(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】赤外波長域用染料系偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220329BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220329BHJP
C09B 23/01 20060101ALI20220329BHJP
C09B 33/28 20060101ALI20220329BHJP
C09B 23/08 20060101ALI20220329BHJP
C09B 5/62 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
C09B23/01
C09B33/28
C09B23/08
C09B5/62
(21)【出願番号】P 2018550297
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2017040789
(87)【国際公開番号】W WO2018088558
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2016221165
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 典明
(72)【発明者】
【氏名】樋下田 貴大
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219552(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171218(WO,A1)
【文献】特開2001-249227(JP,A)
【文献】特表2002-528758(JP,A)
【文献】特開2009-104062(JP,A)
【文献】特開平07-072332(JP,A)
【文献】特開2015-045710(JP,A)
【文献】特開2013-195504(JP,A)
【文献】特開2016-090715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0170117(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0013122(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
C09B 23/01
C09B 33/28
C09B 23/08
C09B 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外域に吸収を有する染料を含有する延伸されたフィルムであって、該フィルムが赤外域において二色性を有し、
波長700nm~1000nmにおける二色比が5以上である
染料系偏光板
であって、片面又は両面に透明保護層を備える染料系偏光板。
【請求項2】
前記染料の最大吸収波長が700~1500nmにある請求項1に記載の
染料系偏光板。
【請求項3】
前記染料が、アゾ化合物、アンスラキノン化合物、及びシアニン化合物からなる群より選択される請求項1又は2に記載の
染料系偏光板。
【請求項4】
前記染料が、水溶性染料である請求項1~3のいずれか一項に記載の
染料系偏光板。
【請求項5】
前記フィルムの基材が親水性高分子である請求項1~4のいずれか一項に記載の
染料系偏光板。
【請求項6】
前記親水性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂である請求項5に記載の
染料系偏光板。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の
染料系偏光板を備える液晶表示装置、センサ、レンズ、スイッチング素子、アイソレータ、又はカメラ。
【請求項8】
赤外域に吸収を有する染料の、フィルムに含有され、該フィルムを延伸することによって二色性を発現させた
染料系偏光板への使用方法であり、
波長700nm~1000nmにおける前記二色性の二色比が5以上であ
り、前記染料系偏光板が片面又は両面に透明保護層を備える、使用方法。
【請求項9】
前記染料の最大吸収波長が700~1500nmにある請求項
8に記載の使用方法。
【請求項10】
前記染料が、アゾ化合物、アンスラキノン化合物、及びシアニン化合物からなる群より選択される請求項
8又は9に記載の使用方法。
【請求項11】
前記染料が、水溶性染料である請求項
8~10のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項12】
前記
染料系偏光板が液晶表示装置、センサ、レンズ、スイッチング素子、アイソレータ、又はカメラ用である、請求項
