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  • 特許-インクジェット記録装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220329BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220329BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 133
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/175 121
B41J2/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018066475
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177491
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡 宏幸
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088293(JP,A)
【文献】特開2008-173816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを貯留するメインタンクと、
インクを吐出するノズルを含むインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに供給されるインクを貯留する第一サブタンクと、
前記インクジェットヘッドを流れたインクを貯留する第二サブタンクと、
前記第二サブタンクと前記第一サブタンクとを繋ぎ、インクを循環させる第一流路と、
前記第一流路に設けられ、前記第一流路にインクを流す第一送液部と、
前記第一サブタンク及び第二サブタンクの気圧を調整する気圧調整システムと、を備え、
前記気圧調整システムは、
前記第一サブタンクの気圧を調整する第一バッファタンクと、
前記第二サブタンクの気圧を調整する第二バッファタンクと、を備え、
前記第一サブタンクには、前記第一サブタンクに貯留された前記インクの量を検出する第一検出器が設けられ、
前記第二サブタンクには、前記第二サブタンクに貯留された前記インクの量を検出する第二検出器が設けられ、
前記第一検出器及び/または前記第二検出器によって検出されたインクの量が設定した範囲にある場合には、前記第一バッファタンク及び/または前記第二バッファタンクの負圧制御の状態にしたがって、前記第一送液部の設定インク流量の調整をおこない、
前記第一検出器及び/または前記第二検出器によって検出されたインクの量が設定した範囲にある場合の前記第一送液部の設定インク流量の調整量は、インクの量が設定した範囲外である場合の調整量に比べて小さい量である、インクジェット記録装置。
【請求項2】
インクを貯留するメインタンクと、
インクを吐出するノズルを含むインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに供給されるインクを貯留する第一サブタンクと、
前記インクジェットヘッドを流れたインクを貯留する第二サブタンクと、
前記第二サブタンクと前記第一サブタンクとを繋ぎ、インクを循環させる第一流路と、
前記第一流路に設けられ、前記第一流路にインクを流す第一送液部と、
前記第一サブタンク及び第二サブタンクの気圧を調整する気圧調整システムと、を備え、
前記気圧調整システムは、
前記第一サブタンクの気圧を調整する第一バッファタンクと、
前記第二サブタンクの気圧を調整する第二バッファタンクと、を備え、
前記第一サブタンクには、前記第一サブタンクに貯留された前記インクの量を検出する第一検出器が設けられ、
前記第二サブタンクには、前記第二サブタンクに貯留された前記インクの量を検出する第二検出器が設けられ、
前記第一検出器及び/または前記第二検出器によって検出されたインクの量が設定した範囲にある場合には、前記第一バッファタンク及び/または前記第二バッファタンクの負圧制御の状態にしたがって、前記第一送液部の設定インク流量の調整をおこない、
前記第一バッファタンクは、第一減圧弁と第一大気解放弁によって気圧調整がされており、
前記第二バッファタンクは、第二減圧弁と第二大気解放弁によって気圧調整がされており、
前記第一バッファタンク及び/または前記第二バッファタンクの負圧制御の状態は、各減圧弁と各大気解放弁の開閉動作を監視することで把握される、インクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第一バッファタンクは、第一減圧弁と第一大気解放弁によって気圧調整がされており、
前記第二バッファタンクは、第二減圧弁と第二大気解放弁によって気圧調整がされており、
