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特許7048440搬送用ベルト及びその搬送用ベルトを使用した搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】搬送用ベルト及びその搬送用ベルトを使用した搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/34 20060101AFI20220329BHJP
   B65G 15/14 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B65G15/34
B65G15/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018127440
(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公開番号】P2019019002
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2017136878
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 康一
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-046909(JP,U)
【文献】登録実用新案第3050375(JP,U)
【文献】特開平10-329915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/34
B65G 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を搬送する搬送用ベルトであって
ゴム組成物で形成されたゴム層と、
当該搬送用ベルトの周長方向に沿って、心線が埋設された心線層と、を含み、
前記ゴム層の、前記搬送物が接する面側には、当該搬送用ベルトの周長方向に沿って、当該搬送用ベルトの幅方向の断面視が凹形状の溝が一体成形されており、
前記凹形状の溝の表面は、繊維部材で被覆されていることを特徴とする、搬送用ベルト。
【請求項2】
前記繊維部材の表面には、凹凸形状の模様が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
前記溝の、当該搬送用ベルトの幅方向の溝幅は、当該搬送用ベルトの幅方向のベルト幅の50~90%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
前記溝の深さは、当該搬送用ベルトのベルト厚みの5~35%であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1つに記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
前記心線層の上部から前記溝の底までの厚みは、当該搬送用ベルトのベルト厚みの10~45%であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1つに記載の搬送用ベルト。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1つに係る搬送用ベルトを2つと、
前記2つの搬送用ベルトがそれぞれ巻き掛けられる複数のプーリと、有し、
前記2つの搬送用ベルトは、前記凹形状の溝が形成された面同士が対向する状態で、前記複数のプーリに巻き掛けられ、対向させた前記凹形状の溝の間に前記搬送物を挟持し、搬送することを特徴とする、搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を挟持して搬送する搬送用ベルト、及び、その搬送用ベルトを使用した搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送用ベルトには、重量物から軽量物を搬送するコンベアベルト、ベルトに備え付けたバケットを使い搬送するバケットコンベアベルト等がある。また、2つのベルトの外周側同士を対向させて、その間に搬送物を挟持した状態で搬送する挟持搬送用ベルトがある。従来の挟持搬送用ベルトは、ベルトの外周側に、搬送物を損傷させないように搬送物に適した形状及び硬度のスポンジ等の弾性体が、貼着された構造をしていた。例えば、特許文献1~4には、ベルトの外周側に貼着されたスポンジが対向する状態で、一組のベルトがプーリ間に巻付け配置され、作業機等に使用される挟持搬送用ベルトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-275930号公報
【文献】特許第3942727号
【文献】登実第3050375号
