(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】飲食料製造ライン用脱臭剤組成物及び脱臭洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C11D 1/825 20060101AFI20220329BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20220329BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20220329BHJP
C11D 1/74 20060101ALI20220329BHJP
C11D 1/722 20060101ALI20220329BHJP
B08B 9/032 20060101ALI20220329BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C11D1/825
C11D3/43
C11D1/68
C11D1/74
C11D1/722
B08B9/032 321
B08B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2018060113
(22)【出願日】2018-03-27
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】山口 杉尚
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-262258(JP,A)
【文献】特開2007-326944(JP,A)
【文献】特開2007-077290(JP,A)
【文献】特開2003-049193(JP,A)
【文献】特開2011-252160(JP,A)
【文献】特開2008-285587(JP,A)
【文献】特開2001-131584(JP,A)
【文献】特開平04-283300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00-19/00
B08B 3/08、9/032
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルより選ばれた少なくとも一種以上のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤、
(B)成分としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル、
(C)成分としてソルビタン脂肪酸エステル、
(D)成分としてグリコール系溶剤及び/又はグリコールエーテル系溶剤、
及び(E)成分として水を含有し、
(A)成分と(C)成分を、質量比で(A)/(C)の値が、0.1以上、10以下となる割合で含有
し、(C)成分のソルビタン脂肪酸エステルが、(C-a)成分であるソルビタンモノカプリレート、及び(C-b)成分であるソルビタンモノラウレートを(C-a)成分と(C-b)成分の質量比(C-a)/(C-b)が0.1以上、10以下となる割合で含有することを特徴とする飲食料製造ライン用脱臭剤組成物。
【請求項2】
(A)成分のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノ脂肪酸エステルより選ばれた少なくとも一種以上であることを特徴とする請求項1に記載の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が、HLB値が8以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物。
【請求項4】
(B)成分のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、(B-a)成分としてHLB値が8以下のポリオキシアルキルエーテル、(B-b)成分としてHLB値が10以上のポリオキシアルキルエーテルとを、(B-a)成分と(B-b)成分の質量比(B-a)/(B-b)が0.01以上、5以下となる割合で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物。
【請求項5】
(C-a)成分であるソルビタンモノカプリレートを0.2質量%以上、8質量%以下、(C-b)成分であるソルビタンモノラウレートを0.1質量%以上、5質量%以下含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物。
【請求項6】
(D)成分のグリコール系溶剤及び/又はグリコールエーテル系溶剤が、(D-a)成分であるグリコール系溶剤、及び(D-b)成分であるグリコールエーテル系溶剤を(D-a)成分と(D-b)成分の質量比(D-a)/(D-b)が1以上、20以下となる割合で含有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物。
【請求項7】
上記請求項1~6のいずれか一項に記載の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物と、酸性物質及び/又は酸性洗浄剤組成物とを混合調整した酸性脱臭洗浄剤希釈液を用いて、飲食料品の製造設備における酸洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行うことを特徴とする脱臭洗浄方法。
【請求項8】