前記第一バッファタンク及び/または前記第二バッファタンクの負圧制御の状態は、各減圧弁と各大気解放弁の開閉動作を監視することで把握される、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、インクジェット印刷装置が開示されている。インクジェット印刷装置では、上部インクタンクとインク供給室は、インク供給経路を介して接続される。インク回収室と下部インクタンクとポンプと温度調節器と上部インクタンクは、インク回収経路を介して接続される。下部インクタンクが大気圧に保たれている場合、下部インクタンクとインクジェットヘッドのノズルの水頭差によってノズルにメニスカスが生じるような適切圧力となるように、下部インクタンクの高さ位置が定められる。下部インクタンクに設けられた圧調整部は、下部インクタンク内上部の空気層を減圧する。上部インクタンク内のインクは、インク供給経路内を通ってインク供給室内に供給される。インクは、インク供給室内から複数のインクジェットヘッドに分配され、各インクジェットヘッドから印刷用紙上に吐出される。余剰のインクは、インク回収室内からインク回収経路内を通って下部インクタンク内に一時的に貯蔵され、温度調節器を介して上部インクタンクに供給される。下部インクタンクは、インクボトルと接続されており、第三電磁弁がオン制御されることで、インクボトル内のインクが下部インクタンクに供給される。インクジェット印刷装置には、インク供給経路とインク回収経路を接続するバイパス経路が設けられる。バイパス経路とインク供給経路の接続部には、分岐弁が設けられ、バイパス経路とインク回収経路の接続部には、合流弁が設けられる。上部インクタンク内のインクは、分岐弁からバイパス経路を通って、合流弁からインク回収経路へ流入する。即ち、インクジェット印刷装置では、第一の循環経路と第二の循環経路によって、インクが循環される。
【0003】
特許文献2には、インクジェット記録装置が開示されている。インクジェット記録装置では、インクタンクは、第一主流路を介してインク供給マニホールドと連通され、第二主流路を介してインク回収マニホールドと連通される。第一主流路には第一液体ポンプが接続され、第二主流路には第二液体ポンプが接続される。インクジェット記録装置では、インクタンクから第一主流路を経由してインク供給マニホールドにインクが供給される。インクは、インク供給マニホールドから各第一分岐流路を通り、更に、第一分岐流路がそれぞれ接続された各ヘッドモジュールの供給口からヘッドモジュール内部に分配供給される。ヘッドモジュール内部を循環したインクは、各ヘッドモジュールの排出口に接続された各第二分岐流路を通ってインク回収マニホールドに回収され、更に、インク回収マニホールドから第二主流路を経由してインクタンクにインクが戻される。インクジェット記録装置では、インク供給マニホールドの内部圧力がインク回収マニホールドの内部圧力よりも相対的に高くなるようにマニホールド間に所定の圧力差が設定され、且つ、ヘッドモジュール内のインクに所定の負圧が付与されるように第一液体ポンプと第二液体ポンプの駆動が制御される。インク供給マニホールドとインク回収マニホールドの間には、気泡排出バイパス流路と、循環用バイパス流路が設けられる。循環用バイパス流路により、各ヘッドモジュールを経由することなく、インク供給マニホールドからインク回収マニホールドに直接インクを循環することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5406778号公報
【文献】特開2011-79169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドのノズルからインクが吐出される。発明者は、複数のヘッド部によって形成された構造のインクジェットヘッドについて検討した。その際、複数のヘッド部に対してサブタンクを設ける構成を考えた。サブタンクは、メインタンクから供給されたインクを貯留する。インクジェット記録装置では、各ヘッド部のノズルに安定したメニスカスを形成することで、好ましいインクの吐出を実現し、記録される画像の品質を安定させることができる。メニスカスを安定させるためには、例えば、サブタンクにおいてインクが貯留される空間を大気圧より低い圧力(負圧)に維持した状態で、サブタンクに貯留されるインクの量を、所定の範囲に調整する必要がある。
【0006】
