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特許7048556高度消毒のための方法、システム及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】高度消毒のための方法、システム及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
A61L2/10
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019205163
(22)【出願日】2019-11-13
(62)【分割の表示】P 2016514141の分割
【原出願日】2014-05-16
(65)【公開番号】P2020036937
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2019-11-13
(31)【優先権主張番号】61/824,775
(32)【優先日】2013-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515318153
【氏名又は名称】ジャーミテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】GERMITEC SA
【住所又は居所原語表記】18 - 22 rue Mozart 92110 Clichy France
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】スミス,エイドリアン
(72)【発明者】
【氏名】デシェイス,クレメント
(72)【発明者】
【氏名】チェス,ロバート,ブルース
(72)【発明者】
【氏名】レピーヌ,フレデリック
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/016620(WO,A1)
【文献】特開平04-212361(JP,A)
【文献】特開2005-344987(JP,A)
【文献】特開2010-149020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00
A61B 1/00,90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具の高度消毒のための消毒装置であって、
内部ボリュームを有する消毒チャンバと、
C波紫外線(UV-C)を前記消毒チャンバ内へ放出するように構成された少なくとも1つの放射線源と、
前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出するように構成された少なくとも1つの放射線センサと、
前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内の少なくとも1つの温度を示す温度値を提示するように構成された少なくとも1つの温度センサと、
消毒対象物となる前記医療器具にダメージを与えることを避けるように選択された第1の温度閾値に前記医療器具の表面温度が達しないように状態を維持しつつ、前記医療器具の高度消毒を達成するように、消毒装置の動作を指示するように構成された処理部とを含み、
前記動作は、
前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されるC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
高度消毒を満たすように、前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、
前記少なくとも1つの温度センサで提示される温度値に基づいて、消毒チャンバの内部ボリューム内に位置決めされた前記消毒対象物の表面の少なくとも1つの温度を示す温度値を生成することと、
前記生成された温度値が、前記消毒対象物にダメージを与えることを避けるように、第1の温度閾値に達しないことを確認することと、
を含む、消毒装置。
【請求項2】
請求項1の消毒装置であって、
前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内に被汚染物を位置決めするように構成された位置決めアセンブリと、
前記位置決めアセンブリに固定されるとともに、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線を検出するように構成された較正センサとを含み、
前記処理部の前記動作は、更に、
較正手順中に少なくとも1つの較正係数を生成することと、
前記少なくとも1つの較正係数を、前記少なくとも1つの放射線センサにより提示されたC波紫外線値の少なくとも1つ又は前記累積C波紫外線値に適用することと、
を含む、消毒装置。
【請求項3】
請求項1の消毒装置であって、前記第1の放射線閾値は、約1,500μW/cm2~約5,000μW/cm2の間である、消毒装置。
【請求項4】
請求項1の消毒装置であって、前記第1の温度閾値は、約35℃~約55℃の間である、消毒装置。
【請求項5】
請求項1の消毒装置であって、前記少なくとも1つの放射線源は、
5ワット~100ワットの間の放射出力パワー定格と、約240ナノメートル~約270ナノメートルの間の波長出力仕様とを有する第1のUV-C放出ランプと、
5ワット~100ワットの間の放射出力パワー定格と、約240ナノメートル~約270ナノメートルの間の波長出力仕様とを有する第2のUV-C放出ランプとを含み、
前記第1及び第2のUV-C放出ランプは、消毒領域を形成するように位置決めされており、前記第1の放射線閾値に達する前記消毒領域内に放出される放射線は、消毒サイクルの期間にわたって送達される、消毒装置。
【請求項6】
請求項5の消毒装置であって、前記消毒サイクルは、約10秒~約600秒である、消毒装置。
【請求項7】
請求項1の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
プライマリ時限インターバルと固定期間とを設定することと、
前記固定期間にわたって放射線を放出するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に指示することと、
前記固定期間の満了後に前記累積C波紫外線値を更新することと、
前記累積C波紫外線値が前記第1の放射線閾値に達しない場合、前記固定期間にわたって放射線を放出するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に再指示することと、
前記プライマリ時限インターバルの満了を検出するとともに、前記累積C波紫外線値と前記第1の放射線閾値との比較に基づいて、消毒成功又は消毒失敗の表示を行うことと、を含む、消毒装置。
【請求項8】
請求項1の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
前記温度値を前記第1の温度閾値と比較することと、
前記温度値と前記第1の温度閾値との比較に基づいて、消毒成功又は消毒失敗の表示を行うことと、
を含む、消毒装置。
【請求項9】
請求項8の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
前記第1の温度閾値よりも低い温度を示す第2の温度閾値を設定することと、
前記温度値が前記第2の温度閾値に達したことを検出することと、
前記温度値が最大許容値を下回るまで放射線の放出を停止するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に指示することと、
を含む消毒装置。
【請求項10】
請求項1の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
前記累積C波紫外線値が、所与の暴露時間に、所期の放射線閾値を下回ることを検出することと、
前記少なくとも1つの放射線源と前記少なくとも1つの放射線センサとの間に少なくとも一部が位置決めされている物品により引き起こされるシャドウイング効果を、実行された前記検出に基づいて、査定することと、
前記シャドウイング効果の査定に基づき、前記シャドウイング効果の影響を低減又は防止するように、前記少なくとも1つの放射線源が前記C波紫外線を放出するように指示されている時間窓を調整することと、
を含む、消毒装置。
【請求項11】
医療器具を高度消毒するための消毒方法であって、
内部ボリュームを有するとともに、少なくとも1つの放射線源により放出されるC波紫外線(UV-C)を受けるように配置された消毒チャンバを用意することと、
消毒対象物となる前記医療器具を前記内部ボリュームに位置決めすることと、
プライマリ時限インターバルを超えない固定期間にわたってC波紫外線を前記内部ボリューム内へ放出するように前記少なくとも1つの放射線源に指示することと、
少なくとも1つの放射線センサにより、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出することと、
少なくとも1つの温度センサからの値に基づき、前記消毒対象物の表面の少なくとも1つの温度を示す温度値を生成することと、
前記温度値が、前記プライマリ時限インターバル中、前記消毒対象物にダメージを与えることを避けるように選択された第1の温度閾値を超えないことを確認することと、
前記固定期間にわたって前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されたC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
高度消毒を満たすように、前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、
を含み、
前記第1の温度閾値に前記消毒対象物の表面温度が達しないように状態を維持しつつ、前記消毒対象物の高度消毒を達成するように行う、消毒方法。
【請求項12】
請求項11の消毒方法であって、前記温度値は、前記内部領域の環境温度を示す、消毒方法。
【請求項13】
請求項11の消毒方法であって、
前記固定期間にわたって前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されるC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達しない場合、前記固定期間にわたって放射線を放出するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に再指示することと、
を含む、消毒方法。
【請求項14】
実行すると処理部に、消毒対象物となる医療器具を高度消毒するための消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体であって、
監視アルゴリズムを実行することと、
消毒アルゴリズムを、前記監視アルゴリズムの実行と同時に実行することとを含み、
前記監視アルゴリズムは、
前記消毒装置の消毒チャンバへのアクセス開口部に関する開閉ステータス表示を受信することと、
前記開閉ステータス表示に基づき、前記消毒装置の放射線源が放射線を放出するのを妨げることと
を行うように構成されており、
前記消毒アルゴリズムは、
固定期間にわたって前記消毒チャンバの内部ボリューム内へC波紫外線を放出するように前記放射線源に指示することと、
少なくとも1つの放射線センサにより、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出することと、
前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されたC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
高度消毒を満たすように、前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、
前記少なくとも1つの温度センサで提示される温度値に基づいて、消毒チャンバの内部ボリューム内に位置決めされた消毒対象物の表面の少なくとも1つの温度を示す温度値を生成することと、
前記生成された温度値が、前記消毒対象物にダメージを与えることを避けるように選択された第1の温度閾値に達しないことを確認することと、
を、前記第1の温度閾値に前記消毒対象物の表面温度が達しないように状態を維持しつつ、前記消毒対象物の高度消毒を達成するように、行うように構成されている、
非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する請求項14の非一時的コンピュータ可読媒体であって、
前記消毒装置は、冷却装置及び加熱装置のうちの少なくとも1つを含む温度制御装置を備え、
前記監視アルゴリズムを実行することは、更に、
冷却装置及び加熱装置のうちの少なくとも1つを含む温度制御装置を動作させることを含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する請求項15の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記温度制御装置を動作させることは、前記消毒チャンバ内の温度を約35℃~約55℃の間に維持することを含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する請求項14の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記監視アルゴリズムを実行することは、更に、
前記放射線源に関する少なくとも1つのパラメータを監視することと、
前記累積C波紫外線値が前記第1の放射線閾値に達する前に前記少なくとも1つのパラメータを調整することと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する請求項17の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記少なくとも1つのパラメータを調整することにより、前記放射線源に、5ワット~100ワットの間のパワーでC波紫外線を放出させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被汚染物を消毒する装置及びシステムを本明細書に記載する。また、本明細書に記載の装置及び方法の動作条件を決定する方法、ならびに非被汚染物を消毒する方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
再使用可能な医療用具を適切に消毒又は滅菌することは、病原菌の人から人への伝染を防止する上で重要である。医療用具に適用される滅菌及び消毒のレベルは、器具の分類によって異なる。アメリカ疾病予防管理センター(CDC:Centers for Disease Control)は、器具の用途に応じて、医療用具を、クリティカル器材、セミクリティカル器材及びノンクリティカル器材に分類している(医療施設における消毒と滅菌のためのCDCガイドライン 2008)。CDCガイドラインでは、クリティカル器材は、微生物に汚染されると高い感染リスクがあるとしている。
【0003】
クリティカル器材の例としては、無菌組織に接触する器具があり、手術用具、インプラント、及び無菌体腔内で使用する超音波プローブが含まれる。こうした器具は、使用に先立って滅菌を行う必要がある。
【0004】
セミクリティカル器材は、典型的には、粘膜又は非インタクト皮膚(non-intact skin)に接触するものである。例示的なセミクリティカル器材としては、膣、直腸及び泌尿器検査に使用するプローブ等の器具、呼吸療法や麻酔用装置、ならびに所定の内視鏡が挙げられる。こうした医療器具については、あらゆる微生物を避けるべきであるが、若干の細菌胞子は許容しうると考えられる。セミクリティカル器材は、少なくとも高度消毒(HLD:high level disinfection)が必要である。
【0005】
ノンクリティカル器材は、インタクト皮膚(intact skin)の非粘膜に接触するものである(例えば、血圧測定用カフや聴診器)。クリティカル及び一部のセミクリティカル器材は大型の固定式消毒システムで消毒を行うことが多いが、それとは異なり、ノンクリティカルの再使用可能器材のほとんどは、使用場所において汚染を除去することによって中低度の消毒を実施してもよく、こうした器材は、典型的には、中央処理エリアに搬送して点検を行う必要はない。
【0006】
クリティカル器材は、微生物に汚染されると高い感染リスクがあるため、あらゆる微生物を殺菌除去する滅菌処理が施されるのが一般的である。同様に、セミクリティカル器材は、使用前又は使用と使用の間に、病原体の個体数レベルをきわめて低くする高度消毒(HLD)を必要とする。滅菌又は高度消毒を実現する最も一般的な方法に、高温蒸気及び/又は化学消毒剤を用いる処理がある。化学消毒剤は、処理対象物が熱に弱い場合に用いられることが多い。医療器具の滅菌又は消毒に使用するのに好適な化学消毒剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、過酸化水素、オルトフタルアルデヒド、及び過酸化水素を含む過酢酸が挙げられる。現在、セミクリティカル医療器具の高度消毒を実現する最も一般的な方法に、器具の薬浴がある。セミクリティカル器材の薬浴法は、完全な滅菌を施すのに要するよりも短い時間だけ浸漬することによってHDLを実現することを含めてもよい。
【0007】
蒸気又は薬剤処理を利用する滅菌及び消毒処理は、効果的ではあるが、欠点もある。例えば、蒸気滅菌に伴う高温により、滅菌対象の器材がダメージを受けることがある。更に、化学滅菌又は消毒に使用する薬品は、適切に貯蔵及び処分するのにコストが掛かることが多く、また、その毒性による作業者へのリスクが存在し得る。化学滅菌の欠点としては、更に、器材の一部だけを浸漬したり何らかの方法で薬液に晒したりすることが多いということがある。医療器具の一部分を消毒槽に浸漬した場合、一般には器具のその部分だけが処理されることとなり、他の部分は潜在的に汚染されたままとなる。更に、化学的方法及び高温による(すなわち、蒸気中で高温へ急激に加熱する)システムは、処理対象の医療器具を構成する材料の劣化を引き起こす場合がある。また、蒸気又は薬剤による処理は時間がかかり手順によっては完了までに15~40分もかかる場合がある上、こうした手順では、用具や器具を取り外して処理センターへ搬送した後、診療現場へ戻す必要があるのが一般的である。このように処理時間が長くなると、医療器具が使えなくなるため、救急現場で使用する器具の場合は深刻な問題となりうる。医療器具を取り外すことの問題は、医療現場での器具の設置にも関わる。医療器具は、中央の電力系統や通信その他の制御機器に連結されることが多い。制御装置に繋がれた医療器具を頻繁に切断・再接続すると、摩耗や破損が発生し、コネクタの故障を引き起こすことが多い。必須の格納容器や安全システムは、特に化学消毒システムの場合(例えば、換気フード、専用の作業室、薬剤廃棄システム等)、設置コストの面から、多くの診療所や小規模の医療グループにとって採用が事実上困難になってしまう。こうした要因は、アメリカ食品医薬品局が推奨する再使用可能な医療器具のための滅菌・消毒手順へのコンプライアンス不足につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
再使用される被汚染物を、短時間で低温且つ臨床使用現場において効果的に高度消毒(HLD)する装置及びシステムについて説明する。短時間で行う消毒方法とは、高度消毒が10分以内(すなわち、600秒以下)に実現される方法を指す。消毒チャンバ内の温度は、低いレベルに維持及び監視する。監視する温度としては、消毒チャンバ内の環境温度が挙げられる。加えて、又は別の選択として、消毒対象物の表面温度を監視する。監視温度が一般に消毒対象物の表面温度であっても消毒チャンバ内の環境温度であっても、消毒システムの実施形態は、温度が35℃~55℃を超えないように運転される。
【0009】
開示の方法、装置及びシステムは、クリティカル及びセミクリティカルな医療器具用途に限定されるものではないが、例えば、超音波、気管内及び他の空洞内プローブを始めとするリユース医療器具・用具の高度消毒に特に適している。特定の実施形態では、本明細書に記載の装置及びシステムは、紫外(UV:ultra-violet)線を利用して、処理対象物の表面及び内部に許容し得ないほどの高温を発生することなしに、迅速に高度消毒を行うものである。医療器具は、ポリマー材料から成るものが多く、ポリマーは、消毒処理中の放射線曝露に起因する潜在的ダメージ及び劣化が加熱により早められ得ることが知られている。本明細書に開示のシステム及び方法を応用することにより、こうしたダメージ又は劣化の可能性が低減される。
【0010】