上記請求項1~6のいずれか一項に記載の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物と、アルカリ性物質及び/又はアルカリ性洗浄剤組成物とを混合調整したアルカリ性脱臭洗浄剤希釈液を用いて、飲食料品の製造設備におけるアルカリ洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行うことを特徴とする脱臭洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料工場等の製造設備や製造機器類の脱臭に使用する飲食料製造ライン用脱臭剤組成物及びこの脱臭剤組成物を用いた脱臭洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料を製造する飲食料製造工場では、同一の製造ラインで異なる種々の製品を製造するため、製造ライン中に残留している前の製品が混入しないように、製造製品を切り替える毎に製造ラインを洗浄することが必要である。飲食料製造工場では、製造設備や製造機器類を分解することなく、そのままの状態で内部に洗浄液を循環することや、洗浄液をスプレーして洗浄するCIP(Cleaning in place)洗浄が行われているが、配管連結部のパッキン部(シール部)にはフレーバー臭が付着残留しやすく、フレーバー臭を十分に除去するためには十分な洗浄が必要であり大きな労力が要求される。特に、近年、製造する製品種類が増加し、製造製品を切り替える頻度も高まり、製品毎の生産速度向上が求められているが、多様化するフレーバー臭を十分に除去するためには長時間の洗浄脱臭作業が必要であり、生産性を著しく低下させる原因となっている。
【0003】
従来、食品工場、飲料工場等において製造ラインに付着したフレーバー臭を除去するために、酸性洗浄剤及び/又はアルカリ性洗浄剤で処理することや、酸性洗浄剤やアルカリ性洗浄剤で洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム、過酢酸、過炭酸塩、過ホウ酸塩などの酸化剤を用いて脱臭処理を行う方法が採用されていたが、十分な脱臭効果が得られないと同時に、使用状況によっては製造設備等の損傷が発生する場合もある。このような状況から、CIP洗浄におけるフレーバー除去効率を更に向上させる技術が提案され、25℃でのSP値が6~9である溶剤(A)及び界面活性剤(B)を含有するCIP洗浄用脱臭剤組成物(特許文献1)、(A)HLB値が8~18の特定の非イオン界面活性剤、(B)HLB値8未満の非イオン界面活性剤、(C)25℃におけるSP値が9を超える水溶性溶剤、(D)水を含有するCIP用脱臭剤組成物(特許文献2)、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の特定の非イオン界面活性剤を主成分として含有するCIP洗浄用脱臭剤組成物(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-200627号公報
【文献】特開2007-262258号公報
【文献】特開2003-49193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の脱臭剤は含有する溶剤等の成分によっては、脱臭剤組成物自身の臭いが残留してしまうため所望の脱臭効果が得られ難いという問題がある。また、特許文献2記載の脱臭剤は、製造機器類へのダメージや配管のパッキンへの等の膨潤や劣化の影響が少ないものの、アルカリ洗浄工程で同時に添加して、ワンステップでおこなうことはできない。さらに、アップル、グレープフルーツ、及びバナナ等のフレーバーに対しては十分な脱臭性が発揮されないため、フレーバーの異なる多くの製品を製造している工場では、製品毎に異なるフレーバーに対応するように配合成分の種類や割合を調整した脱臭剤を用意しなければならないという煩雑な問題があった。一方、特許文献3記載の脱臭剤は、製造設備への損傷が少なく、低泡性で脱臭効果も良好ではあるものの、貯蔵安定性が十分ではなく、酸やアルカリと併用すると脱臭効果が低下してしまう虞があり、このためCIP洗浄の酸洗浄工程やアルカリ洗浄工程において同時使用して、CIP洗浄、脱臭工程時間の短縮化を図ることは難しかった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、多くの異なるフレーバー臭に対しても均質な脱臭効果を発揮し、酸やアルカリによるCIP洗浄中に同時に用いた場合でも、飲食料製造ラインに付着したフレーバー臭を効果的に除去し、さらに強力な脱臭効果を発揮する飲食料製造ライン用脱臭剤組成物及びその脱臭洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、特定のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリコール系溶剤及び/又はグリコールエーテル系溶剤、水とを含有する飲食料製造ライン用脱臭剤組成物が、製造設備に付着したフレーバーを効率よく除去し、多様化するフレーバーとして特に、アップル、グレープフルーツ、及びバナナ等のフレーバーに対しても均質な脱臭効果を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルより選ばれた少なくとも一種以上のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤、
(B)成分としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル、
(C)成分としてソルビタン脂肪酸エステル、
(D)成分としてグリコール系溶剤及び/又はグリコールエーテル系溶剤、
