ち、このレジストの形成されていない部分にも部品が配置されている点で本実施形態は従来とは異なる。
【0066】
また、電子部品23のパワー基板21の表面からの部品高さ寸法は様々であり、電子部品23aのように低いものもあれば、電子部品23bや電子部品23cのように高いものもある。放熱シート29はこれらの電子部品23a、23b、23cの頭頂部も覆いつつ、これらの頭頂部に対して接触をしている。
また、電子部品23a、23b、23cの部品高さ寸法は、部品の種類だけで無く、同じ部品でも半田などの取り付け具合によってもばらつきが生じる。
【0067】
電子部品23bや電子部品23cのように所定の高さを超えた部品の場合については筐体9の上面にその部品の高さに応じて窪み31aと窪み31bとが刻設されている。この所定の高さは例えば放熱シート29の弾力性の許容範囲である0.5mmである。窪み31は部品23の部品高さが高いほどより深く形成されている。この窪み31の深さは放熱シート29の弾力性を考慮して予め経験値や実験値に基づき形成される。窪み31aと窪み31bの深さは本実施形態の場合、最も深い所で約1mm程である。この窪み31a、31bによって、電子部品23aに掛かる圧力に比べ、電子部品23b、23cの頭頂部または電子部品23b、23cの設置位置のパワー基板21に掛かる圧力が過剰に増加し、パワー基板21がゆがむことを低減出来る。
【0068】
かかる構成において、筐体9は放熱板を兼ねている。
図3のネジ穴27に示す通りこのネジ穴27に対応して設けられるボス25は中心部に1個、周辺部に11個配置されている。パワー基板21は筐体9に対してこのネジ穴27とボス25に通されたネジで固定される。即ち、ボス25によりパワー基板21の高さの位置決めがされる。
【0069】
そして、ネジ穴27及びボス25は切欠き部分33A、33Bを除くと周状に均等に配置されている。パワー基板21を筐体9に対して固定するだけであれば4個程度のボスを用意すればよい。このように12個と多くの個数のボスを均等配置したのは放熱シート29とパワー基板21間の接触圧を全体に均等にすることで放熱シート29とパワー基板21の接触面積が増え放熱の効率が高く出来ることと、パワー基板21がゆがまないようにするためである。仮にボスの個数が少ない場合には、放熱シート29がパワー基板21に対して偏った箇所に無理に押し付けられる恐れが出てくる。この場合にはパワー基板21がゆがみ、細い配線パターンを適用している場合にはこのストレス(圧力)により発熱を生じたり、パターンのクラックによる断線などの故障の原因となる。
【0070】
ボス25の高さは例えば2.5mmで放熱シート29の自然高さ(本実施形態では3mm)よりも多少低め(本実施形態では0.5mm程低い)に設定されている。このことにより、パワー基板21にはストレスがかからないように放熱シート29側がそのボス25で規制された高さの範囲内に納まるように弾力性により多少ゆがむ。
【0071】
放熱シート29の厚みは放熱性能を考えると薄くすることが望ましい。しかし、薄くすればする程くぼまなくなり電子部品23bや電子部品23cのような高さの吸収ができなくなる。一方、放熱シート29の厚みを厚くすると放熱性能が落ちてしまう。従って、放熱シート29の厚みは電子部品23が覆え、かつ、放熱性能を考慮した形で決められる。即ち、放熱シート29の厚みは、可能な限り薄く、かつ、電子部品23の高さよりも厚いものを選択する。
【0072】
本実施形態では
図2を見て分かる通り、電子部品23aの場合のようにパワー基板21からの高さが低く、例えばこの高さが0.5mmまでは放熱シート29の弾力性の許容範囲でこの電子部品23aの高さ分は吸収される。このときの0.5mmは放熱シート29の弾力性の許容範囲であり、所定の高さに相当する。
【0073】
一方、弾力性の許容範囲の0.5mmを越えた分の高さは電子部品23bや電子部品23cのように窪み31aや窪み31bで吸収させる。このような放熱シート29の弾力性の許容範囲は使用する電子部品23aの高さによって予め経験値や実験値に基づき決められる。
【0074】
従来は
図4に示すように放熱シート5は電子部品3の頭頂部の表面にしか接触できなかった。これに対して、本実施形態では電子部品23bや電子部品23cに対応する位置の放熱シート29を挟んだ筐体9面側に窪み31aや窪み31bを設けた。このことにより、高さの高い電子部品23であったとしても放熱シート29側が変形されることで、パワー基板21にストレスがかかりパワー基板21がゆがむと言うことは無くなる。
【0075】
また、筐体9面に窪み31aや窪み31bを設けたことで、放熱シート29は各電子部品23bや電子部品23cの周囲においてもパワー基板21に接触できるようになった。このため、放熱シート29とパワー基板21間の接触面積が増え放熱の効率は高くできる。
【0076】
各電子部品23間は導体抵抗を低くするためできるだけ近くに配置をすることが望ましい。しかしながら、このように各電子部品23同士を近くに配置した場合であっても、窪み31を設けたことで各電子部品23の周囲は放熱シート29とパワー基板21間で接触出来ているので、放熱の心配は無く設計の自由度が増す。
【0077】
また、
図4に示すように、従来の放熱シート11が基板1と接触する部分には電子部品は搭載出来なかったので基板サイズが大きくなってしまっていたが、本実施形態では放熱シート29がパワー基板21と接触する部分にも電子部品を搭載出来るため基板サイズを小さくできる。
【0078】
更に、従来は
図4に示すように基板1に対し直接接触する放熱シート11と電子部品3に対してのみ接触する放熱シート5とそれぞれ別部品であったために厚みの異なる放熱シートが2枚必要であった。これに対して本実施形態の放熱シート29はパワー基板21に接触する機能と電子部品23に接触する機能の両方の機能を備えているので一枚で済む。
【0079】
このように1枚となったことで
図2中に回路高さとして示すように放熱シート29とパワー基板21を含む高さも低く抑えられ、また、部品の点数が少なくなったので作業性がよくなった。そして、従来と比べて放熱板7と放熱シート5の2つの部材が無くなり空間のレイアウトもし易くなった。
更に、パワー基板21の故障調査が可能であり、基板のみの修理も可能である。
【0080】
なお、本発明に係る制御装置、パワー基板、制御基板、真空ポンプは、上述した複合タイプの真空ポンプの他、全翼タイプの真空ポンプにも適用可能である。
また、本発明の実施形態及び各変形例は、必要に応じて組み合わせる構成にしてもよい。また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が当該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0081】
9 筐体
21 パワー基板
23 電子部品
25 ボス
27 ネジ穴
29 放熱シート(放熱部材)
31 窪み
200 制御装置