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特許7048635縫合糸取り付け部強度のオンプレス試験を有する、外科用縫合針を縫合糸に取り付けるためのスエージングシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】縫合糸取り付け部強度のオンプレス試験を有する、外科用縫合針を縫合糸に取り付けるためのスエージングシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/06 20060101AFI20220329BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61B17/06
G01N3/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019552275
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 US2018017560
(87)【国際公開番号】W WO2018175009
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】15/465,912
(32)【優先日】2017-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 151, U.S. Route 22, Somerville, NJ 08876, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】チチョッキ・フランク・リチャード・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カンナラ・アレクサンダー・エム
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-254741(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00663187(EP,A2)
【文献】特開平08-066402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/06
A61B 17/04
G01N 3/08
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用縫合針を縫合糸に取り付け、取り付け部強度を試験するためのスエージングシステムであって、
フレームと、
前記フレーム上に装着された底部スエージングダイと、
前記フレーム上に装着され、前記底部スエージングダイと位置合わせされたスエージング軸に沿って上下に移動可能な上部スエージングダイと、を備え、
前記底部スエージングダイは、ヒンジ機構であって、
前記フレームに装着された底部プレート、及び前記底部プレートの上に重なる上部プレートであって、前記上部プレート及び前記底部プレートは、前記上部プレートが前記底部プレートに対して枢動することを可能にするために互いに枢動可能に接続され、前記底部スエージングダイは、前記スエージング軸に沿って前記上部スエージングダイに向かって延在する前記上部プレート上に装着されたスエージング工具を含む、底部プレート及び上部プレートと、
前記底部プレートに配設されたロードセルであって、前記外科用縫合針に取り付けられた前記縫合糸が前記スエージング軸に直交する長手方向軸に沿った方向に引っ張られ、前記外科用縫合針が前記スエージング工具と係合した際に減少する、前記上部プレートからの負荷を監視するためロードセルと、を含むヒンジ機構を備える、スエージングシステム。
【請求項2】
前記底部プレートと前記上部プレートとは、前記縫合糸が引っ張られる前記方向における端部においてヒンジを形成する、請求項1に記載のスエージングシステム。
【請求項3】
前記スエージング工具は、前記外科用縫合針を前記縫合糸にスエージングして装着済みの前記外科用縫合針を形成するためのスエージングノッチと、装着済みの前記外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、前記スエージングノッチと隣接する試験ノッチと、を備える上面を有する上端部を含
前記引張り試験は、前記外科用縫合針に取り付けられた前記縫合糸を前記長手方向軸に沿った前記方向に引っ張り、前記外科用縫合針を前記スエージング工具の前記試験ノッチと係合させ、その際の前記上部プレートからの前記負荷を前記ロードセルで測定することにより実施される、請求項1又は2に記載のスエージングシステム。
【請求項4】
前記スエージングノッチ及び前記試験ノッチは、前記スエージング軸に直交する対応する前記長手方向軸に沿って延在する、請求項に記載のスエージングシステム。
【請求項5】
前記スエージングノッチ及び前記試験ノッチは、前記上部プレートの上面に対して平行であり、かつ前記スエージング軸に対して垂直である対応する前記長手方向軸に沿って延在する、請求項に記載のスエージングシステム。
【請求項6】
前記スエージングノッチは第1の幅を有し、前記試験ノッチは前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し、前記外科用縫合針は、前記スエージングノッチの前記第1の幅以下であり、かつ前記試験ノッチの前記第2の幅よりも大きい直径を有し、前記縫合糸は、前記スエージングノッチの前記第1の幅及び前記試験ノッチの前記第2の幅よりも小さい直径を有する、請求項3に記載のスエージングシステム。
【請求項7】
前記スエージングノッチの前記第1の幅が約203.2μm(約8ミル)であり、前記試験ノッチの前記第2の幅は約101.6μm(約4ミル)であり、前記外科用縫合針の前記直径は約190.5μm(約7.5ミル)であり、前記縫合糸の前記直径は約88.9μm(約3.5ミル)である、請求項に記載のスエージングシステム。
【請求項8】
前記ロードセルによって測定された負荷信号を受信するために前記ロードセルと通信する少なくとも1つのマイクロプロセッサを有する制御システムを更に備え、前記マイクロプロセッサが、前記ロードセルによって測定された前記負荷信号の変化を検出するように適合されている、請求項に記載のスエージングシステム。
