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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】ガス拡散層
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/032 20210101AFI20220329BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20220329BHJP
   H01M 8/0245 20160101ALI20220329BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20220329BHJP
   C25B 11/063 20210101ALI20220329BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20220329BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20220329BHJP
【FI】
C25B11/032
H01M4/86 M
H01M8/0245
H01M8/1004
C25B11/063
C25B1/04
H01M8/0228
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019550657
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2018058572
(87)【国際公開番号】W WO2018189005
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】17166552.4
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502385850
【氏名又は名称】エンベー ベカルト ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】NV Bekaert SA
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン ドゥ ブルーカー
(72)【発明者】
【氏名】デイビー グーセンス
(72)【発明者】
【氏名】クリス シンヘーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ドゥ バルデメーカー
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0049677(US,A1)
【文献】特開平09-326256(JP,A)
【文献】国際公開第2014/048738(WO,A2)
【文献】特開2013-187073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/03
C25B 9/00
H01M 4/86
H01M 8/0245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解装置用の又は燃料電池用のガス拡散層であって、
-陽子交換メンブレインに接触するべく提供された金属ファイバの第1不織層であって、第1相当直径の金属ファイバを有する金属ファイバの第1不織層と、
-金属ファイバの第2不織層であって、前記金属ファイバの第2不織層は、第2相当直径の金属ファイバを有し、
前記第2相当直径は、前記第1相当直径を上回っている、金属ファイバの第2不織層と、
-第3多孔性金属層であって、前記第3多孔性金属層は、開気孔を有し、前記第3多孔性金属層の前記開気孔は、前記金属ファイバの第2不織層の開気孔よりも大きい、第3多孔性金属層と、
を有し、
前記第2不織層は、前記第1不織層と前記第3多孔性金属層との間において提供され、且つ、これらと接触しており、
前記第2不織層は、前記第1不織層に、且つ、前記第3多孔性金属層に、冶金方式で接合されており、
前記第3多孔性金属層の厚さは、前記第1不織層の厚さの少なくとも2倍-且つ、好ましくは、少なくとも3倍-である、ガス拡散層。
【請求項2】
前記第1相当直径は、35μm未満、好ましくは、25μm未満、より好ましくは、20μm未満である、請求項1に記載のガス拡散層。
【請求項3】
前記第2不織層の厚さは、前記第1不織層の前記厚さの少なくとも2倍である、請求項1又は2に記載のガス拡散層。
【請求項4】
前記第1不織層の前記厚さは、0.15mm未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項5】
前記第1不織層及び前記第2不織層は、チタニウムファイバを有し-且つ、好ましくは、これらから構成されており、且つ、
