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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】化粧料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
A61K8/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019029349
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020132583
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100122541
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 友彰
(72)【発明者】
【氏名】新堂 真実子
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅史
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-105096(JP,A)
【文献】特開2019-108309(JP,A)
【文献】特開2020-132581(JP,A)
【文献】特開2020-132582(JP,A)
【文献】特開2005-239600(JP,A)
【文献】特開平01-197418(JP,A)
【文献】特開2018-168233(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009002(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/027006(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/103496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の化粧料を容器の内面の少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出する吐出工程と、
前記吐出工程後の前記容器に、前記第1の化粧料と異なる組成でなる第2の化粧料を充填する充填工程と、を有し、
前記吐出工程は、前記容器の前記内面に対して、液滴状態で吐出された前記第1の化粧料を線状に着弾させるものであり、
前記容器の前記内面に着弾した線状の前記第2の化粧料の幅は、0.05mm乃至1.5mmであること
を特徴とする化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記吐出工程は、吐出される前記第1の化粧料により前記容器の前記内面に模様を形成することを特徴とする請求項1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項3】
前記充填工程により充填される前記第2の化粧料は、透明な又は透光性を有する化粧料であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧料の製造方法。
【請求項4】
前記第1の用化粧料は、前記第2の化粧料と異なる効能を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項5】
前記充填工程の後に、前記第1の化粧料と同一又は異なる組成でなる化粧料を、固化された前記第2の化粧料の表面の少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出する第2の吐出工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載の化粧料の製造方法。
【請求項6】
前記第2の吐出工程の後に、前記第2の化粧料と同一又は異なる組成でなる第3の化粧料を充填する第2の充填工程を有することを特徴とする請求項5に記載の化粧料の製造方法。
【請求項7】
固化された前記第2の化粧料にノズルを挿入し、前記ノズルから前記第1の化粧料と同一又は異なる組成でなる化粧料を前記第2の化粧料内に連続的に定量吐出する第2の吐出工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうち、いずれか1に記載の化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の製造方法及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーション、チーク、口紅などの化粧料に対して、図形や文字等の模様を形成する方法として、モールドを用いた型抜きによって模様を形成すること(特許文献1参照)、レーザー光により焼損させて模様を形成すること(特許文献2参照)などが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-326908号公報