8~11のいずれか一項に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外波長域用染料系偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光の透過・遮へい機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)等の表示装置に用いられる。このLCDの適用分野も初期の頃の電卓及び時計等の小型機器から、ノートパソコン、ワープロ、液晶プロジェクター、液晶テレビ、カーナビゲーション、及び屋内外の情報表示装置、計測機器等が挙げられる。また偏光機能を有するレンズへの適用も可能であり、視認性の向上したサングラスや、近年では3Dテレビなどに対応する偏光メガネなどへの応用がなされている。
【0003】
一般的な偏光板は、延伸配向したポリビニルアルコール又はその誘導体のフィルムあるいは、ポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸又はポリビニルアルコール系フィルムの脱水によりポリエンを生成して配向させたポリエン系のフィルムに、ヨウ素や二色性染料を染色又は含有させて製造される。これらのうち、ヨウ素を用いたヨウ素系偏光板は、偏光性能には優れ、一方、二色性染料を用いた染料系偏光板はヨウ素系偏光板に比べ、耐湿性及び耐熱性は優れる。そういった一般的に使用されている偏光板は、すべて可視波長域向けの偏光板であって、赤外波長域向けの偏光板ではなかった。
【0004】
近年では、タッチパネル向け認識光源や防犯カメラ、センサ、偽造防止、通信機器等の用途において、可視波長域向けの偏光板だけでなく、赤外線域に用いられる偏光板が求められている。赤外域の光線の液晶機能を応用した光の導波路やスイッチング、赤外域の光線の反射防止などの目的に使用される。そういった要望に対して、特許文献1のようにヨウ素系偏光板をポリエン化した赤外偏光板や、特許文献2又は3のようなワイヤーグリットを応用した赤外偏光板や、特許文献4のような微粒子を含んだガラスを延伸した赤外偏光子や、特許文献5又は6のようなコレステリック液晶を用いた偏光子が報告されている。特許文献1の方法では耐久性が弱く、耐熱性や湿熱耐久性、及び耐光性が弱く実用性に至っていない。特許文献2又は3のようなワイヤグリッドタイプは、フィルムタイプにも加工が可能であると同時に、製品として安定していることから普及が進みつつあるものの、しかしながら、表面にナノレベルの凹凸がないと光学特性を維持でないことから、表面に触れてはならず、そのため使用される用途は制限され、さらには反射防止や防呟(アンチグレア)加工をすることが難しい。また、ナノレベルの加工が要求されるため、大面積で作ることが難しく、非常に高価である。特許文献4のような微粒子を含んだガラス延伸タイプは高い耐久性を有し、高い二色性を有していることから実用性に至っており、今後、成長していく分野であると言われている。しかしながら、微粒子を含みながら延伸されたガラスであるため、ガラス板と言えど素子そのものが割れやすく、もろく、かつ、従来の偏光板のような柔軟性が無いために表面加工や他の基板との貼合が難しいという問題点があった。特許文献5及び特許文献6の技術は、古くから公開されている円偏光を用いた技術ではあるが、視認する角度によって色が変わってしまうことや、基本的に、反射を利用した偏光板であるため、迷光を発生し、絶対偏光光を形成させることが難しかった。つまり、一般的なヨウ素系偏光板や染料系偏光板のように吸収型偏光素子であって、フィルムタイプで柔軟性があり、かつ、高い耐久性を有する赤外線波長域に対応した偏光板は無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第2,494,686号明細書
【文献】特開2016-148871号公報
【文献】特開2013-24982号公報
【文献】特開2004-86100号公報
【文献】国際公開第2015/087709号
【文献】特開2013-64798号公報
【文献】特開昭59-25293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、赤外波長域の光線に対して機能する高性能な偏光板、及びこれを備える液晶表示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、赤外域に吸収を有する染料を含有する延伸されたフィルムが赤外波長の光線に対して偏光板として機能することを新規に見出した。
【0008】
すなわち本発明は、以下の(1)~(13)に関する。
(1) 赤外域に吸収を有する染料を含有する延伸されたフィルムであって、該フィルムが赤外域において二色性を有する偏光板。
(2) 前記染料の最大吸収波長が700~1500nmにある(1)に記載の偏光板。
(3) 前記染料が、アゾ化合物、アンスラキノン化合物、及びシアニン化合物からなる群より選択される(1)又は(2)に記載の偏光板。
(4) 前記染料が、水溶性染料である(1)~(3)のいずれかに記載の偏光板。
(5) 前記フィルムの基材が親水性高分子である(1)~(4)のいずれかに記載の偏光板。
