(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】薄膜処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 1/22 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
B01D1/22 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017195150
(22)【出願日】2017-10-05
【審査請求日】2020-07-15
(32)【優先日】2016-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517350986
【氏名又は名称】ブース-エスエムエス-カンツラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ペテルス
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-185201(JP,A)
【文献】米国特許第03542112(US,A)
【文献】特開昭52-069054(JP,A)
【文献】特公昭47-013041(JP,B1)
【文献】特開平04-029701(JP,A)
【文献】特開昭58-153501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B 1/00-1/08
B01D 1/00-8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘性材料を処理するための薄膜処理装置(10)であって、
加熱可能かつ/又は冷却可能なハウジングケース(14)を有するハウジング(12)であって、前記ハウジングケース
(14)が軸方向に延びる回転対称の処理室(16)を囲繞する、ハウジング(12)と、
前記処理室(16)の中へ処理対象の前記
粘性材料を供給するための、前記ハウジング(12)の入口領域(18)に配置された入口ポート(20)と、
前記処理室(16)から前記
粘性材料を排出するための、前記ハウジング(12)の出口領域(22)に配置された出口ポート(24)と、
前記ハウジングケース(14)の内面において材料膜を生成するため及び前記入口領域(18)から前記出口領域(22)へ向かう方向に前記
粘性材料を搬送するための、前記処理室(16)の中に配置された、同軸に延びる駆動可能なローターシャフト(34)であって、前記ローターシャフト(34)が、中央ローターシャフト本体(46)と、前記
中央ローターシャフト本体
(46)の円周上に配列された複数のローターブレード(50)と、を備え、前記ローターブレード
(50)の半径方向最外側端が、前記ハウジングケース
(14)の前記内面から間隔を置かれている、ローターシャフトと、
を備え、
前記処理室(16)の中に、前記材料膜の温度を計測するための
複数の温度センサ(60)が配置され、
前記複数の温度センサ(60)が、前記処理室(16)の長さに亘って配分して配置され、
前記複数の温度センサ(60)の少なくとも一部が、前記中央ローターシャフト本体(46)上に配置され、
前記複数の温度センサ(60)の少なくとも1つが、前記温度センサ(60)の温度感知部分(61)が前記ローターブレード(50)の船首側に配置されるように、前記ローターシャフト(34)上に配置され、
前記船首側とは、前記ローターブレード(50)の回転方向DRに見て下流にある領域である、
薄膜処理装置。
【請求項2】
物質混合物の熱分離のために設計され、
薄膜蒸発機(100)、薄膜乾燥機
及び薄膜反応機の形式
のうちいずれかの形式で存在する、請求項1に記載の薄膜処理装置。
【請求項3】
少なくとも1つの
前記温度センサ(60)に対して、前記温度センサ
(60)によって測定された信号を外部信号処理装置へ伝達するための信号ラインが割り当てられる、請求項1又は2に記載の薄膜処理装置。
【請求項4】
前記温度センサ(60)の少なくとも一部が、前記薄膜処理装置(10)の作動時に、当該温度センサ
(60)の少なくとも一部が前記材料膜と直接接触する前記ローターシャフト(34)の領域に配置される、請求項
1に記載の薄膜処理装置。
【請求項5】
前記ローターブレード
(50)の少なくとも
1つが、ワイパーブレード要素
で構成され、少なくとも前記ハウジングケース(14)の前記内面に対面する縁領域において、前記ワイパーブレード要素
の遠位区分(58)が、ローター軸(A)に対して取付け角を形成し、
前記取付け角は、前記粘性材料に対して前記出口領域(22)へ向かう方向の運動成分を与える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の薄膜処理装置。
【請求項6】
前記信号ラインが、前記
中央ローターシャフト本体(46)内に軸方向に延びる信号ラインダクト(62)を、少なくとも部分的に通る、請求項
3に記載の薄膜処理装置。
【請求項7】
前記ハウジングケース(14)
のハウジングケース壁にハウジングケース空洞が形成され、前記