本明細書に開示の実施形態は、本明細書に記載の方法を行うために構成されており、消毒チャンバを含む。消毒チャンバは、複数の側壁と、上部と、消毒チャンバへのアクセスを可能にするドアとを有するハウジングを備えうる。消毒チャンバ自体は、更に、内部ボリュームを画定する少なくとも1つの壁を含んでもよく、ある実施形態では、消毒チャンバは、複数の側壁と、底部と、開口した中央部分を有する上部とを含むものである。方法及び装置が紫外線を利用する場合、消毒チャンバは、1以上の反射内面と、例えばA波紫外線、B波紫外線、又はC波紫外線の1以上の線源等の1以上の紫外線源と、1以上の放射線センサを含んでもよい。本明細書に記載の消毒チャンバでの使用に適した反射材料としては、例えば、グランドブリリアントアルミニウム(aluminum grand brilliant)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、硫酸バリウム含有塗料、又はその組み合わせが挙げられる。その他の材料、例えば、ここに明細書の一部を構成するものとして援用する米国特許第3,956,201号第2欄第56~61行、第7欄第50行~第12欄第2行の例及び他の箇所、ならびに米国特許第3,764,364号第2欄第70行~第3欄第20行及び他の箇所に開示の反射材料を用いてもよい。処理対象物を消毒チャンバ内に配置し消毒するのを容易にするために、チャンバは、消毒チャンバ内の所望の位置に消毒対象物を懸吊、収納又は何らかの方法で維持するためのサスペンションアセンブリを含んでもよい。
【0011】
消毒チャンバは、内部に配置された物品の消毒を、所望の、場合によっては選択可能な期間内に実現するのに役立つようなサイズ及び構成とする。例えば、消毒対象物、紫外線源及び/又は紫外線センサは、消毒チャンバ内の、線源からの放射線の管理された伝達による対象物の放射線曝露を向上する場所に位置決め(例えば、導入、挿入、懸吊又は配置)してもよい。更に、対象物、紫外線の直接線源及び紫外線の間接線源のうちの1つ以上は、消毒サイクル中、固定していなくてもよい。こうした実施形態では、消毒チャンバは、消毒サイクル中、対象物、紫外光の直接光源及び/又は紫外光の間接光源のうちの1つ以上を消毒チャンバ内で動かす(例えば、1以上の平面内で回転させる、上下動させる等)ことにより、対象物の各表面が消毒レベルの紫外線により確実に曝露されるように構成されるとともに運転される。紫外線源の数(及びその入力パワーと紫外線出力)、チャンバ内の紫外線センサの数及び配置、ならびに消毒チャンバ内の1以上の反射面を形成するのに使用する材料の有無及び選択については、選択した時間内に物品の1以上の面の温度が目標最高温度を超えないように、1以上の物品を消毒する方法を実行できる装置を提供するように選定してもよい。消毒チャンバ内で複数の放射線源を用いる特定の実施形態では、消毒対象物は、消毒チャンバ内に優先的に位置決めしてもよい。物品が各放射線源から実質的に等距離にあるようにチャンバを構成することが望ましいこともあり、特定の実施形態では、消毒チャンバは、内部の1以上の処理対象物がチャンバ内で再現可能に、すなわち各消毒サイクルにおいて同じ位置及び姿勢で位置決めできるようにして、繰り返し可能且つ予測可能な曝露が(ひいては消毒が)確実に行われるように構成される。
【0012】
消毒チャンバ内での処理対象物の位置決めを容易にするために、チャンバは、消毒対象物を選択した位置及び/又は姿勢で消毒チャンバ内に懸吊、収納又は何らかの方法により維持するためのサスペンションアセンブリを含んでもよい。こうしたアセンブリのためにいかなる好適な構成でも利用し得る。例えば、アセンブリは、物品を重力の影響下で消毒チャンバの上部の中心部分から懸吊するように構成してもよい。別の変形例では、取り付けメカニズムを具備して、物品を消毒チャンバ内のアセンブリ又は壁に取り外し可能に連結する、及び/又は、消毒チャンバ内に物品を位置決めし方向を定める、ようにしてもよい。該取り付けシステムを、物品の消毒対象外の領域に対して適用するか、又は相互作用させてもよい。例えば、画像化システムに取り付けたプローブのケーブルや、独立した(取り付けられていない)器具の一領域は、ノンクリティカルであると考えられるため、消毒処理は不要である。更に、消毒チャンバ内で使用するのに適した取り付けメカニズムは、1対の、複数対の、又は組み合わせて成る相互はめ合い要素を含んでもよい。消毒チャンバ内に物品を維持又は位置決めするためのアセンブリは、物品を拘束しつつ消毒用紫外線の伝達に干渉しないようにするために、紫外線透過材料から成る構成要素を含んでもよい。構成としては、チューブ、保持フォーク又は位置決め面が挙げられる。こうした構成は、物品を受け止めるように固定的に配置してもよく、ある位置へ移動したり、例えば二枚貝状に可動として、合わさることにより消毒対象物を捕捉又は捕縛したりするようにしてもよい。
【0013】
本明細書に係るシステムは、1以上の物品の消毒を実現するように運転される本明細書に記載の装置を含む。特定の実施形態では、消毒装置は、消毒装置を制御及び/又は監視するのに有用な1以上のアルゴリズムに従って運転される。こうした実施形態では、1以上の被汚染物を消毒装置の消毒チャンバ内に位置決めし、物品を消毒可能な環境条件に対する当該1以上の被汚染物の曝露(例えば、紫外線に対する曝露)を開始する。消毒条件を開始した後、アルゴリズムに従って1以上の入力を収集及び処理することができる。特定の実施形態では、本明細書に係るシステムは、1以上のパラメータまたはシステム条件を決定、較正又は調整する1以上のアルゴリズムに従い、消毒条件を終了してもよい地点(「終了地点」又は「終了の地点」)に達したか否かを判断したり、処理を延長したり、又は1以上の処理対象物への無用なダメージを避けるために消毒条件を終了すべき地点を知らせたりするように運転が行われる。本明細書に記載のシステムが利用するアルゴリズムに従って処理される情報としては、例えば、消毒用条件に対する曝露の決定、チャンバ内又は消毒対象物表面の各所の温度、および物品を消毒用条件に曝露する時間が挙げられる。収集した情報は、正確な測定値が確実に得られるように処理してもよく、例えば、複数のセンサの紫外線測定値を平均したり、履歴値と比較したり、より高度な数学モデルやフィルタに組み込んだりしてもよい。本明細書に記載のシステムを運転するのに利用するアルゴリズムにより収集・処理できる情報の例としては、更に、紫外線源の動作ステータス及び/又は出力、紫外線センサのステータス又は応答性、ならびに消毒条件の経時的な変動を引き起こし得る他のモニタリング因子が挙げられる。
【0014】
消毒システムは、手動で運転を行い、1人以上の操作者が消毒装置に1以上の物品を装填し、消毒サイクルを開始し、サイクルの終了地点を決定するのに用いられるアルゴリズムの実行に必要なシステムパラメータを監視し、アルゴリズムに従って消毒サイクルを終了するようにすることができる。消毒システムは、半自動で運転を行い、運転に必要なタスクの1つ以上、例えば、システムパラメータを監視すること、アルゴリズムを適用してある消毒サイクルの終了地点を決定すること、又は消毒サイクルを終了すること等を自動化するようにすることができる。あるいは、消毒システムは、全自動で運転することができる。本開示の目的上、全自動システムとは、操作者が消毒サイクルを開始した後、消毒サイクル終了までのその後の各工程が自動化されているものである。特定の実施形態では、本明細書に開示のシステムは、システム構成要素を較正し、消毒条件を監視し、消毒サイクルを終了するように動作可能な1以上のアルゴリズムを実行可能な1以上のプロセッサを含む。ある実施形態では、本明細書に記載のシステムは、1以上のシステム条件に基づき、消毒サイクルの終了の地点を査定及び/又は決定するアルゴリズムを実行するように構成された1以上のプロセッサを含む。例えば、1以上のセンサで、消毒サイクルを通して、少なくとも以下に関する測定を行ってもよい:1)例えば単純平均又は点暴露量等、1以上のセンサで測定した消毒条件に対する数学的重み付け、2)1以上のセンサで測定した消毒条件に対する総曝露量、3)1以上のセンサで測定した消毒条件に対する平均曝露量と、複数のセンサの1つ以上で測定した消毒条件に対する総曝露量との組み合わせ、4)消毒条件に対する実際の曝露の期間又は経過時間、5)消毒チャンバ内で測定された1以上の温度及び消毒サイクル対象物の注目位置における1以上の表面温度等の温度、6)例えば1以上の放射線源又はセンサ等のシステム構成要素の動作条件、および7)チャンバ内のセンサの位置や、センサの物品への近接度、センサで検出した曝露量の経時的変化に基づいて異なるセンサの曝露量を選択的に重み付けする等による高度な数学処理(例えば、フィルタ)や、その他の処理。
【0015】
被汚染物の迅速な高度消毒のための方法もまたここに提供する。開示の方法は、1以上の消毒対象物にダメージを与えたり劣化させたりしにくい条件で行うことができる。例えば、紫外線を使用することにより、本明細書に係る方法は、数分(例えば、10分未満)で医療器具の高度消毒を行うとともに、消毒対象器具の表面温度が選択した上限閾値、例えば、55℃未満を超えないように条件を維持することができる。さらに特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、C波紫外線を用いて、消毒した器具が臨床又は治療現場において再使用できるようにするために、選択した高レベルの消毒を、許容し得ると考えられる短い時間で、行ってもよい。妥当な時間としては、5分以下、3分以下、1.5分以下、及び1分以下が挙げられる。本明細書に記載に方法が提供する迅速な消毒サイクル時間により、生産性の向上及び消毒プロトコルへの準拠が可能になるとともに、熱による消毒対象物の好ましくない紫外線(又は他の放射線)劣化の加速を防止することができる。
【0016】
本明細書に係る方法の放射線曝露量及び処理温度は、消毒対象物の構成材料及び/又は構成要素間の接合又は結合の劣化を緩和するように選定される。提供される方法、装置及びシステムは、例えば、マイコバクテリウム種(mycobacterium species)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Tricophyton mentagrophytes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、腸内連鎖球菌(Enterococcus hirae)、枯草菌(Bacillus subtilis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、クロストリジウム・スポロゲネス(Clostridium sporogenes)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、オルソポックスウイルス(orthopoxvirus)、エンテロウイルス(enterovirus)、アデノウイルス5型(adenovirus type 5)、及びヒト・パピローマ・ウイルス(human papilloma virus)を始めとする様々な微生物の除去に適している。
【0017】
ある物品、微生物、又は汚染種に対する良好な消毒条件を決定する方法も提供される。消毒に要する条件をよりよく特定するとともに、消毒条件に対する物品の好ましくない過剰曝露又は曝露不足の可能性を低減するため、本明細書に記載の方法は、目標微生物について収集したテストデータを用いて、本明細書に記載の消毒装置及びシステムの動作パラメータを設定及び確認する方法を提供する。例えば、特定の実施形態では、注目する1以上の病原体のテストを行う。このとき、既知の量の選択した病原体(例えば、生細菌、休眠胞子、真菌、カビ、ウイルス)を、制御された消毒条件(例えば、単位面積当たりに送達されるエネルギーが既知の線量の紫外線)に曝露する。選択した病原体を、例えばガラス基板等の基材上に付着し、制御された線量の紫外線を提供するように位置決めされた紫外線源から送達される紫外線に曝露することもできる。
【0018】
放射線源は、ジュール/秒、ワット、又は他の測定単位で測定される一定レートの放射線エネルギーを送達するとともに、選択された又は選択可能な時間(例えば、秒)に渡って放射線エネルギーを送達することによって、選択した放射線量を送達するように運転してもよい。(フォトニクス及び放射線研究において、単位面積当たりのパワーレベルすなわち放射照度〔ワット/cm2〕を定義する場合、放射線が入射又は透過する基準面積は通例m2又はcm2で定義される)。こうした実施形態では、例えば、ターゲットを真上から照射し、入射放射エネルギーを基材平面において測定することができる。評価対象となる生存可能な病原体の一定の対数減少を実現するのに要する条件から、本明細書に記載の消毒システムのシステム条件及び消毒サイクル時間を設定する開始条件が与えられる。次に、こうした情報を用いて、実際の消毒システムにおいて、消毒対象物に対する1回以上の試験運転を経て、消毒サイクル条件の確認を行う。開始条件により達成される結果に応じて、消毒条件を加減調整し、消毒条件に対して目標物を無用に過剰曝露する危険を犯すことなく必要なレベルの消毒を実現することができる。
【0019】
本明細書に記載の装置及びシステムは、1以上の消毒用放射線源及び/又は1以上の消毒用放射線検出器を較正できるように構成してもよい。例えば、消毒チャンバは、1以上の較正用センサの配置と、チャンバ内の1以上の領域に送達される消毒用放射線エネルギーの瞬時(すなわち、測定が行われた瞬間の)放射照度レベル及び/又は総線量(すなわち、放射照度の時間積分)の査定とが可能であるように構成してもよい。1以上の較正用センサで得た指示値を用いて、システムサイクル時間を調整し、最低線量の消毒用放射線エネルギーがより確実に送達されるようにすることができる。較正用センサは、位置決めアセンブリと関連付けてもよく、消毒チャンバは、較正用センサが消毒チャンバで精密に(すなわち、繰り返し可能に)且つ正確に(すなわち、目的の場所へ位置決めされること)配置されるように位置決めアセンブリを受け止めるように構成してもよい。特定の実施形態では、1以上の較正用センサで得た指示値を、消毒チャンバ内に含まれる1以上のセンサにより検出される指示値と比較する。この比較により、1以上の較正用センサで検出される値と、消毒用チャンバに含まれる1以上のセンサで検出される値とを相関させるとともに、消毒チャンバの1以上のセンサで得られる値に対して適用する較正関数を算出することが可能となる。このようにしてシステムを較正することにより、システム及び/又は操作者は、例えば、システムにおける選択した初期動作レベルを設定したり、システム構成要素が経年経時変化した場合や、放射線源や検出器等といった構成要素のアフターサービス及び/又は交換に伴って変化した場合に、選択した動作レベルを再設定したり、システム毎のばらつきや、消毒チャンバ内に放出・検出される消毒用放射線量に関するその他の変動要因も勘案したりすることができる。
【0020】
消毒装置の1つは、内部ボリュームを有する消毒チャンバと、C波紫外線(UV-C)を前記消毒チャンバ内へ放出するように構成された少なくとも1つの放射線源と、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出するように構成された少なくとも1つの放射線センサと、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内の少なくとも1つの温度を示す温度値を生成するように構成された少なくとも1つの温度センサと、消毒装置の動作を指示するように構成された処理部とを含み、前記動作は、前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されるC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、前記温度センサからの温度値が第1の温度閾値に達しないことを確認することとを含むもの、と要約しうる。
【0021】
消毒方法の1つは、内部ボリュームを有するとともに、少なくとも1つの放射線源により放出されるC波紫外線(UV-C)を受けるように配置された消毒チャンバを用意することと、プライマリ時限インターバルを超えない固定期間にわたってC波紫外線を前記内部ボリューム内へ放出するように前記少なくとも1つの放射線源に指示することと、少なくとも1つの放射線センサにより、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出することと、少なくとも1つの温度センサからの値に基づき、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内の少なくとも1つの温度を示す温度値を生成することと、前記温度値が、前記プライマリ時限インターバル中、第1の温度閾値を超えないことを確認することとを含むもの、と要約しうる。
【0022】
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体の1つは、監視アルゴリズムを実行することと、消毒アルゴリズムを、前記監視アルゴリズムの実行と同時に実行することとを含み、前記監視アルゴリズムは、前記消毒装置の消毒チャンバへのアクセス開口部に関する開閉ステータス表示を受信することと、前記開閉ステータス表示に基づき、前記消毒装置の放射線源が放射線を放出するのを妨げることとを行うように構成されており、前記消毒アルゴリズムは、固定期間にわたって前記消毒チャンバの内部ボリューム内へC波紫外線を放出するように前記放射線源に指示することと、少なくとも1つの放射線センサにより、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出することと、前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されたC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、温度センサからの温度値が第1の温度閾値に達しないことを確認することとを行うように構成されているもの、と要約しうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
非限定的且つ非包括的な実施形態を、以下の図面を参照しつつ説明する。特に断らない限り、同じ記号は各図を通して同じ部材を指す。図中の要素のサイズ及び相対位置は、必ずしもスケール通りに描かれたものではない。例えば、種々の要素の形状は、図面の判読性を向上するように選択、拡大、配置している。図示の要素の特定の形状は、図面の認識を容易にするために選択してある。以下、添付の図面を参照しつつ、1以上の実施形態を説明する。
【0024】
図1図1は、例示の消毒装置の斜視図を示す。
【0025】
図2A図2A図2Dは、種々の例示の消毒チャンバ形状を示す。図2Aにおいて、消毒チャンバは直方体として構成される。図2B図2C及び図2Dにおいて、消毒チャンバはそれぞれ三角形、円形、又は二重楕円形状に構成される。
図2B図2A図2Dは、種々の例示の消毒チャンバ形状を示す。図2Aにおいて、消毒チャンバは直方体として構成される。図2B図2C及び図2Dにおいて、消毒チャンバはそれぞれ三角形、円形、又は二重楕円形状に構成される。
図2C図2A図2Dは、種々の例示の消毒チャンバ形状を示す。図2Aにおいて、消毒チャンバは直方体として構成される。図2B図2C及び図2Dにおいて、消毒チャンバはそれぞれ三角形、円形、又は二重楕円形状に構成される。
図2D図2A図2Dは、種々の例示の消毒チャンバ形状を示す。図2Aにおいて、消毒チャンバは直方体として構成される。図2B図2C及び図2Dにおいて、消毒チャンバはそれぞれ三角形、円形、又は二重楕円形状に構成される。
【0026】
図3A図3A図3Bは、一変形例に係る直方体状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図3Aは上面図を示し、図3Bは斜視図を示す。
図3B図3A図3Bは、一変形例に係る直方体状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図3Aは上面図を示し、図3Bは斜視図を示す。
【0027】
図4A図4A図4Bは、図3A図3Bに係る八角柱状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図4Aは上面図を示し、図4Bは斜視図を示す。
図4B図4A図4Bは、図3A図3Bに係る八角柱状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図4Aは上面図を示し、図4Bは斜視図を示す。
【0028】
図5A図5A及び図5Bは、別の実施形態に係る直方体状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図5Aは上面図を示し、図5Bは斜視図を示す。
図5B図5A及び図5Bは、別の実施形態に係る直方体状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図5Aは上面図を示し、図5Bは斜視図を示す。
【0029】
図6A図6A及び図6Bは、図5A図5Bに係る八角柱状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図6Aは上面図を示し、図6Bは斜視図を示す。
図6B図6A及び図6Bは、図5A図5Bに係る八角柱状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図6Aは上面図を示し、図6Bは斜視図を示す。
【0030】
図7A図7A及び図7Bは、別の変形例に係る二重楕円状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図7Aは上面図を示し、図7Bは斜視図を示す。
図7B図7A及び図7Bは、別の変形例に係る二重楕円状消毒装置内のC波紫外線源及びC波紫外線センサの位置を示す簡略図である。図7Aは上面図を示し、図7Bは斜視図を示す。
【0031】
図8A図8A図8Bは、別の変形例に係る直方体状消毒装置内のC波紫外線源及び光ファイバC波紫外線センサを示す簡略図である。図8Aは上面図を示し、図8Bは斜視図を示す。