本発明は、サブタンクに貯留されるインクの量をスムーズに調整してサブタンク内の圧力変動を小さくすることで、ノズルに形成されるメニスカスを安定させることができる、インクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、インクを貯留するメインタンクと、インクを吐出するノズルを含むインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクを貯留する第一サブタンクと、前記インクジェットヘッドを流れたインクを貯留する第二サブタンクと、前記第二サブタンクと前記第一サブタンクとを繋ぎ、インクを循環させる第一流路と、前記第一流路に設けられ、前記第一流路にインクを流す第一送液部と、前記第一サブタンク及び第二サブタンクの気圧を調整する気圧調整システムと、を備え、前記気圧調整システムは、前記第一サブタンクの気圧を調整する第一バッファタンクと、前記第二サブタンクの気圧を調整する第二バッファタンクと、を備え、前記第一サブタンクには、前記第一サブタンクに貯留された前記インクの量を検出する第一検出器が設けられ、前記第二サブタンクには、前記第二サブタンクに貯留された前記インクの量を検出する第二検出器が設けられ、前記第一検出器及び/または前記第二検出器によって検出されたインクの量が設定した範囲にある場合には、前記第一バッファタンク及び/または前記第二バッファタンクの負圧制御の状態にしたがって、前記第一送液部の設定インク流量の調整をおこなう、インクジェット記録装置である。
【0008】
インクジェット記録装置は、前記第一検出器及び/または前記第二検出器によって検出されたインクの量が設定した範囲にある場合の前記第一送液部の設定インク流量の調整量は、インクの量が設定した範囲外である場合の調整量に比べて小さい量である、ようにしてもよい。
【0009】
インクジェット記録装置は、前記第一バッファタンクは、第一減圧弁と第一大気解放弁によって気圧調整がされており、前記第二バッファタンクは、第二減圧弁と第二大気解放弁によって気圧調整がされており、前記第一バッファタンク及び/または前記第二バッファタンクの負圧制御の状態は、各減圧弁と各大気解放弁の開閉動作を監視することで把握される、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サブタンクに貯留されるインクの量をスムーズに調整してサブタンク内の圧力変動を小さくすることで、ノズルに形成されるメニスカスを安定させることができる、インクジェット記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成等に置換してもよい。他の構成を含むようにしてもよい。
【0013】
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置10では、各種の記録媒体に画像が記録される。記録媒体としては、布帛又は建築用資材が例示される。画像の記録に用いられるインクは、例えば、ブラック、マゼンタ、イエロー及びシアンの4色である。但し、これら各色のインクとは異なる色のインクを用いるようにしてもよい。インクの色数は、3色以下又は5色以上としてもよい。実施形態では、インク色を区別することなく説明する。インクジェット記録装置10の図示は、簡略化され、実際には色毎に設けられる各部の図示は、1色分のみとされている。図1では、2個のインクジェットヘッド40,41により1色分の記録部が形成される。記録部は、記録媒体12に画像を記録する部分である。
【0014】
インクジェット記録装置10は、メインタンク20と、サブタンク21,22と、検出器30,31と、インクジェットヘッド40,41と、キャリッジ45と、第一流路50と、第二流路60と、気圧調整システム70と、制御装置80を備える。
【0015】
メインタンク20は、インクを貯留する。サブタンク21は、サブタンク22から戻されるインクを貯留する。なお、記録部よりも上流側に位置するサブタンクであることからサブタンク21を上流側サブタンクと称することがある。また、サブタンク22は、記録部より回収されたインクを貯留する。なお、記録部よりも下流側に位置するサブタンクであることからサブタンク22を下流側サブタンクと称することがある。サブタンク21,22は、同様の構成を有する。
【0016】
サブタンク21には、検出器30が設けられる。検出器30は、サブタンク21に貯留されたインクの量を検出する。サブタンク22には、検出器31が設けられる。検出器31は、サブタンク22に貯留されたインクの量を検出する。検出器30,31としては、サブタンク21,22に貯留されたインクの量を検出できる公知のセンサが採用される。
【0017】
検出器30,31は、液面レベル信号を出力する。インクジェット記録装置10では、サブタンク21,22に貯留されたインクの量(液面のレベル)として、第一量と第二量と第三量が設定される。第一量は、サブタンク21,22に貯留されるインクの量の上限として設定された量である。第二量は、サブタンク21,22に貯留されるインクの量の下限として設定された量である。第三量は、貯留されたインクの量が第一量と第二量の間にある量であり、後述する第二流路60へのインクの供給を停止させる基準として設定された量である。第一量と第二量と第三量は、例えば、サブタンクの容積に対応させて設定される。
