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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】管内の微生物増殖の低減
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20220329BHJP
   F16L 11/127 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
F16L11/127
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019545856
(86)(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017077973
(87)【国際公開番号】W WO2018083127
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】16196711.2
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519157381
【氏名又は名称】イーピーエフエフ エレクトリカル パイプ フォア フルーイド トランスポート アーベー
【氏名又は名称原語表記】EPFF ELECTRICAL PIPE FOR FLUID TRANSPORT AB
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100198568
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 絵美
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アンダーソン
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511758(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00471318(GB,A)
【文献】特開平11-123384(JP,A)
【文献】特開平11-147598(JP,A)
【文献】特表2011-501947(JP,A)
【文献】特開平3-24393(JP,A)
【文献】特開2005-074256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0259833(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02442011(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46 - 1/48
F16L 9/00 - 11/26
B08B 15/00 - 17/06
1/00 - 1/04
5/00 - 13/00
E02B 1/00 - 3/02
3/16 - 3/28
B65D 35/00 - 35/42
35/56 - 37/00
B67D 1/00 - 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を搬送する導管内の微生物増殖を防ぐためのシステム(8)であって、
前記システム(8)は、
前記導管を構成し、内側層(12)及び外側層(14)を有する多層管(10)であって、前記内側層(12)は、前記多層管(10)の内側全体(16)を覆い、1つの導電性ポリマー材料で形成され、前記多層管(10)内の液体は、前記内側層(12)に直接接触し、前記外側層(14)は、前記内側層(12)の外側の少なくとも一部を覆い、1つの電気絶縁ポリマー材料で形成された、多層管(10)と、
前記多層管(10)の外側から前記内側層(12)に接続している第1の電気コネクタ(18)、及び前記多層管(10)の外側から前記内側層(12)に接続している第2の電気コネクタ(19)であって、前記多層管(10)に沿って離間している、前記第1の電気コネクタ(18)及び前記第2の電気コネクタ(19)と、
前記第1の電気コネクタ(18)及び前記第2のコネクタ(19)に動作可能に接続され、前記内側層(12)に電流を供給するように構成された電源(20)と、
を備えるシステム(8)。
【請求項2】
前記電流は直流電流である、請求項1に記載のシステム(8)。
【請求項3】
前記電流は、10mA未満、1mA未満、0.1mAから1mAまで、又は0.3mAから0.7mAまでである、請求項2に記載のシステム(8)。
