(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】螺旋管用帯状部材及びその巻出し方法
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20220329BHJP
F16L 11/24 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L11/24
(21)【出願番号】P 2018052291
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】馬場 達郎
(72)【発明者】
【氏名】津田 直弥
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-094670(JP,A)
【文献】特開2016-211632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/32
F16L 1/00,11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製管機によって螺旋管に製管される帯状部材であって、
一定断面の定常帯部と、
前記定常帯部の
長手方向の先端側に連な
り、巻き出される巻出し帯部と、
を有し、前記巻出し帯部には前記定常帯部より断面剛性が低い剛性低減部が設定され
、
前記帯状部材が、前記定常帯部及び前記巻出し帯部にわたる合成樹脂製の主帯材と、前記定常帯部における前記主帯材を補強する金属製の補強帯材とを有し、前記主帯材が、前記補強帯材より長手方向の先端側へ延び出る延出部分を有し、前記延出部分が前記巻出し帯部及び前記剛性低減部を構成しており、前記延出部分における前記定常帯部との境から前記延出部分の長手方向の中間部までの断面は一定であり、前記延出部分の前記中間部から先端側の巻出し端部分は、先端へ向かうにしたがって断面剛性が漸減されていることを特徴とする帯状部材。
【請求項2】
製管機によって螺旋管に製管される帯状部材であって、
一定断面の定常帯部と、
前記定常帯部の長手方向の先端側に連なり、巻き出される巻出し帯部と、
を有し、前記巻出し帯部には前記定常帯部より断面剛性が低い剛性低減部が設定され、
前記帯状部材が、前記定常帯部及び前記巻出し帯部にわたる合成樹脂製の主帯材と、前記定常帯部及び前記巻出し帯部にわたって前記主帯材を補強する金属製の補強帯材とを有し、
前記巻出し帯部の前記補強帯部における前記螺旋管の外周部を構成する腹部には、前記腹部の幅方向に延びるスリット状の断面欠損部が前記長手方向に間隔を置いて複数形成され、
前記巻出し帯部の長手方向の先端側における前記断面欠損部の配置間隔が、前記巻出し帯部の定常帯部側における前記断面欠損部の配置間隔より小さいことを特徴とする帯状部材。
【請求項3】
前記巻出し帯部の少なくとも
長手方向の先端側の巻出し端部分の幅が、前記定常帯部の幅より小さいことを特徴とする請求項1
又は2に記載の帯状部材。
【請求項4】
前記巻出し端部分の幅方向の一方の縁に他方の縁が巻き方向の上流端へ向かうにしたがって近づいていることを特徴とする請求項
3に記載の帯状部材。
【請求項5】
前記
主帯材の幅方向の第1縁側部には、凹部を含む第1嵌合部が形成され、
前記
主帯材の幅方向の前記第1縁側部とは反対側の第2縁側部には、前記凹部に嵌合可能な凸部を含む第2嵌合部が形成され、
前記巻出し帯部における前記第1縁側部が、前記第2縁側部よりも
長手方向の先端側へ延び出ており、これら第1、第2縁側部の
長手方向の先端どうしが斜め又は階段状の縁部によって結ばれていることを特徴とする請求項1~
4の何れか1項に記載の帯状部材。
【請求項6】
前記巻出し帯部における前記第1縁側部が前記第2縁側部よりも延び出た部分の長さが、前記螺旋管の周長の4分の1~1倍であることを特徴とする請求項
5に記載の帯状部材。
【請求項7】
製管機によって螺旋管に製管される帯状部材を巻き出す方法であって、
請求項1~6の何れか1項に記載の帯状部材を形成することによって、前記帯状部材における一定断面の定常帯部の
長手方向の先端側に設けられた巻出し帯部の剛性を前記定常帯部の剛性より低くしておき、