【文献】登実第3033522号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1~4に挙げた狭持搬送用ベルトは、Vベルト又は平ベルトに接着剤を介してスポンジ等の弾性体を貼着する手法で製造されている。そして、ベルトに貼着する弾性体がスポンジである場合、スポンジの表面(直接搬送物と接触する薄い被膜)が早期に摩耗し、皮膜が破壊した箇所からスポンジの中身が露出して早期にスポンジが破壊してしまうことがある。また、搬送物の噛み込み状態によってはスポンジの局部的な引裂きが発生することがある。また、ベルトにスポンジやゴム等を貼着した構造の場合、貼着作業の条件によっては、ベルトの1周内の接着力のバラツキが大きくなる場合がある。このため、接着力の低い部分は稼動早期に剥離が生じ、搬送物の狭持搬送機能を満たさなくなってしまう。このように、ベルトにスポンジやゴム等の弾性体を貼着する構造の場合、搬送用ベルトの寿命が短くなってしまうことがある。
【0005】
また、スポンジやゴム等の弾性体のベルトへの貼着作業の最終形である弾性体と弾性体とのジョイント接着は、カットの長さ合わせ、弾性体の切断角度合わせ等で人手に頼ることが多く熟練を要する作業となっている。更に、弾性体はベルトの生産とは別に準備する必要がある。このように、ベルトにスポンジやゴム等の弾性体を貼着する構造の場合、その作製に手間とコストが負担となり、生産効率の妨げとなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、長寿命化を実現しつつ、品質管理が容易であり、量産に適した生産効率の良い、搬送用ベルト及びその搬送用ベルトを使用した搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の1つは、搬送物を搬送する搬送用ベルトであって
ゴム組成物で形成されたゴム層と、
当該搬送用ベルトの周長方向に沿って、心線が埋設された心線層と、を含み、
前記ゴム層の、前記搬送物が接する面側には、当該搬送用ベルトの周長方向に沿って、当該搬送用ベルトの幅方向の断面視が凹形状の溝が一体成形されていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、搬送用ベルトにおいて、ゴム層の搬送物が接する面側に凹形状の溝を一体成形していることから、搬送面に凹部を付けるために別個スポンジ等を用意して、ゴム層に貼り付ける場合に比べて、スポンジ等を貼り付ける工程を省略できる分生産性を向上させることができる。また、スポンジ等をゴム層に貼り付ける場合には、張り付けた面の接着力にバラツキ・ムラが生じ、搬送軌道が安定しなくなったり、剥離の原因となってしまうおそれがあったが、上記構成では、凹形状の溝はゴム層に一体成形されていることから、左記おそれもなく、搬送軌道の安定化及び搬送用ベルトの長寿命化を実現することができる。
また、搬送物が接する面側に、凹形状の溝を配置していることから、搬送物が、柔軟性があるものや、球形状のものや、不定形状のものであっても、搬送物を搬送面から落とさず、安定して搬送することができる。また、プレス加工により凹形状の溝を形成する際には、凹形状に対応する凸形状のプレス盤を用意・使用するだけでよく、ゴム層に凸形状を形成する際に凸形状に対応する凹形状のプレス盤を用意・使用する場合に比べて、品質管理が容易であり、量産に適した構成にすることができる。
【0009】
また、本発明の一つは、上記搬送用ベルトにおいて、前記凹形状の溝の表面が、繊維部材で被覆されていることを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、搬送物が接するゴム層に形成された凹形状の溝の表面が、繊維部材で覆われていることから、搬送物に対するグリップ力(摩擦力)を高め、搬送物が、ずれ落ちたりすることを防止することができる。
【0011】
また、本発明の一つは、上記搬送用ベルトにおいて、前記繊維部材の表面には、凹凸形状の模様が形成されていることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、繊維部材の表面に凹凸形状の模様を付けることにより、搬送物に対するグリップ力(摩擦力)をより高め、搬送物が、ずれ落ちたりすることを防止することができる。
【0013】
また、本発明の一つは、上記搬送用ベルトにおいて、前記凹形状の溝の表面には、ゴム組成物で形成されており、表面に凹凸形状の模様が形成された、模様層が積層されていることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、凹形状の溝の表面に、表面に凹凸形状の模様が形成されたゴムの模様層が積層されていることから、搬送物に対するグリップ力(摩擦力)を高め、搬送物が、ずれ落ちたりすることを防止することができる。
【0015】