【請求項4】
前記電流は、前記第1の電気コネクタ(18)と前記第2の電気コネクタ(19)との間に、150V未満、120V未満、20Vから100Vまで、又は50Vから70Vまでの電圧において供給される、請求項2又は3に記載のシステム(8)。
【請求項5】
前記電流は、交流電流である、請求項1に記載のシステム(8)。
【請求項6】
前記電流は、10mA未満、1mA未満、0.1mAから1mAまで、又は0.4mAから0.8mAまでである、請求項5に記載のシステム(8)。
【請求項7】
前記電流は、前記第1の電気コネクタ(18)と前記第2の電気コネクタ(19)との間に、80V未満、50V未満、10Vから50Vまで、20Vから50Vまで、又は30Vから50Vまでの電圧において供給される、請求項5又は6に記載のシステム(8)。
【請求項8】
前記交流電流は、1kHzから5kHzまでの周波数を有する、請求項5から7のいずれか一項に記載のシステム(8)。
【請求項9】
前記電源(20)は、パルス化された電流を供給するようにさらに構成された、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(8)。
【請求項10】
前記パルスは、パルス長の合計が、周期長の50%以下の期間にわたる、請求項9に記載のシステム(8)。
【請求項11】
前記内側層(12)の前記導電性ポリマー材料は、カーボンブラック充填ポリエチレンである、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム(8)。
【請求項12】
前記多層管(10)は可撓性のホースである、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム(8)。
【請求項13】
液体を搬送するための既設導管内の微生物増殖を防ぐためのシステム(8)を後付けする方法であって、
前記方法は、
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム(8)を提供するステップと、
前記既設導管の内側に前記多層管(10)を設けるステップとを含む、方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム(8)の前記多層管(10)内の微生物増殖を防ぐための方法であって、
前記多層管(10)は、液体を搬送し、
前記方法は、前記電源(20)を用いて、前記多層管(10)の前記内側層(12)に電流を供給するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本提案の技術は、概して、液体の輸送、分配、及びリサイクルの分野に関する。特に、本提案の技術は、管内の微生物増殖の低減に関する。
【背景技術】
【0002】
管の内部での微生物増殖及びバイオフィルムの形成は、液体を搬送する多くの用途にとって関心事である。このような液体の性質は、微生物増殖によって影響を受けることがあり、その意図した使用にとって、それがあまり適さなくなる。管内の微生物増殖はまた、このような増殖から定期的に浄化される機器内のさらに下流での微生物増殖を増加させることがある。微生物増殖体が管の内側から離れ、下流の機器に目詰まり又は損傷を生じさせることもある。管の内側での微生物増が、搬送される液体中に有害な病原体を導入することがあることも公知の問題である。
【0003】
管内の微生物増殖が問題となることがある用途の3つのグループ、すなわち、液体輸送、液体リサイクル、及び液体分配が特定されている。
【0004】
液体輸送の例は、公共事業による水供給である。管は、通常、数十年にわたる長期間用いられる。大量の微生物物質が管内に蓄積することがあり、管の輸送能力を低減させる。酪農場での乳用機器等におけるように、液体輸送が短距離であることもある。
【0005】
微生物増殖が問題となることのある液体リサイクルを用いる用途の例は、多数ある。例えばそれは、建物の集中型家庭用冷房、車洗浄での洗浄液のリサイクル、金属加工での切削油のリサイクル、製紙工場での液体のリサイクル、及び建物内の低温暖房システムの循環で問題となることがある。
【0006】
液体分配用途の例も多数ある。微生物増殖は、飲料分配、特に、樽からのビールの分配、歯科用機器、及び、シャワー等の家庭用水系において問題となることがある。後者は、ヒトに有害である、公知のレジオネラ菌の源である。
【0007】
上述の単純な分類から外れる、あるいは、液体が供給も再循環もされる透析装置のようないくつかのタイプの用途の組み合わせである、より複雑なシステムもある。
【0008】