前記巻出し帯部を螺旋状に巻き出すとともに前記製管機に組み付けることを特徴とする帯状部材の巻出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製管機によって螺旋管に製管される帯状部材に関し、特に製管に先立って行う巻出し作業を容易化した帯状部材及び巻出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管等の既設管を例えばSPR(Spiral Pipe Renewal)工法によって更生することは公知である(特許文献1~2等参照)。SPR工法では、製管機を用いて、帯状部材(プロファイル)を既設管の内周に沿って螺旋状に巻回するとともに一周違いに隣接する縁どうしを凹凸嵌合によって接合させる。これによって、既設管の内周に沿う更生管が製管される。
製管機は、一対の駆動ローラと、環状の内周規制体(リンクローラ)を有している。駆動ローラによって前記凹凸嵌合がなされる。製管中、更生管の端部の一周部分が内周規制体(リンクローラ)の外周に巻き付けられることよって更生管径が決定される。
【0003】
この種の製管工法の初期段階では、帯状部材の巻出しを行なう。すなわち、帯状部材の端部から一周以上を螺旋状に巻回して製管機に組み付けた後、製管機を駆動して帯状部材を内周規制体にぴったり巻き付かせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4866428号公報
【文献】国際公開番号WO2012/108434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の帯状部材はある程度の剛性を有しているため、前記の巻出し作業は容易でなく時間がかかる。特に、スチール製の補強材入り帯状部材(プロファイル)のように、剛性が極めて高い帯状部材は、製管機の環状の内周規制体になかなか巻き付かず、目標の巻出し径にし難い。このため、特に製管機が製管しながら推進される自走式の製管工法おいては、製管の開始が遅延しがちである。
本発明は、かかる事情に鑑み、帯状部材から螺旋管を形成する際の巻出し作業を簡易かつ迅速に行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、製管機によって螺旋管に製管される帯状部材であって、
一定断面の定常帯部と、
前記定常帯部の巻き方向の上流側に連なる巻出し帯部と、
を有し、前記巻出し帯部には前記定常帯部より断面剛性が低い剛性低減部が設定されていることを特徴とする。
これによって、巻出し帯部を螺旋状に巻きやすくなり、目標の巻出し径にしやすくなる。したがって、巻出し作業を簡易かつ迅速に行なうことができる。自走式の製管機による製管工法においても、短時間で製管を開始できる。
【0007】
前記巻出し帯部の少なくとも巻き方向上流側の巻出し端部分の幅が、前記定常帯部の幅より小さいことが好ましい。
これによって、帯状部材を製管機の一対の駆動ローラ間に挿し込みやすくなり、製管機への組み付けを容易化できる。かつ巻出し端部分の剛性を確実に低く出来、巻出しを容易化できる。
【0008】
前記巻出し端部分の幅方向の一方の縁に他方の縁が巻き方向の上流端へ向かうにしたがって近づいていることが好ましい。
これによって、帯状部材を製管機に一層組み付けやすくなる。かつ、巻出し端部分の巻き方向上流側に向かうにしたがって剛性を漸次低く出来、巻出しを容易化できる。
【0009】
前記帯状部材の幅方向の第1縁側部には、凹部を含む第1嵌合部が形成され、
前記帯状部材の幅方向の前記第1縁側部とは反対側の第2縁側部には、前記凹部に嵌合可能な凸部を含む第2嵌合部が形成され、
前記巻出し帯部における前記第1縁側部が、前記第2縁側部よりも巻き方向上流側へ延び出ており、これら第1、第2縁側部の巻き方向上流端どうしが斜め又は階段状の縁部によって結ばれていることが好ましい。
これによって、巻出し端部分の巻き方向上流側に向かうにしたがって剛性を漸次低く出来、巻出しを容易化できる。かつ第2嵌合部の凸部を一周先行する第1嵌合部の凹部に嵌合させることができる。
【0010】
前記巻出し帯部における前記第1縁側部が前記第2縁側部よりも延び出た部分の長さが、前記螺旋管の周長の4分の1~1倍であることが好ましい。
4分の1倍以上とすることで、巻出し端部分の少なくとも4分の1周以上を容易に目標の曲率に近づくように曲げることができ、巻出し作業を容易化できる。1倍以下とすることで、巻出し端部分を一周程度巻いたとき、第2嵌合部の凸部を第1嵌合部の凹部に嵌合させることができ、最小巻き数の巻出し螺旋管を確実に形成できる。
前記巻出し帯部における前記第1縁側部が前記第2縁側部よりも延び出た部分の長さは、前記螺旋管の周長の2分の1~1倍であることが、より好ましい。
【0011】