【請求項9】
前記制御システムが、装着済みの前記外科用縫合針に対して前記引張り試験を実施するための、その内部に格納された1つ以上の引張り試験プログラムを備え、各前記引張り試験プログラムは、所定の負荷下限と所定の負荷上限とを有する許容可能な負荷範囲と、所定の時間下限と所定の時間上限とを有する許容可能な時間範囲と、を含む、請求項に記載のスエージングシステム。
【請求項10】
各前記引張り試験プログラムは、前記マイクロプロセッサによって負荷変化が検出されたときに、人間操作者が前記引張り試験を開始することを可能にし、検出された前記負荷変化が前記所定の負荷下限と前記所定の負荷上限との間であり、かつ検出された時間が前記所定の時間下限と前記所定の時間上限との間である場合は、各前記引張り試験プログラムは、試験された装着済みの前記外科用縫合針が許容可能であることを示し、検出された前記負荷変化が前記所定の負荷上限を超える場合は、各前記引張り試験プログラムは、試験された装着済みの前記外科用縫合針が許容不可能であることを示し、検出された前記負荷変化が前記所定の負荷下限と前記所定の負荷上限との間であり、かつ前記検出された時間が前記所定の時間上限を超える場合は、各前記引張り試験プログラムは、試験された装着済みの前記外科用縫合針が許容不可能であることを示す、請求項に記載のスエージングシステム。
【請求項11】
装着済みの前記外科用縫合針の前記引張り試験中に、前記制御システムは、試験された装着済みの前記外科用縫合針が許容可能であるか又は許容不可能であるかを示す可視信号又は可聴信号を生成する、請求項10記載のスエージングシステム。
【請求項12】
前記制御システムは、試験された装着済みの前記外科用縫合針が許容可能である場合は可視の緑色光及び可聴のビープ音を生成し、試験された装着済みの前記外科用縫合針が許容不可能である場合は可視の赤色光及び可聴のブザーを生成する、請求項11に記載のスエージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、広義には、縫合糸に外科用縫合針を取り付けるためのスエージングシステムに関し、より具体的には、縫合針及び縫合糸取り付け部の強度を試験するためのシステム、装置、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装着済み外科用縫合針、すなわち、縫合糸がその一端部に取り付けられた縫合針は、典型的には、ある長さの縫合糸材料を外科用縫合針の縫合糸受容開口部内に供給し、外科用縫合針を縫合糸の端部にスエージングする(すなわち、押し合わせる)、手動、半自動、及び完全自動手順を利用して製造される。
【0003】
縫合針を縫合糸にスエージングすることは、縫合糸の自由端部を外科用縫合針の縫合針バレルの軸方向穴に挿入することと、スエージングダイが縫合針バレルの外側表面上にぶつかり、それによって縫合糸上の穴の一部を圧縮しながら、軸方向穴内に縫合糸を保持することと、を典型的に含む。軸方向穴の圧縮部分は、機械的干渉及び表面摩擦によって縫合糸を把持する。スエージングプロセスは、縫合針バレルと縫合糸との間に、「引き抜き」強度基準を満たすか、又は超える取り付け部を作り出すように実施される。
【0004】
図1は、片面の、複数窪みスエージングのプロトコルを使用して縫合糸Sに縫合針Nをスエージングする先行技術の方法を示す。縫合糸Sは、縫合針Nの縫合糸受容器SRに挿入され、ダイの少なくとも1つの打ち込み点は、縫合針Nの一方の側面内に打ち込まれて縫合針の壁Wを変形させて、壁Wを縫合糸Sに衝突させる凹みDを作り出し、凹みDと縫合針壁Wの対向する部分との間に圧力点Pを作り出す。1つ以上の追加的な窪みDが作製されて、更なる圧力点、例えばPを作り出してもよい。縫合糸Sは、縫合針壁Wの小部分が縫合糸Sの対応する限定された領域に衝突することによって縫合針N内に保持される。
【0005】
図2は、両面の、位置合わせされたスエージングプロトコルを使用して縫合糸Sに縫合針Nをスエージングする別の先行技術の方法を示す。縫合糸Sは、縫合針Nの縫合糸受容器SR内に挿入され、2つの対向する打ち込み部が用いられて、2つの凹みD、Dの間に縫合糸Sを把持するための圧力点Pを形成する位置合わせされた凹みD、Dを作り出す。Pにおける集中的圧力は、縫合糸Sの破壊をもたらし、縫合糸の分離をもたらすおそれのある剪断応力を生じさせ得る。縫合糸材料の剪断応力限度を超えることを避けるために、縫合糸受容器SRの寸法、縫合針Nの壁Wの厚さ及び変形性、並びに凹みD及びDの凹み深さが制御される。
【0006】
図3は、スエージングのために収束して縫合針Nを保持する第1及び第2のスエージングダイ22A、22Bを備える先行技術の縫合針スエージングアセンブリ20を示す。縫合針Nは、縫合針ホルダ24A、24Bの間に把持され、縫合糸受容器SRが縫合糸溝28A、28Bと整列した状態で縫合針止め部26A、26Bと当接する。縫合針ホルダ24A、24B間への縫合針Nの挿入は、縫合針ファンネル部分30A、30Bによって促進される。縫合針ファンネル32は、縫合糸溝28A、28Bを介して縫合糸Sを縫合針Nの縫合糸受容器SR内に通すことを補助する。スエージング要素34A、34Bは、その打ち込み部38A、38Bが縫合針Nに衝突することができるように、それぞれのスロット36A、36B内で自由に摺動することができる。図3に示される実施形態では、打ち込み部38Aは打ち込み部38Bに対して横方向にオフセットされ、その結果、スエージング要素34A、34Bがスエージング操作中に一緒に付勢されると、縫合針Nがスエージングされて、縫合糸受容器SR内に蛇行構造を作り出す。各スエージング要素34A、34B上に1つの打ち込み部38A、38Bから、最大で任意の選択された数の打ち込み部38A、38Bまでの範囲の、より多い又はより少ない数の打ち込み部38A、38Bを用いてもよい。打ち込み部38A、38Bの高さ、間隔、及び形状、並びに対向するスエージング要素34A、34B上の打ち込み部38A、38Bの相対的横方向オフセットは、スエージング及び縫合糸取り付け部の強度を調節するように選択されてもよい。
【0007】
