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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/00 20060101AFI20220329BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G06K7/00 056
H05K5/02 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017189341
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019066972
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大悟
(72)【発明者】
【氏名】田多井 俊男
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-262323(JP,A)
【文献】特開平04-090085(JP,A)
【文献】特開2003-044909(JP,A)
【文献】特開2015-049835(JP,A)
【文献】特表2006-526197(JP,A)
【文献】特開平08-292997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00-7/14
G06K 13/00-13/30
H05K 5/00-5/06
G07F 5/00-9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード処理部と、前記カード処理部を収容するケース体と有し、
前記ケース体は、前記カード処理部に設けられたカード通路へカードを挿入するためのカード挿入口と、前記ケース体の内部へ浸入した液体を排出するための排液孔とを備え、
前記ケース体の内部には、前記カード挿入口から前記ケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられており、
前記隔壁部材は、前記排液孔の側に延びる第1端部を備え、
前記第1端部は、第1部分と、前記第1部分より短い第2部分を備え、
前記第2部分の先端は、前記第1部分の側に向かうに従って下降する方向に傾斜していることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
カード処理部と、前記カード処理部を収容するケース体と有し、
前記ケース体は、前記カード処理部に設けられたカード通路へカードを挿入するためのカード挿入口と、前記ケース体の内部へ浸入した液体を排出するための排液孔とを備え、
前記ケース体の内部には、前記カード挿入口から前記ケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられており、
前記ケース体は、前記カード挿入口が形成されたフロントカバーと、前記フロントカバーが取り付けられる開口を備えたケース本体と、を備え、
前記排液孔は、前記フロントカバーと前記ケース本体との継ぎ目に設けられていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項3】
前記フロントカバーは、前記ケース本体の前記開口より外周側に膨らんだ凸部を備え、
前記排液孔は、前記凸部と前記ケース本体との間に設けられ、前記凸部の内側に形成された複数のリブによって前記排液孔が複数の孔に分割されていることを特徴とする請求項に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記隔壁部材は、前記カード処理部の上側に延びる第2端部を備え、
前記第2端部は折れ部を備え、前記折れ部は、上側に向かうに従って前記カード挿入口とは反対側に向かう方向に傾斜することを備えることを特徴とする請求項またはに記載のカードリーダ。
【請求項5】
カード処理部と、前記カード処理部を収容するケース体と有し、
前記ケース体は、前記カード処理部に設けられたカード通路へカードを挿入するためのカード挿入口と、前記ケース体の内部へ浸入した液体を排出するための排液孔とを備え、
前記ケース体の内部には、前記カード挿入口から前記ケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられており、
前記ケース体は、前記カード挿入口の上側に形成された庇を備え、
前記庇の表面から突出する横リブが前記庇の先端に沿って連続して延びており、
前記横リブは、前記カード挿入口の幅方向の両側に向かうに従って下降する形状であることを特徴とするカードリーダ。