【文献】特開2000-247832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるようなモールドを用いた型抜きでは、細い線による文字や図形等の模様を形成することが困難であり、特に1mm以下の線幅の文字や図形等の模様を型抜きすることは極めて難しい。また、模様ごとに異なるモールドを作製しなければならず、既存設備の変更を伴うこととなる。
【0005】
また、特許文献2に開示されるようなレーザー光による模様の形成では、化粧料の表面に対して凸状の模様を形成することや、化粧料と異なる色彩の模様を形成することができない。
【0006】
更に、特許文献1や特許文献2に開示されるように、化粧料の表面に対して模様を形成すると、使用者が化粧料を使用する初期の段階で模様が失われてしまい、このような化粧料は模様を楽しむ期間が極めて短いものであった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、充填される化粧料の下側に、細い線状の模様を精巧かつ容易に形成することが可能な、化粧料の製造方法及び化粧料を提供することにある。また、本発明の目的には、模様を形成することのみならず、充填される化粧料とは異なる効能を有する別の化粧料を、充填される化粧料の下側に容易に配置することが可能な、化粧料の製造方法及び化粧料を提供することも含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の化粧料の製造方法は、第1の化粧料を容器の内面の少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出する吐出工程と、前記吐出工程後の前記容器に、前記第1の化粧料と異なる組成でなる第2の化粧料を充填する充填工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記吐出工程は、前記容器の前記内面に対して、液滴状態で吐出された前記第1の化粧料を線状に着弾させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記吐出工程は、吐出される前記第1の化粧料により前記容器の前記内面に模様を形成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記容器の前記内面に着弾した線状の前記第2の化粧料の幅は、0.05mm乃至1.5mmであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記容器の前記内面に着弾した線状の前記第2の化粧料の幅は、0.7mm以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記充填工程により充填される前記第2の化粧料は、透明な又は透光性を有する化粧料であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記第1の用化粧料は、前記第2の化粧料と異なる効能を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記充填工程の後に、前記第1の化粧料と同一又は異なる組成でなる化粧料を、固化された前記第2の化粧料の表面の少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出する第2の吐出工程を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の化粧料の製造方法において、前記第2の吐出工程の後に、前記第2の化粧料と同一又は異なる組成でなる化粧料を充填する第2の充填工程を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の化粧料の製造方法において、固化された前記第2の化粧料にノズルを挿入し、前記ノズルから前記第1の化粧料と同一又は異なる組成でなる第3の化粧料を前記第2の化粧料内に連続的に定量吐出する第2の吐出工程を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の化粧料は、容器の内面に連続的に定量吐出されてなる第1の化粧料と、前記第1の化粧料とは異なる組成でなる、前記容器に充填され固化されてなる第2の化粧料と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既存設備の大きな変更を伴うことなく、精巧な模様を長く楽しむことができる化粧料や、使用の途中で別の効能を有する化粧料が出現する化粧料を容易に製造可能であり、化粧料の高付加価値化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る化粧料を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)はA-A線における端面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る模様の例を示す図である。