ハウジングケース空洞が、加熱及び/又は冷却の目的のために、熱媒体が通過して流れるためのものである、請求項1~
6のいずれか1項に記載の薄膜処理装置。
【請求項8】
前記ハウジングケース(14)が少なくとも2つのハウジングケース区分(14a、14b)を備え、前記
ハウジングケース区分が、相互に独立して加熱及び/又は冷却されるように設計される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の薄膜処理装置。
【請求項9】
前記ハウジングケース区分(14a、14b)が、それぞれ対応する処理室ゾーンを囲繞し、前記温度センサ(60)が異なる処理室ゾーン中に配分される、請求項
8に記載の薄膜処理装置。
【請求項10】
前記ローターシャフト(34)に対して、前記
中央ローターシャフト本体(46)を通して伝達された信号を評価ユニットへ送信するために、前記処理室(16)外部に配置されたスリップリング配列体(42)が割り当てられる、請求項1~
9のいずれか1項に記載の薄膜処理装置。
【請求項11】
前記
中央ローターシャフト本体(46)内に、物質
の導入のための軸方向に延びるダクト(66)が設けられる、請求項1~
10のいずれか1項に記載の薄膜処理装置。
【請求項12】
少なくとも温度センサ(60)が配置される前記薄膜処理装置
(10)の領域又は領域の1つでは、前記ハウジングケース(14)の対応する領域内に熱媒体温度センサが配置される、請求項1~
11のいずれか1項に記載の薄膜処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性材料を処理するための薄膜処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜処理装置は、当業者にはすでに長期に亘って知られており、例えば、粘性材料の蒸留、濃縮、揮発性物質除去及び乾燥において使用される。更に、薄膜処理装置は、混合のために、及び、少なくとも一時的に粘性状態を得る反応のために、特に例えば重合反応のために、使用される。薄膜処理装置の作動は、大部分は連続的に実施される。
【0003】
薄膜処理装置の部分群は、薄膜蒸発機によって構成される。蒸発機は、温度制御可能なハウジング壁の内面に薄膜状に材料を配分することによって、高い熱流密度を得ることができ、それによって最終的に大きい蒸発容量及び高い蒸発比率を単一パスで可能にできると言う原則に基づいている。
【0004】
材料の配分のために、特にワイパー要素を備えるローターを設置できる。付加的に材料搬送施設を備える適切な薄膜蒸発機は、Filmtruderの名称で当業者には既知である。
【0005】
Filmtruderの形式の薄膜処理装置については、例えばスイス特許第523087号明細書において説明されており、この特許によれば、加熱可能及び/又は冷却可能な処理室の中に駆動可能なローターが同軸に配置される。ローターは、管状体を有し、その円周上に傾斜羽根が均等に配分され、更に、ハウジングケースの内面付近まで軸方向に達する又は内面に触れるワイパーブレードがこれに配置される。作動時に、処理対象の材料は、回転設定されたワイパーブレードによって捕捉されて、ハウジングの内壁に薄膜状に配分され、斜めに配置された羽根部分は、検出した材料に対して、出口向きの運動成分を与える。
【0006】
独国特許第10050997号明細書は、別の薄膜蒸発機について説明する。ここで、ハウジングの内面に導入された材料を配分するためのスクレーパ要素を備えるシャフトが、加熱室の中に配置される。シャフトは、ベアリングブッシュの中に滑動可能に取り付けられるベアリングジャーナルを有する。
【0007】
作動時に通常垂直向きの薄膜蒸発機の他に、例えば、概ね水平向きの薄膜乾燥機などの別の薄膜加工装置が、当業者には知られている。適切な薄膜乾燥機が独国特許第4117630号明細書において説明される。この特許によれば、熱交換機チューブ内において、乾燥対象の材料を熱交換機チューブの円周内面へ搬送する細長い羽根つきローターが、それぞれ配置される。
【0008】
更に、国際公開第2004/041420号において、水平に配列された混合装置の形式の薄膜処理装置が開示される。この装置において、混合される成分は、中空円筒形体の内壁に薄膜状に配分され、構成成分は、中空円筒形体の内壁とローターブレードとの相互作用によって一緒に混合される。
【0009】
上述のように、薄膜処理装置は、粘性材料の処理のために設計される。具体的には、感温材料の場合、この点に関して、比較的高い粘性のせいでローターシャフトによって材料の中へ比較的大きい量の散逸エネルギーが導入されると言う問題が生じる。ハウジングケースを介して導入された熱と一緒に、このことは、熱荷重が大きくなりすぎて、材料が損傷を受ける可能性がある状況を引き起こす可能性がある。しかし、高い材料処理量を得るために、プロセス熱は、対照的にできる限り高く維持しなければならない。例えば、薄膜蒸発機の場合、プロセス熱は、出来る限り高い蒸発容量を保証するためにできる限り高く維持しなければならない。更に、プロセス熱が高い結果として、物質の移送を促進するために高い拡散係数を得なければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が達成しようとする目的は、最適化されたプロセス管理を可能にする薄膜処理装置を提供することである。
