(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】計測校正装置
(51)【国際特許分類】
G01P 21/02 20060101AFI20220329BHJP
G01P 3/64 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G01P21/02
G01P3/64 Z
(21)【出願番号】P 2018188683
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】谷本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】金澤 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】松尾 太郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏和
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-79874(JP,A)
【文献】特開平10-153948(JP,A)
【文献】実開平6-86012(JP,U)
【文献】特開昭49-55370(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104627187(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103863358(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P21/00-21/02
G01P 3/00- 3/80
G01D18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度及び距離を計測する車載機器を校正するための計測校正装置であって、
直線状に配される直線レール部と、
前記直線レール部の直線性を検知する直線検知部と、
前記直線レール部上を走行する走行体と、
前記走行体が、前記直線レール部の第1計測端部と、前記第1計測端部の反対側の第2計測端部を通過したことを検知する走行検知部と
前記第1計測端部及び前記第2計測端部の2点間の基準距離を検知する距離検知部と、
を備え
、
前記走行体に前記車載機器が設置される
ことを特徴とする計測校正装置。
【請求項2】
前記直線レール部の水平を検知する第1水平検知部と、
前記直線レール部と直交するレール直交方向の水平を検知する第2水平検知部が備えられる請求項1に記載の計測校正装置。
【請求項3】
前記走行検知部に前記走行体の速度を計測する計測演算部が接続される請求項1または2に記載の計測校正装置。
【請求項4】
前記走行体を走行させるモータ部が前記直線レール部の前記第1計測端部または前記第2計測端部に備えられ、前記直線レール部に近接してベルト部が架設され、前記モータ部の回転が前記ベルト部に伝達されて前記走行体が前記直線レール部上を走行する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の計測校正装置。
【請求項5】
前記直線レール部が平行な2本のレール部からなり、前記平行な2本のレール部上を前記走行体が走行する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の計測校正装置。
【請求項6】
前記走行検知部における前記走行体の走行の検知が光電センサを介した検知である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の計測校正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測校正装置に関し、特に車載用の速度及び距離の計測装置を校正するための校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の速度の基準を計測としては、車両を例えば40km/hの一定速度に維持し、当該速度のまま50mの校正用の所定区間内を直進走行することにより、基準となる速度計測を実施する校正方法があった。
【0003】
当該計測において、実際に乗用車等の車両を運転するため、運転手ごとのばらつきが生じていた。また、毎回の計測において常に規定の速度を維持することは難しい。計測用のテストコースであるとしても、まっすぐに走行することは容易ではない。さらに、環境要因による影響も無視できない。このようなことから、総じて実際の乗用車を用いた計測では、個々の計測ごとに再現性が伴わないことが生じている。
【0004】
そこで、実際の車両の位置、移動距離等の計測精度を高めるべく、測位衛星から送信されるGPSデータにより補正する技術が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、これらの特許文献に開示の装置、方法であっても、現実の車両を露天下において走行させることに変わりはなく、本質的に、前述の問題点を克服するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-170124号公報
【文献】特開2007-57242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなことから、乗用車等を実際に走行させて速度及び距離を計測する機器を校正する手法の代替となるより正確かつ簡便であり、再現性の高い計測の手法が求められている。特に、今後乗用車等の自動運転においては、正確な車両走行を実現する必要性から、基準となる校正手法の重要性はよりいっそう高まっている。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みなされたものであり、従前の乗用車等による実際の走行に依存した校正から脱却し、簡便ながらも精度良く、再現性に優れた速度の計測と校正を実現する計測校正装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第1の態様の計測校正装置は、直線状に配される直線レール部と、直線レール部の直線性を検知する直線検知部と、直線レール部上を走行する走行体と、走行体が、直線レール部の第1計測端部と、第1計測端部の反対側の第2計測端部を通過したことを検知する走行検知部と、第1計測端部及び第2計測端部の2点間の基準距離を検知する距離検知部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第2の態様の計測校正装置は、直線レール部の水平を検知する第1水平検知部と、直線レール部と直交するレール直交方向の水平を検知する第2水平検知部が備えられることを特徴とする。
