(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】吸入モニタリングシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20220329BHJP
A61M 13/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019214074
(22)【出願日】2019-11-27
(62)【分割の表示】P 2017529788の分割
【原出願日】2015-12-04
【審査請求日】2019-11-28
(32)【優先日】2014-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512297125
【氏名又は名称】ノートン (ウォーターフォード) リミテッド
【住所又は居所原語表記】Unit 301 IDA, Industrial Park, Cork Road, Waterford, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミルトン‐エドワーズ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン,ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】モリソン,マーク,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツェル,ダグラス,イー.
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-503912(JP,A)
【文献】特開2008-301847(JP,A)
【文献】特開2009-045446(JP,A)
【文献】国際公開第2006/068622(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103107(WO,A1)
【文献】特表平08-509545(JP,A)
【文献】特表平05-506598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0239058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサおよびユーザインタフェースを含む吸入モニタリングシステムであって、
前記プロセッサは、
薬剤送達装置のマウスピースを介したユーザの吸入に基づいて、最大吸気流(PIF)または総吸入容量を含む吸気の測度を取得し、
前記吸気の測度である前記最大吸気流(PIF)に基づいて、呼気の測度としてピーク呼気流量(PEF)を決定するか、または前記吸気の測度である前記総吸入容量に基づいて、前記呼気の測度として1秒間強制呼気容量(FEV1)を決定するように構成され、
前記ユーザインタフェースは、
前記呼気の測度に関するインディケーションを提供するように構成された、
ことを特徴とする吸入モニタリングシステム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記薬剤送達装置の前記マウスピースを介した前記ユーザの第2の吸入に基づいて、第2の最大吸気流(PIF)または第2の総吸入容量を含む第2の吸気の測度を取得し、
前記第2の吸気の測度である前記第2の最大吸気流(PIF)に基づいて、第2の呼気の測度として第2のピーク呼気流量(PEF)を決定するか、または前記第2の吸気の測度である前記第2の総吸入容量に基づいて、前記第2の呼気の測度として第2の1秒間強制呼気容量(FEV1)を決定するように構成され、
前記ユーザインタフェースは、
前記第2の呼気の測度に関するインディケーションを提供するように構成された、請求項1に記載の
吸入モニタリングシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記呼気の測度と前記第2の呼気の測度との比較に基づいて、
前記薬剤送達装置の用法の有効性を決定するように構成され
、
前記ユーザインタフェースは、前記有効性に関するインディケーションを提供するように構成された、請求項2に
吸入モニタリングシステム。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記呼気の測度と前記第2の呼気の測度との比較に基づいて、前記ユーザの将来の肺機能
の予測
をするように構成され
、
前記ユーザインタフェースは、前記将来の肺機能の予測に関するインディケーションを提供するように構成された、請求項2に
吸入モニタリングシステム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記呼気の測度
、前記第2の呼気の測度、および前記ユーザ以外の患者の呼気の測度に基づいて、前記ユーザの
前記将来の肺機能の予測をするように構成された、請求項
4に記載の
吸入モニタリングシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、回帰モデル、前記吸気の測度、および前記ユーザのバイオメトリックデータを用いて前記呼気の測度を決定するように構成されており、
前記バイオメトリックデータは、前記ユーザの性別、前記ユーザの年齢、前記ユーザの身長、または前記ユーザの体重のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の
吸入モニタリングシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは
前記薬剤送達装置の一部であり、
前記ユーザインタフェースはスマートフォン、タブレット、またはPCによって提供され、
前記薬剤送達装置は、
前記マウスピースと、
フローチャネルと、
薬剤とを含み、
前記マウスピースを介した前記ユーザの吸入の結果として、前記ユーザに前記薬剤を送達するように構成された、請求項1に記載の
吸入モニタリングシステム。
【請求項8】
前記プロセッサはサーバーの一部であ
り、前記ユーザインタフェースはスマートフォン、タブレット、またはPCによって提供される、請求項1に記載の
吸入モニタリングシステム。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記ユーザの吸入中に集められたデータに基づいて、前記ユーザの
前記吸気の測度で構成される複数の吸気の測度
を決定し、
前記複数の吸気の測度
に基づいて、
前記呼気の測度で構成される複数の呼気の測度を決定し、
前記
複数の呼気の測度または前記複数の吸気の測度のパターンを識別し、
識別した前記パターンに基づいて、経時的な肺に関する状態の進行を示すアラートであって前記ユーザまたは医療専門家に対するアラートを生成する、請求項1に記載の
吸入モニタリングシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記パターンに基づいて前記ユーザの肺の状態の悪化を予測し、
前記肺の状態の悪化を示すアラートを前記ユーザに提供するように構成された、請求項9に記載の
吸入モニタリングシステム。
【請求項11】
前記プロセッサおよび前記ユーザインタフェースは、スマートフォン、タブレット、またはPCの一部である、請求項1に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項12】
