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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】灌漑のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/02 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
A01G25/02 602A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019510498
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 IL2017050494
(87)【国際公開番号】W WO2017191640
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/332,017
(32)【優先日】2016-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518391915
【氏名又は名称】エヌ-ドリップ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】シャニ, ウリ
(72)【発明者】
【氏名】シィア, シャオホン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィトネー, アシェル
(72)【発明者】
【氏名】ロゼンガーテン, ボアズ
(72)【発明者】
【氏名】ダバチ, シャロン
(72)【発明者】
【氏名】ミレー, ズヴィ
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03887139(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第01568271(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267454(US,A1)
【文献】米国特許第05820029(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水灌漑ドリッパーであって、前記水灌漑ドリッパーが、水を取り込むように構成された少なくとも一つの水入口、及びドリッパーから水を放出するように構成された少なくとも一つの水出口を有する外部中空要素;及び前記外部中空要素の内側に配置された内部要素であって、それらの間の空間に水通路を形成する内部要素を含むこと、及び前記水通路が、一次元の通路ではなく、前記内部要素と前記外部中空要素の間の粒子のまわりの複数の代替的なバイパス流路を含むことを特徴とする水灌漑ドリッパー。
【請求項2】
前記水通路の長さが、約0.5cmから約10cmまでである、請求項1に記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項3】
前記水通路の長さが、約2cmから約5cmまでである、請求項2に記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項4】
前記内部要素の直径が、約0.25mmから約5mmまでである、請求項1~3のいずれかに記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項5】
前記内部要素の直径が、約0.75mmから約2.5mmまでである、請求項4に記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項6】
前記水通路の水力直径が、約0.01mmから約5mmまでである、請求項1~5のいずれかに記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項7】
前記水通路の水力直径が約0.01mmから約1mmまでである、請求項6に記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項8】
平方センチメートルあたり約1個~約10個の密度で複数の水入口が存在する、請求項1~7のいずれかに記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項9】
前記水通路が、前記内部要素を少なくとも部分的に包囲する、請求項1~8のいずれかに記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項10】
前記水入口が、略楕円形状を有する、請求項1~9のいずれかに記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項11】
前記水入口が、前記外部中空要素の外部面に対して略直角である、請求項10に記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項12】
前記少なくとも一つの水入口において水フィルターをさらに含む、請求項10又は11に記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項13】
前記外部中空要素の外部面に対する法線に対して斜めに配向された少なくとも一つの追加の水入口を含む、請求項10~12のいずれかに記載の水灌漑ドリッパー。
【請求項14】
水供給源;及び前記水供給源に接続され、かつ水を放出するように構成された複数のドリッパーを有する灌漑パイプを含む灌漑システムであって、前記ドリッパーのうちの少なくとも一つが、請求項1~13のいずれかに記載のドリッパーである、灌漑システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年5月5日に出願された米国仮特許出願No.62/332017の優先権の利益を主張し、その内容は、全体が本明細書に述べられているかのように参考として組み入れられる。
【0002】
本発明は、その一部の実施形態では、灌漑に関し、特に低水圧での灌漑のための方法及びシステムに関するが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0003】
点滴灌漑は、加圧水源を利用し、かつ制御された方法で分配パイプに沿って水をしたたらせる散水法である。
【0004】
点滴灌漑システムは、一般的に開水路中の畑又は低圧パイプラインに水を運ぶ地表灌漑システムより有効であると考えられている。地表灌漑システムは、少ない投資及び低いエネルギーコストを要求し、これらのシステムは、一般的に水が畑の末端まで達するように効率的にかつ均一に灌漑するために入口で高い放出量を採用する。
【0005】
米国特許第7048010号は、薄壁のスリーブから作られた分配パイプを開示し、それは、空のときにつぶれることができ、その壁に穴を含む。低圧ドリップ部材を備えた枝管は、コネクターによって分配パイプの穴に接続される。スリーブ材料は、不透明であり、太陽光線を反射して微生物や藻の増殖を抑制し、パイプは、周囲空気温度で35℃より高く加熱されない。
【発明の概要】
【0006】
本発明のある実施形態によれば、灌漑の方法であって、前記方法が、複数のドリッパーを与えられた傾斜された灌漑パイプに水を供給することを含み、前記供給が、前記傾斜された灌漑パイプの最も高い高さでの圧力が最大90cmHOであるように行なわれることを特徴とする方法が提供される。
【0007】
本発明のある実施形態の一つの側面によれば、灌漑の方法であって、前記方法が、複数のドリッパーを与えられた傾斜された灌漑パイプに水を供給することを含み、前記灌漑パイプが、変動する傾斜度で傾斜され、前記供給が、前記傾斜された灌漑パイプの最も高い高さで予め決められた圧力を与えるように選択され、前記予め決められた圧力及び前記変動する傾斜度が、前記傾斜された灌漑パイプの長さに沿った放出速度が20%より多く変動しないように選択されることを特徴とする方法が提供される。本発明のある実施形態では、前記供給が、前記傾斜された灌漑パイプの最も高い高さでの圧力が最大90cmHOであるように行なわれる。
【0008】
本発明のある実施形態の一つの側面によれば、灌漑パイプを配置する方法であって、前記方法が、シャベル器具を操作して土壌に変動する傾斜度を有する傾斜を形成すること;及び前記変動する傾斜度を有する傾斜にほぼ沿って、複数のドリッパーを有する傾斜された灌漑パイプを配置することを含み、前記変動する傾斜度における変動が、前記灌漑パイプが予め決められた圧力で水を供給されるとき、前記傾斜された灌漑パイプの長さに沿った水放出が20%より多く変動しないように選択されることを特徴とする方法が提供される。
【0009】
本発明のある実施形態によれば、水圧が、前記傾斜された灌漑パイプの最も高い高さで約5cmHOから約90cmHOまでである。