図3】本発明に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図である。
図4】本発明に係る化粧料の製造システムを模式的に示す斜視図である。
図5】吐出用化粧料の吐出状態を示す模式図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る化粧料を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)はB-B線における端面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る化粧料を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)はC-C線における端面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る化粧料の製造方法、製造システム、及び化粧料について、図面を参照して説明する。
【0022】
<第1実施形態>
本実施形態に係る化粧料の製造方法、製造システム、及び化粧料について図1乃至図5を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る化粧料を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)はA-A線における端面図、図2は、本発明の第1実施形態に係る模様の例を示す図、図3は、本発明に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図、図4は、本発明に係る化粧料の吐出システムを模式的に示す斜視図、図5は、吐出用化粧料の吐出状態を示す模式図である。
【0023】
図1(a)に示すように、化粧料1は、一例として、円形に形成された底面と、当該底面から立設される側面とを有して、上面が開口したジャータイプの容器3に、油性固形化粧料2が収容されてなり、容器3の内底面3a(内面)に模様4が形成されたものである。なお、本実施形態においては、内底面3aが平滑に形成された容器3を一例として説明するが、その内底面3aの形状は、ドーム状に盛り上がった形状、凹凸面でなる形状などでもよく、特に限定されない。同様に、容器3の側面や開口部の形状も特に限定されない。
【0024】
図1(a)及び(b)に示すように、本実施形態に係る化粧料1は、吐出用化粧料(第1の化粧料)を容器3の内底面3a(内面)に対して吐出して形成された模様4と、この上から容器3に充填されて固化されている油性固形化粧料2(第2の化粧料)と、を有している。図1(b)に示すように、本実施形態に係る化粧料1は、吐出用化粧料でなる模様4が、油性固形化粧料2の下側(換言すれば、容器3の内底面3a)に形成される。なお、本実施形態においては、模様4が容器3の内底面3aに形成されるものを一例として説明するが、本発明はこれに限定されず、容器3の内面のいずれかに模様4が形成されるものであればよい。
【0025】
模様4は、容器3の内底面3aに対して、液滴状態で連続的に定量吐出された吐出用化粧料が線状に着弾されて形成されている。本発明において線状には、直線状、曲線状、実線状、破線状、及び、これらの組合せが含まれる。図1の化粧料1における模様4は、円を組み合わせてなる線描き状の幾何学模様とする一例を図示している(図2(a)参照)。また、図1(b)に示すように、模様4は、吐出用化粧料の組成、粘度、加熱温度等を適宜設定することにより、容器3の内底面3aから突出するように、凸条として形成されるようにしてもよい。なお、模様4は、図2(a)及び(b)に例示するような線描き状の図形であってもよいし、図2(c)に例示するような文字(記号を含む。)であってもよく、更にはこれらの組合せでもよい。更に、図2(d)に例示するように、線を複数隣接させることにより、全部又は一部の線幅が太く看取されるような模様4を形成してもよい。同様にして、線を複数隣接させることにより、恰も面状に塗り潰されたように看取される模様を形成してもよい。
【0026】
本実施形態に係る油性固形化粧料2は、一例としては、口紅、リップグロス、リップクリーム、コンシーラー、ファンデーション、アイカラー、チークカラー等、油性成分が含まれる化粧料であり、所定温度以上に加熱すると溶融状態となり、常温において形状を維持できる種々の油性化粧料が含まれる。
【0027】
また、油性固形化粧料2は、透明な又は透光性を有する化粧料を採択するのが好適である。油性固形化粧料2の下側(換言すれば、容器3の内底面3a)に位置する吐出用化粧料で形成された模様4が視認されるためである。なお、透明には有色透明及び無色透明のいずれも含まれ、パール剤等を含有するものであってもよいことは言うまでもない。