良好な縫合糸取り付け部を提供するための1つのアプローチは、複数の打撃スエージングであり、縫合針は、制御された深さのスエージングを受けるが、しかしながら、圧縮は、縫合針バレルの大きな領域にわたって(例えば、縫合針バレルの円周の周りに)分配される。このタイプのスエージングを達成するために、縫合針は、複数のスエージング圧縮間でスエージングダイに対して回転され得る。このようにして、複数の角度的にオフセットされたスエージング操作が、単一の縫合糸に単一の縫合針を取り付けるために行われる。このアプローチは、信頼性の高い取り付け部を提供するが、縫合針のバレル上の各打撃は、縫合針バレル及び縫合糸内に応力を生成する。縫合針及び縫合糸材料は、ある程度の展性を有するが、展性の限界に達すると、材料が損なわれ、縫合針の場合には、取り付け部の亀裂及び損失、又は破損につながる。亀裂は、4310SS、ニッケル-チタンSS、及び420SS等の高度合金を含む、より硬い合金が使用されるときの特有の問題である。更に、縫合針材料は、いくらかの弾性を有し、そのため残留応力の緩和が、縫合針バレルを経時的に弛緩させ、縫合針穴と縫合糸との間の取り付けの喪失をもたらす。
【0008】
スエージング操作中の部品の故障を最小限に抑えることを目的とする1つの進歩が、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第8,214,996号(Stametzら)において開示され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。一実施形態において、‘996特許は、縫合糸を縫合針バレルに取り付ける方法を開示する。一実施形態において、第1の圧縮ストロークは、縫合針バレルの径方向底部及び径方向側面を変形に抗して拘束しながら、縫合針バレルの穴に挿入された縫合糸に対して縫合針バレルの径方向上部を圧縮する。第2の圧縮ストロークは、側面を変形に抗して拘束しながら、バレルの底部を縫合糸に対して圧縮する。別の実施形態において、縫合針バレルの上部及び底部は、圧縮され、一方で縫合針バレルの対向する外側部は、変形に抗して拘束される。一実施形態において、縫合糸を縫合針バレルに取り付けるための装置は、各々がその中に溝を有するダイを含む2つのダイセットを含む。1つのダイセットにおいて、溝は、上部が圧縮されている間、縫合針バレルの底部及び外側部を変形から保護する。他のダイのセットにおいて、溝は、縫合針バレルの底部が圧縮されている間、縫合針バレルの外側部を変形から保護する。
【0009】
装着済み縫合針が形成された後、縫合針は、外科医が要求する特定の要件を満たしているかどうかを判定するために試験されなければならない。例えば、米国特許第3,980,177号は、縫合糸をはさみで切断する必要性を回避するために、縫合の後、外科医又は医療関係者が縫合糸から装着済み外科用縫合針を取り外すことができるようにするための要件を開示する。‘177特許は、縫合糸のサイズに応じて、約3オンス~26オンスの直線引き抜き値を有する縫合針-縫合糸の組み合わせを開示する。しかしながら、‘177特許は、縫合針の引き抜き値、すなわち、縫合針を縫合糸から取り外すために必要な力を判定するために、装着済み外科用縫合針を試験するための手段を開示していない。
【0010】
縫合針及び縫合糸取り付け部を試験するための従来の方法は、縫合糸を最小限の力レベルまで手動で引っ張る工程を含む。これは、典型的には、スエージング操作後に同じ操作者によって行われる。縫合針-縫合糸の取り付け部を引張り試験するために、操作者は、縫合針及び縫合糸をスエージングステーションから別個の引張り試験具まで移動させる必要がある。この方法の最適ではない様々な側面が存在する。第1に、操作者は、縫合針-縫合糸アセンブリをスエージング装置から取り外し、それを引張り試験ステーションに装着する必要があり、これは時間を要する。第2に、縫合針-縫合糸アセンブリの更なる取り扱いは、縫合糸が損傷する機会を増加させる。第3に、縫合糸が過剰に長く引っ張られると、縫合針-縫合糸アセンブリの完全性が損なわれる可能性があり(すなわち、縫合糸が縫合針受容孔から抜け出し始める場合がある)、これは取り付けの強度を弱める結果をもたらし得る。
〔先行技術文献〕
〔特許文献〕
〔特許文献1〕米国特許第8214996号公報
〔特許文献2〕米国特許第3980177号公報
〔特許文献3〕特開平3-254741号公報
〔特許文献4〕欧州特許出願公開第0663187号明細書
〔特許文献5〕特開平8-66402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の進歩にもかかわらず、より効率的、効果的、かつ信頼性の高い方法で、装着済み外科用縫合針を作製及び試験する改善されたスエージングシステムが依然として必要とされている。加えて、繊細な外科的処置のための装着済み外科用縫合針を製造するために微細縫合針及び縫合糸を用いるための改善された手動スエージングシステムが依然として必要とされている。また、縫合針及び縫合糸取り付け部の一体性が、一貫した効率的な様式で最小の強度要件を満たす、装着済み外科用縫合針を製造するスエージングシステムに対する必要性も依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、組み合わせられた縫合針スエージング及び試験システムは、好ましくは、縫合針をスエージングすること(すなわち、縫合糸の端部に縫合針を取り付けること)と、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施して縫合針及び縫合糸取り付け部を評価することと、の両方に使用され得るダイを有するスエージングプレスを含む。
【0013】
一実施形態では、組み合わされた縫合針スエージング及び試験システムは、望ましくは、縫合針及び縫合糸取り付け部が、縫合針及び縫合糸取り付け部に検出されない損傷を引き起こす可能性のある、長期間にわたる激しい過剰応力を受けていない、又は高い力で保持されていないことを確実にするために、試験中にスエージングプレスの操作者に対する可視及び可聴の合図の両方を生成する制御システムを含む。
【0014】