(6) 前記親水性高分子が、ポリビニルアルコール系樹脂である(5)に記載の偏光板。
(7) 片面又は両面に透明保護層を備える(1)~(6)のいずれかに記載の偏光板。
(8) (1)~(7)のいずれかに記載の偏光板を備える液晶表示装置、センサ、レンズ、スイッチング素子、アイソレータ、又はカメラ。
(9) 赤外域に吸収を有する染料の、フィルムに含有され、該フィルムを延伸することによって二色性を発現させた偏光板への使用方法。
(10) 前記染料の最大吸収波長が700~1500nmにある(9)に記載の使用方法。
(11) 前記染料が、アゾ化合物、アンスラキノン化合物、及びシアニン化合物からなる群より選択される(9)又は(10)に記載の使用方法。
(12) 前記染料が、水溶性染料である(9)~(11)のいずれかに記載の使用方法。
(13) 前記偏光板が液晶表示装置、センサ、レンズ、スイッチング素子、アイソレータ、又はカメラ用である、(9)~(12)のいずれかに記載の使用方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、赤外波長域の光線に対して機能する高性能な偏光板、及びこれを備える液晶表示装置等を提供することができる。本発明に係る偏光板は、従来の偏光板と同様な取扱いが可能な赤外波長域の光線向け偏光板であって、柔軟性があり、物理的に安定で、吸収型偏光素子であるために迷光が発生せず、かつ、高い耐候性(耐熱性、耐湿熱性、耐光性)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、赤外域に吸収を有する染料を、フィルムを延伸することで配向させ、赤外域(又は、赤外波長域、並びに赤外線波長域とも記載する)の吸収の異方性(いわゆる二色性)を発現させるものである。赤外域、赤外波長域、赤外線波長域とは700nm~30000nmを指すが、本発明で得られる赤外域を吸収することによって成す二色性染料を含有した偏光板は、近赤外線の偏光板として機能する。近赤外線の波長とは700nm~1500nmの波長を指し、本発明によって該波長の偏光板を作製できるが、好ましくは700nm~1100nm、より好ましくは750nm~1000nmの偏光板が特に好適に用いることが出来る。吸収の異方性である二色比は5以上あればセンサ等で用いることが出来るが、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上、特に好ましくは100以上が良い。
【0011】
用いるフィルムの基材としては、親水性である高分子を用いたフィルムと熱可塑性である高分子を用いたフィルムとがあるが、それぞれにおいて赤外域に吸収を有する二色性染料を、フィルム中に含有し、配向させることは同じである。しかしながら、それぞれにおいて、偏光板に加工の方法が異なる。
【0012】
まず、親水性高分子に赤外域に吸収を有する二色性染料を含有させ、該二色性染料を配向させ、赤外波長域の光線に対する偏光板の作製方法を示す。
【0013】
親水性高分子は特に限定するものでないが、水との親和性が高いフィルムを指す。例えば、媒体としての水に浸漬若しくは接触させた時、水を含む、若しくは、膨潤するフィルムを指す。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸塩系樹脂、及び、それら誘導体などが用いることが出来る。それら樹脂よりなるフィルムに赤外線波長域に吸収を有する二色性染料を含有させ、フィルムを延伸することによって二色性染料を配向させ、偏光板を得る。二色性染料を含有させ、架橋させることなどを考慮するとポリビニルアルコール系樹脂よりなるフィルムが最も好ましい。
【0014】
上記偏光板は、従来の偏光板方法により製造することができるが、例えば染料を含有するポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光板の場合、まず、ポリビニルアルコール系フィルムを温水等で膨潤させた後、赤外域に吸収を有する染料を水1000重量部に対して0.01~10質量部が含有した水溶液を作製し浸漬させることによって、染料を親水性高分子に含有させる。二色性染料を溶解した染色槽に浸漬し、該フィルムを染色し、ついで、硼酸や硼砂といった架橋剤を含む槽で一軸方向に2~8倍延伸し、乾燥させることにより、該偏光素子を得ることができる。偏光板の性能は二色性染料の持つ二色性や延伸時の延伸倍率等で調整することができる。
【0015】
染料を含有させる方法は、前述の記載のように親水性高分子を、二色性染料が含有している水溶液に浸漬して染料を含有させる方法があるが、一方で、親水性高分子にあらかじめ染料を含有させておき、延伸する方法をとることも出来る。この方法は、親水性高分子に染料を含有させておいた樹脂組成物を、フィルムに形成したのち、フィルムに形成されたものを延伸することによって得ることが出来る。親水性高分子に染料を含有させる方法は、例えば、ポリビニルアルコールが水に対して8~12%溶融した水溶液に、二色性染料を該水溶液の固形分に対して0.01~10%含有させ、その水溶液をキャスト製膜し、溶媒である水を蒸発させることによって、染料が含有しているフィルムを得る。得られたフィルムを、延伸することで偏光板を得ることが可能となる。