前記帯状部材が、合成樹脂製の主帯材と、前記主帯材を補強する金属製の補強帯材とを有し、前記巻出し帯部における前記主帯材が、前記補強帯材より巻き方向上流側へ延び出ていることが好ましい。
これによって、巻出し帯部の少なくとも巻き方向上流側の部分は、補強帯材が無いために容易に曲げることができる。ひいては巻出しを容易化できる。
【0012】
前記巻出し帯部には、スリット状または孔状の断面欠損部が形成されていることが好ましい。
これによって、巻出し帯部の剛性を確実に低くできる。
【0013】
前記巻出し帯部の巻き方向上流側における前記断面欠損部の配置密度が、前記巻出し帯部の定常帯部側における前記断面欠損部の配置密度より大きいことが好ましい。
これによって、巻出し帯部の巻き方向上流側の部分の剛性を確実に低くできる。
【0014】
本発明方法は、製管機によって螺旋管に製管される帯状部材を巻き出す方法であって、
前記帯状部材における一定断面の定常帯部の巻き方向上流側に設けられた巻出し帯部の剛性を前記定常帯部の剛性より低くしておき、
前記巻出し帯部を螺旋状に巻き出すとともに前記製管機に組み付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、帯状部材から螺旋管を形成する際の巻出し作業を簡易かつ迅速に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る帯状部材の巻出し方向上流側の部分を外周面側から見た正面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1のIIa-IIa線に沿う断面図である。
図2(b)は、
図1のIIb-IIb線に沿う断面図である。
図2(c)は、
図1のIIc-IIc線に沿う断面図である。
【
図3】
図3は、前記帯状部材を巻き出す様子を、最小巻き数の巻出し螺旋管を作製した段階で示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う、前記巻出し螺旋管の断面図である。
【
図5】
図5は、既設管の内周に沿って前記帯状部材からなる更生管を製管する様子を示す断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態に係る帯状部材の巻出し方向上流側の部分を外周面側から見た正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態に係る帯状部材の巻出し方向上流側の部分を外周面側から見た正面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施形態に係る帯状部材の巻出し方向上流側の部分を外周面側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態>
図5は、老朽化した既設管1を更生する様子を示したものである。既設管1としては、下水道管、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管等が挙げられる。既設管1の内周に更生管9がライニングされることで、既設管1が更生されている。
【0018】
更生管9は、帯状部材10(プロファイル)によって構成されている。該帯状部材10が螺旋状に巻回されるとともに一周違いに隣接する縁どうしが接合されることによって、螺旋管状の更生管9が製管される。
製管は、製管機3によって行われる。ここでは、自走式の製管機3が用いられている。
【0019】
図1に示すように、帯状部材10は、主帯材11と、補強帯材20を有し、帯状に長く延びている。主帯材11の材質は、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂である。
図2(b)に示すように、主帯材11は、平帯部12と、第1嵌合部13と、第2嵌合部14を一体に有している。平坦な平帯部12の幅方向の一側(帯状部材10の第1縁側部10a)に凹状の第1嵌合部13が設けられ、幅方向の反対側(第2縁側部10b)に凸状の第2嵌合部14が設けられている。
【0020】
第1嵌合部13の凹部13aは、帯状部材10の内周側面(更生管9に製管されたとき内周を向く面、
図2において下面)に開口されている。
第2嵌合部14の凸部14aは、内周側(
図2において下方)へ突出されている。
図4に示すように、螺旋状に巻かれた帯状部材10の凸部14aが、凹部13aの一周先行する部分に嵌合されることで、製管がなされる。
【0021】