【0018】
実施形態では、インクの量が第一量より多い場合に検出器30,31から出力される液面レベル信号(上限値信号)はONとなり、インクの量が第二量より少ない場合に検出器30,31から出力される液面レベル信号(下限値信号)はOFFとなる。また、インクの量が第一量以下の場合には上限値信号はOFFとなり、インクの量が第二量以上の場合には下限値信号はONとなる。
【0019】
キャリッジ45には、インクジェットヘッド40,41が搭載される。インクジェット記録装置10では、キャリッジ45にインクジェットヘッド40,41が搭載された状態で、インクジェットヘッド40,41の鉛直方向の上側にサブタンク21,22が設けられる。後述する第一流路50の第一部分51は、サブタンク21とインクジェットヘッド40を繋ぐ。後述する第一流路50の第一部分52は、サブタンク21とインクジェットヘッド41を繋ぐ。第一部分51には、サブタンク21からインクジェットヘッド40に供給されるインクが流れる。第一部分52には、サブタンク21からインクジェットヘッド41に供給されるインクが流れる。
【0020】
インクジェットヘッド40,41は、複数のノズル42と、内部流路44を含む。インクジェットヘッド40,41は、複数のノズル42から同一色のインクを吐出する。インクジェットヘッド40,41は、同様の構成を有する。インクジェットヘッド40,41では、ノズル42の数は、4個とされている。1個のインクジェットヘッドに形成されるノズル42の数と配置は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0021】
インクジェットヘッド40,41に流入したインクは、複数のノズル42から吐出され、又は、後述する第一流路50の第二部分53,54に流出する。第二部分53は、インクジェットヘッド40とサブタンク22を繋ぐ。第二部分54は、インクジェットヘッド41とサブタンク22を繋ぐ。第二部分53には、インクジェットヘッド40からサブタンク22に戻されるインクが流れる。第二部分54には、インクジェットヘッド41からサブタンク22に戻されるインクが流れる。
【0022】
第一流路50は、インクジェット記録装置10にてインクが循環する管状の流路である。第一流路50は、2個の第一部分51,52と、2個の第二部分53,54と、第三部分55と、第一送液部56を含む。実施形態では、第一流路50をインクが流れる方向を「循環方向」という。第三部分55は、サブタンク22とサブタンク21を繋ぐ。第三部分55には、サブタンク22からサブタンク21に戻されるインクが流れる。第一送液部56は、第一流路50の第三部分55に設けられ、第一流路50にインクを流す。第一送液部56としては、公知のポンプが例示される。また、ポンプとは異なる公知の機構を採用することもできる。
【0023】
第二流路60は、メインタンク20とサブタンク22を繋ぐ。第二流路60には、メインタンク20から流出してサブタンク22に流入するインクが流れる。第二流路60は、第二送液部61と、第一弁62を含む。第二送液部61は、第二流路60に設けられ、サブタンク21,22のインク量が第二量より少なくなったとき、サブタンク22にインクを流す。第二送液部61としては、公知のポンプが例示される。また、ポンプとは異なる公知の機構を採用することもできる。第一弁62は、第二流路60に設けられ、第二流路60を開閉する。第一弁62としては、例えば、公知の電磁弁が採用される。
【0024】
気圧調整システム70は、サブタンク21,22の気圧を調整する。気圧調整システム70は、バッファタンク71,74と、減圧弁72,75と、大気解放弁73,76と、真空ポンプを含む。バッファタンク71と、減圧弁72と、大気解放弁73は、サブタンク21(上流側サブタンク)側の気圧を調整し、バッファタンク74と、減圧弁75と、大気解放弁76は、サブタンク22(下流側サブタンク)側の気圧を調整する。このとき、サブタンク21は、サブタンク22より高い圧力に調整されている。真空ポンプは、サブタンク21,22の気圧を大気圧より低い圧力(負圧)とする。なお、図1では、真空ポンプの図示は、省略されている。
【0025】
制御装置80は、制御部81と、接続インターフェース(接続I/F)85を備える。制御部81は、インクジェット記録装置10で実行される各種の動作を制御する。例えば、制御部81は、インクジェットヘッド40,41からのインクの吐出を制御する。制御部81は、第一弁62の開閉と、減圧弁72,75の開閉と、大気解放弁73,76の開閉を制御する。制御部81は、例えば、CPU82と、記憶部83と、RAM84を含む。CPU82は、演算処理を実行する。記憶部83は、例えば、不揮発性のメモリ及び/又はハードディスクである。記憶部83には、インクジェット記録装置10で実行される各種の動作用のプログラムが記憶される。前述のプログラムは、記憶部83に予めインストールされる。
