(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】携帯電話端末の端末固有情報と位置情報とを紐付ける方法、移動基地局及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 8/00 20090101AFI20220329BHJP
H04W 4/00 20180101ALI20220329BHJP
H04W 8/02 20090101ALI20220329BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20220329BHJP
H04W 88/10 20090101ALI20220329BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20220329BHJP
H04W 76/50 20180101ALI20220329BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20220329BHJP
【FI】
H04W8/00 110
H04W4/00 110
H04W8/02
H04W84/12
H04W88/10
H04W84/06
H04W76/50
H04W64/00 171
(21)【出願番号】P 2019026831
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2020-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】堺 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】北辻 佳憲
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-163165(JP,A)
【文献】特開2004-242053(JP,A)
【文献】特開2018-095034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0160316(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電波到達距離となる第1の無線基地機能と、第1の電波到達距離よりも短い第2の電波到達距離となる第2の無線基地機能と、自らの基地局位置を測位する測位機能と、自らの基地局位置の移動を制御する移動制御機能とを有し、携帯電話端末との間で通信可能な移動基地局における端末同定方法であって、
移動基地局は、
基地局位置X00で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信すると共に、第2の無線基地機能を介して端末位置を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する第1のステップと、
当該同定対象の携帯電話端末の端末位置が、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する第2のステップと、
基地局位置X11で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信しようとする第3のステップと、
第1のステップ及び第3のステップの両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置とを同定候補として紐付ける第4のステップと
を実行することを特徴とする移動基地局の端末同定方法。
【請求項2】
移動基地局は、
第1のステップについて、基地局位置X00で、第2の無線基地機能を介して端末アプリID(IDentifier)及び端末位置を受信し、
第4のステップについて、第1のステップ及び第3のステップの両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の端末アプリIDとを同定候補とする
ように実行することを特徴とする請求項1に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項3】
前記端末アプリIDは、アプリケーションをインストールする際に、ユーザがアプリケーションを初めて起動する際に、又は、アプリケーションが初めてサーバと通信する際に、当該携帯電話端末を特定するべく付与されるユーザ識別子に基づくものである
ように実行することを特徴とする請求項2に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項4】
前記移動基地局は、
第1のステップについて、第2の無線基地機能を介して複数の端末位置が発見された場合、1つの端末位置を同定対象の携帯電話端末とし、他の端末位置を非同定対象の携帯電話端末とし、
第2のステップについて、当該同定対象の携帯電話端末の端末位置のみが、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動し、
第4のステップについて、第1のステップ及び第3のステップの両方で受信された1つの端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末とを紐付ける
ように実行することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項5】
前記移動基地局は、
第1のステップから第4のステップまでを繰り返すと共に、
第4のステップによって端末固有情報を紐付けた同定済み端末は、繰り返しによる次の第1のステップについて同定対象の携帯電話端末又は非同定対象の携帯電話端末としない
ように実行することを特徴とする請求項4に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項6】
前記移動基地局は、
第2のステップについて、以下の両方の条件が成立する基地局位置X11へ移動する
(条件1)RB < (同定対象端末の位置N1~基地局位置X11)の距離 ≦ RA
(条件2) (非同定対象端末の位置N2~基地局位置X11)の距離 > RA
RA:第1の
電波到達距離(半径)
RB:第2の
電波到達距離(半径)
N1:第1のステップで受信した同定対象とする端末位置
N2:第1のステップで受信した非同定対象とする端末位置
ように実行することを特徴とする請求項5に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項7】
前記移動基地局は、
第2のステップによって、基地局位置X11に移動したにも拘わらず、
第3のステップによって、複数の携帯電話端末から第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信した場合、
再度、第2のステップについて、以下の両方の条件が成立する基地局位置X12へ移動する
(条件1) (基地局位置X11~基地局位置X12)の距離 ≦ 2×RA
(条件2) (同定対象端末の位置N1~基地局位置X12)の距離 > RA
ように実行することを特徴とする請求項6に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項8】
第1の無線基地機能は、広域無線通信網に基づくものであり、
第2の無線基地機能は、狭域無線通信網に基づくものであり、
前記端末固有情報は、通信事業者における加入者識別子に基づくものである
ように実行することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項9】
前記広域無線通信網は、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、5G(5th Generation)又はWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)に基づくものであり、