一実施形態では、スエージングプレスは、好ましくは、スエージングプロセスに使用されるそれぞれの上部ダイ及び下部ダイを有する上部及び下部プレスを含む。一実施形態では、下部ダイは、好ましくは、下部プレス内で水平に配置され、スエージングの方向に対して直交する、下部プレス内に配設されたヒンジ機構を含む。ヒンジ機構は、好ましくは、下部ダイ上に固定された底部プレートを有し、底部プレートは続いてスエージングシステムのフレーム上に装着される。ヒンジ機構は、好ましくは、スエージング工具を受容するように設計及び構成された上部プレートを含む。底部プレート及び上部プレートは、好ましくは、一方の側面で、精密な接地棒で接続されてヒンジを形成し、底部プレートのもう一方の側面は、望ましくは、ロードセルを収容するように構成された凹部を含む。一実施形態では、スエージングイベント中、ヒンジ機構は底部プレートを定位置に保持するが、スエージングイベント後は、本明細書に記載されるように、縫合針及び縫合糸取り付け部に加えられる引張力を測定する役割を果たす。
【0015】
一実施形態では、ヒンジ機構の上部プレートに接続されるスエージング工具は、望ましくは、縫合糸の直径よりも大きいが縫合針の直径よりは小さい、追加の「試験」ノッチを有する。したがって、縫合針を縫合糸にスエージングした後、縫合糸及び取り付けられた縫合針は、スエージングノッチの位置から非常に小さな距離だけ(例えば1mm以下)離れるように移動されて、試験ノッチ内で入れ子状になってもよく、続いて縫合糸は、縫合針の近位端が比較的小さい幅の試験ノッチ内に捕捉されるまで引っ張られる。装置全体がヒンジを介して接続されているため、縫合糸が引っ張られると、ロードセルを通って並進されるヒンジ機構の上部プレートの重量が減少する。この減少する力(すなわち、ロードセルからの重量の除去)は、ロードセルから負荷信号を受信するマイクロプロセッサによって毎秒数千回の速度で監視される。
【0016】
一実施形態では、マイクロプロセッサの出力ピンは、スエージングの操作者によって使用されるステレオスコープを介して直接見ることができる赤-緑-青(RGB)発光ダイオードなどの発光素子に接続されているため、操作者が自身の頭部を移動させて手元の作業から目を逸らす必要性を防ぎ、操作者の疲労を最小化し、アウトプットを最適化する。一実施形態では、他のマイクロプロセッサの出力ピンがブザー又はチャイムに接続されて、操作者に可聴信号を提供してもよい。一実施形態では、操作者は、引張り試験中に視覚信号及び聴覚信号の両方を受信し、これは、操作者が、引張り試験の適切な所定の力及び期間が達成されることを確実にするのに役立つ。
【0017】
好ましい一実施形態では、7-0縫合糸を有する装着済み外科用縫合針の場合、マイクロプロセッサは、>95グラムに相当する力の低下がロードセルによって検出されると、望ましくは緑色光信号を操作者に送信する。95~115グラムの力が最小で0.2秒間維持される場合は、マイクロプロセッサは光を青色に変える信号を送信して、3回のビープ音がブザーによって提供される。続いて、操作者は、3回のビープ音が終わる(0.6秒で)前に縫合糸に加わる力を解放しなければならない。任意の時点での引張力が115グラムを超える場合、又は操作者が約0.6秒を超えて縫合糸を連続的に引っ張る場合、RGB LEDは赤色になり、連続的な不快な可聴信号がブザーから生成され、操作者がいま試験したサンプルを破棄するように操作者に知らせる。
【0018】
一実施形態では、本明細書に開示されるスエージングシステムは、人間の能力を高速プロセッサの能力と融合して、引張り試験の制御、効率性、及び信頼性を大幅に向上させる。
【0019】
一実施形態では、縫合糸に縫合針を取り付けるためのシステムは、好ましくは、上部スエージングダイと、フレームと、フレームに枢動可能に装着されたアームであって、近位端及び遠位端を有する、アームと、アームの上に装着された底部スエージングダイと、フレームに移動可能に装着され、底部スエージングダイと位置合わせされた上部スエージングダイと、フレームに装着され、アームの遠位端と接触するロードセルと、を備える。
【0020】
一実施形態では、縫合針に取り付けられた縫合糸をスエージングして引張り試験する方法は、望ましくは、上述のシステムを使用して縫合針を縫合糸にスエージングすることと、装着済み外科用縫合針を試験ノッチ内に位置決めすることと、縫合糸を引っ張ることと、縫合糸を引っ張ることによる力変化を感知することと、を含む。
【0021】
一実施形態では、下部スエージングダイは、好ましくは、縫合糸の直径よりも大きいが、スエージングされる縫合針の直径よりも小さい開口部を有する試験ノッチを含む。
【0022】
一実施形態では、縫合針はスエージング後に下部ダイ内に残り、縫合糸はスエージングダイまで垂直に引っ張られる。
【0023】
一実施形態では、ロードセルはマイクロプロセッサと通信する。
【0024】
一実施形態では、アームはロードセル上に載置される。一実施形態では、ロードセルがアーム上に載置される。
【0025】
一実施形態では、スエージングプレスは、ペダルが押圧されるとロードセルへの電力を遮断し、スエージング後の所定の期間(例えば、500ms)後に電力を回復するためのフットペダルを有してもよい。
【0026】
一実施形態では、スエージングシステムは、可聴及び/又は視覚的インジケータを含んでもよい。一実施形態では、力の変化(ロードセルによって測定される)が1つ以上の所定の力レベル及び/又は期間に達すると、インジケータ(複数可)が起動される。
【0027】
一実施形態では、視覚的及び可聴インジケータ(複数可)は、所定の力レベル及び/又は期間に基づいて、異なる表示(例えば、色、音、振動など)を示す。
【0028】
一実施形態では、システムは、試験中に縫合針-縫合糸取り付け部が損なわれた場合は、次のスエージングイベント中にスエージングの力又は変位量を増加させるように設計されたフィードバック機構を含んでもよい。
【0029】
一実施形態では、スエージングシステムは、完全に又は部分的に自動化されてもよい。
【0030】
一実施形態では、外科用縫合針を縫合糸に取り付けて、取り付け部強度を試験するためのスエージングシステムは、望ましくは、フレームと、フレーム上に装着された底部スエージングダイと、フレーム上に装着された上部スエージングダイと、を備える。一実施形態では、上部スエージングダイは、底部スエージングダイと位置合わせしているスエージング軸に沿って上下に移動可能である。一実施形態では、底部スエージングダイは、フレームに装着された底部プレートと、底部プレートの上に重なる上部プレートと、を有するヒンジ機構を含む。一実施形態では、上部及び底部プレートは、上部プレートが底部プレートに対して枢動することを可能にするために互いに枢動可能に接続されている。底部スエージングダイは、好ましくはスエージング軸に沿って上部スエージングダイに向かって延在する、上部プレート上に装着されたスエージング工具を含む。一実施形態では、システムは、上部プレート上の負荷を監視するために上部プレートと底部プレートとの間に配設されたロードセルを備える。