【0016】
得られたフィルムの延伸には、温水や、一般的な偏光板の製造方法である延伸加工方法であるホウ酸を含む水溶液中で延伸する方法もとられうるが、一方で、乾式延伸法も適用できる。乾式延伸は、フィルムに熱をかけ、その熱によって柔らかくなった状態の時、延伸を適用するものである。乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が大気(空気)、若しくは窒素などのガス中で延伸が可能であり、温度は常温~200℃で延伸するのが好ましいが、樹脂の成型温度に応じて変えて延伸加工を行うことが必要である。また、湿度は10~95%RHの雰囲気中で処理するのが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法はフィルムに熱が伝導し、延伸が可能であれば、その方法が限定されるものではない。延伸倍率は、2倍から8倍で延伸されることが良いが、各樹脂で延伸出来る倍率、及び、染料を配向出来る延伸倍率で調整しても良い。延伸処理は1段で行っても良く、2段処理以上の多段処理を行っても良い。
【0017】
次に、熱可塑性高分子に赤外域に吸収を有する二色性染料を含有させ、該二色性染料を配向させ、赤外波長域の光線に対する偏光板の作製方法を示す。
【0018】
熱可塑性高分子は特に限定するものでないが、熱を加えた時に可塑状態になる(柔らかくなる物性を有する)高分子を指す。それを製膜したものが熱可塑性高分子フィルムである。熱可塑性高分子は、透明性が高い方が好ましく、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、PMMAなどのアクリル樹脂などが挙げられるがその限りではない。それら樹脂よりなるフィルムに染料を含有させ、延伸し、二色性を有する偏光板を得る。
【0019】
熱可塑性高分子は、あらかじめ染料が含有されている状態で製膜され、その得られたフィルムを延伸する方法をとる。この方法は、熱可塑性高分子に染料を混ぜて混練し、それを溶融製膜してフィルムとし、その得られたフィルムを延伸することで偏光素子を得る。若しくは、溶媒に熱可塑性樹脂組成物を溶解させ、その溶解液に染料も溶解し、それをキャスト製膜し、溶媒を蒸発させることによってフィルムとし、得られたフィルムを延伸することで偏光素子を得る。熱可塑性高分子を用いた先染め法の作り方は、特に限定しないが、例えば、熱可塑性樹脂に染料を樹脂に対して0.01~5%、好ましくは0.05%~2%、さらに好ましくは0.1%~1%含有させ、その樹脂混合物を溶融混練し、溶融製膜してフィルムとし、得られたフィルムを延伸することで偏光板を得る。又は、例えば、熱可塑性樹脂を溶媒にて溶解させ、染料を樹脂に対して含有させ、樹脂組成物を、キャスト製膜して、溶媒を乾燥させてフィルムを得て、得られたフィルムを延伸することで偏光板を得ることが可能である。
【0020】
得られたフィルムには、一般的な偏光板の製造方法である湿式延伸方法(高温溶媒中で延伸)する方法も適用され得るが、熱可塑性樹脂の場合、一般的に乾式延伸法が適用される。乾式延伸は、フィルムに熱をかけ、その熱によって柔らかくなった状態の時、延伸を適用するものである。乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が大気(空気)、若しくは窒素などのガス中で延伸が可能であり、温度は常温~180℃で延伸するのが好ましい。また、湿度は20~95%RHの雰囲気中で処理するのが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、赤外線加熱延伸法などが挙げられるが、その延伸方法は熱が伝導し、延伸が可能であれば、その方法に限定されるものではない。延伸倍率は、2倍から8倍で延伸されることが良いが、各樹脂で延伸出来る倍率、及び、染料を配向出来る延伸倍率で調整しても良い。延伸処理は1段で行っても良く、2段処理以上の多段処理を行っても良い。
【0021】
本発明で用いる近赤外吸収染料の種類としてはフタロシアニン系、ナフタロシアニン系、金属錯体系、ホウ素錯体系、シアニン系、スクアリリウム系、ジイモニウム系、ジフェニルアミン・トリフェニルアミン類系、キノン系、アゾ系などが挙げられる。一般的にこれらの染料は既存のπ共役系を拡張することによって吸収波長を長波長化させており、その構造により多種多様な吸収波長を示す。また、多くは疎水性染料や顔料の形態をとるが、水溶性化することにより親水性染料として利用も出来る。
【0022】
そういった染料は、遊離形態であっても、塩の形態であってもよい。塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩などのアルカリ金属塩、又は、アンモニウム塩やアルキルアミン塩などの有機塩であり得る。塩は、好ましくは、ナトリウム塩である。