ビール等の養液の取り扱いに用いられる管は、特に、輸送された液体が室温で保存され、分配箇所で初めて冷却される場合、頻繁に洗浄する必要がある。これは、液体を搬送する管内に急速な微生物増殖を引き起こすことがある。微生物増殖を低減させ、搬送される液体の劣化を防ぐために、このような管を冷却することが知られている。しかし、このような技術は、通常、設置し、動作させるのに費用がかかる。
【0009】
管の洗浄には、洗浄それ自体と、用途における動作の中断との両方において費用がかかることが多い。管の洗浄は、その後に管を洗い流す必要があることも多く、閉鎖循環系、及び長距離水輸送等の多くの用途において実用的ではない。
【0010】
微生物増殖及びバイオフィルムの形成が低減される管が必要とされている。さらに、微生物増殖の防止に関して、設置及び動作コストが低い管が必要とされている。既設の用途での管を交換することは、費用のかかる作業である。このため、既存の用途に後付けすることができる微生物増殖を防止する管も必要とされている。
【0011】
これらの記載から、微生物増殖は、バイオフィルムの形成を含むと理解される。例えば、微生物増殖は、細菌のコロニーとすることができる。
【発明の概要】
【0012】
上述した必要性のうちの1つ以上を満たすことが、本提案の技術の目的である。第1の態様において、これは、液体を搬送する導管内の微生物増殖及び/又はバイオフィルムの形成を防ぐためのシステムによって達成される。本システムは、導管を構成し、内側層及び外側層を有する多層管を備える。内側層は、管の内側全体を覆い、導電性ポリマー材料で形成され、管内の液体は、内側層に直接接触する。外側層は、内側層の外側の少なくとも一部を覆い、電気絶縁ポリマー材料で形成される。本システムは、管の外側から内側層に接続している第1の電気コネクタ、及び管の外側から内側層に接続している第2の電気コネクタをさらに備え、第1の電気コネクタ及び第2の電気コネクタは、管に沿って離間している。本システムは、第1の電気コネクタ及び第2のコネクタに動作可能に接続され、内側層に電流を供給し、及び/又は第1の電気コネクタ及び第2のコネクタに電位を供給するように構成されている電源をさらに備える。多層管は、剛性管又は可撓性ホースとすることができる。
【0013】
第2の態様においては、液体を搬送するための既設導管内に微生物増殖を防ぐためのシステムを後付けする方法が提供される。本方法は、第1の態様によるシステムを提供するステップと、既設導管の内側に本システムの管を設けるステップとを含む。
【0014】
第3の態様においては、上述した目的は、管が液体を搬送する、第1の態様によるシステムの管内の微生物増殖を防ぐための方法によって達成される。本方法は、電源を用いて、管の内側層に電流を供給するステップを含む。
【0015】
第4の態様においては、液体を搬送する導管内の微生物増殖及び/又はバイオフィルムの形成を防ぐためのシステムによって、上述した必要性の1つ以上が満たされ、本システムは、導管を構成し、単層を有する、単層の可撓性ホースを備え、単層は、導電性ポリマー材料で形成され、ホース内の液体は、単層に直接接触する。本システムは、ホースの外側から単層に接続している第1の電気コネクタと、ホースの外側から単層に接続している第2の電気コネクタとをさらに備え、第1の電気コネクタ及び第2の電気コネクタは、ホースに沿って離間している。加えて、本システムは、第1の電気コネクタ及び第2の電気コネクタに動作可能に接続され、単層に電流を供給し、及び/又は第1の電気コネクタ及び第2の電気コネクタに電位を供給するように構成された電源をさらに備える。
【0016】
第5の態様においては、液体を搬送するための既設導管内に微生物増殖を防ぐためのシステムを後付けする方法が提供される。本方法は、第4の態様によるシステムを提供するステップと、既設導管の内側に本システムのホースを設けるステップとを含む。
【0017】
第6の態様においては、上述した目的は、ホースが液体を搬送する、第4の態様によるシステムのホース内における微生物増殖を防ぐための方法によって達成される。本方法は、電源を用いてホースの単層に電流を供給するステップを含む。
【0018】
第4から第6の態様の技術は、ホースが、例えば、既設のプラスチック管内で、電気絶縁材料によって囲まれている用途に特に有用である。
【0019】
第7の態様においては、飲料を分配するためのタッピングステーションと、飲料を収容している容器からタッピングステーションに飲料を搬送するための飲料導管とを備える飲料分配システムが供給される。飲料分配システムは、管又はホースが飲料導管の一部を形成する、第1の態様又は第4の態様による微生物増殖を防ぐためのシステムをさらに備える。飲料は、ビールとすることができ、容器は樽とすることができる。