及び(E)成分として水を含有し、
(A)成分と(C)成分を、質量比で(A)/(C)の値が、0.1以上、10以下となる割合で含有し、(C)成分のソルビタン脂肪酸エステルが、(C-a)成分であるソルビタンモノカプリレート、及び(C-b)成分であるソルビタンモノラウレートを(C-a)成分と(C-b)成分の質量比(C-a)/(C-b)が0.1以上、10以下となる割合で含有することを特徴とする飲食料製造ライン用脱臭剤組成物、
(2)(A)成分のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノ脂肪酸エステルより選ばれた少なくとも一種以上であることを特徴とする上記(1)の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物、
(3)(B)成分が、HLB値が8以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有することを特徴とする上記(1)又は(2)の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物、
(4)(B)成分のポリオキシアルキレンアルキルエーテルが、(B-a)成分としてHLB値が8以下のポリオキシアルキルエーテル、(B-b)成分としてHLB値が10以上のポリオキシアルキルエーテルとを、(B-a)成分と(B-b)成分の質量比(B-a)/(B-b)が0.01以上、5以下となる割合で含有することを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかの飲食料製造ライン用脱臭剤組成物、
(5)(C-a)成分であるソルビタンモノカプリレートを0.2質量%以上、8質量%以下、(C-b)成分であるソルビタンモノラウレートを0.1質量%以上、5質量%以下含有することを特徴とする上記(1)から(4)のいずれかの飲食料製造ライン用脱臭剤組成物、
(6)(D)成分のグリコール系溶剤及び/又はグリコールエーテル系溶剤が、(D-a)成分であるグリコール系溶剤、及び(D-b)成分であるグリコールエーテル系溶剤を(D-a)成分と(D-b)成分の質量比(D-a)/(D-b)が1以上、20以下となる割合で含有することを特徴とする上記(1)から(5)のいずれかの飲食料製造ライン用脱臭剤組成物、
(7)上記(1)~(6)のいずれかの飲食料製造ライン用脱臭剤組成物と、酸性物質及び/又は酸性洗浄剤組成物とを混合調整した酸性脱臭洗浄剤希釈液を用いて、飲食料品の製造設備における酸洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行うことを特徴とする脱臭洗浄方法、
(8)上記(1)~(6)のいずれかの飲食料製造ライン用脱臭剤組成物と、アルカリ性物質及び/又はアルカリ性洗浄剤組成物とを混合調整したアルカリ性脱臭洗浄剤希釈液を用いて、飲食料品の製造設備におけるアルカリ洗浄工程と脱臭工程との両工程をワンステップで行うことを特徴とする脱臭洗浄方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物(以下、単に脱臭剤組成物という場合がある)は、アップル、グレープフルーツ、及びバナナ等のフレーバーの多様化する異なる種類のフレーバー臭に対しても均質で優れた脱臭効果を発現し、同一の製造ラインにおいて異なる各種の製品を製造する飲食料製造工場において、製造ラインに付着残留している前の製品のフレーバー臭を効率良く脱臭除去することができ、且つ、アルカリ洗浄工程で同時に添加して、ワンステップでおこなうことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物において、(A)成分のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルが用いられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。(A)成分のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノ脂肪酸エステルが好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエートがより好ましい。また、(A)成分のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤は、HLB値が8以上、16以下であることが好ましく、8.5以上、14以下であることがより好ましく、9以上、13以下であることがさらに好ましく、9.5以上、12以下であることが最も好ましい。HLB値が8未満では、貯蔵安定性が低下する虞があり、HLB値が16を超えると抑泡性が低下する虞がある。本発明におけるHLBはGriffinの方法により求められた値である。(吉田、進藤、大垣、山中共編、「新版界面活性剤ハンドブック」,工学図書株式会社,1996年,p.234)。
【0011】
本発明の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物は、(A)成分のエーテルエステル型ノニオン界面活性剤を0.1質量%以上、20質量%以下含有していることが好ましく、0.4質量%以上、10質量%以下含有することがより好ましく、0.8質量%以上、5質量%以下含有することが更に好ましい。0.1質量%未満では脱臭性能が劣る虞があり、20質量%を超えると貯蔵安定性が低下する虞がある。
【0012】
