(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20220329BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220329BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220329BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20220329BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20220329BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20220329BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H05B33/02
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/26 Z
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2017239363
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】軍司 雅和
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-155118(JP,A)
【文献】特開2014-241403(JP,A)
【文献】特開2014-163991(JP,A)
【文献】特開2002-311857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0179724(US,A1)
【文献】特開2008-211184(JP,A)
【文献】特表2017-536646(JP,A)
【文献】特開2006-208541(JP,A)
【文献】特開2006-208540(JP,A)
【文献】特開平05-265034(JP,A)
【文献】国際公開第2006/030762(WO,A1)
【文献】特開2011-124205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
H01L 27/32
H01L 51/50 - 51/56
H05B 33/12
H05B 33/22
H05B 33/26
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタを覆う第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上の第1導電層と、
前記第1導電層の上の第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上の第2導電層と、
前記第1導電層、前記第2絶縁層及び前記第2導電層で構成される画素容量と、
前記第2導電層の上に設けられ、平面視において前記第2導電層の一部と重なる位置に開口部を有する第3絶縁層と、
前記第3絶縁層の前記開口部を覆い、発光層を含む有機層と、
を備え、
前記第1絶縁層は、平面視において前記第3絶縁層と重なる位置に第1溝部を有
すると共に前記開口部と重なる位置に第2溝部を有し、
前記画素容量の一部は、前記第1溝部の内側に位置
し、
前記画素容量の他の一部は、前記第2溝部の内側に位置する、有機EL表示装置。
【請求項2】
前記第2溝部の内側に、前記第2溝部を平坦化する第4絶縁層を有する、請求項
1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記第2導電層は、少なくとも二層の積層構造を有し、
前記第4絶縁層は、前記積層構造のうちの下層側導電層と上層側導電層との間に位置する、請求項
2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記第4絶縁層は、樹脂材料で構成される、請求項
2又は
3に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記第2導電層は、少なくとも二層の積層構造を有し、
平面視において、前記積層構造のうちの下層側導電層は、前記積層構造のうちの上層側導電層と重ならない部分を有する、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記第1絶縁層及び前記第3絶縁層は、樹脂材料で構成される、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記第2絶縁層は、無機材料で構成される、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
前記上層側導電層は、銀又は銀合金を含み、
前記下層側導電層は、透光性を有する金属酸化物を含む、請求項
3又は
5に記載の有機EL表示装置。
【請求項9】
前記第1溝部は、平面視において前記開口部に沿って配置される、請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の有機EL表示装置。
【請求項10】
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタを覆う第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上の第1導電層と、
前記第1導電層の上の第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上の第2導電層と、
前記第2導電層の上に設けられ、平面視において前記第2導電層の一部と重なる位置に開口部を有する第3絶縁層と、
前記第3絶縁層の前記開口部を覆い、発光層を含む有機層と、
を備え、
前記第1絶縁層は、平面視において前記第3絶縁層と重なる位置に第1溝部を有
すると共に前記開口部と重なる位置に第2溝部を有し、
前記第1導電層の一部と前記第2絶縁層の一部と前記第2導電層の一部とは、前記第1溝部の内側に位置
し、
前記第1導電層の他の一部と前記第2絶縁層の他の一部と前記第2導電層の他の一部とは、前記第2溝部の内側に位置する、有機EL表示装置。
【請求項11】
前記第1絶縁層の前記第1導電層とは反対の側に、第3導電層が位置し、
前記第1溝部は、前記第3導電層の一部を露出し、
前記第1導電層は、前記第3導電層の前記一部と接している、請求項
10に記載の有機EL表示装置。