【0010】
本発明のある実施形態によれば、水を供給することが、水分配管によってなされる。
【0011】
本発明のある実施形態によれば、前記複数のドリッパーのうちの少なくとも一つが、前記ドリッパーの出口での放出速度と前記ドリッパーの入口での入口圧力の間の直線関係を含む圧力と放出速度の依存性によって特徴づけられる。
【0012】
本発明のある実施形態によれば、前記直線関係が、cmHOあたりかつ時間あたり約7立方センチメートルからcmHOあたりかつ時間あたり40立方センチメートルまでである前記入口圧力の係数によって特徴づけられる。本発明のある実施形態によれば、前記係数が、cmHOあたりかつ時間あたり約7立方センチメートルからcmHOあたりかつ時間あたり約20立方センチメートルまでである。本発明のある実施形態によれば、前記係数が、cmHOあたりかつ時間あたり約9立方センチメートルからcmHOあたりかつ時間あたり約12立方センチメートルまでである。
【0013】
本発明のある実施形態によれば、前記直線関係が、時間あたり約0立方センチメートルから時間あたり約50立方センチメートルまでのオフセットパラメーターによって特徴づけられる。本発明のある実施形態によれば、前記オフセットパラメーターが、時間あたり約10立方センチメートルから時間あたり約40立方センチメートルまでである。本発明のある実施形態によれば、前記オフセットパラメーターが、時間あたり約20立方センチメートルから時間あたり約30立方センチメートルまでである。
【0014】
本発明のある実施形態によれば、前記傾斜された灌漑パイプの長さ1メートルあたりのドリッパーの数が、約1個~約5個である。
【0015】
本発明のある実施形態によれば、前記パイプ中のドリッパーの少なくとも一対について、前記一対のうちの第一ドリッパーの位置における前記傾斜度の値と前記一対のうちの第二ドリッパーの位置における前記傾斜度の値の間の比率が、前記一対の前記第一ドリッパーからの前記パイプの最も低い地点の距離と前記一対の前記第二ドリッパーからの前記パイプの最も低い地点の距離の間の比率のn乗に等しいか又はほぼ等しく、前記nが約1.5~約4.5である。
【0016】
本発明のある実施形態の一つの側面によれば、水を放出するように構成された複数のドリッパーを有する傾斜された灌漑パイプ;及び前記傾斜された灌漑パイプの最も高い高さにおいて前記傾斜された灌漑パイプに最大約90cmHOの圧力で水を送出するように構成された水供給システムを含むことを特徴とする灌漑システムが提供される。
【0017】
本発明のある実施形態の一つの側面によれば、水を放出するように構成された複数のドリッパーを有する傾斜された灌漑パイプ;及び前記傾斜された灌漑パイプの最も高い高さで前記傾斜された灌漑パイプに水を送出するように構成された水供給システムを含む灌漑システムであって、前記灌漑パイプが、前記傾斜された灌漑パイプの長さに沿った水圧が約20%より多く変動しないように選択された変動する傾斜度で傾斜されていることを特徴とする灌漑システムが提供される。
【0018】
本発明のある実施形態によれば、灌漑システムが、水分配管をさらに含む。
【0019】
本発明のある実施形態によれば、前記水供給システムが、水溜め、水タンク及びポンプのうちの少なくとも一つを含む。
【0020】
本発明のある実施形態の一つの側面によれば、水灌漑ドリッパーであって、水を取り込むように構成された少なくとも一つの水入口、及びドリッパーから水を放出するように構成された少なくとも一つの水出口を有する外部中空要素;及び前記外部中空要素の内側に配置された内部要素であって、それらの間の空間に水通路を形成する内部要素を含むことを特徴とする水灌漑ドリッパーが提供される。
【0021】
本発明のある実施形態によれば、前記水通路の長さが、約0.5cmから約10cmまでである。本発明のある実施形態によれば、前記水通路の長さが、約2cmから約5cmまでである。
【0022】
本発明のある実施形態によれば、前記内部要素の直径が、約0.25mmから約5mmまでである。本発明のある実施形態によれば、前記内部要素の直径が、約0.75mmから約2.5mmまでである。
【0023】
本発明のある実施形態によれば、前記水通路の水力直径が、約0.01mmから約5mmまでである。本発明のある実施形態によれば、前記水通路の水力直径が約0.01mmから約1mmまでである。
【0024】
本発明のある実施形態によれば、平方センチメートルあたり約1個~約10個の密度で複数の水入口が存在する。
【0025】
本発明のある実施形態によれば、前記水通路が、前記内部要素を少なくとも部分的に包囲する。
【0026】
本発明のある実施形態によれば、前記水入口が、略楕円形状を有する。
【0027】
本発明のある実施形態によれば、前記水入口が、前記外部中空要素の外部面に対して略直角である。
【0028】
本発明のある実施形態によれば、前記少なくとも一つの水入口において水フィルターをさらに含む。
【0029】
本発明のある実施形態によれば、前記外部中空要素の外部面に対する法線に対して斜めに配向された少なくとも一つの追加の水入口を含む。
【0030】
本発明のある実施形態の一つの側面によれば、水供給源;及び前記水供給源に接続され、かつ水を放出するように構成された複数のドリッパーを有する灌漑パイプを含む灌漑システムであって、前記ドリッパーのうちの少なくとも一つが、上述のドリッパーである、灌漑システムが提供される。
【0031】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0032】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0033】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0035】
図1図1は、灌漑システムの模式図である。
【0036】
図2図2は、ドリッパーの模式図である。
【0037】
図3A-3B】図3A-3Bは、本発明のある実施形態による灌漑システムの模式図である。
【0038】
図4図4は、本発明のある実施形態による変動する傾斜度を有する斜傾を持つ灌漑システムの模式図である。
【0039】
図5A図5Aは、組み立てられたドリッパーが複数の穴を有する実施形態におけるドリッパーの断面図である。
【0040】
図5B図5Bは、組み立てられたドリッパーが複数の穴を有する実施形態における組み立てられたドリッパーの透視図を示す模式図である。
【0041】
図5C図5Cは、外部中空要素(右側)及び内部要素(左側)の分解図を示す模式図であり、これらの要素は、一緒に組み立てられたときに、本発明のある実施形態によるドリッパーを与える。
【0042】
図6図6は、組み立てられたドリッパーが、その水通路に障害物を有する実施形態におけるドリッパーの透視図を示す模式図である。
【0043】
図7A-7B】図7A-7Bは、本発明のある実施形態による水供給管におけるドリッパーの水平配向(図7A)及び垂直配向(図7B)の模式図である。
【0044】
図8A-8B】図8A-8Bは、本発明のある実施形態によるドリッパーの内側の部分的な水通路の断面図である。
【0045】
図9A-9L】図9A-9Lは、本発明のある実施形態によるいくつかの組み立てられたドリッパーの断面図を示す模式図である。
【0046】
図10A図10Aは、組み立てられたドリッパーが、楕円形状の水入口であってフィルターを含む水入口を有する実施形態における組み立てられたドリッパーの透視図を示す模式図である。
【0047】
図10B図10Bは、組み立てられたドリッパーが、楕円形状の水入口を有する実施形態における組み立てられたドリッパーの透視図を示す模式図である。
【0048】
図10C-10D】図10C-10Dは、組み立てられたドリッパーが、楕円形状の水入口を有し、かつ外部中空要素の外部面に対する法線に対して斜めに配向された追加の水入口を有する実施形態における組み立てられたドリッパーの断面図(図10C)及び透視図(図10D)を示す模式図である。
【0049】
図10E-10F】図10E-10Fは、ドリッパーが、ドリッパーの一方の側から保持されている内部要素を含む実施形態における組み立てられたドリッパーの断面図(図10E)及び透視図(図10F)を示す模式図である。
【0050】
図11図11は、本発明のある実施形態による実験において得られた、約20,30,50,100及び150cmの入口ヘッド、約150mのパイプ長さ、及び約25mmのパイプ直径についての畑の斜傾の関数としての低放出速度のドリッパーに対する高放出速度のドリッパーの割合の差をプロットしたグラフである。
【0051】
図12A図12Aは、本発明のある実施形態による実験において得られた、フラッシの前後の四つの異なるドリッパーの相対放出速度を示すグラフである。