前記プロセッサは、前記薬剤送達装置に取り付けられ、かつ前記薬剤送達装置から取り外されるように構成された、請求項1に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項13】
前記ユーザの前記将来の肺機能の予測は、前記ユーザの呼吸状態の悪化を含む、請求項4に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記ユーザの前記将来の肺機能の予測が前記ユーザの呼吸状態の悪化を示すときに、アラートを提供するように構成された、請求項4に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項15】
前記薬剤送達装置は、ドライパウダー吸入器または定量吸入器からなる吸入器を含み、
前記プロセッサは、前記吸入器に含まれるか、または前記吸入器に接続されるように構成され、
前記吸入器のフローチャネルに接続されるセンサをさらに含む、請求項1に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項16】
前記センサは、圧力センサを含み、
前記圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサ、気圧のMEMS圧力センサ、またはナノ電気機械システム(NEMS)圧力センサを含み、前記プロセッサに少なくとも1つの測度を送るように構成され、
前記少なくとも1つの測度は、サンプリングした圧力差または絶対圧である、請求項15に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項17】
前記プロセッサは、
複数の異なるユーザの肺の状態の悪化の発生を識別し、
前記悪化の発生に先行する前記呼気の測度の変化のパターンを識別し、
患者の前記呼気の測度の変化が前記パターンと一致するかを判断し、
前記呼気の測度の変化が前記パターンと一致するという判断に基づいて、前記患者または医療専門家に対するアラートを生成するように構成された、請求項1に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項18】
前記アラートは、前記患者の治療法の変更の示唆または前記患者の治療法の有効性を示す、請求項17に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項19】
前記アラートは、前記患者の前記肺の状態の悪化の可能性が増加したことを示す、請求項17に記載の吸入モニタリングシステム。
【請求項20】
前記プロセッサは、追加の吸入に基づいて追加の前記吸気の測度を取得し、自己学習を行い、前記パターンを識別する、請求項17に記載の吸入モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この通常の特許出願は、2014年12月4日に出願された米国仮特許出願第62/087,567号、2014年12月4日に出願された米国仮特許出願第62/087,571号、および2015年7月17日に出願された米国特許出願第14/802,675号に対する優先権を主張するものであり、これらの特許の全体およびすべての目的は、参照することによって本願明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、吸入器、吸入モニタリングシステム、および吸入器をモニタリングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
吸入器またはプッファー(手動作動式吸入器)は、肺を経由して体内に薬剤を送達するために用いられる。それらは、例えば、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療で使用することができる。吸入器のタイプには、定量吸入器(MDIs)、ソフトミスト吸入器(SMIs)、ネブライザおよびドライパウダー吸入器(DPIs)が含まれる。
【0004】
タイダル吸入器は、一回の吸入ではなく複数回の連続的な吸入(例えば、それはタイダル呼吸と呼ばれるかもしれない)において薬剤が消費されるタイプの吸入器である。患者は、強制的な吸入動作として知られている過剰な吸入フローレートではなく、通常の安静時の呼吸パターンを使用する。
【0005】
肺活量計は、患者の肺によって吸われおよび吐かれた空気の容量を測定するための装置である。肺活量計は、通気(肺の中への、および肺からの空気の移動)を測定する。肺容量曲線として知られ、肺活量計によって出力された記録波形から、異常な(閉塞性または拘束性のある)通気パターンを識別することができる。既存の肺活量計は、圧力変換器、超音波および水ゲージを含む様々な異なる測定方法を用いる。
【0006】
ピークフローメータは、ピーク呼気速度(PEFR)とも呼ばれるピーク呼気流量(PEF)を測定するために用いられる。これは人の呼息の最大速度である。PEFは、気管支を通る気流、すなわち気道の閉塞の程度に関連する。ピークフロー値は、例えば肺の状態の悪化により気道が収縮する場合、低くなる。記録値の変化から、患者と医者は、肺機能性、症状の重症度、および治療を決定してもよい。ピークフローメータは、診断に用いることもできる。
【0007】
肺活量計とピークフローメータは、個人の肺機能および/または肺の健康状態をモニタリングするために、喘息およびCOPDのような症状に苦しむ特定の肺患者において、一般に用いられる。肺機能は、PEFのような呼気の測度によって明らかにされる。
【0008】
肺機能の別の測度は、1秒間強制呼気容量(FEV1)である。FEV1は、完全吸気後に、1秒で強制的に吐くことができる空気の容量である。閉塞性の疾病(例えば、喘息、COPD、慢性気管支炎、気腫)において、FEV1は、呼気性の流量に対して増加した気道抵抗のために、減少する。
【0009】
患者の肺機能は、通常、定期的にまたは症状の再発もしくは悪化に応じて、医師の診療中にモニタリングされる。実用性の理由で、明らかに健康な期間中におけるモニタリングは、典型的にかなり希である。したがって、リアクティブ療法は、それが理想的であるからといってすぐに実施されるとはかぎらず、予防療法が、必要以上に実施されてもよい。
【0010】
何人かの患者は、使いにくい肺活量計およびピークフローメータを供給され、使用におけるトレーニングおよび指導を必要とする。これにより、およびコストの理由で、ほとんどの患者は、個人的な肺活量計またはピークフローメータを所有しない。
【0011】
必要なものは、閉塞性肺疾患の患者のための肺機能および/または肺の健康状態をモニタリングする、改善された手段である。
【発明の概要】
【0012】
第1の態様によれば、ユーザの吸入中にユーザに薬剤を送達するように構成された薬剤送達装置を含む吸入器と、前記吸入中にユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を決定するためのデータを集めるように構成された吸入モニタリング装置と、前記吸入モニタリング装置から前記データを受け取り、当該データを用いて、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を決定するプロセッサと、を含む吸入モニタリングシステムが提供される。
【0013】
吸入器は、ドライパウダー吸入器でもよい。吸入器は、加圧式定量吸入器(pMDI)でもよい。吸入器は、ウエットネブライザでもよい。吸入器は、タイダル吸入器でもよい。
