(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法
(51)【国際特許分類】
B63H 21/14 20060101AFI20220329BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20220329BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20220329BHJP
F17C 9/04 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
B63H21/14
B63B25/16 Z
B63B25/16 D
B63H21/38 C
F17C9/04
(21)【出願番号】P 2019517430
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2017010597
(87)【国際公開番号】W WO2018066860
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】10-2016-0128367
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0128368
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】デウ シップビルディング アンド マリン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン キュ
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0115232(KR,A)
【文献】特開2013-180625(JP,A)
【文献】特開2004-082866(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0005344(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0123967(KR,A)
【文献】特開2016-128303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/14
B63B 25/16
B63H 21/38
F17C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを気化させてエンジンに供給する気化器;
前記エンジンを冷却した後に排出された冷却水と前記気化器で熱媒として使用される流体を熱交換させ、前記気化器で使用される前記流体を加熱する第1加熱器
;
前記エンジンから排出された後に前記第1加熱器を通過した冷却水が有する熱源の一部又は全部を利用して、海水を加熱して清水を得る造水機;
及び
前記造水機から排出されて前記エンジンに供給される冷却水を加熱する第2加熱器を備え、
前記気化器は、前記第1加熱器によって加熱された前記流体と前記液化天然ガスとを熱交換させて前記液化天然ガスを気化させ
て、
前記エンジンを運転しない場合に、第2加熱器が前記エンジンの低温腐食を防止する所定温度以上まで冷却水を加熱することを特徴とする、船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項2】
冷却水が膨張又は収縮しながら発生した体積変化を吸収する膨張タンクを備えることを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項3】
前記エンジンはエンジンルームに配置され、
前記膨張タンクは、前記エンジンルームより20m~25m上方に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項4】
前記第1加熱器は前記膨張タンクより高い位置に配置されることを特徴とする、請求項2に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項5】
前記エンジンから排出された冷却水は二つの流れに分岐し、一方は前記第1加熱器に送られ、他方は前記第1加熱器を迂回し、
前記第1加熱器を迂回した冷却水と前記第1加熱器を通過した冷却水とが合流する地点に設置される第1三方バルブをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項6】
前記第1三方バルブは前記膨張タンクよりも低い位置に設置されることを特徴とする、請求項
5に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項7】
前記エンジンから排出された後に前記第1加熱器及び前記造水機を通過した冷却水の温度を下げる冷却器をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項8】
前記冷却器から排出された冷却水が前記エンジンに供給されるライン上に設置されて、冷却水の温度を調節する第3温度調節センサーをさらに備え、
前記第3温度調節センサーの設定値は前記エンジンの負荷が高くなるほど低くなることを特徴とする、請求項
7に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項9】
冷却水が前記エンジンを冷却しながら得た熱源は前記第1加熱器で最優先的に使用され、
残りは前記造水機で使用され、
前記造水機で使用されても残った熱源は前記冷却器によって冷却されることを特徴とする、請求項
7に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項10】
前記エンジンを冷却するために使用された冷却水のうち、前記第1加熱器に送られなかった残りの冷却水を貯蔵する貯蔵タンクをさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項11】
前記貯蔵タンクから排出された冷却水を前記膨張タンクに供給するライン上に設置される第1加圧手段をさらに備え、
前記第1加圧手段は、前記貯蔵タンクの水位が所定高さ以上になる、又は膨張タンクの水位が所定高さ以下になると作動することを特徴とする、請求項1
0に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項12】
前記造水機から排出された冷却水を加圧して前記エンジンに供給する第2加圧手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項13】
前記第2加圧手段が停止した場合、前記エンジンから前記第1加熱器に供給される冷却水の逆流を防止する第1バルブをさらに備えることを特徴とする、請求項1
2に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項14】
前記気化器、前記第1加熱器、前記造水機、及び前記第2加圧手段は、直列に連結されて、第2加圧手段のみによって冷却水が循環することを特徴とする、請求項1
2に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項15】
前記エンジンから排出された冷却水が前記第1加熱器に供給されるライン上に設置される第3加圧手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか1項に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項16】
前記造水機の負荷は、
B=(y-x)A/z(前記エンジンの負荷をA、前記気化器で使用される前記流体に伝達される最大熱量をx、前記造水機の負荷をB、前記エンジンを冷却しながら冷却水が得る最大熱量をy、前記造水機の負荷が100%のときに要求される熱量をzとしたとき)であることを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか1項に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項17】
前記エンジンから前記第1加熱器に冷却水が供給されるライン上に設置されて冷却水の温度を一定に調節する第1温度調節センサー;又は
前記造水機から排出された冷却水が前記エンジンに供給されるライン上に設置されて冷却水の温度を調節する第2温度調節センサー;のいずれか一方又は両方をさらに備え、
前記第2温度調節センサーの設定値は前記エンジンの負荷が高くなるほど低くなることを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか1項に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項18】
前記エンジンから排出された後に前記第1加熱器を通過した冷却水が前記造水機に送られるライン上に設置され、冷却水に含まれる空気を除去する空気分離器をさらに備えることを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか1項に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項19】