前記第3多孔性層は、チタニウムを有し-且つ、好ましくは、これから構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項6】
前記第1不織層の前記金属ファイバは、別個の長さを有し、且つ、断面を有し、前記断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項7】
前記第3多孔性金属層は、金属ファイバの第3不織層を有し、或いは、これから構成されており、
前記金属ファイバの第3不織層は、第3相当直径の金属ファイバを有し、且つ、
前記第3相当直径は、前記第2相当直径を上回っている、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項8】
前記第1不織層、前記第2不織層、及び前記第3不織層は、同一の空隙率を有する、請求項7に記載のガス拡散。
【請求項9】
前記第3相当直径は、50μm超、好ましくは、60μm超、より好ましくは、70μm超である、請求項7又は8に記載のガス拡散層。
【請求項10】
前記第3不織層の前記金属ファイバは、別個の長さを有し、且つ、断面を有し、前記断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する、請求項7~9のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項11】
前記第3不織層の前記金属ファイバは、四角形の、且つ、好ましくは、矩形の、断面を有する、請求項7~9のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項12】
前記第3多孔性金属層は、展延金属シート又は織金網のうちの1つ又はこれらの積層体を有するか又はこれらから構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス拡散層。
【請求項13】
前記第3多孔性金属層は、第1展延金属シートと、第2展延金属シートと、を有し、
前記第1展延金属シートのダイアモンドサイズの開口部の大きな寸法の方向は、前記第2展延金属シートのダイアモンドサイズの開口部の大きな寸法の方向との間において、少なくとも30°、且つ、好ましくは、少なくとも60°、且つ、より好ましくは、90°、の角度を形成している、請求項12に記載のガス拡散層。
【請求項14】
電気分解装置又は燃料電池用の積層体であって、
-請求項1~13のいずれか1項に記載のガス拡散層と、
-バイポーラプレートと、
を有し、
前記バイポーラプレートは、前記第3多孔性金属層に接触しており、
好ましくは、前記バイポーラプレートは、前記第3多孔性金属層に冶金方式で接合されている、積層体。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載のガス拡散層及び陽子交換メンブレインの組立体或いは請求項14に記載の積層体及び陽子交換メンブレインの組立体であって、
前記第1不織層は、前記陽子交換メンブレインと接触しており、且つ、
好ましくは、触媒が、前記第1不織層が前記陽子交換メンブレインと接触している面において、前記第1不織層上に提供されている、組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気分解装置及び燃料電池において使用されるガス拡散層の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第03/059556A2号パンフレットは、燃料電池において又は電気分解装置において使用される積層体について開示している。積層体は、不透過性の金属構造と、第1金属ファイバ層と、第2金属ファイバ層と、を有する。不透過性の金属構造は、第1金属ファイバ層の一方の面に焼結され、且つ、第2金属ファイバ層は、第1金属ファイバ層の他方の面に焼結されている。第2金属ファイバ層は、燃料電池内において又は電気分解装置内において、PEM(proton exchange membrane:陽子交換メンブレイン)に対する接触層として提供されている。積層体の平面通気度は、0.02l/分*cmを上回っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の第1の態様は、電気分解装置用の又は燃料電池用のガス拡散層である。ガス拡散層は、陽子交換メンブレインに接触するべく提供された金属ファイバの第1不織層(これは、触媒によって被覆されうるであろう)と、金属ファイバの第2不織層と、第3多孔性金属層と、を有する。金属ファイバの第1不織層は、第1相当直径の金属ファイバを有する。金属ファイバの第2不織層は、第2相当直径の金属ファイバを有する。第2相当直径は、第1相当直径を上回っている。第3多孔性金属層は、開気孔を有する。第3多孔性金属層の開気孔は、金属ファイバの第2不織層の開気孔よりも大きい。第2不織層は、第1不織層と第3多孔性金属層との間に提供されており、且つ、これらに接触している。第2不織層は、第1不織層に且つ第3多孔性金属層に冶金方式で接合されている。第3多孔性金属層の厚さは、第1不織層の厚さの少なくとも2倍-且つ、好ましくは、少なくとも3倍、より好ましくは、少なくとも5倍-である。
