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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20220329BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B25J19/00 M
B25J15/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017231450
(22)【出願日】2017-12-01
(65)【公開番号】P2019098458
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 康之
(72)【発明者】
【氏名】土田 高廣
(72)【発明者】
【氏名】柴田 康徳
(72)【発明者】
【氏名】木村 清隆
(72)【発明者】
【氏名】大堂 琳太郎
(72)【発明者】
【氏名】茂木 寛
(72)【発明者】
【氏名】子守 大毅
(72)【発明者】
【氏名】小原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大坪 宏行
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091433(JP,A)
【文献】特開2017-074643(JP,A)
【文献】特開平06-204316(JP,A)
【文献】実開平02-039893(JP,U)
【文献】特開2010-173646(JP,A)
【文献】特開2001-191397(JP,A)
【文献】特開2008-279590(JP,A)
【文献】米国特許第06499777(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00-19/00
B29C 49/04
B64C 3/44
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温のワークに接触した状態で該ワークを搬送するロボットハンドにおいて、
冷媒を流通させる冷媒流路が内部に形成され、
少なくとも前記ワークに接触する表面部分が断熱材で被覆され
前記冷媒流路は、
前記内部を区画する板部材によって区画形成され、
前記板部材は、
ハンド伸長方向と略直交する断面形状がトラス構造を形成するように配置されたことを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
ハンド伸長方向と略直交する断面形状が方形形状の中空構造とされ、
前記板部材は、前記方形形状の上部の両角隅部から該方形形状の下辺の中央部に架け渡すように配設されたことを特徴とする請求項に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記冷媒が空気であり、
前記板部材の配置は、前記冷媒流路における前記空気の流れが、最初に前記空気が前記ワークの接触部側に接触して流れ、前記空気の送給方向先方で方向変換してから前記ワークの非接触部側に接触して流れるように行われたことを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド、特に、高温のワークに接触した状態で、そのワークを搬送するロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車産業におけるホットプレス工程では、加熱炉で加熱された高温のワークを取り出してプレス機に搬送する。この加熱炉-プレス機間の搬送装置には、種々のものがあるが、ワークが高温であるため、レール式搬送装置を用いることも多い。しかしながら、レール式搬送装置は、周知のように、設置場所が大きく、搬送経路の変更が困難であるという問題がある。そこで、さほど設置場所をとらず、搬送経路の変更も比較的容易なロボットを用いた搬送装置(搬送システム)が考えられる。なお、ロボットは、所謂産業用ロボットを意味する。
【0003】