前記造水機から前記エンジンに送られる冷却水に含まれる空気を排出させる空気排出タンクをさらに備えることを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか1項に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項20】
冷却水が流れる配管の一部又は全部が断熱処理されたことを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか1項に記載の船舶用燃料ガス供給システム。
【請求項21】
1)エンジンを冷却した後に排出された冷却水と熱媒として使用される流体とを熱交換させて前記流体を第1加熱器で加熱するステップ;
2)前記1)のステップで熱交換されて加熱された前記流体と液化天然ガスとを熱交換させて液化天然ガスを気化させるステップ;
3)前記2)のステップで気化された天然ガスを前記エンジンに供給するステップ
;
4)前記1)のステップで前記流体を熱交換するために使用された冷却水の熱源の一部又は全部を利用し、造水機によって海水を加熱して清水を得るステップ;
及び
5)前記4)のステップにおいて前記造水機で使用された冷却水を加熱するステップ;を備え
、
前記5)のステップは、前記エンジンが運転しない場合、前記エンジンの低温腐食を防止する所定温度以上まで冷却水を加熱することを特徴とする、船舶用燃料ガス供給方法。
【請求項22】
1)エンジンを冷却した後に排出された冷却水と熱媒として使用される流体とを熱交換させて前記流体を第1加熱器で加熱するステップ;
2)前記1)のステップで熱交換されて加熱された前記流体と液化天然ガスとを熱交換させて液化天然ガスを気化させるステップ;
3)前記2)のステップで気化された天然ガスを前記エンジンに供給するステップ;
4)前記1)のステップで前記流体を熱交換するために使用された冷却水の熱源の一部又は全部を利用し、造水機によって海水を加熱して清水を得るステップ;及び
5)前記4)のステップにおいて前記造水機で使用された冷却水を加熱するステップ;を備え、
前記5)のステップは、前記4)のステップにおいて、前記造水機を100%稼働すると冷却水の温度が前記エンジンの低温腐食を防止する温度よりも低下する場合、前記造水機を100%稼動した後に前記エンジンの低温腐食を防止する所定温度以上まで冷却水を加熱することを特徴とする
、船舶用燃料ガス供給方法。
【請求項23】
6)前記造水機から排出された冷却水を第2加圧手段で加圧して前記エンジンに供給するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項2
1または請求項22に記載の船舶用燃料ガス供給方法。
【請求項24】
前記エンジンから排出された冷却水は二つの流れに分岐し、一方は前記第1加熱器に送られ、他方は前記第1加熱器を迂回し、
前記第1加熱器を迂回した冷却水と前記第1加熱器を通過した冷却水とが合流する地点に第1三方バルブを設置することを特徴とする、請求項2
3に記載の船舶用燃料ガス供給方法。
【請求項25】
前記第2加圧手段が停止した場合、前記第1三方バルブにおいて、前記第1加熱器方向のバルブは閉じ、その他のバルブは開いた状態を維持することを特徴とする、請求項2
4に記載の船舶用燃料ガス供給方法。
【請求項26】
前記第2加圧手段が停止した場合、第1三方バルブにおいて前記第1加熱器方向のバルブを制御盤によって自動的に閉じるようにアルゴリズムが構成されていることを特徴とする、請求項2
5に記載の船舶用燃料ガス供給方法。
【請求項27】
エンジンの負荷をA、気化器で熱媒として使用される流体に伝達される最大熱量をx、造水機の負荷をB、前記エンジンを冷却しながら冷却水が得る最大熱量をy、前記造水機の負荷が100%であるときに要求される熱量をzとしたとき、Ax+Bz=Ayの式により、前記エンジンを冷却しながら冷却水が得た熱量を前記気化器と前記造水機とに分配することを特徴とする、船舶用燃料ガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却水が有する熱量を活用して船舶用エンジンに燃料ガスを供給するシステム及び船舶用燃料ガス供給方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガスは、メタン(methane)を主成分とする天然ガスを約-163℃まで冷却し液化させることで得られる無色透明の液体であり、体積が天然ガスに比べて約1/600になる。したがって、天然ガスを液化して移送した場合、非常に効率的な移送が可能になる。一般的に、天然ガスを液化させて液化天然ガスの形態で貯蔵タンクに貯蔵した後、船舶で液化天然ガスを運ぶことになる。
【0003】
一方、船舶に使用されるエンジンのうち、天然ガスを燃料として使用するエンジンには、DFDE、ME-GIエンジン、X-DFエンジンなどのガス燃料エンジンがある。DFDEは、発電用に使用される、4ストローク機関である。比較的低圧である6.5bar程度の圧力を有する天然ガスを燃焼空気入口に注入して、ピストンが上昇しながら圧縮するオットーサイクル(Otto Cycle)を採用している。ME-GIエンジンは、推進用に使用される、2ストローク機関である。300bar付近の高圧天然ガスをピストンの上死点付近で燃焼室に直接噴射するディーゼルサイクル(Diesel Cycle)を採用している。X-DFエンジンは、推進用に使用される、2ストローク機関である。16bar程度の中圧天然ガスを燃料で使用し、オットーサイクルを採用している。
【0004】
天然ガスを燃料として使用するエンジンに供給するためには、貯蔵タンクに貯蔵された液化天然ガスを気化させた後でエンジンに供給することもあり、液化天然ガスを気化させるためには熱源が必要である。液化天然ガスを気化させるための熱源として、エンジン冷却水を使用する技術が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、エンジンを冷却した後の冷却水は所定温度になるように制御し、一例としてME-GIエンジンを冷却した後の冷却水は約85℃になるように制御する。ここで、エンジンの負荷が高いほどエンジンで発生する熱量が多いため、冷却水はより多くの熱量を冷却する必要がある反面、エンジンの負荷が低い場合にはエンジンから発生する熱量が少なくなるため、冷却水はより少量の熱だけを冷却すれば良い。また、エンジンの低温腐食の虞があるため、エンジンを所定温度よりも低い温度までには冷却しないので、エンジンの負荷が少なくなるほど冷却水から得られる熱量は少なくなる。
【0006】
本発明は、エンジンの負荷に応じて変動する冷却水の熱源を適切に分配するために各種装置を効率的に配置した船舶用燃料ガス供給システム、及び冷却水の熱源を適切に分配する船舶用燃料ガス供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、液化天然ガスを気化させてエンジンに供給する気化器;前記エンジンを冷却した後に排出された冷却水と前記気化器で熱媒として使用される流体を熱交換させ、前記気化器で使用される前記流体を加熱する第1加熱器;前記エンジンから排出された後に前記第1加熱器を通過した冷却水が有する熱源の一部又は全部を利用して、海水を加熱して清水を得る造水機;及び前記造水機から排出されて前記エンジンに供給される冷却水を加熱する第2加熱器を備え、前記気化器は、前記第1加熱器によって加熱された前記流体と前記液化天然ガスとを熱交換させて前記液化天然ガスを気化させて、前記エンジンを運転しない場合に、第2加熱器が前記エンジンの低温腐食を防止する所定温度以上まで冷却水を加熱することを特徴とする、船舶用燃料ガス供給システムが提供される。
【0008】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、冷却水が膨張又は収縮しながら発生した体積変化を吸収する膨張タンクを備えることができる。
【0009】
好ましくは、前記エンジンはエンジンルームに配置され、前記膨張タンクは前記エンジンルームより20m~25m上方に配置することができる。
【0010】
好ましくは、前記第1加熱器は膨張タンクより高い位置に配置される。
【0012】
好ましくは、前記エンジンから排出された冷却水は二つの流れに分岐し、一方は前記第1加熱器に送られ、他方は前記第1加熱器を迂回し、前記第1加熱器を迂回した冷却水と前記第1加熱器を通過した冷却水とが合流する地点に設置される第1三方バルブを前記船舶用燃料ガス供給システムはさらに備えることができる。
【0013】
好ましくは、前記第1三方バルブは膨張タンクよりも低い位置に設置することができる。
【0014】
前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記エンジンから排出された後に前記第1加熱器及び前記造水機を通過した冷却水の温度を下げる冷却器をさらに備えることができる。
【0015】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記冷却器から排出された冷却水が前記エンジンに供給されるライン上に設置されて冷却水の温度を調節する第3温度調節センサーをさらに備えることができ、前記第3温度調節センサーの設定値は前記エンジンの負荷が高いほど低くなる。