【0026】
RAM84は、CPU82が記憶部83に記憶されたプログラムを実行する際の作業領域となる。
RAM84には、開閉フラグが記憶される。開閉フラグは、第一弁62と減圧弁72,75と大気解放弁73,76の各弁に対応付けられる。開閉フラグは、第一弁62と減圧弁72,75と大気解放弁73,76の各弁の開閉状態を示す。即ち、開閉フラグ「ON」は、開かれた状態を示し、開閉フラグ「OFF」は、閉じられた状態を示す。例えば、第一弁62が開かれた状態である場合、第一弁62に対応付けられた開閉フラグは、ONとされる。第一弁62が閉じられた状態である場合、第一弁62に対応付けられた開閉フラグは、OFFとされる。
【0027】
接続I/F85には、検出器30,31が接続される。検出器30,31からの液面レベル信号は、接続I/F85を介して制御装置80に入力される。液面レベル信号は、接続I/F85から制御部81に出力される。接続I/F85には、第一弁62と減圧弁72,75と大気解放弁73,76が接続される。第一弁62と減圧弁72,75と大気解放弁73,76の各弁に対する開放信号と閉鎖信号は、接続I/F85から出力される。開放信号は、出力先の弁を開かれた状態とする指令信号である。閉鎖信号は、出力先の弁を閉じられた状態とする指令信号である。第一弁62と減圧弁72,75と大気解放弁73,76のうちの所定の弁に開放信号が出力された場合、出力先の弁に対応付けられた開閉フラグは、ONとされる。第一弁62と減圧弁72,75と大気解放弁73,76のうちの所定の弁に閉鎖信号が出力された場合、出力先の弁に対応付けられた開閉フラグは、OFFとされる。図1では、接続I/F85と検出器30,31を接続する電気配線の図示と、接続I/F85と第一弁62と減圧弁72,75と大気解放弁73,76を接続する電気配線の図示は、省略されている。
【0028】
<上流側サブタンクおよび下流側サブタンクの液面調整>
上流側サブタンクおよび下流側サブタンクのインクの量がともに第三量にあり、インクジェット記録装置10にて、インクが安定して循環しているときの第一送液部56の設定インク流量を、Q mL/minとする。例えば、メインタンク20からサブタンク22にインクが供給されたり、インクジェット記録がおこなわれインクが消費されたりした場合、サブタンク21,22のインクの量が、第三量である状態から第一量あるいは第二量へと変化することがある。サブタンク21,22のインクの量が、様々な状態に変化した場合の第一送液部56の設定インク流量と第一弁62の開閉状態を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表中の状態1は、上流側サブタンクおよび下流側サブタンクのインクの量がともに第三量にあり、インクジェット記録装置10にて、インクが安定して循環しているときを示している。例えば、それが状態2となった場合について考えてみる。状態2は、上流側サブタンクのインクの量が第三量であり、下流側サブタンクのインクの量がインクの量の下限として設定された量(第二量)より少ない場合である。状態2では、メインタンク20からサブタンク22にはインクが供給されない為、状態1同様、第一弁62は閉じている。状態2の第一送液部56の設定インク流量は、状態1の設定インク流量に比べて減少している。つまり、サブタンク22からサブタンク21にインクが状態1より戻らないようにしている。
【0031】
状態3は、上流側サブタンクのインクの量が第二量より少なく、下流側サブタンクのインクの量が第三量の場合である。状態3では第一弁62は閉じている。状態3の第一送液部56の設定インク流量は、状態1の設定インク流量に比べて増加している。つまり、サブタンク22からサブタンク21にインクが状態1より戻るようにしている。
【0032】
状態4は、上流側サブタンクのインクの量がインクの量の上限として設定された量(第一量)より多く、下流側サブタンクのインクの量が第三量の場合である。状態4では第一弁62は閉じている。状態4の第一送液部56の設定インク流量は、状態1の設定インク流量に比べて減少している。つまり、サブタンク22からサブタンク21にインクが状態1より戻らないようにしている。
【0033】
状態5は、上流側サブタンクのインクの量が第三量で、下流側サブタンクのインクの量が第一量より多い場合である。状態5では第一弁62は閉じている。状態5の第一送液部56の設定インク流量は、状態1の設定インク流量に比べて増加している。つまり、サブタンク22からサブタンク21にインクが状態1より戻るようにしている。
【0034】
