(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ペプチド核酸コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220329BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220329BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220329BHJP
G01N 33/532 20060101ALI20220329BHJP
G01N 33/58 20060101ALI20220329BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20220329BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C07K19/00
C07K16/00
G01N33/532 A
G01N33/58 Z
C12Q1/6813 Z
(21)【出願番号】P 2019532804
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 US2017066976
(87)【国際公開番号】W WO2018118759
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-04
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ルイ
(72)【発明者】
【氏名】バーホウミ, アオウーネ
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0105030(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0010014(US,A1)
【文献】特表2011-505549(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022639(WO,A1)
【文献】Chem. Sci.,2015年10月01日,Vol.6, No.10,pp.5601-5616
【文献】J. Am. Chem. Soc.,2013年01月09日,Vol.135, No.1,pp.340-346
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IC)の構造を有するPNAコンジュゲート:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは、ビオチン、酵素、色原体、フルオロフォア、ハプテン、及び質量分析タグからなる群より選択され;
Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;
nは1から12の範囲の整数である]であって
PNA配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7からなる群から選択される、PNAコンジュゲート。
【請求項2】
『特異的結合体』が一次抗体又は二次抗体である、請求項1に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項3】
Xがビオチンである、請求項1に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項4】
mが0であり、zが0であり、nが1より大きい、請求項1に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項5】
nが2から6の範囲の整数である、請求項4に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項6】
『リンカー』が少なくとも1つのPEG基を含み、mが0であり、zが0であり、かつnが1より大きい、請求項1に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項7】
『リンカー』が少なくとも1つのPEG基を含み、nが1より大きく、かつ『リンカー』が少なくとも1つの切断可能な基をさらに含む、請求項1に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項8】
『リンカー』が式(IIIa)に示される構造を有する、請求項1に記載のPNAコンジュゲート:
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して、2から20の範囲の整数であり;
Qは、結合、O、S、又はN(R
c)(R
d)であり;
R
a及びR
bは、独立して、H、C
1-C
4アルキル基、F、Cl、又はN(R
c)(R
d)であり;
R
c及びR
dは、独立して、CH
3又はHであり;かつ
A及びBは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である]。
【請求項9】
d及びeが2から6の範囲の整数である、請求項8に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項10】
A又はBの少なくとも一方が、切断可能な部分を含む、請求項8に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項11】
切断可能な部分が光切断可能基または化学的に切断可能な基である、請求項10に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項12】
Xがハプテンである、請求項7に記載のPNAコンジュゲート。
【請求項13】
サンプル中の標的を検出する
in vitroの方法
であって、
サンプルを
請求項1に記載のPNAコンジュゲートと接触させるこ
と;及び
サンプル
を検出試薬と接触させて、PNAコンジュゲートの検出を容易にすること
を含む方法。
【請求項14】
『特異的結合体』が一次抗体であって、前記一次抗体
が標的に特異的であるか;又は『特異的結合体』が二次抗体であ
る、請求項13に記載の方法であって、
前記方法が、前記サンプル
をPNAコンジュゲートと接触させる前に、前記サンプル
を標的に特異的な一次抗体と接触させるステップをさらに含み
、PNAコンジュゲートが
前記一次抗体に特異的である
、方法。
【請求項15】
検出試薬が、PNAコンジュゲートの標識に特異的な抗標識抗体であり、任意選択的に標識がハプテンであり、抗標識抗体が抗ハプテン抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
検出試薬が
、PNAコンジュゲートのPNA配列に対して相補的なPNA又はDNA配列を含み、前記相補的PNA又はDNA配列が、レポーター部分にコンジュゲートしている、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、レポーター部分がフルオロフォアである
か、又は
レポーター部分がハプテンであり、前記方法が、サンプルを相補的PNA又はDNA配列のハプテンに特異的な抗ハプテン抗体と接触させることをさらに含む
、方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、PNAコンジュゲート中の『リンカー』が切断可能基をさらに含み、前記方法がサンプルを試薬と接触させて『リンカー』上の切断可能基を切断
すること、及び切断された『PNA』配列の量を定量することをさらに含
む、方法。
【請求項19】
PNA配列の量の定量化が、NanoString nCounter技術、Gyros技術、又は質量分析法を使用して行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
切断可能基が、光切断可能基、化学的に切断可能な基、又は酵素的に切断可能な基からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
PNA配列が切断された特異的結合体を可視化することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に援用される、2016年12月19日出願の米国仮特許出願第62/436,189号の出願日の利益を主張する。
【0002】
本開示は、PNA配列、非荷電性DNA配列、又は荷電性及び非荷電性の塩基を含むDNA配列を含むコンジュゲートを提供する。
【0003】
本開示は、医学及び診断学の分野において産業上の利用可能性を有する。
【背景技術】
【0004】
免疫組織化学(IHC)及びin situハイブリダイゼーション分析(ISH)を含む細胞染色法は、組織学的診断及び組織形態学の研究における有用な手段である。IHCは、組織サンプル中に存在しうる対象とする抗原を検出するために、抗体などの特異的結合剤又は部分を使用する。IHCは、特定の病態又は病状を診断するためなど、臨床及び診断の用途に幅広く使用されている。例えば、被験体から得たサンプル中の特定のマーカー分子の存在に基づいて、特定のがんの種類を診断することができる。IHCはまた、さまざまな組織内のバイオマーカーの分布及び局在化を理解するために、基礎研究にも幅広く使用されている。生体サンプルはまた、集合的にISHと称される、銀in situハイブリダイゼーション(SISH)、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)、及び蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)などのin situハイブリダイゼーション技術を使用して試験することもできる。IHCは組織中のタンパク質を検出するのに対して、ISHは組織中の核酸を検出するという点で、IHCとは異なっている。
【0005】
生物のゲノムによって発現される多数のタンパク質の特徴付け及び定量化は、プロテオミクスの注目の的である。多重免疫組織化学(MIHC)は、パラフィン包埋ホルマリン固定組織中の多変量タンパク質標的を研究及び診断に広範に応用して検出及び分析するための、満たされていない大きな技術的ニーズを表している。多重免疫組織化学(MIHC)技術は、ホルマリン固定パラフィン包埋組織中の多変量タンパク質標的の検出及び分析のニーズに対処しようと試みている。効果的なMIHC技術は、研究及び診断に広範な用途を有する。しかしながら、組織内の複数のタンパク質標的を同時に定量的に検出可能にする効率的かつ再現可能な方法は、存在するとしても、ごくわずかである。
【0006】
臨床試験設定におけるトランスレーショナルリサーチのキーとなる制約は、バイオマーカー分析を実施するための組織の量が限られていることが多いということである。さらには、この組織は、頻繁にアーカイブに入れられ、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックに格納される。遺伝子発現分析の伝統的な方法は、臨床応用に限界がある。例えば、RT-PCRは、一度に1つの遺伝子の発現を測定するが、何千もの転写産物をカバーするマイクロアレイなどの多重発現プロファイリング技術は高価であることが多く、FFPEに由来するものなど、低品質のRNAサンプルを評価する場合には、柔軟性及び再現性に欠ける。これらのアッセイの評価は半定量的かつ本質的に主観的なものである。このため、単一のアッセイで複数のマーカーのプロファイリングを可能にする、定量的かつ高度に多重化されたアッセイの開発への注目が高まっている。したがって、限られた量の質の悪い材料からのバイオマーカーの多重分析を可能にするプラットフォームは、非常に魅力的である。
【0007】
核酸(DNA及び/又はRNA)の直接自動検出を可能にするNanoString nCounter技術は、さまざまな臨床及び研究用途に採用されている比較的新しい技術である。一般に、標的核酸(DNA又はRNA)は、ビオチン化DNA鎖(捕捉鎖)にハイブリダイズされ、核酸をnCounterカートリッジの内側のストレプトアビジン表面及び蛍光標識されたDNA鎖(レポーター鎖、7Kb、そのうちの約50塩基が標的核酸に対して相補的である)への固定化が可能となる。蛍光標識されたレポーター鎖の自動化されたデジタル読み出しは、1つのサンプル内の最大800の核酸標的の非増幅測定を可能にすると考えられている。
【0008】
DNA抗体のバーコード化は、固有の分子タグとして使用することができるDNA鎖で抗体を標識することからなる。DNA抗体のバーコード化とNanoString nCounter技術とを組み合わせることにより、NanoString nCounter技術は多重化タンパク質分析を包含する用途にまで拡大された。
【0009】
遺伝子配列中の選択された標的に対して高い配列特異性で結合することができる合成分子は、医学的及び生物工学的状況において興味深いものである。それらは、遺伝子治療薬の開発、遺伝子解析のための診断装置、及び核酸操作のための分子ツールとして有望である。ペプチド核酸(PNA)は、天然核酸の糖リン酸骨格が、通常、N-(2-アミノ-エチル)-グリシン単位から形成される合成ペプチド骨格によって置き換えられている核酸類似体であり、アキラルかつ非荷電の模倣体をもたらす。それは化学的に安定であり、加水分解的(酵素的)切断に対して抵抗性があり、したがって、生細胞内では分解されないことが期待されると考えられている。PNAは、ワトソン-クリックの水素結合スキームに従うDNA及びRNAの配列特異的認識が可能であり、ハイブリッド複合体は、並外れた熱安定性及び固有のイオン強度効果を示す。PNAは電荷を含まないことから、PNAとDNAとの結合ハイブリダイゼーションは、同じ配列についてのDNAとDNAとの結合ハイブリダイゼーションよりも強い。
【発明の概要】
【0010】
本開示の一態様は、式(I)の構造を有するコンジュゲートである:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体(例えば、一次抗体又は二次抗体)、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
Zは、PNA配列、非荷電性DNA配列、並びに荷電性及び非荷電性の塩基を含むDNA配列からなる群より選択され;
Xは標識であり;
Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である]。
【0011】
幾つかの実施態様では、Xは、ビオチン、酵素、色原体、フルオロフォア、ハプテン、及び質量分析タグである。
【0012】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体である。幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は二次抗体である。
【0013】
幾つかの実施態様では、Zは、非荷電のDNA塩基のみを含むDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、Zは、荷電性塩基及び非荷電性塩基の混合物を含むDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、Zは、DNA配列中の塩基の少なくとも50%が非荷電性であるDNA配列を含む。
【0014】
幾つかの実施態様では、ZはPNA配列を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約8から12塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0015】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、ZはPNA配列である。幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、Zは、10ヌクレオチドを有するPNA配列である。
【0016】
幾つかの実施態様では、『リンカー』は、切断可能な基を含む。幾つかの実施態様では、『リンカー』は、本明細書に開示される1つ以上のPEG基を含む。
【0017】
本開示の別の態様は、式(IC)の構造を有するコンジュゲートである:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは標識であり;
Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である]。
【0018】
幾つかの実施態様では、Xは、ビオチン、酵素、色原体、フルオロフォア、ハプテン、及び質量分析タグである。
【0019】
幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0020】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体である。幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は二次抗体である。幾つかの実施態様では、Xはビオチンである。幾つかの実施態様では、mは0であり、zは0であり、nは1より大きい。幾つかの実施態様では、nは2から6の範囲の整数である。幾つかの実施態様では、『リンカー』は、少なくとも1つのPEG基を含む。
【0021】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、PNA配列は10ヌクレオチドを含む。
【0022】
幾つかの実施態様では、『リンカー』は、式(IIIa)に示される構造を有する:
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して、2から20の範囲の整数であり;
Qは、結合、O、S、又はN(R
c)(R
d)であり;
R
a及びR
bは、独立して、H、C
1-C
4アルキル基、F、Cl、又はN(R
c)(R
d)であり;
R
c及びR
dは、独立して、CH3又はHであり;かつ
A及びBは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である]。
【0023】
幾つかの実施態様では、d及びeは、2から6の範囲の整数である。幾つかの実施態様では、A又はBの少なくとも一方は、切断可能な部分を含む。幾つかの実施態様では、切断可能な部分は光切断可能基である。幾つかの実施態様では、切断可能な部分は化学的に切断可能な基である。幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は抗体であり、『リンカー』は、少なくとも1つのPEG基を含み、mは0であり、zは0であり、nは1より大きい。幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は抗体であり、『リンカー』は、少なくとも1つのPEG基を含み、nは1より大きい。幾つかの実施態様では、『リンカー』は、少なくとも1つの切断可能基をさらに含む。幾つかの実施態様では、Xはハプテンである。
【0024】
本開示の別の態様では、式(IB)の構造を有するオリゴマーである:
[式中、
Tは、1から4個の炭素原子を有し、かつ任意選択的にO、N、又はSで置換され、かつ、末端反応性部分を有する基であり;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは標識であり;
Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;かつ
zは0又は1である]。
【0025】
幾つかの実施態様では、Xは、ビオチン、酵素、色原体、フルオロフォア、ハプテン、及び質量分析タグである。
【0026】
幾つかの実施態様では、Xはビオチンである。
【0027】
幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約8から12塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0028】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、PNA配列は10ヌクレオチドを含む。
【0029】
幾つかの実施態様では、mは0であり、zは0であり、nは1より大きい。
【0030】
幾つかの実施態様では、nは2から6の範囲の整数である。幾つかの実施態様では、『リンカー』は、少なくとも1つのPEG基を含む。幾つかの実施態様では、『リンカー』は、式(IIIa)に示される構造を有する:
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して、2から20の範囲の整数であり;
Qは、結合、O、S、又はN(R
c)(R
d)であり;
R
a及びR
bは、独立して、H、C
1-C
4アルキル基、F、Cl、又はN(R
c)(R
d)であり;
R
c及びR
dは、独立して、CH
3又はHであり;かつ
A及びBは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である]。
【0031】
幾つかの実施態様では、d及びeは、2から6の範囲の整数である。幾つかの実施態様では、A又はBの少なくとも一方は、切断可能な部分を含む。幾つかの実施態様では、切断可能な部分は光切断可能基である。幾つかの実施態様では、切断可能な部分は化学的に切断可能な基である。
【0032】
本開示の別の態様は、サンプル中の標的を検出する方法であって、
(a)サンプルを第1のコンジュゲートと接触させることであって、該第1のコンジュゲートが式(I)の構造を有する、接触させること:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
Zは、PNA配列、非荷電性DNA配列、並びに荷電性及び非荷電性の塩基を含むDNA配列からなる群より選択され;
Xは標識であり;
Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である];及び
(b)サンプルを第1の検出試薬と接触させて、PNAコンジュゲートの検出を容易にすること、を含む、サンプル中の標的を検出する方法である。
【0033】
幾つかの実施態様では、Xは、ビオチン、酵素、色原体、フルオロフォア、ハプテン、及び質量分析タグからなる群より選択される。
【0034】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、ZはPNA配列である。幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、Zは、10ヌクレオチドを有するPNA配列である。
【0035】
幾つかの実施態様では、Zは、非荷電のDNA塩基のみを含むDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、Zは、荷電性塩基及び非荷電性塩基の混合物を含むDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、Zは、DNA配列中の塩基の少なくとも50%が非荷電性であるDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0036】
本開示の別の態様は、サンプル中の標的を検出する方法であって、
(a)サンプルを第1のコンジュゲートと接触させることであって、該第1のコンジュゲートが式(IC)の構造を有する、接触させること:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは標識であり;
Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である];及び
(b)サンプルを第1の検出試薬と接触させて、PNAコンジュゲートの検出を容易にすることを含む、サンプル中の標的を検出する方法である。
【0037】
幾つかの実施態様では、Xは、ビオチン、酵素、色原体、フルオロフォア、ハプテン、及び質量分析タグからなる群より選択される。
【0038】
幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。
【0039】
幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0040】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、該一次抗体は、第1の標的に特異的である。幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は二次抗体であり、該方法は、サンプルを第1のコンジュゲートと接触させる前に、サンプルを第1の標的に特異的な一次抗体と接触させるステップをさらに含み、ここで、第1のコンジュゲートは、第1の一次抗体に特異的である。幾つかの実施態様では、第1の検出試薬は、コンジュゲートの標識に特異的な抗標識抗体である。幾つかの実施態様では、標識はハプテンであり、抗標識抗体は抗ハプテン抗体である。幾つかの実施態様では、検出試薬は、第1のコンジュゲートのPNA配列に対して相補的なPNA又はDNA配列を含み、該相補的PNA又はDNA配列は、レポーター部分にコンジュゲートしている。幾つかの実施態様では、レポーター部分はフルオロフォアである。幾つかの実施態様では、レポーター部分は色原体である。幾つかの実施態様では、レポーター部分は酵素である。幾つかの実施態様では、レポーター部分はハプテンであり、該方法は、サンプルを相補的PNA又はDNA配列のハプテンに特異的な抗ハプテン抗体と接触させることをさらに含む。