ロボットを用いたワークの搬送には、一般にワークを把持したり搭載したりするロボットハンドが用いられる。高温のワークに接触するロボットハンドは、多くの場合、金属製であり、こうした金属製のロボットハンドが高温に晒されると、主として熱膨張による熱変形が生じる。このようなロボットハンドの熱変形に対してワークの搬送精度を確保する技術として、例えば、下記特許文献1に記載される搬送装置がある。この搬送装置では、ロボットハンドの熱変形量を測定し、その熱変形量に基づくロボットハンドの姿勢補正量を算出し、その姿勢補正量で姿勢が補正されたロボットハンドでワークを搬送することで、ロボットハンドの熱変形によるワークの姿勢変化を補正してワーク搬送精度を確保しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-47490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載される搬送装置では、ロボットハンド自体の熱変形が抑制されるわけではないので、ロボットハンド自体の熱変形に伴う種々の問題、例えば、ロボットハンドと加熱炉内のワークや加熱炉構成部材との干渉などは解決されない。また、高温のワークに接触した状態で、そのワークを搬送するロボットハンドでは、ロボットハンド自体が熱変形することによる弊害も考えられる。特に、次工程までの間に加熱されたワークの温度ができるだけ下がらないことが要求される場合には、上記ロボットハンド自体の熱変形の問題解決は困難となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットハンド自体の熱変形を抑制することができると共に、高温のワークの温度低下も抑制可能なロボットハンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのロボットハンドは、
高温のワークに接触した状態で該ワークを搬送するロボットハンドにおいて、冷媒を流通させる冷媒流路が内部に形成され、少なくとも前記ワークに接触する表面部分が断熱材で被覆されたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ロボットハンドの内部に形成された冷媒流路に冷媒を流通させることでロボットハンドの温度を内部から低減することができ、ロボットハンド自体の熱変形を抑制することができる。更に、少なくともワークが接触する表面部分が断熱材で被覆されているので、高温のワークからの直接の熱伝達も抑制されると共に、ワークの温度低下も抑制することが可能となる。
【0009】
また、前記冷媒流路は、前記内部を区画する板部材によって区画形成され、前記板部材は、前記ワークの荷重に対して補強構造となるように配置されたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ロボットハンドの内部を板部材によって区画するだけで冷媒流路が簡易に形成されると共に、その板部材の配置構造を利用してワークの荷重に対する補強構造を構成することにより、ロボットハンドの強度の向上も図ることができる。
【0011】
また、前記補強構造は、ハンド伸長方向と略直交する断面形状がトラス構造を形成するように構成されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、冷媒流路を形成する板部材によって、ハンド伸長方向と略直交する方向にトラス構造が構成されるので、ワークの荷重に対する良好な補強が達成される。
【0013】
また、ハンド伸長方向と略直交する断面形状が方形形状の中空構造とされ、前記板部材は、前記方形形状の上部の両角隅部から該方形形状の下辺の中央部に架け渡すように配設されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、冷媒流路を、適格なトラス構造とするだけでなく、ワークが接触する上面部側とワークが非接触な下面部側とに区分することができるので、ワークが接触する上面部側からワークが非接触な下面部側に冷媒を流通することにより、ロボットハンドを効率よく且つ満遍なく冷却することが可能となる。
【0015】
また、前記冷媒が空気であり、前記板部材の配置は、前記冷媒流路における前記空気の流れが、最初に前記空気が前記ワークの接触部側に接触して流れ、前記空気の送給方向先方で方向変換してから前記ワークの非接触部側に接触して流れるように行われたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、冷媒に空気を用いることにより実施化が容易であり、その空気は、送給方向先方で方向変換して、ワークの接触部側からワークの非接触部側の順に流れることで、ロボットハンドを効率よく且つ満遍なく冷却することができると共に、空気の給排構造が簡易化される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、内部に形成された冷媒流路に冷媒を流通させることでロボットハンドの温度を内部から低減して自身の熱変形を抑制することができると共に、少なくともワークが接触する表面部分が断熱材で被覆されているので、高温のワークからの直接的な熱伝達を抑制し、しかもワークの温度低下も抑制することが可能となる。これにより、ロボットハンドそのものの熱変形に伴う諸問題を回避することができると共に、ワークの加熱温度抑制などによってコストの低廉化や処理時間の短縮化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のロボットハンドの一実施の形態を示す外形斜視図である。
