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特許7048314液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20220329BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220329BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C08L63/00 A
C09K3/10 B
C09K3/10 E
C09K3/10 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017503643
(86)(22)【出願日】2017-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2017001347
(87)【国際公開番号】W WO2017130786
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2016012749
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 大輝
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-227955(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152030(WO,A1)
【文献】特開2010-121069(JP,A)
【文献】特開2010-053330(JP,A)
【文献】国際公開第2004/041900(WO,A1)
【文献】特開2008-179797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C08L 63/00
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と光ラジカル重合開始剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、
前記硬化性樹脂は、分子量が100以上500未満の化合物と、分子量が500~2500の化合物とを含有し、
前記分子量が100以上500未満の化合物は、エポキシ化合物を含み、
前記分子量が100以上500未満の化合物と前記分子量が500~2500の化合物との合計100重量部中における前記分子量が500~2500の化合物の含有量が10重量部以上30重量部以下であり、
前記光ラジカル重合開始剤は、カルバゾール骨格を有する化合物である
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項2】
カルバゾール骨格を有する化合物は、カルバゾール骨格に含まれる芳香環以外の芳香環を有することを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
遮光剤を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項5】
請求項1、2若しくは3記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項4記載の上下導通材料を用いてなることを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光部硬化性に優れ、かつ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、硬化性樹脂と光重合開始剤と熱硬化剤とを含有する光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、液晶アニール時に加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができ、現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。装置の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【0004】
しかしながら、狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部まで光が到達せず硬化が不充分となるという問題があった。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出し、溶出したシール剤成分による硬化反応が液晶中において進行することで液晶汚染が発生するという問題があった。
液晶汚染を抑制する方法として、特許文献3には、シール剤に高感度の光重合開始剤を配合することが開示されている。しかしながら、高感度の光重合開始剤を配合しただけでは、遮光部において充分に液晶汚染を抑制することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【文献】国際公開第2012/002028号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、遮光部硬化性に優れ、かつ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と光ラジカル重合開始剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、上記硬化性樹脂は、分子量が100以上500未満の化合物と、分子量が500~2500の化合物とを含有し、上記分子量が100以上500未満の化合物は、エポキシ化合物を含み、上記分子量が100以上500未満の化合物と上記分子量が500~2500の化合物との合計100重量部中における上記分子量が500~2500の化合物の含有量が10重量部以上30重量部以下であり、上記光ラジカル重合開始剤は、カルバゾール骨格を有する化合物である液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、シール剤の遮光部硬化性を向上させるため、特に高感度である光ラジカル重合開始剤としてカルバゾール骨格を有する化合物を用いることを検討した。しかしながら、このような光ラジカル重合開始剤を用いても、遮光部硬化性が充分でなく、液晶汚染が生じやすいという問題があった。
本発明者は、光ラジカル重合開始剤として用いたカルバゾール骨格を有する化合物は高感度であるものの、硬化性樹脂に対する溶解性が低かったために遮光部硬化性を充分に向上させることができなかったと考えた。そこで本発明者は、光ラジカル重合開始剤としてカルバゾール骨格を有する化合物を用いるだけでなく、更に、硬化性樹脂として特定の分子量の化合物を組み合わせて用いることにより、遮光部硬化性に優れ、かつ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、分子量が100以上500未満の化合物と、分子量が500~3000の化合物とを含有する。上記分子量が100以上500未満の化合物と、上記分子量が500~3000の化合物とを組み合わせて用いることにより、光ラジカル重合開始剤であるカルバゾール骨格を有する化合物を充分に溶解させることができ、その結果、本発明の液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性に優れ、かつ、液晶汚染を抑制することができるものとなる。
なお、本明細書において、上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、重量平均分子量を用いて表す場合がある。本明細書において、上記「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0010】
上記硬化性樹脂は、上記分子量が100以上500未満の化合物を含有する。
上記分子量が100以上500未満の化合物は、カルバゾール骨格を有する化合物の溶解性の観点から、分子量が300以上500未満であることが好ましい。