【0014】
前記プロセッサは、データから最大吸気流(PIF)を決定することによって、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を決定するように構成されてもよい。前記プロセッサは、データから総吸入容量を決定することによって、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を決定するように構成されてもよい。
【0015】
吸入モニタリングシステムは、さらにユーザインタフェースを含んでもよい。ユーザインタフェースは、ユーザにユーザの肺機能および/または肺の健康状態に関する前記測度のインディケーションを提供するように構成されていてもよい。ユーザインタフェースは、介護者にユーザの肺機能および/または肺の健康状態に関する前記測度のインディケーションを提供するように構成されていてもよい。ユーザインタフェースは、医療専門家にユーザの肺機能および/または肺の健康状態に関する前記測度のインディケーションを提供するように構成されていてもよい。
【0016】
前記インディケーションは、絶対値を含んでもよい。前記インディケーションは、相対値を含んでもよい。前記インディケーションは、二値の健康指標を含んでもよい。前記インディケーションは、測度が安全圏の上にあるか、下にあるか、内にあるかの三値のインディケーターを含んでもよい。
【0017】
前記インディケーションは、ユーザに関するデータに依存してもよい。
【0018】
吸入モニタリングシステムは、さらにトランスミッタを含んでもよい。前記トランスミッタは、無線でもよい。
【0019】
前記トランスミッタは、処理のためにユーザ装置にデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、記憶のためにユーザ装置にデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、ユーザへの提供のためにユーザ装置にデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、介護者への提供のためにユーザ装置にデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、医療専門家への提供のためにユーザ装置にデータを送るように構成されていてもよい。
【0020】
前記トランスミッタは、処理のためにサーバーにデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、記憶のためにサーバーにデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、ユーザへの提供のためにサーバーにデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、介護者への提供のためにサーバーにデータを送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、医療専門家への提供のためにサーバーにデータを送るように構成されていてもよい。
【0021】
前記トランスミッタは、記憶のためにデータクラウドにデータを送るように構成されていてもよい。
【0022】
前記トランスミッタは、処理のためにユーザ装置に前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、記憶のためにユーザ装置に前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、ユーザへの提供のためにユーザ装置に前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、介護者への提供のためにユーザ装置に前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、医療専門家への提供のためにユーザ装置に前記測度を送るように構成されていてもよい。
【0023】
前記トランスミッタは、処理のためにサーバーに前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、記憶のためにサーバーに前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、ユーザへの提供のためにサーバーに前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、介護者への提供のためにサーバーに前記測度を送るように構成されていてもよい。前記トランスミッタは、医療専門家への提供のためにサーバーに前記測度を送るように構成されていてもよい。
【0024】
前記トランスミッタは、記憶のためにデータクラウドに前記測度を送るように構成されていてもよい。
【0025】
米国仮特許出願第62/011,808号および62/135,798号、並びに米国特許出願第14/802,675号は、参照することによってそれら全体が本願明細書に組み込まれ、医療装置と電子装置との通信を支援するインターフェイス装置を説明する。そのようなインターフェイスは、本願明細書で説明する吸入モニタリングシステムにおいて利用されてもよい。
【0026】
前記プロセッサは、前記吸入器に含まれていてもよい。前記吸入モニタリング装置は、前記吸入器に含まれていてもよい。前記吸入モニタリング装置は、前記吸入器に接続され、それがフローチャネルに空気的に接続されるように、構成されていてもよい。前記ユーザインタフェースは、前記吸入器に含まれていてもよい。前記トランスミッタは、前記吸入器に含まれていてもよい。
【0027】
前記吸入モニタリング装置は、圧力センサを含んでもよい。前記圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであってもよい。前記圧力センサは、気圧のMEMS圧力センサであってもよい。前記圧力センサは、ナノ電気機械システム(NEMS)圧力センサであってもよい。
【0028】
前記吸入モニタリング装置は、一連の時点における圧力差または絶対圧をサンプリングすることによってデータを集めるように構成されていてもよい。
【0029】
前記サンプリングは、周期的でもよい。前記サンプリングの周期は、約50ミリ秒でもよい。サンプリング周波数は、例えば100Hzでもよい。
【0030】
前記薬剤送達装置は、さらに、前記吸入の後に続くユーザの次の吸入中に、ユーザに薬剤を送達するように構成されていてもよい。前記次の吸入は、例えば、タイダル吸入器を用いるユーザによる新しい呼吸であってもよいし、ドライパウダー吸入器を用いるユーザによる最初の吸入の延長であってもよい。
【0031】
前記吸入モニタリング装置は、さらに、前記次の吸入中に、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の次の測度の決定のために次のデータを集めるように構成されていてもよい。前記プロセッサは、さらに、吸入モニタリング装置から前記次のデータを受け取るように構成されていてもよい。前記プロセッサは、さらに、前記次のデータを用いて、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の次の測度を決定するように構成されていてもよい。前記プロセッサは、さらに、前記データを前記次のデータと比較するように構成されていてもよい。前記プロセッサは、さらに、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記次の測度と比較するように構成されていてもよい。