また、本発明の一つは、上記搬送用ベルトにおいて、前記溝の、当該搬送用ベルトの幅方向の溝幅(w)が、当該搬送用ベルトの幅方向のベルト幅(W)の50~90%であることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、搬送物を搬送する際に確実に受け取ることができ、搬送機能を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の一つは、上記搬送用ベルトにおいて、前記溝の深さ(t)が、当該搬送用ベルトのベルト厚み(T)の5~35%であることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、搬送物を搬送する際に確実に保持することができ、搬送機能を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の一つは、上記搬送用ベルトにおいて、前記心線層の上部から前記溝の底までの厚み(S)が、当該搬送用ベルトのベルト厚み(T)の10~45%であることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、搬送用ベルトの屈曲性を確保することができ、搬送機能を向上させることができる。
【0021】
また、本発明の一つは、上記何れかの搬送用ベルトを2つと、
前記2つの搬送用ベルトがそれぞれ巻き掛けられる複数のプーリと、有し、
前記2つの搬送用ベルトは、前記凹形状の溝が形成された面同士が対向する状態で、前記複数のプーリに巻き掛けられ、対向させた前記凹形状の溝の間に前記搬送物を挟持し、搬送することを特徴とする、搬送装置である。
【0022】
上記構成によれば、2つの搬送用ベルトを対向させて、凹形状の溝の間に搬送物を挟持し、搬送させることができることから、搬送物が、柔軟性があるものや、球形状のものや、不定形状のものであっても、搬送物を搬送面から落とさず、安定して確実に搬送することができる。
【発明の効果】
【0023】
長寿命化を実現しつつ、品質管理が容易であり、量産に適した生産効率の良い、搬送用ベルト及びその搬送用ベルトを使用した搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る搬送装置の概略図である。
図2】本実施形態に係る搬送用ベルトの斜視図である。
図3】本実施形態に係る搬送用ベルトの断面図である。
図4】溝のベルト幅方向の断面形状の説明図である。
図5】搬送用ベルトにおける各種寸法の説明図である。
図6】溝の表面に被覆された外被布の表面の凹凸形状の模様の説明図である。
図7】本実施形態の搬送装置の搬送方法を説明した説明図である。
図8】本実施形態の搬送装置の搬送方法を説明した説明図である。
図9】本実施形態の搬送装置の搬送方法を説明した説明図である。
図10】搬送用ベルトの製造方法の説明図である。
図11】その他の実施形態に係る搬送用ベルトの断面図である。
図12】その他の実施形態に係る模様層のシボ模様の例示図である。
図13】その他の実施形態に係るローエッジVベルトの斜視図である。
図14】実施例における搬送用ベルトの各所寸法を説明した説明図である。
図15】実施例に係る動的機能評価に使用した搬送装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態)
以下、図面を参照しつつ、本願発明に係る搬送用ベルト及びその搬送用ベルトを使用した搬送装置について説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の搬送装置1では、1組の搬送用ベルト2・2´は、その外周側同士を対向させた状態で、それぞれ駆動プーリ3・3´、従動プーリ4・4´、及び、中間プーリ5・5´に巻き付け配置されている。そして、駆動プーリ3・3´が回転駆動されることにより、搬送用ベルト2の外周面と搬送用ベルト2´の外周面との間に挟持された搬送物が、図1に示す搬送方向に搬送される。
【0027】
(搬送用ベルト2の構成)
搬送用ベルト2(搬送用ベルト2´も同様)には、ラップドVベルトを採用している。図2及び図3に示すように、搬送用ベルト2は、ゴム組成物で形成されたゴム層21と、ゴム層21の中に、ベルト周長方向に沿い、且つ、ベルト幅方向に所定の間隔をあけて配列された心線23が埋設された心線層22と、ゴム層21の周囲をベルト周方向の全長に渡って被覆する外被布24と、から構成されている。
【0028】
ここで、本実施形態では、外被布24が被覆されたゴム層21の外周側(即ち、搬送用ベルト2において、搬送物が接する面側)には、ベルト周長方向に沿って、ベルト幅方向の断面視が凹形状(半楕円)の溝25が一体成形されている。溝25は、搬送用ベルト2の外周側のベルト幅方向の中央に位置する。なお、凹形状の溝25のベルト幅方向の断面形状は、図4に示すように、半円、半楕円、三角形、四角形が例示できる。
【0029】