【0041】
本開示の別の態様は、サンプル中の標的を検出する方法であって、
(a)サンプルを第1のコンジュゲートと接触させることであって、該第1のコンジュゲートが式(IC)の構造を有し:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体(例えば、一次抗体又は二次抗体)、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;『リンカー』が切断可能基をさらに含み;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは標識であり;
Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
mは0であり;
zは0であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である];及び
(b)サンプルを試薬(又は光源、選択される切断可能基に応じて決まる)と接触させて、『リンカー』上の切断可能基を切断させること;及び、(c)切断された『PNA』配列の量を定量すること
を含む、サンプル中の標的を検出する方法である。
【0042】
当業者は、多重アッセイを提供するために、異なるコンジュゲートを用いて、上記特定されたステップを何回も繰り返してよいことを認識するであろう。
【0043】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体である。
【0044】
幾つかの実施態様では、切断可能基は、光切断可能基、化学的に切断可能な基、又は酵素的に切断可能な基からなる群より選択される。幾つかの実施態様では、切断可能基はジスルフィド結合である。
【0045】
幾つかの実施態様では、Xは、ビオチン、酵素、色原体、フルオロフォア、ハプテン、及び質量分析タグからなる群より選択される。幾つかの実施態様では、Xはビオチンである。
【0046】
幾つかの実施態様では、PNA配列の量の定量は、NanoString nCounter技術を用いて行われる。幾つかの実施態様では、PNA配列の量の定量は、本明細書に記載されるものなど、Gyrolab技術(Gyros社から入手可能)を用いて行われる。
【0047】
幾つかの実施態様では、PNAの切断後、抗体結合組織切片をIHC又はIFなどの従来方法で再染色して、PNAタグによってコードされたマーカーの空間分布の視覚化を可能にする。
【0048】
幾つかの実施態様では、本方法は、式(IC)のコンジュゲートのPNA配列に対して相補的な一本鎖DNA配列を導入することをさらに含む。幾つかの実施態様では、相補的一本鎖DNA配列は、レポーター部分にコンジュゲートしている。幾つかの実施態様では、相補的一本鎖DNA配列は、ハプテンにコンジュゲートしている。幾つかの実施態様では、相補的一本鎖DNA配列は、ジゴキシゲニンにコンジュゲートしている。
【0049】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、本方法は、一次抗体に特異的な二次抗体を導入することをさらに含む。幾つかの実施態様では、二次抗体はレポーター部分にコンジュゲートしている。
【0050】
幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0051】
DNAとは異なり、PNAは電荷を含まないことから、PNAとDNAとの結合は、DNAとDNAとの結合よりも強く、よって、DNA-コンジュゲートでは不可能な結合親和性及び特異性を達成しつつ、抗体を標識するための比較的短いPNA配列の使用を可能にすると考えられる。より短いPNA配列配列は、抗体-抗原結合及び組織非特異的結合に対する干渉を最小限に抑えるのに役立てることができることもまた予想される。したがって、本明細書に開示されるPNA-抗体コンジュゲートは、抗体の結合特異性を維持し、一方、PNAオリゴマーは、シグナル生成分子とのハイブリダイゼーションによってスライド(IF又はIHC)上で、in situで可視化することができるか、若しくは、NanoString技術、Gryos技術、又は質量分析法(
図1を参照)などのハイスループット技術によってスライドから定量することができる、固有の分子タグとして機能すると予想される。加えて、事実上無制限の固有の配列/タグは、ほぼ同一の条件下で容易に生成及び検出することができ、個々のコンジュゲートを最適化する必要性を排除することができる。重要なことに、切断可能なリンカー(光切断可能又は化学切断可能)は、PNAオリゴマーと抗体の間に配置することができ(
図1を参照)、オフスライドのタンパク質プロファイリング(多重定量)のための容易なサンプル収集を可能にする。
【0052】
本特許又は特許出願の書類は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有するこの特許公報又は特許出願公開公報の複写は、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】DNAコンジュゲートの構造、並びに、サンプル内の標的の可視化(定性的)及び結合した抗体から切断したPNAタグの定量的評価の両方におけるそれらの使用の概要を示す図である。
【
図2】(a)PNAコンジュゲーション前、及び(b)PNAコンジュゲーション後のUV-Vis吸光度に基づく抗体及び対応するPNAコンジュゲートの特徴付けを示すグラフである。黒及び赤のトレースは、例としての2つの異なる抗体を表している。
【
図3】ビオチン化PNAのIHC検出を示す図である。扁桃スライドを、(a)ウサギ抗CD45、マウス抗Ki67、及び(c)一次抗体なしで処理し、その後、PNAをコンジュゲートしたGAR、GAM、及びGAMでそれぞれ処理した。その後、ビオチンをSA-HRP及びDAB沈着によって検出した。(c)検出ストラテジーのスキームである。
【
図4】(a)膜マーカー及び(b)核マーカーとしてのビオチン化PNAのIHC検出を示す図である。扁桃スライドを、「ハプテン化」一次抗体(ハプテンで標識された抗体)で処理し、その後、それぞれのハプテンに対する対応するPNA-コンジュゲートで処理した。次いで、PNAコンジュゲート中のビオチンをSA-HRP及びDAB沈着によって検出した。
【
図5】PNAタグの化学的切断を説明する図である。扁桃スライドを、(a)及び(b)マウス抗Ki67、並びに(c)及び(d)ウサギ抗CD45、その後、それぞれPNAをコンジュゲートしたGAM及びGARで処理した。(a)及び(c)は、SA-HRP及びDAB沈着でさらに処理したのに対し、(b)及び(d)は、SA-HRPインキュベーション及びDAB沈着の前に、約20mMのTCEPで処理した。
【
図6】ビオチン化PNAの蛍光検出を示す図である。扁桃スライドを、(a)マウス抗Ki67で処理、及び(b)一次抗体なしで処理し、その後、PNAをコンジュゲートしたGAMで処理した。スライドをSA-FITCと共にさらにインキュベートした。(c)は、蛍光検出スキームを示している。
【
図7】切断されたPNA-SA-FITC蛍光強度に基づいたスライドあたりの抗体の定量化された測定値を示すグラフである。(a)マウス抗CD45、PNAをコンジュゲートしたGAM、続いてSA-FITCで処理し、最後に20mMのTCEPと共にインキュベートした扁桃スライドから切断されたPNA-SA-FITCの蛍光強度を示す棒グラフである。対照は、実験と同一の処理をしたが一次抗体なしの扁桃スライドである。(b)実験及び対照スライドから切断されたPNA-SA-FITCの濃度を決定するために用いられる標準曲線である。サンプル及び対照の蛍光強度は、平均±STDEV(N=3)として示される。
【
図8】蛍光標識された相補DNAによるPNA検出を説明する図である。(a)及び(c)は、ウサギ抗Ki67で処理し、その後、PNAをコンジュゲートしたGARで処理した扁桃スライドである。次に、スライドを、PNAタグを相補する蛍光標識されたDNA配列と共にインキュベートした。FITC及びローダミンで標識したDNA配列をそれぞれ(a)及び(c)に使用した。一次抗体を添加しなかった他は同一の条件の陰性対照を、それぞれ(b)及び(d)に示した。(e)検出方法の概略図である。
【
図9】相補ハプテン化DNAによる発色検出を示す図である。(a)及び(b)は、それぞれ一次マウス抗CD20及びウサギ抗Ki67で処理した扁桃スライドである。PNAをコンジュゲートしたGAMとインキュベートし、その後、PNAタグに対して相補するDIG標識化DNA配列とハイブリダイゼーションした。最後に、スライドを抗DIG:HRP抗体及びDAB沈着と共にインキュベートした。(c)扁桃スライドを(a)及び(b)と同様に処理したが、(c)一次抗体なしの陰性対照なしであった。(d)検出方法の概略図である。
【
図10】光切断可能なヘテロ二官能性架橋剤の可能な合成スキームを示す図である。
【
図11】光切断可能なPNAを合成するために用いられる光分解性リンカーの化学構造である。
【
図12】PNAの光切断を示す図である。スライドをKi67で処理し、その後GAR-PL-PNAで処理した。スライドを手持ち式のUVランプで、(a)0分間、(b)5分間、及び(c)10分間、照射した。
【
図13】選択的PNA光切断を示す図である。扁桃スライドをKi67で処理し、その後GAR-PL-PNAで処理した。その後、表示領域にレーザーキャプチャーマイクロダイセクション機器からのUV光を照射した。LCMスライドを洗浄して切断したPNAを除去した後、SA-HRP及びDAB検出によって染色を完了した。同じスライド上の非照射胚中心と比較して、UV照射胚中心は色を失った。
【
図14A】本開示のPNAコンジュゲートを使用して、サンプル中の標的を検出するさまざまな方法を概説するフローチャートである。
【
図14B】本開示のPNAコンジュゲートを使用して、サンプル中の標的を検出するさまざまな方法を概説するフローチャートである。
【
図14C】本開示のPNAコンジュゲートを使用して、サンプル中の標的を検出するさまざまな方法を概説するフローチャートである。
【
図15】PNA抗体コンジュゲートの安定性を示す図である。扁桃スライドを、抗体(抗CD45及び抗Ki67)、その後、それぞれGAM-PNA及びGAR-PNAとともにインキュベートし、SA-HRP及びDAB沈着によって検出した。コンジュゲート安定性の評価に示されたものと同じ抗体-PNAコンジュゲートを、後で使用した。
【
図16】カップリングに「クリックケミストリー」を利用した、PNAオリゴマーへの抗体のコンジュゲーションを示す概略図である。ここでは、還元型抗体をDBCO基で官能化し、次いでアジド基を含むPNAオリゴマーに結合させる。
【
図17】抗Ki67一次抗体(ウサギmAb)及びGAR-PNA(クリックケミストリーとコンジュゲート)二次抗体とともにインキュベートし、SA-HRPで検出した扁桃組織を示す画像である。画像は、PNAがクリックケミストリーを介して抗体に首尾よくコンジュゲートしたことを示している。
【
図18】マレイミド部分を介したPNAオリゴマーへの抗体のコンジュゲーションを示す概略図である。
【
図19】ヘテロ二官能性架橋剤及びPNA配列の化学構造を示す図である。
【
図20】抗Ki67、次いでGAR-短PNA(先のスライドに示した配列)と共にインキュベートし、SA-HRPで検出した扁桃組織を示す画像である。短PNA配列上のビオチンの検出。画像は、短PNAがAb上に首尾よくコンジュゲートしていることを示している。
【
図21】抗Ki67、次いでGAR-HRPと共にインキュベートした扁桃組織を示す画像である。画像は、短PNAがAb上に首尾よくコンジュゲートしていることを示している。これは、基準検出(21)をGAR-短PNAをベースとした検出と比較するために使用される。
【
図22A】CD3-短PNAとともにインキュベートし、SA-HRPで検出した扁桃を示す画像である。一次抗体とコンジュゲートした短PNAのIHC。使用したAb-短PNAコンジュゲートの濃度は5ug/mLであった(PNA配列:ビオチン-o-CCATCTTCAG-MAL配列(配列番号19))。
【
図22B】一次抗体-短PNAコンジュゲートの第2の例(CD8-短PNA)の画像である。
【
図22C】一次抗体-短PNAコンジュゲートの第3の例(CD34-短PNA)の画像である。
【
図22D】一次抗体-短PNAコンジュゲートの第4の例(Ki67-短PNA)の画像である。
【
図23】配列:ビオチン-o-TTAGTCCAAC-Lys(SMCC)(配列番号20)を有するCD3-短PNA2を示す図である。
【
図24】PNA配列がビオチン-o-TTAGTCCAAC-Lys(SMCC)(配列番号20)である、sPNA2にコンジュゲートしているCD8を示す画像である。
【
図25】抗Ki67及びGAR-短PNA、その後DNA-DIG(その末端にDIGを有する、AB14と呼ばれる短PNAタグに対して相補的なDNA配列)とインキュベートした扁桃組織を示す画像である抗DIG-HRP抗体を検出のために加えた。この事例では、PNAタグに相補的なDNAが検出された。2つの異なる濃度の相補的DNA-DIGが示されている。
【
図26】DNAコンジュゲーションによる蛍光二本鎖形成を示す図である。図は、ハイブリダイゼーションによる検出をさらに示しているが、今回は蛍光によるものである。相補的DNAは1つ以上の蛍光タグを含んでいる。2つの一次抗体CD3及びCD8は、それぞれ2つの異なる短PNAタグにコンジュゲートしている。2つの相補的DNA配列の各々は、フルオロフォアを有する。
【
図27A-B】抗CD3-短PNA1と抗CD8-短PNA2の混合物(短PNA1及び短PNA2にそれぞれコンジュゲートしている抗CD3及び抗CD-8)とともにインキュベートし、その後2つのDNA配列、扁桃腺_CD3-sPNA1+CD8-sPNA2_AB15+AB19とともにインキュベートした扁桃組織スライドを示す画像である。ここで、DNA15とDNA19との混合物(DNA15 AB15は、sPNA1に対して相補的であり、その末端にAlexaFluo488を有しており、一方AB19は、sPNA2に対して相補的であり、その末端にAlexaFluo647を有する)。蛍光染色した組織は、蛍光顕微鏡で撮像する。緑色のチャネル(
図27A)は、CD3で標識された抗体上のAlexaFluo488を示している。赤色のチャネル(
図27B)は、同じ視野で、CD8で標識されたAb上のAlexaFluo647を示している。
【
図27C】
図27Aと
図27B2つの画像のマージである。赤色の細胞(CD8)は全て、緑色(CD3)でもあることを示している。全てのCD3細胞がCD8であるというわけではないことから、緑色の細胞の一部は赤色ではない。CD8は、CD3の亜集団である。
【
図28】260/280の比を有する、GAR、CD3、及びCD8-短PNAコンジュゲートのUV吸光度を示すグラフである。PNAが抗体にコンジュゲートするにつれて、260nm/280nmの比が増加することが示されている。
【
図29】PNAの定量化のためにGryos技術の使用を用いる原理を説明する図である。
【
図30】Gryos技術を使用して切断されたPNAタグを定量化するステップ、及びPNAタグによってコードされた同じマーカーの可視化を可能にするためにIHCによってスライドを再染色するステップを示す概略図である。
【
図31A】PNA-抗体コンジュゲートからPNA配列を切断した後のタンパク質標的のIHC染色を示す画像である。
【
図31B】PNA-抗体コンジュゲートからPNA配列を切断した後のタンパク質標的のIHC染色を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
一般に、本開示は、例えばPNAコンジュゲートなどのコンジュゲート、並びに、例えば組織サンプルなどの生体サンプル中の1つ以上の標的を検出するためにコンジュゲートを使用する方法を対象とする。特定の理論に縛られることを望むものではないが、コンジュゲートは、アッセイにおいて使用される場合、タンパク質標的を含む多数の標的の定性的及び定量的評価を同時に可能にすると考えられる(
図1参照)。
【0055】
本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数の指示対象を含む。同様に、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、単語「又は」は「及び」を含むことを意図している。
【0056】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、「又は」は、上記定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち、少なくとも1つの要素を含むが、複数の要素又は要素のリスト、及び任意選択的に、リストに含まれていない追加の項目を、1を超えて含むものと解釈されるものとする。「1つのみ」又は「ちょうど1つ」、若しくは、特許請求の範囲で使用されている場合には「からなる」など、そうではないことが明確に示されている用語のみが、複数の要素又は要素のリストのうちの厳密に1つの要素を包含することを指す。一般に、本明細書で用いられる「又は」という用語は、「どちらか」、「1つ」、「1つのみ」、又は「ちょうど1つ」など、排他的な用語が先行する場合にのみ、排他的な選択肢(すなわち「一方又は他方であって、両方ではない」)を示すと解釈される。「~から本質的になる」は、特許請求の範囲で用いられる場合には、特許法の分野で用いられるその通常の意味を有するものとする。
【0057】
「含んでいる」、「包含している」、「有している」などの用語は、互換的に使用され、同じ意味を有する。同様に、「含む」、「包含する」、「有する」なども互換的に使用され、同じ意味を有する。具体的には、各用語は、「含む」という一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも次のもの」を意味するオープンタームと解釈され、また追加の特徴、制限、態様等を除外しないと解釈される。したがって、例えば、「構成要素a、b及びcを有する装置」は、その装置が少なくとも構成要素a、b及びcを含むことを意味する。同様に、「ステップa、b、及びcを含む方法」という句は、その方法が少なくともステップa、b、及びcを含むことを意味する。さらには、ステップ及びプロセスは、本明細書で特定の順序で概説されうるが、当業者は、ステップ及びプロセスの順序が異なりうることを認識するであろう。
【0058】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、1つ以上の要素のリストに関して「少なくとも1つ」という句は、要素のリストのうちの1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも、要素のリスト内に具体的に列挙されているありとあらゆる要素の少なくとも1つを含み、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するわけではないと理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に識別された要素以外の要素が、具体的に識別された要素に関連するかしないかにかかわらず、任意選択的に存在しうることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも一方」(又は同等に、「A又はBの少なくとも一方」、又は、同等に、「A及び/又はBの少なくとも一方」)とは、一実施態様では、Bが存在せず(かつ、任意選択的にB以外の要素を含む)、1つより多いAを任意選択的に含む、少なくとも1つのAを指すことができ;別の実施態様では、Aが存在せず(かつ、任意選択的にA以外の要素を含む)、1つより多いBを任意選択的に含む、少なくとも1つのBを指すことができ;さらに別の実施態様では、1つより多いAを任意選択的に含む、少なくとも1つのA、及び、1つより多いBを任意選択的に含む(かつ、任意選択的に他の要素を含む)、少なくとも1つのB;等を指すことができる。
【0059】
本明細書で用いられる場合、用語「アルキル」とは、完全に飽和した(二重結合も三重結合もない)炭化水素基を含む直鎖状又は分岐状炭化水素鎖を指す。アルキル基は、置換されていても置換されていなくてもよい。
【0060】
本明細書で用いられる場合、用語「抗体」とは、限定ではなく例として、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、それらの組合せを含む、免疫グロブリン又は免疫グロブリン様分子、並びにあらゆる脊椎動物(例えば、ヒト、ヤギ、ウサギ、及びマウスなどの哺乳動物)の免疫反応中に生成される類似の分子、並びに、他の分子への結合を実質的に排除するために、対象とする分子(又は非常に類似の対象とする分子の基)に特異的に結合する、抗体フラグメント(当該分野で知られているF(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fab’-SHフラグメント、及びFabフラグメント、組換え抗体フラグメント(例えば、sFvフラグメント、dsFvフラグメント、二重特異性sFvフラグメント、二重特異性dsFvフラグメント、F(ab)’2フラグメント、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、ダイアボディ、及びトリアボディ(当技術分野で知られている)、並びにラクダ抗体など)を指す。抗体はさらに、抗原のエピトープを特異的に認識し結合する、軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を少なくとも含む、ポリペプチドリガンドを指す。抗体は、各々、可変重(VH)領域及び可変軽(VL)領域と呼ばれる可変領域を有する、重鎖及び軽鎖で構成することができる。VH領域及びVL領域はともに、抗体によって認識される抗原に結合することを担う。抗体という用語はまた、無傷の免疫グロブリン、並びに当技術分野でよく知られているそれらの変異体及び部分も含む。
【0061】
本明細書で用いられる場合、用語「抗原」とは、抗体分子又はT細胞受容体などの、特異的な体液性又は細胞性免疫の産生物が特異的に結合することができる化合物、組成物、又は物質を指す。抗原は、例えば、ハプテン、単純な中間代謝産物、糖(例えば、オリゴ糖)、脂質、及びホルモン、並びに複合糖質(例えば、多糖)、リン脂質、核酸、及びタンパク質などの巨大分子を含む、任意の種類の分子でありうる。
【0062】
本明細書で用いられる場合、用語「生体サンプル」又は「組織サンプル」とは、限定はしないが、とりわけ、細菌、酵母、原生動物、及びアメーバなどの単細胞生物、健康な又は見かけ上健康なヒト対象、若しくは、多細胞生物(がんなどの診断又は検査を受けるべき状態又は疾患に罹患したヒト患者に由来するサンプルを含む、植物又は動物)など、あらゆる生物から得られた、排出された、又は分泌された固体又は流体のサンプルである。例えば、生体サンプルは、例えば、血液、血漿、血清、尿、胆汁、腹水、唾液、脳脊髄液、房水又は硝子体液、若しくは任意の体分泌物、浸出液、滲出液(例えば、膿瘍、若しくは他の感染又は炎症の部位から得られた体液)、若しくは関節(例えば、正常な関節、又は疾患に冒された関節)から得られた体液でありうる。生体サンプルはまた、任意の臓器又は組織から得られるサンプル(腫瘍生検などの生検又は剖検標本を含む)でありうるか、あるいは、細胞(初代細胞又は培養細胞であるかを問わず)若しくは任意の細胞、組織、又は臓器によって調整される培地を含みうる。サンプルは、黒色腫、腎細胞癌、及び非小細胞肺癌由来のものを含む腫瘍サンプルでありうる。幾つかの実施態様では、サンプルは、組織サンプル内のバイオマーカー(例えばタンパク質又は核酸配列)を含む標的を検出することによって、がんなどの病状について分析される。開示された方法の記載された実施態様はまた、「正常」サンプル又は「対照」サンプルと称される、異常、疾患、障害等を有しないサンプルに適することができる。例えば、複数の場所から組織サンプルを採取することによって、がんについて対象を試験することは有用でありえ、これらのサンプルを対照として使用し、後のサンプルと比較して特定のがんがその主要起源を超えて広がっているかどうかを決定することができる。幾つかの実施態様では、サンプルは、従来のタンパク質抽出方法によって、細胞溶解物、組織、又は生物体全体から抽出及び精製されたタンパク質でありうる。本開示の文脈では、その後、抽出されたタンパク質を、抗体が特定のタンパク質に結合するに至ったPNAコンジュゲート抗体と混合することができる。次いで、PNAを放出させ、計数して、タンパク質を定量する。
【0063】
本明細書で用いられる場合、「a」及び「b」が整数である「CaからCb」とは、アルキル、アルケニル又はアルキニル基内の炭素原子の数、又はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、又はアリール基の環内の炭素原子の数、若しくは、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、又はヘテロアリシクリル基内の炭素原子とヘテロ原子の合計数を指す。すなわち、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルの環、シクロアルケニルの環、シクロアルキニルの環、アリールの環、ヘテロアリールの環、又はヘテロアリシクリルの環は、「a」から「b」までの炭素原子を包括的に含むことができる。したがって、例えば、「C1からC4アルキル」基とは、1から4個の炭素を有する全てのアルキル基、すなわち、CH3-、CH3CH2-、CH3CH2CH2-、(CH3)2CH-、CH3CH2CH2CH2-、CH3CH2CH(CH3)-及び(CH3)3C-を指す。アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロアリシクリル基に関して「a」及び「b」が指定されていない場合、これらの定義に記載されている最も広い範囲であると想定される。