【0031】
一実施形態では、スエージング工具は、望ましくは、縫合針を縫合糸にスエージングして装着済み外科用縫合針を形成するためのスエージングノッチと、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、スエージングノッチと隣接する試験ノッチと、を備える上面を有する上端部を含む。一実施形態では、スエージング及び試験ノッチは、スエージング軸に直交する対応する長手方向軸に沿って延在し得る。一実施形態では、スエージング及び試験ノッチは、好ましくは、上部プレートの上面に対して平行であり、かつスエージング軸に対して垂直である、対応する長手方向軸に沿って延在する。
【0032】
一実施形態では、スエージングノッチは、望ましくは第1の幅を有し、試験ノッチは第1の幅よりも小さい第2の幅を有する。一実施形態では、装着済み外科用縫合針の縫合針構成要素は、スエージングノッチの第1の幅以下であり、かつ試験ノッチの第2の幅よりも大きい直径を有し、装着済み外科用縫合針の縫合糸構成要素は、スエージングノッチの第1の幅及び試験ノッチの第2の幅よりも小さい直径を有する。一実施形態では、スエージングノッチの第1の幅は約8ミルであり、試験ノッチの第2の幅は約4ミルであり、縫合針の直径は約7.5~7.8ミルであり、縫合糸の直径は約3.5ミルである。
【0033】
一実施形態では、スエージングシステムは、好ましくは、ロードセルによって測定された負荷信号を受信するためにロードセルと通信する少なくとも1つのマイクロプロセッサを有する制御システムを含む。マイクロプロセッサは、好ましくは、ロードセルによって測定された負荷信号の変化を検出するように適合されている。
【0034】
一実施形態では、制御システムは、望ましくは、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、その内部に格納された1つ以上の引張り試験プログラムを備える。各引張り試験プログラムは、望ましくは、所定の負荷下限と負荷上限とを有する許容可能な負荷範囲と、負荷試験の長さに対して所定の時間下限と時間上限とを有する許容可能な時間範囲と、を有する。
【0035】
一実施形態では、引張り試験プログラムは、マイクロプロセッサによって負荷変化が検出されたときに、人間が引張り試験検査を開始することを可能にする。一実施形態では、検出された負荷変化が所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ検出された時間が所定の時間下限と時間上限との間である場合は、引張り試験プログラムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であることを示す。一実施形態では、検出された負荷変化が所定の負荷上限を超える場合は、引張り試験プログラムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示す。一実施形態では、検出された負荷変化が所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ検出された時間が所定の時間上限を超える場合は、引張り試験プログラムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示す。
【0036】
一実施形態では、装着済み外科用縫合針の引張り試験検査中に、制御システムは、好ましくは、試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であるか又は許容不可能であるかを示す可視信号又は可聴信号を生成する。一実施形態では、制御システムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容可能である場合は可視の緑色光及び可聴のビープ音を生成し、試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能である場合は可視の赤色光及び可聴のブザーを生成する。
【0037】
一実施形態では、外科用縫合針を縫合糸に取り付け、装着済み外科用縫合針の取り付け部強度を試験するためのスエージングシステムは、好ましくは、フレームと、フレーム上に装着された底部スエージングダイと、フレーム上に装着され、底部スエージングダイと位置合わせしているスエージング軸に沿って上下に移動可能な上部スエージングダイと、を備える。
【0038】
一実施形態では、底部スエージングダイは、望ましくは、フレームに装着された底部プレートを含むヒンジ機構と、底部プレートの上に重なる上部プレートであって、上部及び底部プレートは、上部プレートが底部プレートに対して枢動することを可能にするために互いに枢動可能に接続されている、底部プレートと、スエージング軸に沿って上部スエージングダイに向かって延在する上部プレート上に装着されたスエージング工具であって、スエージング工具は、縫合針を縫合糸にスエージングして装着済み外科用縫合針を形成するためのスエージングノッチと、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、スエージングノッチと隣接する試験ノッチと、を備える上面を有する上端部を含む、スエージング工具と、を有する。一実施形態では、ヒンジ機構は、好ましくは、上部プレート上の負荷を監視するために上部プレートと底部プレートとの間に配設されたロードセルを備える。
【0039】
一実施形態では、スエージングシステムは、望ましくは、ロードセルによって生成された負荷信号を受信し、負荷信号の変化を検出するためにロードセルと通信する少なくとも1つのマイクロプロセッサを備える制御システムを有する。一実施形態では、制御システムは、望ましくは、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、その内部に格納された1つ以上の引張り試験プログラムを有する。一実施形態では、各引張り試験プログラムは、好ましくは、所定の負荷下限と負荷上限とを有する許容可能な負荷範囲と、所定の時間下限と時間上限とを有する許容可能な時間範囲と、を含む。