図5に示すように、溝25のベルト幅方向の溝幅(w)は、搬送用ベルト2のベルト幅方向のベルト幅(W)の50~90%としている。また、溝25の深さ(t)(最も大きいところ)は、搬送用ベルト2のベルト厚み(T)の5~35%、好ましくは15~30%としている。また、心線層22の上部から溝25の底までの厚み(S:上芯)は、搬送用ベルト2のベルト厚み(T)の10~45%としている。例えば、搬送用ベルト2がC形のVベルト(T=14mm)の場合、厚みSは1.4~6.3mmであり、好ましくは2~6mmである。なお、心線層22は、搬送用ベルト2のベルト厚みの中央よりも内周側に配置されるのが好ましい。
【0030】
より詳細な搬送用ベルト2の寸法は、表1のJIS6323、JIS6368、DIN7753などに準拠して形成される。
【表1】
【0031】
なお、搬送物を凸部と凸部とで挟持するのではなく、凹形状の溝25で抱え込む手法を採用していることから、搬送物の形状、大きさ、硬さに対応させて、ベルト幅(W)、溝25(幅(w)×深さ(t))の選択が可能である。
【0032】
また、搬送用ベルト2のベルト幅方向の断面は、V字状断面であり、外被布24で被覆されたV字状断面の左右の両側面が、駆動プーリ3、従動プーリ4、及び中間プーリ5のV溝の内壁面と接触する摩擦伝動面となる。
【0033】
(ゴム層21)
ゴム層21を形成するゴム組成物のゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴム、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど)、エチレン-α-オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。好ましいゴム成分は、エチレン-α-オレフィンエラストマー(エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)などのエチレン-α-オレフィン系ゴム)、クロロプレンゴムである。特に好ましいゴム成分は、クロロプレンゴムに対し耐久性に優れ、ハロゲンを含まないエチレン-α-オレフィンエラストマーである。EPDMのジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエンなどを挙げることができる。
【0034】
また、ゴム層21を形成するゴム組成物には、さらに必要に応じて、ゴムに通常配合される、硫黄、有機過酸化物等の架橋剤、N,N´-m-フェニレンジマレイミド、キノンジオキシム類等の共架橋剤、加硫促進剤、炭酸カルシウム、タルク等の充填剤、可塑剤、安定剤、加工助剤、着色剤、短繊維等を配合してもよい。短繊維としては、綿、ポリエステル(PET、PENなど)、ナイロン(6ナイロン、66ナイロン、46ナイロンなど)、アラミド(p-アラミド、m-アラミド)、ビニロン、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などを用いることができる。これらの短繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
(心線層22)
心線層22は、心線23が、ゴム組成物(ゴム層21を形成するゴム組成物と同じ)に、ベルト周長方向に沿い、且つ、Vベルト幅方向に所定の間隔をあけて一列に配列された状態で埋設されている。具体的には、1本で連なる心線23をベルト周長方向にスパイラル状に巻き付けて埋設している。
【0036】
心線23を構成する繊維としては、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート等のC2-4アルキレンアリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維、ポリエチレンテレフタレート系繊維、エチレンナフタレート系繊維等)、アラミド繊維等の合成繊維、炭素繊維等の無機繊維が使用され、ポリエステル繊維やアラミド繊維が好ましい。これらの繊維はマルチフィラメント糸であってもよい。マルチフィラメント糸の繊度は2000~10000デニールとするとよく、好ましくは4000~8000デニールとするとよい。
【0037】
(外被布24)
外被布24は、磨耗による挟持力の劣化を防止するために、布の積層数は少なくとも2plyとしている。外被布24は、経糸と緯糸との交差角が90°を超え120°以下程度の広角度で製織した織布、編布などが好ましい。外被布24の材質は、要求されている耐摩耗性を満足できる合成繊維、ポリアミド繊維などが好ましい(繊維部材)。
【0038】
外被布24は、ゴム層21の外周側に形成された溝25の表面を被覆している。ここで、溝25の表面を被覆している外被布24の表面には、凹凸形状の模様が形成されている。具体的には、図6に示す、高さが0.2mm~5mmの突起物241を無数に有することにより、凹凸形状の模様を形成している。
【0039】
上記のように、凹形状をした溝25の表面が、外被布24(繊維部材)で覆われていることから、搬送物に対するグリップ力(摩擦力)を高め、搬送物が、搬送用ベルト2からずれ落ちたりすることを防止することができる。