【0010】
第3の態様の計測校正装置は、走行検知部に走行体の速度を計測する計測演算部が接続されることを特徴とする。
【0011】
第4の態様の計測校正装置は、走行体を走行させるモータ部が直線レール部の第1計測端部または第2計測端部に備えられ、直線レール部に近接してベルト部が架設され、モータ部の回転がベルト部に伝達されて走行体が直線レール部上を走行することを特徴とする。
【0012】
第5の態様の計測校正装置は、直線レール部が平行な2本のレール部からなり、平行な2本のレール部上を前記走行体が走行することを特徴とする。
【0013】
第6の態様の計測校正装置は、走行検知部における走行体の走行の検知が光電センサを介した検知であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の計測校正装置によると、直線状に配される直線レール部と、直線レール部の直線性を検知する直線検知部と、直線レール部上を走行する走行体と、走行体が、直線レール部の第1計測端部と、第1計測端部の反対側の第2計測端部を通過したことを検知する走行検知部と、第1計測端部及び第2計測端部の2点間の基準距離を検知する距離検知部とを備えるため、人の運転による乗用車等による実際の走行に依存した校正手法から脱却し、簡便ながらも精度良く、再現性に優れた速度の計測と校正を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の計測校正装置の全体斜視図である。
【
図2】第1計測端部近傍の走行体の走行検知状態を示す上面図である。
【
図3】第2計測端部近傍の走行体の走行検知状態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態の計測校正装置1では、
図1の全体斜視図に示されるように、直線状に配される直線レール部10(直動レール)と、この上を走行する走行体2が備えられる。そこで、走行体2が所定距離(2点間距離)を走行する際に要した時間から、走行体2の走行速度が求められる。当該計測校正装置1から把握されるように、走行体2が長尺の直線レール部10上の走行検知部23の2点間の走行を繰り返すことにより、比較的単純な構成でありながらも容易かつ簡便に速度の計測が可能である。そのため、実際の車両の運転に伴う走行速度のばらつきの問題は生じにくい。そこで、計測校正装置1を利用して車載用の速度計等の機器の校正精度は高められる。
【0017】
当該実施形態の直線レール部10は2本のレール部11,12から構成される。2本のレール部11,12が配置されることにより、走行体2の走行時、走行体2の左右方向のぶれは解消されるため走行は安定する。直線レール部10(レール部11,12)は、14ないし16mの全長である。レール部11及び12は平行に配置される。直線レール部10(レール部11,12)は、公知の鋼材により形成される。直線レール部10の両端部分(両端部分の近傍)は、その一側となる第1計測端部21と、第1計測端部21とは逆の他側(反対側)の第2計測端部22となる。
【0018】
第1計測端部21は直線レール部10の一方の端部領域であり、走行検知部23の一方である第1走行検知部24が設置される。第2計測端部22は直線レール部10の他方の端部領域であり、走行検知部23の他方である第2走行検知部25が設置される。
【0019】
図示の実施形態では、直線検知部15は直線レール部10の第1計測端部21の近傍に設置される。直線検知部15は直線レール部10(個々のレール部11,12)の直線性を検知する。具体的には、レーザー墨出し器が直線検知部15として好ましく用いられる。直線検知部15とレール方向反射ミラー(図示せず)との間にレーザー光が照射される。そして、レーザー光の直下の個々のレール部11,12の長さ方向の歪み、ずれがレーザー光を基準に補正される。
【0020】
さらに、直線レール部10の設置時の歪みは直線検知部15による直線方向に加え他の方向についても補正される。具体的には、第1水平検知部31と第2水平検知部36が備えられる。第1水平検知部31は直線レール部10(2本のレール部11,12)の長さ方向の水平を検知する。第2水平検知部36は直線レール部10(2本のレール部11,12)と直交するレール直交方向の水平を検知する。
【0021】
第1水平検知部31としては、公知のXY軸ステージ、αβ軸ゴニオステージ等の検知器が用いられる。一般的には、レーザー距離計32と反射板33が組み合わせられる。第1水平検知部31により、直線レール部10自体の水平の調整、レール部11とレール部12の相互間の幅(平行)の調整、さらには、長さの調整も行われる。第2水平検知部36としては、水平調整器が用いられる。第2水平検知部36は、直線レール部10(2本のレール部11,12)の直下に敷かれた複数の枕木13のそれぞれに設置される。
【0022】
実施形態の例から把握されるように、直線レール部10の2本のレール部11,12に関する、直線性、平行具合、設置時の水平具合の調整が可能となる。特に、直線レール部10の2本のレール部11,12を屋内または屋外に計測場所に設置する際の設置の誤差の解消に役立つ。
【0023】
走行体2は、直線レール部10の2本のレール部11,12の直上に載置される。走行体2には、適宜の車輪(図示せず)等が設けられ、走行体2は摺動抵抗なくレール部11,12上の第1計測端部21(第1走行検知部24)と第2計測端部22(第2走行検知部25)の2点間を走行(通過)する。
【0024】