図2図1のロボットハンドが適用されたホットプレス工程のレイアウトである。
図3図1のロボットハンドの詳細説明図である。
図4図3のロボットハンドの内部構造の説明図である。
図5図3図4のロボットハンドの作用の説明図である。
図6図2の加熱炉の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明のロボットハンドの一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態のロボットハンドの外形斜視図、図2は、図1のロボットハンドが適用されたホットプレス工程のレイアウトである。このホットプレス工程では、既存のホットプレス工程と同様に、素材置き場SYに置かれたワークWを加熱炉HF内に装入し、加熱された高温のワークWを加熱炉HFから取り出してからプレス機HPに装入し、熱間プレスされたワークWをプレス機HPから取り出して搬出する。このホットプレス工程では、主としてワークWの搬送のために、計5台のロボットR1~R5を配設している。このうち、図1のロボットハンド10が取付けられたロボットは、加熱炉の図示右側のロボットR3である。
【0020】
この種のロボット(産業用ロボット)は、マニプレータとも呼ばれ、人間の上肢に類した構造、即ち複数の関節とそれらの関節間を連結するリンクからなる可動部を有する。そして、それら可動部の先端にロボットハンドが取付けられる。この実施の形態のように、ワークを搬送するロボットでは、ワークを把持したり搭載したりするロボットハンドが用いられる。この実施の形態では、図1に示すように、ワークWを上面部に搭載するフォーク状のロボットハンド10を採用した。なお、図2の円は、各ロボットR1~R5の可動範囲を概略的に示している。周知のように、この種の産業用ロボットでは、例えば平面視で現れる可動範囲内でリンクを三次元的に自在に伸縮・移動することができるので、この可動範囲内であれば次工程設備や後段のロボットとワークWの受け渡しを行うことができる。また、図に示すワークWの形状は、あくまでもワークの一例であり、これに限定されるものではない。
【0021】
この実施の形態では、ロボットR3の可動部先端部のリンクLに梁状の連結部材8が取付けられ、この連結部材8の幅方向両端部から2本のロボットハンド10が同方向にフォーク状に突設されている。これらのロボットハンド10は、共に同形であり、その本体部は、方形断面形状の外殻を有する金属製中空部材、例えばステンレス鋼製角パイプをハンド突設方向(伸長方向)に長手に向けて構成され、その突出先端部は、例えば同じ素材の先細りの金属製中空角錘台部材で閉塞されている。つまり、このロボットハンド10は、内部全体が中空構造であり、結果として、軽量化されている。以下、このロボットハンド10の方形断面形状の中空部を本体部12、中空角錐台部をキャップ部14と示す。本体部12の方形断面形状は長方形であり、その一方の長辺が上面部側になるように配設されている。また、本体部12の突出先端部上面には、ワークWを位置決めするための凸部16が突設されている。
【0022】
ここで、加熱炉HF内におけるワークWの貯留状態について説明する。図6は、図2に示す加熱炉HFの概略構成図であり、主としてワークWの貯留状態を表す正面図である。この実施の形態では、スペース効率を含めたワークWの加熱効率を向上するために、加熱炉HF内にワークWを多段に貯留する。例えば図6の紙面垂直方向が略水平方向であり、この紙面垂直方向にワークWを出し入れする場合、加熱炉HF内には、水平方向に平行で且つ紙面垂直方向に突出する複数の棒材Sがワーク棚として多段に配設され、その水平方向に並んだ棒材Sからなるワーク棚の上にワークWが搭載される。水平方向に並んだ棒材Sからなるワーク棚は加熱炉HF内に多段に配設されているので、ワークWも加熱炉HF内に多段に貯留される。
【0023】
フォーク状のロボットハンド10は、フォークの突出方向を図6の紙面垂直方向に向けて同紙面垂直方向に挿抜され、例えばワークWをワーク棚に搭載する場合には水平方向に並んだ棒材Sからなるワーク棚の上方から下方に移動してロボットハンド10の上面に搭載されたワークWをワーク棚上に移載する。逆に、ワークWをワーク棚から取り出す場合には、水平方向に並んだ棒材Sからなるワーク棚の下方から上方に移動してワーク棚上のワークWをロボットハンド10の上面に移載する。スペース効率を含めたワークWの加熱効率を高めるためには、ワーク棚(棒材S)を高さ方向に密に配設するのが望ましく、従ってフォーク状のロボットハンド10を加熱炉HF内に挿抜する際、ロボットハンド10の熱変形が大きいと、ロボットハンド10が下段のワークWや上段のワーク棚(棒材S)に干渉するおそれがある。そのため、この実施の形態では、ロボットハンド10自体の熱変形を可及的に抑制する。