【0064】
本明細書で用いられる場合、「コンジュゲート」とは、より大きい構築物に共有結合している2つ以上の分子(及び/又はナノ粒子などの材料)を指す。
【0065】
本明細書で用いられる場合、用語「結合」又は「結合する」とは、1つの分子又は原子の別の分子又は原子への接合、結合(例えば、共有結合)、又は連結を指す。
【0066】
本明細書で用いられる場合、用語「検出プローブ」は、特定の標的(例えば、核酸配列、タンパク質等)に結合する核酸プローブ又は一次抗体を含む。検出プローブは、放射性同位元素、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光剤又は蛍光剤、ハプテン(DNPを含むがこれに限定されない)、及び酵素などの直接検出用の標識を含みうる。あるいは、検出プローブは、標識又はタグを含まなくてもよく、間接的に(例えば検出プローブに特異的な二次抗体を用いて)検出することができる。
【0067】
本明細書で用いられる場合、用語「ハプテン」は、抗体と特異的に結合することができる小分子であるが、典型的には、キャリア分子との組合せを除き、実質的に免疫原性がない。幾つかの実施態様では、ハプテンとしては、ピラゾール(例えば、ニトロピラゾール);ニトロフェニル化合物;ベンゾフラザン;トリテルペン;尿素(例えばフェニル尿素);チオ尿素(例えばフェニルチオ尿素);ロテノン及びロテノン誘導体;オキサゾール(例えばオキサゾールスルホンアミド);チアゾール(例えばチアゾールスルホンアミド);クマリン及びクマリン誘導体;並びに、シクロリグナンが挙げられるが、これらに限定されない。ハプテンのさらなる非限定的な例としては、チアゾール;ニトロアリール;ベンゾフラン;トリペルペン;及びシクロリグナンが挙げられる。ハプテンの具体例としては、ジニトロフェニル、ビオチン、ジゴキシゲニン、及びフルオレセイン、並びにそれらの任意の誘導体又は類似体が挙げられる。他のハプテンは、これらの開示全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第8,846,320号;同第8,618,265号;同第7,695,929号;同第8,481,270号;及び、同第9,017,954号に記載されている。ハプテン自体は直接検出に適していてもよい、すなわち、それらは検出に適したシグナルを発することができる。
【0068】
本明細書で用いられる場合、用語「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」は、元素周期表の第7欄の放射線安定原子のいずれか1つ、例えばフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素を意味する。
【0069】
本明細書で用いられる場合、用語「免疫組織化学」とは、抗原と、抗体などの特異的結合剤との相互作用を検出することによって、サンプ中の抗原の存在又は分布を決定する方法を指す。抗体-抗原結合を可能にする条件下で、サンプルを抗体と接触させる。抗体-抗原結合は、抗体にコンジュゲートしている検出可能な標識(直接検出)によって、又は一次抗体に特異的に結合する二次抗体にコンジュゲートしている検出可能な標識(間接検出)によって、検出することができる。
【0070】
本明細書で用いられる場合、用語「多重」、「多重化」、又は「多重化する」とは、サンプル中の複数の標的を同時に、実質的に同時に、又は逐次的に検出することを指す。多重化は、複数の異なる核酸(例えば、DNA、RNA、mRNA、miRNA)、及びポリペプチド(例えば、タンパク質)の両方を個々に、並びに任意及び全ての組み合わせで、同定及び/又は定量することを含みうる。
【0071】
本明細書で用いられる場合、用語「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」、及び「核酸」は、本明細書ではあらゆる形態の核酸分子を包含するように使用される。非限定的に、このカテゴリーには、それぞれ修飾を伴う、及び伴わない、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、ペプチド核酸(PNA)、及びそれらの誘導体が含まれる。
【0072】
本明細書で用いられる場合、用語「一次抗体」とは、組織サンプル中の標的タンパク質抗原に特異的に結合する抗体を指す。一次抗体は、一般に、免疫組織化学的手順において用いられる第1の抗体である。したがって、一次抗体は、組織サンプル内の標的を検出するための「検出プローブ」として役立てることができる。
【0073】
本明細書で用いられる場合、用語「ペプチド核酸」又は「PNA」は、糖-リン酸骨格が偽ペプチド骨格で置き換えられているオリゴヌクレオチド類似体である。PNAは、高い特異性及び選択性でDNA及びRNAに結合し、対応する核酸複合体よりも安定であると考えられるPNA-RNA及びPNA-DNAハイブリッドをもたらす。核酸に対するPNAの結合親和性及び選択性は、PNA骨格に立体中心(D-Lysベースの単位など)を導入することによって、改変することができる。PNAは、オリゴマー、連結ポリマー、又はキメラオリゴマーでありうる。PNAの化学合成及びアセンブリのための方法は、それらの開示全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,539,082号、同第5,527,675号、同第5,623,049号、同第5,714,331号、同第5,736,336、5,773,571号、及び同第5,786,571号に記載されている。
【0074】
本明細書で用いられる場合、全体を通して使用される用語「反応性基」、「(複数の)反応性基」は、本明細書に記載の第1の単位を第2の単位に結合するのに適したさまざまな基(例えば官能基)のいずれかを意味する。例えば、反応性基は、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、NHSエステル、塩化スルホニルなどの酸塩化物、アルデヒド及びグリコール、エポキシド及びオキシラン、カーボネート、アリール化剤、イミドエステル、カルボジイミド、無水物、及びそれらの組合せなどのアミン反応性基でありうる。適切なチオール反応性官能基としては、ハロアセチル及びアルキルハライド;マレイミド;アジリジン;アクリロイル誘導体;アリール化剤;ピリジルジスルフィド、TNB-チオール、及びジスルフィド還元剤などのチオールジスルフィド交換試薬;並びにそれらの組合せが挙げられる。適切なカルボキシレート反応性官能基としては、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、カルボニルジイミダゾール化合物、及びカルボジイミドが挙げられる。適切なヒドロキシル反応性官能基としては、エポキシド及びオキシラン、カルボニルジイミダゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート又はN-ヒドロキシスクシンイミジルクロロホルメート、過ヨウ素酸酸化化合物、酵素酸化、アルキルハロゲン、及びイソシアネートが挙げられる。アルデヒド及びケトン反応性官能基としては、ヒドラジン、シッフ塩基、還元的アミノ化生成物、マンニッヒ縮合生成物、及びそれらの組合せが挙げられる。活性水素反応性化合物には、ジアゾニウム誘導体、マンニッヒ縮合生成物、ヨウ素化反応生成物、及びそれらの組合せが含まれる。光反応性化学官能基としては、アリールアジド、ハロゲン化アリールアジド、ベンゾホノン、ジアゾ化合物、ジアジリン誘導体、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0075】
本明細書で用いられる場合、語句「レポーター部分」とは、サンプル中のPNAコンジュゲートを含むコンジュゲートの存在(すなわち定性分析)及び/又は濃度(すなわち定量分析)を示す、(視覚的、電子的、又はその他の方法で)検出可能なシグナルを生成することができる分子又は材料を指す。検出可能なシグナルは、光子の吸収、放出、及び/又は散乱(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外線周波数、可視周波数、及び紫外線周波数の光子を含む)を含む、いずれかの知られている又はまだ発見されていない機構によって発生させることができる。
【0076】
本明細書で用いられる場合、ここでの用語「二次抗体」とは、検出プローブ又はその一部分(例えばハプテン又は一次抗体)に特異的に結合し、それによって、検出プローブと、存在する場合にはその後の試薬(例えば、標識、酵素等)との間に架橋を形成する、抗体を指す。二次抗体を用いて、例えば一次抗体などの検出プローブを間接的に検出することができる。二次抗体の例としては、それぞれ本明細書に記載される抗タグ抗体、抗種抗体、及び抗標識抗体が挙げられる。
【0077】
本明細書で用いられる場合、用語「特異的結合体」とは、特異的結合対の成員を指す。特異的結合対は、それらが他の分子への結合を実質的に排除して互いに結合することを特徴とする分子の対である(例えば、特異的結合対は、生体サンプル中の他の分子との結合対の2つの成員のいずれかについての結合定数よりも少なくとも103M-1、104M-1、又は105M-1大きい結合定数を有することができる)。特異的結合部分の例としては、特異的結合タンパク質(例えば、抗体、レクチン、ストレプトアビジンなどのアビジン、及びプロテインA)が挙げられる。特異的結合部分はまた、このような特異的結合タンパク質によって特異的に結合される分子(又はそれらの一部)も含みうる。特異的結合体には、上記の一次抗体、又は核酸プローブが含まれる。
【0078】
本明細書で使用する場合、本明細書で用いられる「染色」、「染色する」などの用語は、一般に、生物学的検体中の特定の分子(脂質、タンパク質、又は核酸など)若しくは特定の構造(正常又は悪性細胞、サイトゾル、核、ゴルジ体、又は細胞骨格など)の存在、位置、及び/又は量(濃度など)を検出及び/又は識別する、生物学的検体の任意の処理を指す。例えば、染色は、特定の分子又は特定の細胞構造と生物学的検体の周囲部分との間のコントラストをもたらすことができ、染色の強度は、検体内の特定の分子の量の尺度を提供することができる。染色は、明視野顕微鏡だけでなく、位相差顕微鏡、電子顕微鏡、及び蛍光顕微鏡などの他の観察ツールを用いた、分子、細胞構造、及び生物の観察を補助するために使用することができる。システム2によって行われる幾つかの染色を使用して、細胞の輪郭を視覚化することができる。システム2によって行われる他の染色は、他の細胞成分を染色せずに、又は比較的ほとんど染色することなく、染色されるある特定の細胞成分(分子又は構造など)に依存しうる。システム2によって行われる染色方法の種類の例としては、限定はしないが、組織化学的方法、免疫組織化学的方法、及び核酸分子間のハイブリダイゼーション反応などの分子間の反応(非共有結合相互作用を含む)に基づいた他の方法が挙げられる。特定の染色方法としては、限定はしないが、一次染色方法(例えば、H&E染色、Pap染色等)、酵素結合免疫組織化学的方法、並びに蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)などのin situRNA及びDNAハイブリダイゼーション法が挙げられる。
【0079】
基又は部分が「置換されている」又は「任意選択的に置換されている」(若しくは「任意選択的に有している」又は「任意選択的に含む」)と記載されている場合は常に、その基は置換されていなくてもよく、あるいは、示されている置換基の1つ以上で置換されていてもよい。同様に、置換されている場合に、基が「置換又は非置換」であると記載されているときは、置換基は、示されている置換基の1つ以上から選択することができる。置換基が示されていない場合、示される「任意選択的に置換された」又は「置換された」基は、個別にかつ独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、シアネート、ハロゲン、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、保護C-カルボキシ、O-カルボキシ、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル、ハロアルコキシ、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、アミノ、エーテル、アミノ(例えば一置換アミノ基又は二置換アミノ基)、及びそれらの保護化誘導体から選択される1つ以上の基で置換されてもよいことを意味する。上記の基のいずれも、O、N、又はSを含む1つ以上のヘテロ原子を含みうる。例えば、部分がアルキル基で置換されている場合、そのアルキル基は、O、N、又はSから選択されるヘテロ原子を含むことができる(例えば、-(CH2-CH2-O-CH2-CH2)-)。
【0080】
本明細書で用いられる場合、用語「実質的に」とは、対象とする特徴又は特性の全体又は全体的に近い度合い又は程度を示す、定性的条件を意味する。幾つかの実施態様では、「実質的に」は、約20%以内を意味する。幾つかの実施態様では、「実質的に」は、約15%以内を意味する。幾つかの実施態様では、「実質的に」は、約10%以内を意味する。幾つかの実施態様では、「実質的に」は、約5%以内を意味する。
【0081】
本明細書で用いられる場合、用語「標的」とは、存在、位置、及び/又は濃度を決定しているか又は決定することができる、任意の分子を意味する。標的の例には、本明細書に開示されているものなど、核酸配列及びタンパク質が含まれる。
【0082】
オリゴマー及びコンジュゲート
本開示の一態様は、特異的結合体及びオリゴマーのコンジュゲートに関する。幾つかの実施態様では、コンジュゲートは、PNAコンジュゲート、すなわち、特異的結合体と、PNA配列を含むオリゴマーとのコンジュゲートである。幾つかの実施態様では、特異的結合体とオリゴマーとは、切断可能な基を含むリンカーを含めたリンカーを介して結合している。幾つかの実施態様では、オリゴマーは、PNA配列、非荷電性DNA配列、又は荷電性及び非荷電性の塩基を含有するDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、オリゴマーは、PNA配列を含む。幾つかの実施態様では、特異的結合体は抗体であり、オリゴマーはPNAを含む。
【0083】
一般に、本明細書に開示されるコンジュゲートは、免疫組織化学的アッセイ、又は多重アッセイを含むin situハイブリダイゼーションアッセイでの使用に適しており、それによって組織サンプル内の標的を検出できるように検出プローブとして使用することができる。コンジュゲートは、相補的PNA、DNA、又はRNAに、若しくは、(i)直接検出すること;(ii)フルオロフォア、酵素(HRP)などの直接検出することができる特定の実体を保有すること;若しくは、(iii)ハプテンなどの他の抗体の結合を介して間接的に検出することができる同様の配列に、ハイブリダイズすることができる。本明細書中に開示されるコンジュゲートはまた、定量分析に用いることができる分子「バーコード」として機能しうる。
【0084】
幾つかの実施態様では、本開示のコンジュゲートは、式(I)の一般式を有する:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
Zは、PNA配列、非荷電性DNA配列、並びに荷電性及び非荷電性の塩基を含むDNA配列からなる群より選択され;
Xは標識であり;
Yはスペーサーであり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である]。
【0085】
幾つかの実施態様では、Zは、非荷電の塩基のみを有するDNA配列を含む。他の実施態様では、Zは、荷電性の塩基及び非荷電性の塩基の両方を有するDNA配列を含む。さらに他の実施態様では、Zは、DNA配列の塩基の少なくとも50%が非荷電性であるDNA配列を含む。さらに他の実施態様では、Zは、PNA配列を含む。
【0086】
幾つかの実施態様では、コンジュゲートは、式(IA)の一般式を有するPNAコンジュゲートである:
特異的結合体-PNAオリゴマー (IA),
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;かつ
『PNAオリゴマー』は、少なくとも1つのPNA配列を含む]。
【0087】
『PNAオリゴマー』はまた、リンカー、スペーサー、若しくは、特異的結合体へのPNA配列の結合を容易にするように設計された基などの他の基を含みうる。他の実施態様では、PNAオリゴマーは、コンジュゲートの水溶性を高める基を含みうる。
【0088】
一般に、『PNA』は、限定することなく、任意の配列を有しうる。幾つかの実施態様では、PNA配列は同種である、すなわち、単一のヌクレオチドを含む。他の実施態様では、PNA配列は異種である、すなわち、複数のヌクレオチドを含み、該ヌクレオチドは、ランダムに構成されていてもよく、あるいは、繰り返し群内に構成されていてもよい。さらに他の実施態様では、配列は、キャリアとしてのみ機能するのとは対照的に、バーコードなどの特定の情報をコードするように設計することができる。
【0089】
幾つかの実施態様では、『PNA』は、2から60塩基を有する配列を含む。他の実施態様では、『PNA』は、2から50塩基を有する配列を含む。さらに他の実施態様では、『PNA』は、2から40塩基を有する配列を含む。さらなる実施態様では、『PNA』は、2から40塩基を有する配列を含む。さらなる実施態様では、『PNA』は、1から30塩基を有する配列を含む。なおさらなる実施態様では、『PNA』は、1から20塩基を有する配列を含む。他の実施態様では、『PNA』は、20から40塩基を有する配20から40塩基を有する配列を含む。さらに他の実施態様では、『PNA』は、20から30塩基を有する配列を含む。さらに他の実施態様では、『PNA』は、30から40塩基を有する配列を含む。さらに他の実施態様では、『PNA』は、5から20塩基の配列を含む。さらに他の実施態様では、『PNA』は、5から15塩基の配列を含む。さらに他の実施態様では、『PNA』は、8から12塩基の配列を含む。さらに他の実施態様では、『PNA』は、12から18塩基の配列を含む。さらなる実施態様では、『PNA』は約10塩基を含む。さらなる実施態様では、『PNA』は約15塩基を含む。さらなる実施態様では、『PNA』は少なくとも10塩基を含む。さらなる実施態様では、『PNA』は少なくとも150塩基を含む。
【0090】
PNA配列の非限定的な例を以下に提供する。一実施態様では、PNAは、配列GTCAACCATCTTCAG(配列番号1)を有しうる。別の実施態様では、PNAは、配列TTAGTCCAACTGGCA(配列番号2)を有しうる。別の実施態様では、PNAは、配列CATTCAAATCCC CGA(配列番号3)を有しうる。別の実施態様では、PNAは、配列CCATCTTCAG(配列番号4)を有しうる。別の実施態様では、PNAは、配列TTAGTCCAAC(配列番号5)を有しうる。別の実施態様では、PNAは、配列GGTAGAAGTC(配列番号6)を有しうる。別の実施態様では、PNAは、配列AATCAGGTTG(配列番号7)を有しうる。PNA塩基は帯電(DNA塩基のように)していないことから、PNAはDNAと比較して疎水性であると考えられる。PNA疎水性は、そのPNA配列を作る塩基の数に比例するとも考えられる。このように、PNA配列がより多くの塩基を有するほど、疎水性は、より高くなる。結果として、例えば、15塩基のPNA配列は、10塩基のPNA配列よりも疎水性である。疎水性PNA配列は水溶液に容易に溶解しないことから、それらは、抗体にコンジュゲートすることがより困難であるとも考えられる。さらには、抗体上の疎水性PNA配列のコンジュゲーションは、組織上のコンジュゲートの非特異的結合として現れるコンジュゲートの誤挙動を引き起こす。PNA配列の塩基数を減少させると(例えば、10塩基から15塩基から)、より高いPNA負荷及びより安定なコンジュゲートが得られる。
【0091】
幾つかの実施態様では、PNAオリゴマーは、式(IB)の構造を有する:
[式中、
Tは、末端反応性部分を有する基であり;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは標識であり;
Yはスペーサーであり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;かつ
zは0又は1である]。
【0092】
幾つかの実施態様では、Tは、例えば抗体のアミノ基などの特異的結合体の官能基との直接的な結合、若しくは、例えばDBCO-マレイミド二官能性リンカーを介して抗体のチオール基に結合したPNA配列上のアジドなどのリンカーを介した間接的な結合を形成することができる反応基である。幾つかの実施態様では、Tは、NHSエステル、チオール、マレイミド又はアジド基である。
【0093】
幾つかの実施態様では、PNAコンジュゲートは、式(IC)の構造を有する:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは標識であり;
Yはスペーサーであり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である]。
【0094】
幾つかの実施態様では、単一のPNAオリゴマーが特異的結合体に結合する。他の実施態様では、式(IB)のいずれかのものを含む、複数のPNAオリゴマーが、特異的結合体に結合する。この文脈では、幾つかの実施態様において、nは、特異的結合体に結合したPNAオリゴマー(リンカー、PNA配列、及び必要に応じて標識を含む)の数を表す。幾つかの実施態様では、nは1から10の範囲の整数である。他の実施態様では、nは1から8の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは1から6の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは2から6の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは1から4の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは2から4の範囲の整数である。
【0095】
幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から60塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から30塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0096】
幾つかの実施態様では、『特異的結合体』は一次抗体であり、PNA配列は、約10塩基を含む。他の実施態様では、『特異的結合体』は二次抗体であり、PNA配列は、約15塩基を含む。
【0097】
幾つかの実施態様では、式(IC)のPNAコンジュゲートは、式(ID)の構造を有する:
[式中、
『Ab』は、一次抗体又は二次抗体からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
『PNA』はPNA配列であり;
Xは標識であり;
Yはスペーサーであり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である]。
【0098】
幾つかの実施態様では、1つ以上のPNAオリゴマーは、一次又は二次抗体に結合して、PNA-抗体コンジュゲートを形成する。幾つかの実施態様では、少なくとも1つのPNAオリゴマーは一次抗体に結合する。幾つかの実施態様では、少なくとも1つのPNAオリゴマーは二次抗体に結合する。この文脈では、幾つかの実施態様において、nは、抗体(一次又は二次のいずれか)に結合したPNAオリゴマー(リンカー、PNA配列、及び必要に応じて標識を含む)の数を表す。幾つかの実施態様では、nは1から10の範囲の整数である。他の実施態様では、nは1から8の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは1から6の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは2から6の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは1から4の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、nは2から4の範囲の整数である。
【0099】
任意の特定の一次又は二次抗体に結合させることができるPNAオリゴマーの数は、当然ながら、選択された特定の抗体、並びにその物理的及び/又は化学的性質に応じて決まる。幾つかの実施態様では、抗体あたりのオリゴマー数の標識度は、約2から約10の範囲である。他の実施態様では、標識度は約1より大きい。他の実施態様では、標識度は約2から約6の範囲である。さらに他の実施態様では、標識度は約4である。特定の理論に縛られることを望むものではないが、比較的程度の低い標識化は、抗体機能性(例えば、抗原結合又は標識抗体の長期安定性)に対するあらゆる有害な影響を防止又は軽減すると考えられる。この場合もやはり、特定の理論に縛られることを望むものではないが、抗体の安定性は、抗体自体に大きく依存すると考えられる。したがって、抗体あたりのPNAコンジュゲートの数は、抗体が機能化に耐える能力に依存しうる。実際、複数の標識を含むPNAコンジュゲートを含めることさえ可能である。例えば、フルオロフォア及びハプテンを有することができ、それによって、幾つかの実施態様では、ハプテンを検出に使用することができ、一方フルオロフォアはPNAの抗体への結合をモニタするために使用することができる。