図8B図8A図8Bは、別の変形例に係る直方体状消毒装置内のC波紫外線源及び光ファイバC波紫外線センサを示す簡略図である。図8Aは上面図を示し、図8Bは斜視図を示す。
【0032】
図9A図9A図9Bは、図8A図8Bに係る八角柱状消毒装置内のC波紫外線源及び光ファイバC波紫外線センサを示す簡略図である。図9Aは上面図を示し、図9Bは斜視図を示す。
図9B図9A図9Bは、図8A図8Bに係る八角柱状消毒装置内のC波紫外線源及び光ファイバC波紫外線センサを示す簡略図である。図9Aは上面図を示し、図9Bは斜視図を示す。
【0033】
図10A図10A図10Bは、別の変形例に係る二重楕円状消毒装置内のC波紫外線源及び光ファイバC波紫外線センサを示す簡略図である。図10Aは上面図を示し、図10Bは斜視図を示す。
図10B図10A図10Bは、別の変形例に係る二重楕円状消毒装置内のC波紫外線源及び光ファイバC波紫外線センサを示す簡略図である。図10Aは上面図を示し、図10Bは斜視図を示す。
【0034】
図11A図11A図11Bは、例示の消毒サイクル及び並列的に稼働する例示のシステム監視制御アルゴリズムを示す。
図11B図11A図11Bは、例示の消毒サイクル及び並列的に稼働する例示のシステム監視制御アルゴリズムを示す。
【0035】
図12A図12A図12Bは、消毒チャンバ内に較正センサを再現可能に配置するための、本明細書に係る位置決めアセンブリの例を示す。
図12B図12A図12Bは、消毒チャンバ内に較正センサを再現可能に配置するための、本明細書に係る位置決めアセンブリの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
被汚染物の消毒のための装置、システム及び方法をここに開示する。提供される装置、方法及びシステムは、例えば、CDCによりクリティカル又はセミクリティカル器材と分類される医療器具等の医療器具の消毒に適している。本明細書に記載の技術を用いて処理される物品は、他の装置、システム又は構成要素に接続又は係留されてもされなくてもよい。例えば、医療器具の文脈においては、本明細書に記載の技術は、超音波プローブの消毒に適している。現在、超音波プローブは、中央処理装置やディスプレイ等に対して、例えばプローブへの電力又はデータ通信機能を提供する1以上のケーブルによって係留するものが多い。しかし、無線超音波プローブは、装置、システム又は構成要素に係留する必要がない。本明細書に記載の装置、システム及び方法は、係留された(例えば有線の)器具及び係留されない(例えば無線の)器具に適するとともに、これらの器具に対応可能に適合させることができる。
【0037】
本明細書に記載の方法、装置及びシステムにより提供される消毒サイクルの対象となる物品は、高度消毒を受ける。本明細書において、「高度消毒」及び「HLD」とは、被汚染物上における1以上の特定微生物を少なくとも105の対数減少を与えるのに十分な処理を指す。HLD消毒手順は、1以上の特定微生物を約105~106の対数減少を与えるのに十分であり、ある実施形態では、「高度消毒」消毒手順は、物品中の1以上の特定微生物の対数減少を約106超とするものである。なお、場合によっては、本明細書に開示の消毒サイクルは、物品上の1の微生物を少なくとも106の対数減少を与えるのに十分なものである。物品上の微生物量に要求される減少量は、必要な消毒のレベルによって異なり、提供する消毒のレベルは、消毒サイクルのパラメータを変更又は調整することで調整することができる。

I.装置及びシステム
【0038】
本明細書に記載の装置は、消毒チャンバを含む。消毒チャンバは、消毒対象物を導入可能な内部ボリュームを画定する1以上の壁を含む。ある実施形態では、消毒チャンバは、1以上の側壁と、底部と、中央部分を有する上部とを含む。ある実施形態では、消毒チャンバの内部は、概して1以上の反射面を含むものである。1以上の反射面を備える場合、こうした面は、1以上の壁の少なくとも一部、その付近、又はその上にわたって配置してもよい。更に、1以上の反射面を1以上の消毒用放射線源に対して配置して、選択した強度の消毒用放射線を消毒チャンバ内に送達しやすくしてもよい。ある実施形態では、消毒用放射線は、UV管で発生させた紫外(UV)線であり、1以上の反射面を完全又は部分的に管の後部に配置して、UV管で発生させた紫外線を消毒チャンバの中央又は消毒領域へと誘導する。消毒チャンバは、オプションとして、消毒対象物をチャンバ内に位置決めするためのサスペンションアセンブリを含んでもよい。消毒チャンバを、迅速且つ低温で消毒を実施するのに役立つ適当な形状又は配置のハウジング内に収納してもよい。ある実施形態では、消毒チャンバを収容したハウジングは、消毒チャンバとほぼ同様の外形を有する。なお、ハウジングを備える場合、ハウジングは、いかなる選択した形状及びサイズを有して、消毒チャンバを収納又は何らかの方法で支持するとともに、本明細書に記載の消毒システムを選択した用途又は動作環境に適用してもよい。
【0039】
一般に、物品の高度消毒は、均一強度の紫外線を、物品の全表面に対して、物品のサイズや形状に拘わらずほぼ一様に送達することで実現される。そのためには、消毒装置の1以上の構成要素及び装備を、消毒対象物のサイズ及び形状に対応するように選定してもよい。選定する構成要素及び装備としては、消毒チャンバのサイズ及び形状、1以上の関連する放射線源の数及び配置、放射線源の波長及びパワー、ならびに消毒チャンバ内に配置する1以上の反射面、1以上のパーティション、1以上の位置決め装置、1以上のセンサ及び1以上のその他の装備の位置、サイズ、材質及び形状が挙げられる。特定の消毒装置に対して選定を行うことにより、消毒チャンバ内に紫外線エネルギーが均一に分散され、シャドウイングに対する感度が低下するとともに、消毒対象物の紫外線曝露がより均一化される。
【0040】
消毒チャンバは、1以上の紫外線源及び1以上の紫外線センサアセンブリを含むか又は含むように配置される。特定の実施形態では、消毒チャンバ内の紫外線源は、C波紫外線源であり、上記1以上の紫外線センサアセンブリは、UV-C曝露の検出及び定量に適している。消毒チャンバ内部は、概して被汚染物の迅速な高度消毒に合わせたサイズ及び形状となっており、上記1以上のC波紫外線源及び1以上のC波紫外線センサは、消毒チャンバ内で、チャンバ内に位置決めされた被汚染物を迅速に高度消毒するように構成されている。
【0041】
ある実施形態では、消毒チャンバの断面形状は、直方体(図2A)、三角形(図2B)、円形(図2C)、楕円形、二重楕円形(図2D)、又は他の形状であってよい。ハウジング及び消毒チャンバは、同じ又は異なる全体形状又は配置を有してよい。図1を参照すると、図示の高度消毒装置100は、八面柱形状のハウジング102を有している。ハウジング102は、複数の側壁104と、上部106と、側壁の1つの中に配置された、消毒チャンバ110へのアクセスを可能にするためのドア108とを有する。図1のドア108は垂直軸を中心に回動可能であるように図示されているが、消毒チャンバへの適切なアクセスが可能である限り他のドア構成を用いてもよい。ドア108を開くと、消毒チャンバ側壁にアクセス開口部112が形成されること、及びアクセス開口部112が消毒チャンバ110に連通していることが理解されよう。
【0042】
消毒チャンバの内部は、迅速且つ低温での消毒を容易にするように配置された1以上の反射面を含んでもよい。反射面は、典型的には、少なくとも反射率30%を有する1以上の材料から形成される。「少なくとも反射率30%」とは、入射紫外線、特にC波紫外線域の入射紫外線の70%未満が吸収され、残りの入射放射線が拡散及び鏡面反射の一方又は両方により反射されることを指す。消毒チャンバに特に有用であろう反射材料として、アルミニウム、ガラス、マグネシウム、ステンレス鋼、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、硫酸バリウム含有塗料で処理した基材材料、ならびにそれらの合金、誘導体及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある変形例では、反射面は、「グランドブリリアント」(grand brilliant)状態に研磨されたアルミニウムを含む。別の変形例では、反射面は、ポリテトラフルオロエチレンPTFEを用いて形成してもよく、種々の手段によりPTFE及び同様のポリマーを別の基材にコーティングして反射面を形成してもよい。特定の実施形態では、消毒チャンバの反射内面は、製造技術により可能な限りの反射率を有するように形成される。こうした手法により、低温で行われる高強度消毒放射を利用した消毒処理が容易になる。
【0043】
消毒チャンバの内面は、内面による紫外線吸収を低減するとともに、紫外線を反射して消毒チャンバ内及びチャンバ内に配置された1以上の物品へと方向転換するように位置及び形状を決めてもよい。消毒チャンバの材料及び構成は、消毒チャンバ内の温度を上昇させるのに寄与する特定のUV又は他の波長の電磁エネルギー(すなわち、長波長の放射線)を優先的に減衰させるように選択してもよい。すなわち、消毒チャンバの形状によって、チャンバ内の放射照度を増大及び均一化することにより、放射線を対象物へ迅速且つ効率的に誘導してもよく(すなわち、放射線が消毒チャンバの内部ボリュームの中央を通過すること)、消毒チャンバに使用する反射材料によって、放射線を低損失で(すなわち、入射したのとほぼ同じ量のエネルギーが表面から戻ってくること)反射(例えば、再放射又は再放出)してもよい。特定の実施形態では、消毒チャンバの内壁は、1以上の紫外線源から放出されるC波紫外線の損失を低減するように構築及び構成される。こうした実施形態により、消毒に有用なC波紫外線がチャンバ内で1回以上反射してから消毒対象物に入射する確率が高くなる。このようにして、放射線源からチャンバ内に放出される総放射エネルギー量(ある程度の赤外線や熱エネルギーを含む)が同じである場合、対象器具又は用具を消毒するのに有用なUV-C帯域のエネルギーがより良く利用されるとともに、対象の加熱量が減少する。
【0044】
本明細書に詳述するように、消毒用放射線はC波紫外線を利用することができ、C波紫外線を利用する実施形態においては、1以上の放射線源は、高度消毒を行うのに十分なC波紫外線を放出するのに適したいかなる市販のデバイスであってもよい。消毒チャンバ内にC波紫外線源を1つ備える場合、その線源は、本明細書に詳述する高度消毒を行うことができる強放射線場を形成するのに十分なC波紫外線を放出するものとする。消毒チャンバ内にC波紫外線源を2つ以上含む場合、C波紫外線源は、高度消毒を行うのに十分なC波紫外線を放出可能なC波紫外線源を1つ以上含んでもよい。あるいは、2つ以上のC波紫外線源を含む消毒チャンバの実施形態では、各線源がそれぞれ放出するC波紫外線は高度消毒を実現するのに不十分であってもよいが、上記2つ以上の線源から放出されるC波紫外線の個々の出力を組み合わせた場合、C波紫外線の総出力が高度消毒を実現するのに十分なものであるとする。
【0045】
更なる変形例では、例えば標準的なレーザ又は固体レーザフォトダイオード等、離れたところにあるC波紫外線源を消毒用エネルギー源として採用し、適当な光伝導体及び結合器を光源に連携させて、C波紫外線を消毒チャンバ内へ導入してもよい。更に、ある実施形態では、C波紫外線の直接光源又は伝導光源を、ミラー又は他のデバイスを介して動かしたり、ターゲット上をスキャンさせたりしてもよい。別の実施形態では、ターゲットを動かして、静止した放出領域を通過させてもよい。ターゲット又は放射線源を、相手に対して何らかの方法で回転又は移動させることで、ターゲットを紫外線に優先的に曝露してもよい。
【0046】
本明細書で提供する装置、方法及びシステムは、主にC波紫外線を消毒チャンバ内の消毒用放射線として説明するが、消毒装置に用いる放射線又はエネルギーは、A波紫外線、B波紫外線、更には非紫外線の単体又は組み合わせであってもよく、それらを含んでもよい。更に、消毒チャンバ内において、物品の紫外線への曝露は種々の方法で行ってよく、曝露方法を組み合わせて行ってもよいことが理解されよう。
【0047】
例えばC波紫外線等の紫外線の代わりに、本明細書に記載の装置の変形例では、フラッシュ式(例えば、パルス式)のエネルギー源を用いてもよい。フラッシュ式エネルギー源は、非常に高い強度の消毒用放射線を比較的短いインターバルで放出するものである。フラッシュ式エネルギー源は、1以上の被汚染物の高度消毒を、許容し得る短時間で行うことができるとともに、チャンバ内、ならびに対象物上又は対象物内の加熱に関係する熱エネルギー量を低減することが可能である。ある実施形態では、フラッシュ式エネルギー源は、1以上の物品に対して、10秒以下、5秒以下、3秒以下及び2秒以下から選択される期間内に高度消毒を実現するような高レートで消毒用放射線を送達してもよい。本明細書で考察するフラッシュ式エネルギー源は、いかなる選択した消毒用放射線を送達するように選択してもよい。例えば、本明細書に記載の消毒システムは、電子線、ガンマ線、X線、ガスプラズマ又はC波紫外線を放出するフラッシュ式エネルギー源を含んでもよい。ある実施形態では、フラッシュ式エネルギー源は、一連のオンオフパルスを送達する。パルスは、「オン」時間が一定であっても変化してもよく、周波数が一定であっても変化してもよく、パワーが一定であっても変化してもよい。1以上の放射線源の総「オン時間」及びオン時間中に確立される出力レベルにより、消毒チャンバ内へ送達される総エネルギーが規定される。こうした実施形態では、エネルギーが送達される累積時間を短く、処理時間を長め(例えば、60~100秒)にしてもよい。フラッシュ式エネルギー源を採用する一つの利点は、チャンバ内へ放出される熱エネルギー量を小さくしうることである。結果として、熱が蓄積したり、対流性及び放射性の熱移動メカニズムが形成されたり、熱エネルギーが消毒対象物へ送達されたりする可能性が減少する。
【0048】
フラッシュ式エネルギー源を用いる場合、消毒チャンバ内に必要な消毒用放射線源は一つで十分でありうる。このような実施形態では、対象物の略均質又は均一な放射線曝露を実現するため、フラッシュ式線源から放出される放射線を先ず広がりのある面に当て、放射線を分散させてから対象に当ててもよい。この場合、対象は、直接的にではなく主に間接的に照射されることになる。言い換えると、装置内の対象とは異なる部分に線源があるように装置を構成し得る。ある種のフラッシュ式線源から放出されるエネルギースペクトルは、所望のスペクトルよりも広いことがあるため、線源から放出されるエネルギーをフィルタリングして注目スペクトルだけを消毒チャンバ内へ通過させることが有用でありうる。フィルタは、赤外線エネルギーの存在を最小化してもよい。赤外線エネルギーは、チャンバを加熱し昇温するが消毒には関与しない。上記フィルタは、本明細書に述べる他の放射源とともに実装しても有用である。消毒エネルギー源を組み合わせて、本明細書に記載の装置及びシステムに使用してもよい。2つ以上の異なる消毒エネルギー源を用いる場合、消毒エネルギー源は、順次的、並列的、又は種々の組み合わせ及び順番で適用してもよい。2つ以上の異なる消毒用エネルギー源を備えて使用することは、特定の病原体が特定の消毒エネルギー源の影響をより受けやすいような場合に有利であり、対象物の全体的な曝露を低減するために、様々な放射線源、期間及び線量を用いて注目する病原体に対して満足のいく消毒を実現することが有用でありうる。
【0049】
例えばC波紫外線等の紫外線を本明細書に記載の装置及びシステムに利用する場合、紫外線源及び/又は紫外線センサは、消毒チャンバ内に、迅速且つ低温での消毒を容易にするように位置決めする。また一般に、消毒チャンバ、消毒用放射線源、消毒用放射線を検出するセンサの構成は、1以上の物品の放射線に対する選択した曝露を実施及び確認するように、更に/又は線源からの放射線の伝達を最適化して物品に効率的且つ再現可能に当たるように、選定される。このように、本明細書に係る消毒チャンバは、例えば1つのC波紫外線源等の、単一の消毒用放射線源を含んでもよい。こうした実施形態では、放射線源は、チャンバの上部又は底部に位置決めしてもよい。あるいは、消毒対象物の配置によっては、単一の放射線源は、消毒チャンバの側部に位置決めしてもよく、消毒チャンバが複数の側部を含む場合は、2つの側部の交点に形成される交差部に位置決めしてもよい。但し、本明細書に記載の装置及びシステムは、単一の消毒用放射線源を有する消毒チャンバに限定されるものではない。
【0050】
本明細書に係る装置及びシステムに含まれる消毒チャンバは、同一の又は異なる種類の複数の放射線源を利用してもよい。複数の消毒用放射線源を有する消毒チャンバの異なる実施形態を、本明細書に詳述するとともに添付の図面に示す。こうした実施形態は、1以上の消毒対象物が単一平面よりも複雑な表面を有する場合に有利でありうる。例えば、気管内プローブや超音波プローブ等の消毒対象物は、消毒を要する正面、後面、側面、背面及び/又は下面を2つ以上有する場合がありうる。こうしたケースでは、単一の消毒用放射線源又は単一タイプの消毒用放射線では、物品の各面に高強度の放射線を送達することが難しい場合がありうる。従って、本明細書に記載の消毒装置のいくつかの実施形態には、ある特定の種類の対象を消毒するように放射線源やその他の構造を配置したものがある。すなわち、線源及び/又は他の構造により特定の対象の各面を照射できる場合であっても、別の種類の対象を消毒チャンバ内に配置した場合には装置が効果的に機能しないこともあるであろう。
【0051】
本明細書に記載の装置及びシステムに使用し得る放射線源は、当業界で入手可能なものであり、例えばUV-C放出ランプを含む。UV-C放出ランプは、本明細書では「管」とも呼ばれ、フィリップスライトニングB.V.製を始めとする様々な市販品があり、様々な形状、サイズ、入力エネルギー、UV-C出力定格のものが入手可能である。UV-Cエネルギー源としての使用に適したUV-C管としては、低圧水銀放電ランプがある。但し、消毒チャンバは、特定のUV-C線源に限定されるものではない。選択したUV-C波長のUV-C光を被汚染物の消毒に寄与する出力定格で放出できる線源であれば、本明細書に開示の装置に使用可能である。例えば、1以上のUV-C管に加えて、又はそれに代えて、UV-C光を放出するように設計されたレーザ又はフォトダイオードを用いて、消毒チャンバ内へ消毒用放射線を送達してもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載の消毒チャンバに含まれる1以上のC波紫外線源は、少なくとも5Wの放射パワーのうちの1つから選択されるチャンバ内総UV-C出力を提供してもよい。例えば、1以上の線源は、少なくとも10W、少なくとも15W、少なくとも20W、少なくとも25W、少なくとも30W、少なくとも40W、少なくとも50W、少なくとも75W、少なくとも90W、及び少なくとも100Wの放射パワーから選択されるチャンバ内総UV-C出力を提供するように選択してもよい。UV-C線源を1以上の消毒用放射線源として用いる場合、1以上の線源から放出されるUV-C光の周波数帯域は、約240nm~約270nm及び約255nm~約265nmの中から選択してもよい。
【0052】
本明細書に記載の消毒チャンバは、チャンバ内に1以上の消毒領域を形成するように構成してもよい。こうした実施形態では、消毒チャンバ及び/又は1以上の消毒対象物は、更に、1以上の消毒対象物が1以上の消毒領域内に位置決めされるように構成してもよい。ここで、「消毒領域」という用語は、消毒チャンバ内の、閾値レベルの高強度消毒用放射線が消毒サイクルの期間にわたって送達される領域を指す。特定の実施形態では、消毒チャンバは、1以上のC波紫外線源を含む。1以上のC波紫外線源は、1以上の消毒用領域対して少なくとも約1,500μW/cm2の最低放射照度(「パワー」と呼ぶこともある)でC波紫外線を送達するように選択・配置する。本明細書において、特定の実施形態では、1以上のC波紫外線源は、約240nm~約270nm及び約255nm~約265nmの中から選択される帯域内のUV-C光を放出するように選択してもよい。例えば、1以上のC波紫外線源は、消毒チャンバ内に1以上の消毒領域が形成されるとともに、1以上の消毒領域に送達されるC波紫外線の最低放射照度が約1,500μW/cm2~約5,000μW/cm2となるように選択・配置してもよい。更なる実施形態では、1以上のC波紫外線源は、消毒領域内に送達されるC波紫外線の最低放射照度が、約1,500μW/cm2~約2,000μW/cm2、約1,500μW/cm2~約2,500μW/cm2、約1,500μW/cm2~約3,000μW/cm2、約2,000μW/cm2~約2,500μW/cm2、約2,000μW/cm2~約3,000μW/cm2、約2,000μW/cm2~約3,500μW/cm2、約2,000μW/cm2~約2,500μW/cm2、約2,000μW/cm2~約2,750μW/cm2、約2,500μW/cm2~約2,600μW/cm2、約2,500μW/cm2~約2,750μW/cm2、及び約2,500μW/cm2~約3,000μW/cm2、又は他の同様の値の中から選択される1以上の消毒用領域を提供するように選択・配置してもよい。
【0053】
ある実施形態では、消毒チャンバ内に形成される消毒領域は、領域内の最低放射照度を特徴とするだけではなく、領域内の放射照度が実質的に均一になるように消毒放射線を送達することも特徴としうる。ここで消毒用領域に関して、「実質的に均一」という用語は、消毒用放射線の放射照度が全領域中で30%を超えて変化しない(すなわち、領域内で測定した放射照度が30%を超えて変化しない)領域を指す。特定の実施形態において、「実質的に均一な表面放射照射」は、消毒用放射線が消毒対象物の表面に送達される強度が、該表面のどの部分においても±30%、±25%、±20%、±15%、±10%及び±5%、又は同様の値の中から選択される量を超えて変化しない消毒領域を指す。