【0040】
更に、外被布24の表面に、凹凸形状の模様が形成されていることにより、搬送物に対するグリップ力(摩擦力)をより高め、搬送物が、搬送用ベルト2からずれ落ちたりすることを防止することができる。
【0041】
(搬送方法)
搬送装置1において、搬送用ベルト2の溝25と搬送用ベルト2´の溝25´とが対向しているため、溝25と溝25´との間に、搬送物を挟持する空間ができる(図7参照)。そして、搬送装置1において、駆動プーリ3・3´が回転駆動されることにより、搬送用ベルト2の溝25と搬送用ベルト2´の溝25´との間に挟持された搬送物が、図1に示す搬送方向に搬送される。
【0042】
本実施形態の搬送用ベルト2・2´を使用した搬送装置1によれば、搬送物が柔軟性のある固形物であったり、搬送物が球形であったり、搬送物が不定形のものであったとしても(図8参照)、搬送用ベルト2・2´の外周側に形成された凹形状(半楕円)の溝25・25´の中央に、搬送物を安定して保持することができ、搬送物を搬送用ベルト2・2´から落とさず、安定して確実に搬送することができる。
【0043】
また、本実施形態の搬送装置1では、図9に示すように、粉末状の物質(薬等)を載置した包み紙を、搬送用ベルト2の両端部のエッジ26と搬送用ベルト2´の両端部のエッジ26´との間に挟持して搬送することができる。この場合、包み紙と搬送用ベルト2´の溝25´との間に密閉空間ができることから、包み紙の上に載置した粉末状の物質を、密閉した状態で搬送することができる。
【0044】
(搬送用ベルト2の製造方法)
搬送用ベルト2の製造方法について説明する。
【0045】
まず、所定の長さの帯状に加工された、未加硫の内周側用ゴムシートを、円形状の成形用マントルの外周部に巻くことにより、内周側用ゴムシートを円形状に保持させる。
【0046】
次に、成形用マントルの回転に伴い、ボビンから繰り出された心線23を、成形用マントルの外周部に巻かれた内周側用ゴムシートの外周に、スパイラル状に巻き付ける。
【0047】
次に、心線23の外周側に、所定の長さの帯状に加工された、未加硫の外周側用ゴムシートを巻く。これにより、筒状未加硫ベルト成形体を作成する。
【0048】
次に、この筒状未加硫ベルト成形体を、所定幅に切断し、断面視V字状に加工し、外被布24を巻いて、搬送用ベルト2の原型となる複数の未加硫ベルト成形体を作成する。そして、各未加硫ベルト成形体を、図10に示すように、複数のV溝が形成されたプレス下盤と、半楕円形状の複数の凸部がプレス下盤のV溝に対応する位置に形成されたプレス上盤との間に載置する。そして、加硫時に、プレス上盤とプレス下盤との間で各未加硫ベルト成形体をプレスして、各未加硫ベルト成形体の外周面側に凹形状(半楕円)の溝25を成形する。
【0049】
上記工程を経て、外被布24が被覆された搬送用ベルト2の外周側に、ベルト周長方向に沿って、ベルト幅方向の断面視が凹形状(半楕円)の溝25が一体成形された複数の搬送用ベルト2が製造される。
【0050】
上記構成の搬送用ベルト2によれば、搬送用ベルト2(ゴム層21)の搬送物が接する面側に凹形状をした溝25を一体成形していることから、搬送面に凹部を付けるために別個スポンジ等を用意して、ゴム層に貼り付ける場合に比べて、スポンジ等を貼り付ける工程を省略できる分生産性を向上させることができる。また、スポンジ等をゴム層に貼り付ける場合には、張り付けた面の接着力にバラツキ・ムラが生じ、搬送軌道が安定しなくなったり、剥離の原因となってしまうおそれがあったが、上記構成では、凹形状をした溝25はゴム層21に一体成形されていることから、左記おそれもなく、搬送軌道の安定化及び搬送用ベルト2の長寿命化を実現することができる。
【0051】
また、搬送物が接する面側に、凹形状をした溝25を配置していることから、搬送物が、柔軟性があるものや、球形状のものや、不定形状のものであっても、搬送物を搬送面から落とさず、安定して搬送することができる。また、プレス加工により凹形状の溝25を形成する際には、凹形状に対応する凸部が形成されたプレス盤を用意・使用するだけでよく、ゴム層に凸形状を形成する際に凸形状に対応する凹形状のプレス盤を用意・使用する場合に比べて、品質管理が容易であり、量産に適した構成にすることができる。
【0052】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、図5に示すように、心線層22は、搬送用ベルト2のベルト厚みの中央よりも内周側に、心線23が一列に配列されるようにしているが、これに限らず、図11に示すように、心線層122は、搬送用ベルト102のベルト厚みの中央よりも内周側に、上記実施形態の心線23よりも線径が小さい心線123が複数列(図11では3列)に亘って配列されるように形成してもよい。なお、図11に示すように、搬送用ベルト102では、心線123が3列に亘って配列された心線層122が、搬送用ベルト102の底部に積層されており、心線層122の厚み(s)は、最大10mmとしている。