【0016】
好ましくは、冷却水が前記エンジンを冷却しながら得た熱源は前記第1加熱器で最優先的に使用され、残りは前記造水機で使用され、前記造水機で使用されても残った熱源は前記冷却器によって冷却される。
【0017】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記エンジンを冷却するために使用された冷却水のうち、前記第1加熱器に送られなかった残りの冷却水を貯蔵する貯蔵タンクをさらに備えることができる。
【0018】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記貯蔵タンクから排出された冷却水を前記膨張タンクに供給するライン上に設置される第1加圧手段をさらに備えることができ、前記第1加圧手段は、前記貯蔵タンクの水位が所定高さ以上になる、又は膨張タンクの水位が所定高さ以下になると作動する。
【0019】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記造水機から排出された冷却水を加圧して前記エンジンに供給する第2加圧手段をさらに備えることができる。
【0020】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記第2加圧手段が停止した場合、前記エンジンから前記第1加熱器に供給される冷却水の逆流を防止する第1バルブをさらに備えることができる。
【0021】
好ましくは、前記気化器、前記第1加熱器、前記造水機、及び前記第2加圧手段は直列に連結されて、第2加圧手段のみによって冷却水の循環が可能にする。
【0022】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記エンジンから排出された冷却水が前記第1加熱器に供給されるライン上に設置される第3加圧手段をさらに備えることができる。
【0023】
好ましくは、前記造水機の負荷は、前記エンジンの負荷をA、前記気化器で使用される前記流体に伝達される最大熱量をx、前記造水機の負荷をB、前記エンジンを冷却しながら冷却水が得る最大の熱量をy、前記造水機の負荷が100%のときに要求される熱量をzとしたとき、B=(y-x)A/zで表すことができる。
【0024】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記エンジンから前記第1加熱器に冷却水が供給されるライン上に設置されて冷却水の温度を一定に調節する第1温度調節センサー;又は前記造水機から排出された冷却水が前記エンジンに供給されるライン上に設置されて冷却水の温度を調節する第2温度調節センサー;のいずれか一方又は両方をさらに備えることができ、前記第2温度調節センサーの設定値は前記エンジンの負荷が高くなるほど低くなる。
【0025】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記エンジンから排出された後に前記第1加熱器を通過した冷却水が前記造水機に送られるライン上に設置され、冷却水に含まれる空気を除去する空気分離器をさらに備えることができる。
【0026】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給システムは、前記造水機から前記エンジンに送られる冷却水に含まれる空気を排出させる空気排出タンクをさらに備えることができる。
【0027】
好ましくは、冷却水が流れる配管の一部又は全部は断熱処理されたものとすることができる。
【0028】
上述した目的を達成するために、本発明の別の実施形態では、1)エンジンを冷却した後に排出された冷却水と熱媒として使用される流体とを熱交換させて熱媒を第1加熱器によって加熱するステップ;2)前記1)のステップで熱交換されて加熱された前記流体と液化天然ガスとを熱交換させて液化天然ガスを気化させるステップ;3)前記2)のステップで気化された天然ガスを前記エンジンに供給するステップ;4)前記1)のステップで前記流体を熱交換するために使用された冷却水の熱源の一部又は全部を利用して、造水機によって海水を加熱して清水を得るステップ;及び5)前記4)のステップにおいて前記造水機で使用された冷却水を加熱するステップ;を備え、前記5)のステップは、前記エンジンが運転しない場合、前記エンジンの低温腐食を防止する所定温度以上まで冷却水を加熱することを特徴とする、船舶用燃料ガス供給方法が提供される。
【0031】
また、上述した目的を達成するために、本発明の別の実施形態では、1)エンジンを冷却した後に排出された冷却水と熱媒として使用される流体とを熱交換させて熱媒を第1加熱器によって加熱するステップ;2)前記1)のステップで熱交換されて加熱された前記流体と液化天然ガスとを熱交換させて液化天然ガスを気化させるステップ;3)前記2)のステップで気化された天然ガスを前記エンジンに供給するステップ;4)前記1)のステップで前記流体を熱交換するために使用された冷却水の熱源の一部又は全部を利用して、造水機によって海水を加熱して清水を得るステップ;及び5)前記4)のステップにおいて前記造水機で使用された冷却水を加熱するステップ;を備え、前記5)のステップは、前記4)のステップにおいて、前記造水機を100%稼働すると冷却水の温度が前記エンジンの低温腐食を防止する温度よりも低下する場合、前記造水機を100%稼動させた後に前記エンジンの低温腐食を防止する所定温度以上まで冷却水を加熱することを特徴とする、船舶用燃料ガス供給方法が提供される。
【0032】
好ましくは、前記船舶用燃料ガス供給方法は、6)前記造水機から排出された冷却水を第2加圧手段で加圧して前記エンジンに供給するステップをさらに備えることができる
【0033】
好ましくは、前記エンジンから排出された冷却水は二つの流れに分岐して、一方は前記第1加熱器に送られ、他方は前記第1加熱器を迂回し、前記第1加熱器を迂回した冷却水と前記第1加熱器通過した冷却水とが合流する地点に第1三方バルブを設置することができる。
【0034】
好ましくは、前記第2加圧手段が停止する場合、前記第1三方バルブにおいて、前記第1加熱器方向のバルブは閉じ、他のバルブは開いた状態に維持する。
【0035】
好ましくは、前記第2加圧手段が停止した場合、第1三方バルブにおいて前記第1加熱器方向のバルブを制御盤によって自動的に閉じるようにアルゴリズムが構成されている。
【0037】
上述した目的を達成するために、本発明のさらにまた別の一実施形態では、エンジンの負荷をA、気化器で熱媒として使用される流体に伝達される最大熱量をx、造水機の負荷をB、前記エンジンを冷却しながら冷却水が得る最大熱量をy、前記造水機の負荷が100%のときに要求される熱量をzとしたとき、Ax+Bz=Ayの式により、前記エンジンを冷却しながら冷却水が得た熱量を前記気化器と前記造水機とに分配することを特徴とする、船舶用燃料ガス供給方法が提供される。
【発明の効果】
【0038】
本発明の船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法は、エンジンの負荷と造水機の負荷の相関関係を表す数式に基づいて、造水機の負荷を調節し、エンジンを冷却しながら冷却水が得た熱量を気化器と造水機に適切とに分配することができる。
【0039】
本発明の船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法は、第1加熱器及び気化器を備えるため、冷却器の容量が減少し、冷却器の駆動に必要なエネルギーを低減させることができる。
【0040】
本発明の船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法は、余剰の冷却水を貯蔵タンクに貯蔵して再使用するため、化学処理が必要な冷却水の消耗を最小限に抑えることができる。
【0041】
本発明の船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法は、冷却水が循環するライン上に設置される装置を直列に連結し、追加の加圧手段を設置しなくても第2加圧手段の圧力のみで冷却水を循環させることができる。
【0042】
本発明の船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法は、エンジンの負荷が低い場合でも、造水機を100%で稼動させた後、第2加熱器によって冷却水をエンジンの低温腐食を防止できる所定温度まで加熱すれば良いので、システムのより柔軟な運用が可能になる。
【0043】
本発明の船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法では、第1加熱器を膨張タンクより上方に設置することができ、第2加圧手段が停止した場合の弊害に備えることができる。
【0044】
また、本発明の船舶用燃料ガス供給システム及び船舶用燃料ガス供給方法では、制御盤による各装置の自動的で効率的な制御が可能であり、特に、第2加圧手段が故障した場合の弊害に備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る船舶用燃料ガス供給システムの概略図。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る船舶用燃料ガス供給システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態の構成と作用を詳細に説明する。下記の実施形態は、様々な形態に変更と修正が可能であり、本発明の範囲は下記の実施形態によって限定されない。