【請求項6】
前記隔壁部材は、前記カード処理部を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のカードリーダ。
【請求項7】
前記ケース体の底部には、前記排液孔と、前記排液孔に対して前記カード挿入口とは反対側に位置する規制壁が設けられ、
前記規制壁の上端は、前記排液孔より上方に位置することを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のカードリーダ。
【請求項8】
前記ケース体は、前記カード挿入口の下側に形成された案内面を備え、
前記案内面は、前記カード挿入口から離れるに従って下側へ向かう傾斜面であることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載のカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースにカード挿入口が設けられたカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
液体が飛散する環境でカードリーダを使用する場合、カード挿入口に液体が掛かるおそれがある。カード挿入口からカードリーダの内部に液体が浸入すると、電子部品を搭載した基板などに液体が掛かり、故障の原因になるおそれがある。そこで、カード挿入口から液体が浸入することによる不具合を回避するための構造が提案されている。
【0003】
特許文献1には、透明カバーでカード挿入口を覆ったカードリーダが開示されている。透明カバーは、カードリーダの本体ケースに回動自在に取り付けられており、カード挿入口にカードを挿入する際は、透明カバーを手で回動させて開閉する。また、特許文献2には、カード挿入口が設けられたフロントベゼルに排液穴を設けたカード処理装置が開示されている。特許文献2のカード処理装置では、ケースの底部に傾斜が付いている。カード挿入口から浸入した水は、ケースの底部に滴下し、傾斜部に沿って排液穴へ導かれて排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-44395号公報
【文献】特許第5088931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにカード挿入口を透明カバーで覆う場合、カードを挿入する際に透明カバーの開閉が必要であるため、カードの挿入に手間がかかる。また、カバーを開けたタイミングで液体が掛かるおそれがあり、この場合には、カード挿入口から内部に液体が浸入してしまう。従って、液体の浸入によって不具合が発生するおそれがある。
【0006】
一方、特許文献2では、カード挿入口から浸入した液体を排液穴から排出することができる。しかしながら、特許文献1では、カード挿入口から浸入した液体がケースの底部へ落ちる途中で部品等に掛かって排液孔とは異なる方向へ流れるおそれがあり、排液穴から排出できない場所へ液体が浸入するおそれがある。従って、ケースの内部に溜まった液体により不具合が発生するおそれがある。
【0007】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、ケースにカード挿入口が設けられたカードリーダにおいて、カード挿入口から液体が浸入することによる不具合を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のカードリーダは、カード処理部と、前記カード処理部を収容するケース体と有し、前記ケース体は、前記カード処理部に設けられたカード通路へカードを挿入するためのカード挿入口と、前記ケース体の内部へ浸入した液体を排出するための排液孔とを備え、前記ケース体の内部には、前記カード挿入口から前記ケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられており、前記隔壁部材は、前記排液孔の側に延びる第1端部を備え、前記第1端部は、第1部分と、前記第1部分より短い第2部分を備え、前記第2部分の先端は、前記第1部分の側に向かうに従って下降する方向に傾斜していることを特徴とする。
【0009】
本発明では、カードリーダのケース体に排液孔が設けられ、且つ、カード挿入口からケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられている。従って、カード挿入口からケース体の内側に液体が入ったとしても、隔壁部材によって排液孔へ液体を案内することができる。よって、排液孔から液体を効率的に排出できる。また、隔壁部材によって排液孔から離れた場所へ液体が浸入することを規制できる。従って、排液孔から排出できない位置へ液体が浸入するおそれが少ない。よって、液体の浸入による不具合の発生を抑制できる。さらに、隔壁部材に掛かった液体を第1部分に集めることができ、第1部分を伝って排液孔へ案内することができる。従って、隔壁部材に掛かった液体を効率的に排液孔へ案内して効率的に排出することができる。