【0011】
特に、薄膜処理装置によって、プロセス熱をできる限り高く維持しながら、同時に、処理対象の材料の過熱を確実に防止できなければならない。更に、補正措置を取ることによってプロセス管理を最適化するために、薄膜処理装置によって、切迫するプロセスのかく乱を早期に検出できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
目的は、独立請求項1に従った薄膜処理装置によって達成される。好ましい実施形態を従属請求項に示す。
【0013】
請求項1によれば、本発明に係る薄膜処理装置は、粘性材料の処理のために設計され、加熱可能及び/又は冷却可能なハウジングケースを有するハウジングを備え、ハウジングケースは、軸方向に延びる回転対称の処理室を囲繞する。したがって、処理室は、ハウジング内部に相当し、その中で、材料は、適切な処理、特に材料に含有される物質成分の蒸留、濃縮、揮発性物質除去、乾燥及び/又は反応にさらされる。前記処理室は、概ね円筒形の設計であるが、出口側端領域において円錐形のテーパー状に設計することが想定できる又はこのような設計が好ましい。
【0014】
薄膜処理装置は、更に、処理対象の材料を処理室へ供給するためにハウジングの入口領域に配置された入口ポートと、処理室から材料を排出するためにハウジングの出口領域に配置された出口ポートと、を備える。概して、ハウジングの出口側端領域において排出するために、排出ポンプ、好ましくはギアポンプが配置される。
【0015】
薄膜処理装置の処理室には、ハウジングケースの内面に材料膜を生成するため及び入口領域から出口領域へ向かう方向に材料を搬送するための同軸に延びる駆動可能なローターシャフトが配置される。ローターシャフトは、中央ローターシャフト本体と、その円周上に配列されたローターブレードと、を備える。ローターブレードの半径方向最外側端は、ハウジングケースの内面から間隔を置かれている。
【0016】
本発明によれば、処理室には、材料膜の温度を計測するための少なくとも1つの温度センサが配置される。
【0017】
対応する方法に関連して下で説明するように、本発明に係る薄膜処理装置は、材料膜の温度を局部的に測定できるようにし、具体的な温度又は具体的な温度プロフィルに基づいて、少なくとも1つのプロセスパラメータを調節できるようにする。特に、ハウジングケースの温度制御は、局部的にプロセス熱を所望の値に設定するために目的に合わせて調整できる。設定値は、薄膜蒸発の場合、典型的には高い蒸発容量を保証するのに充分に高くかつ処理対象の材料の熱誘導損傷が生じる臨界温度を上回らないように充分に低い。
【0018】
所望のプロセス熱を設定するために、ハウジングケースは、予熱された熱媒体によって加熱又は冷却できる。その代わりに又はこれに加えて、プロセス熱の設定は、ローターシャフトの形状および/又は回転速度によっても調節できる。
【0019】
したがって、最終的に、本発明は、安定したかつ再生可能な作動を保証し、高品質の製品の製造を可能にできるようにする。
【0020】
上述のように、薄膜処理装置は、特に粘性材料の処理のために設計される。「粘性材料」とは、本発明の意味する範囲で、典型的には1~50,000パスカル秒の範囲内、特に50~15,000パスカル秒の範囲内の粘度を持つ材料を意味する。好ましくは、本発明に従って処理される材料は、少なくとも一時的に、100パスカル秒より大きい、より好ましくは500パスカル秒より大きい、最も好ましくは1000パスカル秒より大きい粘度を有する。なぜなら、この粘度レベルから、散逸現象が急激に増大し、本発明の利点が特に強く表明される。粘度は、例えば、材料のそれぞれの温度においてDIN ISO 1652:2013-02に従った回転粘度計を用いて測定できる。
【0021】
当然、本発明には、中で処理対象の材料が周期的にのみ粘性状態である薄膜処理装置が、一緒に含まれる。したがって、処理時に中で材料が固体、粒状又は自由流動状態に変容する薄膜処理装置も含まれる。
【0022】
好ましくは、薄膜処理装置は、物質混合物が熱分離するように設計され、特に、薄膜蒸発機、薄膜乾燥機又は薄膜反応機の形式である。典型的には、薄膜処理装置、又は、薄膜蒸発機、薄膜乾燥機若しくは薄膜反応機は、蒸気ポートを有し、これを通して、分離した高揮発性の物質成分を、処理室から引き出すことができる。
【0023】
下で述べるように、材料に応じて、かつ、材料の具体的な処理タイプに応じて、薄膜蒸発機において種々の温度パターンが得られる。したがって、一方で、薄膜蒸発機の材料出口直前に最高温度が得られるプロセスが想定され、他方で、例えばフラッシュ蒸発又は位相変化が存在するプロセスにおいて生じるように、材料入口後に温度が一瞬に上がるが、ある点から材料出口に向かって再び低下するプロセスが想定される。
【0024】
充分に正確な温度パターンを測定するために、特に好ましい実施形態によれば、複数の即ち2つ以上の温度センサが存在し、複数の温度センサは、処理室の長さに亘って、即ち材料が軸方向に被覆する経路に亘って、配分して配置される。