【0052】
図12B図12Bは、本発明のある実施形態による実験において得られた、約150mの長さ及び約25mmの直径を有する管についての傾斜度及び入口圧力の関数としてのフラッシ中の管における水放出速度を示すグラフである。
【0053】
図13A-13C】図13A-13Cは、本発明のある実施形態による実験において得られた、0℃の傾斜度(図13A)、変動する傾斜度(図13B),及び均一な流量を確実にするように選択された傾斜度についての管長さの関数としての入口圧力のグラフである。
【0054】
図14図14は、本発明のある実施形態に従って使用されることができる種類のドリッパーを示す。
【0055】
図15A-15B】図15A-15Bは、本発明のある実施形態に従って使用されることができる別の種類のドリッパーを示す。
【0056】
図16A-16B】図16A-16Bは、本発明のある実施形態に従って使用されることができる追加の種類のドリッパーを示す。
【0057】
図17A-17F】図17A-17Fは、本発明のある実施形態による、図9A-9Lに示されるいくつかのドリッパーの透視図を示す模式図である。
【0058】
図示の簡単さ及び明確さのために、図面に示されている要素は、必ずしも縮尺通りではないことが理解される。例えば、ある要素の寸法は、明確さのために他の要素に対して誇張されることができる。さらに、適切であると考えられる場合には、参照番号は、対応する又は類似の要素を示すために図面間で繰り返されることができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明は、その一部の実施形態では、灌漑に関し、特に低水圧での灌漑のための方法及びシステムに関するが、それらに限定されない。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態をより良く理解する目的のために、図3図17Fに示されるように、図1及び図2に示される灌漑システム及びドリッパーの構造及び作動がまず言及される。
【0061】
図1は、灌漑システム10を示す。このシステムは、水供給システム11、水供給システム11から複数の管13に水をポンピングして、それによって複数の管13の中に高圧の水流を生じさせるためのポンプ12を含む。複数のドリッパー20が、管13を通る水流の速度を減少させるため、及び制御された速度で水を地面に放出するために複数の管13に取り付けられている。
【0062】
図2は、略ジグザグ形状の水通路22を有するドリッパー20を示す。この水通路は、交互に配置された突出部を含み、それを通る水の速度を減少させる。ドリッパー20は、水入口21(これを通して水がドリッパー中に入る)、及び水出口23(これを通して水が水通路から外に出て地面に流れる)も含む。ドリッパー20は、粒子がドリッパー20に入ってきてそれを詰まらせるのを防止するためのフィルター(図示されず)も含む。ジグザグ形状の水通路22は、乱流を作り出し、この乱流は、エネルギーの損失をもたらす。このエネルギー損失は、水通路22の構造及び寸法によって制御されている。
【0063】
本発明者らは、従来のドリッパーは、粒子が中に蓄積されると詰まることがあり、これは、灌漑畑の定期的な管理及び検査を必要とし、作動費用を増大させうることを見出した。
【0064】
さらに、本発明者らは、作動圧力を減少させることによって、ポンプの必要性を減少させるか又は削除することができ、これによってエネルギーコストを減少させることができることを見出した。
【0065】
図3A-3Bは、本発明のある実施形態による灌漑システム300の模式図である。本発明の様々な例示的な実施形態において、灌漑システム300は、低い水圧で作動し、例えば、0.1bar未満、より好ましくは約5mbar~約90mbar、より好ましくは約5mbar~約80mbar、より好ましくは約5mbar~約70mbar、より好ましくは約5mbar~約60mbar、より好ましくは約5mbar~約50mbar、より好ましくは約5mbar~約40mbar、例えば30mbarで作動する。灌漑システム300は、所望によりかつ好ましくは水供給システム302を含み、この水供給システム302は、水を低圧で供給することが好ましい。灌漑システム300は、灌漑パイプ304及び一つ以上のドリッパー306も含むことができる。図3A及び3Bは、略水平方向の灌漑パイプ304を示しているが、これは必須ではなく、本発明のある好ましい実施形態では、灌漑パイプ304は、傾斜させられることができる。システム302は、所望によりかつ好ましくはコネクター及び/又は弁360を通して、所望によりかつ好ましくは水分配管305のうちの一つ以上に接続されることができる。代替的に又は追加的に、システム302は、貯水器、水タンク、水容器又は井戸のうちの一つ以上に接続されることができる。
【0066】
本発明のある実施形態において、システム300は、水ポンプ362を含み、この水ポンプ362は、水をシステム302に、又は水分配管305に、又は灌漑パイプ304に送出する。システム300は、所望によりかつ好ましくは灌漑パイプ304の中の水圧を測定するための一つ以上の圧力センサー364を含む。システム300は、灌漑パイプ304に供給される水の流量を制御するための制御システム366をさらに含む。制御システム366は、ポンプ362に又はコネクター及び/又は弁360に制御信号を送信してパイプ304中の流量を制御するように構成された回路を含むことができる。所望によりかつ好ましくは制御システム366は、センサー364から感知信号を受信し、これらの感知信号に応答して灌漑パイプ304中の上述の水圧を維持するために制御信号を送信する。
【0067】
ドリッパー306は、灌漑パイプ304に取り付けられるか、又は灌漑パイプ304中に組み込まれるか、又は灌漑パイプ304の内部に配置されることができる。作動において、ドリッパー306は、少なくとも一つの水出口314を通して水を放出し、水の流れを例えば土壌に、地面に、又はあぜ溝に与える。ドリッパー306の外部314は、所望によりかつ好ましくはパイプ304の中の穴336に隣接していることができる。
【0068】
灌漑パイプ304は、少なくとも1barの圧力に耐えることができ、(例えば、車両の車輪の乗り上げによる)荷重の生成の結果としての偶然の圧力に耐えることができ、及び/又は天候条件(例えば、雨、又は太陽によって生成される熱から通常生じる高温)に、耐えることができて正常に作動することができる当該技術分野で公知のいかなる好適な材料から作られることもできる。例えば、好適な材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、及び他の熱可塑性プラスチック材料であることができる。通常、灌漑パイプ304は、約20mm~約40mmの直径、及び約5~約300mの長さを有する。
【0069】
ドリッパー306は、灌漑パイプ304に沿って配置される。パイプ304に沿った二つの隣接するドリッパーの間の距離は通常、約20cm~約100cmであるが、これに限定されない。
【0070】
ドリッパー306は、一つ以上の方法で具体化されることができる。図3Bに示される代表的な例(しかし、これに限定されない)では、一つ以上の(好ましくは、それぞれの)ドリッパー306は、灌漑パイプ304の内部壁に固定されることができ、一つ以上の水入口312(これを通して、水がドリッパー306に入る)、一つの水出口314(これを通して水がドリッパー306から出る)、及び水通路310(これを通して水が入口312から出口314まで流れる)を含むことができる。例えば、ドリッパー306は通常、約1個~約100個のドリッパー入口、及び1個のドリッパー出口を含むことができる。
【0071】
図14は、本発明の別の実施形態によるドリッパー306を示す。この実施形態において、ドリッパー306は、強くて非腐食性の材料からなるコンパクトなハウジング212を含む。ドリッパー306の上部表面214は、二組の入口を規定する。それぞれの入口は、上部表面214を通して延びる一つ以上の開口部を含む。これらの入口は、灌漑チューブの内部を通って流れる灌漑水に露出されている。
【0072】
第一の入口216は、好ましくは三つの開口部を含む。第一の入口216の中に流入する水は、ドリッパー306の本体を通って出口(図示されず)に進む。ドリッパー306を通って出口まで進む間に、水圧は、減少され、水流は、したたり又は液滴の流量まで低下される。好ましくは、三つの開口部は、第一の入口216を通って流れる水のためのフィルター機能を実行するのに(例えば、ドリッパー306の内部を詰まらせるかもしれない破片や砂利を濾過するのに)直径が十分に小さい。第一の入口216を構成する開口部は、所望によりかつ好ましくは、三角形のパターンで配置されており、ドリッパー306の内部表面に水が均一に衝撃を与えることを可能にする。好ましい実施形態では三つの等しい間隔で配置された開口部が示されているが、開口部の他の数及び配置も、第一の入口216を形成するために利用されることができる。