前記狭域無線通信網は、無線LAN(Local Area Network)又はBluetooth(登録商標)に基づくものである
ように実行することを特徴とする請求項8に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項10】
前記移動基地局は、第1のステップについて、
第1の無線基地機能から報知情報を報知し、当該報知情報を受信した1つ以上の携帯電話端末から、前記端末固有情報含む登録要求を受信すると共に、
第2の無線基地機能から測位要求を送信し、当該測位要求を受信した1つ以上の携帯電話端末から、前記端末位置を含む測位応答を受信する
ように実行することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項11】
前記移動基地局は、第3のステップについて、
第1の無線基地機能から報知情報を報知し、当該報知情報を受信した1つ以上の携帯電話端末から、前記端末固有情報含む登録要求を受信する
ように実行することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項12】
前記移動基地局は、第1のステップについて、前記携帯電話端末へ、登録要求を送信しないように制御するエラー応答値を含む登録応答を返信する
ように実行することを特徴とする請求項10又は11に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項13】
前記移動基地局は、水平方向へ移動可能なマルチコプタ又は車両に搭載されたものである
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の移動基地局の端末同定方法。
【請求項14】
第1の電波到達距離となる第1の無線基地機能と、第1の電波到達距離よりも短い第2の電波到達距離となる第2の無線基地機能と、自らの基地局位置を測位する測位機能と、自らの基地局位置の移動を制御する移動制御機能とを有し、携帯電話端末との間で通信可能な移動基地局であって、
当該移動基地局は、
基地局位置X00で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信すると共に、第2の無線基地機能を介して端末位置を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する第1の端末情報受信手段と、
当該同定対象の携帯電話端末の端末位置が、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する移動位置決定手段と、
基地局位置X11で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信しようとする第2の端末情報受信手段と、
第1の端末情報受信手段及び第2の端末情報受信手段の両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置とを同定候補として紐付ける端末同定手段と
を含む端末同定機能を有することを特徴とする移動基地局。
【請求項15】
第1の電波到達距離となる第1の無線基地機能と、第1の電波到達距離よりも短い第2の電波到達距離となる第2の無線基地機能と、自らの基地局位置を測位する測位機能と、自らの基地局位置の移動を制御する移動制御機能とを有し、携帯電話端末との間で通信可能な移動基地局に搭載されたコンピュータを機能させる端末同定プログラムであって、
基地局位置X00で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信すると共に、第2の無線基地機能を介して端末位置を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する第1の端末情報受信手段と、
当該同定対象の携帯電話端末の端末位置が、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する移動位置決定手段と、
基地局位置X11で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信しようとする第2の端末情報受信手段と、
第1の端末情報受信手段及び第2の端末情報受信手段の両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置とを同定候補として紐付ける端末同定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする端末同定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局が、携帯電話端末の位置を検出する技術に関する。特に、広域無線ネットワークの基地機能と、狭域無線ネットワークの基地機能とを搭載した移動基地局の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話端末が接続する広域無線ネットワークとして、UTRAN(Universal Mobile Telecommunications System (UMTS) Radio Access Networks)や、eUTRAN(evolved UMTS Terrestrial Radio Access Network)がある。これらは、1つ以上の基地局となるeNB(evolved Node B)から構成され、複数の携帯電話端末と、パケットコアネットワークのEPC(Evolved Packet Core)との間のシグナリングを中継する。EPCは、携帯電話端末の位置登録を処理するMME(Mobility Management Entity)を有する。
【0003】
携帯電話端末はそれぞれ、端末識別子としてIMEI(International Mobile Equipment Identity)を持つ。携帯電話端末には、SIMカードが挿入されており、そのSIMカードには、加入者識別子としてIMSI(International Mobile Subscriber Identity)が記述されている。これらの識別子は、通信事業者が管理する加入者情報と紐付けられており、ユーザを特定するための端末固有情報となる。
【0004】
携帯電話端末は、登録要求をeNBへ送信することによって、その登録要求は、EPCへ転送される。これによって、EPCは、その携帯電話端末に対する位置登録の処理を実行する。EPCは、位置登録処理として、HSS(Home Subscriber Server)等と連携し、その端末固有情報を持つ端末との間で認証シーケンスを実行する。認証成功によって、携帯電話端末は、コアネットワークを介して通信サービスが提供される。
eUTRANの位置登録処理については、Attach 処理やTracking Area Update 処理が規定されている(例えば非特許文献1参照)。
【0005】
一方で、携帯電話端末が接続する狭域無線ネットワークとして、無線LAN(Local Area Network)(例えばIEEE 802.11など)。携帯電話端末は、アクセスポイント(Access Point)から報知されたSSID(Service Set Identifier)を受信する。そして、携帯電話端末は、そのSSIDのアクセスポイントとの間で、パスワード認証シーケンス(又は無認証シーケンス)を実行する。認証成功によって、携帯電話端末とアクセスポイントとの間で通信リンクが確立される。
【0006】
ここで、災害時に基地局のバックホール回線が切断された場合や、遭難時に基地局の電波到達範囲に携帯電話端末が存在しない場合に、その救助対象者が所持する携帯電話端末を発見するケースを想定する。特に、広く普及しているスマートフォンのような携帯電話端末は、その位置範囲を検出するためのプラットフォームとなりうる。
【0007】