走行体2の走行に際しては、走行体2自体にモータを搭載して自走させてもよい。実施形態は自走方式ではなく、モータ部40は直線レール部10の外部に設置される。
図2の上面図から理解されるように、モータ部40は直線レール部10の第1計測端部21側、さらには、直線検知部15(レーザー墨出し器)の外側に設置されている。むろん、モータ部40の設置は第2計測端部22側としてもよい。モータ部40は公知の直流モータであり、ギア変速器41が組み合わせられる。また、エンコーダ(図示せず)もモータ部40に適式に接続される。
【0025】
走行動力の伝達に際しては、ベルト部42が用いられる。ベルト部42はタイミングベルトであり、直線レール部10に近接して架設される。
図2に示されるように、第1計測端部21側のベルト部42はギア変速器41に架設される。
図3に示されるように、第2計測端部22側のベルト部42はプーリ43に架設される。
図2及び
図3の図示のとおり、ベルト部42は、レール部11,12の内側に循環可能に架設される。走行体2の下部にベルト接続部3が備えられ、ベルト接続部3を介してベルト部42に接続される。そこで、モータ部40の回転により、ベルト部42は移動する。ベルト部42の移動に伴いベルト接続部3も移動する。結果、ベルト接続部3が設けられている走行体2はレール部11、12に沿って走行する。
【0026】
走行体2の走行態様は、加速、減速、定常(等速、定速)であり、種々の速度設定が可能である。こうして、走行体2は直線レール部10の上を第1計測端部21側から第2計測端部22側へ、また、第2計測端部22側から第1計測端部21側へ走行できる。走行体2の走行方向の変換はモータ部40における回転方向の逆転により容易である。計測に際し、走行体2は、例えば、40km/hの速度に設定され走行する。
【0027】
走行体2が直線レール部10(2本のレール部11,12)上を走行する際の走行体2の検知には、走行検知部23が用いられる。図示の実施形態では、第1走行検知部24は第1水平検知部31と一体化され、第2走行検知部25も第1水平検知部31と一体化されている。第1走行検知部24には、ステージ37が備えられ、このステージ37上に距離及び通過の基準となる基準線26が設けられる。同様に、第2走行検知部25にも、ステージ38が備えられ、このステージ38上にも距離及び通過の基準となる基準線26が設けられる。そして、走行体2には光電センサ50が備えられる。
【0028】
走行体2の光電センサ50が基準線26を通過する都度、電気信号の変化が検知される。結果、走行体2の通過の時刻及び時間差が検知される。なお、光電センサの発光素子と受光素子は、走行体2と走行検知部23のいずれとしても良い。光電センサを用いるため、鋭敏かつ正確な検知が可能である。走行検知部23(第1走行検知部24及び第2走行検知部25)には計測演算部6が接続される。走行検知部23における光電センサ50を介した通過検知の信号は、信号線7を通じて計測演算部6に送信される。そこで、計測演算部6において、走行体2の通過の通過時刻、距離から速度が算出される。計測演算部6には、公知のパーソナルコンピュータ等が使用される。
【0029】
そこで、第1計測端部21及び第2計測端部22の2点間の正確な距離が検知される。これにより、走行検知部23の第1走行検知部24と第2走行検知部25の間の正確な距離が計測される。図示では、距離検知部27は第1計測端部21に設置されるレーザー距離計である。そして、第2計測端部22にレーザー距離計に対応する反射板28が設置される。第1計測端部21からレーザー光が照射され、反射板28により反射される。そして、反射されたレーザー光を第1計測端部21に設けられた受光素子により受光する。レーザー光の出射から受光までに要した時間により、第1計測端部21のレーザー光の出射口と反射板28との間の距離は検知される。
【0030】
これより、
図2及び
図3の平面時を用い、第1走行検知部24と第2走行検知部25における走行体2の通過検知について説明する。
図2では、ベルト部42が紙面の矢印D1の向きに移動し、これに連動して走行体2も紙面の矢印D2の向きに走行している。図示では、当該走行体2の光電センサ50が第1走行検知部24のステージ37上の基準線26を通過した瞬間を示している。走行体2の通過時の電気信号の変化は信号線7により計測演算部6に送信される。なお、計測演算部6への送信は図示の有線に加えて無線送信とすることもできる。
【0031】
図3においても、ベルト部42が紙面の矢印D1の向きに移動し、これに連動して走行体2も紙面の矢印D2の向きに走行している。図示では、これから走行体2の光電センサ50が第2走行検知部25のステージ38上の基準線26を通過しようとして接近しつつある瞬間である。この後、光電センサ50が基準線26を通過すると、走行体2の通過が検知される。
【0032】
第1走行検知部24の基準線26と第2走行検知部25の基準線26との間の距離は正確に計測されている。そこで、当該基準線同士の2点間の通過時刻または時間差が取得され速度が求められる。走行条件を変えながら走行体2の走行を繰り返すことにより、基準との比較可能なデータが収集される。このように、走行体2を高精度かつ微調整された直線レール部10上を走行させることにより、正確な速度データが取得できるため、実際の車両走行を用いた速度計測に見られるような、種々のばらつき発生等の問題は解消される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の計測校正装置は、比較的簡便な構成の装置しながらも、例えば車載用の速度計等の機器を校正することができる。このことから、既存の車両走行に依存した計測に代替するとして有望である。
【符号の説明】
【0034】
1 計測校正装置
2 走行体
3 ベルト接続部
6 計測演算部
7 信号線
10 直線レール部
11,12 レール部
13 枕木
15 直線検知部
21 第1計測端部
22 第2計測端部
23 走行検知部
24 第1走行検知部
25 第2走行検知部
26 基準線
27 距離検知部
28 反射板
31 第1水平検知部
32 レーザー距離計
33 反射板
36 第2水平検知部
37,38 ステージ
40 モータ部
41 ギア変速器
42 ベルト部
50 光電センサ