【0054】
消毒チャンバの内部ボリュームを画定する1以上の壁は、1以上の消毒用放射線源と連携して、1以上の消毒対象物に対して高強度の消毒用放射線を送達するように構成してもよい。例えば、消毒チャンバに含まれる1以上の壁、ならびに1以上の反射面(もしあれば)は、1以上の消毒用放射線源と連携して、1以上の消毒領域を提供するように構成することができる。ある実施形態では、消毒チャンバの内部ボリュームは、1以上の側壁、ならびに上部及び/又は底部壁により画定される。こうした実施形態では、消毒用放射線源は、いずれかの側壁、上部壁、底部壁の上もしくは内部、又はいずれか2つ以上の側壁、側壁と底部壁、側壁と上部壁の間のいずれかの接合部に配置することができる。消毒チャンバの内部ボリュームを画定する1以上の壁により、チャンバを多数の断面形状のうちのいずれかの形状にすることができる。例えば、特定の実施形態では、1以上の壁は、円形又は多面形の断面、例えば方形、三角形、六角形又は八角形の断面等を有する内部ボリュームを提供するように構成する。ある実施形態では、消毒チャンバは、内部ボリュームが複数の壁によって画定されるとともに、内部ボリュームの断面形状が直方体又は八角柱となるように構成する。更に別の実施形態では、消毒チャンバ又はその一部を、円、放物線、二重楕円、その他の形状としてもよい。場合によっては、消毒チャンバの内壁を追加・除去したり、又は/更に位置を変更したりすることで、第1の断面形状で画定される内部ボリュームを有する消毒チャンバを、第2の異なる断面形状で画定される内部ボリュームを有するように変形してもよい。
【0055】
消毒チャンバの実施形態は、1以上の消毒用放射線源の背後に完全に又は部分的に隠れる反射板を含んでもよい。こうした実施形態では、消毒用放射線源が紫外線を放出するものであって、例えばC波紫外線放出管等の紫外線を放射する線光源である場合、反射板を放物線状とし、C波紫外線源をその焦点又は焦点付近に配置してもよい。こうした構成により、放物線状の反射板からほぼ平行な光線を送出することできる。勿論、その他の反射板形状や紫外線源の配置、それによる放射線場も可能である。C波紫外線放出管を1以上の消毒用放射線源として用いる場合、ある実施形態では、駆動電子回路から管を駆動するために送達される入力パワーは、約20W~約200Wの範囲であってよい。特定の実施形態では、本明細書に記載の消毒チャンバに使用するUV管の入力パワーは、例えば、20W、25W、30W、35W、40W、45W、50W、55W、60W、65W、70W、75W、80W、85W、90W、95W、及び100W、又は他の同様の値の中から選択してもよい。
【0056】
1以上の消毒用放射線源は、消毒チャンバの1以上の側壁の周りに、選択した強度(例えば、消毒領域に関して説明した強度のエネルギー)の放射線が1以上の消毒対象物に送達されるように配置してもよい。1以上の消毒用放射線源を消毒チャンバの周りに配置して、消毒される物品が、物品の消毒対象となる全ての被汚染面において閾値レベルの放射照度の消毒用放射線を受けるようにすることができる。例えば、1以上の側壁を有する消毒チャンバの実施形態では、例えば2つ以上のC波紫外線源等の2つ以上の消毒用放射線源を、1以上の側壁に沿って一定間隔で配置してもよい。複数の側壁を有する実施形態では、1以上の消毒用放射線源を、側壁の1以上の隅に配置してもよい。消毒チャンバが少なくとも1つの上部又は底部壁又は面を有する場合、1以上の消毒用放射線源を上部及び/又は底部壁又は面に配置して、チャンバ内に形成される1以上の消毒領域に対して目標閾値レベルの放射照度の消毒用放射線を提供することができる。特定の実施形態では、消毒チャンバの内部ボリュームを2つ以上の側壁と底部壁とを含むように構成し、側壁間の各隅に少なくとも1つの紫外線源を配置するとともに底部壁に少なくとも1つの紫外線源を配置する場合、各隅の管の入力パワーは少なくとも50Wであってよく、底部の1以上(もしあれば)の管のパワーは少なくとも30Wであってよい。
【0057】
消毒チャンバの種々の異なる構成を図1図10Bに示す。例えば、図2Cに、円形断面を有する消毒チャンバ200を示す。図2Cに示すように、消毒チャンバ200が円形状の内部ボリューム断面を有する場合、C波紫外線源202は、円の周囲に互いに等距離間隔となるように配置してもよい。図2Cに示す消毒チャンバにおいて、消毒領域は、チャンバの中央領域に形成され、対象物、例えば超音波プローブ204は、チャンバの壁によって形成される円の中心に配置される。
【0058】
図2Dを参照すると、消毒チャンバ206が二重楕円形の場合、C波紫外線源208は、各頂点212に配置してもよい。対象物である超音波プローブ210は、二つの楕円が互いに重なるエリアに配置される。
【0059】
図3A図3Bに、直方体状の内部ボリューム断面を有する消毒チャンバ300を示す。こうした構成では、図3A図3Bに示すように、C波紫外線源302は、4つの線源のうちの1つがチャンバの各隅に位置して、対象物、例えば超音波プローブ304を取り囲むとともに、2つの線源302aが、対象物、例えば超音波プローブ304の下のチャンバ底部上に位置するように構成してもよい。1以上の放射線センサ306は、消毒チャンバ300の内部ボリューム内の放射線を測定するように配置する。2つ以上の放射線センサ306が含まれる場合、放射線センサ306を協調的に配置して、消毒チャンバ300の異なる部分の放射線を測定してもよい。場合によっては、複数の放射線センサ306を互いに近接配置し、複数の放射線センサで収集したデータを比較して、収集したデータが有効であること及び消毒チャンバ300が正常に動作していることを示してもよい。ある直方体状の変形例では、チャンバの底部に線源を1つだけ含んでもよい。
【0060】
別の実施形態では、例えば、消毒チャンバ400の内部ボリュームが八角柱状の断面を有する場合、図4A図4Bに示すように、C波紫外線源402は、4つの線源のうちの1つが、対象物、例えば超音波プローブ404を取り囲むチャンバの各隅に位置するとともに、2つの線源402aが、プローブ304の下のチャンバ底部上に位置するように配置する。1以上の放射線センサ406は、消毒チャンバ400の内部ボリューム内の放射線を測定するように配置する。2つ以上の放射線センサ306が含まれる場合、放射線センサ306を協調的に配置して、消毒チャンバ400の異なる部分の放射線を測定してもよい。場合によっては、複数の放射線センサ306を互いに近接配置し、複数の放射線センサで収集したデータを比較して、収集したデータが有効であること及び消毒チャンバ400が正常に動作していることを示してもよい。ある八角柱状の変形例では、チャンバの底部に線源を1つだけ含んでもよい。
【0061】
消毒用チャンバの物理的構成ならびに内部に具備する消毒用放射線源の性質及び数に加えて、消毒用チャンバにより形成される内部ボリュームの寸法及び消毒チャンバ内の放射線源の配置を選択して、1以上の消毒領域を形成してもよい。例えば、点光源から空間内へ球状場として放出されるC波紫外線又は線光源から空間内へ円筒状場として放出されるC波紫外線の強度は、光源からの距離の逆二乗で減少する。高強度の放射線を、光源からのいわゆる第1経路(すなわち、放出された放射線が対象へと直接進行して当たること。直接光源放射とも呼ばれる。)ならびにその後の反射及び/又は再放射(すなわち、間接光源放射)の両方で消毒対象物へより確実に送達するために、消毒チャンバは、実質的に対称となるように構成することができ、この場合、1以上の消毒対象物は、略中央位置に位置決めすることができる。更に、消毒チャンバの寸法を選択して、1以上の消毒用放射線源が1以上の消毒対象物に近接するようにすることもできる。例えば、ある実施形態では、消毒チャンバは、消毒チャンバの内部ボリュームの寸法がどこを採っても100cm以下であるように構成してもよい。特定の実施形態では、消毒チャンバが画定する内部ボリュームの寸法は、どこを採っても、100cm、80cm、70cm、60cm、50cm、40cm、30cm、及び20cm、又は他の同様の値の中から選択される長さ以下である。消毒チャンバがチャンバの中央に消毒領域を有し、消毒処理中、1以上の消毒対象物が中央の消毒領域内に位置決めされる場合、ある実施形態では、チャンバの幅の断面寸法は、どこを採っても40cm以下である。こうした実施形態では、消毒チャンバの幅の断面寸法は、どこを採っても30cm以下、どこを採っても20cm以下、どこを採っても15cm以下、どこを採っても他の同様の値以下の中から選択してもよい。こうした実施形態では、消毒チャンバ内に形成されるボリュームの長さは、1以上の消毒対象物に適した長さを選択することができる。
【0062】
消毒チャンバ内での被汚染物の位置決めを容易にするために、消毒チャンバは、1以上の物品、例えば超音波プローブや他の医療器材をチャンバ内に位置決めするサスペンションアセンブリを備えることができる。本明細書に記載のサスペンションアセンブリは、消毒チャンバ内で1以上の消毒対象物を一貫して位置決めするように機能するものである。このような場合、消毒チャンバが1以上の消毒領域を形成するように設計される場合、サスペンションアセンブリで消毒領域内で1以上の消毒対象物を一貫して且つ繰り返し可能に位置決めすることにより、1以上の物品には、消毒サイクル中、高強度放射線が確実に照射されることになる。
【0063】
特定の実施形態では、サスペンションアセンブリは、高強度放射線の消毒領域が形成される消毒チャンバの中央部分に被汚染物を位置決めするようにしてもよい。ある変形例では、例えば、物品がチャンバ外に伸ばせるようなケーブルに接続されている場合には、サスペンションアセンブリは、アセンブリ上部に、消毒チャンバ上部の中央部分まで伸びるスロットを含む。例えば、図1に示すように、サスペンションアセンブリ114は、基端部118及び末端部120を有するチャネル116を含む。チャネル116の基端部118はアクセス開口部112に開口しており、チャネル116の末端部120は閉じている。図示のように、末端部120の端には、1以上の物品(図示せず)のケーブルを内部に配置可能な孔122がある。その場合、孔122は、一般に、例えば図1に示す消毒チャンバ110の上部106の中央等の消毒領域内に1以上の物品を配置できるようになっている。図1に示す孔122は円形であるが、他のいかなる好適な形状の孔を採用してもよい。使用時には、物品のケーブル部分をチャネル116に通すか又は何らかの方法で導入して孔122内に配置されるようにし、作動部分が消毒チャンバ110の中心部に懸吊されるようにしてもよい。ケーブル部分を導入した後、フラップ124を動かしてチャネル116を閉じてもよい。
【0064】
更なる変形例では、消毒対象物は、他の連結又は取り付け部品によってチャンバ内に支持又は懸吊してもよい。例えば、消毒対象物がケーブルを有する場合、ケーブル部分を消毒チャンバの壁の一部に取り外し可能に連結したり、取り付けたり、固定したりして、対象物をチャンバ内で支持したり懸吊しやすくしたりしてもよい。あるいは、消毒対象物を延長部分ごとチャンバ内に収納してもよい。このような実施形態では、連結又は取り付け部品をチャンバ内に収納し、対象物を消毒領域内に固定する。消毒チャンバ内に含まれる又は消毒チャンバとともに動作するサスペンションアセンブリは、1対の相互はめ合い要素、フック、対象物を懸吊又は懸垂できる他の装置、ベルト、もしくは消毒対象物を消毒チャンバ内で確実に位置決めするための他の適当な装備、装置、又はメカニズムを含むことができる。サスペンションアセンブリが、例えば係留ケーブルを介して位置決めすることのできない無係留の物品の場合等の様に、物品の表面に接触するようにサスペンションアセンブリと物品とが構成されている場合、サスペンションアセンブリは、消毒用放射線(例えば、C波紫外線)に対して電磁的に(例えば、光学的に)透明な材料で構成してもよい。このような構成により、物品表面がC波紫外線から遮蔽されることを防止又は低減する。電磁的に(例えば、光学的に)透明なサスペンションアセンブリを提供するのに適した材料は、当業界で知られており(例えば、石英ガラス(すなわち、融解シリカ)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、透明ポリエチレン等)、例えば、電磁放射線のエネルギー吸収又は透過損失が低い既知の導波材料やレンズ材料が挙げられる。
【0065】
ある実施形態では、消毒チャンバが複数の消毒用放射線源を含む場合、サスペンションアセンブリは、消毒対象物が消毒チャンバ内で各消毒用放射線源から等距離にある場所に位置決めされるように、消毒チャンバ内に備えてもよい。このような構成により、物品の各面へ消毒用放射線を均質的に到達させることを容易にし得る。あるいは、サスペンションアセンブリ及び消毒対象物は、汚染されていない又は消毒の必要がないことを医療従事者が確認できる領域でのみ物品にサスペンションアセンブリが接触するように、設計することができる。例えば、気管内又は超音波プローブ等の医療器具の文脈では、サスペンションアセンブリは、物品の患者と接触する領域には接触しないように構成してもよい。こうした実施形態では、サスペンションアセンブリが接触する物品の領域に達する放射線の強度又は均一性の重要度は低くてもよい。
【0066】
消毒装置に含まれる1以上のセンサの数及び配置も、迅速な高度消毒が低温で行われるように選択される。本明細書の目的では、センサ(例えば、図3のセンサ306又は図4のセンサ406)は、環境条件を収集・測定するいかなる装置や部品アセンブリであってもよい。消毒チャンバ内の消毒用放射線を検出するための1以上のセンサの場合、1以上のセンサの各々は、消毒チャンバ内に存在する消毒用放射線に関する情報を収集したり、消毒チャンバ内の消毒用放射線量を検知又は測定したり、消毒用放射線に関して収集した情報を増幅又は処理したりできるデバイス又は部品アセンブリであるものとする。更に、本明細書の文脈では、センサは、消毒チャンバ内に配置されており、消毒チャンバ内に存在する消毒用放射線に関する処理済みの情報を検出、測定、送信、処理又は通信可能なセンサのいずれの部品も、消毒チャンバ内に配置されるか又は消毒チャンバの内部に露出されているものとする。
【0067】
本明細書に記載の消毒装置に含まれる1以上のセンサの各々は、例えば総放射線量や経時曝露率等の情報を検出及び通信可能であってもよい。例えば、UV-C光を消毒用放射線として用いる場合、センサは、対象物が受けるUV-C線量及び/又は消毒装置に含まれる1以上のUV-C線源から放出されるC波紫外線の量を検知してもよい。ある実施形態では、本明細書に記載の消毒装置に含まれるUV-Cセンサは、消毒用チャンバ内に配置された1以上のフォトダイオードであってよい。別の実施形態では、1以上のセンサは、収集した消毒用エネルギーを例えばフォトダイオード等の検出器に伝達する光ファイバケーブルや光導波管等の1以上の光伝導部品を含んでもよい。ある変形例では、消毒チャンバ内のセンサは、帯域通過光学フィルタ又は他の電磁フィルタを前面に有して、注目するスペクトルの放射線だけを検知するように構成される。ある実施形態では、1以上のセンサは、1以上の消毒対象物上に配置したり、1以上の消毒対象物の内部に組み込んだりしてもよい。1以上のセンサを1以上の消毒対象物に配置することにより、物品に到達する消毒用放射線のより正確な測定・査定を行ってもよい。本明細書に記載の装置は、例えば消毒用放射線の直接及び間接線源を監視するように配置された複数の光伝導体を利用する1以上のセンサを含んでもよい。本明細書に記載の装置の文脈で有用な光伝導体としては、光ファイバ「ケーブル」(光を低損失で長距離伝送するのに適したもの)、およびガラス、ポリマー、又は光を内部に捕捉・格納して低損失で伝導する他の単純な光透過材料から成る単純な「光導波管」が挙げられるが、これに限定されるものではない。本明細書で参照する「光導波管」は、典型的には、比較的短距離の光伝導により好適に使用される。
【0068】
複数の光ファイバ伝導体を単一の検出器に繋いだり、導電体を複数の検出器に繋いだりして、放射線信号を単一又は複数のフォトダイオードへ送達してもよい。例えば、こうした実施形態では、1以上の光ファイバケーブルの第1の組の各々を用いて消毒用放射線源を直接監視してもよく(例えば、各線源をそれぞれ1本の光ファイバケーブルと組み合わせる)、1以上の光ファイバケーブルの第2の組を配置して、消毒チャンバ内に存在する直接及び間接線源からの総消毒用放射線を監視してもよい。更に別の実施形態では、1以上の光ファイバケーブルの第3の組を用いて、消毒用放射線の間接線源からの消毒チャンバ内の消毒用放射線を収集・監視してもよい。こうした実施形態では、第3の組の光ファイバケーブルの1本以上を、消毒用チャンバの1以上の側壁に面するように配置して、主に消毒用放射線の反射量を監視してもよい。1以上の光ファイバケーブルの第1、第2及び第3の組は、説明の便宜上然様に呼称されているに過ぎないと理解されるべきことである。本明細書に係る装置は、ここに記載の光ファイバケーブルの第1、第2及び第3の組のいずれか1つ又はいずれか2つ以上の組み合わせを利用する1以上のセンサを含んでもよい。なお、1以上のセンサが、直接、総計、及び/又は間接の消毒用放射線を監視するように配置された複数の光ファイバケーブルを含むように構成することは、有利でありうる。例えば、こうした構成を用いることにより、消毒用放射線の直接線源の各々の状態を査定したり、入力放射線レベルを監視して消毒用放射線の直接線源が稼働していることを確認したり、また場合によっては、線源システムを閉ループ的に駆動して、選択可能な放射線パワーレベル及び/又は選択した放射線パワーレベル(すなわち、放射照度)とそれによる放射線量とを実現・維持してもよい。
【0069】
消毒装置に含まれる1以上のセンサは、1以上の消毒対象物を消毒チャンバ内に配置して処理する場合に「シャドウイング(shadowing)」を起こしやすい。「シャドウイング」と呼ばれる効果は、本明細書では、主に二つの意味を有する。ひとつは、消毒対象物の存在により、1以上のセンサに検出される又は「見える」総C波紫外線が減少することである。第二に、放射線の一部が、物品の一部に遮蔽されて、物品の別の部分や、チャンバ内に複数の物品が存在する場合には他の物品に到達できなくなるケースである。シャドウイングには、直接(すなわち、物品がC波紫外線源と検出器の間に位置する。)、バーチャル(すなわち、物品がC波紫外線を吸収したり、1以上のセンサで検出されるはずだったC波紫外線の反射を妨げたりする)、又は直接とバーチャルの組み合わせがある。シャドウイングの影響を低減又は防止するとともに、異なるサイズ及び形状のプローブや物品に対するシステムのトレランスを向上する(すなわち、シャドウ感度を低減する)ために、1以上のUV-Cセンサを好ましい場所、例えば、1以上の消毒対象物がチャンバ内の中央領域に配置される場合、消毒チャンバの上部又は下部領域等に配置してもよい。更に、消毒チャンバ内に配置される異なるサイズや形状の物品により引き起こされるシャドウイングを査定して、シャドウイングが存在する範囲に基づいて消毒制御条件を調整することができる。例えば、シャドウイング効果が存在する場合、検出器に到達できる放射線は、シャドウイング効果が無い場合に同じ時間で受ける線量に比べて減少するため、所与の曝露時間に、1つの又は複数の検出器が受ける紫外線量は減少する。更に、消毒チャンバ内に複数の物品が含まれる場合、1以上の物品のシャドウイングが、1以上の他の物品の存在によって引き起こされることもありうる。更に、消毒システムは、シャドウイングによる放射線信号の減少から、消毒チャンバ内に1以上の物品が存在することを検出してもよい。
【0070】
1以上の消毒対象物の存在により1以上のセンサがシャドウイングを被る場合であっても、1以上の対象物自体のシャドウイングが発生しない場合、消毒システムは、1以上のセンサで検出する消毒用放射線のレベルが低くても目標の消毒時間を維持するように動作するシステム制御アルゴリズムを含んでもよい。別の実施形態では、消毒放射線センサのシャドウイングが発生する場合、システム制御アルゴリズムは、シャドウイング効果を考慮して消毒サイクルの処理時間を調整する(例えば、増減する)ように構成してもよい。例えば、センサにシャドウイングが発生し且つ1以上の消毒対象物には発生しない場合、センサは、消毒チャンバ内に実際に送達された量よりも低い放射照度レベルすなわち消毒放射線レベルを受信・通信することになる。このような実施形態では、システム制御アルゴリズムは、シャドウイング効果を考慮して、消毒用放射線の総線量が選択した閾値線量を超えないようにサイクル時間を調整するように構成してもよい。消毒領域内の物品の位置とともに、1以上のセンサ、線源及び反射面を適切に配置することで、センサのシャドウイング効果は減少又は解消し、それによりチャンバ内の放射線レベルの測定ミス及び解釈ミスの可能性は減少する。
【0071】