【0073】
第二の入口218は、好ましくは、ドリッパー306の長さを二分割する中心軸に沿って間隔をおいて配置された二つの開口部を含む。第二の入口218の中に流入する水は、所望によりかつ好ましくは、ドリッパー306の本体を通って進まず、代わりに、圧力補償機能を発揮する。第二の入口218の中に流入する水は、ドリッパー306の内部にあるチャンバー中に蓄積され、灌漑チューブの中の圧力に実質的に等しい量の圧力をチャンバーに付与する。第二の入口218を通して流れる水はドリッパー306を通して流れないので、第二の入口218の開口部は、流入する水を濾過する必要がなく、開口部は小さい直径を有する必要がない。図14に示される好ましい実施形態では二つの開口部が示されているが、開口部の他の数及び配置も、第二の入口218を形成するために利用されることができる。
【0074】
図15A及び15Bは、本発明の別の実施形態によるドリッパー306を示す。この実施形態において、ドリッパー306は、組み立てられたプラスチックの成形ハウジング構成要素から簡便にかつ経済的に形成されることができるコンパクトなハウジングを含む。ハウジングは、略カップ形状の基部20を含み、これは、キャップ22と共に組み立てられて、実質的に閉鎖されたハウジング内部を形成するように適合されている。一般的な用語において、流れ溝14は、弾性で柔軟なエラストマーの弁部材28と協働する関係で基部20において形成された溝パターン26によって規定される。水は、キャップ22によって形成された水入口30を介して流れ溝14に供給され、基部20に形成された放出出口16を通して流れ溝から放出される。溝パターン26の幾何学的形状は、弁部材28と協働して、入口30と出口16の間の改良された圧力減少のために三次元の流れ溝14を規定する。
【0075】
ハウジング基部20は、上向きに開いた略カップ形状の構造を有し、この構造は、円形の底部又は床表面32を含み、これは、その周縁で、円筒形に直立している外部壁34に接合されている。溝パターン26は、出口16のまわりに配置された略円形構成で床32上に形成されており、前記出口16は、所望により放出チューブ(図示されず)へのプレス嵌め取り付けのために短い下向きに突出する中空のステム36を含むことができる。複数のスペーサー柱38も、基部20に形成されており、床の周縁で床32から上向きに突出し、溝パターン26の上で外部壁32の上部縁の下に配置された上部端で終わる。
【0076】
弁部材28は、弾性の円板を含み、これは、ハウジング基部20の中に嵌合することができる寸法及び形状を有しており、弁部材28の外部縁は、スペーサー柱38の内部に嵌合する。その時、ハウジングキャップ22は、基部の開放端中への円板形状のキャップのプレス嵌め設置によって基部20と共に組み立てられ、キャップ22は、スペーサー柱38の上部端に対して着座される。キャップ22は、好適な接着部の使用によって、又は超音波溶接などによって、封止態様で基部20にしっかりと接続されることができる。組み立てられた時、ハウジング基部20とキャップ22は、入口チャンバー40(図15A)を規定し、その内部に、弁部材28が、溝パターン26にわたって整列された位置で少なくともある程度の浮動運動を持って保持されている。水入口30は、キャップ22中に形成されており、入口ステム42と典型的には関連されており、この入口ステム42は、水供給ホース12へのプレスオンパンク式の取り付けのための顎のある構成を含むことができる。
【0077】
流れ溝14から、水は、中心に配置された放出チャンバーに入る。この放出チャンバーは、弁部材28と係合するためにハウジング基部20の床32から上向きに突出する隆起した円形ボス52を有する。ボス52は、出口チャンバーから水出口16への水の放出流れのために形成された、上向きに開放された放出制御溝54を有する。
【0078】
図16A及び16Bは、本発明の別の実施形態によるドリッパー306を示す。この実施形態において、ドリッパー306は、成形されたプラスチックの本体であることができ、これは、薄い壁のドリップテープ102、又は押し出しホースなどの他のいかなるタイプの水管中に、ドリップテープの押し出し中に又はドリップテープの押し出し直後に、規則正しい間隔で挿入されることができる。各ドリッパー306は、ドリップテープの製造中にドリップテープの壁に切断されたか又は予備形成された開口部104に配置されることができる単一の出口を有することができる。この薄い壁のドリップテープ102の中の水は、ドリッパーの側部又は周縁106でフィルターを通過してドリッパー306に入ることができる。フィルター領域はドリッパーの側部又は周縁に存在するため、ドリッパー306は、その寸法又は厚さに比べて大きな面積のフィルターを与えることができる。例えば、好ましい実施形態では、ドリッパー306は、約3.5mmの厚さ及び少なくとも約12mmのフィルター面積を有することができる。
【0079】
一つの実施形態では、濾過された水は次に、ラビリンス108を通過し、そこで水圧が減少される。例えば、水圧は、ドリップテープ中のライン圧力(例えば12psi)から実質的に低い圧力まで減少させられることができる。減少された圧力の水は、次に、ドリップテープの壁に溶接又は接着されたドリッパーの第一又は外部面111の近くの出口穴110を通して流れることができる。
【0080】
一つの実施形態では、ドリッパー306は、ドリッパーの第二又は内部面114に又はそれに隣接して配置されたダイアフラム112を使用して圧力調節される。ドリップテープ中の水圧は、ダイアフラムに作用して、水圧が水管中で変化するにつれてドリッパーの流量を調節する。
【0081】
ドリッパー306は、三つの部分、つまり、二つの本体部材122及び124と、エラストマーのダイアフラム112を含むことができる。ドリッパーの第一又は外部面111は、ドリップテープの内部壁に溶接された、又は接着された、又は接合された一つ以上の壁又は表面を有することができる。ドリッパー306は、ドリップテープの内部に向けて内向きに突出することができる第二又は内部面114を有する。第一又は外部面と第二又は内部面との間のドリッパー306の厚さは、好ましくは約5mm未満であり、最も好ましくは約3.5mm未満である。ドリッパー306のフィルター領域は、ドリッパーの外部面111と内部面114の間で、ドリッパー306の側部106又は周縁に全体的に存在する。
【0082】
一つの実施形態では、フィルター領域は、ドリッパー306の側部を通る複数のスロット116として構成されることができ、これらのスロットは、ドリップテープ中の水がドリッパー306に入るためのフィルター入口又は通路を提供する。ドリッパーの側壁を通る各スロット116は、粒子又は破片がスロットを通過してドリッパー306の内部へ入ることを阻止しながら、ドリップラインからドリッパー306の内部への水の所望の流量を可能にするのに十分小さい寸法を有することができる。
【0083】
例えば、一つの実施形態では、ドリッパー306は、略円板形状であることができ、各スロット116は、ドリッパーの円筒状の側壁106を通って、ドリッパー306の周縁又は外部面から内部へと放射状に延びることができる。ドリッパー306は、24個の放射状のスロットを有することができ、各スロットは、約0.5mm未満の、最も好ましくは約0.3mm未満の幅を有する。ドリッパーの側壁の半径方向厚さは、約0.5mm~約1.0mmであることができる。ドリッパーの半径は、約3.5mm~約6.5mmであることができる。ドリッパーの外周は、約10mm~約30mmであることができる。
【0084】
一つの実施形態では、ドリッパー306の第二又は内部面114は、開口部118を有することができる。ダイアフラム112は、本体部材122と124の間に配置された弾性の内袋であることができ、一方、ダイアフラムは、一方の側でドリップテープ又はドリッパー306が設置されている他の水管内の水圧に直接露出されている。例えば、ダイアフラムは、約0.5mm~約0.75mmの厚さを有することができ、また表面132上の第二本体部材124中に形成されたラビリンス108と圧力調節チャンバー144の両方をカバーするのに十分大きい表面を有することができる。
【0085】
一つの実施形態では、ダイアフラムは、ドリップテープ中のライン圧力に露出されることができ、このライン圧力は、開口部118を通して入ってダイアフラムに対して直接作用し、他方の側でのダイアフラムの水圧が減少するにつれてダイアフラムを曲げる。もしドリップテープ中の水圧が増大すれば、ダイアフラムは、出口110に向かって放射状に曲がり、ドリッパーの第二又は内部面から離れ、ドリッパー306からの出口流れを減少させる。
【0086】