図2(c)に示すように、主帯材11の外周側部に、断面が例えばW字形状の補強帯材20が設けられている。補強帯材20は、スチールなどの金属によって構成され、主帯材11よりも剛性が高い。補強帯材20によって帯状部材10が補強されている。
なお、図示した帯状部材10の断面形状はあくまで例示であり、本発明は帯状部材10の多様な断面形状に適用可能である。
【0022】
図1に示すように、帯状部材10は、定常帯部19と、巻出し帯部15を有している。定常帯部19が、既設管1内の更生管9(螺旋管)となる部分であり、前述した一定の断面を有し、帯状に長く延びている。定常帯部19の巻き方向の上流側(
図1において上側)に巻出し帯部15が連なっている。巻出し帯部15は、巻出しに用いられる。
なお、帯状部材10における巻出しに用いられる部分は、巻出し帯部15だけでなく、一定断面の定常帯部19の一部に跨っていてもよい。
【0023】
図1に示すように、巻出し帯部15における第1縁側部10aが、第2縁側部10bよりも巻き方向上流側(
図1において上方)へ延び出ている。巻出し帯部15の長手方向の中間部に第2縁側部10bの巻き方向上流端が位置されている。該中間部から巻き方向上流側の部分は、斜めにカットされた巻出し端部分16となっている。
【0024】
巻出し端部分16における第1縁側部10a(一方の縁)の巻き方向上流端と、第2縁側部10bの巻き方向上流端とが、斜縁部16e(他方の縁)によって結ばれている。斜縁部16eは、巻き方向上流端へ向かうにしたがって第1縁側部10aに近づくように斜めになっている。
図1及び
図2(a)に示すように、巻出し端部分16の幅は、定常帯部側(
図1において下側)の端部を除き、定常帯部19の幅より小さい。更には巻出し端部分16の幅が、巻き方向上流端へ向かうにしたがって小さくなっている。
巻出し端部分16(第1縁側部10aが第2縁側部10bよりも延び出た部分)の長さL
16は、好ましくは更生管9の周長の4分の1~1倍であり、より好ましくは更生管9の周長の2分の1~1倍である。
【0025】
図1に示すように、補強帯材20の巻き方向上流端は、定常帯部19と巻出し帯部15との境に配置されている。言い換えると、主帯材11が補強帯材20よりも巻出し方向の上流側へ延び出ている。当該主帯材11の延出部分(補強帯材20が無い部分)の長さL
15は、好ましくは更生管9の周長の数倍以下である。
【0026】
図2(b)に示すように、前記主帯材11の延出部分すなわち巻出し帯部15は、補強帯材20が無いために、定常帯部19よりも断面剛性が低い剛性低減部となっている。言い換えると、巻出し帯部15の全域に剛性低減部が設定されている。
更に、
図2(a)に示すように、巻出し帯部15における巻出し端部分16は、補強帯材20が無いことに加えて主帯材11の幅が小さいために、定常帯部19よりも断面剛性が一層低くなっている。しかも、巻出し端部分16は斜めにカットされているために、断面剛性が巻き方向上流端へ向かうにしたがって漸減されている。
【0027】
なお、補強帯材20の巻き方向上流端(
図1において上端)は、帯状部材10の長手方向における、第2縁側部10bの巻き方向上流端と同じ位置に配置されていてもよく、斜めカットされた巻出し端部分16の中間部に配置されていてもよい。この場合、巻出し帯部15の全体が斜めカットされた巻出し端部分16となり、巻出し端部分16と剛性低減部の範囲が一致する。
【0028】
<巻出し方法>
図3に示すように、帯状部材10から更生管9を製管する際は、それに先立って以下の巻出し作業を行なう。
先ず、
図3において二点鎖線にて簡略的に図示する自走式製管機3の一対の駆動ローラ(ピンチローラ)3a間に巻出し帯部15の巻出し方向上流端を挿し込む。巻出し端部分16を斜めカットしておくことで、前記挿し込み操作を容易に行なうことができる。
さらに、巻出し端部分16ひいては巻出し帯部15を、製管機3における目標更生管径の環状をなすリンクローラ3b(内周規制体3)のまわりに螺旋状に一周巻く。巻出し帯部15は剛性が低減されているから、作業者の人力で容易に巻くことができる。特に、巻出し帯部15の巻出し端部分16は、巻き方向上流側の部分ほど断面剛性が低いから、リンクローラ3bの外周にできるだけ近づけて巻くことができる。
【0029】
巻出し端部分16を螺旋状に一周程度巻くと、第1縁側部10aの巻き方向上流端と、第2縁側部10bの巻き方向上流端とが互いに対向する。ひいては、第1嵌合部13と第2嵌合部14の巻き方向上流端どうしが一周違いに対向する。したがって、