【0032】
前記プロセッサは、さらに、前記比較を用いて前記吸入器の用法の有効性を決定するように構成されていてもよい。
【0033】
前記プロセッサは、さらに、前記比較を用いてユーザの肺機能および/または肺の健康状態の将来の変化を予測するように構成されていてもよい。
【0034】
ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記将来の変化は、喘息または慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような既存の呼吸器系症状の悪化を含んでもよい。
【0035】
前記吸入モニタリングシステムは、前記プロセッサがユーザの肺機能および/または肺の健康状態の将来の変化について所定のセットのうちの1つを予測することに応じて、ユーザにアラートを提供するように構成されていてもよい。前記吸入モニタリングシステムは、前記プロセッサがユーザの肺機能および/または肺の健康状態の将来の変化について所定のセットのうちの1つを予測することに応じて、介護者にアラートを提供するように構成されていてもよい。前記吸入モニタリングシステムは、前記プロセッサがユーザの肺機能および/または肺の健康状態の将来の変化について所定のセットのうちの1つを予測することに応じて、医療専門家にアラートを提供するように構成されていてもよい。
【0036】
前記予測は、ユーザ以外の対象から集められたデータを用いてもよい。
【0037】
前記プロセッサは、回帰モデルのような数学的モデルを用いて、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態について前記測度を決定するように、構成されていてもよい。
【0038】
前記数学的モデルは、総吸入容量と1秒間強制呼気容量(FEV1)との間に相関があってもよい。前記数学的モデルは、最大吸気流(PIF)と1秒間強制呼気容量(FEV1)との間に相関があってもよい。前記数学的モデルは、総吸入容量とピーク呼気流量(PEF)との間に相関があってもよい。前記数学的モデルは、最大吸気流(PIF)とピーク呼気流量(PEF)との間に相関があってもよい。
【0039】
複数回吸入のタイダル吸入器またはネブライザに関して、前記数学的モデルは、1秒間強制呼気容量(FEV1)と呼気流量の変化率との間に相関があってもよい。
【0040】
1回吸入のドライパウダー吸入器に関して、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度は、ユーザによる1回の呼吸に基づいてもよい。タイダル吸入器またはネブライザに関して、測度は、ユーザによる複数回の呼吸に基づいてもよい。複数回の呼吸で発生した異常なデータポイントは排除され、データ処理に利用可能な有効なデータポイントだけが残ることが予見される。
【0041】
数学的モデルは、ユーザのバイオメトリックデータを考慮に入れてもよい。
【0042】
前記バイオメトリックデータは、性別を含んでもよい。前記バイオメトリックデータは、年齢を含んでもよい。前記バイオメトリックデータは、身長を含んでもよい。前記バイオメトリックデータは、体重を含んでもよい。
【0043】
吸入モニタリングシステムは、さらに、前記薬剤送達装置のスイッチをオフにすると、前記吸入器が肺活量計として利用できるように、前記薬剤送達装置のスイッチをオンおよび/またはオフする操作が可能なユーザインタフェース装置を含んでもよい。
【0044】
前記ユーザインタフェース装置は、吸入器のマウスピースカバーを含んでもよい。前記カバーが開かれるたびに、投与量の薬剤が吸入器のマウスピースを通る吸入に利用可能となるように、前記マウスピースカバーは、薬剤送達装置に接続される。薬剤送達装置は、カバーが完全に閉じられてから再び開けられるまで、投与量の薬剤が前記マウスピースを通る吸入に利用可能とならないように、構成されていてもよい。
【0045】
吸入モニタリングシステムは、さらにプラシーボ吸入装置を含んでもよい。前記プラシーボ吸入装置は、前記吸入モニタリング装置を含んでもよい。前記プラシーボ吸入装置は、前記吸入モニタリング装置に操作可能に接続されるように構成されていてもよい。前記プラシーボ吸入装置は、前記吸入器と実質的に同一の吸入フロー抵抗をユーザに提供してもよい。
【0046】
吸入モニタリングシステムは、薬剤送達装置に電力を供給するように構成されたバッテリーを含んでもよい。吸入モニタリングシステムは、吸入モニタリング装置に電力を供給するように構成されたバッテリーを含んでもよい。吸入モニタリングシステムは、プロセッサに電力を供給するように構成されたバッテリーを含んでもよい。
【0047】
吸入モニタリングシステムは、データを格納するように構成されたメモリをさらに含むことができる。吸入モニタリングシステムは、前記測度を格納するように構成されたメモリをさらに含むことができる。
【0048】
吸入モニタリングシステムの薬剤送達装置は、薬剤を含んでもよいし、かつ/または、吸入モニタリングシステムおよび薬剤を含むキットの一部であってもよい。薬剤は、1つ以上の有効成分、例えば、長時間作用性のムスカリン性拮抗薬(LAMA)、短時間作用性のムスカリン性拮抗薬(SAMA)、長時間作用性のβ2アゴニスト(LABA)、短時間作用性のβ2アゴニスト(SABA)、および/または、吸入コルチコステロイド(ICS)の1つ以上を含んでもよい。
【0049】
第2の態様によれば、吸入器を用いて、ユーザの吸入中にユーザに薬剤を送達することと、前記吸入中に、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を決定するためのデータを集めることと、データを用いて、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度の決定することと、を含む方法が提供される。
【0050】
吸入器は、ドライパウダー吸入器でもよい。吸入器は、加圧式定量吸入器(pMDI)でもよい。吸入器は、ウエットネブライザでもよい。吸入器は、タイダル吸入器でもよい。
【0051】
前記決定は、データから、最大吸気流(PIF)を決定することによってなされてもよい。前記決定は、データから、総吸入容量を決定することによってなされてもよい。
【0052】
方法は、ユーザインタフェースによってユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記測度のインディケーションをユーザに提供することをさらに含むことができる。方法は、ユーザインタフェースによってユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記測度のインディケーションを介護者に提供することをさらに含むことができる。方法は、ユーザインタフェースによってユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記測度のインディケーションを医療専門家に提供することをさらに含むことができる。
【0053】
前記インディケーションは、絶対値を含んでもよい。前記インディケーションは、相対値を含んでもよい。前記インディケーションは、二値の健康指標を含んでもよい。前記インディケーションは、測度が安全圏の上にあるか、下にあるか、内にあるかの三値のインディケーターを含んでもよい。