【0025】
特に好ましい実施形態によれば、温度センサの少なくともいくつかは、ローターシャフト好ましくは中央ローターシャフト本体に配置される。ハウジングケースに温度センサを配置するのと比較して、この実施形態は、温度の測定がハウジングケースの熱放射から分断されるという利点を持つ。熱放射は、材料膜の温度測定を誤らせる可能性がある。したがって、この実施形態によれば、材料膜の温度又は個々のゾーンの間に存在する材料膜の温度差は、非常に正確に測定でき、これによって、最終的に処理装置内で進むプロセスの最適な調節を可能にする。更に、この実施形態は、ハウジングケースに対して設備修正を加える必要がないという利点を持つ。特に、例えば温度センサがハウジングケース壁に配置されるとき必要であり、したがって均等の内面を確保するために内面から奥まって設けられなければならない凹部を、ハウジングケース壁の内面に形成する必要がない。更に、上記の好ましい実施形態によれば、温度センサは、熱媒体が通過して流れかつしたがって温度センサホルダが同様に熱媒体によって取り囲まれる、空間を貫通する必要はない。
【0026】
更に、この場合、温度センサの少なくともいくつかが、薄膜処理装置の作動時に、当該温度センサの少なくともいくつかが材料膜と直接接触するローターシャフトの領域に配置されることが好ましい。特に好ましい実施形態によれば、温度センサが恒常的に材料と接触することを確実にするために、温度センサの少なくともいくつかは、温度を取り出す温度センサの温度感知部分が、ローターシャフトの半径方向最外側端の領域に配置されるように、ローターシャフトに配置される。ここで、半径方向最外側端は、ハウジングケースの内面から概ね0.5mm~12mm、好ましくは1mm~4mmの距離にある。特に、温度を材料膜の船首波(bow wave)(船首波はローターブレード前で形成される)において取り出すことができる配列体が想定できる。したがって、特に好ましい実施形態によれば、温度センサの温度感知部分は、ローターブレードの船首側(bow side)に、即ち回転方向に見て下流に在る領域に、配置される。
【0027】
温度センサの少なくともいくつかが薄膜処理装置の作動時に材料膜と直接接触する上述の実施形態は、直接接触が連続的に存在しない実施形態を含む。この状況において、上記の実施形態は、具体的には処理時に自由流動状態に変容する材料の処理のために特に利点があると言える。このような材料の場合、概ね水平向きの薄膜処理装置においては、内面の連続的湿潤は、例えば40又はそれより高いような、高いフルード数においてのみ得られる。薄膜処理装置の作動時に材料膜に直接接触する温度センサによって、内面の湿潤に関する示唆も得られる。
【0028】
本発明に関して使用される場合「ローターブレード」と言う用語は、例えば、スイス特許第523087号において説明され材料膜を生成することをその一次的機能とするワイパーブレード、及び、材料に排出ポートへ向かう運動成分を与えると言う一次的機能を有するコンベアブレードの両方を含む。このために、5°~90°、より好ましくは20°~90°オフセットして配列された複数のコンベアブレードが概して設置され、コンベアブレードは、それぞれ、軸方向に延びるローターブレードと、ローターブレードの半径方向外側縁に配置された斜め配列の翼板部品と、を有する。しかしながら、「ローターブレード」と言う用語は、特に、順次軸方向に配列されるワイパーブレード要素も含む。ここで、典型的には、ワイパーブレード要素の多数の軸方向に走る列が、円周方向に、例えば90°相互にオフセットされて配列される。
【0029】
特に好ましい実施形態によれば、ローターブレードの少なくともいくつかは、ワイパーブレード要素の形式で存在し、少なくともハウジングケースの内面に対面するワイパーブレード要素の縁領域において、ローター軸に対して所定の取付け角度を形成する。このように、これらワイパーブレード要素は、ハウジングケースの内面に材料膜を生成するように、同時に材料に排出ポートへ向かう運動成分を与えるように、設計される。上述のように、材料膜の船首波の温度が取り出されることが特に好ましく、温度センサの温度感知部分は、図面に関連して更に詳しく説明するように、ワイパーブレード要素の船首側に配置されることが好ましい。この点に関して、ローターシャフト本体に配置された温度センサ要素(ローターシャフト本体に対して半径方向へ走る部分を持つ)は、図面の説明において述べられるように、温度センサの温度感知部分が、ワイパーブレード要素の船首側において終了するように、適切な高さに配置されたワイパーブレード要素を貫通することが更に好ましい。
【0030】
但し、温度センサが、無接触計測温度センサの形式で存在することも想定される。これは、特に、材料膜との温度センサの直接接触を回避すべきときに有利である可能性がある。
【0031】
具体的には、温度センサは、耐熱温度センサ、熱電対、高温計及び/又は赤外線センサとして存在できる。上述のように、温度センサはローターシャフトに配置されることが好ましく、加熱されたハウジングケースを通過しないので、正確な計測を確実にするために、妨害的な熱放射又は計測結果を誤らせる熱放射から温度感知部分を隔離する必要がない。したがって、本実施形態によれば、単純でしたがって安価な温度センサでも、非常に正確な計測結果が得られる。