図4に示すように、第1嵌合部13の凹部13aに第2嵌合部14の凸部14aを嵌合させることができる。これによって、最小巻き数の巻出し螺旋管9eが形成される。該最小巻き数の巻出し螺旋管9eの径は、目標更生管径にできるだけ近くすることができる。
【0030】
その後、製管機3を駆動することで、巻出し螺旋管9eの巻き数を増やす。これに伴って、巻出し螺旋管9eが縮径されてリンクローラ3bにぴったり巻き付く。これによって、巻出し螺旋管9eが目標更生管径となる。前記最小巻き数の螺旋管径を目標更生管径に近づけておくことで、巻出し螺旋管9eを容易かつ迅速に目標更生管径にすることができる。
【0031】
この結果、短時間で巻出し作業を完了して、更生管9の製管を開始できる。すなわち、
図5に示すように、巻出し螺旋管9eを既設管1の口部に位置合わせして配置し、製管機3を駆動させて推進させることで、巻出し螺旋管9eに続いて更生管9が既設管1の内周に沿って製管される。
巻出し螺旋管9eを含む更生管9の発進人孔4内への突出端部9dは、製管工程の途中又は製管後に切除する。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態を示したものである。
第2実施形態の帯状部材10Bにおいては、巻出し端部分16における第1縁側部10a(一方の縁)と第2縁側部10bの巻き方向上流端どうしを結ぶ縁部16f(他方の縁)が、階段状になっている。階段状縁部16fの段数は、適宜設定できる。
図示は省略するが、複数列のリブを有する帯状部材においては、階段状縁部16fの各段の幅を隣接するリブどうしの間隔に合わせてもよい。
【0033】
<第3実施形態>
図7及び
図8は、本発明の第3実施形態を示したものである。
図7に示すように、第3実施形態の帯状部材10Cにおいては、補強帯材20が巻出し帯部15まで延びている。巻出し帯部15における補強帯材20に複数のスリット25(断面欠損部)が形成されている。
図8に示すように、各スリット25は、補強帯材20の腹部21の幅方向に延びている。
図7に示すように、複数のスリット25が、補強帯材20の長手方向に間隔を置いて並んでいる。
これらスリット25によって巻出し帯部15(剛性低減部)の剛性が低減され、巻出し帯部15が曲げやすくなっている。これによって、巻出し作業を簡易かつ迅速に行なうことができる。
【0034】
<第4実施形態>
図9は、本発明の第4実施形態を示したものである。
第4実施形態に係る帯状部材10Dは、第3実施形態の変形態様であり、巻出し帯部15の巻き方向上流側へ向かうにしたがって、スリット25が密に配置されている。すなわち、巻出し帯部15の巻き方向上流側におけるスリット25の配置密度が、巻出し帯部15の定常帯部側におけるスリット25の配置密度より大きい。
これによって、巻出し帯部15の巻き方向上流側の部分を一層曲げやすくでき、巻出し作業を一層簡易かつ迅速に行なうことができる。
【0035】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、第3、第4実施形態(
図7~
図9)の変形例として、スリット25からなる断面欠損部に代えて、孔からなる断面欠損部を設けてもよい。スリット又は孔からなる断面欠損部を樹脂製の主帯材11に形成してもよい。
第1、第2実施形態の斜めカット又は階段状カット構造と、第3、第4実施形態の断面欠損部とを組み合わせてもよい。
巻出し帯部15又は巻出し端部分16が、定常帯部19とは別体の帯部材によって構成されていてもよい。該別体の帯部材によって最小巻き数以上の巻出し螺旋管9eを作製した後、定常帯部19を前記別体の帯部材に帯連結手段を介して接合してもよい。
帯状部材が樹脂製帯材11だけで構成され、補強帯材20が省略されていてもよい。
元押し式又は牽引式によって更生管9を製管してもよい。本発明の帯状部材は、リンクローラ3b(内周規制体)を有さない製管機にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、例えば老朽化した下水管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 既設管
3 製管機
9 更生管
9e 巻出し螺旋管
10,10B~10D 帯状部材
10a 第1縁側部(一方の縁)
10b 第2縁側部
11 主帯材
13 第1嵌合部
13a 凹部
14 第2嵌合部
14a 凸部
15 巻出し帯部
16 巻出し端部分
16e 斜めの縁部(他方の縁)
16f 階段状の縁部(他方の縁)
19 定常帯部
20 補強帯材
25 スリット