【0023】
本発明で用いる染料について、それぞれの染料についての具体例を以下に示す。
【0024】
フタロシアニン・ナフタロシアニン系は平面性構造を有し、広いπ共役面を有する染料である。一般式1のM1で示される中心金属により多様な吸収を示し、中心金属として一般的にはLi、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。金属酸化物としてはVO、GeO、TiO等が挙げられる。金属水酸化物としては例えば、Si(OH)2、Cr(OH)2、Sn(OH)2、AlOH等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては例えば、SiCl2、VCl、VCl2、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl、AlCl等が挙げられる。これらの中でもFe、Co、Cu、Ni、Zn、Al、V等の金属原子、VO等の金属酸化物、AlOH等の金属水酸化物等が好ましく、VO等の金属酸化物がより好ましい。通常は顔料として用いられるが、特開平2-167791号公報に記載の一般式1のように、水溶性基を付与することにより水へ溶解させることもできる。
【0025】
下記一般式1で表される染料は、例えば下記化合物例1で表される染料であることが好ましい。一般式1における破線の芳香環は、あってもなくてもよいことを意味する。化合物例1におけるp及びkは各々独立に0~12の整数を表し、p及びkの和が0~12であることを示し、特にpが1~4かつkが0であることが好ましい。
【0026】
【0027】
【0028】
キノン系は幅広い吸収を有する染料であり、一般式2のように表される染料である。Ar1、Ar2は芳香環若しくは複素環から構成される環状構造であることが望ましく、吸収波長の長波長化の為には複素環がより好ましい。例えば、特開昭61-221264号公報に記載されるようなアンスラキノン系染料が挙げられる。また、これらの環は置換基を有しても良く、例えば置換基を有しても良いアミノ基、ニトロ基、スルホ基、アルキル基、アルコキシ基、スルホ基を有するアルキル基、水酸基を有するアルキル基等が挙げられる。Xは酸素原子又は窒素原子であることが好ましい。多くの構造が疎水性構造をとるが、水溶性基を付与することにより水への溶解が可能なものも報告されている。例えば、特表2006-508034号公報に記載されるようなインダンスロン染料が挙げられる。
【0029】
下記一般式2で表される染料は、例えば下記化合物例2で表される染料であることが好ましい。化合物例2におけるnは1~12の整数を表し、nが1以上の場合、それぞれのスルホン酸は遊離形態であっても、塩の形態であってもよく、あるいは遊離形態と塩の形態の両方を任意の割合で含んでいてもよい。
【0030】
【0031】
シアニン系は近赤外域に強い吸収を有する染料であり、一般式3、又は、一般式4で表される。Ar3~Ar6は複素環で表される。この複素環としては例えば、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環、チアゾリン環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ナフトオキサゾール環、オキサゾリン環、セレナゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトセレナゾール環、キノリン環などが挙げられる。好ましくはベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環が好ましい。それぞれの複素環は各々任意の置換基を有しても良く、水溶性基としてはスルホン酸基、水酸基、スルホン酸基を有するアルキル基、水酸基を有するアルキル基等が挙げられる。これらはAr3~Ar6の環状に置換していても良いし、複素環中の窒素原子上に結合しても良い。メチン鎖の数bは1~7であり、3~5が特に好ましい。このメチン鎖上の置換基Rを有しても良く、例えば置換基を有しても良いフェニル基等が挙げられる。一般式4中のAr7は炭素数5~7の環状骨格を表し、置換基Wはハロゲン、置換基を有してもよいフェニルアミノ基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基等が挙げられる。この場合の置換基が水溶性基を有してもよい。また、この染料は分子内塩型、又は分子間塩型であり、分子間塩型の場合、ハロゲン化塩、過塩素酸塩、フッ化アンチモン塩、フッ化リン塩、フッ化ホウ素塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタン)スルホン酸イミド塩、又はナフタレンスルホン酸などの有機塩等が挙げられる。具体的にはインドシアニングリーンや特開昭63-33477号公報に記載の水溶性染料等が挙げられ、例えば化合物例3~6が挙げられる。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