【0010】
本発明において、前記隔壁部材は、前記カード処理部を囲むように配置されていることが好ましい。このようにすると、カード処理部の周りを通ってカード挿入口から離れた位置へ液体が浸入することを規制できる。従って、ケース体の奥へ液体が浸入することを規制できるため、ケース体の奥に配置された部品に液体が掛かって不具合が発生するおそれが少ない。
【0012】
本発明において、前記ケース体の底部には、前記排液孔と、前記排液孔に対して前記カード挿入口とは反対側に位置する規制壁が設けられ、前記規制壁の上端は、前記排液孔より上方に位置することが好ましい。このようにすると、ケース体の底部に流れ落ちた液体がケース体の奥側へ流れることを規制できる。また、液体が規制壁を越える前に排液孔へ流入させることができる。従って、液体が規制壁を越えて排液孔へ戻れなくなるおそれが少ないので、液体を排出できなくなるおそれが少ない。
【0013】
次に、本発明のカードリーダは、カード処理部と、前記カード処理部を収容するケース体と有し、前記ケース体は、前記カード処理部に設けられたカード通路へカードを挿入するためのカード挿入口と、前記ケース体の内部へ浸入した液体を排出するための排液孔とを備え、前記ケース体の内部には、前記カード挿入口から前記ケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられており、前記ケース体は、前記カード挿入口が形成されたフロントカバーと、前記フロントカバーが取り付けられる開口を備えたケース本体と、を備え、前記排液孔は、前記フロントカバーと前記ケース本体との継ぎ目に設けられていることを特徴とする。このようにすると、カード挿入口からケース体の内側に液体が入ったとしても、隔壁部材によって排液孔へ液体を案内することができる。よって、排液孔から液体を効率的に排出できる。また、隔壁部材によって排液孔から離れた場所へ液体が浸入することを規制できる。従って、排液孔から排出できない位置へ液体が浸入するおそれが少ない。よって、液体の浸入による不具合の発生を抑制できる。さらに、排液孔を形成するためにケース体に貫通穴を形成する必要がない。従って、ケース体を構成する部品の形状が複雑化することを回避できる。
【0014】
本発明において、前記フロントカバーは、前記ケース本体の前記開口より外周側に膨らんだ凸部を備え、前記排液孔は、前記凸部と前記ケース本体との間に設けられ、前記凸部の内側に形成された複数のリブによって前記排液孔が複数の孔に分割されている構成を採用することができる。このようにすると、フロントカバーとケース本体とを組み立てることによって排液孔を形成できる。また、排液孔がリブによって仕切られているので、排液孔から異物が侵入するおそれが少ない。
【0015】
本発明において、前記隔壁部材は、前記カード処理部の上側に延びる第2端部を備え、前記第2端部は折れ部を備え、前記折れ部は、上側に向かうに従って前記カード挿入口とは反対側に向かう方向に傾斜することが好ましい。このようにすると、継ぎ目から浸入する液体を折れ部で受けてカード挿入口の側へ案内することができる。従って、継ぎ目から浸入する液体がケース体の奥へ流入するおそれが少ない。
【0017】
次に、本発明のカードリーダは、カード処理部と、前記カード処理部を収容するケース体と有し、前記ケース体は、前記カード処理部に設けられたカード通路へカードを挿入するためのカード挿入口と、前記ケース体の内部へ浸入した液体を排出するための排液孔とを備え、前記ケース体の内部には、前記カード挿入口から前記ケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられており、前記ケース体は、前記カード挿入口の上側に形成された庇を備え、前記庇の表面から突出する横リブが前記庇の先端に沿って連続して延びており、前記横リブは、前記カード挿入口の幅方向の両側に向かうに従って下降する形状であることを特徴とする。このようにすると、カード挿入口からケース体の内側に液体が入ったとしても、隔壁部材によって排液孔へ液体を案内することができる。よって、排液孔から液体を効率的に排出できる。また、隔壁部材によって排液孔から離れた場所へ液体が浸入することを規制できる。従って、排液孔から排出できない位置へ液体が浸入するおそれが少ない。よって、液体の浸入による不具合の発生を抑制できる。さらに、庇に掛かった液体が庇の裏側を伝ってカード挿入口へ流れ込むおそれが少ない。従って、カードリーダを液体が飛散する環境で使用した場合に、カード挿入口へ液体が浸入することを抑制できる。また、横リブによってせき止められた液体がカード挿入口の幅方向の両側へ流れ落ちるため、庇に掛かった液体がカード挿入口へ流れ込むことを抑制