【請求項12】
薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタを覆う第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上の第1導電層と、
前記第1導電層の上の第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上の第2導電層と、
前記第1導電層、前記第2絶縁層及び前記第2導電層で構成される画素容量と、
前記第2導電層の上に設けられ、平面視において前記第2導電層の一部と重なる位置に開口部を有する第3絶縁層と、
前記第3絶縁層の前記開口部を覆い、発光層を含む有機層と、
を備え、
前記第1絶縁層は、平面視において前記第3絶縁層と重なる位置に第1溝部を有し、
前記画素容量の一部は、前記第1溝部の内側に位置し、
前記第2導電層は、少なくとも二層の積層構造を有し、
平面視において、前記積層構造のうちの下層側導電層は、前記積層構造のうちの上層側導電層と重ならない部分を有する、有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子として有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を有する有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯情報端末等の表示画面として、有機EL表示装置を用いる製品が増えている。有機EL表示装置は、各々発光素子を有する複数の画素を制御して画像を形成する自発光型表示装置であり、視野角依存性が小さいという利点を有する。有機EL表示装置の各画素には、映像信号を書き込むためのスイッチングトランジスタと発光素子に流れる電流を制御するための駆動トランジスタとが配置される。
【0003】
駆動トランジスタのゲートは、スイッチングトランジスタの出力端子(ソース又はドレイン)に接続される。これにより、駆動トランジスタのゲートに入力される映像信号は、スイッチングトランジスタのオン/オフ動作により制御される。一般的に、駆動トランジスタのゲートとスイッチングトランジスタの出力端子との間には、電荷を蓄積する受動素子としての画素容量が接続される。画素容量に保持された電圧は、駆動トランジスタのゲートに印加され、この電圧に応じた電流が発光素子に流れる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の画素容量は、画素を構成する薄膜の一部を積層することにより形成される。例えば、絶縁層を介して一対の導電層を向かい合わせに配置することにより、画素容量として機能するコンデンサを形成することができる。しかしながら、近年、表示装置の高精細化が進むにつれて画素の面積が小さくなり、画素内に十分な容量の画素容量を形成することが困難となっている。
【0006】
本発明の一実施形態の課題の一つは、画素内に、少ないスペースで十分な容量の画素容量を有する有機EL表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態における有機EL表示装置は、薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタを覆う第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上の第1導電層と、前記第1導電層の上の第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上の第2導電層と、前記第1導電層、前記第2絶縁層及び前記第2導電層で構成される画素容量と、前記第2導電層の上に設けられ、平面視において前記第2導電層の一部と重なる位置に開口部を有する第3絶縁層と、前記第3絶縁層の前記開口部を覆い、発光層を含む有機層と、を備え、前記第1絶縁層は、平面視において前記第3絶縁層と重なる位置に第1溝部を有し、前記画素容量の一部は、前記第1溝部の内側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の有機EL表示装置の構成を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態の有機EL表示装置における画素電極の構成を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図8】第1実施形態の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図9】第1実施形態の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す断面図である。
【
図11】第3実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す断面図である。
【
図12】第4実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す断面図である。
【
図13】第4実施形態の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図14】第4実施形態の有機EL表示装置の製造工程を示す断面図である。
【
図15】第5実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す断面図である。
【
図16】第6実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す平面図である。
【
図17】第6実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す平面図である。
【
図18】第6実施形態の有機EL表示装置における画素の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において、「上」及び「下」とは、基板における発光素子が形成される側の面(以下、単に「表面」という。)を基準とした相対的な位置関係を指す。例えば、本明細書では、基板の表面から発光素子に向かう方向を「上」と言い、その逆の方向を「下」と定義する。また、本明細書および特許請求の範囲において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