一つの実施形態では、ダイアフラムに作用しながらも開口部118を通過する水は、フィルターを通過しない。代わりに、フィルターは、ドリッパー306の円筒状側壁106中のスロット116の配列であることができ、水がドリッパーの圧力減少領域又はラビリンス108に入ることのためだけに使用される。
【0087】
一つの実施形態では、ダイアフラム112は、ドリッパー306の第一本体部材122と第二本体部材124の間でダイアフラムの外部部分を挟むことによって定位置に保持されることができる。第一及び第二本体部材は、スナップ又はプレス嵌めで一緒に係合されることができる。例えば、第二本体部材は、第一本体部材中に挿入されて、ドリッパーの側壁106から内向きに延びる肩126によって定位置に保持されることができる。内向きに面する肩は、第二本体部材を捕獲して定位置に保持する。なぜなら、第二本体部材の外部リム又は周縁128の寸法は、肩126の寸法よりわずかに大きいからである。ダイアフラム112は、第一本体部材の表面130と、第二本体部材の一つ以上の壁132,134の間に保持されていることができる。所望により、肩及び外部リム又は周縁は、組み立ての容易を促進するために先細にされることができる。追加的に、開口部118の半径方向外側のダイアフラムの部分は、第一本体部材と第二本体部材の間のしっかりとした又は封止嵌合によって軸方向に圧縮されることができる。
【0088】
一つの実施形態では、ドリッパーの側部におけるフィルター領域を通ってドリッパー306に入る水は、フィルター領域の内部のマニホールド流れ溝136において収集されることができる。例えば、マニホールド流れ溝は、ドリッパーの側壁106のフィルター領域内の半径方向の通路であることができ、ドリップテープの壁、表面138、及び出口プール146を取り巻く壁140によって包囲されることができる。
【0089】
本発明の様々な例示的実施形態において、灌漑パイプ304は、潅漑パイプに沿ったドリッパー中の圧力損失を補償するように配置されている。作動において、水供給システム302は、所望によりかつ好ましくは、パイプ304の最も高い高さでパイプ304に水を送出する。
【0090】
本発明者によって、これは一般的に高い水流量を生じること、及び全てのドリッパー306において一般的に均一な流量を維持することが見出された。
【0091】
本発明のある実施形態によれば、制御システム366は、水供給システム302がパイプ304に水を最大約90cmHO(例えば、約5cmHO~約90cmHO)、又は最大約80cmHO(例えば、約5cmHO~約80cmHO)、又は最大約70cmHO(例えば、約5cm~約70cmHO)、又は最大約60cmHO(例えば、約5cmHO~約60cmHO)、又は最大約50cmHO(例えば、約5cmHO~約50cmHO)、又は最大約40cmHO(例えば、約5cmHO~約40cmHO)の圧力で送出することを確実にする。例えば、水供給システム302が、ポンプであるか及び/又は制御可能な弁(図示されず)を含む場合、制御システム366は、ポンプ又は弁を制御して、好ましい圧力を送出することができる。代替的に、水供給システム302は、(例えば、出口の直径及び/又は水供給システム302内の圧力の賢明な選択によって)制御システムなしで上述の圧力で水を送出するように構成されることができる。
【0092】
点滴灌漑システムは、効率的に作動するためには、投資コスト及び高圧での電力消費(エネルギー)、及び濾過システムを必要とする。地表灌漑システムは通常、水が畑の末端まで到達するように地表灌漑を使用して効率的かつ均一に灌漑するために、水入口において高い放出速度を使用する。本発明者によれば、急勾配の畑による水量の減少は、表面流去、侵食、及び土壌の減成をもたらす。
【0093】
点滴灌漑システムは、減少した表面流去及び浸出のために、地表灌漑システムと比べて高い水均一性を畑全体に提供する。しかし、本発明者によれば、高い圧力要件は、高い圧力に抵抗することができるフィルター、ポンプ、圧力調節器、及び灌漑パイプの材料において高いエネルギーコスト及び高い投資コストを生じることが認識された。本発明者によれば、0.05~0.1バールの圧力で作動する点滴灌漑システムは、大規模の商業的な畑において適用されることができないことが認識された。灌漑されている畑における放出速度の変動についての評価基準は通常、10%以下である。
【0094】
本発明者は、変動する傾斜度で傾斜されることができる潅漑パイプを含む灌漑システムは、傾斜された潅漑パイプの長さに沿った水放出が約20%より多く変動しないように、又は約18%より多く変動しないように、又は約16%より多く変動しないように、又は約15%より多く変動しないように、又は約13%より多く変動しないように、又は約12%より多く変動しないように、又は約10%より多く変動しないように選択されることができることを見出した。
【0095】
本明細書で使用される通り、「水放出(water discharge)」は、単位時間あたりドリッパーから出る水の体積を意味する。
【0096】
本発明のある実施形態では、潅漑パイプ304は、徐々に変動する傾斜度で傾斜されている。本発明のある実施形態では、潅漑パイプ304は、非連続的に変動する傾斜度で傾斜されている。
【0097】
図4は、変動する傾斜度が使用されている本発明の実施形態における灌漑システム300の模式図である。灌漑システム300は、水供給システム302、一つ以上の傾斜された潅漑パイプ304、及び複数のドリッパー306(図3A及び図3Bでは、図示されず)を含むことができる。図4の代表的な図(これは、限定的であるとみなされるべきではない)において、灌漑システム300は、分配管305を含み、その中に水がシステム302から放出される。管305は、穴314を与えられており、この穴の中に、潅漑パイプ304が好適なコネクター(図示されず)によって接続される。潅漑パイプ304は、所望によりかつ好ましくは、浸水のために通常使用されるあぜ溝311の間に配置され、かつ潅漑パイプ304に沿った流れの損失を補償するために傾斜330で配置されている。傾斜330は、潅漑パイプ304に沿って(徐々に又は非連続的に)変動されることができる。
【0098】
例えば、潅漑パイプ304は、潅漑パイプ304の開始場所では(絶対値で)高い傾斜度で、かつパイプ304の下流の一つ以上の場所では(絶対値で)低い傾斜度でというように、徐々に変動する傾斜度で傾斜されることができる。本発明者によれば、これは、水流量を増大させ、全てのドリッパー306において略均一な圧力を維持することを可能にすることが見出された。本発明のある実施形態では、潅漑パイプ304は、傾斜された潅漑パイプ304の長さに沿った水放出が約20%より多く変動しないように、又は約18%より多く変動しないように、又は約16%より多く変動しないように、又は約15%より多く変動しないように、又は約13%より多く変動しないように、又は約12%より多く変動しないように、又は約10%より多く変動しないように選択された徐々に変動する傾斜度で傾斜される。
【0099】
所望によりかつ好ましくは、変動する傾斜度は、パイプ304中のドリッパーの少なくとも一対について、より好ましくは、パイプ304中のドリッパーの少なくとも二対について、より好ましくは、パイプ304中のドリッパーの少なくとも三対について、より好ましくは、パイプ304中のドリッパーの任意の対について、前記対のうちの一つのドリッパーの位置における傾斜度Sと前記対のうちの別の一つのドリッパーの位置における傾斜度Sの値の間の比率が、パイプ304の最も低い地点からのドリッパーの距離(例えば、管305からのパイプ304の最も遠い点)の間の比率のn乗に等しいか又はほぼ等しいように選択される。数学的には、これは、S/S∝[(L-l)/(L-l)]として表わされることができ、式中、Lは、パイプ304の長さであり、lはパイプ304に沿った最も高い点と前記対のドリッパーのうちの一つとの間の距離であり、lはパイプ304に沿った最も高い点と前記対の他方のドリッパーとの間の距離である。べき指数nの値は、好ましくは約1.5~約4.5であり、例えば約2又は約3である。
【0100】
次に図5A図5Cを参照する。これらの図は、本発明のある実施形態によるドリッパー306の模式図である。ドリッパー306は、所望によりかつ好ましくは、水入口312として機能する複数の穴を含む。しかし、これは必須ではなく、ある用途では、ドリッパーの端は、入口として作用することができる。ドリッパー306は、図3A図3B図4を参照して説明された灌漑システムなど(これに限定されない)の灌漑システムにおいて有用であることができる。ドリッパー306は、一つ以上の潅漑パイプ304に取り付けられるか、又はその中に配置されることができる。ドリッパー306は、パイプ製造工程中に潅漑パイプ304中に組み入れられることができる。
【0101】