例えば、災害時や遭難時など一時的に、基地局からの通信が断絶した状況・地域で、人命救助を目的として、携帯電話端末から位置情報を取得するためのガイドラインが公開されている(例えば非特許文献2参照)。ここでは、位置登録に基づく基地局情報と、携帯電話端末で測位可能なGPS(Global Positioning System)情報とを用いる。携帯電話端末が、コアネットワークに対して位置登録に基づく認証シーケンスを実行することによって、基地局情報が取得される。また、スマートフォンのような携帯電話端末は、一般的にGPS機能を搭載しており、そのGPS位置情報を、サーバへ送信することが想定されている。
【0008】
また、災害時に基地局のバックホール回線が切断されたケースでは、基地局に備えられた簡易的なコアネットワーク設備及び認証設備を用いて、携帯電話端末に対して限定的な通信サービスを提供する技術もある(例えば非特許文献3参照)。このような基地局は、移動型として被災地エリアに配備することができる。この場合、携帯電話端末から送信された登録要求に基づく位置情報も、携帯電話端末で測位されたGPS情報も、いずれも利用可能となる。
【0009】
更に、移動基地局が、簡易的なコアネットワーク及び認証設備を備えることで、携帯電話端末に対して、移動基地局が移動した複数の地点で位置登録を成功させることによって、当該携帯電話端末の位置検出の精度を向上させる技術もある(例えば特許文献1参照)。
【0010】
更に、移動基地局が、簡易的なコアネットワーク及び専用アプリケーションを備えることによって、認証設備が無くても、携帯電話端末をコアネットワークに接続させて、当該携帯電話端末で測位されたGPS情報を収集する技術もある(例えば特許文献2参照)。
【0011】
更に、移動基地局が、認証設備が無くても、移動基地局が移動した複数の地点で携帯電話端末が発する電波強度によってその位置を推定する技術もある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2016-163165号公報
【文献】特開2017-103694号公報
【文献】特開2017-208722号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】3GPP TS 23.401、「General Packet Radio Service (GPRS) enhancements for Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN) access」
【文献】総務省, 「人命救助等における GPS 位置情報の取扱いに関するとりまとめ,” 報道資料, 2013 年 7 月、[online]、[平成31年2月3日検索]、インターネット<URL:http://www.soumu.go.jp/main_content/000237319.pdf>
【文献】3GPP, TR 22.897、「Study on isolated Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network (E-UTRAN) operation for public safety」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
携帯電話端末のGPS機能は、衛星から測位電波を受信することができれば、数m~数十mと比較的高い精度で位置情報を得ることができる。そして、携帯電話端末は、そのGPS位置情報を、広域無線ネットワーク又は狭域無線ネットワークを介してサーバへ送信することができる。
【0015】
広域無線ネットワークを介する場合、携帯電話端末は、位置登録の認証シーケンスを予め実行することによって、そのGPS位置情報を、コアネットワークを介してサーバへ送信することができない。
しかしながら、被災地に配備可能な移動基地局は、簡易なコアネットワークであって、膨大な情報量となる加入者サーバまで配備することは一般的に難しい。携帯電話端末は、位置登録シーケンスしか実行することができず、結局、GPS位置情報をサーバへ送信することはできない。
【0016】
一方で、狭域無線ネットワークの場合、携帯電話端末は、アクセスポイントとの間の簡易な認証シーケンスであるので、直ぐにGPS位置情報を送信することができる。また、無線LAN内に位置情報サーバが配置されていれば、携帯電話端末は、衛星からの測位電波を受信することなく、GPS情報を取得し、サーバへ送信することもできる。
しかしながら、一般的に、携帯電話端末にインストールされるアプリケーションは、OS(Operating System)の制約から、端末固有情報(IMSI、IMEI等)を取得することができない。端末固有情報は、広域無線ネットワークで使用されるユーザを特定可能な加入者情報であって、その秘匿性が維持されている。
また、被災地では、ユーザ自らが、GPS位置情報を送信するために、携帯電話端末のアプリケーションを操作することができない場合も多い。
【0017】
更なる問題として、移動基地局が、広域無線ネットワークを介して「端末固有情報」を受信し、狭域無線ネットワークを介して「端末位置」を受信したとする。その場合であっても、移動基地局は、携帯電話端末について、「端末固有情報」と「端末位置」とを紐付けることができない。即ち、端末固有情報に基づく携帯電話端末が、どの端末位置に存在するかを把握することができない。
【0018】
尚、前述した特許文献1に記載の技術によれば、携帯電話端末の位置登録のみで位置精度を向上させるものであって、位置精度の高いGPS位置情報を直接的に用いるものではない。また、特許文献2に記載の技術によれば、認証設備が無く且つGPS位置情報を利用可能とするものであるが、端末固有情報と端末位置とを紐付けるものではない。
【0019】
そこで、本発明は、携帯電話端末が広域無線ネットワークにおける認証シーケンスを実行することなく、移動基地局が、携帯電話端末の端末固有情報と端末位置とを紐付けることができる端末同定方法、移動基地局及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、第1の電波到達距離となる第1の無線基地機能と、第1の電波到達距離よりも短い第2の電波到達距離となる第2の無線基地機能と、自らの基地局位置を測位する測位機能と、自らの基地局位置の移動を制御する移動制御機能とを有し、携帯電話端末との間で通信可能な移動基地局における端末同定方法であって、
移動基地局は、
基地局位置X00で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信すると共に、第2の無線基地機能を介して端末位置を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する第1のステップと、
当該同定対象の携帯電話端末の端末位置が、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する第2のステップと、
基地局位置X11で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信しようとする第3のステップと、
第1のステップ及び第3のステップの両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置とを同定候補として紐付ける第4のステップと
を実行することを特徴とする。
【0021】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、
第1のステップについて、基地局位置X00で、第2の無線基地機能を介して端末アプリID(IDentifier)及び端末位置を受信し、
第4のステップについて、第1のステップ及び第3のステップの両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の端末アプリIDとを同定候補とする
ように実行することも好ましい。
【0022】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
端末アプリIDは、アプリケーションをインストールする際に、ユーザがアプリケーションを初めて起動する際に、又は、アプリケーションが初めてサーバと通信する際に、当該携帯電話端末を特定するべく付与されるユーザ識別子に基づくものである