【0053】
また、上記実施形態の搬送用ベルト2では、溝25の表面を被覆している外被布24の表面に、凹凸形状の模様が形成された構成をしているが、これに限らず、溝25の表面には、外被布24ではなく、表面に凹凸形状の模様が形成された、ゴム製の模様層28が積層されていてもよい。このゴム製の模様層28には、低硬度ゴム(ゴム硬度A35~65/JIS K 6253)を採用しており、その表面に、高さが0.2mm~5mmの突起物241を無数に有することにより、凹凸形状の模様を形成している(図6参照)。この凹凸形状の模様の形成例としては、シボ加工(エンボスemboss)が挙げられる。このシボ加工で形成されるシボ模様は多種多様であり、その例を図12に例示している。
【0054】
上記構成によれば、溝25の表面に、表面に凹凸形状の模様が形成されたゴム製の模様層が積層されていることから、搬送物に対するグリップ力(摩擦力)を高め、搬送物が、搬送用ベルトからずれ落ちたりすることを防止することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、搬送用ベルト2の両側面にも外被布24が被覆されたラップドVベルトを例示して説明したが、搬送用ベルト2としては、図13に示す、ローエッジVベルトのように、その両側面に外被布24が被覆されていない構成でもよい。また、搬送用ベルト2としては、Vベルトに限らず、平ベルトやVリブドベルトなど多種多様のベルトを採用することができる。
【実施例
【0056】
次に、図14に示す搬送用ベルトの各所寸法を様々に変更した、表3~表5に示す実施例1~12、参考例、及び、比較例の搬送用ベルトを作製した。そして、作製した各種搬送用ベルトを、図15に示す搬送装置に巻き掛け、動的機能評価を行った。具体的には、図15に示すように、各種搬送用ベルトを巻き掛けた搬送装置を使用して、100個の芽キャベツを搬送するテストを行い、芽キャベツが搬送され、回収バケットに回収されるまでの態様を評価した。例えば、搬送途中での芽キャベツの取りこぼし(図15参照)の割合、搬送物(芽キャベツ)のつぶれの割合、挟持部での芽キャベツの受け取り漏れ(図15参照)の割合、回収バケットへの芽キャベツの受け渡し漏れ(図15参照)の割合を評価した。なお、上記各種搬送用ベルトを巻き掛けた搬送装置を使用した動的機能評価の評価条件を、表2に示す。
【0057】
また、表3~表5の各搬送用ベルトの判定(評価)において、4つの評価(割合)の全項目が3%未満(0~2%)の場合「◎」と判定した。4つの評価のうち3%以上の項目が少なくとも1つある場合「○」と判定した。4つの評価のうち10%以上の項目が少なくとも1つある場合「△」と判定した。4つの評価のうち50%以上の項目が少なくとも1つある場合「×」と判定した。
【0058】
(評価条件)
【表2】
【0059】
(w/W=90%での評価:搬送用ベルトの厚み方向の心線の位置を一定として、溝の深さ(t)を変量した場合)
【表3】
【0060】
・溝がない(t=0)の「比較例」は、芽キャベツをほとんど搬送できず使用不可能な結果であった。
・参考例は溝があっても小さすぎた(t=1mm)ために、搬送機能が不充分であった。
・「実施例1」「実施例2」「実施例3」は搬送機能を十分に満足していた。
・「実施例4」は他の実施例1~3に比べ溝が深くて、搬送用ベルトと芽キャベツとの挟持接点が少ないため、芽キャベツの受け取り及びバケットへの受け渡し(投げ送り)が安定しなかったが、使用可能なレベルであった。
【0061】
(w/W=50%での評価:搬送用ベルトの厚み方向の心線の位置を一定として、溝の深さ(t)を変量した場合)
【表4】
【0062】
・「実施例5」「実施例6」「実施例7」は搬送機能を十分に満足していた。
・「実施例8」は他の実施例5~7に比べて溝が深くて、搬送用ベルトと芽キャベツとの挟持接点が少ないため、芽キャベツの受け取り及びバケットへの受け渡し(投げ送り)が安定しなかったが、使用可能なレベルであった。
【0063】
(w/W=70%での評価:溝の深さ(t)を一定(t=4.2mm)にして、搬送用ベルトの厚み方向の心線の位置を変量した場合)
【表5】
【0064】
・「実施例9」「実施例10」「実施例11」は搬送機能を十分に満足していた。
・「実施例12」は他の実施例9~11に比べ心線位置が搬送用ベルトの内周側にあるため、プーリへの巻き付け性(搬送用ベルトの屈曲性)が良くなかったが、使用可能なレベルであった。
【符号の説明】
【0065】
1 搬送装置
2・2´ 搬送用ベルト
21 ゴム層
22 心線層
23 心線
24 外被布
25 溝
3・3´ 駆動プーリ
4・4´ 従動プーリ
5・5´ 中間プーリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図14
図15