【0032】
少なくとも1つの温度センサに対して、温度センサによって測定された信号を外部信号処理装置へ伝達するための信号ラインが概して割り当てられる。例えばケーブルの形式で存在するこの信号ラインによって、信号は処理室から外部へ伝達され、信号が評価され、その結果、評価に基づいて必要な調節を実施できる。
【0033】
温度センサの少なくともいくつかがローターシャフトに配置される上述の好ましい実施形態に関連して、更に、信号ラインが、ローターシャフト本体内に軸方向に延びる信号ラインダクトを、少なくとも部分的に通ることが好ましい。したがって、ローターシャフトにおける温度センサの配列は、ハウジングの設備修正を不要にできる。特にハウジング壁に凹部を設置する必要がない。例えば、信号ラインがハウジング壁を通る場合には、凹部が必要である。
【0034】
例えば、ローターシャフト本体を介して伝達された信号が、ローターシャフト上に処理室外に配置されたスリップリング配列体へ送られ、ここで取り出され、概して増幅機を介して、評価ユニットへ送られることが想定できる。
【0035】
更に、信号ラインダクトに加えて、ローターシャフト本体内に、物質、特に添加溶剤を導入するための軸方向に延びる更なるダクトが設けられることが、想定される。前記添加溶剤は、好ましくは剥離(stripping)の目的のために使用される。より具体的には、これは、例えば窒素などの不活性ガスによって構成できる。この付加的なダクトは、信号ラインダクトに対して概ね平行に走る。本実施形態によれば、加熱されたハウジングケース壁を介した添加溶剤の導入は必要ない。したがって、物質がハウジングケース壁を介して供給される場合に生じるような物質搬送システムの損傷は、この実施形態によれば回避できる。
【0036】
上述のように、ハウジングケースは、加熱可能及び/又は冷却可能に設計される。このために、ハウジングケースの内部には、加熱及び/又は冷却の目的のための熱媒体が流動するためのハウジングケース空洞部が、概して形成される。この点に関して、ハウジングケース壁は、二重壁設計であることが好ましく、ハウジングケース内壁とハウジングケース外壁との間の空間は、熱媒体が流動するためのものである。好ましくは、このために、熱媒体の伝導のためのガイドスパイラルが空洞部に配置される、なぜなら、これによって高い加熱又は冷却容量が得られるからである。
【0037】
薄膜処理装置における局部的プロセス熱に意図的に影響を与えられるようするために、更に、ハウジングケースが少なくとも2つのハウジングケース区分を備えることが好ましい。ハウジングケース区分は、相互に独立して加熱及び/又は冷却されるように設計される。この実施形態によれば、各ハウジングケース区分に対して、別個の熱媒体入口及び別個の別媒体出口を持つ別個の熱媒体回路システムが好ましくはそれぞれに割り当てられる。
【0038】
更に、この場合、ハウジングケース区分の各々が、対応する処理室ゾーンを囲繞し、複数の温度センサが異なる処理室ゾーン中に配分されることが望ましい。したがって、理想的には、処理室は、温度センサ及びハウジングケース区分の配置を考慮して、事前に、異なる複数の処理室ゾーンに分割される。処理室ゾーンにおいて、先行する処理室ゾーンと比較して、材料の組成又は粘度の比較的顕著な変化が予測される。特に好ましくは、予想される粘度の上昇のせいで散逸エネルギーの比較的高い入力が同様に予想される処理室ゾーンにおいては、特にこれらの処理室ゾーンにおいて比較的高い分解能で温度を監視し、最終的に臨界温度を上回る状況を確実に回避するために、複数の温度センサが配置される。特に処理室の出口側端領域において、このことが当てはまる。当然、本発明に従って可能になる高分解能の温度監視の結果として、臨界温度を下回る状況が生じる可能性のある場所でも、この状況を回避できる。
【0039】
別の好ましい実施形態によれば、温度センサが配列される薄膜処理装置の領域の少なくとも1つにおいて、熱媒体温度センサがハウジングケースの対応する領域に配置される。ここでは、この熱媒体温度センサは、その温度感知部分と共に、ハウジングケース空洞部の中へ又はその中に配置されたガイドスパイラルの中へ突出し、少なくとも概ね処理室内で対応する温度センサが配置される高さにおいて、熱媒体の局部的取得温度を正確に測定することが意図されている。その結果、ハウジングケースの温度制御は、熱媒体の温度が対応するハウジングケース区分からの出口においてのみ測定される場合よりも、さらにより正確にかつより迅速に調節できる。
【0040】
上述のように、本発明に係る薄膜処理装置は、薄膜処理装置内で進むプロセスを最適に案内するための方法に、特に有利に使用できる。
【0041】
この方法に従えば、処理対象の材料は、入口ポートを介して処理室の中へ供給され、ローターシャフトによってハウジングケースの内面に材料膜が生成され、材料は、出口領域へ向かう方向に搬送される。
【0042】
材料膜の温度は、この場合、薄膜処理装置の少なくとも1つの場所において測定され、このようにして測定された値は、所望の値と比較され、所望の値との差に応じて、少なくとも1つのプロセスパラメータが調節される。