【0054】
前記インディケーションは、ユーザに関するデータに依存してもよい。
【0055】
方法は、トランスミッタによって、処理のためにユーザ装置にデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、記憶のためにユーザ装置にデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、ユーザに提供するためにユーザ装置にデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、介護者に提供するためにユーザ装置にデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、医療専門家に提供するためにユーザ装置にデータを送ることをさらに含むことができる。
【0056】
方法は、トランスミッタによって、処理のためにサーバーにデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、記憶のためにサーバーにデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、ユーザに提供するためにサーバーにデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、介護者に提供するためにサーバーにデータを送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、医療専門家に提供するためにサーバーにデータを送ることをさらに含むことができる。
【0057】
方法は、トランスミッタによって、記憶のためにデータクラウドにデータを送ることをさらに含むことができる。
【0058】
方法は、トランスミッタによって、処理のためにユーザ装置に前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、記憶のためにユーザ装置に前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、ユーザへの提供のためにユーザ装置に前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、介護者への提供のためにユーザ装置に前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、医療専門家への提供のためにユーザ装置に前記測度を送ることをさらに含むことができる。
【0059】
方法は、トランスミッタによって、処理のためにサーバーに前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、記憶のためにサーバーに前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、ユーザへの提供のためにサーバーに前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、介護者への提供のためにサーバーに前記測度を送ることをさらに含むことができる。方法は、トランスミッタによって、医療専門家への提供のためにサーバーに前記測度を送ることをさらに含むことができる。
【0060】
方法は、トランスミッタによって、記憶のためにデータクラウドに前記測度を送ることをさらに含むことができる。
【0061】
前記トランスミッタは、無線トランスミッタでもよい。
【0062】
上記のとおり、本発明の第2の態様によれば、吸入器を用いて、ユーザの吸入中にユーザに薬剤を送達することと、前記吸入中に、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を決定するためのデータを集めることと、データを用いて、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度の決定することと、を含む方法が提供される。
【0063】
前記集めることは、前記吸入器で行ってもよい。前記決定することは、前記吸入器で行ってもよい。
【0064】
前記集めることは、吸入モニタリング装置で行ってもよい。前記方法は、吸入モニタリング装置が吸入器のフローチャネルに空気的に接続されるように、吸入器に前記吸入モニタリング装置を接続することをさらに含むことができる。
【0065】
前記ユーザインタフェースは、前記吸入器に含まれていてもよい。前記トランスミッタは、前記吸入器に含まれていてもよい。
【0066】
前記集めることは、圧力センサで行ってもよい。前記圧力センサは、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであってもよい。前記圧力センサは、気圧のMEMS圧力センサであってもよい。前記圧力センサは、ナノ電気機械システム(NEMS)圧力センサであってもよい。
【0067】
前記データを集めることは、一連の時点における圧力差をサンプリングすることを含んでもよい。前記データを集めることは、また、一連の時点における絶対圧をサンプリングすることを含んでもよい。
【0068】
前記サンプリングは、周期的でもよい。
【0069】
前記サンプリングの周期は、約50ミリ秒でもよい。サンプリング周波数は、例えば100Hzでもよい。
【0070】
方法は、前記吸入の後に続くユーザの次の吸入中にユーザに薬剤を送達することをさらに含むことができる。方法は、前記次の吸入中に、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の次の測度の決定のために次のデータを集めることをさらに含むことができる。方法は、前記次のデータを用いて、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の次の測度を決定することをさらに含むことができる。方法は、前記データを前記次のデータと比較をすることをさらに含むことができる。方法は、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の測度を、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記次の測度と比較することをさらに含むことができる。
【0071】
方法は、前記比較を用いて前記吸入器の用法の有効性を決定することをさらに含むことができる。
【0072】
方法は、前記比較を用いて、ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の将来の変化を予測することをさらに含むことができる。
【0073】
ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記将来の変化は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、呼吸系発疹ウイルス(RSV)、嚢胞性線維症(CF)、特発性肺線維症(IPF)または肺塞栓症(PE)のような既存の呼吸器系症状の悪化を含んでもよい。
【0074】
方法は、前記予測することに応じてユーザにアラートを提供することをさらに含むことができる。方法は、前記予測することに応じて介護者にアラートを提供することをさらに含むことができる。方法は、前記予測することに応じて医療専門家にアラートを提供することをさらに含むことができる。
【0075】
前記予測は、ユーザ以外の対象から集められたデータを用いてもよい。
【0076】