ように実行することも好ましい。
【0023】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、
第1のステップについて、第2の無線基地機能を介して複数の端末位置が発見された場合、1つの端末位置を同定対象の携帯電話端末とし、他の端末位置を非同定対象の携帯電話端末とし、
第2のステップについて、当該同定対象の携帯電話端末の端末位置のみが、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動し、
第4のステップについて、第1のステップ及び第3のステップの両方で受信された1つの端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末とを紐付ける
ように実行することも好ましい。
【0024】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、
第1のステップから第4のステップまでを繰り返すと共に、
第4のステップによって端末固有情報を紐付けた同定済み端末は、繰り返しによる次の第1のステップについて同定対象の携帯電話端末又は非同定対象の携帯電話端末としない
ように実行することも好ましい。
【0025】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、
第2のステップについて、以下の両方の条件が成立する基地局位置X11へ移動する
(条件1)RB < (同定対象端末の位置N1~基地局位置X11)の距離 ≦ RA
(条件2) (非同定対象端末の位置N2~基地局位置X11)の距離 > RA
RA:第1の電波到達距離(半径)
RB:第2の電波到達距離(半径)
N1:第1のステップで受信した同定対象とする端末位置
N2:第1のステップで受信した非同定対象とする端末位置
ように実行することも好ましい。
【0026】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、
第2のステップによって、基地局位置X11に移動したにも拘わらず、
第3のステップによって、複数の携帯電話端末から第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信した場合、
再度、第2のステップについて、以下の両方の条件が成立する基地局位置X12へ移動する
(条件1) (基地局位置X11~基地局位置X12)の距離 ≦ 2×RA
(条件2) (同定対象端末の位置N1~基地局位置X12)の距離 > RA
ように実行することも好ましい。
【0027】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
第1の無線基地機能は、広域無線通信網に基づくものであり、
第2の無線基地機能は、狭域無線通信網に基づくものであり、
端末固有情報は、通信事業者における加入者識別子に基づくものである
ように実行することも好ましい。
【0028】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
広域無線通信網は、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、5G(5th Generation)又はWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)に基づくものであり、
狭域無線通信網は、無線LAN(Local Area Network)又はBluetooth(登録商標)に基づくものである
ように実行することも好ましい。
【0029】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、第1のステップについて、
第1の無線基地機能から報知情報を報知し、当該報知情報を受信した1つ以上の携帯電話端末から、端末固有情報含む登録要求を受信すると共に、
第2の無線基地機能から測位要求を送信し、当該測位要求を受信した1つ以上の携帯電話端末から、端末位置を含む測位応答を受信する
ように実行することも好ましい。
【0030】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、第3のステップについて、
第1の無線基地機能から報知情報を報知し、当該報知情報を受信した1つ以上の携帯電話端末から、端末固有情報含む登録要求を受信する
ように実行することも好ましい。
【0031】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、第1のステップについて、携帯電話端末へ、登録要求を送信しないように制御するエラー応答値を含む登録応答を返信する
ように実行することも好ましい。
【0032】
本発明の移動基地局の端末同定方法における他の実施形態によれば、
移動基地局は、水平方向へ移動可能なマルチコプタ又は車両に搭載されたものであることも好ましい。
【0033】
本発明によれば、第1の電波到達距離となる第1の無線基地機能と、第1の電波到達距離よりも短い第2の電波到達距離となる第2の無線基地機能と、自らの基地局位置を測位する測位機能と、自らの基地局位置の移動を制御する移動制御機能とを有し、携帯電話端末との間で通信可能な移動基地局であって、
当該移動基地局は、
基地局位置X00で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信すると共に、第2の無線基地機能を介して端末位置を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する第1の端末情報受信手段と、
当該同定対象の携帯電話端末の端末位置が、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する移動位置決定手段と、
基地局位置X11で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信しようとする第2の端末情報受信手段と、
第1の端末情報受信手段及び第2の端末情報受信手段の両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置とを同定候補として紐付ける端末同定手段と
を含む端末同定機能を有することを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、第1の電波到達距離となる第1の無線基地機能と、第1の電波到達距離よりも短い第2の電波到達距離となる第2の無線基地機能と、自らの基地局位置を測位する測位機能と、自らの基地局位置の移動を制御する移動制御機能とを有し、携帯電話端末との間で通信可能な移動基地局に搭載されたコンピュータを機能させる端末同定プログラムであって、
基地局位置X00で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信すると共に、第2の無線基地機能を介して端末位置を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する第1の端末情報受信手段と、
当該同定対象の携帯電話端末の端末位置が、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する移動位置決定手段と、
基地局位置X11で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信しようとする第2の端末情報受信手段と、
第1の端末情報受信手段及び第2の端末情報受信手段の両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置とを同定候補として紐付ける端末同定手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の端末同定方法、移動基地局及びプログラムによれば、携帯電話端末が広域無線ネットワークにおける認証シーケンスを実行することなく、移動基地局が、携帯電話端末の端末固有情報と端末位置とを紐付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】本発明の移動基地局における電波到達範囲を表す説明図である。