【0011】
上記硬化性樹脂は、上記分子量が100以上500未満の化合物として、(メタ)アクリル化合物を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られる(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、「(メタ)アクリロイル基」ともいう)を有する化合物を意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。更に、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0012】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0016】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールEジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジイルビス(グリシジルエーテル)、1,6-ナフタレンジイルビス(グリシジルエーテル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0017】
上記イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0018】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0019】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
上記硬化性樹脂は、上記分子量が100以上500未満の化合物として、接着性及びカルバゾール骨格を有する化合物の溶解性の観点から、エポキシ化合物を含有することが好ましい。
上記エポキシ化合物としては、例えば、上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物や、部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味し、例えば、2つ以上のエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる。
【0021】
上記硬化性樹脂は、上記分子量が500~3000の化合物を含有する。
上記分子量が500~3000の化合物の分子量の好ましい下限は600、好ましい上限は2500である。上記分子量が500~3000の化合物の分子量が600以上であることにより、カルバゾール骨格を有する化合物の溶解性により優れるものとなる。上記分子量が500~3000の化合物の分子量が2500以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が低液晶汚染性により優れるものとなる。上記分子量が500~3000の化合物の分子量のより好ましい下限は1000、より好ましい上限は2000である。
【0022】
上記分子量が500~3000の化合物としては、オリゴマー化合物が好ましく、重合度が3~6のオリゴマー化合物であることがより好ましい。
また、上記分子量が500~3000の化合物は、エポキシ基及び/又は(メタ)アクリロイル基を1分子中に合計2個以上有する多官能化合物であることが好ましく、架橋密度が高まり、溶出をより抑制できることから、ノボラック型構造のような櫛形構造を有する多官能化合物であることがより好ましい。
【0023】
上記分子量が500~3000の化合物としては、具体的には例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2'-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂等のオリゴマー型エポキシ樹脂や、これらのオリゴマー型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させてなるオリゴマー型エポキシ(メタ)アクリレートやオリゴマー型部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、オリゴマー型エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0024】
上記分子量が100以上500未満の化合物と上記分子量が500~3000の化合物との合計100重量部中における上記分子量が500~3000の化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は30重量部である。上記分子量が500~3000の化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性及び液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記分子量が500~3000の化合物の含有量のより好ましい下限は12重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0025】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、光ラジカル重合開始剤を含有する。
上記光ラジカル重合開始剤は、カルバゾール骨格を有する化合物である。上記光ラジカル重合開始剤として上記カルバゾール骨格を有する化合物を用いることにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は遮光部硬化性に優れるものとなる。
【0026】
上記カルバゾール骨格を有する化合物の分子量の好ましい下限は300、好ましい上限は1000である。上記カルバゾール骨格を有する化合物の分子量がこの範囲であることにより、上記硬化性樹脂に対する溶解性により優れるものとなる。上記カルバゾール骨格を有する化合物の分子量のより好ましい下限は400、より好ましい上限は700である。
【0027】
上記カルバゾール骨格を有する化合物は、上記硬化性樹脂に対する溶解性の観点から、カルバゾール骨格に含まれる芳香環以外の芳香環を有することが好ましい。
また、上記カルバゾール骨格を有する化合物は、遮光部硬化性により優れることから、カルバゾール骨格に含まれる窒素原子以外の窒素原子を有することが好ましく、オキシムエステル結合を有することがより好ましい。
【0028】
上記カルバゾール骨格を有する化合物は、濃度が0.1mg/mLとなるように該カルバゾール骨格を有する化合物混合したアセトニトリル中で測定した波長365nmにおける吸光係数が50mL/g・cm以上であることが好ましい。上記カルバゾール骨格を有する化合物の吸光係数が50mL/g・cm以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性により優れるものとなる。上記カルバゾール骨格を有する化合物の吸光係数は、100mL/g・cm以上であることがより好ましい。
また、上記カルバゾール骨格を有する化合物の吸光係数の好ましい上限は特にないが、実質的な上限は1000mL/g・cmである。
【0029】
上記カルバゾール骨格を有する化合物としては、具体的には例えば、O-アセチル-1-(6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)エタノンオキシム、3,6-ビス-(2メチル-2モルホリノ-プロピオニル)-9-N-オクチルカルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-ベンゾイルカルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ブチルカルバゾール、3,6-ビス(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-n-ドデシルカルバゾール、2-(N-n-ブチル-3’-カルバゾリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等が挙げられる。