シアニン系と類似の構造であるスクアリリウム系は四角酸を中心骨格に持つ染料である。一般式5中のAr8、Ar9にはシアニン系と同様の複素環を有することが望ましい。また、この染料も分子内塩型、分子間型をとり、シアニン系と同様な塩の形をとる。この染料は本来疎水性構造であるが、シアニン系と同様に水溶性基を付与することにより、水への溶解を可能にする。
【0039】
【0040】
アゾ系は可視光域を吸収する染料であり、水溶性インクが主な用途であるが、吸収を広帯域化することにより、近赤外域まで吸収可能な染料が市販されている。例えば、一般的には特許第5979728号公報に記載の黒色インク作製の目的でC.I. Acid Black 2(オリヱント化学工業社製)、C.I. Direct Black 19(アルドリッチ工業社製)を使用する例などが挙げられる。また、これらアゾ系染料は金属と錯形成させることもできる。この場合、一般式6に記載のM2のように表され、中心金属はコバルト、ニッケル等が挙げられ、A1、B1はベンゼン環又はナフタレン環等の芳香環が例示され、より具体的には、特開昭59-11385号公報に記載の染料構造が好適である。
【0041】
【0042】
金属錯体系は、一般式7、一般式8のように表される。式中のM3、M4は金属を表し、Pd、Ni、Co、Cuが一般的であるが、Niが特に好ましい。R1、R2、R1’、R2’は任意の置換基を表すが、具体的にはハロゲン原子、スルホ基を有しても良いアルキル基、スルホ基を有しても良いアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、置換基を有しても良いフェニル基等が挙げられる。X1~X4は各々独立に窒素原子、酸素原子、硫黄原子を表す。
なお、X1~X4が窒素原子の場合、その窒素原子は、水素付加体であるNH、あるいは炭素数1~4のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基等で置換された窒素原子であっても良い。
【0043】
【0044】
【0045】
ホウ素錯体系は一般式9のように表され、特開2010-106248号公報に記載の染料構造が好適である。
【0046】
【0047】
一般式9において、R3、R4は水素原子、アルキル基、フェニル基が好ましく、R5は強い電子吸引性基、例えばニトロ基、シアノ基が好ましく、Ar10は置換基を有しても良いフェニル基が好ましく、Ar11は芳香環又は複素環から構成される環状構造であることが好ましく、吸収波長の長波長化のためには複素環がより好ましい。Yは硫黄原子又は酸素原子であることが好ましい。
【0048】
ジイモニウム系は近赤外域でも比較的長波長側(950~1100nm)に吸収を有する染料であり、一般式10のように表される。
【0049】
【0050】
一般式10において、R6~R13は置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有してもよい芳香環などが挙げられる。一般的には疎水性染料であるが、水溶性基が付与された特開2001-181184号公報に示される染料も開示されている。この染料も分子内塩、分子間塩型であり、分子間塩型の場合、Q-はハロゲン化イオン、過塩素酸イオン、フッ化アンチモンイオン、フッ化りんイオン、フッ化ホウ素イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタン)スルホン酸イミドイオン、又はナフタレンスルホン酸イオンなどが挙げられる。
【0051】
ジフェニルアミン・トリフェニルアミン類は一般式11、一般式12のように表される。
【0052】
【0053】
【0054】
一般式11におけるR14~R17、又は一般式12におけるR18~R23は各々独立に、水素原子、又は少なくとも1個の炭素原子を含むアルキル基であり、そのアルキル基は、任意に窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びハロゲン原子から選択される1個又は複数個のヘテロ原子を含み、1個以上の窒素原子はカチオンラジカルであり、前記1個以上のカチオンラジカルは、1個以上のアニオンによって電荷が平衡化されている。
【0055】
本願では、アンスラキノン類が好適に用いることが出来る。アンスラキノン類としては、例えば、一般式13のように表され、R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基等が挙げられる。R26は1~5の酸素原子を介していても良い直鎖又は枝分かれした1~16個の炭素を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリールオキシアルキル、炭素数1~12のアルキル又はアルコキシを置換基として有していても良いアリールを表し、Zは窒素原子、酸素原子、硫黄原子を表す。代表的な構造としては特許文献7に記載されている染料が挙げられる。なお、Zが窒素原子の場合、その窒素原子は、水素付加体であるNH、あるいは炭素数1~4のアルキル基、置換基を有しても良いフェニル基等で置換された窒素原子を示す。