【
図3】本発明における基本的なシーケンス図である。
【
図4】本発明の第1のステップS1における詳細なシーケンス図である。
【
図5】基地局位置X00と携帯電話端末との位置関係を表す基本的な状態説明図である。
【
図6】基地局位置X00と携帯電話端末との位置関係を表す第11の状態説明図である。
【
図7】基地局位置X11と携帯電話端末との位置関係を表す第12の状態説明図である。
【
図8】基地局位置X21と携帯電話端末との位置関係を表す第13の状態説明図である。
【
図9】基地局位置X31と携帯電話端末との位置関係を表す第14の状態説明図である。
【
図10】基地局位置X11と携帯電話端末との位置関係を表す第21の状態説明図である。
【
図11】基地局位置X12と携帯電話端末との位置関係を表す第22の状態説明図である。
【
図12】本発明の移動基地局にける端末同定機能の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0038】
【0039】
本発明の移動基地局1は、自律的に移動可能なものであって、複数の無線基地機能を介して携帯電話端末2と通信する。例えば災害時には、移動基地局1は、広範囲の通信孤立地域を、空中又は地上で移動可能なものである。
移動基地局1は、例えば空中で移動可能なドローンとして実装されたものであってもよいし、飛行船、気球、マルチコプタであってもよい。また、例えば地上を走行可能な自動車であってもよい。
一方で、携帯電話端末2は、ユーザ所持の既存のスマートフォンや携帯電話機のようなものである。また、携帯電話端末2には、予め又はユーザ所望に応じて、アプリ(ケーション)がインストールされている。例えば災害対応アプリであって、サーバからの測位要求に応じて、自動的にGPS機能で測位し、その端末位置を応答するものである。また、災害対応アプリは、インストール時に、アプリ初回起動時に、又は、サーバとの初回通信時に、各携帯電話端末を識別する「端末アプリID」を付与する。サーバは、端末アプリIDと端末位置とを対応付けて蓄積管理する。
【0040】
図1によれば、移動基地局1は、携帯電話端末2と通信可能なものであって、自らの基地局位置を測位するGPS機能(測位機能)101と、マルチコプタ(移動機能)102とを搭載する。また、本発明の移動基地局1は、第1の電波到達距離となるLTE基地機能(第1の無線基地機能)111と、第1の電波到達距離よりも短い第2の電波到達距離となる無線LAN基地機能(第2の無線基地機能)112と、端末同定機能12と、自らの基地局位置の移動を制御する移動制御機能13とを一体的に組み込んだものである。これら機能構成部は、移動基地局に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0041】
以下の実施形態としては、第1の無線基地機能111は、広域無線通信網に基づくLTE基地局として説明するが、例えば3G(3rd Generation)、5G(5th Generation)又はWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)に基づく基地局(例えばLTEにおけるeNB(evolved Node B))であってもよい。
また、第2の無線基地機能112は、狭域無線通信網に基づく無線LANのアクセスポイントとして説明するが、Bluetooth(登録商標)に基づくものであってもよい。
【0042】
端末同定機能12は、携帯電話端末2について、LTE基地機能111によって取得した「端末固有情報」と、無線LAN基地機能112によって取得した「端末位置(GPS位置情報)」(及び「端末アプリID」)とを紐付けるものである。
【0043】
「端末固有情報」は、通信事業者における加入者識別子に基づくものである。具体的には、例えばLTE/EPCによれば、IMEI(International Mobile Equipment Identity)である。また、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)又はMSISDN(Mobile Station International ISDN Number)であってもよい。
【0044】
「端末アプリID」は、アプリケーションをインストールする際に、ユーザがアプリケーションを初めて起動する際に、又は、アプリケーションが初めてサーバと通信する際に、アプリケーション提供事業者から付与されるユーザ識別子に基づくものである。即ち、端末アプリIDに基づくアプリケーションサーバは、アプリケーション上でユーザを識別することができると共に、そのGPS位置情報を紐付けて管理することができる。
【0045】
移動制御機能13は、GPS101によって自らの現在位置を認識すると共に、端末同定機能12からの指示に応じて、目的位置へ移動するべく移動機能102を制御する。
【0046】
図2は、本発明の移動基地局における電波到達範囲を表す説明図である。
【0047】
図2によれば、移動基地局1は、LTE(広域無線ネットワーク)の第1の電波到達距離と、無線LAN(狭域無線ネットワーク)の第2の電波到達距離とが表されている。
RA:第1の
電波到達距離(半径)
RB:第2の
電波到達距離(半径)
但し、移動基地局1からの電波到達範囲は、必ずしも円状となるとは限らない。移動基地局1は、携帯電話端末2の位置範囲を検出する上で、電波到達範囲の形状及び距離を予め認識しておく必要がある。
【0048】
また、
図2によれば、移動基地局1は、基地局位置X00に位置し、LTEの電波到達範囲に2つの携帯電話端末を検出し、無線LANの電波到達範囲に1つの携帯電話端末を検出する。
このとき、移動基地局1は、LTE基地機能111を介して2つの携帯電話端末それぞれから、端末固有情報を受信することができる。また、移動基地局1は、無線LAN基地機能112を介して1つの携帯電話端末から、端末位置(及び端末アプリID)を受信することができる。
このとき、1つの端末位置(及び端末アプリID)は、2つの端末固有情報のいずれに紐付いているかが不明となっている。移動基地局1の端末同定機能12は、この紐付けを同定することできる。
【0049】
尚、他の実施形態として、移動基地局1の基地機能111及び112について、出力電波の周波数や電波強度等を任意に変更することができる。これによって、電波到達範囲の形状及び距離を柔軟に設定することもできる。
【0050】
図3は、本発明における基本的なシーケンス図である。
【0051】
移動基地局1の端末同定機能12は、第1の電波到達範囲に基づく位置X00(例えば初期位置)へ移動する移動要求を、移動制御機能13へ出力する。これに対し、移動制御機能13は、現在位置に応じてマルチコプタ102を制御して、移動基地局1を自律的に位置X00へ移動させる。そして、移動制御機能13は、位置X00への移動が完了した後、その旨を、端末同定機能12へ出力する。
【0052】
その上で、移動基地局1の端末同定機能12は、以下のステップを実行する。
[第1のステップS1]
端末同定機能12は、基地局位置X00で、携帯電話端末2から、LTE基地機能111を介して端末固有情報を受信すると共に、無線LAN基地機能112を介して端末位置(及び端末アプリID)を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する。
このとき、無線LAN基地機能112を介して複数の端末位置が発見された場合、1つの端末位置を「同定対象端末」とし、他の端末位置を「非同定対象端末」とする。
[第2のステップS2]
端末同定機能12は、当該同定対象の携帯電話端末2の端末位置が、LTEの電波到達距離内で且つ無線LANの電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する。