状態6は、上流側サブタンクのインクの量が第一量より多く、下流側サブタンクのインクの量が第二量より少ない場合である。状態6では第一弁62は閉じている。状態6の第一送液部56の設定インク流量は、状態1の設定インク流量に比べて減少している。つまり、サブタンク22からサブタンク21にインクが状態1より戻らないようにしている。
【0035】
状態7は、上流側サブタンクのインクの量が第二量より少なく、下流側サブタンクのインクの量が第一量より多い場合である。状態7では第一弁62は閉じている。状態7の第一送液部56の設定インク流量は、状態1の設定インク流量に比べて増加している。つまり、サブタンク22からサブタンク21にインクが状態1より戻るようにしている。
【0036】
状態8は、上流側サブタンクと下流側サブタンクのインクの量がともに第二量より少ない場合である。状態8のとき、メインタンク20から第二流路60を通り、下流側サブタンクにインクが供給される。状態8では第一弁62は開いており、第二送液部61が稼働している。状態8の第一送液部56の設定インク流量は、状態1の設定インク流量に比べて増加している。つまり、サブタンク22からサブタンク21にインクが状態1より戻るようにしている。
【0037】
表中の設定インク流量q1、q2、q3は、各状態に応じて設定された値であり、設定インク流量q1、q2、q3の関係は、「q1>q2>q3」とされる。このように各状態に応じて設定インク流量を変えることで、速やかに各状態から状態1へと戻すようにしている。そして、速やかに各状態から状態1へと戻すことにより、サブタンク21,22内の圧力変動が小さくなり、ノズルに形成されるメニスカスを安定させることができる。
【0038】
<状態1における第一送液部56の調整>
次に、状態1について考察する。状態1は、上流側サブタンクから下流側サブタンクに流れるインクの量と、下流側サブタンクから上流側サブタンクに戻るインクの量が等しく(Q)、安定して循環している状態である。理想としては、この安定した状態を維持したいのであるが、循環しているインクの温度上昇やインクジェット記録装置10周辺の温度変化などによるインクの粘度の変化やインクジェットヘッド40,41からのインクの吐出などにより、実際には、循環しているインクの量が、第一送液部56の設定インク流量Qより多かったり、少なかったりする。これを放置しておくと、状態1からすぐに他の状態(状態2~8)に変化してしまう為、状態1を維持するには、第一送液部56の設定インク流量の調整をおこなう。この調整は、状態2~8の第一送液部56の設定インク流量の調整に比べて小さいものである。なお、以下の説明において、状態1と状態2~8での第一送液部56の設定インク流量の調整を区別する目的で、状態2~8での第一送液部56の設定インク流量の調整を「粗調整」、状態1での第一送液部56の設定インク流量の調整を「微調整」として説明することがある。
【0039】
状態1にあるときの上流側サブタンクと下流側サブタンクのインクの量の微小な変化を認識する手段として、バッファタンク71,74の負圧制御に着目する。バッファタンク71,74の負圧制御を監視することによって、サブタンク21,22の負圧状態を把握することができ、サブタンク21,22のインクの量の微小な変化を認識することができる。
【0040】
例えば、サブタンク21に着目し、サブタンク21に供給されるインクの量がサブタンク21から流出するインクの量より多い場合、サブタンク21内の圧力は正圧側に崩れていき、それを負圧側に戻そうとして減圧弁72が開くことになる。逆に、サブタンク21に供給されるインクの量がサブタンク21から流出するインクの量より少ない場合、サブタンク21内の圧力は負圧側に崩れていき、それを正圧側に戻そうとして大気解放弁73が開くことになる。
【0041】
言い換えれば、減圧弁72が開くと、供給されるインクの量が流出するインクの量より多いと推測でき、第一送液部56の設定インク流量をQより微小量αだけ小さくすることで、また、大気解放弁73が開くと、供給されるインクの量が流出するインクの量より少ないと推測でき、第一送液部56の設定インク流量をQより微小量αだけ大きくすることで、サブタンク21内の圧力変化を止め、安定して状態1を維持することができる。
【0042】
同様に、サブタンク22では、サブタンク22に供給されるインクの量がサブタンク22から流出するインクの量より多い場合、サブタンク22内の圧力は正圧側に崩れていき、それを負圧側に戻そうとして減圧弁75が開くことになる。逆に、サブタンク22に供給されるインクの量がサブタンク22から流出するインクの量より少ない場合、サブタンク22内の圧力は負圧側に崩れていき、それを正圧側に戻そうとして大気解放弁76が開くことになる。
【0043】
言い換えれば、減圧弁75が開くと、供給されるインクの量が流出するインクの量より多いと推測でき、第一送液部56の設定インク流量をQより微小量αだけ小さくすることで、また、大気解放弁76が開くと、供給されるインクの量が流出するインクの量より少ないと推測でき、第一送液部56の設定インク流量をQより微小量αだけ大きくすることで、サブタンク22内の圧力変化を止め、安定して状態1を維持することができる。