【0024】
この目的のために、この実施の形態のロボットハンド10は、冷媒を流通させるための冷媒流路18a、18bがハンド内部に形成されると共に、ロボットハンド10の外表面部分全体(キャップ部14を含む)が断熱材20で被覆されている。図3は、図1のロボットハンド10の詳細説明のための斜視図、図4は、図3のロボットハンド10の内部構造の説明図である(位置決め用の凸部は図示を省略している)。この実施の形態のロボットハンド10は、前述のように、方形断面形状の中空部材からなる本体部12の突出方向(ハンド伸長方向)先端部が、同じく中空のキャップ部14によって閉塞されている。
【0025】
この実施の形態では、この方形断面形状の中空本体部12の内部を板部材22で区画して冷媒流路12a、12bを形成した。具体的には、本体部12の方形断面形状の上側両角隅部の夫々と、その方形断面形状の下辺の中央部とに2枚の板部材22を夫々架け渡すようにして気密に固着し、これにより、本体部12の内部の上面部側、即ちワークWの接触部側と、下面部側、即ちワークWの非接触部側の双方に夫々冷媒流路18a、18bを形成した。ちなみに、本体部12の内部の上面部側には1つの冷媒流路18a、下面部側には2つの冷媒流路18bが形成されるが、後述するように、上面部側冷媒流路18aには外部空気を送給し、キャップ部14で折り返した空気を下面部側冷媒流路18bから排気するので、両者の流路断面積は同等となる。
【0026】
ロボットハンド10の外表面部分を被覆する断熱材20には、例えば耐熱温度の高いシリカクロスが用いられる。この実施の形態では、例えば帯状のシリカクロスを包帯の斜め巻き状態に巻き付けて、ロボットハンド10の外表面部分全体を被覆した。この実施の形態のロボットハンド10では、上面部にワークWが搭載されるので、ワークWが接触する上面部側に断熱材20を被覆するだけでも、ワークWからの伝熱(熱伝達)を相応に低減することができる。しかしながら、このロボットハンド10は、前述した加熱炉HF内に差し込まれ、その際、ロボットハンド10の下面部を含むその他の面部も、加熱炉HF内の雰囲気温度や下段のワークWからの輻射熱などによって加熱される。そのため、この実施の形態では、ロボットハンド10の外表面部分全体を断熱材20で被覆した。
【0027】
この断熱材20は、高温のワークWからロボットハンド10への伝熱を抑制するだけでなく、ロボットハンド10によるワークWからの抜熱も抑制する。加熱されたワークWは、高温のまま、プレス機HPに装入されるのが望ましく、従って加熱炉HFからプレス機HPまでの搬送過程における温度低下を可及的に抑制するのが望まれる。ロボットハンド10の表面部分を被覆する断熱材20は、ワークWからの抜熱を低減するので、ワークWの温度低下を抑制することができる。そして、ワークWの温度低下を抑制することができれば、例えば加熱炉HFにおけるワークWの加熱温度(到達温度)を抑制(低減)することが可能となり、これにより加熱に伴うコストを低廉化したり、その所要時間を短縮化したりすることも可能となる。
【0028】
図5は、図3のロボットハンド10内の空気の流れを模式的に示した作用の説明図である。この実施の形態では、図3に示すように、ロボットハンド10の本体部12の突出方向基端部を閉塞し、上面部側の冷媒流路12aには外部空気の送給配管24を、下面部側の冷媒流路12bには内部空気の排気配管26を夫々接続した。送給配管24には、図示しない加圧ポンプが接続されており、排気配管26には、図示しない排気ポンプが接続されている。そのため、送給配管24から送給された外部からの空気は、図5に示すように、最初に、ワークWの接触部側である本体部12の上面部側冷媒流路18aを通り、送給先端部であるキャップ部14内で折り返し(方向変換し)、ワークWの非接触部側である本体部12の下面部側冷媒流路18bを通って排気配管26から排気される。そのため、高温のワークWが接触する本体部12の上面部が効率的(積極的)に冷却され、炉内雰囲気や下段ワーク輻射熱で加熱される本体部12の下面部や両側面部も効果的(付帯的)に冷却され、全体として、ロボットハンド10全体が満遍なく冷却される。なお、外部空気は、ロボットR3の稼働中、常時、送給し続ける。
【0029】