本発明の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物に用いられる(B)成分であるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が8以上、18以下の脂肪族炭化水素基を有するものが好ましく、例えば、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、分岐デシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ペプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基が挙げられる。これらの中でも抑泡性が良好なことからオクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、分岐デシル基、トリデシル基、イソトリデシル基を有するものが好ましく、2-エチル-ヘキシル基、分岐デシル基を有するものがより好ましい。また、(B)成分のポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、HLB値が8以下のものは、脱臭性、抑泡性に優れるが、貯蔵安定性が低下する虞があり、HLB値が10以上、好ましくは12以上のものは貯蔵安定性に優れるが、脱臭性、抑泡性が低下する虞がある。(B)成分としては、HLBが8以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含有する混合物が好ましい。(B)成分としては、(B-a)成分としてHLB値が8以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルと、(B-b)成分としてHLB値が10以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルとを、(B-a)成分と(B-b)成分の質量比(B-a)/(B-b)の値が0.002以上、10以下となる割合で含有するものが、優れた脱臭性、抑泡性、貯蔵安定性を発揮するため好ましく、より好ましくは、(B-a)/(B-b)の値が0.05以上、1以下であり、特に好ましくは、0.1以上、0.8以下である。(B)成分としては、(B-a)HLB値が8以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを0.1質量%以上、10質量%以下、(B-b)HLB値が10以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを1質量%以上、50質量%以下含有することができ、(B-a)を0.5質量%以上、8質量%以下、(B-b)を5質量%以上、45質量%以下含有することが好ましく、(B-a)を1質量%以上、5質量%以下、(B-b)を10質量%以上、40質量%以下含有することがより好ましい。(B)成分としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを1質量%以上、50質量%以下が好ましく、5質量%以上、45質量%以下がより好ましく、10質量%以上、40質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0013】
本発明の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物に用いられる(C)成分であるソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリステート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノセスキオレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレート等が挙げられる。なかでも、(B)成分との貯蔵安定性(溶解性)や脱臭性(グレープフルーツ、バナナ)の関連から、ソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレートが好ましい。また、(C)成分は、HLB値が7以上、12以下のものが好ましく、7.5以上、11以下のものがより好ましく、8以上、10以下のものがさらに好ましい。(C)成分のHLB値が7未満では、貯蔵安定性が低下する虞があり、HLB値が12を超えると抑泡性、脱臭性が低下する虞がある。(C)成分として望ましいソルビタン脂肪酸エステルの例としては、(C-a)成分がソルビタンモノカプリレートであり、(C-b)成分がソルビタンモノラウレートであり、(C-a)成分と(C-b)成分とを、(C-a)成分と(C-b)成分の質量比(C-a)/(C-b)の値が0.04以上、80以下となる割合で含有するものが、優れた脱臭性(特にグレープフルーツ臭、バナナ臭)、抑泡性、貯蔵安定性を発揮する。より好ましくは、(C-a)/(C-b)の値が0.1以上、10以下となるように(C-a)成分と(C-b)成分とを含有するものであり、特に好ましくは、(C-a)/(C-b)の値が0.2以上、8以下であり、最も好ましくは0.4以上、4以下となるように(C-a)成分、(C-b)成分を含有するものである。(C)成分としては、(C-a)ソルビタンモノカプリレートを0.2質量%以上、8質量%以下、(C-b)ソルビタンモノラウレートを0.1質量%以上、5質量%以下含有することができ、(C-a)を0.4質量%以上、6質量%以下、(C-b)を0.2質量%以上、4質量%以下含有することが好ましく、(C-a)を0.8質量%以上、4質量%以下、(C-b)を0.4質量%以上、3質量%以下含有することがより好ましい。
【0014】