できる。
【0018】
本発明において、前記ケース体は、前記カード挿入口の下側に形成された案内面を備え、
前記案内面は、前記カード挿入口から離れるに従って下側へ向かう傾斜面であることが好ましい。このようにすると、案内面に掛かった液体が案内面を伝ってカード挿入口へ流れ込むことを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カードリーダのケース体に排液孔が設けられ、且つ、カード挿入口からケース体の内部へ浸入した液体を前記排液孔へ案内する隔壁部材が設けられている。従って、カード挿入口からケース体の内側に液体が入ったとしても、隔壁部材によって排液孔へ液体を案内することができる。よって、排液孔から液体を効率的に排出できる。また、隔壁部材によって排液孔から離れた場所に液体が浸入することを規制できる。従って、排液孔から排出できない位置へ液体が浸入するおそれが少ない。よって、液体の浸入による不具合の発生を抑制できる。
さらに、隔壁部材に掛かった液体を第1部分に集めることができ、第1部分を伝って排液孔へ案内することができる。従って、隔壁部材に掛かった液体を効率的に排液孔へ案内して効率的に排出することができる。
あるいは、排液孔を形成するためにケース体に貫通穴を形成する必要がない。従って、ケース体を構成する部品の形状が複雑化することを回避できる。
あるいは、庇に掛かった液体が庇の裏側を伝ってカード挿入口へ流れ込むおそれが少ない。従って、カードリーダを液体が飛散する環境で使用した場合に、カード挿入口へ液体が浸入することを抑制できる。また、横リブによってせき止められた液体がカード挿入口の幅方向の両側へ流れ落ちるため、庇に掛かった液体がカード挿入口へ流れ込むことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用したカードリーダの斜視図である。
図2図1のカードリーダの断面図および部分拡大断面図である。
図3】フロントカバーの正面図および側面図である。
図4】フロントカバーおよび防水シートを後方から見た斜視図およびフロントカバーを後方から見た背面図である。
図5】フロントカバーを省略したカードリーダの斜視図および防水シートの斜視図である。
図6】下部ケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明を適用したカードリーダの実施形態を説明する。
【0022】
(全体構成)
図1は本発明を適用したカードリーダ1の斜視図であり、図2図1のカードリーダ1の断面図および部分拡大断面図である。図1に示すように、カードリーダ1は、全体として直方体状の箱型に形成されている。図2に示すように、カードリーダ1は、ケース体3と、ケース体3に収容されるカード処理部4を備える。図1図2に示すように、ケース体3の前面には、カード挿入口5が形成されている。図2に示すように、カード処理部4には、カード通路6が設けられている。カード2には磁気データが記録されており、カード挿入口5からカード通路6へ挿入される。カード処理部4は、カード通路6の所定位置にカード2を取り込んで、磁気データの読取りもしくは書込みなどの所定の処理を行い、カード挿入口5から排出する。図1に示すように、カード挿入口5の上側には、ケース体3の前面と上面との角部にLED表示部7が設けられている。
【0023】
本明細書において、XYZの3方向は互いに直交する方向である。X方向はカードリーダ1の前後方向である。カードリーダ1の内部において、カード通路6はX方向に延在する。X1方向はカード通路6の前方であり、カード挿入口5が位置する側である。X2方
向はカード通路6の奥側(後方)である。Y方向はカード挿入口5の幅方向である。幅方向Yの一方側と他方側のうち、カードリーダ1を前方X1から見た場合の右側を一方側Y1とし、左側を他方側Y2とする。また、Z方向はカードリーダ1の上下方向である。Z1方向は上側であり、Z2方向は下側である。ケース体3の内部において、カード処理部4の上側Z1および下側Z2には、ケース体3との間に空間が設けられている。カード処理部4の下側Z2の空間には、図示しない電源装置などが配置される。
【0024】