【0028】
本実施形態に係る模様4を構成する吐出用化粧料は、油性固形化粧料2と同様に油性固形化粧料を採用でき、以下では油性固形化粧料を用いる例を説明する。ただし、本発明において第1の化粧料としての吐出用化粧料は、油性固形化粧料に限定されるものではない。また、吐出用化粧料は、油性固形化粧料2とは異なる組成とし、例えば色彩や、パール剤含有の有無などが異なるものを採用する。
【0029】
[吐出工程・吐出装置・吐出システム]
以下、本発明に係る化粧料1の製造方法及び製造システムについて説明する。
まず、製造システムの第1ステーション(不図示)において、吐出用化粧料が、容器3の内底面3aの少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出される。本実施形態においては、吐出された吐出用化粧料により、容器3の内底面3aに模様4が形成される(図3(a)参照)。
【0030】
容器3の内底面3aに対する吐出用化粧料の吐出は、図4に示すように、吐出装置8と、駆動装置9と、制御装置(不図示)と、を含む吐出システム7により実行することが好ましい。
【0031】
吐出装置8は、吐出用化粧料を貯留する貯留部8aを有し、貯留部8a内の吐出用化粧料を液滴状態としてノズル8bから塗布対象物に向けて連続的に吐出する装置である。吐出装置8により、ノズル8bから連続的に吐出された吐出用化粧料を、微細な粒子として、塗布対象物に着弾させることが可能となる。
【0032】
吐出装置8は、制御装置による制御に従って、ノズル8bをZ軸方向に垂直駆動させることができるようになっている。
【0033】
吐出装置8による吐出用化粧料の吐出の開始及び停止は、制御装置により制御される。また、吐出装置8は、貯留部8aやノズル8bにヒーター(不図示)を備えており、制御装置によってヒーターの温度管理が可能に構成されている。これにより、吐出用化粧料(第1の化粧料)として油性固形化粧料を用いる場合、吐出用化粧料は、上記ヒーターで所定温度に加熱されることにより、吐出直前まで溶融状態に保たれる。
【0034】
塗布対象物である容器3の内底面3aとノズル8bとの距離は、1.5mm乃至2.0mm程度が好適である。なお、ノズル8bの外径及び内径は特に限定されないが、本発明においては、ノズル8bは一例として内径0.1mm以下のものが好適である。極細の繊細かつ精巧な模様4を形成するためである。
【0035】
吐出装置8は、加熱により溶融状態とされた吐出用化粧料を連続的に定量吐出する。一例として、1秒間あたりの吐出量は10~20mgであることが好ましい。吐出装置8のノズル8bから液滴状態で連続的に吐出される溶融状態の吐出用化粧料は、塗布対象物である容器3の内底面3aに着弾するまでの間に冷却され、内底面3aへの着弾とともに次々と内底面3a上に固着する。これにより、所望のデザインによる模様4が、容器3の内底面3aに形成される。
【0036】
また、吐出装置8は、塗布対象物である容器3の内底面3aに対して、液滴状態で吐出された吐出用化粧料(第1の化粧料)を連続的に着弾させて打点することにより線状の模様4を形成することができる。即ち、図5に示すように、吐出装置8は、液滴状態で吐出された吐出用化粧料を連続的に容器3の内底面3aに着弾させることにより、線状の模様4が形成される。その線幅Wは、ノズル8bの内径寸法、吐出用化粧料の組成、粘度、加熱温度を適宜設定することにより、所望の線幅とすることが可能である。極細の繊細かつ精巧な模様4を形成するために、線幅Wは、一例として、0.05mm乃至1.5mmであることが好ましく、また、0.7mm以下であることが更に好ましい。
【0037】
図4に示すように、駆動装置9は、基台9aと、基台9aの上でY軸方向に水平駆動が可能に設けられたステージ9bと、ステージ9bを跨ぐように基台9aに固定されたアーム9cと、を備える。吐出装置8は、ノズル8bをステージ9bに対して対向させた状態で、X軸方向に水平駆動が可能にアーム9cに取り付けられている。駆動装置9による吐出装置8及びステージ9aの駆動は、制御装置により制御される。
【0038】
制御装置の制御のもとで、吐出装置8がノズル8bをZ軸方向に駆動させること、駆動装置9が吐出装置8をX軸方向に駆動させること、及び、駆動装置9がステージ9aをY軸方向に駆動させること、のうちのいずれか1つが実行され、又は、いずれか2つ以上が同時に実行される。これにより、吐出装置8は、ステージ9aに載置される容器3の内底面3aのうち、所望の部分に対して吐出用化粧料を吐出することができる。このように、吐出システム7は、容器3に対するノズル8bの位置を水平方向(X軸方向及びY軸方向)及び/又は垂直方向(Z軸方向)に移動させることができるようになっている。
【0039】