【0020】
ここで、そして、これらの記載を通して、液体が内側層に直接接触するということは、内側層と液体との間に他の材料がないことを意味する。
【0021】
電流が内側層又は単層に供給されると、微生物増殖及びバイオフィルムの形成がかなり低減することが見出された。なぜこれが起こるのかについての確立された理論はないが、以下において概念実証が提供される。さらに、本提案のシステムを動作させるために必要とされる電力は低く、したがって、動作コストの低減に寄与する。さらに、管がポリマーベース材料で作られるということは、製造コストが概して低く、これにより、より設置コストの低減に寄与することを意味する。既設の管の内側にホースを後付けすることができ、これも設置コストの低減に寄与する。
【0022】
液体は、水、及び/又は、砂糖、アルコール、及び塩等の水溶性物質を含むことができる。液体の主成分は水とすることができる。
【0023】
提案された技術の詳細な説明
本提案の技術の種々の態様のさらなる選択的な特徴が、以下に示される。
【0024】
内側層又は単層に供給される電流は、直流電流とすることができる。直流電流は、10mA未満、1mA未満、0.1mAから1mAまで、又は0.3mAから0.7mAまでとすることができる。電流は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に、150V未満、120V未満、20Vから100Vまで、又は50Vから70Vまでの電圧で発生させることができる。電源は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に、ここに列挙された電圧で、第1の電気コネクタ又は第2の電気コネクタに電流を供給するように構成することができる。ここに記載した動作パラメータは、特に、分配本管内を速く流れる淡水において微生物増殖を低減させることが見出された。
【0025】
電源は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に極性を変更するように構成することができる。極性の変更は、時間的にランダムであってもよく、あるいは、所定のスケジュールに従ってもよい。極性は、少なくとも12時間ごと、あるいは少なくとも1時間ごとに変更することができる。極性の変更によって微生物増殖が抑制されるという兆候がある。
【0026】
代わりに、内側層又は単層に供給される電流は、交流電流とすることができる。交流電流は、10mA未満、1mA未満、0.1mAから1mAまで、又は0.4mAから0.8mAまでとすることができる。交流電流は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタの間に、80V未満、50V未満、10Vから50Vまで、20Vから50Vまで、又は30Vから50Vまでの電圧で供給することができる。電源は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に、ここに列挙された電圧で、第1の電気コネクタ又は第2の電気コネクタに交流電流を供給するように構成することができる。交流電流は、1kHzから5kHzまで、又は1kHzから2kHzまでの周波数を有することができる。ここに記載した動作パラメータは、特に、分配本管内をゆっくり流れる、あるいは静止している淡水において微生物増殖を低減させることが見出された。
【0027】
電源は、直流電流及び交流電流の両方に対して、パルス化電流として電流を供給するようさらに構成することができる。パルスは、周期長の50%未満の期間にわたる複合パルス長を有することができる。微生物増殖は、パルス化電流でも低減されることが見出された。パルス化は、電力消費の低減効果を有し、動作コストをより低くすることに寄与する。電源は、パルス間で、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間の極性を変更するようにさらに構成することができる。これにより、微生物増殖が抑制されるという兆候がある。
【0028】
直流電流及び交流電流を供給する上述の電圧の代わりに、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に、1Vから10Vまで、2Vから8Vまで、又は3Vから6Vまでの範囲の電圧で電流を供給することができる。これらの電圧は、微生物増殖に十分な効果を有すると考えられる。
【0029】