【0100】
PNAオリゴマーは、抗体の任意の部分に結合させることができる。抗体中の3つの官能基は、共有結合的修飾のための部位である:アミン(-NH2)、チオール基(-SH)、及び炭水化物残基(Shrestha Dら、2012)。そのため、本明細書に開示されているPNAオリゴマーのいずれも、アミン残基、チオール残基、及び炭水化物残基、又はそれらの任意の組合せに結合することができる。幾つかの実施態様では、PNAオリゴマーは、抗体のFc部分に結合する。他の実施態様では、PNAオリゴマーは、抗体のヒンジ領域に結合する。幾つかの実施態様では、PNAオリゴマーは、抗体のFc領域の1つ以上及び抗体のヒンジ領域の1つ以上に結合する。実際、本開示では任意の組合せが企図されている。
【0101】
アミノ基は、主に、これらの部分が抗体中に豊富にあるために、一般的に好まれている。しかしながら、アミノ基のランダム性は、抗体が失活しうるという危険性をもたらす。(Adamczyk M, et al, 1999, Bioconjug Chem; Jeanson A, et al, 1988, J Immunol Methods; Vira S, et al, 2010, Anal Biochem; Pearson JE et al, 1998, J Immunol Methods)。幾つかの実施態様では、1つ以上のPNAオリゴマーは、抗体のアミノ基に結合する。
【0102】
他方では、適切な反応条件下において、スルフヒドリル標識は、ヒンジ領域における抗体の2つの重鎖間のジスルフィド結合の高い特異性標的化を提供する。ヒンジ領域は抗原結合部位から離れていることから、この修飾は、抗体の結合親和性をよりよく保持すると考えられている。幾つかの実施態様では、1つ以上のPNAオリゴマーは、抗体のチオール基に結合する。
【0103】
抗体のFc部分に存在する炭水化物部分でのコンジュゲーションは、チオール基のコンジュゲーションと類似しており、したがって、修飾が抗原結合部位から離れた-CHO基で起こる。これもまた、特定の理論に縛られることを望むものではないが、炭水化物におけるコンジュゲーションは、抗体の結合親和性に対する悪影響が少ないと考えられる。標識度は、特異的抗体のグリコシル化状態に応じて異なる。しかしながら、抗体親和性の喪失は、依然として、Jeanson A, et al, 1988, J Immunol Methodsによって報告されていた。幾つかの実施態様では、1つ以上のPNAオリゴマーは、抗体の炭水化物基に結合する。
【0104】
本開示の別の態様は、式(II)の構造を有するコンジュゲートである:
[式中、
『特異的結合体』は、抗体、抗体フラグメント、薬物/抗体複合体、及び核酸からなる群より選択され;
『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基であり;
Zは、PNA配列、非荷電性DNA配列、並びに荷電性及び非荷電性の塩基を含むDNA配列からなる群より選択され;
Xは標識であり;
Yはスペーサーであり;
mは、0又は1から6の範囲の整数であり;
zは0又は1であり;かつ
nは1から12の範囲の整数である]。
【0105】
幾つかの実施態様では、Zは、非荷電のDNA塩基のみを含むDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、Zは、荷電性塩基及び非荷電性塩基の混合物を含むDNA配列を含む。幾つかの実施態様では、Zは、DNA配列中の塩基の少なくとも50%が非荷電性であるDNA配列を含む。
【0106】
幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から60塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から30塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から20塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約5から10塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約15塩基を含む。幾つかの実施態様では、PNA配列は約10塩基を含む。
【0107】
幾つかの実施態様では、PNAコンジュゲートは、特異的結合部分をPNAオリゴマーに結合するように設計された、例えば多官能性リンカーなどのリンカーを含む。幾つかの実施態様では、多官能性リンカーは、ヘテロ二官能性リンカー、すなわち少なくとも2つの異なる反応性官能基を含むものである(例えば、本明細書で定義されるA及びBを参照)。例えば、ヘテロ二官能性リンカーは、カルボン酸基及びアミン基を含むことができ、ここで、カルボン酸基又はアミン基の一方は特異的結合体又はPNA配列の一方と結合を形成することができ、カルボン酸基又はアミン基の他方は特異的結合体又はPNA配列の別の方と結合を形成することができる。幾つかの実施態様では、「リンカー」は、1つ以上の切断可能基を含む。
【0108】
幾つかの実施態様では、PNAは、抗体に直接結合するように設計することができる。他の実施態様では、リンカーは、PNAを抗体にコンジュゲートするだけでなく、本明細書中にさらに記載されるように化学的切断部位などの新規官能基を導入するためにも使用することができる。幾つかの実施態様では、異なるPNA配列又は同じPNA配列の直接コンジュゲーション(切断不可能)及び間接コンジュゲーション(リンカーを介して切断可能)の混合物を、抗体に適用することができる。
【0109】
一般に、上記のように、『リンカー』は、2から80個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的にO、N、又はSから選択される1つ以上のヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である。リンカー(切断可能なリンカーを含む)を本明細書でさらに詳細に説明するが、一般に、本明細書で企図されるリンカーは、約1g/molから約3000g/molの範囲の分子量を有する。他の実施態様では、リンカーは、約20g/molから約200g/molの範囲の分子量を有する。幾つかの実施態様では、リンカーは、約0.5nmから約20nmの範囲の長さを含む。他の実施態様では、リンカーは、約15nm未満の長さを含む。さらに他の実施態様では、リンカーは、約10nm未満の長さを含む。
【0110】
幾つかの実施態様では、『リンカー』は、式(IIIa)に示される構造を有する:
[式中、d及びeは、それぞれ独立して、2から20の範囲の整数であり;Qは、結合、O、S、又はN(R
c)(R
d)であり;R
a及びR
bは、独立して、H、C
1-C
4アルキル基、F、Cl、又はN(R
c)(R
d)であり;R
c及びR
dは、独立して、CH
3又はHであり;A及びBは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である]。幾つかの実施態様では、d及びeは、2から6の範囲の整数である。幾つかの実施態様では、本明細書においてさらに詳細に記載されるように、A又はBの少なくとも一方は、切断可能な部分を含む。
【0111】
幾つかの実施態様では、『リンカー』は、式(IIIb)に示される構造を有する:
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して、2から20の範囲の整数であり;
Qは、結合、O、S、又はN(R
c)(R
d)であり;
R
c及びR
dは、独立して、CH
3又はHであり;かつ
A及びBは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である]。
【0112】
幾つかの実施態様では、「リンカー」は、式(IIIc)に示される構造を有する:
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して、2から20の範囲の整数であり;
A及びBは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である]。他の実施態様では、d及びeは、2から15の範囲の整数である。他の実施態様では、d及びeは、2から10の範囲の整数である。さらに他の実施態様では、d及びeは、2から6の範囲の整数である。
【0113】
幾つかの実施態様では、『リンカー』は、PNAコンジュゲートの水溶性を高めるために、ポリエチレングリコール(PEG)基などの可溶化基を含む。幾つかの実施態様では、リンカーは、約2から約24のPEG基を含む。幾つかの実施態様では、リンカーは、約2から約18のPEG基を含む。他の実施態様では、リンカーは、約2から約12のPEG基を含む。さらに他の実施態様では、リンカーは、約2から約6のPEG基を含む。さらに他の実施態様では、リンカーは4つのPEG基を含む。さらに他の実施態様では、リンカーは8つのPEG基を含む。さらに他の実施態様では、リンカーは12のPEG基を含む。さらに他の実施態様では、リンカーは16のPEG基を含む。さらに他の実施態様では、リンカーは24のPEG基を含む。特定の理論に縛られることを望むものではないが、このようなアルキレンオキシドリンカーの導入は、PNAコンジュゲートの親水性を高めると考えられる。当業者は、リンカー内のアルキレンオキシドの繰り返し単位数が増加するにつれて、PNAコンジュゲートの親水性もまた増加しうることを認識するであろう。本開示のある特定の開示された実施態様を実施するのに有用なさらなるヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールリンカーは、2006年4月28日出願の米国特許出願第11/413,778号の「ナノ粒子コンジュゲート(Nanoparticle Conjugates)」;2006年4月27日出願の米国特許出願第11/413,415号の「抗体コンジュゲート(Antibody Conjugates)」を含む、譲受人の同時係属出願に記載されている。
【0114】
幾つかの実施態様では、A及びBは、一群の特異的結合体又は一群のPNA配列と結合を形成することができる基を含む。幾つかの実施態様では、A又はBの一方又は両方がカルボニル反応性基である。適切なカルボニル反応性基には、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、及びアミンが含まれる。他の実施態様では、A又はBの一方又は両方がアミン反応性基である。適切なアミン反応性基としては、NHS又はスルホ-NHSなどの活性エステル、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、ハロゲン化アリール、イミドエステル、無水物などが挙げられる。さらなる実施態様では、A又はBの一方又は両方がチオール反応性基である。適切なチオール反応性基としては、非重合性マイケルアクセプター、ハロアセチル基(ヨードアセチルなど)、ハロゲン化アルキル、SPDP(スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、マレイミド、アジリジン、アクリロイル基、ビニルスルホン、ベンゾキノン、芳香族基が挙げられ、これらは、フルオロベンゼン基(テトラ及びペンタフルオロベンゼン基など)、並びにピリジルジスルフィド基などのジスルフィド基及びエルマン試薬で活性化されたチオールなどの求核置換を受けることができる。
【0115】
幾つかの実施態様では、A及び/又はBは、UV又は可視光の光切断可能基を含む。幾つかの実施態様では、UV又は可視光の光切断可能基は、アリールカルボニルメチル基(4-アセチル-2-ニトロベンジル、ジメチルフェナシル(DMP)、2-(アルコキシメチル)-5-メチル-α-クロロアセトフェノン、2,5-ジメチルベンゾイルオキシラン、及びベンゾイン基:3’,5’-ジメトキシベンゾイン(DMB)を含む)、O-ニトロベンジル基(1-(2-ニトロフェニル)エチル(NPE)、1-(メトキシメチル)-2-ニトロベンゼン、4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル(DMNB);α-カルボキシニトロベンジル(α-CNB)、1-(2-ニトロフェニル)エチルオキシカルボニル及び2-ニトロ-2-フェネチル誘導体を含むo-ニトロ-2-フェネチルオキシカルボニル基、並びに、アシル化5-ブロモ-7-ニトロインドリンなどのo-ニトロアニリドを含む);クマリン-4-イルメチル基(7-メトキシクマリン誘導体を含む);アリールメチル基(o-ヒドロキシアリールメチル基を含む)からなる群より選択される。
【0116】
他の実施態様では、A及び/又はBは近赤外光切断可能基を含む。適切な近赤外光切断可能基としては、C4-ジアルキルアミンで置換されたヘプタメチンシアニンを含むシアニン基が挙げられる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、光切断可能なリンカーの導入は、PNA放出に対する空間的制御、及び最終的にはマーカー発現の定量的測定を可能にすると考えられる。
【0117】
さらに他の実施態様では、A及び/又はBは、還元剤を含む異なる化学反応物によって、又はpH誘発性の変化によって切断することができる、化学的に切断可能な基を含む。適切な化学的に切断可能な基には、ジスルフィド系基;ジアゾベンゼン基(ナトリウムジチオナイトに対して感受性の2-(2-アルコキシ-4-ヒドロキシ-フェニルアゾ)安息香酸スキャフォルドを含む);エステル結合系基(高pH);及び、酸性感受性リンカー(ジアルコキシジフェニルシランリンカー又はアシルヒドラゾンなど)が含まれる。隣接ジオール切断可能リンカーは、"A simple and effective cleavable linker for chemical proteomics applications," Mol Cell Proteomics, 2013 Jan;12(1):237-44. doi: 10.1074/mcp.M112.021014. Epub 2012 Oct 1などに記載されているように、NaIO4で切断することができる。さらなる実施態様では、A及び/又はBは、酵素的に切断可能なリンカーを含む。適切な酵素的に切断可能な基としては、トリプシン切断可能基及びV8プロテアーゼ切断可能基が挙げられる。
【0118】
幾つかの実施態様では、多官能性リンカーは、直交的に保護及び脱保護することができるものから選択され、当業者が一度に多官能性リンカーに特異的結合体又はPNA部分の1つをコンジュゲートさせ、それによって望ましくない副反応又は副産物を防止する。
【0119】
幾つかの実施態様では、Yは、1から12個の炭素原子を有し、かつ、任意選択的に1つ以上のO、N、又はSヘテロ原子を有する、分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は非置換、飽和又は不飽和の基である。幾つかの実施態様では、Yは、『リンカー』に関して上記説明したものなどの切断可能基を含む。
【0120】
幾つかの実施態様では、Xは、ハプテン、フルオロフォア、色原体、酵素、リガンド、リン光剤又は化学発光剤、量子ドット、質量分析タグ、若しくは他の任意の適切な実体から選択される。選択される標識の種類は、合成されるPNAオリゴマー又はPNAコンジュゲート、並びに、適切な特異的結合体へのコンジュゲーションの後のPNAコンジュゲートの最終的な役割に応じて決まる。例えば、幾つかの実施態様では、PNAオリゴマーが抗体にコンジュゲートしている場合に、標識を直接検出できるように、標識を選択することができる(例えば、フルオレセイン又はフルオレセインの誘導体又は類似体)。他の実施態様では、PNAオリゴマーが抗体にコンジュゲートされている場合に、標識を間接的に検出することができるように、標識を選択することができる(例えば、ハプテンに特異的な二次抗体を用いることによるハプテン標識の検出、ここで、二次抗体は検出可能な部分にコンジュゲートしている)。さまざまな目的に適した標識の選択の手引きは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and Wiley-Intersciences (1987)に論じられている。
【0121】
フルオロフォアは、クマリン、フルオレセイン(又はフルオレセイン誘導体及び類似体)、ローダミン、レゾルフィン、ルミノフォア、及びシアニンを含む幾つかの一般的なケミカルクラスに属する。蛍光分子の追加の例は、The Handbook - A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Molecular Probes, Eugene, ORに見出すことができる。
【0122】
標識が酵素を含む場合、発色部分、蛍光発生化合物、又は発光化合物などの検出可能な基質(すなわち、酵素の基質)を、酵素と組み合わせて使用して、検出可能なシグナルを生成することができる(このような多種多様な化合物は、例えば、米国オレゴン州ユージーン所在のInvitrogen Corporationから市販されている)。発色性化合物/基質の特定の例としては、ジアミノベンジジン(DAB)、4-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファストレッド、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、ファストレッド、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリンスルホン酸](ABTS)、o-ジアニシジン、4-クロロナフトール(4-CN)、ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)、o-フェニレンジアミン(OPD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトピラノシド(X-Gal)、メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド(MU-Gal)、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(PNP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルー、及びテトラゾリウムバイオレットが挙げられる。
【0123】
あるいは、酵素を金属組織学的検出スキームに使用することができる。金属組織学的検出法は、アルカリホスファターゼなどの酵素を、水溶性金属イオン及び該酵素の酸化還元不活性基質と組み合わせて使用することを含む。幾つかの実施態様では、基質は酵素によって酸化還元活性剤へと変換され、該酸化還元活性剤は金属イオンを還元し、それによって検出可能な沈殿物を形成させる。(例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、2004年12月20日出願の米国特許出願第11/015,646号、国際公開第2005/003777号、及び米国特許出願公開第2004/0265922号を参照)。金属組織学的検出法は、やはり検出可能な沈殿物を形成するために、水溶性金属イオン、酸化剤、及び還元剤と共に、オキシドレダクターゼ酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ)を使用することを含む。(例えば、参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第6,670,113号を参照)。
【0124】
ハプテンの例は本明細書に開示されている。PNA配列を分析するために質量分析を使用する例は、"Peptide nucleic acid characterization by MALDI-TOF mass spectrometry," Anal Chem. 1996 Sep 15;68(18):3283-7に記載されている。
【0125】
幾つかの実施態様では、Xは、ジニトロフェニル、ビオチン、ジゴキシゲニン、フルオレセイン、ローダミン、又はそれらの組合せからなる群より選択される。他の実施態様では、Xは、オキサゾール、ピラゾール、チアゾール、ニトロアリール、ベンゾフラン、トリテルペン、尿素、チオ尿素、ロテノイド、クマリン、シクロリグナン、又はそれらの組合せからなる群より選択される。さらに他の実施態様では、Xは、5-ニトロ-3-ピラゾールカルバミド、2-(3,4-ジメトキシフェニル)キノリン-4-カルボン酸)、3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド、2,1,3-ベンゾオキサジアゾール-5-カルバミド、及び2-アセトアミド-4-メチル-5-チアゾールスルホンアミドからなる群より選択される。さらに他の実施態様では、Xは、本明細書でさらに説明されるハプテン、クロモフォア、フルオロフォア、及び酵素のいずれかから選択っすることができる(例えば、本明細書で「レポーター部分」として列挙されるものを参照)。
【0126】
当然ながら、幾つかの実施態様では、PNAコンジュゲートはいかなる標識も含まない、すなわち、PNAコンジュゲートのPNAオリゴマー部分はヌクレオチドで終端する。
【0127】
PNAコンジュゲートの合成
PNAコンジュゲートは、当業者に公知であることが知られている任意の手段によって合成することができる。幾つかの実施態様では、PNAオリゴマーは、
図19に示すように、NHSエステル基を有する架橋剤(例えば、SPDP-PEG
8-NHS)などのヘテロ二官能性架橋剤を介して特異的結合体に結合する。ヘテロ二官能性架橋剤の例には、
図16に示されるDBCO-PEGn-マレイミド、DBCO-PEGn-NHS、N3-PEGn-NHS、又はN3-PEGn-マレイミド(nは0~20の範囲である)が含まれる。コンジュゲーションに適したPNA配列の非限定的な例には次のものが含まれる:
配列番号8: 5’-ビオチン-o-GTCAACCATCTTCAG-Lys(C
6SH)-3’
配列番号9: 5’-ビオチン-o-TTAGTCCAACTGGCA-Lys(C
6SH)-3’
配列番号10: 5’-ビオチン-o-CATTCAAATCCCCGA-PL-Lys(C
6SH)-3’
配列番号11: 5’-ビオチン-o-CTGAAGATGGTTTAC-Lys(C
6SH)-3’
配列番号12: 5’-Alexa488-o-CATCCTGCCGCTATG-Lys(C
6SH)-3’
配列番号13: 5’-ビオチン-o-GTCAACCATCTTCAG-Arg-o-Cys-3’
【0128】
上記同定されたサイズのPNA配列は、各々15塩基を有しているが、当業者は、同様に官能化されたPNA配列が、例えば10塩基など、任意の数の塩基を含むことができることを認識するであろう。例えば、PNA配列は、sPNA4:ビオチン-o-CCATCTTCAG-Lys(C6SH)(配列番号21)でありうる。
【0129】
幾つかの実施態様では、架橋剤のNHS側は、抗体のアミン基に結合してアミド結合を形成するために使用されるのに対し、架橋剤の(スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)(「SPDP」)側は、PNA配列の3’末端(C末端)でスルフヒドリル基と反応してジスルフィド結合を形成する。幾つかの実施態様では、ジスルフィド結合は、還元剤を用いて化学的に切断することができる。
【0130】
本明細書に記載されるように、幾つかの実施態様では、切断されたPNA配列は、NanoString nCounterプラットフォームを用いて検出及び測定することができる。例えば、PNA配列は、捕捉鎖を必要とせずに、ストレプトアビジン表面への直接の固定化を可能にするために、5’末端(N末端)にビオチンを含めることができる(
図19)。この修飾は、レポーター鎖に直接ハイブリダイズさせ、さらにnCounterプラットフォームで分析される、はるかに短いPNA配列(約15塩基)の使用を可能にすると期待される。幾つかの実施態様では、約15塩基を有するPNA配列は、検出中にレポーター配列に対して十分な結合親和性及び特異性をもたらす。特定の理論に縛られることを望むものではないが、15-merPNA-DNA複合体のTmは、50-merDNA-DNA複合体に類似していると考えられる。結合に適したPNA配列の例を以下に提供する:
【0131】
幾つかの実施態様では、光切断可能な(PC)リンカーは、PNAの光誘発性の放出を可能にするために、PNA配列と特異的結合体(例えば抗体)との間に導入することができとの間に導入されうる(本明細書に定義されるA又はBとして識別される基を参照)。幾つかの実施態様では、PNA配列は、PCリンカーを用いて合成することができる:ビオチン-o-CATTCAAATCCCCGA-PC-Lys(C6H)(配列番号22)。光照射に続いて、PNA配列を無傷で放出することができ、本明細書中に記載される任意の技術を用いて測定することができる。あるいは、PC二官能性リンカーを合成して(