【0044】
なお、微小量αとは、状態2~8における第一送液部56の設定インク流量の変化量q1、q2、q3と比べて極々小さい値である。また、減圧弁72,75と大気解放弁73,76の開閉動作の監視時間、第一送液部56の設定インク流量の調整をおこなうきっかけとなる各弁の開閉回数、設定インク流量をQから微小量αだけ増減させるのに要する時間等については、任意に設定することが可能である。
【0045】
このように、減圧弁72,75と大気解放弁73,76の開閉動作に着目することにより、サブタンク21,22の状態を状態1に安定して保つことができる。そして、サブタンク21,22の状態を状態1に安定して保つことにより、サブタンク内の圧力変動を小さくして、ノズルに形成されるメニスカスを安定させることができる。
【0046】
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は、適宜省略する。
【0047】
(1)上記の検出器30,31では、サブタンク21,22に貯留されたインクの量の上限値と下限値の2ポジションを検知できるタイプを例に説明したが、検出器30,31は、その2ポジション以上の複数ポジションを検出できるタイプであってもよいし、インクの量を連続値で検出できるタイプであってもよい。
【0048】
(2)上記の表1では、サブタンク21とサブタンク22のそれぞれのインクの量に注目して第一送液部56の設定インク流量の変更をおこなっていたが、サブタンク21とサブタンク22のどちらか一方のインクの量に注目して第一送液部56の設定インク流量の変更をおこなってもよい。同様に、上記したバッファタンク71,74の負圧制御の監視についても、バッファタンク71,74のそれぞれの負圧制御に注目して第一送液部56の設定インク流量の変更をおこなっていたが、バッファタンク71とバッファタンク74のどちらか一方の負圧制御に注目して第一送液部56の設定インク流量の変更をおこなってもよい。
【0049】
(3)図1のインクジェット記録装置10では、1色分の構成で説明をおこなっており、1色につき、バッファタンク71,74の2つのバッファタンクを備えたインクジェット記録装置で説明しているが、色毎に、図1同様、2つのバッファタンクを備えていてもよいし、バッファタンクを複数色で共有してもよい。
【0050】
(4)上記では、バッファタンクの負圧制御の状態を把握する例として、バッファタンクの減圧弁と大気解放弁の開閉動作に着目したが、この方法以外にも、例えば、サブタンクの負圧を調整している真空ポンプが、出力調整が可能な真空ポンプである場合は、その出力値に着目してもよい。サブタンク21の負圧を調整する真空ポンプとサブタンク22の負圧を調整する真空ポンプのそれぞれの真空ポンプに出力調整が可能なタイプのものを使用し、それぞれの真空ポンプの出力調整の状況から各バッファタンクの負圧制御の状態を把握することも可能である。
【0051】
(5)上記では、サブタンクとバッファタンクが個別に構成されたインクジェット記録装置10で説明をおこなったが、サブタンクの容量を充分に大きく設計できるのであれば、サブタンクとバッファタンクを1つの構成としてもよい。サブタンク21とバッファタンク71をあわせて上流側サブタンク、サブタンク22とバッファタンク74をあわせて下流側サブタンク、とみなすことができる。この場合、サブタンクがバッファタンクの役割も担うこととなり、サブタンク21には減圧弁72と大気解放弁73と真空ポンプが接続され、サブタンク22には減圧弁75と大気解放弁76と真空ポンプが接続される。サブタンク21に接続される真空ポンプとサブタンク22に接続される真空ポンプは、個別の違うものであってもよいし、同じものであってもよい。
【0052】
(6)上記では、インクジェット記録装置10を特に限定して説明していないが、インクジェット記録装置10は、シリアル型であっても、ライン型のインクジェット記録装置であっても、どちらでもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 インクジェット記録装置
12 記録媒体
20 メインタンク
21,22 サブタンク
30,31 検出器
40,41 インクジェットヘッド
42 ノズル
44 内部流路
45 キャリッジ
50 第一流路
51,52 第一部分
53,54 第二部分
55 第三部分
56 第一送液部
60 第二流路
61 第二送液部
62 第一弁
70 気圧調整システム
71,74 バッファタンク
72,75 減圧弁
73,76 大気解放弁
80 制御装置
81 制御部
82 CPU
83 記憶部
84 RAM
85 接続インターフェース(接続I/F)
図1