消毒チャンバ内での1以上のセンサの配置及び/又は構成は、一般に、迅速な高度消毒が低温下で行われるように選択される。例えば、C波紫外線源は、C波紫外線がチャンバ中に十分均一に空間的に分散されるように消毒チャンバ内に配置してもよく、消毒チャンバ内に含まれる1以上のUV-Cセンサは、チャンバ内のC波紫外線の総線量を検出するように配置するとともに、チャンバ内にC波紫外線が適切に均一に分布していることを監視するように配置してもよい。特定の実施形態では、消毒チャンバ内の1以上のセンサは、全線源(直接及び間接)から放出されるC波紫外線の全体的な割合を検知するように配置してもよい。放出されるC波紫外線の「直接」線源としては、紫外線源自身が挙げられ、放出されるC波紫外線の「間接」線源としては、それ自体ではC波紫外線の線源ではないが、直接及び他の間接線源から受けた入射C波紫外線を反射及び/又は再放射する装備類(例えば、チャンバ壁、消毒対象物等)が挙げられる。1又は複数のセンサを用いて、更に処理すべき放射照度値を取得してもよい。他のセンサから取得した信号は、独立して処理又はフィルタリングしたり、様々な所定の目標線量と比較したり、個別の回路を有したり、単独で異なるアルゴリズムに従って処理したりしてもよい。
【0072】
ある実施形態では、1つのセンサ又は1組のセンサを備えて、チャンバに送達される全体的な放射線量を検出するとともに、別のセンサ又は別の1組のセンサを備えて、各線源を、直接且つ消毒対象物の存在によるシャドウイング効果の可能性を排除しつつ、チェック又は監視することも有用でありうる。こうした実施形態では、装置が実行する消毒サイクルは、1)いずれのセンサが受けるUV-C曝露量もシャドウイングによって30%を超えて影響されることがないように1以上のセンサを配置した場合に、閾値総線量分のC波紫外線を消毒チャンバ内で受ける(例えば、消毒チャンバ内に含まれる選択した1以上のセンサのそれぞれの信号を合計することにより測定された平均UV-C曝露量が特定の値に達する)のに十分な時間、及び2)1以上の個々のセンサが、定められた閾値以上のC波紫外線量を受けるのに十分な時間、の後に停止させることができる。UV-C線量の閾値は、高度消毒を実現するように設定される。閾値は、ある物品及び目的の病原体に対して、例えば本明細書に記載の方法を用いて求めることができる。特定の実施形態では、いずれのセンサが受けるUV-C曝露量もシャドウイングによって25%、20%、15%、10%及び5%、又は同様の値から選択される量を超えて影響されることがないように、消毒チャンバを構成するとともに、C波紫外線源及びセンサを配置する。
【0073】
ある実施形態では、本明細書に記載の消毒システムは、所定の線量の消毒用放射線が消毒チャンバ内へ送達されるように選択された期間にわたって消毒サイクルを実行するように制御される。こうした実施形態では、システムは、選択された時間にわたって消毒サイクルを実行した後、センサから収集した消毒放射線量に関する情報をチェックし、もし1以上のセンサが所定の閾値(例えば、最低)線量を受けた場合は、サイクルを停止するように制御される。例えば、C波紫外線を消毒用放射線として用いる場合、特定の実施形態では、所定の閾値線量は、約50,000μJ/cm2~約10,000,000μJ/cm2の中から選択してもよい。こうした実施形態では、線量は、約50,000μJ/cm2~約1,000,000μJ/cm2の中から選択してもよく、例えば、約50,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約250,000μJ/cm2、及び約50,000μJ/cm2~約100,000μJ/cm2、又は他の同様の値の中から選択される線量であってもよい。更にこうした実施形態では、線量は、約150,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、及び約150,000μJ/cm2~約250,000μJ/cm2、又は他の同様の値の中から選択してもよい。更にこうした実施形態では、線量は、約250,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、及び約250,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、又は他の同様の値の中から選択してもよい。
【0074】
選択した閾値に達していない場合、消毒システムは、消毒用放射線に対する総曝露量が選択した(例えば、最低の)閾値に達するように設定された期間にわたって実行を続けてもよい。こうした実施形態では、消毒用放射線の選択した閾値は、多くの異なる方法のいずれかによって決定することができる。例えば、システムは、次の条件の1つ以上が満たされたことが確認された場合に消毒サイクルを停止するように構成及び制御してもよい。1)各センサで所定の(最低)線量の消毒用放射線を受けたこと、2)センサで受けた平均線量が閾値(例えば、最低)線量に達したこと、3)少なくとも1つのセンサが第1の閾値(例えば、最低)線量を受けるとともに、残る全てのセンサが第2の閾値(例えば、最低)平均線量を受けたこと、4)消毒用放射線を直接受けるように配置された1以上のセンサが第1の閾値(例えば、最低)線量を受けるとともに、総放射線又は間接放射線を監視するように配置された他の1以上のセンサが第2の閾値(例えば、最低)線量を受けたこと、及び5)2つ以上のセンサの第1の組が第1の閾値(例えば、最低)線量を満たす平均線量を受けるとともに、2つ以上のセンサの第2の組が第2の閾値(例えば、最低)線量を満たす平均線量を受けたこと。本明細書において、「第1の閾値線量」及び「第2の閾値線量」という用語は、必ずしも異なる値を指すものではない。消毒用放射線の第1及び第2の閾値線量は同じでもよく、他の実施形態では、第1及び第2の閾値線量は異なっていてもよい。
【0075】
消毒チャンバ内及び消毒対象物に送達される消毒用エネルギーを検出又は定量可能な1以上のセンサに加えて、消毒チャンバは、1以上の温度センサを含んでもよい。特定の実施形態では、本明細書に係る消毒処理は、十分に低い温度で行われる。ある実施形態では、消毒対象物の表面温度を特定の閾値よりも低く維持する場合、1以上の温度センサ、例えば1以上の赤外線温度センサを用いて、消毒対象物の表面温度を監視・報告してもよい。あるいは、チャンバ内の気温又は消毒チャンバの1以上の壁の温度を単に監視するだけで十分な場合もありうる。消毒チャンバ内の気温又は壁面温度を監視する場合、監視位置は、1以上の消毒対象物の表面温度を相応の精度で最もよく検出又は確認できるように選択してもよい。こうした実施形態では、1以上の消毒対象物の表面温度と相関のある消毒チャンバ内の温度監視位置を、対象物の表面温度を監視しつつ、チャンバ内において対象物の表面温度と適切な相関のある温度を呈する領域又は地点を特定する試験によって選択することができる。こうした例では、消毒チャンバは、消毒サイクルの実行中、消毒チャンバの環境温度を監視・通信する1以上の環境温度センサを含んでもよい。
【0076】
温度制御システムを、本明細書に記載の装置及びシステムに備えてもよい。こうした実施形態では、温度制御システムは、消毒チャンバを冷却するように機能してもよく、例えば、パッシブヒートシンク及びフィン、通気ファン、液体式熱交換器/放熱器部品、ペルティエ式熱電子デバイス、冷凍サイクルシステム等の1以上の冷却部品を備えてもよい。他の実施形態では、温度制御システムは、各消毒サイクルの全体を通して消毒チャンバを選択した温度範囲内に維持するように構成してもよい。例えば、C波紫外線を発生する発光管は、管表面温度が約35℃~約45℃の時に十分な効率で機能することが分かっている。ある実施形態では、本明細書に記載の温度制御システムは、1)消毒サイクルの開始に先立って、消毒チャンバを、1以上の消毒用放射線源に対して選択された又は選択可能な温度範囲内の温度に予熱するように構成してもよいし、また2)処理対象物の望ましくない劣化を引き起こさず、且つ消毒用放射線源に対して選択された閾値温度範囲を下回らないような温度範囲内に消毒チャンバを維持するように構成してもよい。消毒チャンバを許容温度に維持するために、温度制御システムは、1以上の熱源を含んでもよい。こうした実施形態では、熱源としては、1以上の放射線源(例えば、1以上のC波紫外線管)や、既知の電気加熱デバイス(例えば、抵抗や渦電流によるもの等)、赤外線加熱デバイス、輻射(例えば、赤外線(IR))加熱デバイスを始めとする他の適当な熱源や加熱要素が挙げられる。
【0077】
消毒チャンバが長波長の放射線(例えば、赤外線)を優先的に吸収する材料で形成されるかコーティングされた壁を含む場合、壁自体は、熱エネルギーを蓄積してもよく、壁からの熱は、消毒チャンバ内へ再放射されてもよい。チャンバ内の熱を管理するために、消毒装置は、消毒チャンバの壁と熱的に結合された1以上のヒートシンク要素を含んでもよい。例えば、熱交換器や冷却要素を、消毒チャンバを形成する壁の外面に配置してもよい。あるいは、熱交換器や冷却要素は、消毒チャンバの壁の内面と外面の間に配置してもよい。いずれの構成でも、標準的な熱交換器や冷却システムを使用してよい。どちらの構成でも、特定の波長の放射線の吸収により壁が加熱されると、熱交換器や冷却システムは、壁からの熱を除去するか又は何らかの方法で移動して、消毒チャンバ内を十分に低い温度に維持するように機能する。
【0078】
本明細書に記載の装置及びシステムは、持ち運び可能であってもなくてもよい。本明細書に係る装置及びシステムは、装置及びシステムを使用する特定の状況及び用途の選択したパラメータに適するように構成することができる。ハウジングが持ち運び可能な実施形態では、ハウジングは、高度消毒を必要とする物品や物品の一部のすぐそばに移動してもよい。特定の状況では、本明細書に係る装置及びシステムが持ち運び可能であることは有利である。というのも、こうした可搬性によって、消毒対象物を装置やシステム側に持って来る必要が減るか又は無くなるからである。実施形態が持ち運び可能である場合、装置及びシステムは、家庭や診療所、病院内に一般に配置される電源を利用するように構成してもよい。あるいは、本明細書に記載の可搬式装置又はシステムの実施形態では、システムの1以上の構成要素に対して、1以上のバッテリー又は他のポータブル電源から電源を供給することで、固定電源にアクセスする必要を減らすか無くしてもよい。様々なバッテリー、バッテリー技術及びパワーマネジメント技術が当業界では周知であり、本明細書に係る装置及びシステムに利用可能である。
【0079】
本明細書に記載の消毒装置は、消毒のトレーサビリティ情報を記録する構成要素、及び/又は物品(例えば、超音波プローブ)に消毒サイクルを施した後の物品の状態をユーザに表示する構成要素を含んでもよい(例えば、必要/最低線量に到達したことや、温度が範囲内に維持されたこと等、選択した要件が達成された場合は緑又は他の色のライト又は光源を点灯し、選択した要件が達成されなかった場合は赤又は他の色のライト又は光源を点灯する)。別の変形例では、装置は、直近の使用又は1回以上の他の過去の使用に関するトレーサビリティ情報を記録して知らせる構成要素を有する。ここで、トレーサビリティ情報は、直近の事象が消毒手順であったか別の使用であったかを示すものである(例えば、直近の使用で消毒が成功した場合には緑又は他の色のライト又は光源を点灯し、そうでない場合には赤又は他の色のライト又は光源を点灯する)。加えて、又は別の選択として、例えばプリンタ等、別のタイプの出力装置を用いて、完了した消毒の物理的記録を生成してもよい。トレーサビリティ及び表示部材は、タグ、カラー(collar)又は他の装置でもよく、これらは更に1以上のフォトダイオード検出器を備えてもよく、消毒対象物や他の関連部材(例えば、もしあればケーブルや紐)に固定してもよい。タグやカラーは、物品を消毒チャンバ内に懸吊するか又は何らかの方法で位置決めするのに役立つように構成してもよい。
【0080】
本明細書に記載の消毒システムは、1以上のプロセッサに制御可能に接続された本明細書に係る装置を含む。本記載の消毒システムに利用されるプロセッサは、ソフトウェアを具備又は実行して、例えば1以上の所定のシステム又は処理パラメータに基づいてシステム監視や制御を行うことができる1以上のアルゴリズムを実行又は使用することによって、システム制御、監視又は他の機能を提供してもよい。本明細書に係るシステムは、消毒装置の消毒サイクルの管理、較正、消毒条件の監視、消毒条件の調整、1以上のシステム構成要素の状態及び条件の監視、消毒条件の定義、消毒処理の開始、消毒処理の終了、及び履歴システムデータ、リアルタイムシステムデータ又は他の同様のデータに基づくシステム動作又は消毒条件の調整の1以上を行うことができる1以上のアルゴリズムを利用してもよい。
【0081】
ある実施形態では、例えば、アルゴリズムは、予め定義された条件が達成されるとともに、温度、シャドウイング及びシステム構成要素の動作条件等のシステムパラメータが勘案された場合に、消毒サイクルを終了するように動作してもよい。こうした実施形態では、予め定義された線量の要件は、消毒チャンバ内に配置したセンサにより検出されるC波紫外線の平均及び個別線量の所定の組み合わせであってよい。プロセッサは、所定の時間が経過するとともに、選択された線量の消毒用放射線が消毒チャンバへ送達されたことを確認した後、消毒サイクルを停止するように動作してもよい。例えば、プロセッサは、600秒、540秒、480秒、420秒、360秒、300秒、240秒、180秒、120秒、100秒、90秒、60秒、45秒、30秒、15秒、10秒、又は他の同様の秒数後に消毒サイクルを終了するように動作してもよい。プロセッサによっては、アルゴリズムを組み合わせて実行することで、所定のサイクル時間が経過した後、1以上のUV-Cセンサから測定されるC波紫外線の平均線量が所定のUV-C線量要件に達するとともに、1以上の個々のUV-Cセンサが所定のUV-C線量閾値に達した場合に、消毒サイクルを終了するように構成してもよい。
【0082】
消毒サイクルの管理に加えて、1以上のプロセッサは更に、消毒装置の動作状態及びシステムパラメータを監視及び制御して、装置が指示通りに動作しているかを判断するアルゴリズムを実行又は使用してもよい。システムパラメータの例としては、ランプ駆動電流及び/又は電圧、動作温度範囲、温度センサの状態及び動作、温度制御システムの状態及び動作、1以上の消毒対象物の存在、対象物の素性及び出所、チャンバのドア及び他のインターロックの状態が挙げられるが、これに限定されるものではない。消毒サイクル及びシステム監視アルゴリズムは、並列的に実行してもしなくてもよい。消毒装置は、図11A及び図11Bに示すように、消毒サイクル監視制御アルゴリズム及びシステム監視制御アルゴリズムを並列的に実行してもよい。特定の実施形態では、システムは、システム制御アルゴリズムを含む。このシステム制御アルゴリズムは、システムに含まれる1以上のプロセッサで実行してもよい。こうした実施形態では、システムは、様々なソースから情報を受信しており、消毒サイクルの監視・制御へのプライマリアプローチ(primary approach)に対して独立したチェックを行うように動作してもよい。
【0083】
図11Aは、高度消毒手順のための例示的な監視制御システム1150(図11B)の実施形態が使用してもよい処理を示すフローチャート1100である。ここで、フローチャートで説明される各処理は、モジュール、セグメント、又はソフトウェアコードの一部を表してよく、特定の論理機能を実現するための1以上の実行可能命令を含む。なお、実装によっては、関連する処理の機能は、異なる順序で行われてもよく、更なる機能を含んでもよく、同時に行われてもよく、及び/又は省略されてもよい。
【0084】
図11Aを参照すると、消毒サイクル監視制御アルゴリズム1100は、まず、既知の技術により、1以上のセンサ、例えばセンサ1及び2の読み取り1102及び1104を行ってもよい。該技術は、センサ1及びセンサ2の1以上のフォトダイオードから放射線測定値を取得することを含んでもよい。センサ1及びセンサ2は、それぞれ1以上のフォトダイオードを含んでもよい。説明の都合上、センサ1のフォトダイオードは、測定フォトダイオードであってよく、センサ2のフォトダイオードは基準フォトダイオードであってよい。従って、1102の読み取りは、1以上の測定フォトダイオードが受ける放射線量を表す値を取得する動作を含み、1104の読み取りは、1以上の基準フォトダイオードが受ける放射線量を表す値を取得する動作を含む。
【0085】
センサ1の測定フォトダイオードは、消毒チャンバ内に配置されるとともに、消毒対象物が受ける紫外線量を収集するように構成される。消毒対象物は、複数の消毒対象物であってよい。従って、1つのフォトダイオードを、1つの対象物の一部分、複数の対象物の一部分、1つの対象物、いくつかの対象物、又は他の同様の態様が受ける紫外線を収集するように配置してもよい。
【0086】
センサ2の基準フォトダイオードは、1以上の放射線源に近接して配置される。較正手順において、放射線源を作動させ、センサ2により値を収集して記録することができる。場合によっては、較正手順は、放射線源に関する1以上のパラメータを変更しつつセンサ2を読み取ることと、異なる条件下でセンサ2が収集した値を記録することとを含む。場合によっては、センサ1を併せて読み取って記録してもよい。このようにして、センサ2からの放射線値を放射線源の特定の条件と関連付けてもよく、加えて、又は別の選択として、センサ2からの放射線値をセンサ1の放射線値と関連付けてもよい。較正手順により、管理された試験条件下における1以上のセンサからの値を記録すれば、読み取り値間の相関を、通常の使用条件で消毒チャンバ内に物品を配置して照射する際に使用することができる。
【0087】
較正手順は、放射線源の出力のばらつきを勘案するのに用いられる。出力のばらつきには、多くの要因が関与している。要因としては、温度、稼働時間、入力パワー、チャンバの過去の使用又は誤用に基づく線源の物理的状態、その他の多くの要因が挙げられる。よって較正手順では、管理条件における放射線源の実際の出力を測定することができ、較正手順中に収集した値を適用することで、通常条件において収集されるセンサ値を調整することができる。例えば、較正手順において、放射線源を既知のパラメータセットで作動させた場合に、センサ2からある値「X」を取得したとする。その後、消毒の通常使用時に同じパラメータを放射線源に適用した場合、Xの75%の値をセンサ2で取得したとする。取得値に基づいて、放射線の25%がセンサに到達しないことが認められるため、センサ1で収集した値は75%に適合するものとして計上してもよい。
【0088】
センサ1及び2から読み込んだ信号(すなわち、値)は、1106及び1108において調整を行ってもよい(例えば、較正係数を適用したり、フィルタリングしたり、何らかの計算又はアルゴリズムによって処理したりする等)。本明細書において、較正手順は、パラメータや、様々な条件下において消毒システムから収集した値を記録するように実行してもよい。較正手順は、消毒サイクルの全期間又は一部期間、試験手順の前又は後、定期自己診断テストの一部として、もしくは他の機会に実行してもよい。パラメータとしては、消毒チャンバ内の温度上昇又は低下、消毒チャンバ内のセンサの位置変更、一定時間の放射線源の稼働、特定のパワー条件、及び特定のレート又は期間が挙げられる。較正手順を用いて、スケーリング係数、重み付け係数、規格化係数、較正係数、数学的補正係数等を生成してもよい。以後、センサから伝えられる値は、これらの係数を用いて修正することができる。
【0089】
ある実施形態では、センサ1及びセンサ2のフォトダイオードは、検知した放射線の瞬時量を表す電圧又は電流等のアナログ値を出力する。アナログ値をアナログ-デジタル回路に適用して、検知した放射線の瞬時量を表す既知の範囲のデジタルカウント値を生成してもよい。別のケースでは、センサ1及びセンサ2のフォトダイオードは、デジタルカウント値を直接出力する。カウント値は、検知した放射線の瞬時量又は累積放射線量を表してもよい。場合によっては、カウント値は、10ビットの二進数としてもよい。カウント値は、0~1023の間の値をとってもよい。このようにカウント値が10ビットの二進数である場合、値0は、センサの1以上のフォトダイオードが放射線を全く受けていないことを表し、値1023は、フォトダイオードが放射線で完全に飽和していることを表す。0~1023の間のカウント値は、センサの1以上のフォトダイオードがどれくらいの放射線を受けたかを比例的に表す。1102及び1104で読み出したカウント値を、較正手順による1以上の値とともに数式を適用して修正し、それぞれ1106及び1108において、フィルタリング済み、規格化済み、又は何らかの較正済みのカウント値を生成してもよい。
【0090】
次に、1110において消毒サイクルが開始され、ある時限インターバルにわたって実施されることで、規定の線量の消毒用放射線が1以上の処理対象物に供給される。本明細書において、時限インターバルは、「プライマリ時限インターバル」とも呼ばれる。プライマリ時限インターバルは、600秒、540秒、480秒、420秒、360秒、300秒、240秒、180秒、120秒、100秒、90秒、60秒、45秒、30秒、15秒、及び10秒の期間、又は他の同様の時間値の中から選択してもよい。場合によっては、プライマリ時限インターバルは、600秒より長くても10秒より短くてもよい。
【0091】
ある実施形態では、固定期間中又は終了時に、センサからの検出放射線を処理1112する。この処理は、積分処理を含んでもよい。この積分処理は、経時的なセンサデータを累積して1以上のセンサからの総放射線量を求めるものであり、ある実施形態では、2以上のセンサの平均を求めるものである。加えて、又は別の選択として、上記処理は、信号調整を含んでもよい。この信号調整は、較正手順中に生成される補正係数を線形適用することを含んでもよい。あるいは、信号調整は、より複雑なフィルタリングアルゴリズム、予測アルゴリズム、統計分析アルゴリズム等を含んで、消毒チャンバ内の物品に適用される放射線の正確な指示値を生成してもよい。
【0092】