【0047】
図1は、本発明の第1実施形態に係る船舶用燃料ガス供給システムの概略図である。
【0048】
図1を参照して、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1加熱器(110)、気化器(180)、及び造水機(120)を備える。
【0049】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムによって燃料を供給されるエンジン(E)には、天然ガスを燃料として使用するME-GIエンジン、X-DFエンジン、DFのエンジンなどがあり、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、ガスタービンなどの天然ガスを燃料として使用する他の燃焼装置にも応用することができる。ただし、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、主推進エンジンとして使用されるME-GIエンジンに適用することが好ましい。エンジン(E)はエンジンルームに配置される。
【0050】
第1加熱器(110)は、エンジン(E)を冷却した後に排出された冷却水(L10ライン)と気化器(180)で熱媒として使用される流体(L3ライン)とを熱交換する。すなわち、第1加熱器(110)は、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得た熱源の一部を、気化器(180)で熱媒として使用される流体(L3ライン)に供給し、気化器(180)で熱媒として使用される流体(L3ライン)を加熱する。
【0051】
エンジン(E)から第1加熱器(110)に冷却水が供給されるライン(L10)上には、エンジン(E)から排出されて第1加熱器(110)に供給される冷却水の温度を調節する第1温度調節センサー(210)が設置されている。第1温度調節センサー(210)は、エンジン(E)から排出された冷却水の温度を約85℃に調節する。
【0052】
本実形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、エンジン(E)から排出された冷却水の温度を約85℃で一定に調節する。エンジン(E)の負荷が高くなるほどエンジン(E)で発生する熱が多くなるので、エンジン(E)の負荷に応じてエンジン(E)に供給される冷却水の温度を変化させる。また、エンジン(E)の負荷が低くなるほど、エンジン(E)の低温腐食を防止するために、エンジン(E)に供給される冷却水の温度を高くする。
【0053】
気化器(180)は、第1加熱器(110)によって加熱された熱媒(L4ライン)と液化天然ガスとを熱交換させ、液化天然ガスを気化させる。すなわち、気化器(180)は、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得た熱源の一部を、熱媒を媒介にして、液化天然ガスを気化させるために使用する。気化器(180)によって気化された天然ガス(L1ライン)はエンジン(E)に供給されて燃料として使用される。気化器(180)で熱媒として使用される流体には、グリコールウォーター(Glycol Water)などがある。
【0054】
造水機(120)は、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)が有する熱源の一部又は全部を利用して、海水を加熱して清水を得る。
【0055】
エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得る熱量は、エンジン(E)の負荷に比例する。エンジン(E)の負荷が高いほど要求される燃料量が増加するので、気化器(180)が気化させる液化天然ガスの量はエンジン(E)の負荷が高いほど増加し、最終的には第1加熱器(110)により気化器(180)で熱媒として使用される流体に伝達される熱量もエンジン(E)の負荷と比例することになる。
【0056】
したがって、エンジン(E)の負荷をA、気化器(180)で熱媒として使用される流体に伝達される最大熱量をx、造水機(120)の負荷をB、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得る最大熱量をy、造水機(120)の負荷が100%であるときに要求される熱量をzとしたとき、次の等式が成立する。
【0057】
Ax+Bz=Ay
【0058】
したがって、造水機(120)の負荷は、B=(y-x)A/zで表され、この式に基づいて造水機(120)の負荷を調節し、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得た熱量を気化器(180)と造水機(120)とに適切に分配することができる。
【0059】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、冷却水がエンジン(E)を冷却しながら得た熱源は、第1加熱器(110)で優先的に使用され、残りが造水機(120)で使用される。
【0060】
エンジン(E)から排出された冷却水(L10ライン)は二つの流れに分岐し、一方(L10ライン)は第1加熱器(110)に送られ、他方(L12ライン)は第1加熱器(110)を迂回する。第1加熱器(110)を迂回した冷却水(L12ライン)と第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)とは合流して造水機(120)に送られ、第1加熱器(110)を迂回した冷却水(L12ライン)と第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)とが合流する地点に、第1三方バルブ(810)が設置されている。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1三方バルブ(810)の開度を調節して、第1加熱器(110)に送る冷却水の量を調節し、最終的には冷却水から第1加熱器(110)に伝達される熱量を調節することができる。
【0061】
第1加熱器(110)から気化器(180)に熱媒が送られるライン(L4)上には温度センサー(図示せず)を設置することができ、L4ライン上に設置された温度センサーが感知した温度値に基づいて第1三方バルブ(810)の開度を調節することができる。L4ラインに沿って供給される熱媒の温度は、気化器(180)で気化させる液化天然ガスの量が多いほど高くなるので、L4ラインに沿って供給される熱媒の温度を調節すれば気化される液化天然ガスの量を調節することができ、第1三方バルブ(810)によって第1加熱器(110)に送られる冷却水の量を調節し、L4ラインに沿って供給される熱媒の温度を調節する。
【0062】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、L4ラインを流れる熱媒の温度が一定に維持されるように運用することもできる。気化器(180)で液化天然ガスを気化させるための熱媒として使用された後に排出された流体(L3ライン)は温度が低くなるので、L3ラインに沿って第1加熱器(110)に供給された流体を設定温度まで加熱するために第1三方バルブ(810)の開度を調節する。
【0063】
第1加熱器(110)から気化器(180)に熱媒が送られるライン(L4)上には流体の流量と開閉を調節する第2バルブ(720)が設置されている。
【0064】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)を通過した冷却水が造水機(120)に送られるライン(L20)上に設置される空気分離器(330)をさらに備えている。空気分離器(330)は、第1加熱器(110)から造水機(120)に供給される冷却水に含まれる空気を除去して、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムに備えられた各種装置の故障を防止する。
【0065】
一方、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)は二つの流れに分岐して、一方(L20ライン)は造水機(120)に送られ、他方(L22ライン)は造水機(120)を迂回する。造水機(120)を迂回した冷却水(L22ライン)と造水機(120)を通過した冷却水(L30ライン)とは合流して再エンジン(E)に送られ、造水機(120)を迂回した冷却水(L22ライン)と造水機(120)を通過した冷却水(L30ライン)とが合流する地点に第2三方バルブ(820)が設置されている。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第2三方バルブ(820)の開度を調節して、造水機(120)に送られる冷却水の量を調節し、最終的には冷却水から造水機(120)に伝達される熱量を調節する。
【0066】