制御装置は、吐出装置8及び駆動装置9の動作を制御する制御手段であり、吐出圧力、吐出回数、ヒーター温度などを含む種々の設定及び制御が可能である。制御装置には、容器3の内底面3aに形成する模様4に関するパターンデータが予め入力されている。そのパターンデータに基づいて、制御装置は吐出装置8及び駆動装置9を駆動させ、ノズル8bから吐出用化粧料を吐出して、パターンデータ通りの模様4を内底面3aに形成する。
【0040】
一例として、図2(a)や(b)に示すような模様4を形成する場合には、当該線描き模様に関するパターンデータを、制御装置に入力しておく。同様に、図2(c)や(d)に示すような模様4を形成する場合には、ローマ文字「ABCD&EFGI」のフォント・大きさ・位置などを予め設定したパターンデータを、制御装置に入力しておく。制御装置は、当該パターンデータに基づいて、吐出装置8及び駆動装置9を駆動させることにより、吐出用化粧料を前記パターンデータに対応した模様4を形成するように容器3の内底面3aに対して吐出する(図3(a)及び(b)参照)。
【0041】
なお、上記した吐出工程において、ステージ9b上に載置した容器3が、ステージ9b上で位置ズレが生じないようにするために、ステージ9bの表面部材を摩擦係数の高い素材で形成したり、ステージ9bに固定された保持部材(不図示)に容器3を保持させたりすることが好ましい。
【0042】
[充填工程・充填装置]
次に、製造システムの第2ステーション(不図示)において、油性固形化粧料2を形成するため、所定温度で加熱して溶解された流動状態の油性化粧料(バルク)が、脱気等の処理を経て充填装置(不図示)のホッパー(不図示)に貯留されており、この油性化粧料は、充填装置のノズル6から容器3の内側に充填される(図3(c)参照)。なお、容器3に充填された油性化粧料に対して、滑らかな表面2aを得るために、任意に再加熱(リヒート)処理が実行されてもよい。
【0043】
[固化工程・固化装置]
次に、製造システムの第3ステーション(不図示)において、前記充填工程(充填装置)により充填された油性化粧料が固化され、油性固形化粧料2が形成される(図3(d)参照)。固化の方法は特に限定されず、例えば、任意の冷却手段により冷却対象物に対して強制的に冷却処理を施す冷却工程を実施したり、冷却対象物を放置して室温まで冷却する放冷工程を実施したりしてもよい。上記の固化工程により、容器3内に充填・固化された、平滑な表面2aを有する油性固形化粧料2が得られる。
【0044】
なお、上記した第1の充填工程及び第1の固化工程では、ジャータイプの容器3内において平滑な表面2aを備えた油性固形化粧料2を充填する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。缶や、いわゆる化粧皿に油性固形化粧料が充填されるものであってもよい。また、例えば、任意の曲面や凹凸面を型取り可能なモールドを用い、いわゆるホットバック等の手法により、当該モールドに対応した立体的な曲面や凹凸面が型取られた表面を備える油性固形化粧料が容器3に充填されるものであってもよい。更に、容器3の上縁から突出するような立体的形状を備える油性固形化粧料でもよい。
【0045】
以上のようにして、容器(符号3参照)の内面(符号3a参照)に連続的に定量吐出されてなる第1の化粧料(符号4参照)と、第1の化粧料と異なる組成でなる、容器に充填され固化されてなる第2の化粧料(符号2参照)と、を有する化粧料(符号1参照)が得られる。
【0046】
上記した本発明の第1実施形態による化粧料の製造方法及び化粧料によれば、以下の効果を奏する。
(1)加熱により溶融状態とされた吐出用化粧料を微細な粒子として高精度に吐出する吐出装置によって模様4を形成するので、従来のようにモールドを用いた型抜きでは極めて困難であった線幅1mm以下の細い精巧な模様4を正確に形成することや、そのような模様4を曲面や凹凸面に対して形成することが極めて容易になり、化粧料1のデザインの選択の幅が広がり、繊細な模様4を備えた付加価値の高い化粧料1を製造することができる。
【0047】
(2)また、模様4の形成に際しては、所望のデザインによるパターンデータを制御装置に設定すればよいため、従来のモールドを用いた型抜きによる模様の形成のように、所望の模様ごとにモールドを製作したり、モールドを付け替えたりする必要がなく、既存設備の変更を伴わずに、化粧料1の製造の容易化を図ることができる。
【0048】
(3)また、吐出用化粧料による模様4が、油性固形化粧料2の下側、即ち、容器3の内底面3aに形成されるため、油性固形化粧料2の表面よりも奥側に精巧な模様4が位置することによる意外性を使用者に対して与えることができ、化粧料1のデザインの選択の幅のある、付加価値の高い化粧料1を容易に製造することができる。
【0049】
(4)また、吐出用化粧料による模様4が、油性固形化粧料2の下側、即ち、容器3の内底面3aに形成されるため、使用者によって油性固形化粧料2が使用される過程では模様4が維持され、より長い期間、模様4を楽しむことができる。