ケース体3は、カード処理部4を収容するケース本体31と、ケース本体31の前方X1の端部に取り付けられるフロントカバー32を備える。ケース本体31は、上下方向Zに2分割可能であり、上部ケース33と下部ケース34を備える。上部ケース33と下部ケース34を組み立てると、前方X1を向く開口35(図5(a)参照)を備えたケース本体31が形成される。フロントカバー32は、ケース本体31の開口35を塞ぐように取り付けられる。開口35の上側Z1の縁には、前方X1に突出するフック36(図2(b)、図5(a)参照)が形成されている。フロントカバー32の上端縁には、フック36と係合する係合凹部37(図2(b)参照)が形成されている。
【0025】
(カード挿入口5の外側の形状)
図3(a)はフロントカバー32の正面図であり、図3(b)はフロントカバー32の側面図である。図1図3(a)に示すように、フロントカバー32には、Y方向にスリット状に延在するカード挿入口5が形成されている。カード挿入口5の下側Z2には、前方X1に突出する下側突出部51が形成されている。下側突出部51の幅方向Yの中央には、後方X2に凹んだ下側凹部52が形成されている。下側凹部52が設けられていることにより、手差しでカード2を挿入する際、カード2をカード挿入口5の奥まで挿入することができる。
【0026】
下側突出部51の上側の表面は、カード挿入口5へ向かうカード2を案内する案内面53である。カード挿入口5へ挿入されるカード2は、案内面53に沿ってカード挿入口5へ向かうため、カード2の挿入が容易である。図2(b)に示すように、案内面53は、前方X1へ向かうに従って下側Z2へ向かう傾斜面である。言い換えれば、案内面53は、カード挿入口5から離れるに従って下側Z2へ向かう傾斜面である。従って、案内面53に液体が掛かったとしても、液体がカード挿入口5の側でなく前方X1へ流れ落ちるため、カード挿入口5へ液体が流れ込むおそれが少ない。
【0027】
フロントカバー32には、カード挿入口5の上側Z1および幅方向Yの両側を囲む庇54が形成されている。庇54は、フロントカバー32の前面から前方X1に突出する。庇54は、カード挿入口5の上側Z1に形成された庇上部55と、庇上部55の幅方向Yの一方側Y1の端部に繋がる庇右側部56と、庇上部55の幅方向Yの他方側Y2の端部に繋がる庇左側部57を備える。庇右側部56および庇左側部57は、カード挿入口5の幅方向Yの一方側Y1および他方側Y2において上下方向Zに延在し、下側突出部51の幅方向Yの外側まで延びている。庇上部55の下側Z2の面は前方X1へ向かうに従って上側Z1へ向かう傾斜面551(図2(b)参照)となっている。傾斜面551の幅方向Yの中央には、後方X2および上側Z1に凹んだ上側凹部58が形成されている。
【0028】
庇上部55の先端には、横リブ59が形成されている。横リブ59は、庇上部55の先端の表面から前方X1に突出しており、庇上部55の先端に沿って幅方向Yに連続して延びている。横リブ59の一端は庇右側部56まで延びており、他端は庇左側部57まで延びている。庇上部55の先端は、幅方向Yの中央が上側Z1に膨らんだ湾曲形状である。横リブ59は、庇上部55の先端に沿う形状であり、幅方向Yの両側に向かうに従って下降する形状となっている。横リブ59の両端は、カード挿入口5の幅方向Yの外側まで延びている。庇54に液体が掛かると、液体は庇54の表面を伝って庇54の先端側へ流れ
るが、庇54の先端において液体は横リブ59によってせき止められて、横リブ59に沿って庇54の幅方向Yの両側へ向かって流れる。従って、庇54の裏側を伝ってカード挿入口5へ液体が流れ込むことが横リブ59によって抑制されるため、カード挿入口5へ液体が流れ込むおそれが少ない。
【0029】
(防水シート)
図4(a)はフロントカバー32および防水シート8を後方から見た斜視図であり、図4(b)はフロントカバー32を後方から見た背面図である。フロントカバー32の背面には、防水シート8が取り付けられる。フロントカバー32の背面には、防水シート8を取り付けるための係合突起80が形成されている。係合突起80は、下側突出部51が形成された位置の幅方向Yの両側の2箇所から後方X2に突出している。防水シート8には、カード挿入口5と対向する位置に矩形穴81が形成されるとともに、係合突起80と対向する2箇所に係合穴82が形成されている。係合穴82に係合突起80を嵌めることによって、防水シート8がフロントカバー32の背面側に取り付けられる。
【0030】