検出した放射線信号の処理を消毒サイクル中に行う場合、こうした処理は、固定期間が終了するまで所定の時間間隔で行われるようにプログラムすることができる。図11Aでは、例えば、1112の計算動作と連携して、1114において所定の時間間隔を処理することできる。所定の時間間隔が経過し、且つ消毒サイクルの全固定期間(すなわち、プライマリ時限インターバル)が経過していない場合、処理は1114から戻って、1102及び1104においてセンサ1及びセンサ2から新しいデータの読み取りを行う。あるいは、全固定期間が経過した場合、プログラムフローは1116の消毒サイクル処理の終了へ移り、計算ステージ1112で得られた1以上の値の分析を行う。固定期間(すなわち、プライマリ時限インターバル)終了時に得られる1以上の計算値は、1118及び1120において1以上の閾値レベルと比較する。第1のケースでは、1以上の計算値から十分な線量の放射線が施されたことが判明した場合、1118の処理は、有効な消毒サイクル1122の終了へ進む。有効な消毒サイクル1122の終了処理は、成功したことを表す映像、音声、触覚的、又は他の何らかの表示を生成することを含む。また、1以上の計算値から十分な線量の放射線が施されなかったことが判明した場合、1118からの処理は1120へ進んでもよい。この場合、十分な線量の放射線は提供されなかったが、不十分な線量ではあっても第2の閾値を上回るものであると判断されることがある。1以上の計算値が第2の閾値を上回る場合、処理は1124へ進んで、低警告レベルインジケータをアクティブにして、処理をどのように進めるかについての判断を行ってもよい。また、施された放射線量が非常に低い場合や、別の理由がある場合、1124の処理は、サイクルを延長(例えば、有効状態に到達するようにサイクルの時間を追加)するようにシステムに対して指示するとともに、処理を戻して、1102でセンサ1から、1104でセンサ2からデータを読み取るようにしてもよい。別の実施形態では、1124の処理は、1124で低レベル曝露警告を伝えるとともに、1122で有効な消毒の表示を行って処理を終了するようにしてもよい。このように有効な消毒の表示とともに低レベル警告が伝えられる場合としては、十分な線量の放射線が測定されているものの、消毒時間の延長や、温度上昇、第1の低い閾値を上回り且つ第2のより望ましい閾値を下回る放射線量等、他の状況が判明している場合がある。更に別のケースでは、1124の処理において、放射線量が1120で第2の閾値を上回ると判断されるものの、消毒チャンバの他の条件から、1126での無効な消毒の表示が指示される場合がある。こうした場合、無効な消毒の原因としては、追加の放射線が送達されたり、他のエラーが記録されたりした回数が超過することが挙げられる。
【0093】
1120の処理に戻り、もし1以上の計算値から、施された放射線の不十分な線量が第2の閾値を下回ることが判明した場合、処理は1126へ移り、エラー条件であるとしてサイクルを終了する。
【0094】
消毒サイクル監視制御アルゴリズム1100の処理は、オプションとして、1以上のユーザ設定パラメータを含んでもよい。例えば、固定期間(すなわち、プライマリ時限インターバル)を選択的に設定してもよく、所定の時間間隔を選択的に設定してもよく、他のパラメータを選択的に設定してもよい。1128において、低カウント警告レベルとして示される第1の閾値を選択的に設定してもよい。1130において、最低曝露レベルとして示される第2の閾値を選択的に設定してもよい。本明細書において、第1及び第2の閾値は、それぞれ1118及び1120の処理で適用される。
【0095】
1102~1130の処理は、消毒アルゴリズムと考えてもよい。消毒アルゴリズムは、1以上のソフトウェアプログラム、サブルーチン、モジュール等で構成されていてもよい。消毒アルゴリズムは、オペレーティングシステムにより制御される動作環境内で実行してもよい。あるいは、消毒アルゴリズムは、オペレーティングシステムを有しない埋め込みコントローラ環境で動作してもよい。
【0096】
システムパラメータを監視する第2のアルゴリズムを、システム監視制御アルゴリズム1100内で実行してもよい。1140の監視アルゴリズムは、1102~1130の消毒アルゴリズムと並列的に動作してもよい。あるいは、1140の監視アルゴリズムは、1102~1130の消毒アルゴリズムと連続的に(すなわち、直列的に)、1102~1130の消毒アルゴリズムよりも優先的に、1102~1130の消毒アルゴリズムに従属的に、又は1102~1130の消毒アルゴリズムと他の何らかの形で連携して動作してもよい。一般に、1140の監視アルゴリズムは、消毒装置の使用時に、継続して動作するものである。
【0097】
1140の監視アルゴリズムは、消毒装置の種々の論理モジュールと相互作用を行う。場合によっては、1140の監視アルゴリズムは、種々の論理モジュールの動作状態を監視する。別の場合には、1140の監視アルゴリズムは、ユーザ又は別の計算プログラムと相互作用して、現在のパラメータを調べたり、パラメータを変更したり、パラメータを追加したり、パラメータを削除したり、パラメータを編集したりする。種々の論理モジュールは、放射線源パワー(すなわち、電流、電圧等)、ドアロック、温度センサ、冷却ファン、電子識別モジュール(例えば、消毒対象物に関連付けたRFIDタグ)等に関するパラメータやステータス値を含む。放射線源に関するパラメータ及びステータス値は、較正処理や較正パラメータ(例えば、補正係数、スケーリング係数等)と連携して使用してもよい。温度センサを監視して、消毒チャンバが、例えば35℃未満の好ましい温度や55℃未満の許容温度等、1以上の閾値温度を超えないようにしてもよい。ドアロックセンサを監視して、人が放射線源により発生する放射線エネルギーに曝される危険を低減してもよい。冷却ファンの動作を監視して、消毒チャンバ内の温度を制御してもよい。場合によっては、アクティブ冷却を採用して、消毒チャンバ内の温度を消毒対象物の保全や放射線源の効率化等の理由による1以上の閾値温度よりも低く維持してもよい。1140の監視アルゴリズムにより、1以上の識別モジュールを監視又は制御することができる。識別モジュールは、例えばRFIDタグを読み込んで、消毒チャンバ内に物品が存在するか否か、どの消毒装置が使用されているか、放射線源の素性、及びデータを制御・追跡等するその他多くのパラメータを判定することができる。
【0098】
1140の監視アルゴリズムは、消毒装置及び内部の物品の不適切な動作や危険な状態を検出するように構成される。場合によっては、1140の監視アルゴリズムは、継続的に動作する。1140の監視アルゴリズムは、一般に1102~1130の消毒アルゴリズムの実行とは独立して実行されるが、図11Aに示すように、条件によっては、1140の監視アルゴリズムが1126の消毒アルゴリズムの処理に影響を与えることも可能である。こうしたケースでは、温度上限閾値を超過した場合、例えば、放射線源をシャットダウンしたり、無効な消毒を報告したり、他の操作を行ったりするように消毒アルゴリズムの動作を指示することができる。
【0099】
様々な手法により、消毒チャンバ内に含まれる1以上の放射線(例えば、UV-C)源により放出される放射線(例えば、UV-C)線量に基づいて、消毒サイクル制御動作を監視・実施してもよい。本明細書に記載の実施形態では、例示の目的から、放射線源をC波紫外線と呼ぶが、他の放射線源波長を用いてもよい。ある変形例では、時間ベースでサイクルを生成し、サイクル終了時に所定の閾値線量に到達したかを確認するような方法であってもよい。時間ベースのサイクルを用いる実施形態では、消毒チャンバ内の1以上の消毒ゾーン内に、許容可能な閾値(例えば、最低)総線量の消毒用放射線が送達されるように、処理時間を選定する。例えば、C波紫外線を消毒用放射線として用いる場合、消毒サイクルのプライマリ時限インターバルは、消毒チャンバ内の1以上の消毒用領域に送達されるC波紫外線の強度を考慮するとともに、約50,000μJ/cm2~約10,000,000μJ/cm2から選択される総C波紫外線量を送達するのに要する時間を計算して決定してもよい。こうした実施形態では、プライマリ時限インターバルは、約50,000μJ/cm2~約1,000,000μJ/cm2から選択される総C波紫外線量、例えば、約50,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約250,000μJ/cm2、及び約50,000μJ/cm2~約100,000μJ/cm2、又は他の同様の値の中から選択される線量を送達するのに要する時間を計算して決定してもよい。更なる実施形態では、時間ベースのサイクルは、約150,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、及び約150,000μJ/cm2~約250,000μJ/cm2、又は他の同様の値の中から選択される総C波紫外線量を送達するのに要する時間を計算して決定してもよい。更なる実施形態では、プライマリ時限インターバルは、約250,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、及び約250,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、又は他の同様の値の中から選択される総C波紫外線量を送達するのに要する時間を計算して決定してもよい。
【0100】
本明細書に記載の装置及びシステムにおいて、システムのパフォーマンスは、様々な変動要因に影響され得る。例えば、UV-C線源の出力は、時間とともに変動又は変化することがあり、具体的には、UV-C線源を消毒用放射線に用いる場合、ランプ出力は、使用とともに変化したり、動作環境の温度とともに変化したり(この場合、UV-Cランプのパフォーマンス(すなわち、放出されるUV-C光の強度)が変化し得る)、線源(例えば、UV-Cランプ)の表面清浄度や状態とともに変化したり、及び/又はチャンバの反射面/再放射面の状態とともに変化したりする(この場合、1以上の消毒対象物に達するC波紫外線の強度が、望ましくない減少や変化を呈することがある)。1以上のUV-Cセンサのパフォーマンスが、時間とともに劣化又は変化したり、センサの故障や汚染、調整不良等によって予期せぬ変化をしたりすることもある。本明細書に記載の装置及びシステムの実施形態は、消毒チャンバ内に1以上の消毒用領域を生成するものであり、1以上の物品を、特に人手によって配置した場合には、配置に不整合が生じることがある。配置の不整合は、物品に送達されるC波紫外線の強度又は総線量に影響を及ぼす要因の一つである。
【0101】
本明細書に記載のある実施形態では、システム監視制御アルゴリズムは、1以上のUV-C線源のステータスを定期的に判断するように動作する。アルゴリズムは、1以上のUV-C線源及び1以上のUV-Cセンサの各々を選択的に較正してもよい。較正処理は、各線源及び各センサに対して個別に行ってもよく、較正処理は、1以上の協調動作する線源やセンサに対して行ってもよい。アルゴリズムは、更に、消毒チャンバ内の1以上の物品の存在、及び/又は配置を検出してもよい。システム監視制御アルゴリズムが消毒システムの様々な構成要素の1以上から集めたステータス情報及び/又は実行した較正に基づいて、システム監視制御アルゴリズムは、更に、次の動作のうちの1つ以上を行ってもよい。1)ユーザにエラー条件(例えば、選択した動作仕様に沿って機能していないUV-C線源又はUV-Cセンサ)を警告すること、2)1以上の消毒対象物に対する目標処理時間を調整すること、及び3)1以上の構成要素を変更して(例えば、1以上のUV-C線源の出力を変調することにより)所定のサイクル時間内に高度消毒が確実に行われるようにすること。
【0102】
ある実施形態では、本明細書に記載のシステムで使用するシステム監視制御アルゴリズムは、過去5回、10回、15回、20回、25回、50回、又は他の同様の回数の消毒サイクルにおいて高度消毒に十分なエネルギーを送達するのに要した時間を監視し、こうした情報に基づいてサイクル時間を変更してもよい。特定の実施形態では、システムは、本来の又は直近のシステム較正に基づいて、ある物品に対するプライマリ時限インターバルを140秒と定義してもよい。システム制御アルゴリズムは、次に、過去のサイクルから収集した情報を用いて、選択した回数の過去の消毒サイクルが完了するのにかかった時間を考慮して基準線(ベースライン:baseline)を増減してもよい。このような手法により、例えば管(すなわち、放射線源)の劣化等、構成要素のパフォーマンスのフィードバックに基づいて、プライマリ時限インターバルを調整することが可能になる。あるいは、プライマリ時限インターバルは、まず140秒間続くものとプログラムし、次いで、過去20サイクルで適用した時間の平均に基づいて上下調整してもよい。更なる変形例では、本方法をあるプライマリ時限インターバル(例えば、90秒サイクル)で開始し、そのインターバルが経過した場合、x秒毎(例えば5秒毎)の線量をチェックして、所定の線量に到達/超過したかを判断してもよい。所定の線量に到達/超過した場合は、消毒サイクルを終了する。
【0103】
消毒サイクルは、図11Bに示す例示の監視制御システム1150によって監視及び制御することができる。図11Aに示すシステム監視制御アルゴリズム1100は、図11Bのシステム1150と並列的に実施及び実行することができる。例えば、正常な機能を可能にするシステムパラメータ、例えば、ランプ動作、ランプ電流/電圧、動作温度範囲、温度センサのステータス及び動作、温度制御システムのステータス及び動作、1以上の消毒対象物の存在、対象物の素性及び出所、チャンバドアのインターロックのステータス等を監視することができ、更に制御してもよい。アルゴリズム1100のある変形例では、チャンバ内、消毒対象プローブの表面、又は他のいずれかの場所にあり得る注目温度を監視するセンサをサンプリングし、読み出した値をN個の値を格納する循環バッファに格納する。温度は、例えば、800ミリ秒毎に読み出してもよい。移動平均を、許容可能な所定の最大温度閾値(Tmax)と比較する。平均温度がTmaxを超える場合、エラーコードを発生するとともに、チャンバ内の温度が最大許容値を下回るまでシステムを待機モードに入るように指示してもよい。Tmaxは、1以上の消毒対象物に基づいて選択及び調整することができる。1以上の消毒対象物に応じて、Tmaxは、45℃、50℃、55℃、及び60℃、又は他の同様の温度値の中から選択してもよい。例えば、消毒対象物が超音波プローブの場合、Tmaxは、45℃~55℃、45℃~50℃、48℃~50℃、及び他の同様の温度範囲の中から選択される範囲に収まる温度から選択される温度に設定してもよい。
【0104】
例示の監視制御システム1150は、1以上の処理部1152を含む。図11Bの処理部1152は、例えばマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラ等の単一の処理部であってもよく、処理部1152は複数の処理部から構成されてもよい。処理部1152は、1以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、中央制御装置(CPU:central processing unit)、又は他の同様の装置であるか、これらを含んでもよい。提示される消毒装置の処理部1152は、本明細書では、広義にCPUと称してもよい。すなわち、処理部1152は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、FPGA、ASIC、DSP、CPU、有限状態機械、又は他の制御プロセッサ装置の1つ以上であってよい。
【0105】
例示の監視制御システム1150のある機能については、記憶装置と連携して実現してもよい。記憶装置は、例えば、センサから収集した測定値や、システム監視制御アルゴリズム1100の機能を制御するのに用いられるパラメータ等のデータを格納する1以上の部分を含んでもよい。記憶装置は、処理部1152が実行可能なプログラム命令を格納する1以上の部分を含んでもよい。場合によっては、プログラム命令とデータとを1つの記憶装置に格納することがある。別の場合には、プログラム命令をある記憶装置に格納し、データは別の異なる記憶装置に格納することもある。図11Bでは、命令テーブル1154を第1の記憶装置に形成してプログラム命令を格納するとともに、システムパラメータ監視障害処理モジュール1156を第2の記憶装置に形成してデータを格納する。第1及び第2の記憶装置は、物理的に同じ記憶装置に配置してもよく、第1及び第2の記憶装置は、異なる記憶装置に配置してもよい。
【0106】
図11Bにおいて、命令テーブル1154及びシステムパラメータ監視障害処理モジュール1156を形成するのに使用する記憶装置は、データを読み書きするための揮発性及び不揮発性の非一時的コンピュータ可読媒体(CRM:computer-readable media)のいかなる組み合わせを含んでもよい。揮発性コンピュータ可読媒体としては、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)が挙げられる。不揮発性コンピュータ可読媒体としては、例えば、読み出し専用メモリ(ROM)、磁気メモリ、相変化メモリ、フラッシュメモリ等が挙げられる。記憶装置は、処理部1152外部のローカルな集積回路内に形成してもよく、処理部1152から離れた外部の集積回路内に形成してもよく、又はその組み合わせでもよい。
【0107】
命令テーブル1154に格納するプログラム命令は、システム監視制御アルゴリズム1100の機能を実行するために処理部1152により実行可能なソフトウェア命令の特定の集合であってよい。ソフトウェア命令は、個別に又は命令群としてファイルに格納してもよい。ファイルは、関数、サービス、ライブラリ等を含んでもよい。ファイルは、1以上のコンピュータプログラムを含んでもよく、より大きなコンピュータプログラムの一部であってもよい。加えて、又は別の選択として、各ファイルは、システム監視制御アルゴリズム1100の計算機能を実行するのに有用なデータ又は他のコンピュータ計算支援素材を含んでもよい。ソフトウェア命令は、ハードウェアやシステム監視制御アルゴリズム1100内の他のソフトウェアの構成を行って、電子データを収集及び通信し、本明細書に記載の消毒装置内で高度消毒が行われるようにしてもよい。命令テーブル1154に格納するソフトウェア命令は、放射線源を制御するとともに放射線センサを監視するようにシステム監視制御アルゴリズム1100を構成する。場合によっては、単一の処理部1152が、命令テーブル1154からのソフトウェア命令を実行して、放射線源の制御と放射線センサの監視との双方を行う。この場合、プログラム命令は逐次的に実行されるが、プログラム命令はシステムパラメータが相応に変化するのに要する時間に比べて非常に迅速に実行されるため、両動作(すなわち、放射線源の制御と放射線センサの監視)は並列的に実行されるものと見なされる。別の実施形態では、処理部1152内の2以上の処理部がソフトウェア命令を実行し、両動作(すなわち、放射線源の制御と放射線センサの監視)は文字通り並列的に実行される。
【0108】
場合によっては、システム監視制御アルゴリズム1100の動作は再構成可能である。すなわち、システム監視制御アルゴリズム1100の動作は、1組のパラメータで設定し、その後別の組のパラメータで再設定してもよい。パラメータは、命令テーブル1154に格納したソフトウェア命令を含んでもよい。パラメータは、モジュール1156に格納したシステムパラメータを含んでもよい。再構成は、システムを配置する際に、例えば、特定のパラメータ情報を入力した後に行われるようにする場合もある。
【0109】
処理部1152は、計時機能を有するが、この計時機能は、CPU内に統合されても、CPUとは異なる別個の構成要素で形成されても、CPUとは異なる別個の構成要素とCPU内に統合された構成要素との組み合わせで形成されてもよい。計時機能は、例えば、位相ロックループ、抵抗容量(RC)回路、水晶発振器、又は他の周期信号発生器等のクロック発生回路であってもよい。計時機能は、カウンタ又はクロックとして用いられる周期信号を発生して、放射線センサのサンプル値を蓄積及び積分したり、固定期間(すなわち、プライマリ時限インターバル)の機能を実行したり、所定の時間間隔の機能を実行したり、その他の目的のために構成される。場合によっては、計時機能の周波数は、設定可能である。例えば、時間カウントの周波数を設定してもよく、方向(すなわち、カウントアップするかカウントダウンするか)が設定可能であってもよく、計時機能の他の態様が設定可能であってもよい。
【0110】
例示の監視制御システム1150は、放射線源部1158と、放射線検出部1160と、温度測定部1162とを含む。本明細書において、システム監視制御アルゴリズム1100は、放射線源部1158を制御・指示して、本明細書に記載の特定のパラメータに従って放射線(例えば、UV-Cエネルギー)を発生させる。システム監視制御アルゴリズム1100は、更に、放射線検出部1160を用いて放射線サンプル測定を行い、温度測定部1162を用いて温度サンプル測定を行う。
【0111】