【0050】
(5)また、上記のような化粧料1の製造設備に関しては、吐出装置8を含む吐出システム7を追加すればよいだけであるため、既存設備の大きな変更を伴うこともない。
【0051】
<変形例>
上記した第1実施形態による化粧料1は、吐出用化粧料により模様4が形成されるものであったが、本発明は必ずしも何らかの模様(図2参照)が形成されるものに限定されない。即ち、本発明の化粧料は、容器(符号3参照)の内面(符号3a参照)に連続的に定量吐出されてなる第1の化粧料(符号4参照)と、第1の化粧料と異なる組成でなる、容器に充填され固化されてなる第2の化粧料(符号2参照)と、を有する構成であればよい。そのため、第2の化粧料(符号2参照)とは異なる効能を有する第1の化粧料を、容器(符号3参照)の内面(符号3a参照)に配置する化粧料としてもよい。以下の他の実施形態についても同様である。これにより、使用者が当該化粧料の使用を続ける過程で、別の効能を有する化粧料(吐出用化粧料)が出現するという付加価値のある化粧料を提供することができる。なお、この場合、第2の化粧料(符号2参照)に関しては、必ずしも透明な又は透光性を有する化粧料を採択する必要はない。
【0052】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る化粧料の製造方法、製造システム、及び化粧料について図6及び図7を参照して説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る化粧料を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)はB-B線における端面図、図7は、本発明の第2実施形態に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
図6(a)及び(b)に示すように、第2実施形態に係る化粧料100は、容器3に充填され固化された油性固形化粧料2と油性固形化粧料12との間にも模様が形成されている点で、第1実施形態に係る化粧料1と異なる。より詳しくは、化粧料100は、第1の吐出用化粧料(第1の化粧料)が容器3の内底面3a(内面)に対して吐出されて形成された模様4a(第1の模様)と、容器3に充填されて固化されている油性固形化粧料2(第2の化粧料)と、第2の吐出用化粧料が油性固形化粧料2の表面2aに対して吐出されて形成された模様4b(第2の模様)と、これらの上から更に充填されて固化されている油性固形化粧料12(第3の化粧料)と、を有している。油性固形化粧料2及び油性固形化粧料12は、同一の組成であってもよいし、例えば色彩や、パール剤含有の有無などにおいて異なる組成としてもよい。また、第2の吐出用化粧料は、第1の吐出用化粧料と同一又は異なる組成の化粧料を採用することができる。図6(a)及び(b)に図示する化粧料100では、一例として、図2(b)に示す線描き模様を模様4aに採用し、図2(a)に示す線描き模様を模様4bに採用している。このように、第2実施形態に係る化粧料100は、模様4a及び模様4bという複数層の模様を有するため、更に見栄えのよい奥行きのある模様を形成した付加価値の高い化粧料を提供することができる。
【0054】
以下、第2実施形態に係る化粧料100の製造方法及び製造システムについて説明する。第2実施形態に係る化粧料の製造方法は、第1実施形態の充填工程(第1の充填工程)の後に、吐出用化粧料を油性固形化粧料2の表面2aの少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出する吐出工程(第2の吐出工程)、更には、油性固形化粧料12(第3の化粧料)を充填する充填工程(第2の充填工程)を有するものである。
【0055】
[第1の吐出工程・吐出装置・吐出システム]
まず、製造システムの第1ステーション(不図示)において、第1の吐出用化粧料が、容器3の内底面3aの少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出される。本実施形態においては、第1の吐出用化粧料が吐出されて、容器3の内底面3aに模様4a(図2(b)参照)が形成される(図7(a)参照)。容器3の内底面3aに対する第1の吐出用化粧料の吐出は、図4に示す吐出システム7により実行することが好ましい。
【0056】
[第1の充填工程(充填装置)・第1の固化工程(固化装置)]
次に、製造システムの第2ステーション(不図示)において、加熱により溶融状態とされた油性化粧料が充填装置のノズル6から容器3の内側に充填される(図7(b)参照)。次に、製造システムの第3ステーション(不図示)において、前記第1の充填工程(第1の充填装置)により充填された油性化粧料が固化され、油性固形化粧料2が形成される(図7(c)参照)。
【0057】
[第2の吐出工程・吐出装置・吐出システム]