図5(a)はフロントカバー32を省略したカードリーダ1の斜視図であり、図5(b)は防水シート8の斜視図である。防水シート8は、カード処理部4とケース体3との空間を前後方向Xに仕切る隔壁部材である。図1に示すように、ケース体3には、フロントカバー32とケース本体31との継ぎ目38が全周に形成されている。図2(a)に示すように、ケース体3の底部には、フロントカバー32とケース本体31との継ぎ目38を利用して排液孔39が形成されている。防水シート8は、カード処理部4とケース体3との空間をカード挿入口5が位置する側(前方X1側)と、前後方向Xでカード挿入口5が位置する側とは反対側(後方X2側)とに仕切るように配置されている。排液孔39は防水シート8の下側Z2に位置しており、防水シート8へ掛かった液体は、防水シート8を伝って排液孔39へ流れ落ちる。すなわち、防水シート8は、カード挿入口5からケース体3の内部へ浸入した液体を排液孔39へ案内する部材である。
【0031】
図5(a)に示すように、防水シート8は、カード処理部4の前端部分を全周で囲む形状をしている。カード処理部4をケース体3に組み付けると、防水シート8に形成された矩形穴81にカード処理部4の前端部分が嵌まり、防水シート8がカード処理部4を全周で囲む状態が形成される。すなわち、防水シート8は、カード処理部4とケース体3との空間を全周で前後に仕切るように配置されている。矩形穴81は、カード処理部4が隙間なく嵌まるように形成されている。従って、カード挿入口5に外側から液体が掛かり、カード処理部4とカード挿入口5との隙間からケース体3の内部に液体が浸入した場合に、防水シート8は、カード処理部4の全周において後方X2への液体の浸入を阻止する。
【0032】
図5(b)に示すように、防水シート8は、前後方向Xに対して略垂直なシート本体83と、シート本体83の上端に接続される折れ部84を備える。矩形穴81は、シート本体83の上端に形成されている。折れ部84は、矩形穴81より上側Z1の部分を斜め後方へ折り曲げて形成されている。折れ部84は、幅方向Yに延びる折れ線841に沿って折り曲げられており、折れ線841は矩形穴81の上端縁から幅方向Yの両側に延びている。折れ部84は、上側Z1に向かうに従って後方X2へ向かう方向に傾斜している。
【0033】
図2(b)に示すように、防水シート8のシート本体83は、フロントカバー32とケース本体31との継ぎ目38に対して前方X1に位置する。一方、折れ部84の上端は、継ぎ目38に対して後方X2に位置する。つまり、防水シート8は、上下方向Zから見て継ぎ目38と折れ部84とが重なるように配置されている。従って、カードリーダ1の上面に掛かった液体が継ぎ目38からケース体3の内部に浸入した場合には、カード処理部4の上側Z1において、継ぎ目38から滴下する液体が防水シート8の折れ部84に掛かり、防水シート8の前方X1に流れ落ちる。
【0034】
防水シート8は、カード処理部4の下側Z2へ延びる第1端部85と、上側Z1へ延びる第2端部86を備える。第2端部86は、上述した折れ部84を備えており、第1端部85は、シート本体83の下端部分である。第1端部85はケース体3の底部に届く位置まで延びた2本の第1部分87と、Z方向において第1部分87よりも短い第2部分88を備える。第1部分87と第2部分88とは、Y方向において互いに隣あって設けられている。第2部分88の下端(先端)は、2本の第1部分87の間において幅方向Yに延在する中央部分881と、2本の第1部分87の幅方向Yの一方側Y1に設けられた第1傾斜部分882と、2本の第1部分87の幅方向Yの他方側Y2に設けられた第2傾斜部分883を備える。第1傾斜部分882および第2傾斜部分883は、それぞれ、第1部分87に向かうに従ってZ方向における長さが増大する方向に傾斜する。言い換えれば、第1傾斜部分882および第2傾斜部分883は、それぞれ、第1部分87に向かうに従って下降する方向に傾斜している。従って、防水シート8に液体が掛かった場合に、第2部分88に掛かった液体は、第1傾斜部分882および第2傾斜部分883を伝って第1部分87へ集められる。
【0035】
図2(b)に示すように、防水シート8の第1端部85は、フロントカバー32とケース本体31との継ぎ目38より前方X1に位置する。ケース体3の底部には、排液孔39の流入部391が開口する。流入部391は、継ぎ目38からその前方X1の所定位置までの範囲にわたって前後方向Xで所定の幅をもって開口している。第1端部85は、上下方向Zから見て流入部391と重なる位置に配置されており、第1端部85に設けられた2本の第1部分87は、流入部391まで延びている。従って、防水シート8に掛かった液体は、第1部分87に集められ、第1部分87から流入部391へ流れ落ちるため、防水シート8に掛かった液体を効率的に排液孔39に導いて効率的に排出することができる。
【0036】
(排液孔)