更に、この実施の形態では、断面方形の本体部12の上部角隅部と下辺中央部とに板部材22を架け渡して冷媒流路18a、18bを区画形成したために、それらの板部材22は、本体部12の外殻部材である断面方形中空部材を含め、ハンド伸長方向と略直交する方向に、即ち冷媒の流れ方向から見て、トラス構造(補強構造)を形成する。トラス構造は、周知のように、構造体の強度を向上する有効な構成であり、ロボットハンド10の本体部12の内部に冷媒流路18a、18bと共にトラス構造が形成されることにより、ワークWの荷重に対し、ロボットハンド10の強度を極めて効率的に向上することができ、これによってもロボットハンド10の変形がより一層抑制される。なお、冷媒流路18a、18bの形成構造は、この実施の形態に限定されるものではないが、この実施の形態では、冷媒流路18a、18bにおける空気(冷媒)の流動抵抗を可及的に小さくしながら、ロボットハンド10の強度を効率的に向上することができた。
【0030】
この実施の形態におけるロボットハンド10の熱変形は、主に下方への垂れと突出方向への伸びである。ロボットハンド10の下方への垂れは、加熱炉HF内における下段ワークWや加熱炉構成部材との干渉となる。また、ロボットハンド10の突出方向への伸びは、位置決め用の凸部16の変位となるため、ワークWを正確に位置決めできない。この実施の形態の場合、ワークWの加熱温度は約950℃であり、例えばロボットハンド10と下段ワークWや加熱炉構成部材との隙間が約20mmである場合に、ロボットハンド10の上下方向への熱変形量の最大許容値は10mm未満となるが、上記対策を講じた結果、ロボットハンド10の上下方向への熱変形量は僅か数mmとなり、ロボットハンド10と下段ワークWや加熱炉構成部材との干渉を完全に回避することができるようになった。そして、その結果、ロボットハンド10の温度を例えば放冷によって低下させるための待機時間が必要なくなった。ホットプレス工程の作業効率を確保するためには、こうした待機時間の削減が最も重要であり、従って工程効率の最大のメリットは、ロボットハンド10の冷却のための待機時間がなくなったことである。
【0031】
このように、この実施の形態のロボットハンド10では、内部に形成された冷媒流路18a、18bに冷媒を流通させることでロボットハンド10の温度を内部から低減して自身の熱変形を抑制することができると共に、少なくともワークWが接触する表面部分が断熱材20で被覆されているために、高温のワークWからの伝熱を抑制し、且つワークWの温度低下も抑制することが可能となる。そして、その結果、ロボットハンド10そのものの熱変形に伴う諸問題を回避することができると共に、ワークWの加熱温度抑制などによってコストの低廉化や処理時間の短縮化も可能となる。
【0032】
また、板部材22によってハンド内部を区画することで冷媒流路18a、18bを形成すると共に、それらの板部材22の配置によって、ハンド伸長方向と略直交する方向にトラス構造をハンド内部に構成する。これにより、ハンド内部に冷媒流路18a、18bが簡易に形成されると共に、その板部材22で構成されるトラス構造によってロボットハンド10の強度を向上することができる。
【0033】
また、上面部にワークWが搭載される方形断面形状の中空部材で本体部12を構成し、その方形形状の上部の両角隅部から下辺の中央部に架け渡すように板部材22を配設して冷媒流路18a、18bを形成する。これにより、ハンド内部にトラス構造を構成しながら、冷媒流路18a、18bをワークWが接触する上面部側とワークWが非接触な下面部側とに区分することができ、ワークWが接触する上面部側冷媒流路12aからワークWが非接触な下面部側冷媒流路12bに冷媒を流通することで、ロボットハンド10を効率よく且つ満遍なく冷却することが可能となる。
【0034】
また、空気を冷媒とし、送給方向先方で方向変換される空気がワークWの接触部側からワークWの非接触部側の順に流れるように冷媒流路18a、18bを構成する。これにより、実施化が容易となると共に、ロボットハンド10を効率よく且つ満遍なく冷却することができ、しかも空気の給排構造が簡易化される。
【0035】
なお、ロボットハンドの内部に形成される冷媒流路の形態は上記に限定されるものではない。また、冷媒流路を区画形成する板部材によって形成されるトラスの形態も上記に限定されるものではない。
【0036】
また、冷媒には、空気以外の気体、例えば不活性ガスや、沸点の高い液体、例えばオイルを用いることも可能である。
【0037】
本発明が上記していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当とされる特許請求の範囲に記載された発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0038】
10 ロボットハンド
12 本体部
18a、18b 冷媒流路
20 断熱材
22 板部材
24 送給配管
26 排気配管
W ワーク
HF 加熱炉
HP プレス機
図1
図2
図3
図4
図5
図6