[第3のステップS3]
端末同定機能12は、基地局位置X11で、携帯電話端末2から、LTEの無線基地機能111を介して端末固有情報を受信しようとする。
[第4のステップS4]
端末同定機能12は、第1のステップ及び第3のステップの両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置(及び端末アプリID)とを同定候補として紐付ける。
【0053】
このように、S1~S4を繰り返すことによって、携帯電話端末2について次々、端末固有情報と端末位置(及び端末アプリID)とを紐付けていくことができる。結果的に、ユーザ毎の位置情報を特定することができる。
【0054】
本発明によれば、携帯電話端末2が、移動基地局1を介してコアネットワークとの間で認証シーケンスを実行することができない、ことを想定している。この場合であっても、移動基地局1は、LTE基地機能111を介して、端末固有情報を取得することはできる。
一方で、移動基地局1は、無線LAN基地機能112を介して、携帯電話端末2から、端末位置(及び端末アプリID)を取得することはできる。
ここで、本発明の移動基地局1は、端末固有情報と同一端末と見なせる端末位置(及び端末アプリID)とを紐付けて、同定することができる。
【0055】
図4は、本発明の第1のステップS1における詳細なシーケンス図である。
【0056】
(S11)端末同定機能12が、LTE基地機能111から、LTEの電波到達範囲へ、報知情報を報知する。
【0057】
(S12)報知情報を受信した携帯電話端末2は、その登録要求を、移動基地局1へ送信する。登録要求に、端末固有情報が含まれている場合、以下のS13を実行する必要はない。
【0058】
(S13)移動基地局1は、登録要求に端末固有情報が含まれていない場合、携帯電話端末2へ、端末固有情報要求を送信する。
【0059】
(S14)端末固有情報要求を受信した携帯電話端末2は、端末固有情報を、移動基地局1へ送信する。これによって、移動基地局1の端末同定機能12は、携帯電話端末2の端末固有情報を取得する。
【0060】
(S15)移動基地局1は、携帯電話端末2へ、その後、登録要求を送信しないように制御するエラー応答値を含む登録応答を返信する。
エラー応答値は、例えばLTE/EPCによれば、"tracking area not allowed"となる。これは、携帯電話端末2が、同一のネットワーク番号に基づく報知情報を受信したとしても、登録要求を送信しないように指示するものである。
本発明によれば、移動基地局1は、加入者サーバ(認証設備)を搭載せず、携帯電話端末2との間で認証シーケンスを実行しないために、位置登録シーケンスをあえて失敗させる。このとき、携帯電話端末2からの登録要求の再送回数は有限であり、その再送回数に達した場合、それ以降、登録要求を送信しないようになる。移動基地局1は、携帯電話端末2に対してあえて、登録要求の再送を抑止するようなエラー応答値を含む登録応答を返信することによって、過剰なシグナリングを発生させないようにしている。
【0061】
(S16)移動基地局1は、無線LAN基地機能112を、LTE基地機能111と並列的に機能させる。無線LAN基地機能112は、携帯電話端末2との間で、IP(Internet Protocol)接続によって、IPアドレスを取得する。
携帯電話端末2は、無線LANのアクセスポイントが報知するSSIDに対して、自動的に接続設定が実行される。例えば、移動基地局1が、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバとして機能することによって、携帯電話端末2が自動的にDHCPクライアントとして機能し、無線LANのIPアドレスが付与される。
【0062】
(S17)移動基地局1は、携帯電話端末2へ、測位要求を送信する。
【0063】
(S18)測位要求を受信した携帯電話端末2は、GPS機能101によって測位し、GPS位置情報を取得する。そして、携帯電話端末2は、その端末位置(GPS位置情報(座標)と測位時刻)(及び端末アプリID)を、移動基地局1へ送信する。
ここで、端末アプリIDが、インストール時又は初回起動時に設定されていない場合がる。この場合、アプリケーションが初めてサーバと通信する際に、端末アプリIDを設定するように実現することができる。具体的にS18では、例えば端末アプリIDを”0”、空などの固定値で送信した場合、移動基地局1が端末アプリIDを未設定と認識し、応答信号を返信するようにする。そして、移動基地局1が、当該端末を固有に識別できる端末アプリIDを割り当てて、その信号に当該端末アプリIDを含める。
【0064】
尚、他の実施形態として、第1のステップS1について、所定時間内で取得するべく、タイマを起動させることも好ましい。タイムオーバした場合、移動基地局1は、少なくとも現状の電波到達範囲に、携帯電話端末2が存在しないと判定することができる。この場合、他の基地局位置へ移動すべきである。
【0065】
また、第3のステップS3も、第1のステップS1と同じシーケンスを実行する。但し、第3のステップS3について、携帯電話端末2から、端末位置を取得する必要はない。そのために、携帯電話端末2と無線LAN基地機能(第2の無線基地機能)との間のシーケンスを必須とするものではない。
【0066】
図5は、基地局位置X00と携帯電話端末との位置関係を表す基本的な状態説明図である。
【0067】
図5によれば、移動基地局1が、時刻T1に座標X00に位置する際に、以下のような情報が取得されている。
[LTE基地機能によって取得された情報]
(端末固有情報)
bc-dddeee-fffggg-hi
[無線LAN基地機能によって取得された情報]
(端末アプリID)(端末位置)
1a2b3c4d5e N1
この場合、移動基地局1は、無線LAN基地機能112では[1a2b3c4d5e,N1]のみを取得し、LTE基地機能111では端末固有情報[bc-dddeee-fffggg-hi]のみを取得している。そのために、以下のように紐付けて、携帯電話端末を同定することができる。
(端末固有情報) (端末アプリID)(端末位置)
bc-dddeee-fffggg-hi <-> 1a2b3c4d5e N1
【0068】
図6は、基地局位置X00と携帯電話端末との位置関係を表す第11の状態説明図である。
【0069】
図6によれば、移動基地局1が、時刻T1に座標X00に位置する際に、以下のような情報が取得されている。
[LTE基地機能によって取得された情報]
(端末固有情報)
ab-xxxyyy-zzzxxx-dc
bc-dddeee-fffggg-hi
de-hhhiii-jjjkkk-lm
[無線LAN基地機能によって取得された情報]
(端末アプリID)(端末位置)
1a2b3c4d5e N1
6e7d8c9b0a N2
この場合、無線LAN基地機能112によって取得された端末位置(及び端末アプリID)に基づく携帯電話端末2が、LTE基地機能111によって取得された端末固有情報のいずれに該当するか、不明となる。
【0070】
ここで理想的には、移動基地局1は、第2のステップで、当該同定対象の携帯電話端末の端末位置のみが、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動しようとする。そして、第4のステップについて、第1のステップ及び第3のステップの両方で1つの端末固有情報しか受信されなかった場合、同定対象の携帯電話端末を紐付けることができる。
【0071】
<基地局位置の座標Xmnについて>
基地局位置の座標Xmnとして、m=0, n=0の時の座標Xmnを初期座標とする。そして、端末同定機能12における端末同定処理と次座標決定とを繰り返し、m,nをカウントアップしていく。
「m」は、「同定対象端末」の順番を表す。携帯電話端末を1つずつ「同定対象端末」と決定し、その同定が完了する度に、同定対象端末が他の非同定対象端末に切り替わり、mがカウントアップされる。1つの基地局位置Xmnについて複数の携帯電話端末が同定される場合があり、カウントアップされる数値は1以上とする。