【0056】
【0057】
本発明の偏光板は、上記により作製が可能である。ただし、一方で、上記の偏光板の片面に、若しくは両面に、保護するフィルムを接着剤や粘着剤を介して設けても良い。そういう保護フィルムを用いることで、物理的安定で、かつ、柔軟性の高いフィルムをえることが出来る。保護フィルムとしては、従来の偏光板の保護フィルムであるトリアセチルセルロースフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、シクロオレフィンフィルムなどを用いることが出来るが、透明、かつ、複屈折が少なく位相差が発生しにくいフィルムを用いることが好適である。熱可塑性樹脂よりなるフィルムの場合には、すでに表面硬度が硬く、かつ、湿度による影響が受けにくいため、一般的なポリビニルアルコールフィルムを基材フィルムを用いた場合のようにTAC等の保護フィルムが無くても良好な表面性が得られることが多い。又は、直接、重合性樹脂組成物を設け、ハードコートや防眩性層、低反射層などを設けても良い。保護フィルムを設ける場合には、少なくとも片面に、通常は両面に、前記の保護フィルムを、両フィルムの間に前記の接着剤を介して、積層後、乾燥することによって得ることができる。乾燥の条件は用いる接着剤の濃度や保護フィルムの透湿度によっても異なるが、25~100℃で1~150分程度行うのが良い。
【0058】
さらに本発明の偏光板は、プリズムやガラスなどの無機基板、若しくは、プラスチック板等に貼合して基板として用いることも可能である。ガラスやプラスチック板の曲面に合わせて貼合することで、曲面形成等も可能となる。
【0059】
偏光板は場合によって、例えば液晶等の表示装置に貼り合わせる場合、後に非露出面となる保護層又はフィルムの表面に視野角改善及び/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層又はフィルムを設けることもできる。各種機能性層は、例えば、位相差を制御する層又はフィルムである。偏光板は、これらのフィルムや表示装置に、粘着剤により貼り合わされることが好ましい。
【0060】
偏光板は、保護層又はフィルムの露出面に、反射防止層、防眩層、及びハードコート層等の公知の各種機能性層を備えていてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せることもできる。
【0061】
本発明の偏光素子又は偏光板は、必要に応じて保護層又は機能層及びガラス、水晶、サファイア等の透明な支持体等を設け、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、カーナビゲーション、センサ、レンズ、スイッチング素子、アイソレータ、カメラ、及び、屋内外の計測器や車等の表示器等に適用される。本赤外線偏光板を設けた装置は、赤外域の波長に対して高耐久性を有し信頼性が高く、長期的に高コントラストを提供できるに至る。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0063】
[実施例1]
ケン化度99%以上の平均重合度2400のポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PS)を40℃の温水に3分浸漬し、膨潤処理を適用し延伸倍率を1.30倍とした。水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、無水芒硝を1.5質量部、赤外域に吸収を有するシアニン染料として式(1)に示されるFEW CHEMICAL社製 S2180を1.5質量部含有している45℃の染色液に、膨潤したフィルムを8分00秒間浸漬して、フィルムにアゾ化合物を含有させた。得られたフィルムを、ホウ酸(Societa Chimica Larderello s.p.a.社製)20g/lを含有した40℃の水溶液に1分浸漬した。浸漬後のフィルムを、5.0倍に延伸しながら、ホウ酸30.0g/lを含有した50℃の水溶液中で5分間の延伸処理を行った。得られたフィルムを、その緊張状態を保ちつつ、25℃の水に20秒間浸漬させることにより洗浄処理した。洗浄後のフィルムを70℃で9分間乾燥させ、偏光板を得た。この偏光板に対して、ポリビニルアルコール(日本酢ビポバール社製 NH-26)を4%で水に溶解したものを接着剤として用いて、アルカリ処理したトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム社製 TD-80U)をラミネートして保護フィルムを設けた偏光板を得た。得られた偏光板は保護フィルムを設ける前と同じ光学特性を有し、特に単体透過率、色相、偏光度等を維持していた。この偏光板を実施例1の測定試料とした。
【0064】
【0065】
[実施例2]