基板上に形成された薄膜を加工して、複数の薄膜パターンを形成した場合、これら複数の薄膜パターンは、異なる機能又は役割を有することがある。しかしながら、これら複数の薄膜パターンは、同一の工程で形成された薄膜によって構成されるものであり、同一の材料又は同一の層構造で構成される。したがって、これら複数の薄膜パターンは、同一の層に存在しているものと定義する。
【0012】
(第1実施形態)
<表示装置の構成>
図1は、第1実施形態の有機EL表示装置100の構成を示す平面図である。
図1において、アレイ基板10は、画素部11、走査線駆動回路12、映像信号線駆動回路13、及び端子部14を含む。アレイ基板10は、支持基板101(
図2参照)の上に薄膜を積層して各種回路及び有機EL素子70(
図2参照)を形成した基板であり、アクティブマトリクス基板とも呼ばれる。端子部14には、フレキシブルプリント回路基板15が電気的に接続されている。本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板15は、走査線駆動回路12及び映像信号線駆動回路13に各種信号を伝達する集積回路16を含む。
【0013】
画素部11には、有機EL素子を含む画素20が複数配置される。具体的には、画素20は、
図1に示されるD1方向(行方向)及びD2方向(列方向)に並び、全体としてマトリクス状に配置される。画素20の詳細な構造については後述する。
【0014】
走査線駆動回路12は、画素部11に配置された走査線(ゲート線)にゲート信号を供給する駆動回路である。本実施形態では、画素部11の両脇に走査線駆動回路12を設け、左右の両方からゲート信号を供給できるように構成されている。走査線駆動回路12には、例えばシフトレジスタ回路が含まれる。
【0015】
映像信号線駆動回路13は、画素部に配置された映像信号線(データ信号線)に映像信号を供給する駆動回路である。本実施形態では、映像信号線駆動回路13として、アナログスイッチ回路及びシフトレジスタ回路を配置しているが、これに限られるものではない。例えば、映像信号線駆動回路13は、アナログ映像信号を諧調電圧に変換する回路を有していてもよい。
【0016】
端子部14は、走査線駆動回路12及び映像信号線駆動回路13から延びる複数の配線に信号を供給する端子を有する。端子部14には、複数の配線が集約され、それらの配線に対してフレキシブルプリント回路基板15が電気的に接続される。フレキシブルプリント回路基板15を介して集積回路16から伝達された信号(例えば、クロック信号や映像信号など)は、端子部14から延びる複数の配線を介して走査線駆動回路12及び映像信号線駆動回路13に伝達される。
【0017】
前述のとおり、本実施形態では、フレキシブルプリント回路基板15に対して走査線駆動回路12及び映像信号線駆動回路13に各種信号を伝達する集積回路16が実装されている。集積回路16は、走査線駆動回路12に対してクロック、スタートパルスなどの制御信号を送ったり、映像信号に対して所定の信号処理を施したりする役割を有する。なお、本実施形態では、集積回路16をフレキシブルプリント回路基板15に実装する例を示したが、支持基板101(
図2参照)の上に直接的に実装することも可能である。
【0018】
次に、本実施形態における有機EL表示装置100の画素20の構成について説明する。
図1に示した画素20は、実際には、RGBの3つ色に対応した3つの副画素(サブピクセル)で構成される。しかしながら、ここでは説明の便宜上、1つの副画素について説明する。
【0019】
図2は、第1実施形態の有機EL表示装置100における画素20の構成を示す断面図である。
図3は、第1実施形態の有機EL表示装置100における画素20の構成を示す平面図である。なお、
図2に示す断面図は、
図3において、一点鎖線II-II'で画素20を切断した断面を表している。ここでは、必要に応じて
図2及び
図3の両方を参照して画素20の構成について説明する。
【0020】
なお、本明細書において、「画素」とは、画像を構成する1つの単位を意味する概念である。したがって、説明の便宜上、
図3では画素20の輪郭を図示しているが、隣接する画素間に、明確な境界があるとは限らない。本明細書では、発光素子(本実施形態では、有機EL素子70)と、その発光素子に、映像信号に応じた電流を流すための半導体素子(本実施形態では、薄膜トランジスタ50)とを含む単位を画素と呼ぶ。
【0021】
図2において、支持基板101上には、下地絶縁層102を介して薄膜トランジスタ50が設けられている。本実施形態では、支持基板101としてガラス基板を用いるが、アクリル、ポリイミド等の樹脂材料で構成される基板を用いてもよい。下地絶縁層102としては、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、酸化窒化シリコン(SiON)などの無機材料で構成される絶縁層を用いることができる。
【0022】
薄膜トランジスタ50は、いわゆるトップゲート型の薄膜トランジスタである。しかし、これに限らず、どのようなタイプの薄膜トランジスタを設けてもよい。
図2に示す薄膜トランジスタ50は、後述する有機EL素子70に対して電流を供給する駆動用トランジスタとして機能する。また、本実施形態では、薄膜トランジスタ50として、Nチャネル型トランジスタを用いる。なお、薄膜トランジスタ50の構造は、公知の構造であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0023】
薄膜トランジスタ50には、画素容量55が接続される。画素容量55は、薄膜トランジスタ50を構成する、2つの導電層とその間に設けられた絶縁層とを利用して構成することができる。例えば、本実施形態の画素容量55は、薄膜トランジスタ50の活性層を構成する半導体層、ゲート絶縁層、及び容量電極(ゲート電極と同時に形成される電極)を用いて形成することができる。ただし、画素容量55の構造は、これに限られるものではない。
【0024】
薄膜トランジスタ50は、有機絶縁層104で覆われている。有機絶縁層104は、薄膜トランジスタ50の形状に起因する起伏を平坦化する平坦化膜として機能する。本実施形態では、有機絶縁層104として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂材料を含む絶縁層を用いる。
【0025】