「n」は、当該順番m における次座標計算の回数を表す。次座標計算後の端末同定処理によって、「同定対象端末」の同定が完了しなければ1増分され、同定が完了すればn=1 にリセットされる。
【0072】
最初に、1つの基地局位置Xmnについて、「同定対象端末」は、無線LAN基地機能112で検出された携帯電話端末の中から、1つずつ選択される。
同定対象端末が同定される毎に、その同定対象端末を「同定済み端末」とする。同定済み端末は、その後に、「非同定対象端末」「同定対象端末」にはならない。
無線LAN基地機能112で検出された携帯電話端末の全てが順次、同定されていく。
【0073】
図7は、基地局位置X11と携帯電話端末との位置関係を表す第12の状態説明図である。
【0074】
図7によれば、最初に、[1a2b3c4d5e,N1]を、同定対象端末とする。
※同定対象端末の位置:N1
※非同定対象端末の位置:N2
その上で、移動基地局1は、第2のステップについて、以下の両方の条件が成立する基地局位置X11へ移動する
(条件1)RB < (同定対象端末の位置N1~基地局位置X11)の距離 ≦ RA
(条件2) (非同定対象端末の位置N2~基地局位置X11)の距離 > RA
RA:第1の
電波到達距離(半径)
RB:第2の
電波到達距離(半径)
N1:第1のステップで受信した同定対象とする端末アプリID及び端末位置
N2:第1のステップで受信した非同定対象とする端末アプリID及び端末位置
【0075】
条件1は、同定対象端末について、無線LAN基地機能112の電波到達範囲「外」となり、LTE基地機能111の電波到達範囲「内」となる条件式である。
条件2は、非同定対象端末について、LTE基地機能111の電波到達範囲「外」となる条件式である。
これら条件1及び条件2の両方を満たすことにって、「同定対象端末についてのみ、LTE基地機能111の電波到達範囲「内」とする」ことを目的とした次座標を算出することができる。
これによって、基地局位置X11についてLTE基地機能111で取得した端末固有情報が、基地局位置X00におけるLTE基地機能111で取得した端末固有情報に含まれる唯一のものとなった場合、基地局位置X00における同定対象端末について、無線LAN基地機能112で取得した端末位置(及び端末アプリID)と同一の携帯電話端末のものであると同定することができる。
【0076】
図7によれば、移動基地局1が、時刻T2に座標X11に位置する際に、以下のような情報が取得されている。
[LTE基地機能によって取得された情報]
(端末固有情報)
bc-dddeee-fffggg-hi
[無線LAN基地機能によって取得された情報]
(端末アプリID)(端末位置)
× ×
※同定対象端末の位置:N1
※非同定対象端末の位置:N2
この場合、LTE基地機能111によって取得された端末固有情報は、[bc-dddeee-fffggg-hi]のみである。即ち、「非同定対象」となる携帯電話端末2は、LTE基地機能111の電波到達範囲外にあると想定される。そのために、以下のように紐付けて、携帯電話端末を同定することができる。
(端末固有情報) (端末アプリID)(端末位置)
bc-dddeee-fffggg-hi <-> 1a2b3c4d5e N1
これによって、[1a2b3c4d5e,N1]を「同定済み端末」とする。
【0077】
図8は、基地局位置X21と携帯電話端末との位置関係を表す第13の状態説明図である。
【0078】
図8によれば、基地局位置の座標X00における非同定対象端末[6e7d8c9b0a,N2]を、次の同定対象端末とする。
その上で、移動基地局1は、第2のステップについて、以下の条件1が成立する基地局位置X21へ移動する。
(条件1)RB < (同定対象端末の位置N2~基地局位置X11)の距離 ≦ RA
(条件2)非同定対象端末無し(端末位置N1は同定済み)
【0079】
同定済み端末の端末位置N1は、非同定対象端末に含まれない。
但し、他の実施形態として、座標範囲の絞り込みのために、同定済み端末の端末位置の一部又は全部を非同定対象端末の端末位置として次座標を算出してもよい。
【0080】
図8によれば、移動基地局1が、時刻T3に座標X21に位置する際に、以下のような情報が取得されている。
[LTE基地機能によって取得された情報]
(端末固有情報)
ab-xxxyyy-zzzxxx-dc
[無線LAN基地機能によって取得された情報]
(端末アプリID)(端末位置)
× ×
※同定対象端末の位置:N2
この場合、LTE基地機能111によって取得された端末固有情報は、[ab-xxxyyy-zzzxxx-dc]のみである。そのために、以下のように紐付けて、携帯電話端末を同定することができる。
(端末固有情報) (端末アプリID)(端末位置)
ab-xxxyyy-zzzxxx-dc <-> 6e7d8c9b0a N2
これによって、[6e7d8c9b0a,N2]を「同定済み端末」とする。
【0081】
図9は、基地局位置X31と携帯電話端末との位置関係を表す第14の状態説明図である。
【0082】
図6~
図8によって、基地局位置の座標X00について、無線LAN基地機能112によって取得された携帯電話端末2は全て、「同定済み端末」となっている。
次に、無線LAN基地機能112によって新たな端末位置(及び端末アプリID)が発見される位置へ移動する。
図9によれば、基地局位置の座標X00について、LTE基地機能111によって取得され、且つ、同定処理が完了していない端末固有情報[de-hhhiii-jjjkkk-lm]の携帯電話端末について、同定処理を実行すべき位置へ移動する。
【0083】
図9によれば、移動基地局1が、時刻T4に座標X31に位置する際に、以下のような情報が取得されている。
[LTE基地機能によって取得された情報]
(端末固有情報)
de-hhhiii-jjjkkk-lm
[無線LAN基地機能によって取得された情報]
(端末アプリID)(端末位置)
1g3h5i7j9k N3
※同定済み端末の位置:N1,N2
この場合、移動基地局1は、無線LAN基地機能112では[1g3h5i7j9k,N3]のみを取得し、LTE基地機能111では端末固有情報[de-hhhiii-jjjkkk-lm]のみを取得している。そのために、以下のように紐付けて、携帯電話端末を同定することができる。
(端末固有情報) (端末アプリID)(端末位置)
de-hhhiii-jjjkkk-lm <-> 1g3h5i7j9k N3
【0084】
図10は、基地局位置X11と携帯電話端末との位置関係を表す第21の状態説明図である。
【0085】
図10によれば、
図7と異なって、移動基地局1が、時刻T2に座標X11に位置する際に、以下のような情報が取得されている。
[LTE基地機能によって取得された情報]
(端末固有情報)
bc-dddeee-fffggg-hi
de-hhhiii-jjjkkk-lm
fg-jjjkkk-lllmmm-no
[無線LAN基地機能によって取得された情報]
(端末アプリID)(端末位置)
× ×
※同定対象端末の位置:N1
※非同定対象端末の位置:N2
※新たに検出された端末固有情報:fg-jjjkkk-lllmmm-no
即ち、移動基地局1は、第2のステップによって基地局位置X11に移動した後、第3のステップについて、複数の携帯電話端末2からLTE基地機能111を介して端末固有情報を受信している。
【0086】
図10によれば、LTE基地機能111は、端末位置X00で受信した端末固有情報[bc-dddeee-fffggg-hi][fg-jjjkkk-lllmmm-no]を更に受信している。そのために、以下のように紐付けることができず、携帯電話端末2を同定することができない。
(端末固有情報) (端末アプリID)(端末位置)
bc-dddeee-fffggg-hi <-> 1a2b3c4d5e N1 ?
fg-jjjkkk-lllmmm-no <-> 1a2b3c4d5e N1 ?