ユーザの肺機能および/または肺の健康状態の前記測度の前記決定は、数学的モデルを用いることができる。前記数学的モデルは、回帰モデルでもよい。
【0077】
前記数学的モデルは、総吸入容量と1秒間強制呼気容量(FEV1)との間に相関があってもよい。前記数学的モデルは、最大吸気流(PIF)と1秒間強制呼気容量(FEV1)との間に相関があってもよい。前記数学的モデルは、総吸入容量とピーク呼気流量(PEF)との間に相関があってもよい。前記数学的モデルは、最大吸気流(PIF)とピーク呼気流量(PEF)との間に相関があってもよい。
【0078】
数学的モデルは、ユーザのバイオメトリックデータを考慮に入れてもよい。
【0079】
前記バイオメトリックデータは、性別を含んでもよい。前記バイオメトリックデータは、年齢を含んでもよい。前記バイオメトリックデータは、身長を含んでもよい。前記バイオメトリックデータは、体重を含んでもよい。
【0080】
方法は、さらに、吸入器の薬剤送達機能をスイッチオフすることと、吸入器を肺活量計として用いることと、を含むことができる。
【0081】
1回吸入のドライパウダー吸入器に関して、例えば、前記薬剤送達機能のスイッチオフすることは、吸入器のマウスピースカバーを開くことを含むことができる。カバーが開かれるたびに、投与量の薬剤が吸入器のマウスピースを通る吸入に利用可能となるように、前記カバーを構成することができる。カバーが完全に閉じられてから再び開けられるまで、投与量の薬剤がマウスピースを通る吸入に利用可能とならないように、吸入器を構成することができる。
【0082】
方法は、プラシーボ吸入装置を用いることをさらに含むことができる。
【0083】
前記集めることは、吸入モニタリング装置で行ってもよい。前記プラシーボ吸入装置は、前記吸入モニタリング装置を含んでもよい。前記プラシーボ吸入装置は、前記吸入モニタリング装置に操作可能に接続されるように構成されていてもよい。
【0084】
前記プラシーボ吸入装置は、前記吸入器と実質的に同一の吸入フロー抵抗をユーザに提供してもよい。複数回吸入のタイダル吸入器またはウエットネブライザ(ドライパウダー吸入器よりも低い吸入フロー抵抗を有していてもよい)に関して、確定された吸入フロー抵抗を有する特別の非薬カートリッジを用いることは有効かもしれない。非薬カートリッジは、カートリッジ内の薬を識別するために用いられるものと同じ手段で、例えば、EEPROMによって、電子的に吸入器に対して識別することができる。
【0085】
方法は、メモリにデータおよび/または前記測度を格納することをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
本発明の態様は、添付の図面に関連した実施例によって説明される。
【0087】
図1aは、PEFと吸入中に測定された最大流量との間の相関の一例を示す。
図1bは、FEV1と総吸入容量との間の相関の一例を示す。
図2は、吸入モニタリングシステムの一例を概略的に示す。
図3は、吸入モニタリング方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下の記述は、あらゆる当業者が当該システムの生産および使用を可能にするために示され、かつ特定用途に即して提供される。提示された実施例の様々な変更は、当業者にとって容易に想到し得る。
【0089】
ここに定義された一般的な法則は、本発明の要旨および範囲から逸脱することなく、他の実施例および用途に適用されてもよい。このように、本発明は、開示された実施例に限定されることを意図したものではなく、ここに開示された原理および特徴と矛盾しない最も広い範囲に従うものである。
【0090】
多くの肺患者は吸入器を処方され、肺患者または介護者は、日常の予防手段として、悪化を緩和するため、またはその両方のために、薬剤を投与することができる。そのような患者および介護者は、吸入器の使用において訓練され、それらに非常に精通するようになる。したがって、吸入器を用いて患者の肺機能をモニタリングすることが提案される。薬剤を投与する間の肺の健康状態のモニタリングは、肺の状態を管理するために患者、介護者および医療専門家に要求される時間および負担を軽減する。
【0091】
これは従来考慮されておらず、上記のとおり、肺機能は一般に呼気の測度を用いて評価され、例えば、ドライパウダー吸入器は一般に息を吐くことを認めるように設計されていない。時には、例えばいくつかのドライパウダー吸入器において、吸入器の中への呼気は吸入器の機能を害する場合(例えば、呼気からの水分が粉末の薬剤に塊を形成させ、投与をより困難にさせる)がある。
【0092】
しかしながら、出願人は、肺機能のある呼気の測度とある吸気の測度との間に相関があることを示した。例えば、
図1aに、PEFと吸入中に測定された最大流量(最大吸気流、PIF)との間の相関を示し、
図1bに、FEV1と総吸入容量との間の相関を示す。回帰線およびそれらの方程式は、プロットで示される。ここで、
x
1=性別(男性=0;女性=1)
x
2=年齢/歳
x
3=身長/cm
x
4=体重/kg
x
5=PEF/L・min
-1
x
6=FEV1/L・min
-1
y
1=吸入容量/L
y
2=PIF/L
【0093】
したがって、肺の機能および/または健康状態を決定するために、吸入器で薬剤を投与する間に集められた吸入データを処理することが提案される。
【0094】
図2は、吸入モニタリングシステム200の一例を概略的に示す。吸入器210は、薬剤送達装置211を含む。これは、例えば、PCT特許出願公開番号WO01/97889、WO02/00281、WO2005/034833またはWO2011/054527のいずれかに開示されたドライパウダー吸入器であってもよく、それら全体が本願明細書に組み込まれる。吸入モニタリングシステムは、他のタイプの吸入器/ネブライザ、例えば、加圧式定量吸入器(pMDIs)またはウエットネブライザを含むことができる。吸入器は、強制的な吸入操作または単なるタイダル呼吸を要求することができる。
【0095】
吸入モニタリング装置220は、開示された吸入器に含まれてもよいし、または吸入器に接続された別のユニットに含まれてもよい。吸入モニタリング装置は、例えば、米国特許出願番号62/043,126(モリソン)、62/043,120(モリソン)および62/043,114(モリソン)のいずれかに開示されている小型の(例えば、マイクロエレクトロメカニカル、MEMSまたはナノエレクトロメカニカル、NEMS)圧力センサを含むことができ、それら全体が本願明細書に組み込まれる。他の適切な構成も、想定され得る。圧力センサを利用するために、前記センサは、ユーザが吸入する吸入器のフローチャネルと空気的に接続されるべきである。
【0096】
プロセッサ230は、ユーザの肺の機能および/または健康状態の測度を決定すべく吸入モニタリング装置で集められたデータを処理するために、吸入モニタリング装置と通信する。プロセッサは開示された吸入器に含まれてもよいし、または、吸入モニタリング装置が別の付属ユニットに含まれる場合、プロセッサは前記付属ユニットに含まれてもよい。吸入モニタリング装置が有線または無線のトランスミッタ221を備える場合、プロセッサは、別の装置、例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップまたはPCのようなユーザ装置の中に存在してもよい。吸入モニタリング装置が、インターネットのようなネットワークで通信することができるトランスミッタを備える場合、その処理は、例えば、医療専門家のPCで、または医療施設、吸入器メーカーもしくはクラウドサーバー上で、遠隔に行われる。例えば、上記の装置またはサーバーのいずれかは、データ保存に用いることができる。プロセッサ230は、上記のいずれの場所においても、複数のプロセッサで構成されてもよく、例えば、より複雑な処理が遠隔装置またはサーバーにオフロードされる一方、いくつかの基礎的な処理が吸入器で行われてもよい。