有機絶縁層104には、開口部106が設けられている。開口部106は、画素電極として機能する導電層118を薄膜トランジスタ50に接続するためのコンタクトホールとして機能する。具体的には、導電層118は、酸化物導電層110を介して薄膜トランジスタ50に接続される。本実施形態では、酸化物導電層110として、ITO(Indium Tin Oixde)、IZO(Indium Zinc Oixde)等の金属酸化物材料で構成される薄膜をパターン化したものを用いる。しかし、これに限らず、他の材料で構成される酸化物導電層を用いてもよい。酸化物導電層110は、開口部106によって露出した薄膜トランジスタ50の一部(具体的には、ソース電極)に接続される。
【0026】
酸化物導電層110と導電層118との間には、絶縁層114が配置されている。絶縁層114は、例えば窒化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどの無機材料で構成される。本実施形態では、絶縁層114が、後述する画素容量60の誘電体として機能するため、誘電率の高い窒化シリコン層を用いることが望ましい。導電層118は、絶縁層114に設けられた開口部116を介して酸化物導電層110に接続される。
【0027】
有機絶縁層104は、前述の開口部106とは別に、溝部108を有する。具体的には、
図2及び
図3に示されるように、溝部108は、平面視において有機絶縁層120と重なる位置に設けられる。溝部108は、開口部106の形成と同時に有機絶縁層104に形成された凹部である。
【0028】
図3に示されるように、溝部108は、平面視において、有機絶縁層120に設けられた開口部120aに沿って配置される。具体的には、本実施形態の溝部108は、開口部120aの周囲に二重に配置される。ただし、溝部108を配置する構成は、
図3に示す例に限られるものではない。例えば、溝部108を開口部120aの周囲に三重以上に配置することも可能である。
【0029】
有機絶縁層104の上には、平面視において溝部108と重なるように、酸化物導電層112が設けられている。酸化物導電層112は、酸化物導電層110と同一の材料で形成された導電層である。酸化物導電層112は、溝部108の形状に沿って溝部108の内側にも設けられる。さらに、有機絶縁層104の上には、平面視において溝部108と重なるように、前述の絶縁層114及び導電層118が設けられる。これらの絶縁層114及び導電層118は、いずれも溝部108の形状に沿って溝部108の内側に設けられる。つまり、
図2に示されるように、溝部108の内側において、酸化物導電層112、絶縁層114及び導電層118が積層される。すなわち、溝部108の内側には、酸化物導電層112、絶縁層114及び導電層118で構成される容量が形成される。
【0030】
溝部108の内側に形成された容量は、その一部に、画素電極として機能する導電層118を含むため、画素電極と電気的に接続される。この画素電極は、有機EL素子70のアノード電極として機能する。つまり、溝部108の内側に形成された容量は、薄膜トランジスタ50及び有機EL素子70と電気的に接続された受動素子として機能する。本実施形態では、溝部108の内側に形成された容量を、画素容量60として用いる。
【0031】
なお、酸化物導電層112、絶縁層114及び導電層118は、平面視において有機絶縁層120に設けられた開口部120aと重なる領域(すなわち、有機EL素子70と重なる位置)においても重なっている。すなわち、平面視において開口部120aと重なる領域にも、平板状の画素容量60が形成される。
【0032】
このように、本実施形態では、画素容量60の一部が、平面視において開口部120aと重なる領域に位置するとともに、溝部108の内側にも位置する。したがって、画素20の面積を最大限に利用して画素容量60を形成することができる。さらに、画素容量60のうち溝部108の内側に位置する部分は、溝部108の側面及び底面を利用して形成されている。そのため、有機絶縁層104の深さ方向にも画素容量60を形成することが可能となり、画素容量60として機能する容量の総面積を大幅に増やすことができる。
【0033】
以上のとおり、本実施形態の表示装置100では、有機絶縁層104に設けられた溝部108を画素容量60の形成に利用することにより、画素20内に、少ないスペースで十分な容量の画素容量60を確保することができる。また、絶縁層114が、他の酸化シリコン層等に比較して誘電率の高い窒化シリコン層であることも、少ない面積で画素容量60の容量を大きく確保することに寄与している。
【0034】
なお、本実施形態では、画素容量60の一部を構成する酸化物導電層112が、絶縁層50dの上に設けられた導電層107と電気的に接続されている。導電層107は、薄膜トランジスタ50のソース電極50e及びドレイン電極50fと同一の材料で形成された導電層である。図示は省略しているが、本実施形態において、導電層107は、薄膜トランジスタ50のゲート電極50cと電気的に接続されている。導電層107とゲート電極50cは、絶縁層50dに設けられたコンタクトホール(図示せず)を介して電気的に接続することができる。
【0035】
本実施形態では、導電層107と酸化物導電層112とが電気的に接続されるため、画素容量60は、薄膜トランジスタ50のゲート電極50cに接続される。すなわち、本実施形態では、薄膜トランジスタ50のゲート電極50c、画素容量60及び有機EL素子70が電気的に接続される。ただし、これに限らず、画素容量60は、薄膜トランジスタ50の他の部位に接続されてもよいし、薄膜トランジスタ50とは異なる他の半導体素子に接続されてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、導電層107が平面視において溝部108の全体と重なる位置に配置されている。つまり、
図2に示されるように、導電層107と酸化物導電層112とが複数個所で電気的に接続される。このような構造とすると、いずれかの箇所でコンタクト不良が発生した場合であっても、他の箇所で電気的接続を確保することができるという利点がある。
【0037】
上述の有機絶縁層120は、画素電極として機能する導電層118の上に設けられ、平面視において導電層118の一部と重なる位置に開口部120aを有する。すなわち、導電層118のうち、開口部120aによって露出された部分が、有機EL素子70の発光領域70a(
図3参照)として機能する。なお、有機絶縁層120を構成する有機材料としては、感光性アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の樹脂材料を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0038】