図10)、PNAを抗体に連結するために、使用することができる。複数のPNAオリゴマー(同じ配列又は異なる配列)は、ある特定のPNA配列は切断可能であり、ある特定の配列は切断可能でないか、又は同じPNA配列の一部が切断可能であり、他の部分は切断できないなど、異なるリンカーを介して抗体にコンジュゲートしている。
【0132】
PNAコンジュゲートの合成中にPNA内に光切断可能なリンカーを導入する手法は、より時間及び費用対効果が高く、光切断可能なリンカーがすべてのPNAオリゴマー内に確実に導入されることから、有利である。あるいは、光切断可能な二官能性リンカーを合成して(
図10)、PNA配列を抗体に連結するために使用することができる。このアプローチは、たとえPNAが光切断可能であるように設計されなかったとしても、光切断可能な二官能性リンカーを用いて任意のPNA配列を抗体に連結することができるため、有利である。特定の理論に縛られることを望むものではないが、このアプローチは、通常の(光切断可能ではない)及び光切断可能な抗体タグと同じPNA配列を使用することに関して、幾らかの柔軟性を提供することができる。幾つかの実施態様では、ジスルフィド結合は、合成された光切断可能なPNA内に依然として存在しており、光切断及び化学的切断の両方を可能にする。幾つかの実施態様では、本明細書でさらに述べるように、ビオチン部分もまた保持され、スライド上でのSA-HRP及びDABの検出を可能にする。
【0133】
幾つかの実施態様では、PNA配列は、
図16に示すように、「クリックケミストリー」を使用して特異的結合部分及び/又はリンカーに導入することができる。「クリック」反応を受けることができる反応性基(例えばアジド)を有するPNA配列の非限定的な例を以下に提示する:
配列番号14: 5’-ビオチン-O-GTCAACCATCTTCAG-Lys(eg3-N3)-3’
【0134】
当業者は、適切な反応基を含むPNA配列が、「クリック」反応を受けるように適切に官能化もされている別の分子とともにクリック付加物を形成することができることを認識するであろう。実際、当業者は、一対のクリックコンジュゲートの一方の成員が、その一対のクリックコンジュゲートのもう一方の成員と反応し、それによって共有結合を形成するために、該一対のクリックコンジュゲートの2つの成員が、互いに反応することができる反応性官能基を有していなければならないことを認識するであろう。以下の表は、互いに反応して共有結合を形成する反応性官能基の異なる対を例示している。
【0135】
幾つかの実施態様では、抗体(例えば、一次又は二次抗体)上に存在する基は、1つ以上のチオール基を有する抗体を提供するように、ジチオトレイトール(「DTT」)の存在下で還元される。チオール基は、一対のクリック成員のうちの第1の成員と反応させることができ、第1の成員は、「クリックケミストリー」反応に関与することができる反応性官能基(例えば、DBCO基)を有する。一対のクリックコンジュゲートの第1の成員はまた、チオール化抗体と反応することができる第2の官能基(例えば、マレイミド)を含みうる。一対のクリックコンジュゲートの第1の成員上の第2の官能基は、クリック化学反応において反応することができないものである。
図16に示されるように、このステップにより、「クリックケミストリー」カップリングに関与することができる第1の反応性官能基で抗体を官能化することが可能になる。その後、「クリックケミストリー」反応に関与することができる第2の反応性官能基(例えば、アジド基)を含むPNA分子など、一対のクリック成員のうちの第2の成員が導入される。一対のクリック成員のうちの第2の成員はまた、標識又はレポーター部分を含みうる。
図16に示される実施態様では、PNAコンジュゲートが抗体に結合するように、DBCO基を有する抗体は、一対のクリック成員のうちの第2の成員のアジド基と結合することができる。この手順でコンジュゲートされたPNAは、化学的に切断可能でも光切断可能でもない。
【0136】
幾つかの実施態様では、PNA配列は、「マレイミド」ケミストリーを用いて特異的結合部分及び/又はリンカーに導入することができる(
図18参照)。幾つかの実施態様では、この手順でコンジュゲートされたPNAは、化学的に切断可能でも光切断可能でもない。
【0137】
SMCC基を有するPNA配列の非限定的な例が以下に提示される:
配列番号15: 5’-ビオチン-O-GTCAACCATCTTCAG-Lys(SMCC)-3’
【0138】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、クリックケミストリー又はマレイミドケミストリーの使用は、例えば10以下の塩基を有する配列など、より短いPNA配列の導入を可能にすると考えられる。
【0139】
コンジュゲートの検出
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートは、該コンジュゲートの直接検出を容易にする標識を含みうる。例えば、コンジュゲートの標識がフルオロフォア又は発色団を含む場合、該フルオロフォア又は発色団は、当業者に知られている方法に従って直接検出することができる。
【0140】
他の実施態様では、特定の試薬を利用して、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートの検出を可能にし、したがって組織サンプル中の標的の検出を可能にする。幾つかの実施態様では、本明細書でさらに述べるように、コンジュゲートの特定の標識に特異的であるか、又はコンジュゲートのヌクレオチド配列(例えばPNA配列)に対して相補的である検出試薬が利用される。幾つかの実施態様では、検出試薬は、コンジュゲートの標識に特異的な二次抗体を含む、すなわち、二次抗体は、例えば標識がハプテンである場合には抗ハプテン抗体を含む、抗標識抗体である。
【0141】
幾つかの実施態様では、二次抗体又は抗標識抗体は、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のコンジュゲートの検出を達成するために「レポーター部分」にコンジュゲートされうる。幾つかの実施態様では、二次抗体のレポーター部分には、発色性、蛍光性、リン光性、及び発光性の分子及び材料、ある物質を別の物質に変換して検出可能な差異をもたらす(無色物質を着色物質に変換すること又はその逆によって、若しくは、沈殿物の生成又はサンプルの濁度の増加によってなど)触媒(酵素など)、追加の検出可能に標識された抗体コンジュゲートを用いた抗体-ハプテン結合相互作用を通して検出することができるハプテン、並びに常磁性及び磁性の分子又は材料が含まれる。当然ながら、レポーター部分は、それ自体、間接的に検出することもでき、例えばレポーター部分がハプテンである場合には、当業者に知られているように、そのレポーター部分に特異的なさらに別の抗体をレポーター部分の検出に利用することができる。
【0142】
幾つかの実施態様では、抗標識抗体は、DAB;AEC;CN;BCIP/NBT;ファストレッド;ファストブルー;フクシン;NBT;ALK GOLD;カスケードブルーアセチルアジド;ダポキシルスルホン酸/カルボン酸スクシンイミジルエステル;DY-405;Alexa Fluor405スクシンイミジルエステル;カスケードイエロースクシンイミジルエステル;ピリジルオキサゾールスクシンイミジルエステル(PyMPO);パシフィックブルースクシンイミジルエステル;DY-415;7-ヒドロキシクマリン-3-カルボン酸スクシンイミジルエステル;DYQ-425;6-FAMホスホルアミダイト;ルシファーイエロー;ヨードアセトアミド;Alexa Fluor430スクシンイミジルエステル;Dabcylスクシンイミジルエステル;NBDクロリド/フルオリド;QSY35スクシンイミジルエステル;DY-485XL;Cy2スクシンイミジルエステル;DY-490;オレゴングリーン488カルボン酸スクシンイミジルエステル;Alexa Fluor488スクシンイミジルエステル;BODIPY493/503 C3スクシンイミジルエステル;DY-480XL;BODIPY FL C3スクシンイミジルエステル;BODIPY FL C5スクシンイミジルエステル;BODIPY FL-Xスクシンイミジルエステル;DYQ-505;オレゴングリーン514カルボン酸スクシンイミジルエステル;DY-510XL;DY-481XL;6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(JOE);DY-520XL;DY-521XL;BODIPY R6G C3スクシンイミジルエステル;エリスロシンイソチオシアネート;5-カルボキシ-2’,4’,5’,7’-テトラブロモスルホンフルオレセインスクシンイミジルエステル;Alexa Fluor532スクシンイミジルエステル;6-カルボキシ-2’,4,4’,5’7,7’-ヘキサクロロフルオレセインスクシンイミジルエステル(HEX);BODIPY530/550 C3スクシンイミジルエステル;DY-530;BODIPY TMR-Xスクシンイミジルエステル;DY-555;DYQ-1;DY-556;Cy3スクシンイミジルエステル;DY-547;DY-549;DY-550;AlexaFluor555スクシンイミジルエステル;AlexaFluor546スクシンイミジルエステル;DY-548;BODIPY558/568 C3スクシンイミジルエステル;ローダミンレッド-Xスクシンイミジルエステル;QSY7スクシンイミジルエステル;BODIPY564/570 C3スクシンイミジルエステル;BODIPY576/589 C3スクシンイミジルエステル;カルボキシ-X-ローダミン(ROX);スクシンイミジルエステル;AlexaFluor568スクシンイミジルエステル;DY-590;BODIPY581/591 C3スクシンイミジルエステル;DY-591;BODIPY TR-Xスクシンイミジルエステル;AlexaFluor594スクシンイミジルエステル;DY-594;カルボキシナフトフルオレセインスクシンイミジルエステル;DY-605;DY-610;AlexaFluor610スクシンイミジルエステル;DY-615;BODIPY630/650-Xスクシンイミジルエステル;エリオグラシン;AlexaFluor633スクシンイミジルエステル;AlexaFluor635スクシンイミジルエステル,;DY-634;DY-630;DY-631;DY-632;DY-633;DYQ-2;DY-636;BODIPY650/665-Xスクシンイミジルエステル;DY-635;Cy5スクシンイミジルエステル;AlexaFluor647スクシンイミジルエステル;DY-647;DY-648;DY-650;DY-654;DY-652;DY-649;DY-651;DYQ-660;DYQ-661;AlexaFluor660スクシンイミジルエステル;Cy5.5スクシンイミジルエステル;DY-677;DY-675;DY-676;DY-678;AlexaFluor680スクシンイミジルエステル;DY-679;DY-680;DY-682;DY-681;DYQ-3;DYQ-700;AlexaFluor700スクシンイミジルエステル;DY-703;DY-701;DY-704;DY-700;DY-730;DY-731;DY-732;DY-734;DY-750;Cy7スクシンイミジルエステル;DY-749;DYQ-4;及びCy7.5スクシンイミジルエステルからなる群より選択されるレポーター部分を含む。
【0143】
フルオロフォアは、クマリン、フルオレセイン(又はフルオレセイン誘導体及び類似体)、ローダミン、レゾルフィン、ルミノフォア、及びシアニンを含む幾つかの一般的なケミカルクラスに属する。蛍光分子の追加の例は、Molecular Probes Handbook -A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Molecular Probes, Eugene, OR, TheroFisher Scientific, 11th Editionに見出すことができる。他の実施態様では、フルオロフォアは、キサンテン誘導体、シアニン誘導体、スクアライン誘導体、ナフタレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、オキサジン誘導体、アクリジン誘導体、アリールメチン誘導体、及びテトラピロール誘導体から選択される。他の実施態様では、蛍光部分は、CF色素(Biotiumから入手可能)、DRAQ及びCyTRAKプローブ(BioStatusから入手可能)、BODIPY(Invitrogenから入手可能)、AlexaFluor(Invitrogenから入手可能)、DyLightFluor(例えばDyLight649)(Thermo Scientific,Pierceから入手可能)、Atto and Tracy(Sigma Aldrichから入手可能)、FluoProbes(Interchimから入手可能)、Abberior Dyes(Abberiorから入手可能)、DY and MegaStokes Dyes(Dyomicsから入手可能)、Sulfo Cy染料(Cyandyeから入手可能)、HiLyte Fluor(AnaSpecから入手可能)、Seta, SeTau and Square Dyes(SETA BioMedicalsから入手可能)、Quasar and Cal Fluor染料(Biosearch Technologiesから入手可能)、SureLight Dyes(APCから入手可能、RPEPerCP、フィコビリソーム)(Columbia Biosciences)、及びAPC、APCXL、RPE、BPE(Phyco-Biotech、Greensea、Prozyme、Flogenから入手可能)から選択される。
【0144】
他の実施態様では、抗標識抗体は酵素にコンジュゲートしている。幾つかの実施態様では、適切な酵素としては、限定はしないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、又はβ-ラクタマーゼが挙げられる。他の実施態様では、酵素は、オキシドレダクターゼ又はペルオキシダーゼ(例えばHRP、AP)を含む。これらの実施態様では、抗標識抗体にコンジュゲートされた酵素は、標的に近位の試料又は直接標的上にあるサンプルに共有結合する反応性部分への発色基質の変換を触媒する。発色性化合物/基質の特定の非限定的な例としては、ジアミノベンジジン(DAB)、4-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)、ファストレッド、ブロモクロロインドリルホスフェート(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、BCIP/NBT、ファストレッド、APオレンジ、APブルー、テトラメチルベンジジン(TMB)、2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンゾチアゾリンスルホン酸](ABTS)、o-ジアニシジン、4-クロロナフトール(4-CN)、ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド(ONPG)、o-フェニレンジアミン(OPD)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-ガラクトピラノシド(X-Gal)、メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトピラノシド(MU-Gal)、p-ニトロフェニル-α-D-ガラクトピラノシド(PNP)、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、フクシン、ヨードニトロテトラゾリウム(INT)、テトラゾリウムブルー、テトラゾリウムバイオレット、N,N’-ビスカルボキシペンチル-5,5’-ジスルホナト-インド-ジカルボシアニン(Cy5)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(DABSYL)、テトラメチルローダミン(DISCO Purple)、及びローダミン110(Rhodamine)が挙げられる。ペルオキシダーゼ及び過酸化水素の存在下で酸化されるDABは、酵素活性部位に褐色のアルコール不溶性沈殿物の沈着を結果的に生じる。
【0145】
幾つかの実施態様では、発色基質は潜在的反応性部分及び発色性部分を含むシグナル伝達コンジュゲートである。幾つかの実施態様では、シグナル伝達コンジュゲートの潜在的反応性部分は、触媒活性化を受けて、サンプル又は他の検出成分と共有結合することができる反応性種を形成するように構成される。触媒活性化は、1つ以上の酵素(例えば、オキシドレダクターゼ酵素及び、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼ酵素)によって推進され、反応性種の形成をもたらす。これらの反応種は、それらの生成に近接して、すなわち酵素の近くで、発色部分と反応することができる。シグナル伝達コンジュゲートの具体例は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0260379号に開示されている。
【0146】
標識がビオチンである実施態様では、PNAコンジュゲートを酵素(例えば、アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)に結合したストレプトアビジンと接触させることができる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ストレプトアビジン-AP又はストレプトアビジン-HRPコンジュゲートは、ビオチンで標識したPNAコンジュゲートに特異的かつ不可逆的に結合すると考えられる。その後、PNA-ビオチン-ストレプトアビジンコンジュゲートを、アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼの発色基質(上記のものなど)を用いて可視化して、検出可能なシグナルを生成することができる。同様に、標識がビオチンである場合には、PNAコンジュゲートを、代替的に、フルオロフォア(例えばFTIC)に結合したストレプトアビジンと接触させることができ、フルオロフォアについてのシグナルを検出することができる。
【0147】
PNAタグを抗体コンジュゲートから(本明細書中に記載の切断可能なリンカーを介して)切断することができる実施態様では、その後、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、"Peptide nucleic acid characterization by MALDI-TOF mass spectrometry," Anal Chem.1996 Sep 15;68(18):3283-7に記載される方法に従って検出した。同様に、PNAコンジュゲートのPNA配列は、当業者に知られている方法に従って、エレクトロスプレーイオン化(ESI)などの他の質量分析法によって同様に検出することができる。
【0148】
相補的PNA又はDNA配列を含む相補的ヌクレオチド配列を用いたコンジュゲートの検出
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のコンジュゲートは、PNA配列又はDNA配列の1つをコンジュゲートのヌクレオチド配列にハイブリダイズさせることによって検出することができ、該PNA配列又はDNA配列は、コンジュゲートのヌクレオチド配列に対して相補的である。
【0149】
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のコンジュゲートは標識を含まない。幾つかの実施態様では、コンジュゲートのヌクレオチド配列に相補的なPNA又はDNA配列は、本明細書に記載のものなどのレポーター部分を含む。幾つかの実施態様では、レポーター部分は色原体である。他の実施態様では、レポーター部分はフルオロフォアである。さらに他の実施態様では、レポーター部分はハプテン(例えば、ジゴキシゲニン)である。さらなる実施態様では、レポーター部分は酵素である。なおさらなる実施態様では、レポーター部分は、ナノ粒子(例えば、走査型電子撮像又は量子ドットに用いることができる金ナノ粒子)である。
【0150】
当然ながら、当業者は、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)の同じコンジュゲートを使用して、複数の画像モダリティを提供することができることを認識するであろう。例えば、蛍光標識された相補的DNA又はPNA配列が提供される場合、それを蛍光イメージングに使用することができる。式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)の同じコンジュゲートを用いて、ハプテン化DNA又はPNA配列もまた、効果的な発色イメージングに使用することができる。
【0151】
NanoString nCounterプラットフォームを用いたコンジュゲートの検出及び/又は定量
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のコンジュゲートは、分子「バーコード」として役立てることができるヌクレオチド配列を有するオリゴマーを含む。例えば、2つのPNAコンジュゲートは、同様のPNAオリゴマー部分を含みうるが、該PNAオリゴマー部分は、PNA配列内のある特定の塩基が異なっている。このようにして、異なるPNA配列を有するPNAコンジュゲートを、Nanostring nCounterプラットフォームを使用することなどによって検出及び/又は定量化することができる。幾つかの実施態様では、PNAコンジュゲートは、ビオチン標識などのレポーター部分を含む。
【0152】
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートは、切断可能なリンカーを含む。式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートをサンプルに導入した後、化学試薬、酵素、及び/又は放射線をサンプルに導入して、切断可能なリンカー基を切断し、それによって、コンジュゲートのヌクレオチド配列(例えばPNA-抗体配列)を放出する。これは、当然ながら、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかの異なるコンジュゲートについて繰り返すことができる。全てのヌクレオチド配列(例えばPNA配列)が放出された後、それらは、本明細書に記載されるように検出及び定量化することができる。当業者はまた、異なるコンジュゲートが異なる切断可能なリンカーを含むことができ、したがって異なるヌクレオチド配列を異なる試薬/放射線の導入後の異なる時間に放出することができ、よって段階的な検出及び/又は定量化を可能にしうることも認識するであろう。幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートはPNAコンジュゲートである、すなわち、該コンジュゲートは、PNA配列を含むオリゴマーを含む。
【0153】
例として、PD-L1及びKi67マーカーが両方とも同じ組織切片上に存在する場合、抗PD-L1/PNA1コンジュゲート及び抗Ki67 PNA2コンジュゲートを用いて、組織切片を染色することができる。PNA1及びPNA2オリゴマー部分は、2つの異なるPNA配列を有する2つの異なるPNAを含みうるが、それでもなお両方とも化学的に切断可能である。組織を2つのコンジュゲート抗体と共にインキュベートし、注意深くすすいで未結合のPNAコンジュゲート抗体を除去した後に、2つのPNAを切断する。2つのPNAは、nCounter(NanoString技術)でカウントして、切断されたPNAの数を決定することができる。PNA1とPNA2の数の違いは、PD-L1とKi67マーカーのタンパク質発現レベルの違いを反映している。
【0154】
これらの実施態様では、検出スキームはレポーター鎖の標的オリゴマー(DNA又はPNAでありうる)へのハイブリダイゼーションに基づくことから、PNAコンジュゲートのPNA配列は、DNAと同様の方法で検出及び/又は定量化することができる。しかしながら、PNAコンジュゲートは、NanoString nCounterプラットフォームによって典型的に検出される標準的なDNA標的(約70~100塩基の長さ)よりも短い。しかしながら、PNAの3’末端上のビオチンの存在は、捕捉鎖を使用する必要性を排除する。さらには、DNAに対するDNAと比較して、DNAに対するPNAのより高い結合親和性は、比較的短いPNA/DNAレポーター二本鎖に対して十分な安定性を提供する。PNA配列は、該PNA配列に対する相補体となるように設計されているレポーター鎖と混合される。未結合のPNAを除去した後、PNA/レポーター構築物をストレプトアビジンで被覆したカートリッジ上でインキュベートし、その後、電場を用いて整列させる。nCounterはレポーター鎖の読み取り及びカウントに用いられる。同じ手順を、複数のPNA配列についても行うことができる。
【0155】
Gyrosを用いたコンジュゲートの検出及び/又は定量化
Gyrosは、並行処理及びレーザー誘起蛍光検出を用いるアフィニティーフロースルーフォーマットを使用したイムノアッセイプラットフォームである。アッセイは、液体の送達及び移動のための遠心力及び毛管作用を使用する、100ナノリットルを超えるスケールのチャネルを含む、コンパクトディスク(CD)中で行われる。
【0156】