【0040】
一実施形態では、引張り試験プログラムは、少なくとも1つのマイクロプロセッサによって負荷変化が検出されたときに引張り試験検査の開始を可能にする。一実施形態では、検出された負荷変化が所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ検出された時間が所定の時間下限と時間上限との間である場合は、引張り試験プログラムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であることを示す。一実施形態では、検出された負荷変化が所定の負荷上限を超える場合は、引張り試験プログラムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示す。一実施形態では、検出された負荷変化が所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ検出された時間が所定の時間上限を超える場合は、引張り試験プログラムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示す。
【0041】
一実施形態では、装着済み外科用縫合針の引張り試験検査中に、制御システムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であるか又は許容不可能であるかを示す可視信号又は可聴信号を生成するように構成されている。一実施形態では、制御システムは、試験された装着済み外科用縫合針が許容可能である場合は可視の緑色光及び第1の可聴音を生成し、試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能である場合は可視の赤色光及び第1の可聴音とは異なる第2の可聴音を生成する。
【0042】
一実施形態では、スエージング工具の上面におけるスエージング及び検査ノッチを見るために、ステレオスコープがフレーム上に装着される。一実施形態では、ステレオスコープは、望ましくは、取り付け部試験の状態を示すための緑色可視光及び赤色可視光などの可視光を生成するために、少なくとも1つの発光ダイオードを有する。
【0043】
一実施形態では、ヒンジ機構は、好ましくは、上部プレートと底部プレートとを枢動可能に接続するために、上部プレート及び底部プレートの隣接する側面を相互接続するピンを含む。一実施形態では、底部プレートは、好ましくは、ピンと反対側の底部プレートの側面に位置するガードを有する。一実施形態では、ガードは、操作者が上部プレートの上面に不注意に接触することを防ぐために、上部プレートの上面の上方に延在する上端部を有する。
【0044】
一実施形態では、ヒンジ機構の底部プレートは凹部を有し、ロードセルは凹部内に配設されている。一実施形態では、ロードセルは、ロードセルの上端部から突出する調節可能な止めねじを有し、上部プレートは、ロードセルの止めねじにアクセスするために、上部プレートの上面でアクセス可能な止めねじ開口部を有する。
【0045】
一実施形態では、外科用縫合針を縫合糸に取り付け、取り付け部強度を試験するためのスエージングシステムは、望ましくは、フレームと、フレーム上に装着された底部スエージングダイと、フレーム上に装着され、底部スエージングダイと位置合わせしているスエージング軸に沿って上下に移動可能な上部スエージングダイと、を備える。
【0046】
一実施形態では、底部スエージングダイは、好ましくは、フレームに装着された底部プレートを含むヒンジ機構と、底部プレートの上に重なる上部プレートであって、上部及び底部プレートは、上部プレートが底部プレートに対して枢動することを可能にするために互いに枢動可能に接続されている、上部プレートと、スエージング軸に沿って上部スエージングダイに向かって延在する上部プレート上に装着されたスエージング工具と、を備える。一実施形態では、スエージング工具は、望ましくは、縫合針を縫合糸にスエージングして装着済み外科用縫合針を形成するための、上面でアクセス可能なスエージングノッチと、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、スエージングノッチと隣接する、上面でアクセス可能な試験ノッチと、を備える上面を有する上端部を有する。一実施形態では、スエージング及び試験ノッチは、好ましくは、スエージング軸に直交する対応する長手方向軸に沿って延在する。一実施形態では、ロードセルは、好ましくは、上部プレート上の負荷を監視するために上部プレートと底部プレートとの間に配設されている。
【0047】
本発明のこれら及びその他の好ましい実施形態は、下記でより詳しく記述される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】縫合針を縫合糸にスエージングする従来の方法を示す。
図2】縫合糸を縫合針にスエージングする第2の従来の方法を示す。
図3】縫合針を縫合糸に取り付けるために収束する第1及び第2のスエージングダイを有する、先行技術の縫合針スエージングアセンブリを示す。
図4】本特許出願の一実施形態による、縫合針及び縫合糸を含む、装着済み外科用縫合針を示す。
図5A】本特許出願の一実施形態による、外科用縫合針を縫合糸に取り付けるためのスエージングシステムを示す。
図5B】本特許出願の一実施形態による、外科用縫合針を縫合糸に取り付けるためのスエージングシステムを示す。
図5C】本特許出願の一実施形態による、外科用縫合針を縫合糸に取り付けるためのスエージングシステムを示す。
図6A】本特許出願の一実施形態による、より低いスエージングダイのヒンジアセンブリの斜視図である。
図6B図6Aに示したヒンジアセンブリの側面図である。
図7】スエージング工具、及びヒンジアセンブリの上部プレートと底部プレートとの間に配置されたロードセルを含む、図6Bに示すヒンジアセンブリの部分断面図である。
図8A】本特許出願の一実施形態による、スエージングノッチ及び試験ノッチを含む、図7に示されるスエージング工具の上端部を示す。
図8B】本特許出願の一実施形態による、スエージングノッチ及び試験ノッチを含む、図7に示されるスエージング工具の上端部を示す。