【0097】
吸入器は、吸入器の使用に関する情報を提供するため、および/または肺機能および/または肺の健康状態を決定するための、ユーザインタフェース240を含んでもよい。これは、例えば、スクリーン、インディケーターライト、インディケーターブザー、スピーカー、従来のドーズカウンターテープ、振動アラート等、もしくはこれらの任意の組合せ、または同等のものでもよい。代替的または追加的に、そのような情報は、患者のユーザ装置または介護者もしくは医療専門家の1以上のユーザインタフェース経由で提供されてもよい。
【0098】
システムはまた、収集されたデータ、計算結果、およびプロセッサによる実行のためのコンピュータコード命令、を記憶するためのメモリ250を含むことができる。プロセッサと同様に、メモリは、吸入器または外部装置もしくはサーバーに配置することができる。
【0099】
吸入器の電子的構成要素は、吸入器が携帯可能であり得るように、バッテリー212によって電力を供給され得る。
【0100】
吸入器は、薬剤送達装置を作動させるかまたは作動から外すための切換手段をさらに含むことができる。薬剤送達装置が機能していない場合、吸入器は肺活量計として用いることができる。一例として、薬剤送達装置が電子的な(例えば、押しボタン式)制御下にある場合、電子的スイッチ手段を設けることができる。別の例として、参照によりその全体が本願明細書に組み込まれるPCT特許出願公開番号WO2005/034833は、計量カップがホッパーからの薬剤の投与量を測定し、マウスピースカバーに連結されたヨークの動作によって投薬位置に移動されるドライパウダー吸入器の機構を開示している。したがって、マウスピースカバーを開くことは、吸入器の使用の準備がされ、一回分の薬剤が吸入されると、カバーが閉じられて再び開かれるまで、次の投与は不可能となる。ここで提案される吸入モニタリング装置を備えたこのような吸入器を用いると、患者は、投与量の薬剤を得ることができ、マウスピースカバーを閉じる前に、次のデータを集める目的でマウスピースを介して1回以上の次の吸入を行うことができる。これにより、患者が過剰摂取の危険を伴うことなく、より多くの量のデータを集めることが可能になる。さらに別の例として、肺活量計カートリッジをタイダル吸入器の交換可能なカートリッジに接続することができ、患者は、次のデータを集めるために肺活量計カートリッジを介して1回以上の次の吸入を行うことができる。
【0101】
代替的または追加的に、上記の吸入器は、実際の吸入器と同様のフロー抵抗を有するが、薬剤送達装置を含まず、空であるかまたはラクトースのようなプラシーボ物質が充填されている、プラシーボまたはダミーの吸入器を備えたキットにおいて提供することができる。プラシーボ吸入器は、上述したものと同様の吸入モニタリング装置を含むことができ、またはそのような装置に接続することができる。
【0102】
例えば、吸入器210がウエットネブライザである場合、液体への接触から電子機器を守るために、吸入口に取り外し可能に接続されたモジュールの内に、すべての電子部品を配置することができる。モジュールは、形状およびサイズの異なるウエットネブライザに接続されるように構成することができる。モジュールは、ウエットネブライザ単独(例えば、モジュールなし)の吸入フロー抵抗よりも高く規定された吸入フロー抵抗を有するフローチャネルを含むことができる。
【0103】
図3は、吸入モニタリング方法300のフローチャートの一例である。310において、(吸入器による)吸入が開始される。320において、薬剤が吸入器経由で送達される。330において、前記吸入に関するデータが集められる。340において、吸入が終了する。350において、データが肺機能および/または肺の健康状態の測度を決定するために処理される。ステップ320および330の順序は、逆にすることができ、または部分的もしくは完全に並行して実行することができる。ステップ350は、340の前、途中もしくは後に、320の前もしくは後に、または320と完全もしくは部分的に並行して、行うことができる。
【0104】
データは、例えば、吸入器がユーザによって適切に用いられていることを確認するために、医師によるアドヒアランスモニタリングに用いることができる。
【0105】
処理は、
図1に示す回帰モデルのような数学的モデルの使用を含むことができる。
【0106】
方法300は、吸入器を使用するたびに毎回繰り返すことができ、これは例えば毎日行うことができる。吸入器の複数の使用から集められたデータ、および/またはデータからなされた決定は、経時的な状態の進行のインディケーションを提供するために、記憶され、比較される。この情報は、現在の治療法の有効性を決定し、必要な変更を通知するために使用することができる。プロセッサは、肺機能および/または肺の健康状態の将来の変化を予測するために、データおよび/または決定を用いることができる。この予測は、当該患者から集められた日付(例えばデータのみ)に基づいてもよく、および/または、他の患者から集められたデータも組み込むことができる。例えば、上記のような多くの吸入器のユーザからのデータを照合し、特定の肺疾患の悪化に先行する吸入データ変化のパターンを識別するために用いることができる。処理ロジックはこのように自己学習することができる。特定の患者のデータがそのようなパターンの開始に一致すると見られる場合、彼らまたはその介護者または医師にアラートを提供することができ、それにより治療法(例えば、投薬量の増加、追加の薬剤または療法)に必要な変更が可能となり、悪化を回避するのを支援できる。
【0107】
吸入モニタリング装置により集められたデータは、例えば、時系列で測定される圧力差または絶対圧であり得る。測定は、例えば、10ミリ秒、50ミリ秒または100ミリ秒以上(例えば、2、5または10秒)ごとに定期的に行うことができる。データ収集は、吸入モニタリング装置の使用の間にリセットされてもよい。
【0108】
ユーザインタフェースは、例えば、測定されたPIF、計算された総吸入容量、計算されたPEF、計算されたFEV1、または特定の患者の理想値(例えば、年齢、性別、身長のようなバイオメトリックデータに基づいて選択される前記理想値)に対するこれら1つの比率または割合などを提供することができる。代替的または追加的に、測度が健康な範囲内にあるかどうかに関する2値のインディケーター、または測度が健康な範囲の下、上、内にあるかどうかに関する3値のインディケーターを提供することができる。そのような健康な範囲の境界は、特定の患者のために保存されたバイオメトリックデータに再び依存する可能性がある。代替的にまたは追加的に、ユーザインタフェースを用いて、使い捨て吸入器、補充可能なホッパーまたは使い捨てカートリッジに残っている投与量または投与回数を示すことができる。別の代替的または追加的なインディケーションは、吸入器が正しく使用されたかどうか、例えば、患者または介護者または医療専門家が、不足した投与量、有効な薬剤投与のためには短すぎたり弱すぎたりする吸入、またはそうでなければ誤って投与された薬剤、および/または投与が正しく行われたこと、の確認を受ける。