特定のオプション装備を例示の監視制御システム1150に配してもよい。例えば、RFID(radio frequency identification)リーダ1170を備えてもよい。RFIDリーダ1170は、消毒チャンバ内に配置された物品を追跡するのに有用であり得る。消毒対象物の検出及び識別処理を自動化することにより、例えば、特定の物品が消毒されたことを、より確実に保証することが可能になる。いくつかの実施形態では、ある消毒処理のステータス及び結果を、システム全体で一意のRFIDアドレスに電子的に結合することができる。こうした実施形態により、記録体制の向上、政府規制への準拠、消毒対象物の保全、およびに消毒の他の多くの態様が容易になる。ある実施形態の別のオプション装備に、プリンタ1172がある。プリンタ1172により、各々の消毒装置に関連付けた正確な記録保持が容易になる。例示の監視制御システム1150の更なるオプション装備に、特定の制御又はステータス情報を送信、受信、又は送受信するように構成された周辺装置1176がある。制御又はステータス情報は、命令、データ、パラメータ等の形であってよい。場合によっては、制御及びステータス情報は、周辺装置1176からシステムパラメータ監視障害処理モジュール1156へ渡されることもある。ある場合には、制御及びステータス情報は、周辺装置1176から、例示の監視制御システム1150から離れた別の装置へと通信されることもある。また他の場合には、制御及びステータス情報は、別の方向で別の装置へ渡されることもある。
【0112】
システム監視制御アルゴリズム1100は、温度センサ1162により検出されるチャンバ温度に応じて温度制御システムを動作させる温度制御ロジックを含んでもよい。含まれる場合、温度制御システムは、各消毒サイクルの全体にわたって消毒チャンバを選択した温度範囲に維持するのに役立つように構成される。例えばC波紫外線を発生する発光管等のC波紫外線源1158は、約35℃~約45℃の温度の時に、十分に高い効率で動作することがわかっている。温度制御システム1164は、オプションとして、例えば、1以上の冷却部(例えば、ファン)及び/又は1以上の熱源を含んでもよい。ある実施形態では、温度制御システム1164は、内部の温度が例えば約50℃、約45℃、約40℃、約35℃、及び約30℃、又は他の同様の温度を超えた場合、1以上のファンをオンにして消毒チャンバを冷却するとともに、内部の温度が例えば約35℃、約30℃、及び約25℃の中から選択される温度、又は他の同様の温度を下回った場合、1以上の熱源を利用して消毒チャンバを加熱するようにプログラムしてもよい。温度制御アルゴリズムは、また、温度上昇率と、1以上の温度センサ1162により測定される現在の温度と、現在の消毒サイクルの残り時間とを併せて考慮してもよい。更なる変形例では、システム監視制御アルゴリズム1100は、C波紫外線センサ1160及びC波紫外線源1158の動作ステータス(例えば、線源を作動させる最低電圧、線源を流れる電流、線源のサイクル毎及び累積の使用時間等)を定期的にチェックしたり、オプションのドアセンサ1174からのデータと連携してオプションのチャンバドアロック1166を操作したりしてもよい。
【0113】
本明細書におけるシステムは、消毒サイクル長を効果的に監視して、低い閾値(例えば、最低)線量で且つ十分な曝露線量の消毒用放射線で迅速且つ十分に対象物を消毒するようなサイクル時間で消毒サイクルを終了するとともに、対象物の温度上昇を伴う該対象物の消毒用放射線への過剰曝露を防止するものである。例えば、医療器具や医療手順に使用される器具を構成するのに一般に用いられるポリマー材料の場合、過剰曝露が繰り返されると物品がダメージを受けることが多く、対象が例えば50℃を超えるような高温に加熱されるのと同時にC波紫外線に曝露されると、潜在的な劣化がより顕著になるとともに深刻化する。このため、消毒チャンバ内の温度を制限することが有益である。
【0114】
消毒チャンバ内に配置された1以上の物品に送達される消毒用放射線の強度を確認し、シャドウイングの起こりうる範囲を査定し、目標最低線量の消毒用放射線を送達する処理時間を確認するため、本明細書に記載の装置及びシステムは、定期的な較正を容易にするように構成してもよい。特定の実施形態では、システムは、1以上の消毒領域の中央部に送達される消毒用放射線の放射照度及び/又は総線量の査定を可能にし、それにより閾値線量の消毒用放射線が1以上の消毒対象物にうまく送達されるようにシステムのサイクル時間を適切に調整できる/するように構成される。こうした実施形態では、較正ステップ中に、較正センサ1168(例えば、C波紫外線を用いる場合はUV-Cセンサ)を消毒領域内に位置決めして、消毒用放射線の放射照度及び/又は総線量を査定する。1以上の消毒領域に送達される消毒用放射線の査定は、例えば、目標サイクル時間の数分の一、1サイクル時間、数サイクル分(例えば、5サイクル、10サイクル、20サイクル、30サイクル、40サイクル、50サイクル、又はそれ以上)を始めとする、あらゆる選択した期間にわたって行われてもよい。較正センサ1168が受ける消毒用放射線の放射照度レベル及び/又は総線量に基づき、選択した目標総線量又は放射照度のずれを考慮して消毒システムの動作を調整してもよい。例えば、より低い閾値放射照度(例えば、最低)での動作であっても、一定の消毒サイクル時間内に十分な総線量の消毒用放射線を送達できる場合がある。放射照度が閾値を下回る場合、サイクル時間を増やして目標総線量の消毒用放射線を実現してもよく、放射照度が閾値を上回る場合、サイクル時間を減らして目標総線量の消毒用放射線を実現してもよい。
【0115】
特定の実施形態では、較正センサ1168に送達される消毒用放射線の放射照度レベル及び/又は総線量を、消毒チャンバに含まれる1以上の消毒用放射線センサ1160により検出される同様の値と比較する。こうした比較により、較正センサ1168により検出される値を、消毒チャンバに含まれる1以上のセンサ1160により検出される値と相関させることができ、較正センサ1168による消毒用放射線の読みと消毒チャンバの1以上のセンサ1160による読みとの差を用いて、システムを較正することができる。このようにしてシステムを較正することにより、システム及び/又は操作者が、例えば、システム毎のばらつきや、消毒チャンバ内に放出され検出される消毒用放射線量のばらつきを勘案することが可能になる。
【0116】
較正センサ1168は、位置決めアセンブリと関連付けてもよく、消毒チャンバは、位置決めアセンブリを受け止めて、較正センサ1168が消毒チャンバ内で精密且つ繰り返し可能に配置されるように構成してもよい。消毒チャンバが2つ以上の消毒領域を含むように構成される場合、各消毒領域は、較正センサ位置決めアセンブリを備えるか受け止めるように構成してもよい。消毒チャンバが消毒領域をただ一つ含むように構成される場合、消毒チャンバは、較正センサ位置決めアセンブリをただ一つ備えるか受け止めるように構成してもよい。
【0117】
特定の実施形態では、較正センサ位置決めアセンブリは、消毒領域内の定められた一定の場所に、消毒チャンバに対して取り外し可能にマウントしてもよい。例えば、較正センサ位置決めアセンブリは、較正センサを消毒チャンバ内の同じ場所に同じ姿勢で繰り返し可能に位置決めできるように、取り外し可能にマウントしてもよい。ある実施形態では、位置決めアセンブリ及び消毒チャンバは、消毒領域の中央に較正センサ1168を位置決めするように構成してもよい。更に、較正センサ位置決めアセンブリは、較正センサ1168に対して永久に又は取り外し可能にマウントしてもよい。較正センサ1168の位置決めアセンブリとしては、いかなる適当な装置を用いてもよい。例えば、位置決めアセンブリは、較正センサ1168を取り付けられるとともに、消毒チャンバ内の定められた位置に自身を位置決めできるように構成されたブラケットであってよい。こうした実施形態では、ブラケットは、消毒チャンバ内に、例えば1以上のピン、ボルト又はネジを用いてマウントするか又は何らかの仕方で位置決めしてもよい。加えて、又は他の選択として、較正センサ1168の位置決めブラケットは、消毒チャンバに備えられたマウント台座内に嵌合するようにキーが形成された配置装備又は配置面を有してもよい。このマウント台座は、消毒チャンバ内の1以上の消毒対象物を位置決めする働きを果たしてもよく、1以上の消毒対象物を位置決めするのに用いられるサスペンションアセンブリがある場合には、サスペンションアセンブリも、マウント台座に合わせてキーが形成された配置装備又は配置面を含んでもよい。マウント台座とキーを有する位置決めアセンブリ又はサスペンションアセンブリとは、位置決めアセンブリ又はサスペンションアセンブリを消毒チャンバ内に取り外し可能にマウントできるようにするとともに、位置決めアセンブリ又はサスペンションアセンブリを消毒チャンバに物理的に連通させるように選択された又は選択可能ないかなる構成をとってもよい。例えば、マウント台座とキーを有する位置決めアセンブリとは、ねじ込み式コネクタ、もしくは位置決めアセンブリを定められた位置に例えば摩擦嵌め、ツイストロック、ピン留め、テーパ形状又は圧入接続によって維持する雌雄式コネクタとして構成してもよい。較正センサ1168の位置決めアセンブリを備えるとともに、消毒チャンバ内に較正センサ1168を精密且つ再現可能に配置及び再位置決めできるように消毒チャンバを構成することにより、1以上の消毒対象物が受ける消毒用放射線の強度及び線量を確実に査定することが容易になる。
【0118】
例示の監視制御システム1150のモジュール間でデータ信号、制御信号、もしくはデータ及び制御信号を受け渡しするための通信プロトコルを、図11Bに示す。図示の通信経路及びプロトコルは例示であって、異なる通信経路及びプロトコルを実装してもよい。処理部1152と各測定部(すなわち、放射線センサ1160及び温度センサ1162)との間に、シリアルペリフェラルインターフェイス(SPI)バスを示す。また、他の3つのシリアルバス通信プロトコルを図11Bに示す。較正センサ1168とオプションのプリンタ1172が、ユニバーサルシリアルバス(USB)接続を介して処理部1152に接続され、オプションのRFIDリーダ1170が、RS-485シリアルバス接続を介して処理部1156に接続されるとともに、RS-232シリアル通信接続も提供される。シリアル通信に加えて、処理部1152は、イーサネットバス(「イーサネット」は登録商標。以下同じ。)やビデオグラフィックアレイ(VGA)バスにより他のオプションの装置と通信してもよい。イーサネットバス又は他の同様のネットワーク通信インターフェイスを用いて、例示の監視制御システム1150を、特定の遠隔コンピュータデバイス又は別の監視制御システム1150に通信接続して、データ又は制御情報を双方向で受け渡しできるようにしてもよい。VGAバス又は他の同様のインターフェイスを用いて、ディスプレイ型装置を例示の監視制御システム1150に接続してもよい。
【0119】
本明細書に係る較正センサの位置決めアセンブリの一実施形態を、図12A及び図12Bに示す。図示の実施形態において、位置決めアセンブリ1202は、較正センサ1204をマウント可能なブラケットである。オプションとして、較正センサ1204に加えて、例えばRFIDカラー1206等のトレーサビリティ部品を備える。トレーサビリティ部品を使用して、関連する較正センサ1204を特定したり、較正センサ1204のステータス及び/又は累積使用に関する情報を収集したり、政府のコンプライアンスのためのデータを収集したり等することができる。
【0120】
図12Bは、位置決めアセンブリ1202、較正センサ1204、及びオプションのトレーサビリティ部品1206の分解組立図である。図12Bを参照すると容易にわかるように、較正センサ1204及びオプションのトレーサビリティ部品1206は、位置決めアセンブリ1202に螺合又は何らかの方法で挿通するとともに較正センサ1204及びオプションのトレーサビリティ部品1206に螺合した1以上のボルト1208を始めとする、なんらかの好適な接続メカニズムを介して位置決めアセンブリ1202にマウントすることができる。位置決めアセンブリ1202は、消毒チャンバ内に設けたマウント台座に合わせてキーが形成された配置面を提供する位置決めリング1210を有する。図12A及び図12Bに示す実施形態において、位置決めリング1210は、消毒チャンバ内に又は例えば消毒チャンバの1以上の壁のいずれかを通して設けられた対応するマウント台座と組み合わされて、較正センサを消毒チャンバ内の定められた場所に精密且つ再現可能に位置決め及び再位置決めすることを可能にする。本明細書で考察する位置決めアセンブリを図12A及び図12Bに示したが、図示の位置決めアセンブリは、あくまでも本明細書に係る消毒システムとともに使用可能な位置決めアセンブリの構成を例示するための一実施形態に過ぎないと理解されるべきである。本明細書の詳細な説明から、本明細書に記載の位置決めアセンブリは、種々の状況及び種々の異なる消毒システムに適するように様々に構成することが可能であることが同業者には正しく理解されよう。

II.方法
【0121】
本明細書に係る方法は、迅速且つ低温で実行されて、高度消毒を行うものである。本明細書に記載の方法は、消毒対象物を用意することと、対象物を消毒装置内へ位置決めすることと、消毒サイクルを実行することとを含むものであり、これらは短時間で実施できるものである。一般に、消毒処理はより迅速且つより低温で行われるのが望ましいが、その理由は、医療器具を始めとする物品は、紫外線又は高温への曝露を始めとする消毒条件にさらされると物理的又は化学的に劣化し得る材料(例えば、プラスチック)から作られているものが多いからである。消毒サイクルの時間を短縮するとともに十分に低い温度を維持することで、消毒対象物は長期間にわたって物理的及び化学的に保全される。
【0122】
本明細書において、短時間で実行される消毒方法とは、高度消毒を10分以内に(すなわち、600秒以下で)実現する方法を指す。特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、10分未満で実行される。例えば、ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、600秒、540秒、480秒、420秒、360秒、300秒、240秒、180秒、120秒、100秒、90秒、60秒、45秒、30秒、15秒、及び10秒の中から選択される期間内、又は他の同様の時間内に高度消毒を実現する。本明細書において、消毒サイクルを実行する装置は、手動、半自動、又は自動動作を行うように構成することができる。自動又は半自動動作を行うように構成する場合、消毒デバイスは、定められた条件が満たされた場合、消毒サイクルを自動的に終了するように構成してもよい。
【0123】
消毒チャンバ内の温度は、低いレベルに維持される。消毒チャンバ内の環境温度及び消毒対象物の表面温度の一方又は両方を監視する。監視温度が消毒対象物の表面温度又は消毒チャンバ内の環境温度一般である場合、消毒システムの実施形態は、温度が55℃を超えないように運転される。例えば、ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、環境温度又は物品の表面温度を監視することを含み、消毒システムは、測定した環境又は表面温度が35℃、40℃、50℃、及び55℃の中から選択される温度、又は他の同様の温度を超えないように運転及び/又は制御される。物品の表面温度及び/又は消毒チャンバの環境温度が選択された閾値を超える場合、本明細書に記載のように消毒を中断又は終了してもよい。
【0124】
本明細書に記載の装置及びシステムの消毒チャンバ内へ送達される消毒用放射線の強度により、迅速且つ低温での消毒を容易にする。特定の実施形態では、本明細書に係る方法は、高強度C波紫外線を1以上の消毒対象物に送達することを含む。こうした実施形態では、C波紫外線は、1以上の消毒対象物に対し、少なくとも約1,500μW/cm2の放射照度レベルで送達してもよい。ある実施形態では、消毒チャンバ内に1以上の消毒領域が形成され、1以上の消毒領域のそれぞれにおいて、少なくとも約1,500μW/cm2の放射照度レベルでC波紫外線が送達される。例えば、1以上の消毒領域に送達されるC波紫外線の放射照度は、少なくとも約1,500μW/cm2から最大約5,000μW/cm2の放射照度レベルの範囲である。更なる実施形態では、1以上のUV-C線源は、消毒チャンバ内の1以上の消毒領域において1以上の消毒対象物に送達されるC波紫外線の最低放射照度レベルが、約1,500μW/cm2~約2,000μW/cm2、約1,500μW/cm2~約2,500μW/cm2、約1,500μW/cm2~約3,000μW/cm2、約2,000μW/cm2~約2,500μW/cm2、約2,000μW/cm2~約3,000μW/cm2、約2,000μW/cm2~約3,500μW/cm2、約2,000μW/cm2~約2,500μW/cm2、約2,000μW/cm2~約2,750μW/cm2、約2,500μW/cm2~約2,600μW/cm2、約2,500μW/cm2~約2,750μW/cm2、及び約2,500μW/cm2~約3,000μW/cm2、又は他の同様の放射照度レベル範囲から選択されるように選定及び配置してもよい。
【0125】
本明細書に記載の方法の実施形態は、消毒チャンバ内に消毒領域を形成することと、消毒対象物を消毒領域内に位置決めすることと、高強度C波紫外線を消毒領域へ送達することとを含み、高強度C波紫外線は、本明細書に詳述する時間間隔内に高度消毒を実現するのに十分であってよい。こうした実施形態では、消毒領域へ送達されるC波紫外線の強度は、本明細書に記載の値及び範囲の中から選択してもよい。更に、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の消毒チャンバ内に2つ以上の消毒領域を形成することと、2つ以上の消毒領域のそれぞれの内部に少なくとも1つの消毒対象物を位置決めすることと、本明細書に記載の高強度C波紫外線を消毒領域のそれぞれに送達することとを含んでもよいと理解されるべきである。
【0126】
また、消毒チャンバ内のC波紫外線の線量も監視される。本明細書に係る方法では、C波紫外線量を様々な方法で用いて消毒処理を定義することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載の消毒処理は、1以上の物品に対して閾値線量のC波紫外線を送達するように選択された所定の時間にわたって実施され、その後、1以上の物品に送達されたUV-C線量が査定される。第1時間間隔中に送達されたUV-C線量に応じて、システムは、高度消毒を実現するために十分なC波紫外線が確実に施されるように計算された第2時間間隔にわたって消毒処理を継続してもよい。第1期間中又は第1期間後に物品に送達されたC波紫外線量を査定するため、いくつかの手法のいずれかを採ってもよい。例えば、消毒チャンバに含まれる各センサの平均UV-C線量を、センサの少なくとも1つに対する個別のC波紫外線量と組み合わせて査定してもよい。あるいは、UV-C曝露量は、単に全てのセンサ又は一組のセンサのUV-C曝露量の平均によって査定してもよく、各センサの個別のUV-C曝露量を査定してもよい。特定の実施形態では、C波紫外線の閾値(例えば、最低)線量を、本明細書に詳述する中から選択してもよい。例えば、1以上のセンサにおける個別のUV-C曝露量を監視する場合、又は2つ以上のセンサの平均UV-C曝露量を監視する場合、こうした個別又は平均のUV-C線量に対する閾値線量は、約50,000μJ/cm2~約10,000,000μJ/cm2、又は他の同様の範囲から選択してもよい。こうした実施形態では、線量は、約50,000μJ/cm2~約1,000,000μJ/cm2から選択してもよく、例えば、約50,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、約50,000μJ/cm2~約250,000μJ/cm2、及び約50,000μJ/cm2~約100,000μJ/cm2、又は他の同様の範囲の中から選択する線量であってもよい。更なる実施形態では、線量は、約150,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、約150,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、及び約150,000μJ/cm2~約250,000μJ/cm2、又は他の同様の範囲の中から選択してもよい。更なる実施形態では、線量は、約250,000μJ/cm2~約750,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約650,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約500,000μJ/cm2、約250,000μJ/cm2~約450,000μJ/cm2、及び約250,000μJ/cm2~約350,000μJ/cm2、又は他の同様の範囲の中から選択してもよい。
【0127】
ある消毒システムに対して、消毒サイクル時間を決定する方法も提供される。まず、選択された物品に対して高度消毒を実現する消毒用放射線(例えば、C波紫外線)の初期目標線量を求める。この技術は、消毒システム外の管理条件において、選択した病原体に対して選択した対数殺菌性能を実現するのに要するUV-C曝露量を査定することを含む。消毒システム外で求める消毒条件を、in-situで決定し、それを用いて、高度消毒を実現する消毒用放射線量の第1近似値を求める。
【0128】
次に、病原体の選択した対数減少に要する消毒用放射線量の第1近似値を用いて、初期消毒サイクル時間を始めとする消毒システムの消毒サイクルパラメータを設定する。こうした手法を用いて、本明細書に係る消毒システムにおける初期目標線量情報を確認することができ、サイクル時間を短くした場合及び/又は消毒用放射線の曝露を減らした場合に病原体の選択した対数減少を実現するように消毒サイクルパラメータを適宜調整することができる。なお、消毒装置の特性にはばらつきがあり得ると考えられる。従って、異なる消毒装置に対して、装置外で実験的に求めたC波紫外線の第1近似線量を実現するのに適用される消毒サイクルパラメータは、適用される装置によって装置毎に異なる。