図9A】本特許出願の一実施形態による、図7図8A、及び図8Bに示すスエージング工具を使用して装着済み外科用縫合針を試験する方法を示す。
図9B】本特許出願の一実施形態による、図7図8A、及び図8Bに示すスエージング工具を使用して装着済み外科用縫合針を試験する方法を示す。
図9C】本特許出願の一実施形態による、図7図8A、及び図8Bに示すスエージング工具を使用して装着済み外科用縫合針を試験する方法を示す。
図9D】本特許出願の一実施形態による、図7図8A、及び図8Bに示すスエージング工具を使用して装着済み外科用縫合針を試験する方法を示す。
図9E】本特許出願の一実施形態による、図7図8A、及び図8Bに示すスエージング工具を使用して装着済み外科用縫合針を試験する方法を示す。
図10】本特許出願の一実施形態による、スエージングシステムの下部ダイのヒンジアセンブリを示す。
図11】本特許出願の一実施形態による、装着済み外科用縫合針をスエージングして検査するためコンピュータ操作プログラムが基準とするフローチャートである。
図12A】本特許出願の一実施形態による、取り付け力母集団の下端が排除されたことを示すデータをプロットするグラフである。
図12B】本特許出願の一実施形態による、取り付け力母集団の下端が排除されたことを示すデータをプロットするグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図4を参照すると、一実施形態では、装着済み外科用縫合針100は、好ましくは、縫合糸104の端部に固定された外科用縫合針102を含む。一実施形態では、縫合針102は、ステンレス鋼、4310SS、ニッケル-チタン(NiTi)SS及び420SS等の金属合金、又はタングステン-レニウム(W-Re)合金若しくは同様の耐火合金などの高性能合金を含む、多種多様な頑丈な材料から作製されてもよい。一実施形態では、縫合針102は、Ethicon,Inc.(Somerville,New Jersey)から商標名EVERPOINT(登録商標)で販売されているタングステン-レニウム合金で作製される。
【0050】
一実施形態において、縫合糸材料は、従来の、生体適合性の吸収性材料、非吸収性材料、及び吸収性材料と非吸収性材料の組み合わせで作製することができる。好ましい非吸収性材料としては、ポリプロピレン、フッ化ポリビニリデンとフッ化ポリビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマーのポリマーブレンド、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、グリコール修飾ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロポリマー、ナイロン等、及び同種類のもの、若しくはこれらの組み合わせのコポリマー等が挙げられる。好ましい吸収性ポリマー材料は、ポリジオキサノン、ポリグラクチン、ポリグリコール酸、グリコリドとラクチドとのコポリマー、ポリオキサエステル、及びポリグレカプロンが挙げられる。特定の好ましい実施形態において、縫合糸材料は、吸収性材料と非吸収性材料両方の組み合わせを含み得る。加えて、特定の強度、導電性、又は耐食性が必要な場合などの特定の用途では、金属が好適な場合がある。好ましい一実施形態において、縫合糸材料は、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重材料のポリマーブレンドを好ましくは含む。更に、これらの材料のいずれも、コーティング、プラズマ処理、治療剤、及びその他同種のものを含む従来の表面修飾を有してもよい。一実施形態では、縫合針102はシリコンコーティングでコーティングされる。一実施形態では、縫合糸104は、Ethicon,Inc.(Somerville,New Jersey)からPROLENE(登録商標)の商標で販売されているポリプロピレン縫合糸である。
【0051】
図5A図5Cを参照すると、一実施形態では、装着済み外科用縫合針を作製するためのスエージングプレス120は、好ましくは、その上に底部スエージングダイ125が装着された底部ダイホルダブロック124と、底部スエージングダイ125と位置合わせされたスエージング軸Aに沿って上下に移動するように適合された上部スエージングダイ129を有する上部ダイブロックホルダ128と、を有するフレーム122を含む。一実施形態では、上部スエージングダイ129は、フレーム122上で上下に摺動するように構成された精密スライド135上に装着される。スエージングプレス120は、望ましくは、精密スライド135、上部ダイブロックホルダ128、及び上部スエージングダイ129を、底部スエージングダイ125に対して、スエージング軸Aに沿って上下に移動させるために作動されるサーボモータ130を含む。スエージングプレスシステム120は、好ましくは、サーボモータ130用の電源接続部132を含む。電源接続部132は、上部スエージングダイ129の位置フィードバック情報を提供するエンコーダを収容してもよい。
【0052】
一実施形態では、スエージングシステム120は、好ましくは、フレーム122に接続され、かつ/又はフレーム122に隣接して位置決めされる、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)134を含む。一実施形態では、HMI134は、望ましくは、操作者が、特定のスエージングプログラムを選択するため、並びに/又はスエージング及び試験操作を監視するためにHMI134とインタフェースすることを可能にするLCDディスプレイ136を有する。一実施形態では、HMI134は、好ましくは、スエージングシステム120を操作するための1つ以上のマイクロプロセッサ、メモリデバイス、及びプログラムを有する制御システムを含む。一実施形態では、HMI134に収容されるマイクロプロセッサは、望ましくは、スエージングシステム120が、様々な異なるサイズを備える縫合針及び様々な異なるサイズを有する縫合糸材料を有する多種多様な装着済み外科用縫合針を製造するために使用され得るように操作者によって選択され得る多数のプログラム及び/又はサブルーチンがその内部に搭載されている。
【0053】