フロントカバー32の下端には、ケース本体31の開口35の下端縁351(図2(b)、図5(a)参照)より外側(下側Z2)へ膨らんだ凸部10が形成されている。図3図4に示すように、フロントカバー32は、カード挿入口5が形成された前板部321と、前板部321の上端縁から後方X2へ突出する上側縁部322と、前板部321の下端縁から後方X2へ突出する下側縁部323と、前板部321の幅方向Yの一方側Y1および他方側Y2の縁からそれぞれ後方X2へ突出する右側縁部324および左側縁部325を備える。
【0037】
凸部10は、下側縁部323の幅方向Yの中央部に形成されている。凸部10は、下側縁部323より下側Z2において幅方向Yに延在する下端壁11と、下端壁11の幅方向Yの一方側Y1の端部から上側Z1に屈曲して下側縁部323と繋がる右側壁12と、下端壁11の幅方向Yの他方側Y2の端部から上側Z1に屈曲して下側縁部323と繋がる左側壁13と、下端壁11、右側壁12、および左側壁13の前方X1の端部に接続され、下側縁部323の前後方向Xの略中央部分と繋がる前側壁14を備える。凸部10は、下端壁11、右側壁12、左側壁13、および前側壁14によって囲まれる凹部空間15(図2(b)参照)を備えており、この凹部空間15が排液孔39となっている。排液孔39の上端部は、上側Z1へ向かって開口する流入部391を構成しており、流入部391は、ケース体3の内部空間と連通する。一方、排液孔39の後端部は、ケース本体31の開口35の下端縁351より下側で後方X2へ向かって開口する流出部392を構成する。
【0038】
図4に示すように、フロントカバー32には、凸部10の内側の凹部空間15において幅方向Yに一定ピッチで配列される複数のリブ16が形成されている。排液孔39は、こ
れら複数のリブ16によって幅方向Yで複数の孔393に分割されている。それぞれの孔393は、流入部391から流出部392まで連続して延びている。排液孔39の流出部392をリブ16によって分割したことにより、排液孔39からの異物の侵入が抑制される。例えば、排液孔39からケース体3の内部に虫が入ることが抑制される。
【0039】
(下部ケース)
図6は下部ケース34の斜視図である。下部ケース34は、ケース体3の底部を構成する底板部341と、底板部341の幅方向Yの一方側Y1および他方側Y2の縁からそれぞれ上側Z1へ立ち上がる側板部342、343を備える。図6図2(b)に示すように、底板部341の前方X1の縁には、上側Z1に突出した段部344が形成されている。段部344は、ケース本体31の開口35の下端縁351を構成する部位であり、排液孔39の上端部(流入部391)と同一高さに位置する。また、底板部341には、段部344よりも後方X2の部分が段部344よりも一段下側Z2に下がった位置にあり、段部344よりも一段下側Z2に下がった部位から上側Z1に突出する規制壁345が形成されている。規制壁345の上端は、段部344よりも上側Z1に位置する。つまり、規制壁345の上端は、排液孔39よりも上側Z1に位置する。
【0040】
段部344および規制壁345は、幅方向Yの一方側Y1が側板部342の内面と接続され、幅方向Yの他方側Y2が側板部343の内面と接続されている。すなわち、ケース体3の底部は、規制壁345によって前後方向Xに仕切られている。そして、排液孔39は、規制壁345に対して前方X1側、すなわち、規制壁345に対してカード挿入口5および防水シート8と同じ側に配置されている。従って、下部ケース34は、カード挿入口5からケース体3の内部に浸入して防水シート8に掛かってケース体3の底部に落ちた液体が、規制壁345を越える高さまで溜まる前に、排液孔39に流入してケース体3から排出されるように構成されている。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のカードリーダ1は、ケース体3の内部に排液孔39が設けられ、且つ、カード挿入口5からケース体3の内部へ浸入した液体を排液孔39へ案内する防水シート8が設けられている。従って、カード挿入口5からケース体3の内側に液体が入ったとしても、防水シート8によって排液孔39へ液体を案内することができる。よって、排液孔39から液体を効率的に排出できる。また、防水シート8によって排液孔39から離れた位置へ液体が浸入することを規制できるため、排液孔39から排出できない位置へ液体が浸入するおそれが少ない。従って、液体の浸入による不具合の発生を抑制できる。
【0042】
本形態では、防水シート8は、カード処理部4とケース体3との間の空間をカード挿入口5が位置する側(前方X1)とカード挿入口5とは反対側(後方X2)とに仕切っている。また、防水シート8は、カード処理部4を全周で囲んでいる。従って、ケース体3の奥側に液体が浸入することを規制できるため、ケース体3の奥に配置された部品に液体が掛かって不具合を発生させるおそれが少ない。
【0043】