【0004】
第1不織層は、陽子交換メンブレイン(PEM)に対する接触層として機能するべく、提供されている。微細ファイバの使用は、有益であり、その理由は、PEMとの間に、電気化学反応が発生するための大きな接触面積が提供されると共に、微細気孔-第1不織層内の微細ファイバの使用に起因して存在している-が、PEMにおける反応サイトとの間の効率的な大量搬送用の毛管現象を許容しているからである。第3多孔性層は、第1不織層よりも大きな気孔を有し、この肯定的な結果が、効率的な平面質量流入及び流出である。第3多孔性層の厚さに起因し、平面的な流れが更に改善され、これにより、平面的な質量の流れのための大きな断面が得られる。
【0005】
金属ファイバの第2不織層の存在は、プレーンを通じた分子の流入及び流出に悪影響を及ぼす-且つ、その結果、流量の低減が、電気分解装置の必要な過電圧を増大させることから、電気分解装置又は燃料電池の機能に悪影響を及ぼす-が、金属ファイバの中間の第2不織層の使用が、特定の利益を提供している。第3多孔性金属層上への直接的な第1不織層の冶金方式による接合は、非常に面倒であると共に信頼性が低いことが認知されていたが、その結果が、早期の接合の障害であり、且つ、動作圧力におけるガス拡散層の厚さを通じた相対的に大きな電気抵抗値である。層の間の冶金方式による接合は、重要であり、その理由は、このような接合は、層の間の小さな電気抵抗値を提供するからである。第1不織層と第3多孔性金属層との間における第2不織層の提供は、層の間の確実な冶金方式による接合が提供されうることを保証しており、その理由は、層の気孔サイズの差と、その結果、互いに直接的に接合される必要がある、層を構築する金属性構造のサイズと、が低減されるからである。利益は、電気分解装置の過電圧を低減する、ガス拡散層のオーム抵抗値の低減と、ガス拡散層の機械的安定性の改善と、である。両方の不織体の表面上には、不可避に、特定量の多毛状態が存在している。その結果、第1不織体からのファイバが、ある程度、第2不織体に進入することになり、且つ、第2不織体の金属ファイバが、ある程度、第1不織体内に且つ第3多孔性層内に進入することになる。この進入が、電気分解装置の過電圧を低減する、ガス拡散層のオーム抵抗値の低減と、ガス拡散層の機械的安定性の改善と、の両方について有益な、金属性接触及び冶金方式による接合の改善をもたらす。
【0006】
ファイバの相当直径は、必ずしも円形の断面を有してはいないファイバの断面と同一の表面積を有する円の直径を意味している。
【0007】
不織層の又は第3多孔性金属層の気孔サイズは、いくつかの方法によって観察することができる。ガス拡散層の厚さを通じた断面を生成することが可能であり、且つ、この断面を顕微鏡下において分析することが可能であり、顕微鏡下においては、気孔-並びに、そのサイズ-が可視状態となる。更に進歩した方法は、ガス拡散層のX線断層撮影である。
【0008】
好ましくは、第2相当直径は、第1相当直径よりも、少なくとも50%だけ大きい。
【0009】
第2不織層は、第1不織層に且つ第3多孔性金属層に冶金方式で接続されている。冶金方式による接合は、例えば、焼結を利用し、或いは、溶接を利用し(例えば、容量性放電溶接CDWを利用し)、実行することができる。
【0010】
好ましくは、第1不織層内の金属ファイバは、互いに冶金方式で接合されている。
【0011】
好ましくは、第2不織層内の金属ファイバは、互いに冶金方式で接合されている。
【0012】
好ましくは、第1相当直径は、35μm未満であり、好ましくは、25μm未満であり、より好ましくは、20μm未満である。
【0013】
好ましくは、第2相当直径は、20μm~60μmである。
【0014】
好ましくは、第2不織層の厚さは、第1不織層の厚さの少なくとも2倍である。
【0015】
好ましくは、第1不織層の厚さは、0.15mm未満である。このような実施形態は、特に有益なガス拡散層を提供し、その理由は、PEMとの間の接触層を提供する第1不織層が薄く、その結果、電気分解装置内におけるガス拡散層の提供用の利用可能な空間内において、相対的に大きな厚さの第3多孔性層を提供しうるからであり、第3多孔性層は、水及び反応生成物のプレーン内における流入及び流出を提供している。
【0016】
好ましくは、第1不織層及び第2不織層は、チタニウムファイバを有する-且つ、好ましくは、これらから構成されている。第3多孔性層は、チタニウムを有する-且つ、好ましくは、これから構成されている。
【0017】
好ましい一実施形態においては、第1不織層及び第2不織層は、同一の空隙率を有する。
【0018】