次に、製造システムの第4ステーション(不図示)において、第2の吐出用化粧料が、固化された油性固形化粧料2の表面2aの少なくとも一部に対して、液滴状態で連続的に定量吐出される。本実施形態においては、第2の吐出用化粧料が吐出されて、油性固形化粧料2の表面2aに模様4b(図2(a)参照)が形成される(図7(d)参照)。なお、油性固形化粧料2の表面2aに対する第2の吐出用化粧料の吐出は、上記の第1の吐出工程において用いた吐出装置(吐出システム)と同一のもので実行されてもよいし、別の吐出装置(吐出システム)で実行されてもよい。
【0058】
[第2の充填工程(充填装置)・第2の固化工程(固化装置)]
次に、製造システムの第5ステーション(不図示)において、第1の充填工程と同様にして、油性固形化粧料12を形成するため、加熱により溶融状態とされた油性化粧料が充填装置のノズル6から容器3の内側に充填される(図7(e)参照)。これにより、油性化粧料が、第2の吐出用化粧料により模様4bが形成された油性固形化粧料2の上に充填される。次に、製造システムの第6ステーション(不図示)において、第1の固化工程と同様にして、前記第2の充填工程(第2の充填装置)により充填された溶融状態の油性化粧料が固化され、油性固形化粧料12が形成される(図7(f)参照)。
【0059】
以上のようにして、容器3の内底面3aに連続的に定量吐出されてなる第1の化粧料としての第1の吐出用化粧料(符号4a参照)と、容器3に充填され固化されてなる第2の化粧料としての油性固形化粧料2と第3の化粧料としての油性固形化粧料12との間に、油性固形化粧料2及び/又は油性固形化粧料12と異なる組成でなる、連続的に定量吐出されてなる第2の吐出用化粧料(符号4b参照)と、を有する化粧料100が得られる。
【0060】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る化粧料の製造方法、製造システム、及び化粧料について図8及び図9を参照して説明する。図8は、本発明の第3実施形態に係る化粧料を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)はC-C線における端面図、図9は、本発明の第3実施形態に係る化粧料の製造方法を模式的に示す図である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
図8(a)及び(b)に示すように、第3実施形態に係る化粧料200は、容器3に充填され固化された油性固形化粧料2の内側にも模様が形成されている点で、第1実施形態に係る化粧料1と異なる。より詳しくは、化粧料200は、第1の吐出用化粧料(第1の化粧料)が容器3の内底面3a(内面)に対して吐出されて形成された模様4a(第1の模様)と、容器3に充填されて固化されている油性固形化粧料2(第2の化粧料)と、第2の吐出用化粧料が油性固形化粧料2内に吐出されて形成された模様4b(第2の模様)と、を有している。第2の吐出用化粧料は、第1の吐出用化粧料と同一又は異なる組成の化粧料を採用することができる。図8(a)及び(b)に図示する化粧料200では、一例として、図2(b)に示す線描き模様を模様4aに採用し、図2(a)に示す線描き模様を模様4bに採用している。このように、第3実施形態に係る化粧料200は、第2実施形態に係る化粧料100と同様に、模様4a及び模様4bという複数層の模様を有するため、更に見栄えのよい奥行きのある模様を形成した付加価値の高い化粧料を提供することができる。
【0062】
以下、第3実施形態に係る化粧料200の製造方法及び製造システムについて説明する。第3実施形態に係る化粧料の製造方法は、第1実施形態の充填工程の後に、吐出用化粧料を油性固形化粧料2内に対して連続的に定量吐出する吐出工程(第2の吐出工程)を有するものである。
【0063】
[第1の吐出工程・吐出装置・吐出システム]
まず、製造システムの第1ステーション(不図示)において、第1の吐出用化粧料が、容器3の内底面3aの少なくとも一部に対して液滴状態で連続的に定量吐出される。本実施形態においては、吐出された第1の吐出用化粧料により、容器3の内底面3aに模様4a(図2(b)参照)が形成される(図9(a)参照)。容器3の内底面3aに対する第1の吐出用化粧料の吐出は、図4に示す吐出システム7により実行することが好ましい。
【0064】
[充填工程(充填装置)・固化工程(固化装置)]
次に、製造システムの第2ステーション(不図示)において、加熱により溶融状態とされた油性化粧料が充填装置のノズル6から容器3の内側に充填される(図9(b)参照)。次に、製造システムの第3ステーション(不図示)において、前記充填工程(充填装置)により充填された油性化粧料が固化され、油性固形化粧料2が形成される(図9(c)参照)。
【0065】
[第2の吐出工程・吐出装置・吐出システム]