(A)成分と(C)成分とを、(A)成分と(C)成分の質量比(A)/(C)が0.1以上、10以下となるように(A)と(C)とを含有するものが脱臭性、抑泡性、貯蔵安定性を発揮する。より好ましくは、(A)/(C)の値が0.3以上、6以下であり、特に好ましくは(A)/(C)の値が0.5以上、4以下である。
【0015】
本発明の脱臭剤組成物に用いられる(D)成分であるグリコール系溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、脱臭性、パッキンへの溶剤臭着香防止性及び貯蔵安定性の点から、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。(D)成分として望ましいグリコール系溶剤及び/又はグリコールエーテル系溶剤の例としては、(D-a)成分としてグリコール系溶剤と、(D-b)成分としてグリコールエーテル系溶剤とを、(D-a)成分と(D-b)成分の質量比(D-a)/(D-b)が0.1以上、20以下となる割合で含有するものであり、より好ましくは1以上、12以下、特に好ましくは3以上、10以下となる割合で(D-a)と(D-b)を含有するものである。(D-a)/(D-b)が上記の割合となるように(D-a)、(D-b)を含有することにより、優れたパッキンへの溶剤臭着香防止性、貯蔵安定性を発揮する。(D)成分としては、(D-a)グリコール系溶剤を1質量%以上、40質量%以下、(D-b)グリコールエーテル系溶剤を0.1質量%以上、15質量%以下含有することが好ましく、(D-a)を4質量%以上、38質量%以下、(C-b)を1質量%以上、10質量%以下含有することがより好ましく、(D-a)を10質量%以上、36質量%以下、(D-b)を2質量%以上、8質量%以下含有することが更に好ましい。
【0016】
(E)成分の水としては、たとえばイオン交換水、蒸留水、純水、軟水、水道水等が挙げられるが、貯蔵安定性の点からイオン交換水、蒸留水、または純水等が好ましい。
【0017】
本発明の脱臭剤組成物は、本発明の効果が損なわない範囲で、当該技術分野で通常使用される成分を含有してもよい。このような成分としては、例えば、キレート剤、高分子分散剤、有機ホスホン酸、増粘剤、消泡剤、色素、及び防腐剤等が挙げられる。
【0018】
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸、イミノジコハク酸、ニトリロ三酢酸、トリポリリン酸や、これらの塩が挙げられる。これらキレート剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。スケール防止性の点から、キレート剤はエチレンジアミン四酢酸塩、メチルグリシン二酢酸塩、グルタミン酸二酢酸塩、またはニトリロ三酢酸塩から選ばれた1種または2種以上の組み合わせが好ましい。
【0019】
高分子分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-アクリル酸エステル共重合体等や、これらの塩が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。スケール付着防止性の点から、高分子分散剤は、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体が好ましい。アクリル酸型共重合体、マレイン酸型共重合体、メタクリル酸型共重合体は、アミド結合を含まないものがより好ましい。ポリアクリル酸の重量平均分子量は500以上、20000以下が好ましく、特に好ましくは1500以上、15000以下である。
【0020】
有機ホスホン酸としては、分子内に少なくとも1つ以上のホスホン酸基を含む化合物であり、具体的には、メチルジホスホン酸、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1-ジホスホン酸、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、1,2-プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、トリ(2-アミノエチル)アミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、テトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)、ペンタエチレンヘキサミンオクタ(メチレンホスホン酸)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等が挙げられ、これらの中でも、スケール洗浄性の点から、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)から選ばれた1種または2種以上の組み合わせが好ましい。
【0021】
増粘剤としては、例えば、セルロース・ポリマー(カルボキシメチルセルロースなど)、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリル酸・マレイン酸コポリマー及びその塩、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、植物の粘液からのキサンタン・ガム、グアール・ガムなどの天然ガム、アルギネート、スターチ、多糖類をベースとする増粘剤、ペクチンなどのハイドロコロイド増粘剤等から選ばれた1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。増粘剤は、本発明の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物中の濃度が0.05質量%以上、4質量%以下となる量を添加することが好ましく、0.1質量%以上、2質量%以下となる量を添加することがより好ましく、0.2質量%以上、1質量%以下となる量を添加することがより好ましい。