好ましい一実施形態においては、第1不織層の金属ファイバは、別個の長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。第1不織層の金属ファイバは、その断面の不規則な形状に起因して、大きな表面積を有する。結果は、特に、第1不織層の表面が触媒によって被覆された際の、或いは、要素交換メンブレインが触媒によって被覆された際の、電気化学反応が発生しうる、陽子交換メンブレインとの接触状態にある大きな表面積である。
【0019】
このようなファイバは、国際公開第2014/048738A1号パンフレットにおいて記述されているように、製造することができる。このようなファイバを生成する別の技術は、米国特許第4,640,156号明細書において記述されている。
【0020】
好ましい一実施形態においては、第2不織層の金属ファイバは、四角形の、且つ、好ましくは、矩形の、断面を有する。このようなファイバを製造する技術については、米国特許第4,930,199号明細書において開示されている。
【0021】
好ましくは、第2不織層の金属ファイバは、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。このようなファイバは、国際公開第2014/048738A1号パンフレットにおいて記述されているように、製造することができる。このようなファイバを製造する別の技術は、米国特許第4,640,156号明細書において記述されている。
【0022】
好ましい一実施形態においては、第3多孔性金属層は、金属ファイバの第3不織層を有しており、或いは、これから構成されている。金属ファイバの第3不織層は、第3相当直径の金属ファイバを有する。第3相当直径は、第2相当直径を上回っている。
【0023】
好ましくは、第3相当直径は、第1相当直径よりも、少なくとも40μmだけ-且つ、より好ましくは、少なくとも50μmだけ-大きい。好ましくは、第3不織層内の金属ファイバは、互いに冶金方式で接合されている。
【0024】
好ましい一実施形態においては、第1不織層、第2不織層、及び第3不織層は、同一の空隙率を有する。
【0025】
好ましくは、第3相当直径は、50μmを上回り、好ましくは、60μmを上回り、より好ましくは、70μmを上回っている。このような実施形態は、大きな気孔が第3不織層内において提供され、これにより、第3多孔性層を通じたプレーン内の流れが促進される、という利益を有する。
【0026】
好ましくは、第3不織層の金属ファイバは、四角形の、且つ、好ましくは、矩形の、断面を有する。このようなファイバを製造する技術については、米国特許第4,930,199号明細書において開示されている。第3不織層の金属ファイバが、四角形の、且つ、好ましくは、矩形の、断面を有している実施形態は、相乗作用をもたらす利益を有しており、第3不織層の金属ファイバは、相対的にコンパクトな断面を有し、この結果、ガス拡散層が使用される電気分解装置又は燃料電池内に、ガスの平面流入及び流出用の障害物が生成されない。
【0027】
好ましくは、第3不織層の金属ファイバは、別個の長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。このようなファイバは、国際公開第2014/048738A1号パンフレットにおいて記述されているように、製造することができる。このようなファイバを生成する別の技術は、米国特許第4,640,156号明細書において記述されている。
【0028】
好ましい一実施形態においては、第3多孔性金属層は、展延金属シート又は織金網のうちの1つ又は積層体を有し、或いは、これらから構成されている。展延金属シート及び織金網の空隙率及び気孔サイズは、第1及び第2不織層から別個に選択することができる。例えば、圧力降下を低減するべく、増大した空隙率を選択することができる。展延金属シートが、焼結された不織体よりも大きな剛性を有することは、利益である。1つ又は複数の展延金属シートを含む多層ガス拡散層が、PEM側において大きな表面積を許容する一方で、剛性が、流路が機械加工されているバイポーラプレートによって提供された成形された表面に対して圧縮された際のサギングを防止している。
【0029】
好ましくは、第3多孔性金属層は、複数の展延金属シート又は織金網を有し、或いは、これらから構成されており、この場合に、複数の展延金属シート又は織金網は、例えば、焼結を利用し、或いは、例えば、容量性放電溶接(CDW)などの、溶接を利用し、互いに冶金方式で接続されている。
【0030】
好ましい一実施形態においては、第3多孔性金属層は、複数の展延金属シートの積層体を有し、或いは、これから構成されている。積層体内においては、相対的に大きな開口部サイズを有する展延金属シートは、相対的に小さな開口部サイズを有する展延金属シートとの比較において、第2不織層から離れた場所において提供されている。
【0031】