造水機(120)から排出された冷却水がエンジン(E)に供給されるライン(L30)上に、冷却水の温度を調節する第2温度調節センサー(220)が設置されている。第2温度調節センサー(220)の設定値はエンジン(E)の負荷が高いほど低くなる。
【0067】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)と造水機(120)とを通過した冷却水の温度を下げる冷却器(130)をさらに備えている。冷却器(130)は、エンジン(E)を冷却しながら熱量を得た冷却水が、第1加熱器(110)及び造水機(120)に熱量の一部を供給した後でも温度が十分に低くならない場合、冷却水がエンジン(E)に要求される温度まで冷却されるように冷却水の温度を下げる。
【0068】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、造水機(120)から排出された冷却水(L30ライン)は二つの流れに分岐して、一方(L30ライン)は冷却器(130)に送られ、他方(L32ライン)は冷却器(130)を迂回する。冷却器(130)を迂回した冷却水(L32ライン)と冷却器(130)を通過した冷却水(L40ライン)とは合流してエンジン(E)に送られ、冷却器(130)を迂回した冷却水(L32ライン)と冷却器(130)を通過した冷却水(L40ライン)とが合流する地点に、第3三方バルブ(830)が設置されている。第3三方バルブ(830)の開度を調節して、冷却器(130)に送られる冷却水の量を調節し、最終的には冷却器(130)によって冷却水が冷却される度合いを調節する。
【0069】
従来、冷却水の熱源を液化天然ガスの加熱に使用せず、冷却水を冷却器(130)によって冷却した後にエンジン(E)に供給していたが、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1加熱器(110)及び気化器(180)を備えて、冷却水の熱源を液化天然ガスの加熱に使用した後、必要な場合にのみ冷却器(130)によって冷却するため、冷却器(130)の容量が減少し、冷却器(130)の駆動に必要なエネルギーを低減させることができる。
【0070】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、冷却水がエンジン(E)を冷却しながら得た熱源は第1加熱器(110)で優先的に使用され、残りは造水機(120)で使用され、造水機(120)で使用されても残った熱源は冷却器(130)で冷却される。
【0071】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、冷却器(130)から排出された冷却水がエンジン(E)に供給されるライン(L40)上に、冷却水の温度を調節する第3温度調節センサー(230)が設置されている。第3温度調節センサー(230)の設定値はエンジン(E)の負荷が高いほど低くなる。
【0072】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、貯蔵タンク(160)、膨張タンク(170)、又は空気排出タンク(140)の少なくともいずれか一つ以上をさらに備えることができる。
【0073】
貯蔵タンク(160)は、エンジン(E)の冷却に使用された冷却水のうち、第1加熱器(110)に送られなかった残りの冷却水を貯蔵する。貯蔵タンク(160)に貯蔵された冷却水の一部は膨張タンク(170)に送ることができる(L50ライン)。余剰の冷却水は、貯蔵タンク(160)に貯蔵して再使用することができるため、化学処理が必要な冷却水の消耗を最小限に抑えることができる。
【0074】
膨張タンク(170)は、冷却水が膨張又は収縮しながら発生した体積変化を吸収してシステムの安定性を高め、冷却水の循環に必要な圧力を加える役割をする。膨張タンク(170)には、貯蔵タンク(160)からの冷却水に加え、空気排出タンク(140)から排出される空気が供給される。膨張タンク(170)の内部の圧力が高すぎる場合には、ガス排出ライン(L2)に沿って膨張タンク(170)の内部ガスが排出される。
【0075】
このような膨張タンク(170)は、エンジン(E)が配置されたエンジンルームより約20m~25m上方に配置することができる。膨張タンク(170)の高さが25mを超える場合、エンジン(E)に供給される冷却水の圧力が要求圧力を超えてしまう。エンジン(E)で要求される冷却水の温度に応じて膨張タンク(170)の高さは異なる。また、冷却水の圧力が低くなると気泡が発生することもあり、冷却水の温度に応じて気泡が発生する圧力が異なるので、エンジン(E)で要求される冷却水の温度に応じて冷却水に気泡が発生しない程度の圧力になるように膨張タンク(170)の高さを決定する。
【0076】
空気排出タンク(140)は、造水機(120)からエンジン(E)に送られる冷却水に含まれる空気を膨張タンク(170)に排出し、冷却水の温度変化に応じて急変する冷却水の体積変化による影響を緩和する役割をする。造水機(120)からエンジン(E)に送られる冷却水は、空気排出タンク(140)で一時的に貯蔵されてエンジン(E)に送られる。
【0077】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、貯蔵タンク(160)から排出された冷却水を膨張タンク(170)に供給するためのライン(L50)上に設置される第1加圧手段(410)をさらに備えることができる。
【0078】
第1加圧手段(410)は、貯蔵タンク(160)の水位を調節する第1水位調節装置(310)と膨張タンク(170)の水位を調節する第2水位調節装置(320)と連携して動作することができる。すなわち、第1加圧手段(410)は、貯蔵タンク(160)の水位が所定の高さ以上になる、又は膨張タンク(170)の水位が所定の高さ以下になると作動して、貯蔵タンク(160)の内部の冷却水を膨張タンク(170)に送る。
【0079】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、造水機(120)から排出された冷却水を加圧してエンジン(E)に供給する第2加圧手段(420)、又はエンジン(E)から第1加熱器(110)に冷却水が供給されるライン(L10)上に設置されて冷却水の逆流を防止する第1バルブ(710)のいずれか一方又は両方をさらに備えることができる。
【0080】
第2加圧手段(420)は、複数個を並列に連結したものとすることができる。第2加圧手段(420)は、冷却水を約3barまで加圧することができ、冷却水を循環させるための圧力とエンジン(E)で必要な圧力との両方を満足させるように、冷却水を加圧する。
【0081】
第2加圧手段(420)を備える場合、追加の加圧手段を設置しなくても、第2加圧手段(420)の圧力のみで冷却水が循環されるように、エンジン(E)から排出された冷却水が再びエンジン(E)に供給される循環ライン上に設置される装置は直列に連結することが好ましい。
【0082】
第1バルブ(710)は、第2加圧手段(420)が停止した場合、エンジン(E)から第1加熱器(110)に供給される冷却水の圧力が低くなって逆流することを防止する。
【0083】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、造水機(120)から排出されてエンジン(E)に供給される冷却水を加熱する第2加熱器(150)をさらに備えることができる。第2加熱器(150)は、スチームと冷却水とを熱交換させて冷却水を加熱する。スチームを供給するライン上には第3バルブ(730)を設置することができ、第3バルブ(730)の開度を調節してスチームの量を調節し、最終的には冷却水を加熱する度合いを調節する。
【0084】
また、第2加熱器(150)は、船舶が停泊してエンジン(E)が運転しない場合、エンジン(E)の低温腐食を防止するために、冷却水を所定温度以上まで加熱してエンジン(E)に供給する役割をする。第2加熱器(150)を稼動する場合には、一般的に冷却器(130)は稼働させない。
【0085】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムが第2加熱器(150)を備える場合、エンジン(E)の負荷が低いため、使用できる冷却水の熱源が少ないときにも造水機(120)を100%で稼働させることができる。従来、エンジン(E)の負荷が低い場合には、造水機(120)を100%稼働させると、エンジン(E)に供給される冷却水の温度が過度に低くなってエンジン(E)の低温腐食を防止することができなくなるため、造水機(120)を100%で稼働することが不可能であった。しかし、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、エンジン(E)の負荷が低い場合でも、造水機(120)を100%で稼動させた後、第2加熱器(150)によって冷却水をエンジン(E)の低温腐食を防止できる所定温度まで加熱すれば良いので、システムのより柔軟な運用が可能になる。
【0086】