典型的な非限定的実験では、ビオチン化エピトープペプチドを、ストレプトアビジンで被覆されたビーズからなる15nLのアフィニティーキャプチャーカラムに最初に結合させる。すすいだ後に、エピトープペプチドに特異的な一次抗体は、カラム内を流れ、ペプチドに結合する。その後、蛍光色素(例えば、AlexaFluor647)で標識された二次抗体は、一次抗体に結合し、次いで、これを、レーザー誘起蛍光を使用して検出及び定量化する。本開示のオリゴマーの検出のために、ビオチン化PNAオリゴマーは、レポーター部分(例えば、ジゴキシゲニンを含むがこれに限定されないハプテン)にコンジュゲートした相補的一本鎖DNAにハイブリダイズされる。ハイブリダイズした核酸鎖中のビオチンは、Gyros CD内のストレプトアビジンで被覆されたビーズに結合する。ハイブリッドの他方の端にあるDIG標識は、Ms-抗DIG抗体、その後AlexaFluor647で標識されたヤギ抗マウス抗体(GAM)によって検出され、これは、元のオリゴマーの定量的測定を容易にする。定量化にGyros技術を使用する原理が
図29に示されている。Gyros技術デバイス及びその使用方法に関する追加情報は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第8,133,438号及び同第8,592,219号に記載されている。Gyros技術デバイス及びその使用方法に関する追加情報は、それらの開示全体が、ここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許出願公開第2011/0116972号、同第2011/0195524号、及び同第2007/0241061号にも記載されている。
【0157】
式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)の任意のコンジュゲートは、該コンジュゲートが切断可能なリンカー(例えば、ジスルフィド基を含むリンカー)を含むことを条件に、Gyrosプラットフォームを用いた定量化に使用することができる。サンプルへの式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートの導入後、化学試薬、酵素、及び/又は放射線がサンプルに導入されて、切断可能なリンカーの基を切断し、それにってコンジュゲートのヌクレオチド配列(例えば、PNA配列)を放出する。その後、定量化は上記のように進行しうる。
【0158】
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートはPNAコンジュゲートである、すなわち、該コンジュゲートはPNA配列を含むオリゴマーを含み、該PNAコンジュゲートは、本明細書に記載されるPNAオリゴマーにコンジュゲートしている一次抗体を含む。幾つかの実施態様では、導入された一本鎖DNAは、PNAコンジュゲートのPNA配列に対して相補的であり、該PNA配列とハイブリダイズすることができる。幾つかの実施態様では、相補的一本鎖DNA配列は、レポーター部分にコンジュゲートする。幾つかの実施態様では、相補的一本鎖DNA配列は、ハプテンにコンジュゲートする。幾つかの実施態様では、相補的一本鎖DNA配列は、ジゴキシゲニンにコンジュゲートする。
【0159】
幾つかの実施態様では、複数の異なるPNAコンジュゲートを同時に又は順次に導入することができる。当業者はまた、異なるPNAコンジュゲートが異なる切断可能なリンカーを含むことができ、したがって異なるPNA配列を異なる試薬/放射線の導入後に異なる時間で放出することができ、よって段階的な定量化を可能にしうることも認識するであろう。
【0160】
幾つかの実施態様では、Gyrosプラットフォームを用いた定量化の後に、組織は、当技術分野で一般的に使用されている方法に従って染色される。例えば、PNAコンジュゲートからのPNA配列の切断後、PNAコンジュゲートが結合した組織は、
図30に示すように、レポーター部分を含む抗一次抗体を導入することによって染色することができる。このように、定量化は、生体サンプル中の標的の視覚化と組み合わせることができる。
【0161】
PNAコンジュゲートを含む検出キット及びPNAコンジュゲートを検出するための検出試薬
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のコンジュゲートは、「検出キット」の一部として利用することができる。一般に、任意の検出キットは、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)の1つ以上のコンジュゲート、及び該1つ以上のコンジュゲートを検出するための検出試薬を含みうる。幾つかの実施態様では、キットは、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかの1つのコンジュゲートと、さらなる成分(例えば別の抗体コンジュゲート、検出試薬、洗浄試薬、緩衝液、対比染色等)とを含む。他の実施態様では、キットは、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかの少なくとも2つのコンジュゲートと、任意のさらなる成分(例えば別の抗体コンジュゲート、検出試薬、洗浄試薬、緩衝液、対比染色等)を含む。
【0162】
幾つかの実施態様では、検出キットは、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートを含む第1の組成物と、コンジュゲートが検出キットを介して検出されうるような第1の組成物に特異的な第2の組成物とを含みうる。幾つかの実施態様では、検出キットは、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)の複数のコンジュゲート(例えば、緩衝液中で一緒に混合されるもの、個々の出荷用コンテナ又は区画に提供されるもの)を含み、ここで、検出キットは複数のコンジュゲートの各々に特異的な検出試薬も含む。
【0163】
例として、キットは、第1の標的に特異的な第1のPNAコンジュゲート、第1のPNAオリゴマー部分を有するPNAコンジュゲート、及び第2のPNAオリゴマー部分を有する第2の標的に特異的な第2のPNAコンジュゲートを含むことができ、ここで、第1及び第2のPNAオリゴマーの少なくとも一部は異なっている。キットは、異なるPNAコンジュゲートの各々に特異的な検出試薬をさらに含みうる。
【0164】
別の例として、キットは、第1のPNAオリゴマー部分を有する第1のPNAコンジュゲート(及び標識を含まないもの)を含むことができ、該キットはさらに、第1のPNAオリゴマー部分のPNA配列に対して相補的なPNA又はDNA配列を含みうる。
【0165】
さらに別の例として、キットは、一連の異なるPNAコンジュゲートを含むことができ、各PNAコンジュゲートは、異なる標的に特異的であり、かつ、異なるPNAオリゴマー部分を有する。キットの各々異なるPNAコンジュゲートは、定性的及び/又は定量的分析に使用することができる、異なる分子「バーコード」として役立てることができる。
【0166】
当然ながら、いずれのキットも、手動又は自動の標的検出に必要な場合には、緩衝液;対比染色剤;酵素不活性化組成物;対比染色;脱パラフィン溶液;などを含む他の薬剤を含んでいてもよい。検出キットはまた、他の特異的結合体(例えば、ISH用の核酸プローブ;未修飾(天然)抗体、及び抗体コンジュゲート)、並びにそれらの他の特異的結合体を検出するための検出試薬を含みうる。例えば、キットは、1つ以上のPNAコンジュゲート;該1つ以上のPNAコンジュゲートを検出するための1つ以上の抗標識抗体;少なくとも1つの未修飾抗体(すなわち、PNA配列に結合していない天然の抗体);及び、少なくとも1つの未修飾抗体を検出するための検出試薬を含むことができる。幾つかの実施態様では、例えばMIHCアッセイなどのアッセイでの使用についてのPNAコンジュゲート及びキットの他の構成要素を使用するための説明書が提供される。
【0167】
式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートを用いた標的の検出方法並びに検出試薬
本開示はまた、本明細書に記載される式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のコンジュゲートのいずれかを用いて組織サンプル内の1つ以上の標的を検出する方法を提供する。幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートをシンプレックスアッセイに使用して、組織サンプル内の特定の標的を直接的又は間接的に検出することができる(例えば、CD68、Ki67、CD20等)。
【0168】
幾つかの実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートは、一次抗体(例えば、CD68、Ki67、CD20等に特異的な抗体)を含む。これらの実施態様では、一次抗体を含むコンジュゲートを使用して、標的をコンジュゲートで直接「標識」することができる。他の実施態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートは二次抗体を含む。これらの実施態様では、本明細書でより詳細に論じるように、標的(例えば、タンパク質標的又は核酸標的)は、一次抗体(IHC用)又は核酸コンジュゲート(例えば、ISHでは、ハプテンに結合した核酸配列)で標識することができ、その後、一次抗体又は核酸コンジュゲートを、二次抗体を含むコンジュゲートで「標識化」してもよい。これら及び他の実施態様は本明細書でさらに説明される。
【0169】
幾つかの実施態様では、PNAコンジュゲートは、PNA-一次抗体コンジュゲートが目的の標的に特異的である場合、及び組織サンプルへのPNA-一次抗体コンジュゲートの適用の際に標的-PNA-一次抗体コンジュゲート複合体が形成される場合には、一次抗体を含む(例えば、
図22A-22D、及び
図26参照)。PNA-一次抗体コンジュゲートの適用に続いて、標的-PNA-一次抗体コンジュゲート複合体を検出できるように、検出試薬(例えば、抗標識抗体)をその後に適用することができる。幾つかの実施態様では、検出試薬は、PNA-一次抗体コンジュゲートの特定の標識に特異的な抗標識抗体を含み、ここで抗標識抗体はレポーター部分を含む。次いで、単一の標的を視覚化するか又は他の方法で検出することができる。
【0170】
他の実施態様では、組織サンプルを最初に一次抗体又は核酸プローブと接触させて、標的-一次抗体複合体又は標的-核酸プローブ複合体のいずれかを形成する。その後、二次抗体を含むPNAコンジュゲートが組織サンプルに導入され、該PNAコンジュゲートの二次抗体部分は、(i)一次抗体、(ii)一次抗体にコンジュゲートした標識、又は(iii)核酸プローブに結合した標識のいずれかに特異的である。PNA-二次抗体コンジュゲートの適用は、二次複合体の形成を可能にし、標的を「標識化」可能にする。PNA-二次抗体コンジュゲートの適用及び二次複合体の形成に続いて、二次複合体を検出できるように、検出試薬(例えば抗標識抗体)を適用することができる。幾つかの実施態様では、検出試薬は、PNA-二次抗体コンジュゲートの特定の標識に特異的な抗標識抗体を含み、該抗標識抗体はレポーター部分を含む。次に、標的を視覚化するか、又は他の方法で検出することができる。
【0171】
さらに他の実施態様では、組織サンプルを、最初にPNA-一次抗体コンジュゲートと接触させる;又は、最初に一次抗体と接触させ、その後、PNA-二次抗体コンジュゲートを導入する。それぞれのPNAコンジュゲートの導入後、サンプルを、PNAコンジュゲートのPNA配列に相補的なDNA又はPNA配列と接触させることができ、該相補的DNA又はPNA配列は、1つ以上のレポーター部分(例えば、色原体、フルオロフォア、酵素、又はハプテン)を含む。相補的DNA又はPNA配列が色原体又はフルオロフォアを含む実施態様では、「標識された」標的複合体は直接検出することができる。他方では、相補的DNA又はPNA配列がハプテンを含む場合、「標識された」標的複合体の最終的な検出を容易にするために、レポーター部分にコンジュゲートした抗ハプテン抗体を導入しなければならない。
【0172】
当然ながら、代替的な実施態様として、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートのDNA又はPNA配列は、コンジュゲートからのDNA又はPNA配列の切断後に、本明細書に記載されるNanoString nCounter法又はGyros技術などを用いて定量することができる。幾つかの実施態様では、コンジュゲートは、切断可能基とビオチン標識とを含む。これらの方法は、さらなる検出試薬の使用を必要としないであろう。
【0173】
本開示の幾つかの態様では、自動多重検出を含む多重検出の方法が提供される。
図14Aは、組織サンプルを複数のPNAコンジュゲートと同時に接触させる(ステップ100)、標的の多重検出のための一方法を示すフローチャートを提供しており、各PNAコンジュゲートは特定の標的に特異的であり、かつ、異なるPNAオリゴマー(すなわち、異なるPNA配列及び/又は異なる標識を有するPNAオリゴマー)を含む。
図14AはPNAコンジュゲートの適用を示しているが、当業者は、PNAコンジュゲートが、サンプル内の標的(例えば、一次抗体PNAコンジュゲートによって認識される核酸配列、タンパク質標的、又は二次抗体PNAコンジュゲートによって認識される事前に沈着した一次抗体)に応じて、PNA-核酸コンジュゲート、PNA-一次抗体コンジュゲート、及びPNA-二次抗体コンジュゲートを含みうることを理解するであろう。当然ながら、任意のPNAコンジュゲートは、本明細書に記載される任意の数のヌクレオチドを有するPNA配列を有しうる。当業者はさらに、コンジュゲート又はPNAコンジュゲート(若しくは、任意の他の流体又は試薬)が、手動で、又は本明細書に記載される検体処理装置を用いて適用されうることを認識するであろう。
【0174】
幾つかの実施態様では、サンプルを2つのPNAコンジュゲートと接触させることができ、各PNAコンジュゲートは特定の標的に特異的であり、かつ、各PNAコンジュゲートは異なるPNAオリゴマー部分を含む。他の実施態様では、サンプルを3つのPNAコンジュゲートと接触させることができ、各PNAコンジュゲートは特定の標的に特異的であり、かつ、各PNAコンジュゲートは異なるPNAオリゴマー部分を含む。
【0175】
PNAコンジュゲートは、特定のアッセイに必要なPNAコンジュゲートの各々を含む「プール」又は「カクテル」として組織サンプルに供給することができる。PNAコンジュゲートは、少なくとも交差反応性が染色性能を妨げるであろう程度ではなく、互いに交差反応性ではないと考えられることから、PNAコンジュゲートのプールは可能であると考えられる。各PNAコンジュゲートは、それぞれの標的二結合し、検出可能な標的-PNAコンジュゲート複合体を形成する。幾つかの実施態様では、PNAコンジュゲートの適用後に、ブロッキングステップが行われる。
【0176】
PNAコンジュゲートの同時適用(ステップ100)の後に、複数の検出試薬が組織サンプルに同時に適用され(ステップ110)、ここで、各検出試薬は、最初に適用されたPNAコンジュゲート(ステップ100)の1つの検出を容易にし、各検出試薬は異なるレポーター部分を含む。幾つかの実施態様では、検出試薬は、フルオロフォア、クロモフォア、又はハプテンにコンジュゲートしたストレプトアビジンである。他の実施態様では、検出試薬は、PNAコンジュゲートの標識に特異的な二次抗体(例えば、PNAコンジュゲートのハプテンに特異的な抗ハプテン抗体)である。さらに他の実施態様では、検出試薬は、PNAコンジュゲートのPNAオリゴマー部分のPNA配列に対して相補的なDNA又はPNA配列である。抗標識抗体が用いられる実施態様では、抗標識抗体は、標的-PNAコンジュゲート複合体の検出に必要な抗標識抗体の各々を含むプール又はカクテルとして、組織サンプルに供給されうる。検出試薬の適用の後に、幾つかの実施態様では、組織サンプルを対比染色で染色することができる。標識及び/又はレポーター部分の各々からのシグナルは、視覚化することができ、あるいは、他の方法で検出されてもよい(例えば同時に視覚化又は検出されてもよい)。
【0177】
PNAコンジュゲートを利用する多重アッセイの一例は次の通りである。第1のPNAオリゴマーを含み、かつ、第1の標的に特異的(例えば、CD68、Ki67、CD20等のうちの1つに特異的)である、第1のPNA-抗体コンジュゲートを組織サンプルに導入する。幾つかの実施態様では、第1のPNA-抗体コンジュゲートは、検出可能な第1の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。同時に、第2のPNAオリゴマーを含み、第2の標的(例えば、CD68、Ki67、CD20等の別のもの)に特異的な第2のPNA-抗体コンジュゲートをサンプルに導入して、第2の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。他の標的に対する、かつ、異なるPNA配列及び/又は標識を有する、第3、第4、及び第nのさらなるPNA-抗体コンジュゲート(「n」個の標的-検出プローブ複合体を形成する)をさらに、第1及び第2のPNA-抗体コンジュゲートと同時に導入することができる。
【0178】
PNA-抗体コンジュゲートの沈着後に、当然ながら、それらを、それらの構成に応じて直接的又は間接的に検出することができる。幾つかの実施態様では、標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体の各々の検出を可能にするために、抗標識抗体が導入される。幾つかの実施態様では、抗標識抗体は、PNAコンジュゲートの異なる標識に特異的であり、該抗標識抗体は、各々、異なるレポーター部分にコンジュゲートしている。幾つかの実施態様では、検出可能な試薬は、各々がフルオロフォアにコンジュゲートしている抗標識抗体である。幾つかの実施態様では、第1、第2、及び第nの抗標識抗体は同時に導入され、ここで、第1、第2、及び第nの検出試薬の各々は、異なるPNA-抗体コンジュゲートに特異的であり、各抗標識抗体はフルオロフォアにコンジュゲートしている。他の実施態様では、第1、第2、及び第nの抗標識抗体は順次導入され、第1、第2、及び第nの検出試薬の各々は、異なるPNA-抗体コンジュゲートに特異的であり、各抗標識抗体は酵素にコンジュゲートしている。
【0179】
あるいは、PNA-抗体コンジュゲートは、導入されたPNAコンジュゲートのPNAオリゴマー部分のPNA配列に対して相補的なPNA又はDNA配列を導入することによって検出されうる。各相補的PNA又はDNA配列は、酵素、フルオロフォア、ハプテン、又はナノ粒子を含む、本明細書に詳述されるレポーター部分を含みうる。相補的PNA又はDNA配列がハプテンを含む場合、相補的PNA又はDNA配列の検出を容易にし、したがってサンプル内の標的の検出を容易にするために、追加の検出試薬(例えば、酵素又はフルオロフォアにコンジュゲートした抗ハプテン抗体)を導入することができる。
【0180】
本開示による多重アッセイのさらなる例として、第1の標的に特異的な、第1の標識を有する第1のPNA-抗体コンジュゲート(例えば、CD3、Ki67、PD-L1、又は免疫細胞マーカー)が、組織試料に導入される。幾つかの実施態様では、第1のPNA-抗体コンジュゲートは、検出可能な第1の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。同時に又は連続して、第2の標的に特異的な、第2の標識を有する第2のPNA-抗体コンジュゲート(例えばCD3、Ki67、PD-L1の別のもの)をサンプルに導入して、第2の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。他の標的に対して各々特異的な第3、第4、及び第nのさらなるPNA-抗体コンジュゲート(「n」個の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する)をさらに、順次に、又は第1及び/又は第2のPNA-抗体コンジュゲートと同時に、導入することができ、ここで、第3、第4、及び第nのPNA-抗体コンジュゲートは各々、さらに異なる標識を有している。PNA-抗体コンジュゲートの沈着後に、それらを検出することができる。幾つかの実施態様では、標的の検出を可能にするために追加の検出試薬が導入され、該追加の検出試薬には、本明細書に記載されているもの(例えば発色検出試薬)が含まれる。幾つかの実施態様では、第1、第2、及び第nの検出試薬が順次導入され、ここで、第1、第2、及び第nの検出試薬の各々は、(i)PNA-抗体コンジュゲートの標識の各々に特異的な二次抗体、すなわち抗標識抗体であって、該二次抗体が酵素にコンジュゲートしている、二次抗体;及び、(ii)発色基質であって、第1、第2、及び第nの発色基質の各々は異なっている発色基質を含む。他の実施態様では、第1、第2、及び第nの検出試薬は順次導入され、ここで、第1、第2、及び第nの検出試薬の各々が、PNAコンジュゲートの各々のPNAオリゴマー部分のPNA配列に相補的なPNA又はDNA配列を含み、各相補的PNA又はDNA配列はレポーター部分を含む。
【0181】
本開示による多重アッセイのなおさらなる例として、第1の標的に特異的な第1の一次抗体(例えばCD3、Ki67、PD-L1、又は免疫細胞マーカー)が組織サンプルに導入される(第1の一次抗体は、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれのコンジュゲートでもない)。その後、第1の一次抗体にコンジュゲートしている第1の一次抗体又は標識に特異的な第1の二次抗体-PNAコンジュゲートが導入され、該第1の二次抗体-PNAコンジュゲートは、第1のPNA配列を有する第1のPNAオリゴマーを含む。幾つかの実施態様では、第1の二次抗体-PNA-抗体コンジュゲートは、検出可能な第1の標的-二次抗体-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。その後、二次抗体-PNAコンジュゲートの第1のPNA配列はコンジュゲートから切断される。
【0182】
その後、第2の標的に特異的な第2の一次抗体(例えば、CD3、Ki67、PD-L1の別のもの)がサンプルに導入される。その後、第2の一次抗体にコンジュゲートしている第2の一次抗体又は標識に特異的な第2の二次抗体-PNAコンジュゲートが導入され、該第2の二次抗体-PNAコンジュゲートは、第2のPNA配列を有する第2のPNAオリゴマーを含む。幾つかの実施態様では、第2の二次抗体-PNA-抗体コンジュゲートは、検出可能な第2の標的-二次抗体-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。その後、二次抗体-PNAコンジュゲートの第2のPNA配列は、コンジュゲートから切断される。当業者は、任意の数の一次抗体及び二次抗体PNAコンジュゲートを順次導入し、その後、それぞれの二次抗体-PNAコンジュゲートのPNAオリゴマーからPNA配列を切断することができることを認識するであろう。最後に、異なるPNA配列は全て測定することができ、標的を定量することができる。
【0183】
さらに他の実施態様では、多重検出法は、次のステップを含む:(i)生体サンプルを第1のPNA-抗体コンジュゲートと接触させて、第1の標的抗体-PNAコンジュゲート複合体を形成すること;(ii)生体サンプルを第1の標識コンジュゲートと接触させることであって、該第1の標識コンジュゲートは第1の酵素を含む(ここで、第1の標識コンジュゲートは第1のPNA-抗体コンジュゲートに特異的に結合する抗標識抗体であり、標的を酵素で標識するように構成される)、接触させること;(iii)生体サンプルを、第1の潜在的反応性部分及び第1の発色性部分を含む第1のシグナル伝達コンジュゲートと接触させること(その開示が、シグナル伝達コンジュゲート及びそれらの構成成分の説明のために、ここに参照することによって本明細書に援用される、例えば、米国特許出願第13/849,160号を参照);(iv)生体サンプルに含まれる第1の酵素を実質的に不活性化又は完全に不活性化するために、サンプルを第1の酵素不活性化組成物と接触させることなどによる、第1の酵素を不活性化すること。
【0184】
第1の酵素が不活性化された後(任意選択的)、多重方法はさらに、(v)生体サンプルを第2のPNA-抗体コンジュゲートと接触させて、第2の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成するステップ;(vi)生体サンプルを第2の標識化されたコンジュゲートと接触させるステップであって、第2の標識化されたコンジュゲートが第2の酵素を含む(第2の標識化コンジュゲートが第2のPNA-抗体コンジュゲートに特異的に結合し、標的を酵素で標識するように構成された、抗標識抗体である場合)、ステップ;(vii)生体サンプルを、第2の潜在的反応性部分及び第2の発色性部分を含む第2のシグナル伝達コンジュゲートと接触させるステップ;(viii)生体サンプルに含まれる第1の酵素を実質的に不活性化又は完全に不活性化するために、サンプルを第1の酵素不活性化組成物と接触させることなどによって、第2の酵素を不活性化するステップを含む。
【0185】
第2の酵素が不活性化された後、他の標的の検出を達成するために、追加のPNA-抗体コンジュゲートを追加の検出試薬と共に導入することができるように、本方法を繰り返してもよい。すべてのPNA-抗体コンジュゲート(及び他の検出プローブ)並びにそれぞれの検出試薬又はキットを導入した後、本方法はさらに、サンプルを対比染色すること、及び/又は、第1、第2、及び第nの発色性部分に由来するシグナルを検出すること(手動で又は自動化された方法による)をさらに含み、ここで、第1、第2、及び第nの発色性部の各々は、それぞれ異なっている。あるいは、PNA-抗体コンジュゲートの各々は、同時に又は連続的に、しかしながら、任意の標識コンジュゲートを加える前に、加えることができる。別の例として、3つのPNA-抗体コンジュゲートを最初に、任意の検出試薬の導入前に順次適用し、その後、各検出試薬を順次添加することができる。