【0022】
消泡剤としては、シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、及びこれらのシリコーン物質を使用したシリコーン系エマルション等のシリコーン系消泡剤、またはポリエーテル系消泡剤等が挙げられる。これらの消泡剤は、本発明の飲食料製造ライン用脱臭剤組成物中の濃度が0.0001質量%以上、1質量%以下となる量を添加することが好ましく、0.0003質量%以上、0.5質量%以下となる量を添加することがより好ましい。
【0023】
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
【0024】
防腐剤としては、例えば、チアゾリン類、ヒダントイン類や、ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト、イソプロピルメチルフェノール、ヘキサクロロフェン、イルガサン、トリクロサン等が挙げられる。チアゾリン類としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。ヒダントイン類としては、1,3-ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、1又は3-モノメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロエチルメチルヒダントイン等が挙げられる。これら防腐剤のうち、より好ましいものとしては1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンやイソプロピルメチルフェノールが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0025】
次に本発明の脱臭洗浄方法について説明する。本発明の脱臭洗浄方法は、上述する発明の脱臭剤組成物を希釈溶媒にて希釈して調整された脱臭剤希釈液(以下、単に希釈液ともいう)を用いる脱臭工程を有する。
本発明の脱臭剤組成物を用いて飲食料製造ラインに対し脱臭工程を行うには、通常、本発明の脱臭剤組成物を水、湯、非水系溶剤、水性溶剤等の希釈溶媒で希釈した希釈液を用いる。経済性、又は安全面の観点から希釈溶媒としては、水又は湯を用いることが好ましい。ここでいう水又は湯とは、イオン交換水、蒸留水、純水、軟水、水道水等であって使用時の温度が限定されない。希釈時の希釈液の温度は特に限定されないが、たとえば、10℃以上、85℃以下の範囲に調整されていることが好ましい。
ここで脱臭剤組成物の希釈率は特に限定されず、適宜調整してよいが、たとえば、希釈液に対する本発明の脱臭剤組成物の含有量が、0.10質量%以上、10.0質量%以下となるよう希釈することによって、脱臭剤組成物に含まれる各成分が脱臭に寄与する濃度が確保され、優れた脱臭効果を十分に得ることができる。
【0026】
本発明の脱臭洗浄方法における脱臭工程は、飲食料製造ラインにおける機械器具を分解した部品を、上記希釈液と接触させて脱臭を行う分解脱臭工程、又は飲食料製造ラインにおける機械器具を分解することなく、そのままの状態で被処理面に上記希釈液を接触させて脱臭を行う定置脱臭工程のいずれであってもよい。
上記分解脱臭工程としては、分解した部品に対し上記希釈液を接触させて脱臭することのできる適宜の処理法を採用することができ、たとえば、分解した部品を上記希釈液に浸漬する浸漬処理法、又は分解した部品に対し上記希釈液を噴射する噴射処理法等を採用することができる。
上記定置脱臭工程としては、未分解の飲食料製造ラインの被脱臭処理領域に対し、上記希釈液を適宜接触させて脱臭する処理法を採用することができ、たとえば、未分解の飲食料製造ラインを備える装置内部に上記希釈液を循環させて脱臭する循環処理法、または未分解の飲食料製造ラインの被脱臭領域に対し、上記希釈液を噴射する噴射処理法等により脱臭処理を行うことができる。上記循環処理法では、飲食料製造ライン内のタンク内又は配管内、及び各種機器類等の内部と希釈液とが十分に接触するように、当該希釈液を循環させるとよい。
尚、上記噴射処理法における希釈液の噴射方法は特に限定されないが、高圧噴射を可能とする高圧洗浄機などを好ましく利用することができる。
【0027】
上記脱臭工程に用いられる希釈液は、10~160℃の範囲に調整されることが好ましく、60~160℃であることがより好ましく、80~140℃であることがさらに好ましい。
また分解脱臭工程における噴射処理、又は定置脱臭工程おける循環処理又は噴射処理では、希釈液を100kPa~550kPaの加圧下で循環又は噴射させることが好ましい。特に60~160℃の温度範囲、特には80~140℃の温度範囲に調整された希釈液を、上述の加圧下循環又は噴射させて処理することで、より高い脱臭効果を得ることができる。
【0028】
本発明の脱臭洗浄方法は、上記脱臭剤組成物による洗浄工程と、アルカリ洗浄剤による洗浄工程(アルカリ洗浄工程)及び/又は酸洗浄剤による洗浄工程(酸洗浄工程)とを組み合わせて行う。脱臭工程では、本発明の脱臭剤組成物を希釈ないし希釈することなく使用することができる。
【0029】