本形態では、防水シート8は、排液孔39の側に延びる第1端部85に、2本の第1部分87と、第1部分87より短い第2部分88が形成され、第2部分88の先端は、第1部分87の側に向かうに従って下降する方向に傾斜する第1傾斜部分882および第2傾斜部分883を備える。従って、防水シート8に掛かった液体を第1部分87に集めることができ、第1部分87を伝って排液孔39へ案内することができる。よって、防水シート8に掛かった液体を効率的に排液孔39へ案内して効率的に排出することができる。
【0044】
本形態では、ケース体3の底部には、排液孔39と、排液孔39に対してカード挿入口
5とは反対側(後方X2)に位置する規制壁345が設けられ、規制壁345の上端は、排液孔39より上側Z1に位置する。従って、ケース体3の底部に流れ落ちた液体がケース体3の奥側へ流れることを規制できる。また、液体が規制壁345を越える前に排液孔39から流出するため、液体が規制壁345を越えて排液孔39へ戻れなくなるおそれが少ない。
【0045】
本形態では、フロントカバー32とケース本体31との継ぎ目に排液孔39が設けられている。具体的には、フロントカバー32は、ケース本体31の開口35より外周側に膨らんだ凸部10を備え、排液孔39は、凸部10とケース本体31との間に設けられている。このようにして排液孔39を形成すると、フロントカバー32とケース本体31を組み立てることで排液孔39を形成できる。従って、排液孔39を形成するためにケース体3に貫通穴を形成する必要がないため、ケース体3を形成する部品の形状が複雑化することを回避できる。更に、排液孔39は、凸部10の内側に形成された複数のリブ16によって複数の孔393に分割されている。従って、排液孔39から虫などの異物が入るおそれが少ない。
【0046】
本形態では、防水シート8は、カード処理部4の上側に延びる折れ部84を備え、折れ部84は、上側Z1に向かうに従ってカード挿入口5とは反対側(後方X2)に向かう方向に傾斜している。これにより、防水シート8は、カード挿入口5の側から浸入する液体を受けるだけでなく、フロントカバー32とケース本体31との継ぎ目から浸入する液体を折れ部84で受けてカード挿入口5の側(前方X1)へ案内することができる。従って、継ぎ目から浸入する液体がケース体3の奥側へ流入するおそれが少ない。
【0047】
本形態では、フロントカバー32にはカード挿入口5の上側に庇54が設けられ、庇54の先端には横リブ59が形成されている。また、横リブ59は、カード挿入口5の幅方向の両側に向かうに従って下降する形状である。従って、庇54の表面を流れた液体はカード挿入口5の幅方向の両側へ流れ落ちるため、庇54に掛かった液体が庇54を伝ってカード挿入口5へ流れ込むことを横リブ59によって規制できる。また、フロントカバー32には、カード挿入口5の下側に案内面53が設けられ、案内面53は前方X1へ向かうに従って下側Z2へ向かう傾斜面である。従って、案内面53に液体が掛かったとしても、液体がカード挿入口5の側でなく前方X1へ流れ落ちる。よって、カードリーダを液体が掛かる環境で使用した場合に、カード挿入口へ液体が浸入することを抑制できる。
【0048】
(変形例)
上記形態では、排液孔39にリブ16を形成して異物の侵入を防止しているが、排液孔39の流出部392に弁を設け、一定量以上の液体が溜まった場合に弁が開いて液体が排出されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…カードリーダ、2…カード、3…ケース体、4…カード処理部、5…カード挿入口、6…カード通路、7…表示部、8…防水シート、10…凸部、11…下端壁、12…右側壁、13…左側壁、14…前側壁、15…凹部空間、16…リブ、31…ケース本体、32…フロントカバー、33…上部ケース、34…下部ケース、35…開口、36…フック、37…係合凹部、38…継ぎ目、39…排液孔、51…下側突出部、52…下側凹部、53…案内面、54…庇、55…庇上部、56…庇右側部、57…庇左側部、58…上側凹部、59…横リブ、80…係合突起、81…矩形穴、82…係合穴、83…シート本体、84…折れ部、85…第1端部、86…第2端部、87…第1部分、88…第2部分、321…前板部、322…上側縁部、323…下側縁部、324…右側縁部、325…左側縁部、341…底板部、342、343…側板部、344…段部、345…規制壁、351…下端縁、391…流入部、392…流出部、393…孔、551…傾斜面、841
…折れ線、881…中央部分、882…第1傾斜部分、883…第2傾斜部分、X…前後方向、X1…前方、X2…後方、Y…幅方向、Y1…一方側、Y2…他方側、Z…上下方向、Z1…上側、Z2…下側
図1
図2
図3
図4
図5
図6