【0030】
上記カルバゾール骨格を有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE OXE02(BASF社製)等が挙げられる。
【0031】
上記カルバゾール骨格を有する化合物の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.5重量部、好ましい上限が10重量部である。上記カルバゾール骨格を有する化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性、耐候性、保存安定性、及び、液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記カルバゾール骨格を有する化合物の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0032】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記光ラジカル重合開始剤として、上記カルバゾール骨格を有する化合物に加えて、その他の光ラジカル重合開始剤を含有してもよいが、遮光部硬化性と液晶汚染を抑制する効果とを両立する観点から、その他の光ラジカル重合開始剤は含有しないことが好ましい。
【0033】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、増感剤を含有してもよい。
本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記増感剤を含有することにより、より高感度で遮光部硬化性に優れる液晶表示素子用シール剤を得ることができる。
【0034】
上記増感剤は、紫外・可視領域に充分な光吸収帯を有することが好ましいことから、ベンゾフェノン骨格を有する化合物、アントラセン骨格を有する化合物、アントラキノン骨格を有する化合物、クマリン骨格を有する化合物、チオキサントン骨格を有する化合物、及び、フタロシアニン骨格を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましく、アントラセン骨格を有する化合物、アントラキノン骨格を有する化合物、及び、チオキサントン骨格を有する化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物であることがより好ましい。
【0035】
上記ベンゾフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
上記アントラセン骨格を有する化合物としては、例えば、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
上記アントラキノン骨格を有する化合物としては、例えば、1-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,4-ジヒドロキシアントラキノン、2-(2-ヒドロキシエトキシ)アントラキノン等が挙げられる。
上記クマリン骨格を有する化合物としては、例えば、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等が挙げられる。
上記チオキサントン骨格を有する化合物としては、例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルチオキサントン等が挙げられる。
上記フタロシアニン骨格を有する化合物としては、例えば、フタロシアニン等が挙げられる。
これらの増感剤のなかでも、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性に特に優れるものとなることから、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンの少なくともいずれかが好ましい。
【0036】
上記増感剤の含有量は、上記光ラジカル重合開始剤100重量部に対して、好ましい下限が2重量部、好ましい上限が50重量部である。上記増感剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光部硬化性により優れるものとなる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0037】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱ラジカル重合開始剤を含有してもよい。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によってラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0038】
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0039】
上記高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられ、具体的には例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物の例としてはV-65、V-501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0040】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0041】
上記熱ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱ラジカル重合開始剤この範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0042】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0043】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、SDH、ADH(いずれも大塚化学社製)、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0044】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく、より熱硬化性に優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0045】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の更なる向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0046】
上記充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機充填剤が挙げられる。
【0047】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0048】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0049】
上記シランカップリング剤としては、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができることから、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらのシランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0050】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0051】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0052】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、絶縁性が高いことから、チタンブラックが好ましい。