【0043】
プロセスパラメータとして、1つの具体的実施形態によれば、材料へ導入される又は適切な場所で取り除かれる熱の量が調節される。
【0044】
好ましくは、材料へ導入される又は取り除かれる熱の量は、少なくとも部分的に、ハウジングケースへ導入される又は取り除かれる熱の量によって調節される。これは、ハウジングケース壁を加熱又は冷却するために使用される熱媒体の温度を調節することによって実現されることが好ましい。
【0045】
これに代わって又はこれに加えて、上に説明したように、回転速度の上昇に伴い、散逸熱も上昇するので、材料へ導入される熱の量は、ローターシャフトの回転速度によって調節できる。更に、ローターシャフトの形状によって散逸エネルギー入力を調節することが想定できる。この点に関して、特に、材料が高粘度である領域においてローターブレード要素の数を減少すること、又は、材料が低粘度である領域においてローターブレード要素によって加えられるせん断力を減少することが想定できる。
【0046】
重合プロセス又はこれに伴う過剰単量体の分離において、1つ又は複数のプロセスパラメータの調節が、具体的には、以下の応用可能な作動上の関係を妥当に考慮して、実現される。
【0047】
即ち、重合材料の粘度は、
-材料の分子量が増大する場合、
-材料の温度が低下する場合、
-揮発成分の含有量が低下する場合、及び/又は
-せん断速度が低下する場合
上昇する。
【0048】
粘度が上昇すると、散逸エネルギーも増大する。更に、散逸エネルギーは、ローターシャフトの回転速度が増大すると、増大する。
【0049】
低粘度材料の場合、即ち、例えば揮発性物質除去又は重縮合の初期段階において、プロセス熱は、ハウジングケースから材料への熱伝導によって支配的に決定されるのに対して、高粘度材料の場合、即ち揮発性物質除去又は重縮合が進んだ段階においては、散逸によって導入された熱エネルギーが支配的である。材料に応じてかつ処理に応じて、このことは、薄膜蒸発機における種々の温度パターンをもたらす。したがって、一方では、第1材料の場合には、材料出口領域直前に最高温度が得られることが想定され、これは、例えば重縮合プロセス又はラジカル若しくはイオン重合プロセスの場合であり、このプロセスでは、粘度は、分子量(プロセスにおいて上昇する)によって支配的に決定され、更に、このプロセスは、発熱的に概して進行する。しかしながら、他方では、温度が材料入口後一瞬上昇するが、ある点から材料出口へ向かって再び温度が減少することも想定できる。これは、例えば、揮発成分の含有量が減少した結果としての粘度の上昇が、加熱の結果としての粘度の減少よりも顕著な場合に、生じる可能性がある。
【0050】
本発明に係る薄膜蒸発機は非常に穏やかな処理を可能にするという事実に起因して、特に重合、具体的には重縮合又はラジカル若しくはイオン重合に適する。ここで生じる可能性のある問題、即ち重合体の臨界温度を上回るという問題は、本発明によれば、効果的に回避できる。より具体的には、本発明は、重合体の変色、望ましくないゲル化及び黒色斑点(black specks)の形成を確実に回避できるようにする。
【0051】
ラジカル又はイオン、特に陰イオン重合プロセスは、概して、特に強力に発熱的に進行するので、本発明に係る薄膜蒸発機のこれらの重合プロセスへの適合性は、特に高い。これらの重合プロセスにおいて、発熱反応は、概して、初期段階において特に高く、その後、より高い変換が得られることによって、比較的高い熱入力が散逸によって実現される段階が続く。具体的には、温度センサの少なくともいくつかが薄膜処理装置の作動時に材料膜と直接接触する上記の実施形態は、これらのプロセスにとって特に有利である、なぜなら、ハウジング壁による冷却によるか、又は、蒸留液及び/若しくは他の冷却液の添加によるか、に関係なく、迅速な温度調節又は温度制御が特に重要であるからである。
【0052】
本発明による利点は、生物学的に分解可能な物質、特に再生可能原材料を基本とする重合体の生成又は処理において特に重要である。本発明に係る薄膜蒸発機が特に有利な物質の更なるカテゴリーは、接着剤、密封材、及び/又は、コーティング材料、特に紫外線誘導で、熱誘導で、及び/又は、圧力活性化的に硬化する種類の物質に関連する。
【0053】
このように、上述の方法は、例えば過剰単量体の分離のための重合プロセスにおいて使用できる。理想的には、このように分離された高揮発性単量体は、調製されて、処理室において進行する重合プロセスへ再供給される。
【0054】
本発明が、添付図面に基づいて更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】薄膜蒸発機の形式の本発明に係る薄膜処理装置の概略図である。
【
図2】
図1に示される薄膜処理装置のローターシャフトの側面図である。
【
図3】
図2に示されるローターシャフトの一部分の斜視図である。
【
図4】
図3に係るローターシャフトに配置された温度センサの詳細図である。
【
図5】
図3に示されるローターシャフトの断面図である。
【
図6】
図3に示されるローターシャフトの一部分の軸長手方向断面図である。