本発明の脱臭洗浄方法は、上記したように飲食料製造ラインにおける機械器具を分解した部品に対し実施する態様、及び飲食料製造ラインにおける機械器具を分解することなく、そのままの状態で実施する所謂CIP洗浄のいずれにも適用することができるが、以下では、本発明の洗浄方法の一例として、希釈液を用いて飲食料製造ラインを備える装置内に洗浄液を循環させるCIP洗浄法により脱臭洗浄を行う態様を説明する。
【0030】
一般的なCIP洗浄は、アルカリ洗浄工程、水すすぎ工程、酸洗浄工程、水すすぎ工程をこの順で実施する。さらに、これらの前工程として水洗浄工程を実施する場合があり、またこれらの後工程において、殺菌工程、及び水すすぎ工程を実施する場合がある。これらの各工程は、使用される洗浄剤の配合成分や汚れの種類や状態に応じて、一部の工程が省略されたり、順序が変更されたり、あるいは同じ工程が繰り返し実施される場合もある。
【0031】
本発明においてアルカリ洗浄工程に用いられるアルカリ洗浄剤としては、通常、苛性ソーダや苛性カリ等のアルカリの0.10質量%以上、5.0質量%以下程度の濃度の希釈液が用いられる。また酸洗浄工程に用いられる酸洗浄剤としては、通常、硝酸やリン酸、メタンスルホン酸、クエン酸等の酸の0.10質量%以上、5.0質量%以下程度の濃度の希釈液が用いられる。
【0032】
本発明の脱臭剤組成物は、CIP洗浄のアルカリ洗浄工程で用いるアルカリ洗浄剤、又は酸洗浄工程で用いる酸洗浄剤と混合して用いることができ、アルカリ洗浄工程と脱臭工程、あるいは酸洗浄工程と脱臭工程を同時に行うことができるため、脱臭洗浄時間の短縮が可能となる。アルカリ洗浄剤や酸洗浄剤と本発明の脱臭剤組成物を混合して用いる場合、本発明の脱臭剤組成物は希釈して混合しても希釈せずに混合しても良い。このように本発明の脱臭剤組成物による脱臭工程を、CIP洗浄におけるアルカリ洗浄工程や酸洗浄工程において同時に行うことで、飲食料製造ラインの洗浄及び脱臭の時間が顕著に短縮化され、製造製品の切り替えを速やかに行うことができ、製品毎の生産速度向上が有意に図られる。CIP洗浄において、本発明の脱臭剤組成物は、アルカリ洗浄剤や酸洗浄剤の一方又は両方と混合して用いることにより、洗浄と脱臭を同時に行うことができるが、この場合においても更に別途脱臭工程を設けることもできる。
【0033】
上述では、CIP洗浄において本発明の脱臭剤組成物をアルカリ洗浄剤、または酸洗浄剤と混合して用いる場合について説明したが、本発明の脱臭剤組成物とアルカリ洗浄剤や酸洗浄剤との混合物は、CIP洗浄に限らず、飲食料製造ラインにおける機械器具を分解し、高圧洗浄機により被洗浄物又は被洗浄物外面に処理液を噴射して処理する方法、被洗浄物に処理液を浸漬して処理する方法においても用いることができる。この場合、脱臭剤組成物濃度、アルカリ洗浄剤濃度、酸洗浄剤濃度は、CIP洗浄に用いる場合の濃度の1~10倍濃度として用いることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下本発明を実施例、比較例により、更に具体的に説明する。尚、以下の実施例、比較
例において各成分の割合は質量%で示す。
【0035】
尚、以下の実施例、比較例において用いた(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分は以下の通りである。
【0036】
(A)成分
A-1:ポリオキシエチレンモノラウレート(HLB値が10.0)
A-2:ポリオキシエチレンモノオレエート(HLB値が11.6)
A-3:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(HLB値が13.3)
A-4:ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(HLB値が10.8)
A-5:ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート(HLB値が11.8)
(B)成分
[(B-a)成分]
B-1:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル1(HLB値が6.0)
[(B-b)成分]
B-2:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル2(HLB値が12.4)
B-3:ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル3(HLB値が11.6)
B-4:ポリオキシエチレンイソデシルエーテル(HLB値が10.1)
B-5:ポリオキシアルキレンラウリルエーテル(HLB値が10.5)
(C)成分
[(C-a)成分]
C-1:ソルビタンモノカプリレート(HLB値が9.6)
[(C-b)成分]
C-2:ソルビタンモノラウレート(HLB値が8.6)
(D)成分
[(D-a)成分]
D-1:プロピレングリコール
D-2:エチレングリコール
[(D-b)成分]
D-3:エチレングリコールモノブチルエーテル
D-4:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
D-5:トリエチレングリコールモノブチルエーテル
(E)成分
E-1:イオン交換水
【0037】
実施例1~50、比較例1~6
表1~6に示す脱臭剤組成物を用い、脱臭性試験(アップル臭、グレープフルーツ臭、バナナ臭)、貯蔵安定性、抑泡性、すすぎ性試験、及び脱臭剤希釈液の臭気性について試験をおこなった。結果を表1~6に示す。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
※1:脱臭性試験
[脱臭試験被試験体]
EPDMパッキン(一辺5cmの正方形、厚さ5mm)を、各試験飲料中に全浸漬し、100℃で8時間放置したものを被試験体とした。試験飲料として、アップル飲料、グレープフルーツ飲料、バナナオレ飲料を用いた。