また、第2加熱器(150)を備える場合、造水機(120)から排出された冷却水は二つの流れに分岐して、一方(L60ライン)は第2加熱器(150)に送られ、他方(L62ライン)は第2加熱器(150)を迂回する。第2加熱器(150)を迂回した冷却水(L62ライン)と第2加熱器(150)を通過した冷却水(L60ライン)とは合流してエンジン(E)に送られ、第2加熱器(150)を迂回した冷却水が流れるライン(L62)上に第4バルブ(740)を設置することができる。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第4バルブ(740)の開度を調節して、第2加熱器(150)に送られる冷却水の量を調節し、最終的には第2加熱器(150)によって冷却水が加熱される度合いを調節することができる。
【0087】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムが、冷却器(130)、空気排出タンク(140)、第2加圧手段(420)、及び第2加熱器(150)の全てを備える場合、造水機(120)の後段に冷却器(130)が設置され、冷却器(130)の後段に空気排出タンク(140)が設置され、空気排出タンク(140)の後段に第2加圧手段(420)が設置され、第2加圧手段(420)の後段に第2加熱器(150)が設置され、第2加熱器(150)の後段にエンジン(E)が設置されるのが好ましい。
【0088】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムが、第1三方バルブ(810)、第2三方バルブ(820)、第3三方バルブ(830)、第3バルブ(730)、第1温度調節センサー(210)、第2温度調節センサー(220)、又は第3温度調節センサー(230)の少なくともいずれか一つ以上をさらに備える場合、第1三方バルブ(810)、第2三方バルブ(820)、第3三方バルブ(830)、第3バルブ(730)、第1温度調節センサー(210)、第2温度調節センサー(220)、及び第3温度調節センサー(230)は、それぞれ、制御盤(C)によって動作が制御される。
【0089】
制御盤(C)は、接続された各装置が収集する情報と各装置の状態に基づいてシステムの運用状況を総合的に分析し、各装置を制御する。
【0090】
以上の本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、エンジン(E)から排出された冷却水が有する熱源を損失することなく最大限に活用するために、冷却水が流れる配管(
図1に二重線で表示)を断熱処理することができる。
【0091】
図2は、本発明の第2実施形態に係る船舶用燃料ガス供給システムの概略図である。
【0092】
図2に示した船舶用燃料ガス供給システムは、
図1に示した舶用燃料ガス供給システムに比べて、第1加熱器(110)が膨張タンク(170)よりも高い位置に配置されること、及び第3加圧手段(190)をさらに備えることにおいて相違しており、以下では相違点を中心に説明する。上述した第1実施形態の船舶用燃料ガス供給システムと同一部材については詳細な説明を省略する。
【0093】
図2を参照して、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態の船舶用燃料ガス供給システムと同様に、第1加熱器(110)、気化器(180)、及び造水機(120)を備える。
【0094】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムによって燃料を供給されるエンジン(E)には、第1実施形態と同様に、天然ガスを燃料として使用するME-GIエンジン、X-DFエンジン、DFのエンジンなどがあり、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、ガスタービンなどの天然ガスを燃料として使用する他の燃焼装置にも応用することができる。ただし、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、主推進エンジンとして使用されるME-GIエンジンに適用することが好ましい。エンジン(E)は、第1実施形態と同様に、エンジンルームに配置される。
【0095】
第1加熱器(110)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)を冷却した後に排出された冷却水(L10ライン)と気化器(180)で熱媒として使用される流体(L3ライン)とを熱交換する。すなわち、第1加熱器(110)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得た熱源の一部を、気化器(180)で熱媒として使用される流体(L3ライン)に供給し、気化器(180)で熱媒として使用される流体(L3ライン)を加熱する。
【0096】
エンジン(E)から第1加熱器(110)に冷却水が供給されるライン(L10)上には、第1実施形態と同様に、エンジン(E)から排出されて第1加熱器(110)に供給される冷却水の温度を調節する第1温度調節センサー(210)が設置されている。第1温度調節センサー(210)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)から排出された冷却水の温度を約85℃に調節する。
【0097】
本実形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、エンジン(E)から排出された冷却水の温度を約85℃で一定に調節する。エンジン(E)の負荷に応じてエンジン(E)に供給される冷却水の温度を変化させる。すなわち、エンジン(E)の負荷が低くなるほど、エンジン(E)の低温腐食を防止するために、エンジン(E)に供給される冷却水の温度を高くする。
【0098】
気化器(180)は、第1実施形態と同様に、第1加熱器(110)によって加熱された熱媒(L4ライン)と液化天然ガスとを熱交換させ、液化天然ガスを気化させる。すなわち、気化器(180)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得た熱源の一部を、熱媒を媒介にして、液化天然ガスを気化させるために使用する。気化器(180)によって気化された天然ガス(L1ライン)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)に供給されて燃料として使用される。気化器(180)で熱媒として使用される流体には、第1実施形態と同様に、グリコールウォーター(Glycol Water)などがある。
【0099】
造水機(120)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)が有する熱源の一部または全部を利用して、海水を加熱して清水を得る。
【0100】
エンジン(E)の負荷をA、気化器(180)で熱媒として使用される流体に伝達される最大熱量をx、造水機(120)の負荷をB、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得る最大熱量をy、造水機(120)の負荷が100%であるときに要求される熱量をzとしたとき、第1実施形態と同様に、次の等式が成立する。
【0101】
Ax+Bz=Ay
【0102】
したがって、造水機(120)の負荷は、B=(y-x)A/zで表され、この式に基づいて造水機(120)の負荷を調節し、エンジン(E)を冷却しながら冷却水が得た熱量を気化器(180)と造水機(120)とに適切に分配することができる。
【0103】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、冷却水がエンジン(E)を冷却しながら得た熱源は、第1加熱器(110)で優先的に使用され、残りが造水機(120)で使用される。
【0104】
エンジン(E)から排出された冷却水(L10ライン)は、第1実施形態と同様に、二つの流れに分岐し、一方(L10ライン)は第1加熱器(110)に送られ、他方(L12ライン)は第1加熱器(110)を迂回する。第1加熱器(110)を迂回した冷却水(L12ライン)と第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)とは、第1実施形態と同様に、合流して造水機(120)に送られ、第1加熱器(110)を迂回した冷却水(L12ライン)と第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)とが合流する地点には、第1実施形態と同様に、第1三方バルブ(810)が設置されている。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、第1三方バルブ(810)の開度を調節して、第1加熱器(110)に送る冷却水の量を調節し、最終的には冷却水から第1加熱器(110)に伝達される熱量を調節することができる。
【0105】
第1加熱器(110)から気化器(180)に熱媒が送られるライン(L4)上には、第1実施形態と同様に、温度センサー(図示せず)を設置することができ、L4ライン上に設置された温度センサーが感知した温度値に基づいて第1三方バルブ(810)の開度を調節する。
【0106】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、L4ラインを流れる熱媒の温度が一定に維持されるように運用することもできる。