このように、有機絶縁層120は、発光領域70aを画定する役割を果たし、バンク又はリブと呼ばれる。つまり、逆に言えば、平面視において有機絶縁層120と重なる領域は、発光しないデッドスペースとなる。しかしながら、本実施形態では、平面視において有機絶縁層120と重なる領域にも画素容量60を形成することにより、限られた画素内の面積を有効に活用することができる。
【0039】
また、本実施形態では、画素電極として機能する導電層118が、
図4に示されるように、酸化物導電層118aと酸化物導電層118cとで銀又は銀合金を含む導電層118bを挟んだ積層構造を有する。前述のように、酸化物導電層118a及び118cとしては、ITO、IZO等の透光性を有する金属酸化物を含む薄膜を用いることができる。また、銀又は銀合金を含む導電層118bとしては、銀薄膜又は銀合金薄膜を用いることができる。酸化物導電層118cは、仕事関数が高いため、有機EL素子70のアノード電極に適している。
【0040】
また、有機EL素子70から発した光は、導電層118に含まれる銀又は銀合金を含む導電層110bよって反射される。つまり、本実施形態の有機EL表示装置100は、有機EL素子70から発した光が、支持基板101とは反対側に向かう方向(すなわち、上方に向かう方向)に出射する構成となっている。したがって、本実施形態では、平面視において有機EL素子70に重なる領域も画素容量60として活用することができる。
【0041】
上述の有機EL素子70は、画素電極(すなわち、有機EL素子70のアノード電極)として機能する導電層118、有機絶縁層120の開口部120aを覆う有機EL層122、及び共通電極(すなわち、有機EL素子70のカソード電極)として機能する導電層124を含む。
【0042】
図示は省略するが、有機EL層122は、少なくとも発光層を含む有機層であり、その他に、電子注入層、電子輸送層、電子ブロッキング層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層のいずれか、又は全てを含むことができる。有機EL層122は、例えば赤色、青色、緑色のいずれかに発光する有機EL材料を用いることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、画素ごとに発光色の異なる発光層を設ける構成を例示するが、これに限るものではない。例えば、図示は省略するが、白色発光の有機EL層を複数の画素にわたって設けることができる。この場合、白色の光を各画素に設けたカラーフィルタでRGBの各色に分離する。また、電子注入層、電子輸送層、電子ブロッキング層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層といった機能層については、複数の画素にわたって設けられていてもよい。
【0044】
共通電極として機能する導電層124は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む導電層である。アルカリ金属又はアルカリ土類金属としては、例えばマグネシウム(Mg)、リチウム(Li)などを用いることができる。本実施形態では、導電層124として、マグネシウムと銀の合金であるMgAg膜を用いる。導電層124は、複数の画素にわたって設けられる。
【0045】
有機EL層122からの出射光を上面側、つまり導電層124側に取り出すトップエミッション型の表示装置とする場合、導電層124には光に対する透過性が要求される。導電層124として前述のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む導電層を用いる場合、光に対する透過性を付与するために、導電層124の膜厚を出射光が透過する程度に薄くする。具体的には、導電層124の膜厚を10nm以上30nm以下とすることで光に対する透過性を付与することができる。
【0046】
導電層124の上(つまり、有機EL素子70の上)には、封止層126が設けられる。本実施形態の封止層126は、下方から順に、無機材料で構成される第1封止層126a、有機材料で構成される第2封止層126b及び無機材料で構成される第3封止層126cの三層で構成されている。封止層126は、外部からの水分等の侵入を防ぎ、有機EL層122及び導電層124の劣化を防ぐ役割を果たす。
【0047】
本実施形態では、第1封止層126a及び第3封止層126cとして、窒化シリコン層を用いる。しかし、これに限らず、窒化シリコン層に代えて酸化シリコン層や酸化窒化シリコン層を用いてもよい。つまり、第1封止層126a及び第3封止層126cとしては、無機絶縁層を用いることができる。無機絶縁層としては、特にシリコン窒化物を含む絶縁層を用いることが好ましい。
【0048】
また、第2封止層126bとして、樹脂材料で構成された有機絶縁層を用いる。本実施形態では、第2封止層126bとして樹脂材料で構成される有機絶縁層を用いることにより、有機絶縁層120の開口部120aにより形成された起伏を平坦化することができる。第1封止層126aは、膜厚が1μm前後であるため、開口部120aの傾斜面に沿って形成される。これに対し、第2封止層126bは、10μm前後の膜厚で形成されるため、開口部120aの段差を十分に埋めることが可能である。
【0049】
<表示装置の製造方法>
次に、本実施形態の有機EL表示装置100の製造方法について説明する。
図5~
図9は、第1実施形態の有機EL表示装置100の製造工程を示す断面図である。
【0050】
まず、
図5に示されるように、支持基板101上に薄膜トランジスタ50及び画素容量55を形成する。薄膜トランジスタ50及び画素容量55の形成方法は、特に限定されず、公知の方法で形成することができる。支持基板101として、本実施形態ではガラス基板を用いるが、他の絶縁基板を用いてもよい。
【0051】
なお、支持基板101として、樹脂材料で構成されるフレキシブル基板を用いる場合は、ガラス基板等の支持基板上にポリイミド等の樹脂層を形成し、その樹脂膜の上に薄膜トランジスタ50及び画素容量55を形成する。そして、最終的に、
図2に示した第1封止層126a、第2封止層126b及び第3封止層126cを形成した後に支持基板から樹脂層を剥離すればよい。
【0052】
本実施形態では、支持基板101上に下地絶縁層102を設け、その上に半導体層50aを形成する。次に、半導体層50aを覆うゲート絶縁層50bを形成する。ゲート絶縁層50bを形成したら、ゲート絶縁層50bの上の、半導体層50aと重畳する領域にゲート電極50cを形成する。さらに、ゲート電極50cの形成と同時に、画素容量55の一部を構成する容量電極55aを形成する。