好適な一実施形態においては、第3多孔性金属層は、第1展延金属シートと、第2展延金属シートと、を有する。第1展延金属シートのダイアモンドサイズの開口部の大きな寸法の方向は、第2展延金属シートのダイアモンドサイズの開口部の大きな寸法の方向との間において、少なくとも30°の、且つ、好ましくは、少なくとも60°の、且つ、より好ましくは、90°の、角度を生成している。このような実施形態は、第3多孔性金属層内において、相対的に良好なプレーン内流れ場を提供する。
【0032】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の任意の実施形態と同様のガス拡散層と、バイポーラプレートと、を有する、電気分解装置又は燃料電池用の積層体である。バイポーラプレートは、第3多孔性金属層と接触している。好ましくは、バイポーラプレートは、例えば、焼結又は溶接を利用し、第3多孔性金属層に冶金方式で接合されている。好ましくは、バイポーラプレートは、第3不織層と接触しているその表面全体にわたって平坦であり、これは、バイポーラプレート内において、流れ場が提供されないことを意味している。
【0033】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の任意の実施形態と同様のガス拡散層と、陽子交換メンブレインと、の組立体である。第1不織層は、陽子交換メンブレインと接触している。好ましくは、触媒が、第1不織層が陽子交換メンブレインに接触している面において、第1不織層上に提供されており、或いは、触媒が、第1不織層との接触状態にある面において、要素交換メンブレイン上に提供されている。
【0034】
本発明の第4の態様は、本発明の第2の態様と同様の積層体と、陽子交換メンブレインと、の組立体である。第1不織層は、陽子交換メンブレインと接触している。好ましくは、触媒が、第1不織層が陽子交換メンブレインと接触している面において、第1不織層上に提供されており、或いは、触媒が、第1不織層との接触状態にある面において、陽子交換メンブレイン上に提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によるガス拡散層の断面を概略的に示す。
図2】本発明によるガス拡散層の断面の拡大写真を示す。
図3】ガス拡散層の厚さを通じた電気抵抗値を2層ガス拡散層と比較している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1には、本発明による第1の例示用のガス拡散層10が概略的に示されている。図2には、この第1の例示用のガス拡散層40の断面の拡大写真が示されている。第1の例示用のガス拡散層10、40は、チタニウムファイバの第1不織層12、42と、チタニウムファイバの第2不織層22、52と、チタニウムファイバの第3不織層32、62と、から構成されている。チタニウムファイバの第1不織層は、電気分解装置内の陽子交換メンブレインに接触するべく、提供されている。チタニウムファイバの第1不織層は、22μmの相当直径のチタニウムファイバを有する。第1不織層のチタニウムファイバは、14mmの長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。第1不織層は、250g/mの特定の質量と、0.11mmの厚さdと、を有する。
【0037】
チタニウムファイバの第2不織層は、50μmの相当直径を有する800g/mのチタニウムファイバから構成されており、ファイバは、四角形の断面を有する。第2不織層の厚さdは、0.35mmである。第1不織層との比較における第2不織層内のファイバの相対的に大きな相当直径に起因して、開気孔は、第1不織層内よりも第2不織層内において相対的に大きい。チタニウムファイバの第3不織層は、80μmの相当直径の2600g/mのチタニウムファイバから構成されている。第3不織層は、1.14mmの厚さdを有する。第3不織層内の開気孔は、第2不織層内の開気孔よりも大きい。第1不織層のチタニウムファイバは、別個の長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。
【0038】
第2不織層は、第1不織層と第3不織層との間において提供され、且つ、これらに接触している。第2不織層は、第1不織層に且つ第3不織層に焼結されている。ガス拡散層の合計厚さdは、1.6mmである。
【0039】
本発明による第1の例示用のガス拡散層を2層ガス拡散層と比較した。
【0040】
2層ガス拡散層は、22μmの相当直径のチタニウムファイバの第1不織層から構成されていた。第1層は、650g/mの特定の質量と、0.28mmの厚さと、を有していた。第1不織体に焼結されていたのは、80μmの相当直径のチタニウムファイバから構成された3000g/mの別の不織体であり、且つ、別の不織体の厚さは、1.32mmであり、このガス拡散層の合計厚さは、1.6mmであり、これは、本発明による第1の例示用のガス拡散層と同一の合計厚さであった。