【0107】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)を通過した冷却水が造水機(120)に送られるライン(L20)上に設置される空気分離器(330)をさらに備えている。空気分離器(330)は、第1実施形態と同様に、第1加熱器(110)から造水機(120)に供給される冷却水に含まれる空気を除去して、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムに備えられた各種装置の故障を防止する。
【0108】
一方、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)を通過した冷却水(L20ライン)は、第1実施形態と同様に、二つの流れに分岐して、一方(L20ライン)は造水機(120)に送られ、他方(L22ライン)は造水機(120)を迂回する。造水機(120)を迂回した冷却水(L22ライン)と造水機(120)を通過した冷却水(L30ライン)とは、第1実施形態と同様に、合流して再エンジン(E)に送られ、造水機(120)を迂回した冷却水(L22ライン)と造水機(120)を通過した冷却水(L30ライン)とが合流する地点には、第1実施形態と同様に、第2三方バルブ(820)が設置されている。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、第2三方バルブ(820)の開度を調節して、造水機(120)に送られる冷却水の量を調節し、最終的には冷却水から造水機(120)に伝達される熱量を調節する。
【0109】
造水機(120)から排出された冷却水がエンジン(E)に供給されるライン(L30)上には、第1実施形態と同様に、冷却水の温度を調節する第2温度調節センサー(220)が設置されている。第2温度調節センサー(220)の設定値はエンジン(E)の負荷が高いほど低くなる。
【0110】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、エンジン(E)から排出された後に第1加熱器(110)と造水機(120)とを通過した冷却水の温度を下げる冷却器(130)をさらに備えている。冷却器(130)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)を冷却しながら熱量を得た冷却水が、第1加熱器(110)及び造水機(120)に熱量の一部を供給した後でも温度が十分に低くならない場合、冷却水がエンジン(E)に要求される温度まで冷却されるように冷却水の温度を下げる。
【0111】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、造水機(120)から排出された冷却水(L30ライン)は、第1実施形態と同様に、二つの流れに分岐して、一方(L30ライン)は冷却器(130)に送られ、他方(L32ライン)は冷却器(130)を迂回する。冷却器(130)を迂回した冷却水(L32ライン)と冷却器(130)を通過した冷却水(L40ライン)とは、第1実施形態と同様に、合流してエンジン(E)に送られ、冷却器(130)を迂回した冷却水(L32ライン)と冷却器(130)を通過した冷却水(L40ライン)とが合流する地点には、第1実施形態と同様に、第3三方バルブ(830)が設置されている。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、第3三方バルブ(830)の開度を調節して、冷却器(130)に送られる冷却水の量を調節し、最終的には冷却器(130)によって冷却水が冷却される度合いを調節する。
【0112】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、冷却器(130)の容量が減少し、冷却器(130)の駆動に必要なエネルギーを低減させることができる。
【0113】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、冷却水がエンジン(E)を冷却しながら得た熱源は第1加熱器(110)で優先的に使用され、残りは造水機(120)で使用され、造水機(120)で使用されても残った熱源は冷却器(130)で冷却される。
【0114】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、冷却器(130)から排出された冷却水がエンジン(E)に供給されるライン(L40)上に、冷却水の温度を調節する第3温度調節センサー(230)が設置されている。第3温度調節センサー(230)の設定値は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)の負荷が高いほど低くなる。
【0115】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、貯蔵タンク(160)、膨張タンク(170)、又は空気排出タンク(140)の少なくともいずれか一つ以上をさらに備えることができる。
【0116】
貯蔵タンク(160)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)の冷却に使用された冷却水のうち、第1加熱器(110)に送られなかった残りの冷却水を貯蔵する。貯蔵タンク(160)に貯蔵された冷却水の一部は、第1実施形態と同様に、膨張タンク(170)に送ることができる(L50ライン)。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、化学処理が必要な冷却水の消耗を最小限に抑えることができる。
【0117】
膨張タンク(170)は、第1実施形態と同様に、冷却水が膨張又は収縮しながら発生した体積変化を吸収してシステムの安定性を高め、冷却水の循環に必要な圧力を加える役割をする。膨張タンク(170)には、第1実施形態と同様に、貯蔵タンク(160)からの冷却水に加え、空気排出タンク(140)から排出される空気が供給される。膨張タンク(170)の内部の圧力が高すぎる場合には、第1実施形態と同様に、ガス排出ライン(L2)に沿って膨張タンク(170)の内部ガスが排出される。
【0118】
このような膨張タンク(170)は、第1実施形態と同様に、エンジン(E)が配置されたエンジンルームより約20m~25m上方に配置することができる。エンジン(E)で要求される冷却水の温度に応じて膨張タンク(170)の高さは異なる。
【0119】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と異なり、エンジン(E)から排出された冷却水が第1加熱器(110)に供給されるライン(L10)上に設置される第3加圧手段(190)をさらに備えている。第3加圧手段(190)は、第1加熱器(110)が必然的に高い位置に配置されて、冷却水が第1加熱器(110)に円滑な供給ができない場合に設置され、特に、第2加圧手段(420)を備えても第1加熱器(110)まで冷却水を供給するための圧力が足りない場合に設置される。
【0120】
空気排出タンク(140)は、第1実施形態と同様に、造水機(120)からエンジン(E)に送られる冷却水に含まれる空気を膨張タンク(170)に排出し、冷却水の温度変化に応じて急変する冷却水の体積変化による影響を緩和する役割をする。造水機(120)からエンジン(E)に送られる冷却水は、第1実施形態と同様に、空気排出タンク(140)で一時的に貯蔵されてエンジン(E)に送られる。
【0121】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、貯蔵タンク(160)から排出された冷却水を膨張タンク(170)に供給するためのライン(L50)上に設置される第1加圧手段(410)をさらに備えることができる。
【0122】
第1加圧手段(410)は、第1実施形態と同様に、貯蔵タンク(160)の水位を調節する第1水位調節装置(310)と膨張タンク(170)の水位を調節する第2水位調節装置(320)と連携して動作することができる。すなわち、第1加圧手段(410)は、第1実施形態と同様に、貯蔵タンク(160)の水位が所定の高さ以上になる、又は膨張タンク(170)の水位が所定の高さ以下になると作動して、貯蔵タンク(160)の内部の冷却水を膨張タンク(170)に送ることになる。
【0123】
また、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、造水機(120)から排出された冷却水を加圧してエンジン(E)に供給する第2加圧手段(420)、又はエンジン(E)から第1加熱器(110)に冷却水が供給されるライン(L10)上に設置されて冷却水の逆流を防止する第1バルブ(710)のいずれか一方又は両方をさらに備えることができる。
【0124】
第2加圧手段(420)は、第1実施形態と同様に、複数個を並列に連結したものとすることができる。第2加圧手段(420)は、第1実施形態と同様に、冷却水を約3barまで加圧することができ、冷却水を循環させるための圧力とエンジン(E)で必要な圧力の両方を満足させるように、冷却水を加圧する。
【0125】