代わりに、内側層又は単層に供給される電流は、10mA未満、1mA未満、0.1mAから1mAまで、又は0.4mAから0.8mAまでの直流電流又は交流電流とすることができる。加えて、電流は、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に、0.5kVから6kVまで、0.5kVから4kVまで、0.5kVから2kVまで、又は0.5kVから1kVまでの範囲の電圧で供給することができる。加えて又は代わりに、電流はパルス化することができる。さらに、電流のパルスは、1msから500msまで、1msから100msまで、又は1msから10msまでの範囲のパルス長を有することができる。これらの動作パラメータは、微生物増殖に大きな効果を有すると考えられる。
【0030】
電源は、ランダムに、あるいは所定値にしたがって、電流及び/又は電位を変化させるように構成することができる。電流及び/又は電位の変化は、0.01から100まで、又は0.1から10までの範囲の相対変化に対応することができる。加えて、電源は、時間的にランダムに、あるいは所定のスケジュールにしたがって、電流及び/又は電位を変化させるように構成することができる。このような変化によって、電流及び/又は電位は、少なくとも12時間ごとに、又は少なくとも1時間ごとに、変化することになる。これらのパラメータを変化させることによって、微生物増殖が妨げられると考えられる。
【0031】
システムは、内側層内の電流、及び液体内の電流を発生するように構成することができ、内側層内の電流は、液体内の電流と同程度の大きさとすることができ、或いは、内側層内の電流は、液体内の電流の0.02倍から50倍まで、又は0.1倍から10倍までの範囲とすることができる。加えて又は代わりに、システムは、管の内側の単位面積あたり0.01mWから500mWまで、0.1mWから100mWまで、0.5mWから50mWまで、又は1mWから10mWまでの範囲の電力に対応する電流を内側層と液体との間に発生するように構成することができる。ここで決定されたパラメータは、内側層及び液体の性質に依存し、モデル化又は実験によって決定されうることに留意されたい。
【0032】
内側層又は単層の導電性ポリマー材料は、カーボンブラック充填ポリマーとすることができる。カーボンブラックに加えて、あるいはカーボンブラックの代わりに、ポリマーは、ナノチューブ、グラフェン、及び/又はメタルファイバー、あるいは導電性を提供するためのフィラメントで充填されてもよい。これらの材料は、通常、所望の導電性を達成するのに、必要とされる材料がカーボンブラックより少量で済むという利点がある。
【0033】
管の場合、導電性ポリマー材料は、ポリエチレン、ポリポロピレン、ポリアミド、又はポリエステルを含むか、それらで構成することができる。電気絶縁ポリマー材料のポリマー材料、すなわち外側層は、ポリエチレン、ポリポロピレン、ポリアミド、又はポリエステルを含むか、それらで構成することができる。ホースの場合、導電性ポリマー材料は、ポリエチレン、ポリポロピレン、ポリアミド、又はポリエステルを含むか、それらで構成することができる。電気絶縁ポリマー材料のポリマー材料、すなわち外側層は、ポリエチレン、ポリポロピレン、ポリアミド、又はポリエステルを含むか、それらで構成することができる。
【0034】
カーボンブラックそれ自体は、電流が流れていない場合に、管又はホースの内側の微生物増殖を増やすことになる。しかし、内側層又は単層における電流によって、微生物増殖が抑制されるという正味の効果があることが示された。
【0035】
管の内径で乗算され、第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に長さで割った、内側層の第1の電気コネクタと第2の電気コネクタとの間に抵抗値は、0.2kΩから10kΩまで、0.5kΩから7kΩまで、又は1kΩから5kΩまでの範囲とすることができる。ここでは、抵抗値は、管内に液体がない状態で決定した。これらのパラメータを有する管は、適切に汚水を浄化するのに適していることが見出された。
【0036】
第1の電気コネクタと第2電気コネクタとは、0.2mから50m、又は1mから10mの範囲の間隔で離間することができる。
【0037】
本提案の技術及び他の特徴、並びに本提案の技術の利点のより完全な理解は、以降の図面についての説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1a~1cは、本提案のシステムの一実施形態の構成を概略的に示す図である。
図2】本提案のシステムの液体輸送用途での一実施形態を概略的に示す図である。
図3】本提案のシステムの液体分配用途での一実施形態を概略的に示す図である。