また、LTE基地機能111は、時刻T2で新たに、端末固有情報[fg-jjjkkk-lllmmm-no]も受信している。但し、端末固有情報[fg-jjjjkkk-lllmmm-no]は、端末位置X00でLTE基地機能111によって受信したものではないために、端末位置N1と同定されるべきものではない。
【0087】
図11は、基地局位置X12と携帯電話端末との位置関係を表す第22の状態説明図である。
【0088】
再度、移動基地局1は、
図10の端末位置から、以下の両方の条件が成立する基地局位置X12へ移動する。
(条件1) (基地局位置X11~基地局位置X12)の距離 ≦ 2×RA
(条件2) (同定対象端末の位置N1~基地局位置X12)の距離 > RA
【0089】
条件1は、先の端末位置X11(同定対象端末を同定できなかった座標)におけるLTE基地機能111の電波到達範囲と、次座標X12におけるLTE基地機能111の電波到達範囲とが、重複するエリアに存在する端末位置となる条件式である。
条件2は、同定対象端末について、LTE基地機能111の電波到達範囲「外」となる条件式である。
【0090】
図11によれば、基地局位置X00でLTE基地機能111によって受信された[bc-dddeee-fffggg-hi]は、基地局位置X12でLTE基地機能111によって受信されていない。即ち、端末固有情報[bc-dddeee-fffggg-hi]は、端末位置[1a2b3c4d5e,N1]の同定対象端末であると同定される。これによって、[1a2b3c4d5e,N1]を「同定済み端末」とする。
一方で、基地局位置X00でLTE基地機能111によって受信された[de-hhhiii-jjjkkk-lm]は、基地局位置X12でもLTE基地機能111によって受信されている。即ち、端末固有情報[de-hhhiii-jjjkkk-lm]は、端末位置[1a2b3c4d5e]の同定対象端末でないと推定される。
【0091】
図11に続いて、次に、移動基地局1は、同定対象端末を、端末位置[6e7d8c9b0a,N2]の携帯電話端末として、前述した
図8のように移動する。
【0092】
前述した
図5~
図11のように、移動基地局1は、最初の端末位置X00で、無線LAN基地機能112によって受信された端末位置を1つずつ、同定対象端末として端末同定処理を実行する。そのとき、移動基地局1は、同定された端末固有情報及び端末位置(及び端末アプリID)を「同定済み端末」として、同定対象及び非同定対象から外す。このように、端末位置X00で、無線LAN基地機能112によって受信された全ての端末位置(第1のステップによって発見された全ての端末固有情報)が同定されるまで、第
1のステップから第4のステップまでを繰り返す。
その後、移動基地局1は、LTE基地機能111のみで受信された他の端末固有情報を持つ携帯電話端末が、無線LAN基地機能112の電波到達範囲内となる位置へ移動し、更に
図5~
図11を繰り返す。
【0093】
図12は、本発明の移動基地局にける端末同定機能の構成図である。
【0094】
図12によれば、移動基地局1の端末同定機能12は、第1の端末情報受信部121と、移動位置決定部122と、第2の端末情報受信部123と、端末同定部124とを有する。これら機能構成部は、移動基地局に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、移動基地局の端末同定方法としても理解できる。
【0095】
第1の端末情報受信部121は、基地局位置X00で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信すると共に、第2の無線基地機能を介して端末位置を受信し、同定対象の携帯電話端末の端末位置を特定する(前述した第1のステップS1を参照)。
移動位置決定部122は、当該同定対象の携帯電話端末の端末位置が、第1の電波到達距離内で且つ第2の電波到達距離外となる基地局位置X11へ移動する(前述した第2のステップS2を参照)。
第2の端末情報受信部123は、基地局位置X11で、携帯電話端末から、第1の無線基地機能を介して端末固有情報を受信しようとする(前述した第3のステップS3を参照)。
端末同定部124は、第1の端末情報受信手段及び第2の端末情報受信手段の両方で受信された1つ以上の端末固有情報と、同定対象の携帯電話端末の端末位置とを同定候補として紐付ける(前述した第4のステップS4を参照)。
【0096】
以上、詳細に説明したように、本発明の端末同定方法、移動基地局及びプログラムによれば、携帯電話端末が広域無線ネットワークにおける認証シーケンスを実行することなく、移動基地局が、携帯電話端末の端末固有情報と端末位置とを紐付けることができる。
これによって、移動基地局が、認証設備を搭載しない簡易のコアネットワークであっても、携帯電話端末に対するGPS位置情報を取得することができる。また、移動基地局が自動的に移動しながら携帯電話端末のGPS位置情報を取得するために、人手のコストも軽減させることができる。更に、ユーザによる携帯電話端末への操作も必要としない。
【0097】
また、本発明によれば、例えばドローンや、ヘリコプタ、気球、自動車のような移動基地局を想定しており、簡易且つ自律的に移動することができる。特に、1台の移動基地局の移動で、多数の携帯電話端末の位置を検出することができる。
本発明は特に、災害時に基地局のバックホール回線が切断された場合や、遭難時に携帯電話端末が基地局の電波到達範囲に存在しない場合に、被災者や救助対象者を発見するケースに適する。
【0098】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0099】
1 移動基地局
101 GPS機能
102 移動機能
111 LTE基地機能、第1の広域基地機能
112 無線LAN基地機能、第2の狭域基地機能
12 端末同定機能
121 第1の端末情報受信部
122 移動位置決定部
123 第2の端末情報受信部
124 端末同定部
13 移動制御機能
2 携帯電話端末