【0041】
ガス拡散層上における圧縮力の関数として、ガス拡散層の厚さを通じた電気抵抗値を計測した。ガス拡散層は、例えば、4MPaの下、或いは、場合によっては、更に大きな圧縮力の下などの、圧縮力の下において、電気分解装置内において且つ燃料電子内において、動作している。図3は、(MPaを単位として表現された圧縮力であるX軸の)ガス拡散層上の圧縮力の関数として、Y軸において(mΩを単位として)、本発明のガス拡散層の厚さを通じた計測電気抵抗値(曲線A)及び2層ガス拡散層の厚さを通じた計測電気抵抗値(曲線B)を示している。結果は、本発明のガス拡散層における、電気分解装置内において又は燃料電池内において使用される、(MPaを単位として表現されたX軸における)圧縮力の下におけるガス拡散層を通じた大幅に低減された電気抵抗値(曲線A)を示している。
【0042】
本発明による第2の例示用のガス拡散層は、チタニウムファイバの第1不織層と、チタニウムファイバの第2不織層と、チタニウムの展延金属シートの積層体と、から構成されている。チタニウムファイバの第1不織層は、電気分解装置内において陽子交換メンブレインに接触するべく、提供されている。チタニウムファイバの第1不織層は、14μmの相当直径のチタニウムファイバを有する。第1不織層のチタニウムファイバは、10mmの長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。第1不織層は、150g/mの特定の質量と、0.15mmの厚さと、を有する。
【0043】
チタニウムファイバの第2不織層は、22μmの相当直径を有する150g/mのチタニウムファイバから構成されている。第2不織層のチタニウムファイバは、14mmの長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。第2不織層の厚さは、0.15mmである。第1不織層との比較における第2不織層内のファイバの相対的に大きな相当直径に起因して、開気孔は、第1不織層内よりも第2不織層内において相対的に大きい。第2不織層は、第1不織層に焼結されている。
【0044】
第3多孔性層は、互いに且つ第2不織層に焼結又は溶接された6つの展延チタニウムシート(或いは、網)の積層体から構成されている。0.8mm×1.2mmのダイアモンド開口部サイズを有する0.125mmの厚さの第1網が第2不織層に接触している。この第1網は、第1網と同一である第2展延金属シートによって後続されている。更には、積層体は、それぞれが0.3mmの厚さの、且つ、1.0×2.0mmのダイアモンド開口部サイズを有する、2つの展延金属シートと、それぞれが0.68mmの厚さの、且つ、2.0×4.0mmのダイアモンド開口部サイズを有する、2つの展延金属シートと、を有する。ガス拡散層の合計厚さは、2.5mmである。
【0045】
本発明による第3の例示用のガス拡散層は、チタニウムファイバの第1不織層と、チタニウムファイバの第2不織層と、チタニウム展延金属シートの積層体と、から構成されている。チタニウムファイバの第1不織層は、電気分解装置内において陽子交換メンブレインに接触するべく、提供されている。チタニウムファイバの第1不織層は、14μmの相当直径のチタニウムファイバを有する。第1不織層のチタニウムファイバは、10mmの長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。第1不織層は、150g/mの特定の質量と、0.15mmの厚さと、を有する。
【0046】
チタニウムファイバの第2不織層は、22μmの相当直径を有する150g/mのチタニウムファイバから構成されている。第2不織層のチタニウムファイバは、14mmの長さを有し、且つ、断面を有し、この場合に、断面は、その間に90度未満の角度を有する2つの隣接した直線状の辺と、1つ又は複数の不規則に成形された湾曲した辺と、を有する。第2不織層の厚さは、0.15mmである。第1不織層との比較における第2不織層内のファイバの相対的に大きな相当直径に起因して、開気孔は、第1不織層内よりも第2不織層内において相対的に大きい。第2不織層は、第1不織層に焼結されている。
【0047】
第3多孔性層は、互いに且つ第2不織層に焼結又は溶接された5つの展延チタニウムシート(或いは、網)の積層体から構成されている。0.8mm×1.2mmのダイアモンド開口部サイズを有する0.1mmの厚さの第1メッシュが第2不織層に接触している。この第1メッシュは、1mm×2mmのダイアモンド開口部サイズを有する0.3mmの厚さの第2展延金属シートによって後続されている。更には、積層体は、それぞれ2mmの厚さの、且つ、7×14mmのダイアモンド開口部サイズを有する、3つの展延金属シートを有する。ガス拡散層の合計厚さは、6mmである。
図1
図2
図3