図4】本提案のシステムの液体リサイクル用途での一実施形態を概略的に示す図である。
図5】微生物増殖を防ぐための本提案のシステムを含む飲料分配システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図6】微生物増殖を防ぐための、後付した本提案のシステムを含む飲料分配システムの一実施形態を概略的に示す図である。
図7】本提案の技術の機能の調査結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1a~図1cに、導管内の微生物増殖を低減させるためのシステムの一実施形態の構成が概略的に例示されている。内側層12及び外側層14を有している多層管10が提供される。内側層12は、20重量パーセントのカーボンブラックを含むカーボンブラック充填ポリエチレンからなる。外側層は、ポリエチレンからなる。このことは、内側層12が導電性であり、外側層14が電気的に絶縁性であることを意味する。図1cに示すように、内側層12が管10の内部全体16を覆い、外側層14が内側管12の外側全体を覆うように、内側層12及び外側層14は、共押出されている。内側管12と、管10によって搬送される液体との間には材料はない。
【0040】
代替の実施形態では、内側層12及び外側層14のポリマーは、ポリエチレンであり、これは、管10が、手動操作に対してホースの性質を有することを意味する。
【0041】
図1bに示すように、外側層14は、管10の両端で除去して、内側層12を管10の外側からアクセス可能にする。代替の実施形態では、外側層14を、管10の他の部分、例えば、管の両端から離れたところで除去して、内側層12は、管10の両端部にて内側層12が外側層14によって覆われたままとする。
【0042】
第1の電気コネクタ18が、管10の一方の端部で露出している内側層12に取り付けられ、第2の電気コネクタ19が、管10の他方の端部で露出している内側層12に取り付けられている。両方のコネクタは、ホースクランプを締め付けるのと同じ方法で、内側層の周りに締め付けられており、これにより、各コネクタと内側層12との間の良好な電気的接続を確実にする。
【0043】
第1のケーブル22を介して第1のコネクタ18に、第2のケーブル24を介して第2のコネクタ19に、動作可能に接続された電源20が設けられている。電源20をある用途に設置し、液体を管10に流す際に、電源20は、第1のコネクタ18と、第2のコネクタ19と、第1のケーブル22と、第2のケーブル24とで確立される電気回路によって、0.3mAから0.7mAまでの直流電流を、内側層12に供給するよう設定される。代替の実施形態では、電源20は、第1のコネクタ18と第2のコネクタ19との間に50Vから70Vまでの範囲内の安定電位を発生するようにも設定される。
【0044】
代替の実施形態では、電源20は、0.4mAから0.8mAまでの交流電流を内側層12に供給するように設定される。加えて、あるいは代わりに、電源20は、第1のコネクタ18と第2のコネクタ19との間に、50Vから70Vまでの範囲の安定した電位を発生するようにも設定される。
【0045】
電源20は、内側層12内に連続的な電流を供給するよう動作する。代替の実施形態では、電流は、パルス化されるか、断続的に供給する。一実施形態において、電流は、電流供給のある1週間と電流供給のない1週間との間の交互のサイクルで供給され、したがって、電流は事実上、周期長の50%の期間にわたる複合パルス長を有する。
【0046】
図2に、本提案のシステム8の一実施形態が示されている。システム8は、液体輸送用途40に設置されている。それは、図1に関連して上述したシステム8の全ての特徴を有している。管10は、液体供給部26、例えば、公共水道の本管に、一端で接続されている。管10は、家庭用又は産業用建物の給水口、あるいは公共水道の本管の別の部分等の液体受容器28に、他端で接続されている。
【0047】
図3は、液体分配用途における本提案のシステム8の一実施形態を概略的に例示している。システム8は、図1に関連して上述した全ての特徴を有している。管10は、液体供給部30、例えば、家庭用建物内の温水管に一端で接続されている。管10は、家庭用又は公共の建物内におけるシャワー等の液体分配器32に他端で接続されている。
【0048】
図4に、本提案のシステム8の他の実施形態が示されている。システム8は、液体リサイクル用途44に設置されている。それは、図1に関連して上述したシステム8の全ての特徴を有している。管10は、その両端で、建物の低温加熱システムの熱交換機、循環ポンプ、及びラジエーター等の液体リサイクル器34に接続されている。