図5Aの代表的な例示では、ドリッパー306は、外部中空要素301から組み立てられる。外部中空要素は、例えば、中空管の形であり、ドリッパー306中への水の取り入れのための一つ以上の水入口312、及びドリッパー306からの水の放出のための一つ以上の水出口314を有する。ドリッパー306は、内部要素303も含む。内部要素は、内部要素303が外部中空要素301の内部に挿入されたときに、それらの間に水通路310が形成されるように、外部中空要素301の直径よりも小さい直径を有する。水通路310は、ドリッパー306の一方の端321からドリッパー306の別の端331まで延びることができる。端331は、所望によりかつ好ましくは、閉鎖されている。本発明の様々な例示的実施形態において、水通路310は、水通路310の内部に直線によって接続される少なくとも一つの入口-出口の対が存在するように形成される。これは、例えばジグザグ形状又はラビリンス型の水通路を有するドリッパーとは異なり、水の少なくとも一部が一つ以上の入口312から一つ以上の出口314まで直線に沿って流れることを可能にする。
【0102】
本発明において、「入口-出口の対」は、入口312のうちの一つと出口314のうちの一つを含む対である。
【0103】
水入口312は、約0.05mm~約1cmの直径、及び約0.01mm~約1cmの入口-入口間隔を有する複数の小さな空洞の形であることができる。好ましくは、水出口314は、水の所望の放出流量がドリッパーから土壌又は地面に与えられるように、ドリッパーから水を放出するように構成されている。水出口314の穴直径は通常、約0.5mm~約2mmである。ドリッパー306の水出口314は、所望によりかつ好ましくは、傾斜された潅漑パイプ336(図3Bに示されている)中に配置された穴336(図3Bに示されている)と連通していることができる。
【0104】
本発明のある実施形態によれば、ドリッパー306は、出口314での放出速度とQ(単位時間当たりの水体積)入口312での入口圧力Pの間の直線関係を含む圧力と放出速度の依存性によって特徴づけられる。この関係は、数学的には、Q=aP+aとして表わされ、式中、aは、入口圧力係数であり、aは、オフセットパラメーターである。aについての典型的な値は、cmHOあたりかつ時間あたり約7立方センチメートルからcmHOあたりかつ時間あたり40立方センチメートルまでであるか、又はcmHOあたりかつ時間あたり約7立方センチメートルからcmHOあたりかつ時間あたり約20立方センチメートルまでであるか、又はcmHOあたりかつ時間あたり約9立方センチメートルからcmHOあたりかつ時間あたり約12立方センチメートルまでである。aについての典型的な値は、時間あたり約0立方センチメートルから時間あたり約50立方センチメートルまでであるか、又は時間あたり約10立方センチメートルから時間あたり約40立方センチメートルまでであるか、又は時間あたり約20立方センチメートルから時間あたり約30立方センチメートルまでである。
【0105】
図5Bは、本発明のある実施形態によるドリッパー306の長手方向の断面図である。図5Cは、本発明のある実施形態による外部中空要素301(右側)及び内部要素303(左側)の分解図を示す模式図である。
【0106】
ドリッパー306は、第一端331(これは、閉鎖されていてもよい)を有する外部中空要素301を含むことができる。ヘッド328を有する内部要素303が、外部中空要素301の中に挿入されることができる。好ましくは、内部要素303のヘッド328は、これらの要素が一緒に組み立てられた後に外部中空要素301の一つの端321を閉鎖する。外部中空要素301は、一方の端317に複数の水入口312を有し、他方の端319に一つ以上の水出口314を有することができる。
【0107】
図5Aを参照すると、内部直径dintは通常、内部要素303の外部壁318の上の二つの最も遠い正反対の点の間で規定される。外部直径dextは通常、外部中空要素301の内部壁322の上の二つの最も遠い正反対の点の間で規定される。内部要素303が外部中空要素301の中に導入されたとき、幅Wを有する水通路310が形成される。幅Wは、所望によりかつ好ましくは、十分に狭い水通路310を与えるように、及びドリッパー306内の流れを減少させるために小さな水力直径(D)を与えるように設定される。
【0108】
水力直径(D)は、以下の方程式Iに規定されるように、流れ面積Aと管の湿潤された周囲長さPの間の比率の4倍として規定されるパラメーターである。
【0109】
方程式Iにおいて、Aはドリッパー306中の水通路310の断面積であることができ、Pは、断面の湿潤された周囲長さであることができる。この場合、Dは、水通路310の水力直径と称される。
【0110】
例えば、水通路310が円形形状を有する場合、方程式Iによる水力直径は、水通路を形成する円の直径に変形されることができる。
【0111】
本発明のために好適な水通路310の典型的な水力直径は、約50μm~約500μmである。図6を参照して以下にさらに説明されるように、水通路310内の詰まりが減少又は阻止される限り、水力直径についての他の値も想定される。
【0112】
水通路310が環状形状を有する場合、水力直径は、水通路の幅Wとして規定される。これは、以下の方程式IIに従って、外部中空要素301の内部直径d501と内部要素303の外部直径d508との間の差として計算される。
【0113】
水の流量は、その水力直径が減少するにつれて、溝内で減少することが理解される。
【0114】
本発明者は、(特に、低い作動圧力で)本発明の好ましい実施形態による狭い水力直径のドリッパーを使用することによって、ドリッパー306から水が出るときに低い放出流量を与えることができることを見出した。小さな水力直径は、狭い水通路310の十分大きい相対表面積を与えることによって、及び/又は(例えばドリッパー306の狭い水直径310の水の流れのための摩擦を減少させることによって)水通路310中を流れる水のエネルギーを減少させることによって達成されることができる。水通路310の拡大された相対表面積は、例えば、形成された水通路を作成することによって達成することができる。例えば、水通路は、多角形(例えば三角形、四角形など)として形成されることができる。代替的に又は追加的に、水通路310の拡大された相対表面積は、入口312と出口314の間に十分に長い直径を与えることによって達成することができる。
【0115】
ドリッパーの入口における粒子の蓄積は、詰まり及び減少された流れ放出を生じることがあり、従って、流れ放出の減少又は中断をもたらすことがある。
【0116】
上述のような通路を有することによる利点は、図6を参照してより良く理解されることができる。図6は、本発明のある実施形態のよるドリッパー306の透視側面図である。その水通路310の中に、粒子や気泡などの障害物350が示されている。図示された実施形態では、障害物350は、環状形状を有する。障害物350は、ドリッパー306の外部中空要素301の内部壁322及び内部要素303の外部壁318と接触し、それにより領域通路310を部分的に又は完全に詰まらせることがあり得る。しかし、通路310は一次元ではなく、通路310内には他の代替的な経路もあり、ドリッパー306の内部に存在しうるいかなる障害物のまわりのバイパス経路331,332,333を可能にする。さらに、ドリッパーに入る粒子の量は、ドリッパー306に狭い入口を与えることによって減少されることができる。水入口304は、約50μm~約500μmの寸法のものであることができる。従って、水通路310は、障害物350によって完全には封鎖されない。
【0117】
本発明のある実施形態では、多数の毛細管水入口312が存在する。通常(しかし、必ずではない)、例えば1個~100個の毛細管水入口が使用される。多数の毛細管水入口を有することによる利点は、毛細管水入口がドリッパー306のためのフィルターとして作用することができ、ドリッパーが詰まる危険性を減少させるということである。
【0118】
本発明のある実施形態によれば、水力直径Dは、約0.01mm~約1mmである。本発明のある実施形態によれば、外部中空要素301は、約0.5mm~約5mmの内部直径を有する。
【0119】
この実施形態のために好適なドリッパーの断面積は、水通路310の幅に応じて、約3mm~約300mmであることができる。ドリッパー306を通って流れる水の流量は通常、約0.1mHO~約2mHOの水圧において、約100ml/h~約10000ml/hである。例えば、長さ約3cmのドリッパー及び幅約100μmの環は、1.5mHOの圧力で約1400ml/hの流量を作り出すことができる。
【0120】
外部中空要素301の外部表面と内部要素303の外部表面は、約10%の許容差で互いに平行であることできる。複数の水入口312の間の距離は、約0.5mm~約2mmであることができる。水入口312と水出口314の間の距離は、約1cm~約6cmであることできる。