【0053】
次に、ゲート電極50c及び容量電極55aを覆う絶縁層50dを形成し、その後、ゲート絶縁層50b及び絶縁層50dに形成されたコンタクトホールを介して半導体層50aに接続されるソース電極50e及びドレイン電極50fを形成する。このとき、ソース電極50eは、平面視において容量電極55aと重なるように形成される。こうして、支持基板101上に、薄膜トランジスタ50及び画素容量55が形成される。
【0054】
また、ソース電極50e及びドレイン電極50fの形成と同時に、絶縁層50dの上に導電層107を形成する。本実施形態では、導電層107とゲート電極50cとが電気的に接続されるように、予め絶縁層50dにコンタクトホール(図示せず)を形成しておく。
【0055】
次に、
図6に示されるように、薄膜トランジスタ50及び画素容量55を形成した後、有機絶縁層104を形成する。本実施形態では、有機絶縁層104を構成する材料として、ポジ型の感光性を有するアクリル樹脂材料を用いる。より詳細には、有機絶縁層104を構成するアクリル樹脂材料を塗布した後、フォトリソグラフィにより開口部106及び溝部108を形成する領域を選択的に感光させてパターニングを行い、不要なアクリル樹脂材料を除去する。これにより、別途エッチング処理を行うことなく、開口部106及び溝部108を有する有機絶縁層104を形成することができる。なお、
図6に示されるように、開口部106は、薄膜トランジスタ50の一部(具体的にはソース電極50e)を露出させるように形成される。また、溝部108は、導電層107の一部を露出させるように形成される。このとき、ソース電極50e及び導電層107は、有機絶縁層104を除去する際のエッチングストッパーとして機能する。
【0056】
有機絶縁層104に対して開口部106及び溝部108を形成した後、
図7に示されるように、有機絶縁層104の上に、ITO等の金属酸化物材料で構成される酸化物導電層110及び酸化物導電層112を形成する。酸化物導電層110は、開口部106を覆うように形成され、薄膜トランジスタ50のソース電極50eと電気的に接続される。また、酸化物導電層112は、溝部108を覆うように形成され、導電層107と電気的に接続される。このとき、酸化物導電層112は、平面視において、後に有機EL素子70が形成される領域と重なる領域にも位置するように形成される。
【0057】
次に、酸化物導電層110及び酸化物導電層112を形成した後、無機材料(本実施形態では、窒化シリコン)で構成される絶縁層114を形成する。絶縁層114を形成したら、フォトリソグラフィにより開口部116を形成する。開口部116は、平面視において酸化物導電層110と重なる位置に形成される。本実施形態では、開口部116は、平面視において有機絶縁層104に設けられた開口部106と重なる位置に形成されるが、重ならない位置に形成されてもよい。
【0058】
このとき、絶縁層114は、溝部108の内側において酸化物導電層112に積層される。絶縁層114は、有機絶縁層104から発生する水分等が有機EL素子70に影響を与えることを防ぐ保護膜として機能すると共に、画素容量60を構成する誘電体としても機能する。
【0059】
絶縁層114に対して開口部116を形成した後、
図8に示されるように、絶縁層114の上に導電層118を形成する。導電層118は、開口部116を介して酸化物導電層110と電気的に接続される。すなわち、導電層118は、酸化物導電層110を介して薄膜トランジスタ50と電気的に接続される。これにより、導電層118は、画素電極として機能させることができる。
【0060】
また、導電層118を形成した時点で、酸化物導電層112、絶縁層114及び導電層118で構成される画素容量60が形成される。このとき、導電層118は、有機絶縁層104に設けられた開口部106から溝部108に至るまで設けられる。したがって、画素容量60は、溝部108の内側に位置する第1部分60aと、平面視において有機EL素子70と重なる領域に位置する第2部分60bとを含む。
【0061】
なお、導電層118は、
図4に示した酸化物導電層118aと酸化物導電層118cとで銀又は銀合金を含む導電層118bを挟んだ積層構造を有する。このような積層構造を有する導電層118は、各導電層を連続的に積層した後、一括してエッチングすることにより形成してもよいし、各導電層で構成されるパターンを個別に積層して形成してもよい。
【0062】
次に、導電層118を形成した後、
図9に示されるように、バンクとして機能する有機絶縁層120を形成する。本実施形態では、有機絶縁層120を構成する材料として、感光性のアクリル樹脂材料を用いる。有機絶縁層120には、導電層118の一部と重なる位置に開口部120aが形成される。開口部120aは、導電層118の上面に、有機EL素子70が形成される領域(発光領域70a)を画定する。
【0063】
有機絶縁層120を形成したら、次に、有機EL層122及び共通電極として機能する導電層124を形成する。本実施形態では、有機EL層122及び導電層124の形成に蒸着法を用い、画素ごとに分けて形成する例を示すが、これに限られるものではない。例えば、発光層以外の電子輸送層又は正孔輸送層などの機能層については、複数の画素に対して共通に設けてもよい。本実施形態において使用し得る有機EL層122については特に制限はなく、公知の材料を用いることが可能である。
【0064】
本実施形態では、導電層124としてマグネシウムと銀とを含む合金で構成されたMgAg膜を用いる。このようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む導電層は、有機EL層122と同様に水分等に弱い。そのため、有機EL層122の蒸着と導電層124の蒸着は、大気開放せずに行うことが望ましい。この場合、真空を維持したまま連続的に蒸着処理を行うことが好ましいが、これに限らず、窒素雰囲気等の不活性雰囲気を維持したままに連続的に蒸着処理を行うことも有効である。
【0065】
この時点において、有機絶縁層120に設けられた開口部120aの内側には、画素電極として機能する導電層118、有機EL層122及び導電層124で構成される有機EL素子70が形成される。
【0066】
この後は、窒化シリコン層で構成される第1封止層126a、樹脂材料で構成される第2封止層126b、及び窒化シリコン層で構成される第3封止層126cをこの順に積層して