【
図7】ローターシャフトに割り当てられたスリップリングローター配列体の概略図である。
【
図8】本発明に係る薄膜処理装置によって測定可能な3つの例示的な温度パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
薄膜蒸発機100の形式の
図1の薄膜処理装置10は、ハウジングケース14を有するハウジング12を有し、ハウジングケースは、軸方向に延びる処理室16を囲繞する。ハウジング12の上部入口領域18には、材料を処理室16の中へ供給するための入口ポート20が配置され、ハウジング12の下部出口領域22には処理室16から材料を排出するための出口ポート24が配置される。
【0057】
ハウジングケース14は、入口側において円筒形に形成される。同様に、ハウジングケース14によって囲繞される処理室16も、この領域において円筒形を有する。出口側において、ハウジングケース14は、出口へ向かって円錐形にテーパー状になる。このようにして形成された排出コーン26の出口には、排出ポンプが配置される。
【0058】
更に、ハウジングケースには、蒸気ポート27が配置され、これを介して高揮発成分を処理室16から引き出すことができる。
【0059】
ハウジングケース14は、二重壁構造を持つ。即ち、ハウジングケーシング内壁とハウジングケース外壁とを有し、その間に空間が介在する。この空間には、熱媒体典型的には伝熱油又は熱媒油の伝導のためのガイドスパイラルが配置される。図示する実施形態において、2つのハウジングケース区分14a、14bが存在し、そのそれぞれに、対応するガイドスパイラルに流体的に接続されたそれぞれの熱媒体入口28a、28bと、熱媒体出口30a、30bと、を有する別個の熱媒体回路が割り当てられる。したがって、ハウジングケース区分は、相互に独立して温度制御可能である。このために、それぞれの熱媒体回路には、更に、熱媒体の温度を制御するための別個の加熱要素及び冷却要素が割り当てられ、熱媒体は、熱媒体ポンプによって、熱媒体入口28a又は28bを介してハウジングケース壁に形成された空洞の中へ又はガイドスパイラルの中へ供給される。
【0060】
入口ポート20の上流には、更に、例えばスタティックミキサーなどの混合装置(図示せず)を配置できる。これによって、例えば不活性化剤、添加剤、安定剤又はこれらの混合物及び結合物などの更なる成分を、処理対象の材料に添加できる。
【0061】
図2に関連して更に述べるように、処理室16には、ハウジングケース14の内面に材料膜を生成するため及び入口領域18から出口領域22へ向かう方向に材料を搬送するために、液圧駆動装置32によって駆動可能な、同軸に延びるローターシャフト34が配置される。図示する液圧駆動装置に加えて、電動駆動装置も、この目的のために想定できる。
【0062】
図示する実施形態において、ローターシャフトは、液圧駆動装置32を貫通する。液圧駆動装置32と処理室16を囲繞するハウジングケース14との間には、潤滑油供給装置36が配置され、潤滑油供給装置は、軸方向の面シールの潤滑のために補助ユニット38に接続される。
【0063】
ハウジング12の反対を向く液圧駆動装置32の側において、ローターシャフト34は、ステータブッシュ40に取り付けられ、ブッシュは、
図7に関連して詳述するスリップリング配列体42を備える。更に、最上端部には、添加溶剤を導入するための添加溶剤供給ライン44が配置される。
【0064】
更に、ハウジングケース14には、ハウジング又は処理室の内部の検査を行えるようにするための検査ガラス45が組み込まれる。
【0065】
例えば
図2に示すように、ローターシャフト34は、中央ローターシャフト本体46を備え、シャフト本体は、図示する実施形態において、具体的には比較的大きい寸法の場合にはロッドとして構成されるが、チューブとしても存在しうる。
【0066】
薄膜蒸発機100の据付け状態において、入口ポート20の領域に在るローターシャフト34の領域には、比較的大きいピッチを有する螺旋コンベア48が配置される。搬送方向に、螺旋コンベアの後に、実質的に軸方向に平行に走るローターブレード50の列51が続く。ローターブレードは、ワイパーブレード要素500の形式でローターシャフト本体46の円周上に配列され、ワイパーブレード要素は、ハウジングケース内壁付近まで達する。図示する実施形態において、円周方向にそれぞれ90°離間して4つの列51a、51b、51c、51dが形成される。
【0067】
ワイパーブレード要素500は、回転方向DRから斜めの方向を向く。より具体的には、
図2に示す実施形態によれば、軸方向に互いに続く複数のワイパーブレード要素500は、取付け板52から突出する歯54によって形成される。これらの歯は、それぞれ、取付け板に隣接する近位区分56を有し、近位区分は取付け板に対して斜め方向を向き、ローター軸Aに対して平行に走る平面上に在る。これら近位区分56の後に、それぞれ遠位区分58が在る。遠位区分は、それぞれのローターブレード50又はワイパーブレード要素500の半径方向外側端領域を形成し、ローター軸Aに対して斜めに走る平面上に在る。図示する実施形態において、遠位区分58の下縁及び上縁は、取付け板52の平面に実質的に平行に走る。