実施例1において、用いた赤外域に吸収を有する染料として、シアニン系染料である式(2)に示されるFEW CHEMICAL社製 S0378(1.5質量部)に替えた以外は同様にして、偏光板を作製し、測定試料とした。
【0066】
【0067】
[実施例3]
実施例1において、用いた赤外域に吸収を有する染料として、アゾ系染料であるオリヱント化学工業社製 C.I.Acid Black 2(1.5質量部)に替えた以外は同様にして、偏光板を作製し、測定試料とした。
【0068】
[実施例4]
実施例1において、用いた赤外域に吸収を有する染料として、式(3)に示されるアゾ系染料であるSHAOXING BIYING TEXTILE TECHNOLOGY Co., LTD社製 C.I.Direct Black 19(1.5質量部)に替えた以外は同様にして、偏光板を作製し、測定試料とした。
【0069】
【0070】
[実施例5]
東洋紡社製 バイロンUR8200 100質量部に、赤外域に吸収を有するシアニン染料として式(4)で示されるFEW CHEMICAL社製 S0391を0.15質量部含有させ、十分に混合させた組成物を、ガラス上に250μmの厚みでキャストした。キャスト後に、バイロンUR8200中に含まれていた溶媒を乾燥したところ、75μmのフィルムを得た。得られたフィルムを80℃の環境下で、元の長さに対して3倍に延伸して、偏光板を得た。
【0071】
【0072】
[実施例6]
東洋紡社製 バイロンUR1400 100質量部に、赤外域に吸収を有するシアニン染料として式(5)で示されるFEW CHEMICAL社製 S2437を0.15質量部含有させ、十分に混合させた組成物を、ガラス上に250μmの厚みでキャストした。キャスト後に、バイロンUR1400中に含まれていた溶媒を乾燥したところ、75μmのフィルムを得た。得られたフィルムを80℃の環境下で、元の長さに対して3倍に延伸して、偏光板を得た。
【0073】
【0074】
[実施例7]
東洋紡社製 バイロンUR1400 100質量部に、赤外域に吸収を有するアンスラキノン染料として式(6)で示される特開昭59-26293 化合物番号19を0.2質量部含有させ、十分に混合させた組成物を、ガラス上に250μmの厚みでキャストした。キャスト後に、バイロンUR1400中に含まれていた溶媒を乾燥したところ、75μmのフィルムを得た。得られたフィルムを80℃の環境下で、元の長さに対して3倍に延伸して、偏光板を得た。
【0075】
【0076】
[比較例1]
実施例3において、同様なBlack染料として、日本化薬社製 Black S(1.5質量部)に替えた以外は同様にして、偏光板を作製し、測定試料とした。
【0077】
[評価]
実施例1~7及び比較例1で得られた測定試料の評価を次のようにして行った。
(a)偏光平行透過率Ky、及び偏光直交透過率Kz
各測定試料の偏光平行透過率Ky、及び、偏光直交透過率Kzを、分光光度計(日立製作所社製“UH-4150”)を用いて測定した。ここで偏光平行透過率Kyは、紫外~赤外に対応したグランテーラー偏光子を介して光を測定試料に照射するに際し、グランテーラー偏光子の光の吸収軸と、測定試料をその吸収軸とが平行となるように重ね合せて測定した各波長の分光透過率である。偏光直交透過率Kzは、紫外~赤外に対応したグランテーラー偏光子を介して光を測定試料に照射するに際し、グランテーラー偏光子の光の吸収軸と、測定試料をその吸収軸とが直交となるように重ね合せて測定した各波長の分光透過率である。
【0078】
(b)コントラスト
各測定試料のコントラストを、以下の式に、偏光平行透過率Ky及び偏光直交透過率Kzを代入して求めた。
コントラスト=Ky/Kz
【0079】
表1には、得られた各波長のKy、Kzから最も高いコントラストの値と、その最も高いコントラストが得られた波長について表1に示す。
【0080】
【0081】
表1に示されるように、実施例1~7の測定試料は赤外域(700nm~1000nm)に最も高いコントラストを有する波長があり、その波長でのコントラストは、比較例1に示される一般的な染料とほぼ同等、もしくはそれ以上を有していることが分かる。対して、比較例1の染料は、最も高いコントラストを有する波長が603nmだっただけでなく、700nmのコントラストは、ほぼ皆無であったことから赤外域の吸収がある染料を用いることが本願では重要であることが分かる。一般的な新聞紙等の白黒表示のコントラストが10程度であるのに対して、本発明の偏光板は、赤外域(700nm~1000nm)に最も高いコントラストを有する波長がありながらも、一般的な二色性を有する染料と同等以上のコントラストを有していることから、本発明は赤外域の偏光板として十分に機能していることが分かる。
【0082】
[耐久性試験]
実施例1~7における測定試料を、90℃の耐熱試験、及び、65℃、相対湿度95%RHの環境に240時間に適用した。その結果、実施例1~7の測定試料はコントラストや波長の変化は見られなかった。このことから、実施例1~7の偏光板は信頼性が高く、かつ、これを用いた装置やレンズは信頼性の高い赤外域のコントラストを得ることが出来る。