【0186】
複数の標的が逐次的に検出され、該検出が酵素の使用を採用する多重アッセイの関連では、連続する検出ステップの間に任意の試薬又は内因性酵素を不活性化することが望ましい。結果として、いずれか1つの検出ステップに存在する酵素は、後の検出ステップに存在する酵素と干渉しないと考えられる。これが次に、多重アッセイで用いられる、異なる検出可能部分の可視化及び検出を改善すると考えられる。当技術分野で知られている任意の酵素不活性化組成物をこの目的に使用することができる。幾つかの実施態様では、各検出ステップの後に試薬又は内因性酵素を不活性化するために、酵素不活性化組成物が適用される。例示的な酵素不活性化組成物は、その開示全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる、同時係属中の米国特許出願第62/159,297号に開示されている。
【0187】
幾つかの実施態様では、変性ステップは、検出試薬の第1のセットに用いられる酵素が第2の基質に作用することを妨げる。幾つかの実施態様では、変性剤は、第1の検出試薬セット中の酵素を変性させる物質である。幾つかの実施態様では、変性剤は、例えば、ホルムアミド、アルキル置換アミド、尿素又は尿素系変性剤、チオ尿素、塩酸グアニジン、若しくはそれらの誘導体である。アルキル置換アミドの例としては、限定はしないが、N-プロピルホルムアミド、N-ブチルホルムアミド、N-イソブチルホルムアミド、及びN、N-ジプロピルホルムアミドが挙げられる。幾つかの実施態様では、変性剤は緩衝液中に提供される。例えば、ホルムアミドは、20mM硫酸デキストラン(50-57%ホルムアミド(UltraPureホルムアミドストック)、2×SSC(0.3Mクエン酸塩及び3M NaClを含有する20×SSCストック)、2.5mM EDTA(0.5M EDTAストック)、5mMトリス、pH7.4(1mMトリス、pH7.4ストック)、0.05%Brij-35(ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルを含有する10%ストック)、pH7.4を含む、ハイブリダイゼーション緩衝液で提供することができる。幾つかの実施態様では、サンプルは、例えばアルカリホスファターゼなどの第1の標的プローブ検出酵素を変性させるのに十分な期間及び条件下、変性剤で処理される。幾つかの実施態様では、サンプルは、約37℃で約15から約30分間、好ましくは約20から24分間、変性剤で処理される。幾つかの実施態様では、サンプルは、ある期間、及び標的に対する第2の核酸プローブのハイブリダイゼーションを維持しながら標的酵素を変性させるのに十分な条件下、変性剤で処理される。
【0188】
酵素にコンジュゲートした抗標識抗体を使用する実施態様では、生体サンプルと共にシグナル伝達コンジュゲート又は発色基質を導入するのに適した条件が用いられ、該条件は、典型的には過酸化物(例えば過酸化水素)を含み、かつ、酵素がその所望の機能を果たすことを可能にするか又は促進するのに適した塩濃度及びpHを有する、反応緩衝液又は溶液を提供することを含む。一般に、本方法のこのステップは、約35℃から約40℃の範囲の温度で行われるが、当業者は、選択された酵素及びシグナル伝達コンジュゲートに適した適切な温度範囲を選択することができる。例えば、これらの条件は、酵素と過酸化物が反応して、シグナル伝達コンジュゲートの潜在的反応性部分でのラジカル形成を促進することを可能にすると考えられる。潜在的反応性部分及び、したがって全体としてのシグナル伝達コンジュゲートは、生体サンプル、特に、固定化された酵素コンジュゲートに近接する1つ以上のチロシン残基、酵素コンジュゲートの酵素部分のチロシン残基、及び/又は酵素コンジュゲートの抗体部分のチロシン残基の上に共有結合的に沈着する。その後、生体サンプルに光を照射し、シグナル伝達コンジュゲートの発色部分によって生じる光の吸光度を通して標的を検出することができる。
【0189】
他の特異的結合体と組み合わせた式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートを用いた検出方法
本開示の幾つかの態様では、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかのコンジュゲートは、組織サンプル中の標的の多重検出を達成するために、他の特異的結合体と組み合わせて使用される。当業者は、上記特定された方法及び手順のいずれも、式(I)、(IA)、(IC)、(ID)、及び(II)のいずれかと他の特異的結合体との両方のコンジュゲートを使用する任意のアッセイに応じて適合させることができることを認識するであろう。
【0190】
幾つかの実施態様では、他の特異的結合体は、in situハイブリダイゼーションのための核酸及びIHCのための未修飾抗体を含む。本明細書で用いられる場合、用語「(一又は複数の)未修飾抗体」とは、ヌクレオチド配列(例えば、本明細書で特定されるDNA又はPNAヌクレオチド配列)を含まないが、ハプテン又は別の標識にコンジュゲートした抗体を含む、抗体を指す。本質的に、「未修飾抗体」は、IHCアッセイに伝統的に用いられている未変性抗体であり、これは、特定の標的(例えば抗CD3抗体)に特異的であり、かつ、抗種二次抗体又は、標識を含む場合には抗標識抗体などによって検出することができる。例として、ウサギ抗CD3抗体は、ヤギ抗ウサギ抗体を用いて検出することができる。同様に、ハプテンにコンジュゲートしたウサギ抗CD3抗体は、抗ハプテン抗体を用いて検出することができる。
【0191】
図14B及び14Cは、組織サンプルを1つ以上の未修飾一次抗体に(同時に又は順次に)接触させて(第1段階、220)、その後、1つ以上のPNAコンジュゲートに(同時に又は順次に)接触させる(第2段階、250)、標的の多重検出方法を示している。当業者は、第1段階220及び第2段階250を逆にして、PNAコンジュゲートを最初に組織サンプルに適用し、その後、未修飾抗体を適用することができることを認識するであろう。当業者はまた、多重アッセイがISH及びIHCのステップ又は段階の両方を(任意の順序で)含むように、適切な核酸プローブ(標識にコンジュゲートしたものを含む)を未修飾抗体の代わりに使用してもよいことも認識するであろう。当業者はさらに、コンジュゲート又はPNAコンジュゲート(若しくは、任意の他の流体又は試薬)が、手動で、又は本明細書に記載される検体処理装置を用いて適用されうることを認識するであろう。
【0192】
図14Bに示されるような幾つかの実施態様では、第1の未修飾一次抗体を組織サンプルに適用して、第1の標的-一次抗体複合体を形成することができる(ステップ200)。次に、未修飾の一次抗体に特異的な第1の検出試薬を組織サンプルに適用して、第1の標的-一次抗体複合体を検出する(ステップ210)。
図14Bの破線205は、未修飾の一次抗体を用いて組織サンプル内の複数の異なる標的の逐次多重検出を提供するために、第1段階220のステップ200及び210を1回以上繰り返すことができることを示している。例えば、第2の未修飾一次抗体を組織サンプルに適用して、第2の標的-一次抗体複合体を形成し(200)、その後、第2の未修飾一次抗体に特異的な第2の検出試薬を適用して、第2の標的-一次抗体複合体を検出する(210)。
【0193】
図14Cは、
図14Bに提示されたものと同様の二段階法を使用する、標的の多重検出のための代替的な方法を表している。
図14Cに示される方法では、ステップ260において、未修飾抗体コンジュゲートの各々が、同時に組織サンプルに導入される。次に、ステップ270において、サンプルを検出試薬(例えば、抗種抗体又は抗標識抗体)と接触させて、未修飾抗体の検出を達成する。代替的な実施態様では、未修飾の一次抗体の全てを順次適用することができ(ステップ260)、その後、それぞれの抗種抗体(若しくは、適切な場合には抗ハプテン抗体)を順次適用してもよい(ステップ270)。
【0194】
当業者は、未修飾抗体のための検出試薬が、利用された未修飾抗体に特異的な抗種抗体を含みうることを認識するであろう。あるいは、未修飾抗体のための検出試薬は、未修飾抗体にコンジュゲートしたハプテンに特異的な抗ハプテン抗体を含みうる。当業者はまた、抗種抗体又は抗ハプテン抗体がレポーター部分を含むことができ、レポーター部分が酵素である実施態様では、さらなる発色基質が第1及び第2の検出試薬と共に供給されうることを認識するであろう。
【0195】
多重アッセイ220の第1段階(
図14B又は14C)に続いて、第2段階250が実行され、ここで、組織サンプルは、複数のPNAコンジュゲートと同時に又は連続的に接触し(ステップ230)、各PNAコンジュゲートは、特定の標的に特異的であり、かつ、各PNAコンジュゲートは異なるPNAオリゴマー部分を含む。PNAコンジュゲートは、特定のアッセイに必要なPNAコンジュゲートの各々を含む「プール」又は「カクテル」として組織サンプルに供給することができる。各PNAコンジュゲートは、特異的標的とともに、検出可能な標的-PNAコンジュゲート複合体を形成する。PNAコンジュゲートの同時又は順次の適用(ステップ230)に続いて、抗標識抗体(二次抗体)が組織サンプルに同時に適用され(ステップ240)、各抗標識抗体は、適用されるPNAコンジュゲートの1つに特異的であり、各抗標識抗体は異なるレポーター部分を含む。抗標識抗体は、標的-PNA-抗体複合体の検出に必要な各抗標識抗体を含む「プール」又は「カクテル」として組織サンプルに供給することができる。
【0196】
あるいは、ステップ230でそれぞれのPNAコンジュゲートを導入した後、ステップ240で、サンプルをPNAコンジュゲートのPNA配列に相補的なPNA配列又はDNA配列と接触させることができ、該DNA配列は、レポーター部分(例えば、酵素、色原体、フルオロフォア、又はハプテン)を含む。DNA配列が色原体又はフルオロフォアを含む実施形態では、「標識された」標的複合体を直接検出することができる。他方では、DNA配列がハプテンを含む場合、「標識された」標的複合体の最終的な検出を容易にするために、レポーター部分にコンジュゲートした抗ハプテン抗体を導入しなければならない。
【0197】
当然ながら、代替的な実施態様として、それぞれのPNAコンジュゲートのPNA配列は、本明細書中に記載されるNanoString nCounter法などを用いて定量することができる。
【0198】
ステップ250に続いて、幾つかの実施態様では、組織サンプルを対比染色で染色することができる。各レポーター部分からの(例えば、抗種抗体又は抗標識抗体からの)シグナルは、視覚化又は他の方法で検出することができる(例えば、同時に視覚化又は検出してもよい)。
【0199】
本開示による(i)未修飾抗体及び(ii)PNA-抗体コンジュゲートの両方を含む多重アッセイの例として、ハプテン標識を含む第1の抗体コンジュゲート(例えば、偶然に間接的にコンジュゲートした抗CD3抗体)を組織サンプルに導入して、標的-抗体-コンジュゲート複合体を形成する。同時に、未修飾抗体(例えば、ウサギ抗PDL1抗体)を組織サンプルに導入して、標的-未修飾抗体複合体を形成する。次に、形成された標的-抗体-コンジュゲート複合体(例えば抗ハプテン抗体)及び形成された標的-未修飾-抗体複合体(例えばヤギ抗ウサギ抗体)を検出するために検出試薬を(同時に又は順次に)導入し、ここで、検出試薬の各々は、異なるフルオロフォアにコンジュゲートしている。
【0200】
多重アッセイの第二段階では、第1のPNAオリゴマーを含み、第1の標的に特異的な(例えばCD68に特異的な)第1のPNA-抗体コンジュゲートが組織サンプルに導入される。幾つかの実施態様では、第1のPNA-抗体コンジュゲートは、検出可能な第1の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。逐次的に又は同時に、第2のPNAオリゴマーを含み、第2の標的に特異的な(例えば、Ki67に特異的な)第2のPNA-抗体コンジュゲートをサンプルに導入して、第2の標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体を形成する。他の標的に特異的であり(「n」個の標的-PNA-抗体複合体を形成する)、異なるPNAオリゴマーを有する、第3、第4、及び第nのさらなるPNA-抗体コンジュゲートを、第1及び第2のPNA-抗体コンジュゲートと同時にさらに導入することができる。代替的な実施態様では、PNA-抗体コンジュゲートを連続して加えることができ、PNA配列は、その後のPNA-抗体コンジュゲートの導入前に、PNA-抗体コンジュゲートから切断される。その後、切断されたPNA配列を一緒に測定することができる。
【0201】
PNA-抗体コンジュゲートの沈着後に、当然ながら、それらを、それらの構成に応じて直接的又は間接的に検出することができる。幾つかの実施態様では、第1、第2、及び第nの検出試薬は同時に導入され、ここで第1、第2、及び第nの検出試薬の各々は、異なるPNA-抗体コンジュゲートに特異的である。他の実施態様では、第1、第2、及び第nの検出試薬は順次導入され、ここで、第1、第2、及び第nの検出試薬の各々は、異なるPNA-抗体コンジュゲートに特異的である。幾つかの実施態様では、標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体の各々の検出を可能にするために、抗標識抗体が導入される。幾つかの実施態様では、検出試薬は、PNA-抗体コンジュゲートの異なる標識に特異的な抗標識抗体であり、該抗標識抗体は、各々が例えばフルオロフォア又は酵素など、レポーター部分にコンジュゲートしている。幾つかの実施態様では、検出可能な試薬は、各々がフルオロフォアにコンジュゲートしている抗標識抗体である。他の実施態様では、検出可能な試薬は、各々が酵素にコンジュゲートしている抗標識抗体である。さらに他の実施態様では、検出可能な試薬は、フルオロフォアにコンジュゲートしている抗標識抗体と、酵素にコンジュゲートしている抗標識抗体との組合せである。抗標識抗体が酵素にコンジュゲートしている実施態様では、検出(本明細書で前述したように)を達成するために、酵素用の基質が提供される。他の実施態様では、標的-PNA-抗体コンジュゲート複合体の各々の検出を可能にするために、1つ以上のPNA配列に対して相補的であり、酵素、フルオロフォア、又はハプテンを含むPNA又はDNA配列が導入される。さらに他の実施態様では、検出試薬は、PNAコンジュゲートのPNAオリゴマー部分のPNA配列に対して相補的なPNA又はDNA配列である。当業者は、ハプテンにコンジュゲートしている相補的なPNA又はDNA配列が提供される場合、相補的なPNA又はDNA配列の検出を容易にするために、さらなる試薬をサンプルに供給することができることを認識するであろう。代替的な実施態様では、PNAコンジュゲート抗体をエクスサイチュで相補的PNA又はDNA配列にハイブリダイズさせてもよく、その後、複合体、すなわち相補的PNA又はDNA配列にハイブリダイズさせたPNAコンジュゲート抗体を組織に導入して、サンプル内の標的の標識化を可能にすることができる。
【0202】
自動化
多重アッセイ及び方法は自動化することができ、検体処理装置と組み合わせることもできる。例えば、検体処理装置又は自動化検体処理装置は、顕微鏡スライド上に配置したサンプルに対し、約100マイクロリットルから約500マイクロリットルの本開示のコンジュゲートを塗布することができる。幾つかの実施態様では、検体処理装置は、Ventana Medical Systems, Inc.から販売されているBENCHMARK XT装置、BenchMark Special Stains装置、NexES Special Stainer装置、SYMPHONY装置、又はBENCHMARK ULTRA装置などの自動装置である。Ventana Medical Systems,Inc.は、それらの各々の全体が、ここに参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第5,650,327号、同第5,654,200号、同第6,296,809号、同第6,352,861号、同第6,827,901号、及び同第6,943,029号、並びに、米国特許出願公開第2003/0211630号、及び同第2004/0052685号を含めた、自動分析を実行するためのシステム及び方法を開示している多数の米国特許の譲受人である。あるいは、検体は、手動で処理することもできる。抗酸染色組成物を適用することができる他の市販の検体処理システムの例としては、VENTANA SYMPHONY(個別のスライド染色剤)及びVENTANA HE 600(個別のスライド染色剤)系;Agilent TechnologiesのDako CoverStainer(バッチ染色剤);Leica ST4020 Small Linear Stainer(バッチ染色剤)、Leica ST5020 Multistainer(バッチ染色剤)、及びLeica ST5010 Autostainer XL系(バッチ染色剤);Leica Biosystems Nussloch GmbHのH&E染色剤が挙げられる。本明細書に開示されるコンジュゲートのいずれかを適用することに加えて、検体処理装置は、他の抗体、抗体コンジュゲート、対比染色等を検体に分配することができる。確かに、検体処理装置は、検体に広範囲の物質を適用することができる。物質としては、限定はしないが、染料、プローブ、試薬、リンス剤、及び/又は調整剤が挙げられる。物質は、流体(例えば、気体、液体、又は気体/液体混合物)などでありうる。流体は、溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒等)、溶液(例えば、水溶液又は他の種類の溶液)などでありうる。試薬としては、限定はしないが、染色剤、湿潤剤、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等)、抗原回収液(例えば、水性又は非水性の抗原回収溶液、抗原回収緩衝液等)などを挙げることができる。プローブは、検出可能な標識又はレポーター分子に結合した、単離された核酸又は単離された合成オリゴヌクレオチドでありうる。標識としては、放射性同位元素、酵素基質、補因子、リガンド、化学発光剤又は蛍光剤、ハプテン、及び酵素を挙げることができる。
【0203】
検体処理装置は、検体に固定剤を適用することができる。固定剤としては、架橋剤(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、及びグルタルアルデヒドなどのアルデヒド、並びに非アルデヒド架橋剤)、酸化剤(例えば、四酸化オスミウム及びクロム酸などの金属イオン及び金属錯体)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノール、及びエタノール)、未知の機構の固定剤(例えば、塩化水銀、アセトン、及びピクリン酸)、併用試薬(例えば、カルノア固定液、メタカン、ブアン液、B5固定液、ロスマン液、及びジャンドル液)、マイクロ波、及びその他の固定剤(例えば、排除体積固定及び蒸気固定)を挙げることができる。
【0204】
検体がパラフィンに包埋されたサンプルの場合、該サンプルは、適切な脱パラフィン化液を用いて、検体処理装置で脱パラフィンすることができる。廃棄物除去剤が脱パラフィン化液を除去した後、検体に、任意の数の物質を連続的に適用することができる。物質は、前処理(例えば、タンパク質架橋、核酸曝露等)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えば、ストリンジェントな洗浄)、検出(例えば、視覚分子又はマーカー分子とプローブとの連結)、増幅(例えば、タンパク質、遺伝子等の増幅)、対比染色、カバースリップなどのためのものでありうる。
【0205】
検体が処理された後、ユーザは、検体を載せたスライドを撮像装置へと搬送することができる。本明細書で用いられた撮像装置は、明視野イメージャスライドスキャナーである。明視野イメージャの1つは、Ventana Medical Systems,Inc.から販売されているiScan Coreo(商標)明視野スキャナーである。自動化された実施態様では、撮像装置は、撮像システム及び技術(IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUES)と題された国際出願第PCT/US2010/002772号(国際公開第WO/2011/049608号)に開示される、又は、撮像システム、カセット、及びその使用方法(IMAGING SYSTEMS, CASSETTES, AND METHODS OF USING THE SAME)と題された2014年2月3日出願の米国特許出願公開第2014/0178169号に開示されるようなデジタル病理学デバイスである。国際出願第PCT/US2010/002772号及び米国特許出願公開第2014/0178169号は、それらの実体がここに参照することによって取り込まれる。他の実施態様では、撮像装置は、顕微鏡に結合したデジタルカメラを含む。
【0206】
対比染色
対比染色は、顕微鏡下において、構造をより容易に視覚化できるように、1つ以上の標的を検出するために薬剤で既に染色された後に、サンプルを後処理する方法である。例えば、免疫組織化学的染色をより明確にするために、カバースリップをする前に、対比染色が任意選択的に用いられる。対比染色は、一次染色とは色が異なる。ヘマトキシリン、エオシン、メチルグリーン、メチレンブルー、ギムザ、アルシアンブルー、及びNuclear Fast Redなど、多くの対比染色がよく知られている。DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)は、使用することができる蛍光染色剤である。
【0207】
幾つかの例では、対比染色を生じさせるために、複数の染色剤を一緒に混合することができる。これは、柔軟性と、染色を選択する能力とをもたらす。例えば、特定の属性を有するが、それでも異なる所望の属性を有しない混合物について、第1の染色を選択することができる。欠けている所望の属性を示す第2の染色を混合物に加えることができる。例えば、トルイジンブルー、DAPI、及びポンタミンスカイブルーを混ぜ合わせて、対比染色を形成することができる。対比染色は、本明細書に開示される検体処理システムによって適用することができる。
【0208】
画像化
開示される実施態様のうちのある特定の態様、又は全ての態様は、自動化することができ、コンピュータ解析及び/又は画像解析システムによって促進することができる。幾つかの用途では、正確な色又は蛍光比が測定される。幾つかの実施態様では、光学顕微鏡が画像分析に利用される。ある特定の開示される実施態様は、デジタル画像の取得に関する。これはデジタルカメラを顕微鏡に接続することによって行うことができる。染色されたサンプルから得られたデジタル画像は、画像解析ソフトウェアを用いて解析される。色又は蛍光はいくつかの異なる方法で測定することができる。例えば、色は、赤、青、及び緑の値として;色相、彩度、明度の値として;及び/又は、分光撮像カメラを使用して、特定の波長又は波長範囲を測定することによって、測定することができる。サンプルはまた、定性的及び半定量的に評価することもできる。定性的評価には、染色強度の評価、陽性染色細胞及び染色に関与する細胞内コンパートメントの識別、及び全体的なサンプル又はスライドの品質の評価が含まれる。別々の評価が、試験サンプルに対して行われ、この分析には、サンプルが異常状態を表すかどうかを決定するために、既知の平均値と比較することが含まれうる。
【0209】
サンプル及び標的
サンプルは、生物学的成分を含み、かつ、概して1つ以上の目的とする標的分子を含むことが疑われる。標的分子は、細胞の表面上にあってもよく、細胞は懸濁液中又は組織切片中に存在しうる。標的分子はまた、細胞内に存在してもよく、細胞溶解又はプローブによる細胞の浸透の際に検出することができる。当業者は、サンプル中の標的分子を検出する方法が、用いられるサンプル及びプローブの種類に応じて変わることを理解するであろう。サンプルを収集及び調製する方法は当技術分野において知られている。
【0210】
組織又は他の生体サンプルなど、本明細書に開示される組成物を有する、方法の実施態様で使用するためのサンプルは、当業者によって当技術分野で知られている任意の方法を使用して調製することができる。サンプルは、日常的なスクリーニングのために対象から、又は遺伝的異常、感染、又は新生物などの障害を有することが疑われる対象から得ることができる。開示された方法の記載された実施態様はまた、「正常」サンプルと称される、遺伝的異常、疾患、障害等を有しないサンプルに適用することができる。このような正常サンプルは、他のサンプルと比較するための対照として、とりわけ有用である。サンプルは、多くの異なる目的で分析することができる。例えば、サンプルは、科学的研究において、又は疑われる病気の診断のために、あるいは治療の成功、生存等のための予後指標として、使用することができる。
【0211】
サンプルは、プローブ又はレポーター分子が特異的に結合することができる複数の標的を含みうる。標的は、核酸配列又はタンパク質でありうる。幾つかの例では、標的は、ウイルス、細菌、又はウイルスゲノムのような細胞内寄生生物など、病原体由来のタンパク質又は核酸分子である。例えば、標的タンパク質は、疾患に関連する(例えば、疾患と相関する、原因として関与するなど)標的核酸配列から産生されうる。