図2に示した断面構造の有機EL表示装置100を形成することができる。
【0067】
(第2実施形態)
本実施形態では、溝部108の下方に配置する導電層の構成を第1実施形態とは異ならせた例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100と共通する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
図10は、第2実施形態の有機EL表示装置における画素20aの構成を示す断面図である。第1実施形態では、平面視において溝部108と重なる位置に導電層107が配置されていたが、本実施形態では、溝部108の一部と重なる位置に導電層107aを配置している。なお、本実施形態では、説明の便宜上、
図10に示される溝部108の断面を溝部108aと溝部108bとに分けて説明する。
【0069】
図10に示されるように、本実施形態では、導電層107aが平面視において溝部108aと重なる位置に配置され、溝部108bと重なる位置には配置されない。この場合、導電層107aと酸化物導電層112とは、平面視において溝部108aと重なる位置において電気的に接続される。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に、導電層107aは、薄膜トランジスタ50のゲート電極50cに接続される。
【0070】
以上ように、画素容量60と導電層107aとの接続部分は、溝部108の一部と重なる位置にあってもよい。
【0071】
(第3実施形態)
本実施形態では、画素電極として機能する導電層を少なくとも二層に分けて形成する例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100と共通する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0072】
図11は、第3実施形態の有機EL表示装置における画素20bの構成を示す断面図である。第1実施形態では、画素電極として機能する導電層として、
図4に示す三層構造で構成される導電層118を用いる例を示した。本実施形態では、三層構造で構成される導電層118を二層に分けて形成する。すなわち、
図11では、
図4に示す酸化物導電層118aを酸化物導電層119aとし、導電層118b及び酸化物導電層118cで構成される積層構造を導電層119bとする。
【0073】
図11において、酸化物導電層119aは、金属酸化物材料で構成される導電層であり、画素容量60を構成する一対の電極の一方として機能する。つまり、酸化物導電層119aは、有機絶縁層104の開口部106から溝部108に重なる位置まで設けられている。
【0074】
これに対し、導電層119bは、銀又は銀合金を含む導電層と金属酸化物材料で構成される導電層との積層構造を有し、画素電極として機能する。つまり、導電層119bは、有機絶縁層104の開口部106から平面視において有機絶縁層120の開口部120aに重なる位置まで設けられている。
【0075】
以上のように、
図4に示す三層構造で構成される導電層118は、各々の導電層の機能に応じて形成する領域を分けることが可能である。
【0076】
(第4実施形態)
本実施形態では、平面視において有機絶縁層120の開口部120aと重なる領域にも溝部109を配置した例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置100と共通する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図12は、第3実施形態の有機EL表示装置における画素20cの構成を示す断面図である。第1実施形態では、平面視において有機絶縁層120と重なる位置に溝部108を設け、開口部120aと重なる位置には溝部を設けない構成としていた。これに対し、本実施形態では、平面視において有機絶縁層120の開口部120aと重なる領域にも溝部109を設けた構成としている。
【0078】
本実施形態では、溝部108の内側だけでなく、溝部109の内側にも酸化物導電層112、絶縁層114及び酸化物導電層119aで構成される容量が形成される。すなわち、本実施形態では、画素容量60-1が、溝部108の内側に位置する部分と、溝部109の内側に位置する部分とを含む。また、本実施形態では、平面視において溝部108及び溝部109と重なる領域に導電層107bが配置されている。導電層107bは、第1実施形態と同様に、薄膜トランジスタ50のゲート電極50cと電気的に接続されている。
【0079】
このように、本実施形態では、平面視において有機絶縁層120の開口部120aと重なる領域(すなわち、有機EL素子70と重なる領域)にも溝部109を設け、その内側に画素容量60-1の一部を形成する。これにより、有機EL素子70の下方のデッドスペースをより有効に活用することができ、画素容量60-1の容量を第1実施形態よりも増やすことができる。
【0080】
なお、本実施形態の構造とした場合、有機EL素子70の下方には溝部109の形状に沿った凹部が生じてしまう。このような凹部が存在すると、有機EL素子70のアノード電極の平坦性が損なわれ、有機EL素子70から発する光が様々な方向に散乱してしまう。その結果、有機EL素子70から発する光の取り出し効率が低下する虞がある。
【0081】
そこで、本実施形態では、溝部109に起因する凹部を樹脂材料で構成される充填材128で埋める構成としている。なお、本実施形態では、溝部108に起因する凹部及び有機絶縁層104の開口部106に起因する凹部も充填材130で埋める構成としている。ただし、溝部108に起因する凹部及び有機絶縁層104の開口部106に起因する凹部は、有機絶縁層120で埋めることも可能であるため、充填材128で埋めない構成としてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、溝部108及び溝部109の内側を用いて画素容量60-1を形成するとともに、有機EL素子70の平坦性(特に、アノード電極の平坦性)を確保する構成としている。具体的には、第3実施形態で説明したように、画素電極として機能する導電層を、酸化物導電層119aと導電層119bとに分けて形成する。そのため、本実施形態の画素20cは、酸化物導電層119aと導電層119bとの間に充填材128が挟まれた構造となっている。
【0083】
実際には、第1実施形態で説明したように、
図7に示す状態まで形成したら、