【0121】
さらに理解されることができるように、この実施形態のドリッパーを使用してそれらを低圧で作動させることによって、灌漑システム300は、図1に示された種類のポンプ12を不要とすることができる。その結果として、この実施形態の潅漑パイプ304は、より数が少なくてより安価な原材料から作られることができる。
【0122】
それに加えて本発明者は、この実施形態のドリッパーは、その内部を流れる水によって粒子が洗い流されることを可能にすることを見出した。たとえ粒子がこの実施形態のドリッパーの内部に部分的に詰まったとしても、この粒子の詰まりは、きれいな水がドリッパーに供給されるときに粒子を洗い出すことによって解消されることができる。その結果として、この実施形態のドリッパーは、自然の組み込み型の自己洗浄能力を有する。
【0123】
図7A及び図7Bを参照すると、上述の灌漑システムの実施形態のいずれか一つにおける複数のドリッパー306は、図7A及び図7Bにそれぞれ示されるように、潅漑パイプ304の位置に対して水平に又は垂直に配置されることができる。
【0124】
図8A及び図8Bは、本発明のある実施形態によるドリッパー306の内部の部分的な水通路の断面図である。
【0125】
図5A図5Cにおいて上述したように、水通路310は、外部中空要素301と内部要素303を組み立てることによって形成される。内部要素303は、例えば部分的にリング状の水通路310を使用することによって、即ち、環310の少なくとも一部を部分的に使用することによって、代替的な断面を有することができる。ドリッパー306のいずれの構成要素も、成形されたプラスチックを含むことができる。内部要素303は、外部中空要素301の中に挿入されることができる。
【0126】
本発明のある実施形態において、一つ以上のカバーが外部中空要素301の一つ以上の側に置かれることができ、これによりその端の一つ以上を閉鎖することができる。
【0127】
図9A図9Lは、本発明のいくつかの実施形態によるドリッパーの断面図である。図9A及び図9Bは、ドリッパー306が側部に斜め方向の穴を含みかつ包囲されたヘッドの下に出口穴を含む実施形態におけるドリッパー306の側面図(図9A)及び線A‐‐‐Aに沿った断面図(図9B)である(左側は図面では示されていない)。図9C及び9Dは、ドリッパー306がフィルター313を有する楕円形状の水入口(以下の図10Aも参照)を含む実施形態におけるドリッパー306の側面図(図9C)及び線B‐‐‐Bに沿った断面図(図9D)である。図9E及び図9Fは、ドリッパー306がフィルターなしの楕円形状の水入口を含む実施形態におけるドリッパー306の側面図(図9E)及び線C‐‐‐Cに沿った断面図(図9F)である(以下の図10Bも参照)。図9G及び図9Hは、ドリッパーの端と出口穴の間の距離が短いことを除いては図9A及び図9Bと同様の実施形態におけるドリッパー306の側面図(図9G)及び線D‐‐‐Dに沿った断面図(図9H)である。図9I及び図9Jは、ドリッパー306がカバーの下に斜め方向の穴を含むことを除いては図9C及び図9Dと同様の実施形態におけるドリッパー306の側面図(図9I)及び線E‐‐‐Eに沿った断面図(図9J)である。図9K及び図9Lは、外部形状が摩擦を減少させるために先細にされていることを除いては図9C及び図9Dと同様の実施形態におけるドリッパー306の側面図(図9K)及び線F‐‐‐Fに沿った断面図(図9L)である。
【0128】
図9A図9Lのドリッパーの透視図は、図17A図17Fに示されている。図17Aは、図9A及び図9Bに相当する。図17Cは、図9C及び図9Dに相当する。図17Fは、図9E及び図9Fに相当する。図17Bは、図9G及び図9Hに相当する。図17Eは、図91及び図9Jに相当する。図17Dは、図9K及び9Lに相当する。外部中空要素301のカバーは、図17A図17Fにおいて符号342で示されている。
【0129】
外部中空要素301と内部要素303の長さは、約20mm~約50mmであることができる。外部中空要素301の直径は、約1mm~約10mmであることができる。内部要素303の直径は、約0.5mm~約9.7mmであることができる。入口312及び出口314の寸法は、約0.5mm~約5mmであることができる。「バス(bath)」346の高さは、狭い空間310よりも約100ミクロン~約500ミクロン大きいことができる。狭い空間310の幅は、約50ミクロン~約400ミクロンであることができる。
【0130】
本明細書で記述されたドリッパー及びその構成要素は円筒形形状を有するが、それらは他の形状で製造されてもよいことは理解されるであろう。例えば、外部中空要素及び内部要素は楕円形、正方形、長方形、三角形、六角形、八角形などのいかなる形状であることもできる。
【0131】
代替的に又は追加的に、この実施形態によるドリッパーは、楕円形状の一つ又は複数の水入口を有することができる。
【0132】
代替的に又は追加的に、この実施形態によるドリッパーは、いかなる幾何学的形状(例えば、正方形、長方形、三角形、円形)の水入口を有することができる。
【0133】
図10Aを参照すると、そこには、本発明のある実施形態による楕円形状の水入口3121を有する組み立てられたドリッパー306の透視側面図が示されている。示されているように、水入口は、ドリッパーに対して直交して配置されている。
【0134】
図10Bを参照すると、そこには、本発明のある実施形態による楕円形状の水入口3121を有しかつフィルターを含む組み立てられたドリッパー306の透視側面図が示されている。楕円形状の水入口3121(又は複数のかかる水入口)は、様々な可能な形状(格子、断面又は長手方向の溝)のフィルター340を含む。示されているように、水入口3121は、ドリッパー306に対して直交して配置されている。
【0135】
図10A及び図10Bに示された垂直の楕円形状の水入口3121に加えて、ドリッパー306に対して垂直でない追加の入口がある。水の流れがドリッパー中の水の流れに対して略鈍角Θであるときに、これらの追加の入口を通して、水が入る。Θの典型的な値は、約110°~約155°、又は約120°~約145°、又は約130°~約145°であり、例えば約135°であることができるが、これらに限定されない。図10C及び図10Dは、本発明のある実施形態による、楕円形状の水入口3121、及び外部中空要素301の外部表面に対する法線に関して対角に配向された追加の水入口3122を有する組み立てられたドリッパーの断面図(図10C)及び透視断面図(図10D)を示す。
【0136】
入口は、水がドリッパーに入って乱流を形成するレベルに到達する。この乱流は、水侵入領域に粒子が蓄積するのを防止する。ドリッパー水侵入領域は、粒子が蓄積して、ドリッパーの部分的又は完全な封鎖を生じうる領域である。もし粒子がドリッパー306中に導入されたら、粒子は、ドリッパーの三次元形状及び滑らかさのために、蓄積せず、出口から外に出ることができる。水入口3122は、外部中空要素301の外部表面に対する法線に関して対角に配向されることができる。これは、ドリッパー入口に入る水の乱流を形成することができる。
図10E及び図10Fは、内部要素が一方の側のみから保持されている本発明の実施形態における組み立てられたドリッパーの透視図(図10E)及び断面図(図10F)を示す模式図である。
【0137】
上述のように、0.5バール~4バールの圧力で作動する点滴灌漑システムは、0.1バール未満の作動圧力を使用する大規模の商業的な畑には適用できないことが本発明者によって見出されている。本発明者は、潅漑パイプの長さに沿った水放出が20%より多く変動しないように、又は18%より多く変動しないように、又は16%より多く変動しないように、又は15%より多く変動しないように、又は13%より多く変動しないように、又は12%より多く変動しないように、又は10%より多く変動しないように選択されることができる傾斜度で傾斜された潅漑パイプを有する灌漑システムを発明した。
【0138】
図11は、本発明のある実施形態によって行なわれた実験で得られ、以下の表1に示されたデータのグラフである。このグラフは、約20,30,50,100及び150cmの入口ヘッド、1メートルあたり4個のドリッパー、約150mのパイプ長さ、及び約25mmのパイプ直径について、畑の傾斜度の関数としての、低放出のドリッパーに対する高放出のドリッパーの割合の差をプロットしたものである。
【0139】
【0140】
最後のドリッパーにおける圧力は、推定値に設定され、ドリッパー放出が計算された。隣りのドリッパーに対するヘッド損失、及び傾斜によるヘッド変化が計算され、そのドリッパーの入口における圧力が決定された。二つのドリッパーの放出は合計され、それ以降、パイプの開始点まで同様に行なわれた、Microsoft Excelの「goal seek」機能が、上述の表1に従って標的入口ヘッドを設定するために最後のドリッパーにおける圧力を変化させるために使用された。畑の傾斜度は、最大放出差を10%として、本発明の灌漑システムを効率的に作動させるための傾斜度を評価するために変動された。