【0045】
[試験方法]
イオン交換水を用いて表1~6に示す脱臭剤組成物の3質量%希釈液を調整した。各希釈液200mLを、それぞれ300mLのビーカーに入れ当該希釈液を75℃に加温した。その後、上記の方法により調整した被試験体のパッキンを、それぞれのビーカーに1枚投入して75℃の温度を維持した状態にて30分間浸漬した。その後、パッキンを十分に水道水ですすぎ、乾燥したものを評価用のサンプルとした。
【0046】
[評価方法]
10人のパネラーにより被試験体のパッキンの臭いについて下記の4段階で評価した。その点数が少ないほど脱臭効果に優れているといえる。10人のパネラーによる評価点の合計点を「臭い残留度」として評価した。判断基準は下記の通りである。
[評価点基準]
1点:飲料のフレーバー臭ない。
2点:僅かにフレーバー臭あり。
3点:ややフレーバー臭強い。
4点:フレーバー臭強い。
「臭い残留度」
◎:合計点が16点未満。
○:合計点が16点以上22点未満。
△:合計点が22点以上28点未満。
×:合計点が28点以上。
とし、◎、○及び△を実用性のあるものとした。
【0047】
※2:貯蔵安定性試験
表1~6に示す脱臭剤組成物100gを透明ガラス瓶に入れ、-5℃、25℃、40℃で1ヶ月静置した後に外観を観察し、以下の基準で安定性を評価した。
[評価基準]
○:分離や濁りが見られず安定である。
△:全体的な分離はないが、若干の濁りが見られる。
×:分離もしくは濁りが見られる。
とし、〇、△を実用性のあるものとして判定した。
【0048】
※3-1:抑泡性試験
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水を用いて、表1~6に示す脱臭剤組成物を3質量%に希釈して調製した希釈液100mLを調製し、80℃に加温した。100mLガラス栓つきエプトン管に入れ、湯浴中で80℃となるように昇温した。その後、1秒間に1回の割合で20回上下に振とうし、80℃に保持したまま1分間静置後の希釈液面からの泡の高さを測定し、下記の基準で抑泡性を評価した。
【0049】
[評価基準]
◎:泡の高さが10mm未満。
○:泡の高さが10mm以上、15mm未満。
△:泡の高さが15mm以上、20mm未満。
×:泡の高さが20mm以上、
とし、◎、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0050】
※3-2:抑泡性試験(CIP洗浄剤との混合)
炭酸カルシウム換算で75mg/L[ドイツ硬度4.2°DH]の硬水を用いて、ADEKAクリーンエイド社製のCIP用洗浄剤(酸性:アデカTF50(商品名)、又はアルカリ性:アデカサイクルCR(商品名))と、表1~6に示す脱臭剤組成物を各3質量%(終濃度でそれぞれ3質量%)になるように希釈液50mLを調製した。これを80℃に加温後、100mLガラス栓つきエプトン管に入れ、湯浴中で80℃となるように昇温した。その後、1秒間に1回の割合で20回上下に振とうし、80℃に保持したまま1分間静置後の、脱臭剤希釈液面からの泡の高さを測定し、下記の基準で抑泡性を評価した。
【0051】
[評価基準]
◎:泡の高さが10mm未満。
○:泡の高さが10mm以上、15mm未満。
△:泡の高さが15mm以上、20mm未満。
×:泡の高さが20mm以上、
とし、◎、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
※4:すすぎ性試験
CIP洗浄の各工程を以下の条件で行い、CIP洗浄におけるすすぎ性の試験を行った。
CIP洗浄の工程の条件
a)脱臭洗浄:表1~6に示す脱臭剤組成物を3質量%水溶液になるように調製し、80℃で20分間洗浄。
b)脱臭及びアルカリ洗浄:アルカリ洗浄剤としてアデカサイクルCR(ADEKAクリーンエイド株式会社製:商品名)、及び表1~6に示す脱臭剤組成物がそれぞれ3質量%水溶液(終濃度3質量%)になるように調製し、80℃で20分間洗浄。
c)脱臭及び酸洗浄:アデカTF50(ADEKAクリーンエイド株式会社製)、及び表1~6に示す脱臭剤組成物がそれぞれ3質量%水溶液(終濃度3質量%)になるように調製し、80℃で20分間洗浄。
a)~c)のそれぞれの方法で脱臭洗浄を行った後、すすぎ水を80℃で10分間循環させた。その後、すすぎ水の排出し、底部に溜まった泡立ち(すすぎ性)を目視にて、以下の基準で評価した。
[評価基準]
◎:泡立ちなし。(すすぎ性に優れている)
○:わずかに泡立ちがある。(すすぎ性がとても良い)
△:若干泡立ちはあるが問題ないレベル。(すすぎ性が良い)
×:泡立っている。(すすぎ性が悪い)
とし、◎、○、△を実用性のあるものとして判定した。
【0053】
※5:脱臭剤希釈液の臭気性試験
イオン交換水を用いて表1~6に示す脱臭剤組成物の3質量%希釈液を調整した。次に、脱臭剤組成物の希釈液をバイアル瓶に入れて80℃で1時間加温後、40℃にて1時間放置し、評価用のサンプルとした。
10人のパネラーにより、被試験体の希釈液の溶剤臭について下記の4段階で評価した。その点数が少ないほど溶剤臭がしないため、優れているといえる。10人のパネラーによる評価点の合計点を「臭い残留度」として評価した。判断基準は下記の通りである。
[評価点基準]
1点:溶剤臭はしない。
2点:かすかに溶剤臭がする。
3点:やや溶剤臭がする。
4点:溶剤臭が明らかにする。
「臭い残留度」
◎:合計点が16点未満。
○:合計点が16点以上22点未満。
△:合計点が22点以上28点未満。
×:合計点が28点以上。
とし、◎、○及び△を実用性のあるものとした。