【0053】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0054】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0055】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0056】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5μmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0057】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の基板に対する密着性や硬化後の強度や描画性を低下させることなくより優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0058】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0059】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0060】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0061】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0062】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられる。具体的には例えば、ITO薄膜等の電極付きのガラス基板やポリエチレンテレフタレート基板等の2枚の基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤を、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシールパターンの枠内に滴下塗布し、真空下で別の基板を重ね合わせる工程、及び、本発明の液晶表示素子用シール剤のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を光硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。また、上記シール剤を光硬化させる工程に加えて、シール剤を加熱して熱硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0063】
本発明によれば、遮光部硬化性に優れ、かつ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0065】
(ビスフェノールA型エポキシアクリレートAの合成)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DIC社製、「EPICLON EXA-850CRP」)340gをトルエン500mLに溶解させた後、トリフェニルホスフィン0.1gを加え、均一な溶液とした。得られた溶液にアクリル酸144gを還流撹拌下にて2時間かけて滴下した後、更に、還流撹拌を8時間行った。次に、トルエンを除去することによって、ビスフェノールA型エポキシアクリレートAを得た。
H-NMR、13C-NMR、LC-TOF/MS、及び、IRにより、得られたビスフェノールA型エポキシアクリレートAは、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(分子量484)であることを確認した。
【0066】
(ビスフェノールA型エポキシアクリレートBの合成)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、「jER834」)500gをトルエン500mLに溶解させた後、トリフェニルホスフィン0.1gを加え、均一な溶液とした。得られた溶液にアクリル酸144gを還流撹拌下にて2時間かけて滴下した後、更に、還流撹拌を8時間行った。次に、トルエンを除去することによって、ビスフェノールA型エポキシアクリレートBを得た。
H-NMR、13C-NMR、LC-TOF/MS、及び、IRにより、得られたビスフェノールA型エポキシアクリレートBは、分子量が644のオリゴマー型エポキシアクリレートであることを確認した。
【0067】
(実施例1~9、比較例1~5)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~9、比較例1~5の液晶表示素子用シール剤を調製した。
【0068】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0069】
(遮光部硬化性)
まず、厚さ0.7mmのコーニングガラスの半面をクロム蒸着した基板Aと、前面をクロム蒸着した基板Bとを準備した。次に、実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤を基板Aの中央部(クロム蒸着部と非蒸着部との境界)に塗布し、基板Bを貼り合わせてからシール剤を充分に押し潰し、基板A側からメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した。
その後、カッターを用いて基板A及びBを剥がし、紫外線直接照射部の際から50μm離れた点(クロム蒸着により遮光されていた部分)上のシール剤について顕微IR法によってスペクトルを測定し、シール剤中の(メタ)アクリロイル基の転化率を以下の方法により求めた。即ち、815~800cm-1のピーク面積を(メタ)アクリロイル基のピーク面積とし、845~820cm-1のピーク面積をリファレンスピーク面積として、下記式により(メタ)アクリロイル基の転化率を算出し、転化率が90%以上であったものを「◎」、70%以上90%未満であったものを「○」、50%以上70%未満であったものを「△」、50%未満であったものを「×」として遮光部硬化性を評価した。
(メタ)アクリロイル基の転化率=(1-(紫外線照射後の(メタ)アクリロイル基のピーク面積/紫外線照射後のリファレンスピーク面積)/(紫外線照射前の(メタ)アクリロイル基のピーク面積/紫外線照射前のリファレンスピーク面積))×100
【0070】
(液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性))
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY-10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にて、2枚のITO薄膜付きの透明電極基板の一方にシール剤を枠状に塗布した。続いて、TN液晶(チッソ社製、「JC-5001LA」)の微小滴を液晶滴下装置にてシール剤の枠内に滴下塗布し、他方の透明電極基板を、真空貼り合わせ装置にて5Paの真空下にて貼り合わせ、セルを得た。得られたセルに、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、液晶表示素子を得た。
得られた液晶表示素子について、シール部周辺の液晶(特にコーナー部)に生じる表示むらを目視にて観察し、表示むらが確認されなかった場合を「◎」、わずかな表示むらが確認された場合を「○」、はっきりと表示むらが確認された場合を「△」、酷い表示むらが確認された場合を「×」として液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性)を評価した。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は、実用に全く問題のないレベルである。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、遮光部硬化性に優れ、かつ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。