【0129】
消毒用放射線の第1近似目標線量を実現するための所定の消毒曝露量は、ある装置の内部でも、1以上のC波紫外線源の性質、数、配置及び出力、チャンバを画定する壁又は表面の配置、位置、形状及び反射特性、ならびにUV-Cセンサの数及び特性等(いずれも、1以上の消毒対象物に送達されるC波紫外線の強度レベルを規定するものである)といった要因に左右されるとともに、こうした要因に鑑みて調整されるものである。同様に、1以上の消毒対象物の位置が、目的の消毒の有効性に影響することもある。
【0130】
本明細書において、「線量」は、物品を規定の放射照度に曝露する期間における1以上のUV-C線源の放射照度の積分として求めてもよい。ある1組のシステム特性に対する最低消毒サイクル時間は、プライマリ時限インターバルとして特定される。本明細書に詳述するように、本明細書に記載の消毒システムは、例えば、現在のシステム情報やシステム情報の履歴(シャドウイング、管及びセンサの劣化、温度等)を処理して、病原体の選択した対数減少を実現するようにプライマリ時限インターバルを適宜調整するシステム監視制御アルゴリズム等、1以上のアルゴリズムを利用するようにプログラムしてもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載の消毒システムは、プライマリ時限インターバルを適宜調整して高度消毒を実現するようにプログラムされる。
【0131】
消毒装置の目標サイクル時間を決定する方法の一実施例では、1以上の対数減少殺菌テストをin-situで行う。対数減少殺菌テストは、基体の一定の領域上に、いくつかの異なる病原体(例えば、生細菌、胞子、真菌、カビ、ウイルス)を既知の個体数だけ分散させた試料を照射することで行う。1以上の病原体を組み合わせて単一の基体に対する1回のテストを行ってもよく、各病原体毎に個別にテストを行ってもよく、いかなる好適な基体を用いてもよい。ある実施形態では、基体は、例えばスライドガラス又はシャーレ等のガラスである。また、病原体は、消毒対象物に典型的に見られる汚染を近似するように設計された1以上の干渉媒体中に、又はそうした干渉媒体と組み合わせて用意してもよい。基体の一定の領域に既知の個体数の病原体を適当な分布で接種した後、基体を直接照射して、基体面における入射放射輝度を測定する。放射線源は、消毒システムに用いられる線源に基づいて選択することができ、送達する放射線は、消毒システム内で発生する強度レベルを近似するように調整することができる。例えば、消毒システムがC波紫外線源を利用する場合、in-situ殺菌テストに用いる放射線源は、UV-Cを同様のパワースペクトルで放射する。光学フィルタを用いて、選択した放射線が、実際のシステムで用いる放射線を正確に再現するようにしてもよい。次に、既知の個体数の病原体を接種した基体を、所定の強度のC波紫外線に曝露して、病原体の生存数が選択した対数減少を実現するのに要する曝露量(C波紫外線の送達時間又は総線量)を特定する。ある実施形態では、対数減少殺菌テストを行って、対数殺菌数対曝露時間をプロットしてもよい(「殺菌曲線」)。消毒システム外で生成したこのような情報を用いることにより、病原体の消毒条件(例えば、UV-C曝露)に対する感受性をランク分けしたり、接種床に添加する干渉剤や干渉媒体の効果を査定したりすることが可能になる。こうした干渉剤は、光の浸透を妨げたり、何らかのかたちで病原体を保護したりしてもよく、in-situで見られる生体物質の存在をシミュレートするのに用いられてもよい。対数殺菌テストで得られた対数殺菌時間により、目標線量に対する第1近似値が得られる。
【0132】
第1近似目標線量情報を用いて、今度は、消毒システム自体で1以上の消毒対象物(例えば、超音波又は気管内プローブ)を使用して対数殺菌分析を繰り返す。この段階では、物品自体の表面に直接接種を行い、一定の領域に既知の量又は個体数の病原体を分布させてもよい。別の実施形態では、テスト用の保菌基体を用意して、消毒チャンバの消毒領域内に配置してもよい。こうした実施形態では、テスト用保菌基体は、消毒対象物の表面に固定してもよい。例えば消毒対象物に接種を行う代わりにテスト基体を用いることで、目標処理時間及びUV-C線量情報を査定するのに要する所用時間を短縮してもよい。テスト基体により、曝露後の病原体の再現可能な再生を容易にしてもよい。さらに、消毒システムの特性及び目標線量に対する第1近似値に基づいて設定されたUV-C曝露量(総UV線量)の範囲にわたって、病原体の殺菌効率の査定を行う。曝露時間の範囲は、例えば、30秒以下から始めて、最大数分から数十分までとする。次いで、対数殺菌曲線を計算し、第1近似目標線量情報と比較する。殺菌システム自体で行ったテストから得た殺菌曲線を用いて、新たな目標線量及び消毒サイクル時間を設定するとともに、場合によっては他の安全因子を考慮して修正を施し、消毒システムに対するプライマリ時限インターバル(及び他の処理パラメータ)を得る。本明細書に記載の方法を使用して、所与のシステムについて、消毒サイクル時間を縮小するとともに、消毒対象物及び除去する病原体に合わせてより正確に調整を行うこともできる。
【0133】
また、消毒対象物を実際に処理する装置を用いて、ある物品及び/又は汚染レベルに対する目標サイクル時間を決定する方法を実行することができる。この方法は、消毒装置以外の機器を用いてC波紫外線の第1近似線量に到達するに必要なテストを行う代わりに、当該装置自体で同様の処理を行うものである。前述と同様の処理を行って、対数殺菌曲線を生成し、第1近似処理時間又は最低UV-C線量を選択することができる。選択したレベルの消毒を実現するのに要する処理時間及び/又は低UV-C線量を求めるために説明した方法を修正又は変更して、様々な異なる汚染状況(例えば、病原体の性質及び濃度、体液又は他の生体物質の存在等)に対応できるため、有利である。あるプライマリ時限インターバルを決定して、所与の消毒装置内において選択したレベルの消毒を行う場合、こうした処理時間で実現されるとされる総C波紫外線を外挿して、例えばシステム制御アルゴリズム等による消毒システムの管理の最低線量として用いることができる。
【0134】
ある実施形態では、所与の消毒装置のプライマリ時限インターバルを高度消毒を達成するものとして特定した後、消毒装置内の消毒したテスト対象と同じ位置にUV-C検出器を配置して、同一の処理時間でテスト消毒サイクルを数回実施することができる。各テスト運転中にUV-C検出器により検出された総C波紫外線量を特定し、こうした測定値を処理して、選択したレベルの消毒を実現するのに適した目標UV-C線量を確認することができる。更なる実施形態では、選択した線量のC波紫外線を実現するように決定された時間は、例えば、使用する1以上のUV-Cセンサの既知の許容誤差、1以上のUV-C線源から放出されるC波紫外線のばらつき、及び種々の消毒対象物上やチャンバ内に設けた反射面上の汚染のレベルを始めとする、1以上の動作変数を勘案するように調整することができる。選択したプライマリ時限インターバル及びシステムにより検出される目標総UV-C線量は、1以上の物品が存在する場合の消毒チャンバ内のシャドウイングを考慮したり、選択した安全域を確保したりするように調整することもできる。
【0135】
本明細書において、「モジュール」という用語は、電子回路、1以上のソフトウェア又はファームウェアプログラムを実行するように動作する処理ユニット(例えば、共有、専用、グループ、シングルコア、マルチコア等)及びメモリ、特定用途向け集積回路(ASIC)、組み合わせ論理回路、もしくはモジュールに関して機能的に説明されたものを提供する他の個別の又は協調的に結合された好適な構成要素(ハードウェア又はソフトウェア)を指す。
【0136】
上述の説明において、特定の具体的詳細は、種々の開示の実施形態を十分に理解するために記載したものである。実施形態は、こうした具体的詳細の1以上が含まれなくとも、また他の方法、構成要素、材料等を用いても実施し得ることは、当業者には理解されよう。他の例では、クライアント-サーバ型コンピューティングシステムを始めとする電子及びコンピューティングシステムや、ネットワークに関する周知の構造については、実施形態の説明が不必要に分かりにくくなることを避けるため、詳細な図示や説明は行っていない。
【0137】
文脈上特に断りのない限り、明細書及び後続の請求項を通して、「含む(comprise)」という単語及びその変化、例えば「含む(comprises)」や「含んでいる(comprising)」は、オープン且つ包括的(inclusive)な意味であり、例えば「を含むが、それに限定されるものではない(including, but not limited to)」と解釈されるものとする。
【0138】
本明細書を通して、「一実施形態(one embodiment)」又は「実施形態(an embodiment)」ならびにその変種に対する参照は、当該実施形態に関して記述する特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれるものであることを意味する。従って、本明細書の各所に登場する「一実施形態では」又は「実施形態では」なる語句は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1以上の実施形態において、いかなる適切な仕方で組み合わされてもよい。
【0139】
本明細書及び添付の請求項において、単数形(「a」「an」「the」)は、文脈上特に断りのない限り、複数の指示対象を含むものである。なお、「又は(or)」「もしくは(or)」という用語は、文脈上特に断りのない限り、概して「及び/又は(and/or)」「ならびに/もしくは(and/or)」を含むものとして用いられている。
【0140】
本明細書において、「約(about)」又は「ほぼ(approximately)」は、数とともに用いられる場合、その数の1、5、又は10%以内のいずれかの数を指すものである。
【0141】
ここに用いられる見出し及び要約書は、あくまでも便宜的のものであり、実施形態の範囲及び意味を解釈するものではない。
【0142】
上述の種々の実施形態を組み合わせて、更なる実施形態をなすことが可能である。ここに本明細書の一部を構成するものとして、2013年5月17日提出の米国仮特許出願第61/824,775号の全内容を参照により援用する。一般に、以下の請求項において、使用される語句は、請求項を本明細書及び請求項に開示の特定の実施形態に限定するものと解釈してはならず、これらの請求項の全均等範囲とともにあらゆる可能な実施形態を含むものと解釈すべきである。従って、請求項は、本開示に限定されるものではない。
[付記事項]
[付記事項1]
消毒装置であって、
内部ボリュームを有する消毒チャンバと、
C波紫外線(UV-C)を前記消毒チャンバ内へ放出するように構成された少なくとも1つの放射線源と、
前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出するように構成された少なくとも1つの放射線センサと、
前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内の少なくとも1つの温度を示す温度値を提示するように構成された少なくとも1つの温度センサと、
消毒装置の動作を指示するように構成された処理部とを含み、
前記動作は、
前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されるC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、
前記温度センサからの温度値が第1の温度閾値に達しないことを確認することと、
を含む、消毒装置。
[付記事項2]
付記事項1の消毒装置であって、
前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内に被汚染物を位置決めするように構成された位置決めアセンブリと、
前記位置決めアセンブリに固定されるとともに、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線を検出するように構成された較正センサとを含み、
前記処理部の前記動作は、更に、
較正手順中に少なくとも1つの較正係数を生成することと、
前記少なくとも1つの較正係数を、前記少なくとも1つの放射線センサにより提示されたC波紫外線値の少なくとも1つ又は前記累積C波紫外線値に適用することと、
を含む、消毒装置。
[付記事項3]
付記事項1の消毒装置であって、前記第1の放射線閾値は、約1,500μW/cm 2 ~約5,000μW/cm 2 の間である、消毒装置。
[付記事項4]
付記事項1の消毒装置であって、前記第1の温度閾値は、約35℃~約55℃の間である、消毒装置。
[付記事項5]
付記事項1の消毒装置であって、前記少なくとも1つの放射線源は、
5ワット~100ワットの間の放射出力パワー定格と、約240ナノメートル~約270ナノメートルの間の波長出力仕様とを有する第1のUV-C放出ランプと、
5ワット~100ワットの間の放射出力パワー定格と、約240ナノメートル~約270ナノメートルの間の波長出力仕様とを有する第2のUV-C放出ランプとを含み、
前記第1及び第2のUV-C放出ランプは、消毒領域を形成するように位置決めされており、前記第1の放射線閾値に達する前記消毒領域内に放出される放射線は、消毒サイクルの期間にわたって送達される、消毒装置。
[付記事項6]
付記事項1の消毒装置であって、前記消毒サイクルは、約10秒~約600秒である、消毒装置。
[付記事項7]
付記事項1の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
プライマリ時限インターバルと固定期間とを設定することと、
前記固定期間にわたって放射線を放出するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に指示することと、
前記固定期間の満了後に前記累積C波紫外線値を更新することと、
前記累積C波紫外線値が前記第1の放射線閾値に達しない場合、前記固定期間にわたって放射線を放出するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に再指示することと、
前記プライマリ時限インターバルの満了を検出するとともに、前記累積C波紫外線値と前記第1の放射線閾値との比較に基づいて、消毒成功又は消毒失敗の表示を行うことと、を含む、消毒装置。
[付記事項8]
付記事項7の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
前記温度値を前記第1の温度閾値と比較することと、
前記温度値と前記第1の温度閾値との比較に基づいて、消毒成功又は消毒失敗の表示を行うことと、
を含む、消毒装置。
[付記事項9]
付記事項8の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
前記第1の温度閾値よりも低い温度を示す第2の温度閾値を設定することと、
前記温度値が前記第2の温度閾値に達したことを検出することと、
待機モード中に放射線の放出を停止するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に指示することと、
を含む消毒装置。
[付記事項10]
付記事項1の消毒装置であって、前記処理部により指示される消毒装置の前記動作は、
前記累積C波紫外線値が所期の放射線閾値を下回ることを検出することと、
前記少なくとも1つの放射線源と前記少なくとも1つの放射線センサとの間に少なくとも一部が位置決めされている物品により前記内部ボリューム内に引き起こされるシャドウイング条件を特定することと、
前記シャドウイング条件に基づき、前記少なくとも1つの放射線源が前記C波紫外線を放出するように指示されている時間窓を調整することと、
を含む、消毒装置。
[付記事項11]
消毒方法であって、
内部ボリュームを有するとともに、少なくとも1つの放射線源により放出されるC波紫外線(UV-C)を受けるように配置された消毒チャンバを用意することと、
プライマリ時限インターバルを超えない固定期間にわたってC波紫外線を前記内部ボリューム内へ放出するように前記少なくとも1つの放射線源に指示することと、
少なくとも1つの放射線センサにより、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出することと、
少なくとも1つの温度センサからの値に基づき、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内の少なくとも1つの温度を示す温度値を生成することと、
前記温度値が、前記プライマリ時限インターバル中、第1の温度閾値を超えないことを確認することと、
を含む消毒方法。
[付記事項12]
付記事項11の消毒方法であって、
前記固定期間にわたって前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されたC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、
を含む、消毒方法。
[付記事項13]
付記事項11の消毒方法であって、前記温度値は、前記内部領域の環境温度を示す、消毒方法。
[付記事項14]
付記事項11の消毒方法であって、
前記内部ボリューム内に消毒対象物を位置決めすることを含み、前記温度値は、前記対象物の少なくとも1つの表面の温度を示す、消毒方法。
[付記事項15]
付記事項11の消毒方法であって、
前記内部ボリューム内に消毒対象物を位置決めすることと、
前記固定期間にわたって前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されるC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達しない場合、前記固定期間にわたって放射線を放出するように前記少なくとも1つのC波紫外線源に再指示することと、
を含む、消毒方法。
[付記事項16]
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体であって、
監視アルゴリズムを実行することと、
消毒アルゴリズムを、前記監視アルゴリズムの実行と同時に実行することとを含み、
前記監視アルゴリズムは、
前記消毒装置の消毒チャンバへのアクセス開口部に関する開閉ステータス表示を受信することと、
前記開閉ステータス表示に基づき、前記消毒装置の放射線源が放射線を放出するのを妨げることと
を行うように構成されており、
前記消毒アルゴリズムは、
固定期間にわたって前記消毒チャンバの内部ボリューム内へC波紫外線を放出するように前記放射線源に指示することと、
少なくとも1つの放射線センサにより、前記消毒チャンバの前記内部ボリューム内のC波紫外線量を検出することと、
前記少なくとも1つの放射線センサにより検出されたC波紫外線量を示す累積C波紫外線値を生成することと、
前記累積C波紫外線値が第1の放射線閾値に達することを確認することと、
温度センサからの温度値が第1の温度閾値に達しないことを確認することと
を行うように構成されている、
非一時的コンピュータ可読媒体。
[付記事項17]
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する付記事項16の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記監視アルゴリズムを実行することは、更に、
冷却装置及び加熱装置のうちの少なくとも1つを含む温度制御装置を動作させることを含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
[付記事項18]
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する付記事項17の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記温度制御装置を動作させることは、前記消毒チャンバ内の温度を約35℃~約55℃の間に維持することを含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
[付記事項19]
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する付記事項16の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記監視アルゴリズムを実行することは、更に、
前記放射線源に関する少なくとも1つのパラメータを監視することと、
前記累積C波紫外線値が前記第1の放射線閾値に達する前に前記少なくとも1つのパラメータを調整することと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
[付記事項20]
実行すると処理部に消毒装置を動作させる実行可能ソフトウェア命令を有する付記事項19の非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記少なくとも1つのパラメータを調整することにより、前記放射線源に、5ワット~100ワットの間のパワーでC波紫外線を放出させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B