【0068】
作動時に、入口ポート20を通過して処理室16の中へ供給された処理対象の材料は、螺旋コンベア48によって捕捉され、ワイパーブレード要素500の方向に搬送される。材料が最上部のワイパーブレード要素500aに到達すると直ちに、材料はワイパーブレード要素によって進行方向に押され、ハウジングケース内壁に薄膜状に配分される。
【0069】
ワイパーブレード要素500の遠位区分58によって形成された取付け角度の結果として、搬送対象の材料に対して、出口ポート24へ向かう方向の運動成分が与えられる。最上部ワイパーブレード要素500によって進行方向へ押し出された材料が当該ワイパーブレード要素の下縁に達したら、材料は、ハウジングケース内壁にビードとして滞留する。後に続くワイパーブレード要素500bは、ビードを捕捉し、これをクラッシュして、更に出口ポート24の方向に材料を押し、このようにして、材料は、最終的に処理室の長さ全体に亘って搬送される。
【0070】
ローターシャフト本体46において、ワイパーブレード要素の列の間に温度センサ60が配置される。温度センサは、ローターシャフト34に対して又はローターシャフト本体46に対して実質的に半径方向に延びて、同じ高さに配置されたワイパーブレード要素の遠位区分58を貫通する。このようにして、温度センサの半径方向最外側の温度感知部分61は、作動時に、温度感知部分61が材料の船首波内に在るように(船首波はワイパーブレード要素によって生成される)、回転方向で見て、それぞれのワイパーブレード要素500の前で終了する。
【0071】
温度センサ60によって取り出された信号の伝達のために、ローターシャフト本体46には、軸方向に延びる信号ラインダクト62が形成され、この目的のために設けられた温度センサ通路64が、例えば
図6に示すようにラインダクトに現れる。更に
図6から分かるように、ローターシャフト本体において、添加溶剤の導入のために更に軸方向に延びるダクト66が形成される。このダクトから、添加溶剤排出口68は、半径方向にローターシャフト本体46を通過して、対応する管状延長部70の中へ通じる。延長部は、同様にワイパーブレード要素の列の間に配置される。
【0072】
信号ラインダクト62を通じて、ラインはスリップリング配列体42へ通じる。スリップリング配列体は、ローターシャフト34に割り当てられる回転スリップリング74aと、ステータブッシュ40に割り当てられる静止スリップリング74bと、を備える。スリップリング配列体42によって送信された信号は、ケーブル出口76を介して外部増幅器及び評価システムへ送られる。
【0073】
添加溶剤用のダクト66は、同様に、ステータブッシュ40を通って延在し、対応するフランジ43を有する添加溶剤供給ライン44に流体的に接続される。
【0074】
個々の温度センサ60によって測定された局部的温度信号によって、一方でハウジングケース壁の温度制御を意図的に調節できるようにする温度プロフィルを生成できる。これは、例えば、ガイドスパイラルを通過して流れる熱媒体の温度及び処理量を適切に調節することによって、実現できる。
【0075】
異なる温度制御管理を必要とする3つの例示的温度パターンを
図8に示す。それぞれの温度パターンを示すチャートには、対応する薄膜蒸発機の処理室ゾーンが示され、3つのゾーン即ち、入口側処理室ゾーンI、中間処理室ゾーンII及び出口側処理室ゾーンIIIが区別される。更に、3つの全ての事例において、最大許容限度温度(それ以上の温度において製品が損傷を受ける可能性がある)を示す。
【0076】
事例a)及びc)において、それぞれ、出口側処理室ゾーンIIIにおいて最高温度に達するが、事例b)においては、中間処理室ゾーンIIにおいて最高温度が得られる。事例b)は、例えば、揮発成分の含有量の減少の結果としての粘度の上昇が、加熱の結果としての粘度の減少より顕著であるときに生じる可能性がある。
【0077】
熱媒体を意図的に冷却することにより又はハウジングケース壁の適切な温度制御によって、最高許容温度を上回らないように、材料の温度に影響を与えることができる。
【符号の説明】
【0078】
10;100 薄膜処理装置;薄膜蒸発機
12 ハウジング
14 ハウジングケース
14a、14b ハウジングケース区分
16 処理室
18 入口領域
20 入口ポート
22 出口領域
24 出口ポート
26 排出コーン
27 蒸気ポート
28a、b 熱媒体入口
30a、b 熱媒体出口
32 液圧駆動装置
34 ローターシャフト
36 潤滑油供給装置
38 補助ユニット
40 ステータブッシュ
42 スリップリング配列体
43 フランジ
44 添加溶剤供給ライン
45 検査ガラス
46 ローターシャフト本体
48 螺旋コンベア
50;500 ローターブレード;ワイパーブレード要素
52 取付け板
54 歯
56 近位区分
58 遠位区分
60 温度センサ
61 温度感知部分
62 信号ラインダクト
64 温度センサ通路
66 添加溶剤導入用ダクト
68 添加溶剤排出口
70 管状延長部
74a 回転スリップリング
74b 静止スリップリング
76 ケーブル出口
A ローター軸
DR 回転方向