次に、製造システムの第4ステーション(不図示)において、前記固化工程(固化装置)により固化された油性固形化粧料2に対して、第2の吐出用化粧料を吐出するためのノズル8bが任意の深さdまで挿入され、油性固形化粧料2内に第2の吐出用化粧料が連続的に定量吐出される。本実施形態においては、吐出された第2の吐出用化粧料により、油性固形化粧料2の内側に模様4b(図2(a)参照)が形成される(図9(d)及び(e)参照)。なお、油性固形化粧料2の内側に対する第2の吐出用化粧料の吐出は、上記の第1の吐出工程において用いた吐出装置(吐出システム)と同一のもので実行されてもよいし、別の吐出装置(吐出システム)で実行されてもよい。なお、ここでは、所定の深さdにおける水平方向にノズル8bを移動させながら吐出用化粧料を吐出して、模様4bが同一平面上に形成される例を説明する。ただし、本発明はこれに限られず、吐出システムは、水平方向及び垂直方向にノズル8bを移動させながら吐出用化粧料を吐出することにより、立体的な模様を形成することもできることは言うまでもない。
【0066】
なお、ノズル8bの外径及び内径は特に限定されないが、本実施形態においては、ノズル8bは一例として外径0.3mm以下のものが好適である。油性固形化粧料2内に、ノズル8bを所定の深さdまで挿入して水平方向及び/又は垂直方向に移動させることに伴って発生する油性固形化粧料2の表面2aの荒れを少なくするためである。ノズル8bの断面形状は、油性固形化粧料2内でノズル8bを移動させる時の抵抗を低減させるために、円形の他にも菱形や楕円形などを採用してもよい。
【0067】
また、吐出装置8は、塗布対象物である油性固形化粧料2(第2の化粧料)内にノズル8bを挿入して水平方向及び/又は垂直方向に移動させながら吐出用化粧料を吐出し、油性固形化粧料2の中に連続的に着弾させて打点することにより、線状の模様4bを形成することができる。即ち、図5に示すように、吐出装置8は、吐出された吐出用化粧料を連続的に油性固形化粧料2内に着弾させることにより、図8に示すような線状の模様4bを形成する。その線幅Wは、第1実施形態と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0068】
[加熱工程・加熱装置]
次に、製造システムの第5ステーション(不図示)において、容器3に充填されている油性固形化粧料2に対して加熱装置5により加熱処理が実行される(図9(f)参照)。これにより、上記の第2の吐出工程(吐出装置)において、油性固形化粧料2内にノズル8bが挿入されて水平方向及び/又は垂直方向に移動したことに伴って発生した油性固形化粧料2の表面2aの荒れが均され、滑らかな表面2aが得られる(図8(a)及び(b)参照)。
【0069】
以上のようにして、容器3の内底面3aに連続的に定量吐出されてなる第1の化粧料としての第1の吐出用化粧料(符号4a参照)と、容器3に充填され固化されてなる第2の化粧料としての油性固形化粧料2の内側に、油性固形化粧料2と異なる組成でなる、連続的に定量吐出されてなる第2の吐出用化粧料(符号4b参照)と、を有する化粧料200が得られる。
【0070】
上記の各実施形態においては、第2の化粧料及び第3の化粧料として、所定温度以上に加熱すると溶融状態となり、常温において形状を維持できる化粧料を用いる例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、第2の化粧料及び第3の化粧料としては、(a)加圧されて固化された粉末化粧料、(b)粉末化粧料基材にエタノールや水などの揮発性の溶剤を添加したスラリーを所定の容器に充填後、前記溶剤の少なくとも一部を除去して固化させた粉末化粧料、更には、(c)クリーム状化粧料であってもよい。
また、第1実施形態における吐出用化粧料4、第2実施形態における吐出用化粧料4a、4b、及び、第3実施形態における吐出用化粧料4aとしては、油性固形化粧料のように、所定温度以上に加熱すると溶融状態となり、常温において形状を維持できる化粧料が好ましいが、第3実施形態における吐出用化粧料4bとしては、そのような化粧料に限られない。即ち、第3実施形態における吐出用化粧料4bとしては、クリーム状化粧料や、粉末化粧料基材に所定の溶剤を添加したスラリーや、液状化粧料等であってもよく、更には、液状、ペースト状、乳液状等の種々のものを採択でき、美容液も含まれる。
【0071】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 化粧料
2 油性固形化粧料(第2の化粧料)
2a 表面
3 容器
3a 内底面(内面)
4 模様
4a 模様(第1の模様)
4b 模様(第2の模様)
5 加熱装置
6 ノズル
7 吐出システム
8 吐出装置
8a 貯留部
8b ノズル
9 駆動装置
9a 基台
9b ステージ
9c アーム
12 油性固形化粧料(第3の化粧料)
100 化粧料
200 化粧料
d 深さ(所定の深さ)
W 線幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9