【0109】
吸入器は、好ましくは、喘息および/またはCOPDのような呼吸器疾患の治療を対象とする。呼吸器疾患を治療するために、様々な種類の薬剤が開発されており、種類ごとに異なるターゲットと効果がある。
【0110】
気管支拡張剤は、気管支および細気管支を拡張し、気道において抵抗を減少させ、それによって肺への気流を増加させるために使用される。気管支拡張剤は、短時間作用性または長時間作用型でもよい。典型的には、短時間作用性の気管支拡張剤は、急性の気管支収縮を迅速に緩和する一方、長時間作用性の気管支拡張剤は、長期的な症状を制御し予防するのに役立つ。
【0111】
異なる種類の気管支拡張剤は、気道において異なる受容体をターゲットとする。一般に使用される2つ種類は、抗コリン作用薬およびβ2アゴニストである。
【0112】
抗コリン作用薬(または「抗ムスカリン」)は、神経細胞内の受容体を選択的に遮断することにより、神経伝達物質アセチルコリンを遮断する。局所適用においては、抗コリン作用薬が気道に位置するM3ムスカリン性受容体に優勢に作用し、平滑筋弛緩を生じさせ、それにより気管支拡張作用を生じる。長時間作用性のムスカリン性拮抗薬(LAMAs)の好ましい例には、チオトロピウム(臭化物)、オキシトロピウム(臭化物)、アクリジニウム(臭化物)、イプラトロピウム(臭化物)、グリコピロニウム(臭化物)、オキシブチニン(塩酸塩または臭化水素酸塩)、トルテロジン(酒石酸塩)、トロスピウム(塩化物)、ソリフェナシン(コハク酸塩)、フェソテロジン(フマル酸塩)およびダリフェナシン(臭化水素酸塩)が含まれる。それぞれの場合において、特に好ましい塩/エステル形態を括弧内に示す。短時間作用性のムスカリン性拮抗薬(SAMAs)の好ましい例には、トロピカミドとシクロペントレートが含まれる。
【0113】
β2アドレナリン作用性アゴニスト(または「β2アゴニスト」)は、平滑筋弛緩を誘導するβ2アドレナリン受容体に作用し、気管支の通路の膨張をもたらす。好ましい長時間作用性のβ2アゴニスト(LABAs)には、ホルモテロール(フマル酸塩)、サルメテロール(キシナホ酸塩)、インダカテロール(マレイン酸塩)、バンブテロール(塩酸塩)、クレンブテロール(塩酸塩)、オロダテロール(塩酸塩)カルモテロール(塩酸塩)、ツロブテロール(塩酸塩)およびビランテロール(トリフェニル酢酸塩)が含まれる。短時間作用性のβ2アゴニスト(SABAs)の例には、サルブタモール(硫酸塩)、テルブタリン(硫酸塩)、ピルブテロール(酢酸塩)、メタプロテレノール(硫酸塩)およびアルブテロールが含まれる。それぞれの場合において、特に好ましい塩/エステル形態を括弧内に示す。
【0114】
呼吸器疾患の治療に使用される別の種類の薬剤は、吸入コルチコステロイド(ICSs)である。ICSは、呼吸器疾患の長期的な制御に用いられるステロイドホルモンである。それらは気道炎症を軽減することによって機能する。好ましい例には、ブデソニド、ベクロメタゾン(ジプロピオネート)、フルチカゾン(プロピオン酸塩またはフロアート)、モメタゾン(フロアート)、シクレソニドおよびデキサメタゾン(ナトリウム)が含まれる。それぞれの場合において、特に好ましい塩/エステル形態を括弧内に示す。
【0115】
有効成分は組み合わせて投与することができ、併用療法および配合医薬品の両方が提案されている。当技術分野で開示されている併用療法および配合医薬品の例は、WO2004/019985、WO2007/071313、WO2008/102128およびWO2011/069197に記載されている。有効成分は、LAMA、LABAおよびICSの組合せでもよい。それらは、LAMAとLABA、LAMAとICS、LABAとICSなどの、2つの組み合わせであってもよい。また、それらは、LAMA、LABAおよびICSの組み合わせであってもよい。
【0116】
例の組合せは次のとおりである:
オキシブチニン(塩酸塩または臭化水素酸塩)およびホルモテロール(フマル酸塩)
ダリフェナシン(臭化水素酸塩)およびホルモテロール(フマル酸塩)
オキシブチニン(塩酸塩または臭化水素酸塩)、ホルモテロール(フマル酸塩)およびベクロメタゾン(ジプロピオネート)
ダリフェナシン(臭化水素酸塩)、ホルモテロール(フマル酸塩)およびベクロメタゾン(ジプロピオネート)
オキシブチニン(塩酸塩または臭化水素酸塩)およびサルメテロール(キシナホ酸塩)
ダリフェナシン(臭化水素酸塩)およびサルメテロール(キシナホ酸塩)
オキシブチニン(塩酸塩または臭化水素酸塩)、サルメテロール(キシナホ酸塩)およびフルチカゾン(プロピオン酸塩)
ダリフェナシン(臭化水素酸塩)、サルメテロール(キシナホ酸塩)およびフルチカゾン(プロピオン酸塩)
グリコピロニウム(臭化物)およびインダカテロール(マレイン酸塩)
グリコピロニウム(臭化物)およびホルモテロール(フマル酸塩)
チオトロピウム(臭化物)およびホルモテロール(フマル酸塩)
チオトロピウム(臭化物)およびカルモテロール(塩酸塩)
チオトロピウム(臭化物)およびオロダテロール(塩酸塩)
チオトロピウム(臭化物)およびインダカテロール(マレイン酸塩)
ブデソニドおよびホルモテロール(フマル酸塩)
【0117】
ドライパウダー吸入器(DPI)、加圧式定量吸入器(pMDI)またはネブライザなどの、吸入による送達のための有効成分のこれらの種類を定式化するときに多くのアプローチがとられている。
【0118】
薬剤のAPIは、その作用部位に到達するためには、肺の深部まで浸透する必要がある。したがって、APIは、必要なサイズ、典型的には1~5μmの質量媒体空気力学的直径(MMAD)を有する粒子を得るために微粉化される。
【0119】
薬剤は純粋な薬剤として送達することができるが、より適切には、薬剤を吸入に適した添加剤(キャリアー)と一緒に送達することが好ましい。適切な添加剤には、多糖類(例えば、デンプン、セルロースなど)、ラクトース、グルコース、マンニトール、アミノ酸およびバクガデキストリンなどの、有機添加剤、ならびに炭酸カルシウムまたは塩化ナトリウムなどの無機添加剤が含まれる。ラクトースは、好ましい添加剤である。
【0120】
粉末薬剤および/または添加剤の粒子状物質は、従来の技術、例えば、微粉化、微粉砕またはふるい分けによって製造することができる。
【0121】
さらに、薬剤および/または添加剤粉末は、特定の密度、寸法範囲または特性で操作されてもよい。粒子状物質は、活性剤、界面活性剤、壁形成材料または当業者により望ましいと考えられる他の成分を含んでもよい。
【0122】
薬剤は、吸入器のリザーバまたは吸入器の内部に配置されるキャニスターに組み込まれてもよい。あるいは、薬剤は、吸入器とは別個に提供されてもよく、例えば吸入器を備えた部品のキットを形成することができる単位用量またはカプセルのブリスターストリップに入れてもよい。
【0123】
出願人は、本願明細書に記載された個々の特徴および2つ以上のそのような特徴の任意の組合せを、共通の一般的な観点から全体として本願明細書に基づいて実施することができる範囲で、そのような特徴または特徴の組み合わせが、本願明細書に開示された問題を解決するかどうかにかかわらず、かつ請求項の範囲を限定するものではないことを理解されたい。出願人は、本発明の態様が、そのような個々の特徴または特徴の組み合わせのいずれかから構成され得ることを示す。上記の説明を考慮して、本発明の範囲内で様々な変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。