【0141】
パイプの傾斜は、(傾斜度に応じて)端で高い圧力を生じ、従って高いドリッパー放出を生じることができる。パイプの端に向かう増大した放出は、パイプに沿った低い放出変動、及び効率における許容可能な均一性をもたらすことができる。
【0142】
フラッシ
全てのパイプは、その端で「収集」管によって接続されることができ、この「収集」管は、その端(ここでは図示されず)で弁に接続されることができる。弁は、灌漑中にシステムを洗浄するために周期的に(最短で2週間ごとに)5~20分間、開放されることができる。弁の開放は、パイプの内側に早い流量を作り出すことができ、これは、ドリッパーから蓄積された汚れを洗い落とすことができる。この手順は、特に、流量が通常低い低圧システム(2mまで)で良好に作動することができる。この弁は、手動で、又はタイマーで、又はいかなる灌漑制御方法を使用しても制御されることができる。フラッシの間のパイプ中の流量は、パイプの長さ(L)、直径(D)、及び滑らかさ(C)、入口ヘッド(H)、及び畑の傾斜度に依存し、以下の方程式Illで与えられるようにHazen-Williamsの方程式を使用して計算されることができる。
【0143】
図12Aは、本発明のある実施形態によって行なわれた実験で得られた、フラッシの前後の4個の異なるドリッパーの相対放出を示すグラフである。
【0144】
図12Bは、本発明のある実施形態によって行なわれた実験で得られた、約150mの長さ及び約25mmの直径を有するパイプ管についての、傾斜度及び入口圧力の関数としての、フラッシ中のパイプ管における水放出を示すグラフである。
【0145】
図12Aからわかるように、パイプのフラッシは、詰まったドリッパーの放出を、元の値にまで増大させた。
【0146】
パイプのフラッシは、高い放出を作り出し、水を浪費させることがあり得る。しかし、灌漑の終了/開始での短時間のパイプのフラッシは、浪費される水の量を最小限に抑えながら、ドリッパーを詰まっていない状態に維持することを可能にする。パイプを通る水の放出は、図12Bに示されている。図12Bは、約50cmの入口ヘッド及び約0.1%の傾斜度の場合、10分間のパイプのフラッシは、80リットルの水を浪費するが、この量は、地表灌漑と比べて極めて少量であることを示す。
【0147】
本発明による灌漑システムは、浸水灌漑のために使用されることができる既存の農業用水供給システムに接続されるように設計されることができる。
【0148】
畑の傾斜度は、パイプの圧力に、従ってドリッパーの長さに沿ったドリッパーの流れ放出に直接影響を与える設計変数として使用されることができる。パイプに沿った傾斜度は、パイプの長さ、ドリッパーの密度(管の長さ当たりの数)、及び入口での水ヘッドに依存して変動しうる。水がパイプ中を流れるにつれて、摩擦による流れに沿った圧力降下が生じることがあり、従って、ドリップ流れの変動が生じることがある。
【0149】
図13A図13Cは、本発明のある実施形態によって行なわれた実験で得られた、0°の傾斜度(図13A)、変動する傾斜度(図13B)、及び均一な流量を確実にするように選択された傾斜度(図13C)についての、管の長さの関数としての入口圧力のグラフである。
【0150】
図13Aに示されるように、傾斜なし(0°の傾斜度)の200mのパイプにおいて、圧力は、パイプの開始点での0.5mからその端での0.16mにまで減少した。この圧力差は、流量における67%の差を示す。ドリッパーに沿った流れにおけるヘッド損失は、上述のように、Darcy-Weisbachの方程式によって計算されることができる。
【0151】
浸水によって通常灌漑される畑は、約0.05%~約1%の小さい傾斜度を有することができる。従って、従来の点滴灌漑システム(そこでは、作動圧力は、約10~14mの高さである)では、傾斜は有意な影響を有さない。なぜなら、高さの差は、作動圧力に比べて無視できるからである。
【0152】
本発明のシステムでは、作動圧力はゼロに近くすることができるので、パイプの長さに沿った小さな高さの差も、パイプの圧力及びドリッパーの流量に対して実質的な影響を与えることがあり得る。傾斜330、S(l)は、圧力損失を補償するためにパイプに沿って変動することができる。
【0153】
パイプ304に沿ったいかなる点での傾斜度lは、数学的には、傾斜度関数S(l)として表わされることができる。傾斜度関数は、シャベル器具(レーザーで案内される整地システムなどが例示されるが、これに限定されない)のコントローラーへ入力されて、変動する傾斜を土壌に形成することができ、ドリッパー306を有する傾斜された潅漑パイプ304は、変動する傾斜にほぼ沿って配置されることができる。
【0154】
この実施形態のために好適な代表的な傾斜度関数は、以下のものである。
式中、Kは、無次元の定数である。通常、Kは、約0.1~約0.5又は約0.1~約0.3である。Lは、潅漑パイプ304の長さである。fは、摩擦係数である。qは、長さあたりの潅漑パイプ304の流量である。gは、重力加速度である。Dは、潅漑パイプ304の水力直径である。lは、潅漑パイプ304の最も高い高さからの潅漑パイプ304に沿った距離である。
【0155】
この実施形態のために好適な別の代表的な傾斜度関数は、以下のものである。
式中、cは、パイプの材料の滑らかさ係数である。G,α,β,γ,δ及びεは、定数パラメーターである。Gについての通常の値は、約9~約11である。α,β,γのいずれかについての通常の値は、約1.2~約2.2である。δについての通常の値は、約4~約5.5である。本発明のある実施形態では、α,β,γのうちの少なくとも二つ、より好ましくはα,β,γの全てが同じ値を有する。
【0156】
圧力損失は、パイプの開始点で大きく、パイプに沿って徐々に減少するので、パイプの開始点で急勾配の傾斜があることができ、パイプの長さに沿ってより穏やかになることができる。本発明のある実施形態では、傾斜度Sは、複数のドリッパー306の間の距離にも基づいて選択される。流量も複数のドリッパー306の間の距離によって影響を受けることがありうる。なぜなら、各ドリッパーは、パイプを通して流れる水の体積を減少させることができるからである。
【0157】
パイプの開始点で、水は、最大の流量で流れる。そして、水が距離xだけ流れて最初のドリッパーに到達したとき、流量は、ドリッパー中の流量などに従って徐々に減少する。パイプの最後の位置(最後のドリッパーまでの)では、パイプ中の流量は、最後のドリッパー中の流量と等しい。
【0158】
図13B及び図13Cにおいて、傾斜度は、パイプに沿ったドリップ流れが略均一であるように決定される。図13Bは、図13Cに示される傾斜度によって均一な流れが達成されることができることを示す。
【0159】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0160】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0161】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0162】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0163】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0164】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0165】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0166】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0167】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0168】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0169】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0170】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A-5C】
図6
図7A-7B】
図8A-8B】
図9A-9B】
図9C-9D】
図9E-9F】
図9G-9H】
図9I-9J】
図9K-9L】
図10A-10D】
図10E-10F】
図11
図12A-12B】
図13A-13C】
図14
図15A-15B】
図16A-16B】
図17A-17F】