図13に示されるように、金属酸化物材料で構成される酸化物導電層119aを形成する。その後、溶液塗布法などの方法により樹脂層128aを酸化物導電層119aの上に形成する。これにより、有機絶縁層104の溝部108、溝部109及び開口部106に起因する凹部が、樹脂層128aで充填される。
【0084】
樹脂層128aを形成したら、
図14に示されるように、酸化物導電層119aの上面が露出するまで樹脂層128aをエッチングする。樹脂層128aのエッチングは、例えば、酸素を含むガスを用いたアッシング等の技術を用いればよい。酸化物導電層119aが露出した時点でエッチング処理を止めると、溝部108、溝部109及び開口部106に起因する凹部に樹脂材料が残り、
図12に示した充填材128として機能する。
【0085】
以上の工程を経て、有機絶縁層104の溝部108、溝部109及び開口部106に起因する凹部を充填材128によって平坦化することができる。これにより、画素電極(アノード電極)として機能する導電層119bの平坦性を確保することができ、有機EL素子70から発する光の取り出し効率を向上させることができる。
【0086】
(第5実施形態)
本実施形態では、溝部108及び溝部109の下方に配置する導電層の構成を第4実施形態とは異ならせた例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態及び第4実施形態の有機EL表示装置と共通する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
図15は、第5実施形態の有機EL表示装置における画素20dの構成を示す断面図である。第4実施形態では、平面視において溝部108及び溝部109と重なる位置に導電層107bが配置されていたが、本実施形態では、溝部109の一部と重なる位置に導電層107cを配置している。なお、本実施形態では、説明の便宜上、
図15に示される溝部109の断面を溝部109a、溝部109b及び溝部109cに分けて説明する。
【0088】
図15に示されるように、本実施形態では、導電層107cが平面視において溝部109aと重なる位置に配置され、溝部109b及び溝部109cと重なる位置には配置されない。この場合、導電層107cと酸化物導電層112とは、平面視において溝部109aと重なる位置において電気的に接続される。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様に、導電層107cは、薄膜トランジスタ50のゲート電極50cに接続される。
【0089】
以上ように、画素容量60-1と導電層107cとの接続部分は、溝部109の一部と重なる位置にあってもよい。また、図示は省略するが、画素容量60-1と導電層107cとの接続部分の冗長性を高めるために、導電層107cと電気的に接続された他の導電層を溝部108と重なる位置に設けることも可能である。
【0090】
(第6実施形態)
本実施形態では、平面視における溝部108のレイアウトを第1実施形態とは異ならせた例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態の有機EL表示装置と共通する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0091】
図16は、第6実施形態の有機EL表示装置における画素20eの構成を示す平面図である。
図17は、第6実施形態の有機EL表示装置における画素20fの構成を示す平面図である。
図18は、第6実施形態の有機EL表示装置における画素20gの構成を示す平面図である。
【0092】
図16に示す画素20eの構成では、溝部108-1が、有機絶縁層120の開口部120aだけでなく、有機絶縁層104の開口部106をも囲むように配置される。このように溝部108の長さをできるだけ長く確保することにより、
図3に示されるように二重に配置しなくても必要な容量を確保することができる。また、溝部108-1を形成するのに必要なスペースが減るため、発光領域70aを大きく確保することができる。
【0093】
図17に示す画素20fの構成では、溝部108-2は、有機絶縁層120の開口部120aに沿って配置された第1部分108-2aと、第1部分108-2aの長手方向と交差する方向に延びる第2部分108-2bとを有する。つまり、溝部108-2は、
図3に示される溝部108に対して、第2部分108-2bを加えた構成を有する。このような構成とすることにより、第1実施形態に比べてより容量を大きく確保することが可能となる。
【0094】
図18に示す画素20gの構成では、有機絶縁層120の開口部120aの一辺に沿って溝部108-3が配置される。このように、必要な容量が足りる限りにおいて、溝部108-3の長さを短くしてもよい。本実施形態では、溝部108-3の長さは短くなるものの、有機絶縁層104の深さ方向に画素容量が形成されるため、平面的に画素容量を形成するよりも大きな容量を確保することができる。
【0095】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0096】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0097】
10…アレイ基板、11…画素部、12…走査線駆動回路、13…映像信号線駆動回路、14…端子部、15…フレキシブルプリント回路基板、16…集積回路、20、20a~20g…画素、50…薄膜トランジスタ、50a…半導体層、50b…ゲート絶縁層、50c…ゲート電極、50d…絶縁層、50e…ソース電極、50f…ドレイン電極、55…画素容量、55a…容量電極、60、60-1…画素容量、60a…第1部分、60b…第2部分、70…有機EL素子、70a…発光領域、100…表示装置、101…支持基板、102…下地絶縁層、104…有機絶縁層、106…開口部、107、107a~107c…導電層、108、108-1、108-2…溝部、108-2a…第1部分、108-2b…第2部分、108-3…溝部、108a、108b、109a~1-9c…溝部、110…酸化物導電層、110b…導電層、112…酸化物導電層、114…絶縁層、116…開口部、118…導電層、118a…酸化物導電層、118b…導電層、118c…酸化物導電層、119a…酸化物導電層、119b…導電層、120…有機絶縁層、120a…開口部、122…有機EL層、124…導電層、126…封止層、126a…第1封止層、126b…第2封止層、126c…第3封止層、128…充填材、128a…樹脂層、130…充填材