第2加圧手段(420)を備える場合、第1実施形態と同様に、追加の加圧手段を設置しなくても、第2加圧手段(420)の圧力のみで冷却水が循環されるように、エンジン(E)から排出された冷却水が再びエンジン(E)に供給される循環ライン上に設置される装置は直列に連結することが好ましい。
【0126】
第1バルブ(710)は、第2加圧手段(420)が停止した場合、エンジン(E)から第1加熱器(110)に供給される冷却水の圧力が低くなって逆流することを防止する。
【0127】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、第1実施形態と同様に、造水機(120)から排出されてエンジン(E)に供給される冷却水を加熱する第2加熱器(150)をさらに備えることができる。第2加熱器(150)は、第1実施形態と同様に、スチームと冷却水とを熱交換させて冷却水を加熱する。スチームを供給するライン上には、第1実施形態と同様に、第3バルブ(730)を設置することができ、第3バルブ(730)の開度を調節してスチームの量を調節し、最終的には冷却水を加熱する度合いを調節する。
【0128】
また、第2加熱器(150)は、第1実施形態と同様に、船舶が停泊してエンジン(E)が運転しない場合、エンジン(E)の低温腐食を防止するために、冷却水を所定温度以上まで加熱してエンジン(E)に供給する役割をする。第2加熱器(150)を稼動する場合には、一般的に冷却器(130)は稼働させない。
【0129】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムが第2加熱器(150)を備える場合、第1実施形態と同様に、エンジン(E)の負荷が低く、使用できる冷却水の熱源が少ないときにも造水機(120)を100%で稼働させることができる。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、エンジン(E)の負荷が低い場合でも、造水機(120)を100%で稼動させた後、第2加熱器(150)によって冷却水をエンジン(E)の低温腐食を防止できる所定温度まで加熱すれば良いので、第1実施形態と同様に、システムのより柔軟な運用が可能になる。
【0130】
また、第2加熱器(150)を備える場合、造水機(120)から排出された冷却水は、第1実施形態と同様に、二つの流れに分岐して、一方(L60ライン)は第2加熱器(150)に送られ、他方(L62ライン)は第2加熱器(150)を迂回する。第2加熱器(150)を迂回した冷却水(L62ライン)と第2加熱器(150)を通過した冷却水(L60ライン)とは、第1実施形態と同様に、合流してエンジン(E)に送られ、第2加熱器(150)を迂回した冷却水が流れるライン(L62)上には、第1実施形態と同様に、第4バルブ(740)を設置することができる。本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、第4バルブ(740)の開度を調節して、第2加熱器(150)に送られる冷却水の量を調節し、最終的には第2加熱器(150)によって冷却水が加熱される度合いを調節することができる。
【0131】
一方、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、膨張タンク(170)を備える場合、第1加熱器(110)は、第1実施形態と異なり、膨張タンク(170)よりも高い位置に設置される。第1加熱器(110)は、エンジンルームに設置することが困難な場合も多く、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムを船舶に実際に適用すると、必然的に第1加熱器(110)が膨張タンク(170)よりも高い位置に配置される場合が多い。
【0132】
また、膨張タンク(170)及び第1三方バルブ(810)の両方を備える場合、第1三方バルブ(810)は膨張タンク(170)よりも低い位置に設置されることが好ましい。
【0133】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第2加圧手段(420)が停止した場合、第1三方バルブ(810)のうち、第1加熱器(110)方向のバルブ(
図2で上側のバルブ)は閉じ、L12及び造水機(120)方向のバルブ(
図2で左側と下側のバルブ)は開いた状態を維持する。
【0134】
第1三方バルブ(810)のうち、第1加熱器(110)方向のバルブ(
図2で上側のバルブ)を閉じると、第2加圧手段(420)が停止して冷却水を循環させる圧力が低下しても、膨張タンク(170)よりも低い位置に設置された第1三方バルブ(810)と第1加熱器(110)との間の配管(L20ライン)内部の冷却水の損失と圧力の損失を防止することができる。
【0135】
また、L12ライン及び造水機(120)方向のバルブ(
図2で左側と下側のバルブ)が開いた状態を維持すれば、第2加圧手段(420)が停止してエンジン(E)から第1加熱器(110)で供給された冷却水が逆流しても、第1バルブ(710)によって、冷却水のエンジン(E)への逆流が遮断されるとともに、第3加圧手段(190)への逆流も防止される。第1加熱器(110)から逆流する冷却水はL12ライン及び第1三方バルブ(810)を経て造水機(120)に送られる。
【0136】
仮に、第1三方バルブ(810)が膨張タンク(170)よりも高い位置に設置される場合には、第2加圧手段(420)が故障したとき、第1三方バルブ(810)のうち、第1加熱器(110)方向のバルブ(
図2の上側のバルブ)を閉じても、蒸気圧付近まで圧力が低下して配管内に真空が発生し、冷却水内で気泡が発生する虞があり、配管の剛性に悪影響を与える。また、冷却水の圧力と流速が急速に減少したり、水撃作用(Water Hammering)が発生したりする虞もある。
【0137】
ここで、第1加熱器(110)を膨張タンク(170)よりも下方に配置することが可能であれば、第2加圧手段(420)が故障しても、第1加熱器(110)と第1三方バルブ(810)との間の配管(L20ライン)に真空が発生する虞はないが、船舶では必然的に第1加熱器(110)が膨張タンク(170)の上方に設置される場合が多いため、第2加圧手段(420)が故障した場合、第1加熱器(110)と第1三方バルブ(810)との間の配管(L20ライン)に真空が発生しないようにする。
【0138】
したがって、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムは、水撃作用(Water Hammering)を防止し、冷却水の逆流による装置の故障を防止することができる。
【0139】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムが、冷却器(130)、空気排出タンク(140)、第2加圧手段(420)、及び第2加熱器(150)の全てを備える場合、第1実施形態と同様に、造水機(120)の後段に冷却器(130)が設置され、冷却器(130)の後段に空気排出タンク(140)が設置され、空気排出タンク(140)の後段に第2加圧手段(420)が設置され、第2加圧手段(420)の後段に第2加熱器(150)が設置され、第2加熱器(150)の後段にエンジン(E)が設置されるのが好ましい。
【0140】
本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムが、第1三方バルブ(810)、第2三方バルブ(820)、第3三方バルブ(830)、第3バルブ(730)、第1温度調節センサー(210)、第2温度調節センサー(220)、又は第3温度調節センサー(230)の少なくともいずれか一つ以上をさらに備える場合、第1実施形態と同様に、第1三方バルブ(810)、第2三方バルブ(820)、第3三方バルブ(830)、第3バルブ(730)、第1温度調節センサー(210)、第2温度調節センサー(220)、及び第3温度調節センサー(230)は、それぞれ、制御盤(C)によって動作が制御される。
【0141】
制御盤(C)は、第1実施形態と同様に、接続された各装置が収集する情報と各装置の状態に基づいてシステムの運用状況を総合的に分析し、各装置を制御する。
【0142】
特に、本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第2加圧手段(420)が停止した場合、第1三方バルブ(810)のうち、第1加熱器(110)方向のバルブ(
図2で上側のバルブ)を閉じるようにアルゴリズムを構成することができる。制御盤(C)によって、第2加圧手段(420)の故障などへの自動的な対処が可能となる。
【0143】
以上の本実施形態の船舶用燃料ガス供給システムでは、第1実施形態と同様に、エンジン(E)から排出された冷却水が有する熱源を損失することなく最大限に活用するために、冷却水が流れる配管(
図2に二重線で表示)を断熱処理することができる。
【0144】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で様々な形態で修正又は変更して実施できることは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。