【0212】
当業者は、以下の標的のいずれかに特異的なPNAコンジュゲートが開発されうることを認識するであろう:
【0213】
特定の非限定的な例では、標的タンパク質は、新生物(例えば、がん)に関連する標的核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)によって産生される。とりわけ、B細胞及びT細胞白血病などのがん細胞、リンパ腫、乳がん、結腸がん、神経がんなどの腫瘍細胞において、多数の染色体異常(転座及び他の再配列、増幅又は欠失を含む)が同定されている。したがって、幾つかの例では、標的分子の少なくとも一部は、サンプル中の細胞の少なくともサブセットにおいて増幅又は欠失された核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)によって産生される。
【0214】
他の例では、標的タンパク質は、悪性細胞において欠失している(失われている)腫瘍抑制遺伝子である核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)から産生される。例えば、染色体9p21上に位置するp16領域(D9S1749、D9S1747、p16(INK4A)、p14(ARF)、D9S1748、p15(INK4B)、及びD9S1752を含む)は、ある特定の膀胱がんにおいて欠失している。染色体1の短腕の遠位領域(例えば、SHGC57243、TP73、EGFL3、ABL2、ANGPTL1、及びSHGC-1322を含む)、及び染色体19の動原体周辺領域(例えば、19p13-19q13)を包含する染色体欠失(例えば、MAN2B1、ZNF443、ZNF44、CRX、GLTSCR2、及びGLTSCR1を包含する)は、中枢神経系のある特定の種の固形腫瘍の特徴的な分子的特徴である。
【0215】
腫瘍性形質転換及び/又は増殖と相関する他の多くの細胞遺伝学的異常が当業者に知られている。腫瘍性形質転換と相関しており、かつ、開示された方法において有用である、核酸配列(例えば、ゲノム標的核酸配列)によって産生される標的タンパク質は、EGFR遺伝子(7p12;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000007、ヌクレオチド55054219-55242525)、C-MYC遺伝子(8q24.21;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド128817498-128822856)、D5S271(5p15.2)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子(8p22;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド19841058-19869049)、RB1(13q14;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000013、ヌクレオチド47775912-47954023)、p53(17p13.1;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000017、相補体、ヌクレオチド7512464-7531642))、N-MYC(2p24;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000002、相補体、ヌクレオチド151835231-151854620)、CHOP(12q13;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000012、相補体、ヌクレオチド56196638-56200567)、FUS(16p11.2;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000016、ヌクレオチド31098954-31110601)、FKHR(13p14;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000013、相補体、ヌクレオチド40027817-40138734)、並びに、例えば:ALK(2p23;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000002、相補体、ヌクレオチド29269144-29997936)、Ig重鎖、CCND1(11q13;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド69165054.69178423)、BCL2(18q21.3;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000018、相補体、ヌクレオチド58941559-59137593)、BCL6(3q27;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000003、相補体、ヌクレオチド188921859-188946169)、MALF1、AP1(1p32-p31;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000001、相補体、ヌクレオチド59019051-59022373)、TOP2A(17q21-q22;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000017、相補体、ヌクレオチド35798321-35827695)、TMPRSS(21q22.3;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000021、相補体、ヌクレオチド41758351-41801948)、ERG(21q22.3;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000021、相補体、ヌクレオチド38675671-38955488);ETV1(7p21.3;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000007、相補体、ヌクレオチド13897379-13995289)、EWS(22q12.2;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000022、ヌクレオチド27994271-28026505);FLI1(11q24.1-q24.3;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド128069199-128187521)、PAX3(2q35-q37;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000002、相補体、ヌクレオチド222772851-222871944)、PAX7(1p36.2-p36.12;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000001、ヌクレオチド18830087-18935219)、PTEN(10q23.3;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000010、ヌクレオチド89613175-89716382)、AKT2(19q13.1-q13.2;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000019、相補体、ヌクレオチド45431556-45483036)、MYCL1(1p34.2;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000001、相補体、ヌクレオチド40133685-40140274)、REL(2p13-p12;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000002、ヌクレオチド60962256-61003682)及びCSF1R(5q33-q35;例えば、GENBANK(商標)アクセッション番号NC-000005、相補体、ヌクレオチド149413051-149473128)も含む。
【実施例】
【0216】
本明細書に提示される非限定的な例はそれぞれ、PNAコンジュゲートの使用を組み込んでいる。出願人らは、本明細書に開示されるPNAコンジュゲートが、IHCアッセイでの使用に適していることを提示している。当然ながら、本明細書に詳述されるように、PNAコンジュゲートは、他の検出可能な特異的結合体と併せて使用することができ、IHCとISHとを組み合わせたアッセイに利用することができる。
【0217】
実施例1:PNA/抗体コンジュゲーション
ヤギ抗マウス(GAM)、ヤギ抗ウサギ(GAR)、及びマウス抗DIGに対するPNAの例示的なコンジュゲーションが、以下に記載される:
【0218】
(1)100マイクログラムの抗体(0.667ナノモル)を、PBSで2mg/mLに希釈し、15モル当量のSPDP-PEG-NHS(10mMのDMSOストック溶液から10ナノモル)で2時間処理した。SPDP-PEG-NHSは、米国オハイオ州所在のQuanta Biodesign社から入手可能であった(SPDP-dPEG8-NHSエステル、製品#10376)。
【0219】
(2)標識した抗体を、ThermoFisherからの7KD MWカットオフZebaスピン脱塩カラム(製品#89882)を用いて精製した。
【0220】
(3)2ナノモルのPNA(1:1(v/v)水DMFを溶解した251μMのPNAストック溶液から8μL)を、5μLのDMF及び35μLのPBSを加えるとともに、抗体溶液に添加し、合計約100μLの反応溶液を得た。混合物を室温で一晩インキュベートした。
【0221】
(4)その後、Zebaスピン脱塩カラムを使用してコンジュゲートを精製し、次いで反応混合物からPNAコンジュゲート化抗体の精製に使用した。
【0222】
精製したPNAコンジュゲート抗体は、使用前に適切な希釈剤で希釈した。
【0223】
実施例2:抗体-PNAコンジュゲートのUV-Vis測定
PNAコンジュゲート抗体をUV-Vis吸光度で特徴付けた。抗体-PNAコンジュゲートにおける260nmでの吸光度の増加は、PNAの首尾よい取り込みを示唆した(
図2参照)。A260対A280の比は、コンジュゲーションの効率を定性的に評価し、かつ、抗体あたりのPNAオリゴマーの数を潜在的に推定するために用いられうる。
【0224】
実施例3:SA-HRPを使用したPNA-抗体コンジュゲートの検出:
短PNA(15塩基のPNA、10塩基のPNA)オリゴのコンジュゲーションが抗体の結合親和性及び特異性に影響を及ぼさないことを証明するために、PNA-コンジュゲート二次抗体を用いて、異なるマーカーについて扁桃組織に対するIHCアッセイを行った(一次及び二次)。IHCアッセイは全て、特定のアッセイに基づいて修正されたプロトコルを使用して、Benchmark XT(Ventana社)で行われた。PNA-コンジュゲート抗体を、滴定として100μLの体積で、手動で加えた。
【0225】
PNAタグ上のビオチン標識を直接検出した。2つの扁桃スライドを、抗CD45及び抗Ki67一次抗体とインキュベートし、その後、それぞれPNAをコンジュゲートしたGAR及びGAM二次抗体とインキュベートした。その後、スライドをストレプトアビジン-HRP(SA-HRP)とインキュベートし、続いてDAB沈着(発色検出)を行った。マーカーは、それらの予想される位置で観察された(
図3A及び3B)。一次抗体をアッセイから除外した場合には、バックグラウンドシグナルは観察されなかった(
図3C)。扁桃スライドもまた、CK5/6に対して、一次ハプテン化抗体(抗CK5/6:DIG)及び二次PNA結合抗ハプテン抗体、続いてSA-HRP及びDAB沈着を用いて、首尾よく染色した(
図4A)。
【0226】
これらの最初の実験は、PNAを二次抗体に効率的にコンジュゲートさせることができ、該コンジュゲートは扁桃スライド上の対応する一次抗体に対するそれらの結合親和性及び特異性に影響を及ぼさないという強力な証拠を提供する。
【0227】
PNAタグ(10塩基のPNA)上のビオチン標識を直接検出した。扁桃スライドを、抗CD8、抗CD3、抗PD-L1、抗Ki67とコンジュゲートした一次抗体と共にインキュベートした。その後、スライドをストレプトアビジン-HRP(SA-HRP)とインキュベートし、続いてDAB沈着(発色検出)を行った。マーカーは、それらの予想される位置で観察された(
図22A、22B、22C、22D、23、及び24)。
【0228】
実施例4A:PNAオリゴの化学的切断
幾つかの実施態様では、PNA-コンジュゲート抗体は、Gyros技術又はDNA計数に基づくNanoString nCounterプラットフォームなどの方法によるタンパク質発現の多重定量測定を可能にするように設計されている。したがって、PNA配列は、エクスサイチュPNA計数を可能にするために組織に結合した後にPNAコンジュゲート抗体から切断しなければならない。この特定の例では、PNA配列は、ジスルフィド結合を介して抗体に結合し、これは、(例えば、ジスルフィド結合の還元によって)化学的に切断されて、PNA配列の放出をもたらすことができる。
【0229】
図5は、一次抗体、その後、PNAコンジュゲート抗種二次抗体を用いて、Ki67及びCD45について染色し、SA-HRP DAB沈着によって検出した扁桃スライドを示している。SA-HRP処理の前に、スライドを20mMのTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン、還元剤)と共にインキュベートすることによって、茶色の染色が完全に失われ、PNAタグが除去されたことが示唆された。
【0230】
実施例4B:PNAオリゴの光切断
扁桃スライドを一次抗体(ウサギKi67)、二次抗体(GAR-PL-PNA、ビオチンを有する光切断可能なPNAを有するヤギ抗ウサギ抗体)で処理した。その後、スライドを、異なる時間の間、UV光(ハンドヘルドUVランプ、365nm)で照射した。対照スライドはUV処理せず、比較のために使用した。次いで、全てのスライドを検出用にSA-HRP及びDABで処理した。
【0231】
図12は、照射したスライドがPNA配列の光切断を示す色を有していないことを示している。この実験では、スライド全体にUV光を照射した。スライド全体からのPNAの切断は、ジスルフィド結合の化学的還元によって達成することができる。光照射は、スライド上の特定の対象領域を選択的に照射する可能性を与える。この概念を証明するために、我々は選択的照射を達成するためにレーザー捕捉顕微解剖(LCM)システムを使用した。LCMによって、対物レンズ(高い空間精度)を通過するUV光を使用して、組織の特定の領域を(単一細胞に至るまで)切断した。我々は、UVを使用して、組織上の特定の領域を選択的に照射し、PNAを光切断した。
図13は、照射された胚中心(染色なし)の隣に照射されなかった別の胚中心(陽性染色)がある、扁桃スライドを例示している。LCMのUVは355nmである。
【0232】
実施例5:SA-FITCを用いたPNA/抗体コンジュゲートの蛍光検出
発色検出の他に、コンジュゲート中のビオチンは、SA-フルオロフォアを用いて蛍光的にも検出されうる。
図6は、一次抗体、その後、PNAをコンジュゲートした二次抗体を用いて、Ki67について染色し、SA-FITCで検出した扁桃スライドの蛍光画像を示している。SA-FITCは、PNA配列のビオチンに結合する。蛍光シグナルはKi67マーカーの局在と一致している。この実験によって、PNAコンジュゲート抗体がもたらす検出スキームの多様性が実証された。
【0233】
実施例6:PNAの定量測定
特定の理論に縛られることを望むものではないが、NanoString nCounterプラットフォームは、最大800種類の異なるDNA配列を潜在的に検出する能力を有しており、抗体PNAコンジュゲートを使用することで、IHCの非常に大きな多重化能力を可能にすることが報告されている。我々は、検出スキームがレポーター鎖の標的オリゴ(おそらくはDNA又はPNAでありうる)へのハイブリダイゼーションに基づいていることから、PNAはDNAと同様の方式で検出することができると仮定している。しかしながら、PNAの3’末端上のビオチンの存在は、捕捉鎖を使用する必要性を排除するため、PNAオリゴマーは、NanoString nCounterプラットフォームで典型的に用いられる、標準的なDNA標的(典型的には約100塩基の長さ)よりも著しく短くできると考えられる。さらには、DNA対DNAと比較して、DNAに対するPNAのより高い結合親和性は、比較的短いPNA/DNAレポーター二本鎖に対して十分な安定性をもたらすと考えられる。
【0234】
概念の実証として、我々は、本明細書の実施例8に記載される蛍光染色スライドをTCEP(20mM)と共にインキュベートして、PNA-SA-FITCを除去することができることを示した。放出されたPNA-SA-FITCを蛍光強度に基づいて測定した。その後、スライドに結合したPNAコンジュゲート抗体の数を推定することができる(
図7)。
【0235】
実施例7:補体蛍光DNAを用いたPNAの検出:
先の実験では、PNAはビオチン標識に対する染色によって検出された。異なる標識(発色性、蛍光発生性等)を担持する相補的DNA又はPNA配列は、代替的な染色手法として使用することができる。この実験では、扁桃スライドを、ウサギ抗Ki67一次抗体、その後、PNAをコンジュゲートしたGARと共にインキュベートした。その後、スライドを蛍光標識を有するPNAに相補的なDNA配列(例えば、FITC又はローダミン)と共にインキュベートした。
図8は、スライドがDNAハイブリダイゼーションによって首尾よく染色されたことを示している。蛍光染色はマーカーの局在と一致し、バックグラウンドシグナルは観察されなかった。DNA配列を、約185nMの濃度及び約100μLの容量の手動滴定として加えた。
【0236】
DNA配列:
1: 5’-CTGAAGATGGTTGAC/ローダミン-3’(配列番号16)
2: 5’-FAM/CTGAAGATGGTTGAC-3’(配列番号17)
【0237】
この実験は、抗体にコンジュゲートしたPNAタグが活性であり、組織上の相補的DNAとのハイブリダイゼーションを通してアクセス可能であることを証明するものである。2つのDNA配列は同じPNAに対する相補体であり、各々が固有のフルオロフォアを有していた。2つのフルオロフォアをDNA配列の異なる末端に配置した(5’末端にFITC、及び3’末端にローダミン)。その結果、PNAとのハイブリダイゼーション後、FITCは抗体から遠い方の末端に位置していたのに対し、ローダミンは抗体に近接して位置していた。両方の場合において陽性染色が観察され、相補的DNA配列へのハイブリダイゼーションを用いてPNAを検出する能力が証明された。
【0238】
実施例8:補体ハプテン化DNAを用いたPNAの検出
この実験では、相補的DNAをハプテン(DIG)で標識した。2つの扁桃スライドを、ウサギ抗Ki67及びマウス抗CD45、その後、それぞれPNAコンジュゲートGAR及びPNAコンジュゲートGAMと共にインキュベートした。DIGで標識した相補的DNAを両方のスライドと共にインキュベートし、その後、HRPを抗DIG抗体とコンジュゲートし、DAB沈着を行った。DNAを、約185nMの濃度及び約100μLの容量で手動の滴定ステップとして加えた。
【0239】
図9は、両方のスライドが首尾よく染色され、染色パターンがマーカーの局在化と一致したことを示している。一次抗体を省略した場合には、バックグラウンドシグナルは観察されなかった。
【0240】
DNA配列: 5’-CTGAAGATGGTTGAC/DIG/-3’(配列番号18)
【0241】
実施例9:クリックケミストリーによるPNA Abコンジュゲーション
PNAオリゴマーを抗体にコンジュゲートするステップは以下の通りである:
【0242】
(1)スルフヒドリル基(チオール)を導入するための抗体還元:100μgのAbに2.5μLの1M DTT(ジチオトレイトール)を添加し、30分間インキュベートする
【0243】
(2)Zeba脱塩スピンカラム(7MWCO)で余分なDTTを除去する
【0244】
(3)DBCO-マレイミドヘテロ二官能性リンカー(クリックケミストリーツールA108-25から)を1:12のAb:リンカー比で添加し、一晩インキュベートする
【0245】
(4)Zebaカラムで洗浄し、1:6のAb:アジド-PNA比でアジド-PNAを添加し、一晩インキュベートする。
【0246】
(5)Zebaカラムで洗浄する。
【0247】
図17は、抗Ki67一次抗体(ウサギmAb)及びGAR-PNA(クリックケミストリーとコンジュゲート)二次抗体とともにインキュベートし、SA-HRPで検出した扁桃組織を示している。画像は、PNAがクリックケミストリーを介して抗体に首尾よくコンジュゲートしたことを示している。
【0248】
実施例10:マレイミドケミストリーによるPNA Abコンジュゲーション
PNAオリゴマーを抗体にコンジュゲートするステップは以下の通りである:
【0249】
(1)スルフヒドリル基(チオール)を導入するための抗体還元:100μgのAbに2.5μLの1M DTT(ジチオトレイトール)を添加し、30分間インキュベートする;
【0250】
(2)Zeba脱塩スピンカラム(7MWCO)で余分なDTTを除去する;
【0251】
(3)マレイミド-PNAを1:6のAb:マレイミドDNA比で添加し、一晩インキュベートする;及び
【0252】
(4)Zebaカラムで洗浄する。
【0253】
実施例11:Gyros Platform技術を使用したPNAの定量化
Gyros技術を使用したPNAの定量化を実証するため、約0.0274nMから約20nMの範囲の濃度のビオチン化PNAオリゴ(Bt-PNA)を試験した(表1)。各濃度について、1:2の比のBt-PNAとのジゴキシゲニンで標識した相補的一本鎖DNA(DNA-DIG)を、最初に室温でハイブリダイズさせた後、二連のGyrosによって分析した。検出は、Ms-抗DIG、その後にAlexaFluor647-GAMを使用して達成した。Gyrosプログラムを使用して四点曲線(表1参照)を当てはめ、0.998を超えるR
2を有する標準曲線を生成した。特に、最低PNA濃度のシグナル対バックグラウンド比(S/B)は、約10であり、PNA又はssDNAによる非常に低いバックグラウンドシグナルが示唆された。
【0254】
抗体コンジュゲートから切断されたPNAを定量化することができ、PNAの切断後に抗体をさらに染色することができることをさらに実証するために、
図30に示される実験を行った。3つの抗体(Ki67、CD8、及びPD-L1)をBt-PNA-1とコンジュゲートさせ、正常な扁桃組織切片におけるそれぞれのマーカーの検出に使用した。ほとんどの組織処理ステップを、Ventana BenchMark XT自動染色機を使用して行った。標準的な抗原賦活化の後、PNAで標識した一次抗体を組織に適用し、約37℃で約16分間インキュベートした。その後、スライドを組織染色液から取り出し、反応緩衝液及び水ですすいだ。各スライドに約100μLの20mM TCEP溶液を加え、湿度ボックス内で約20分間インキュベートした。切断されたPNAを含む80マイクロリットルの溶液を回収し、Gyrosによって(本明細書に記載の技術を使用することによってなど)、さらに定量化した。PNA切断後のスライドを自動染色装置に戻し、Ventana UltraView DABユニバーサル検出キットを用いて一次抗体をさらに検出した。
【0255】
切断されたBt-PNAの定量化は、先に記載されたものと同じ手順に従って、過剰の相補的一本鎖DNA-ジゴキシゲニンとのハイブリダイゼーションによって達成された。結果を表2にまとめた。結果は、組織染色のための抗体コンジュゲート由来のPNAを首尾よく切断することができ、Gyros技術を使用してさらに定量化することができることを明確に示唆している。
【0256】
PNAの切断後、
図31に示されるように、全く同じ組織切片上の抗体は、PNAでコードされたマーカーの可視化のために、標準IHCによって依然として染色することができる。各マーカーの特異的染色が観察され、切断条件が、組織に対する又はマーカーへの抗体の結合に対する顕著なダメージを引き起こさなかったことが示唆された。この結果は、定量化と、FFPE組織中のバイオマーカーの空間分布の視覚化とを組み合わせた新しい方法を示唆しており、これは抗体-PNAコンジュゲートの固有の利点である。
【0257】
本明細書で言及され、及び/又は出願データシートに記載されている米国特許、米国特許出願公開公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許文献はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。実施態様の各態様は、必要に応じて、さらに別の実施態様を提供するためにさまざまな特許、出願、及び刊行物の概念を採用するように修正することができる。
【0258】
本明細書の開示は、特定の実施態様を参照して説明されているが、これらの実施態様は、単に本開示の原理及び用途の例示であることが理解されるべきである。したがって、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様に対して多数の修正をなすことができ、他の構成を考案することができることが理解される。
【配列表】