【0049】
図5に、飲料分配システム6の一実施形態が概略的に例示されている。分配システム6は、バーカウンター34に取り付けられたビールタップ32の形態の、飲料用の液体分配器又はタッピングステーションを有する。それは、ビール樽30の形態の、飲料を収容している液体供給部又は容器から飲料を搬送するための飲料導管36をさらに有する。図1に関連して説明した実施形態の特徴を有する、微生物増殖を防ぐためのシステム8は、分配システム6の一部を形成する。管10は、飲料導管の一部をなす。管10は、飲料ホース37を介して一端でビール樽30に接続されている。管10は、その他端でビールタップ32に接続されている。図1に関連して上述したように電源20を動作させると、管10内で微生物増殖が防止される。
【0050】
図6に、飲料分配システム6の他の実施形態が概略的に例示されている。分配システム6は、バーカウンター34に取り付けられたビールタップ32の形態の、飲料用の液体分配器又はタッピングステーションを有する。図1に関連して説明した実施形態の特徴を有する、微生物増殖を防ぐためのシステム8は、分配システム6の一部を形成する。しかし、システム8は、管10がホースであるという点で図5の例とは異なる。分配システム6は、剛性管の形態の既設導管38を有する。剛性管38の受け入れ端を通してホース10を挿入し、ビールタップ32にホース10を接続することによって、ホース10は、剛性管38内に後付けされている。ホース10は、飲料ホース37を介して、一端でビール樽30に接続されている。したがって、ホース10は、樽30からビールタップ32にビールを搬送する飲料導管36の一部を形成する。図1に関連して上述したように電源20を動作させると、ホース10内の微生物増殖が防止される。
【0051】
概念実証
本提案の技術の調査を、3つの異なる設定を含めて行った。同一の長さ及び径の3つの管を用いた。長さは25メートルとし、内径は63mmとした。第1の設定において、管は、単層のポリエチレン管とした。第2及び第3の設定では、管は、カーボンブラック充填ポリエチレンの内側層を有する、同一の多層管とした。電気コネクタを、管の両端で、管の内側層に取り付けた。公共の水道の本管からの淡水を管内に導入し、管に通して流した。0.5mAの電流を60Vから65Vまでの範囲の電圧で第3の構成の電気コネクタに供給した。
【0052】
調査は、2つの期間に分けられ、第1の期間は、第1週から第10週までとし、第2の期間は、第10週間から第25週までとした。
【0053】
管の内壁からのバイオフィルムのサンプルを得ることによって、微生物増殖を、毎週監視した。サンプルを、48時間培養し、次に、各サンプル中の細菌コロニーの数を計算し、対応する設定での微生物増殖を表すために用いた。
【0054】
第1の期間では、微生物増殖が内壁に定着するも、管内の環境に適応することが許容された。第1の期間では、決定的な結果は得られなかった。次に、調査の第2の期間を開始する前に、3つの設定を他の時点に、公共の水道の本管に移動させて接続した。
【0055】
図7に、第2の期間の結果が示されている。週が横座標に示されており、計数された細菌の数が縦座標に示されている。各週における左のバーは、第1の設定、すなわち、単層のポリエチレン管を有する設定からの測定値を表し、中央のバーは、第2の設定、すなわち電流が流れない内側導電層を有する設定からの測定を表し、右のバーは、第3の設定、すなわち電流が流れる内側導電層を有する設定からの測定値を表している。バーがない週ではサンプル採取を行わなかったことに留意されたい。
【0056】
図7から明らかなように、微生物増殖それ自体が管内に確立した第16週後には、第2の設定における微生物増殖は、第3の設定におけるよりも大きく、したがって、供給された電流が微生物増殖を抑えていることを示している。第2の設定及び第3の設定の初期の計数値が高いことは、内側層内にカーボンブラックを有する管内の環境への初期適応の結果であると考えられる。
【符号の説明】
【0057】
6 飲料分配システム
8 システム
10 管又はホース
12 内側層
14 外側層
16 管の内側
18 第1の電気コネクタ
19 第2の電気コネクタ
20 電源
22 第1のケーブル
24 第2のケーブル
26 液体供給体
28 液体受容体
30 液体供給体
32 液体分配器
34 バーカウンター
36 飲料導管
38 既設導管
40 液体輸送用途
42 液体分配用途
44 液体リサイクル用途
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7