一実施形態では、スエージングシステム120は、フレーム122に装着されたステレオスコープ138を含むことが望ましい。ステレオスコープ138は、好ましくは、本明細書でより詳細に記載するように、スエージング及び試験操作中に使用するために下部ダイ125に向けられる。ステレオスコープ138は、望ましくは、スエージング及び試験操作中に縫合針、縫合糸材料、及び対向するダイの拡大図を提供する光学素子を含む。一実施形態では、ステレオスコープ138は、対向するダイ、並びにダイ上のスエージング位置及び試験位置に対するステレオスコープの光学素子の位置を調節及びロックする締付ノブ140と、倍率レベルを調節するための倍率調整ノブと、を含み得る。
【0054】
一実施形態では、ステレオスコープ138は、スエージングの操作者によって使用されるステレオスコープを介して直接見ることができる赤-緑-青(RGB)発光ダイオードなどの1つ以上の光生成要素を含んでいるため、操作者が自身の頭部を移動させて手元の作業から目を逸らす必要性を排除することができる。一実施形態では、RGBダイオードは、ステレオスコープの視野内の上部又は底部ダイホルダブロックのいずれかの上に装着されることが望ましい。この利益は、操作者の疲労を最小化し、出力を最適化することに関連する。一実施形態では、マイクロプロセッサ出力ピンは、ビーパー又はブザーなどの可聴信号発生器に接続されて、スエージングシステムの操作者に可聴信号又は音を提供する。したがって、操作者は、操作者が引張り試験の適切な所定の力及び期間が達成されたことを保証するのを助ける視覚信号及び聴覚信号の両方を試験中に受信することができる。
【0055】
一実施形態では、ステレオスコープ138内の赤-緑-青色発光ダイオードは、HMI134(図5C)内の制御システムと通信する。
【0056】
図6A及び図6Bを参照すると、一実施形態では、スエージングシステムは、好ましくは、下部ダイ125(図5A図5C)と連結されたヒンジ機構150を含む。一実施形態では、ヒンジ機構150は、望ましくは、下部ダイ内で水平に、かつスエージング軸A図5B図5C、及び図6B)の方向に直交して配置される。一実施形態では、ヒンジ機構150は、底部プレート152と、下部スエージングダイのための装着プラットフォームとして機能し、かつ底部プレート152を覆う上部プレート154と、を含むことが望ましい。ヒンジ機構150は、好ましくは上部プレート154が底部プレート152に対してヒンジ156を中心に枢動することを可能にするヒンジ156を含む。一実施形態では、ヒンジ機構150は、上部プレート154が底部プレート152に対して枢動及び移動する際の摩擦を最小限にするために、ヒンジ156と接触するベアリング又はブッシングを含み得る。
【0057】
一実施形態では、ヒンジ機構150は、好ましくは、底部プレート152の端部に固定されるか、又はヒンジ156に対向する底部プレートの一側面上で底部プレート152の端部と一体的に製造される、ガード158を含む。一実施形態では、ガード158は、上部プレート154の上面162の上方に突出する上端部160を有して、操作者が誤って上半分154とぶつかり、かつ/又は接触して、それによって、ロードセルを介してマイクロプロセッサに誤った信号を送ることを防止する。
【0058】
図6Bを参照すると、一実施形態では、ヒンジ機構150は、好ましくは、上部プレート154の上面162から上方に突出するスエージング工具125又は底部スエージングダイを含む。一実施形態では、スエージング工具125は、望ましくは、縫合針を縫合糸に取り付けるために縫合針102と縫合糸104とを受容するように適合された上端部166を有する。一実施形態では、スエージング工具125の上端部166は、縫合糸104に縫合針102をスエージングするための第1のノッチ(すなわち、スエージングノッチ)と、縫合糸104への縫合針102の取り付けを検査するための第2のノッチ(すなわち、検査ノッチ)とを有する。
【0059】
図6Aを参照すると、一実施形態では、ヒンジ機構124の上部プレート154は、望ましくは、上部プレートの上面から突出するスエージング工具125の基部に対する支持を提供するために、上部プレート154の上面162上にダイ支持プレートを固定するために利用される開口部168A~168Cを含む。一実施形態では、上部プレート154はまた、好ましくは、本明細書でより詳細に説明するように、底部プレート152内に配設されたロードセル上の止めねじへのアクセスを提供する、上部プレートの上面162内に形成された止めねじ開口部170を含む。
【0060】
一実施形態では、ガード158は、望ましくは、その内部に形成された開口部172を有し、開口部172は、ヒンジ機構のロードセルをマイクロプロセッサ及び/又はシステムコントローラと相互接続するために、導電性要素、導電導管、及び/又は導電性リードが開口部172を通過することを可能にする。
【0061】
図7を参照すると、一実施形態では、ヒンジ機構150は、好ましくは、ヒンジ機構の底部プレート152内に配設されたロードセル174を含み、ロードセル174は、続いて、下部ダイホルダブロック124に、又は直接プレス機のフレーム122(図5C)に装着される。ロードセル174は、好ましくは、ガード158の開口部172(図6A)を通過する導電性リード176と連結される。導電性リード線176は、望ましくは、ロードセル174と通信するためにマイクロプロセッサ及び/又はシステムコントローラと相互接続される。一実施形態では、ロードセル174は、好ましくは、上部プレート154の上面162でアクセス可能な止めねじ開口部170(図6A)と位置合わせされた調節可能な止めねじ178を有する。
【0062】
一実施形態では、ロードセル174は、測定される力に正比例する大きさの電気信号を生成するために使用されるトランスデューサである。ロードセルは、圧電セル、ひずみゲージロードセル、及び/又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0063】
スエージングプロセスの間、ヒンジ機構150は、スエージング工具125を定位置に保持するが、スエージング直後に、ヒンジ機構は、装着済み外科用縫合針に加えられる引張力を測定するように構成される。一実施形態では、スエージングノッチに加えて、スエージング工具125の上端部166はまた、縫合糸104の直径よりも大きいが縫合針102の直径よりも小さい、スエージングノッチに隣接する試験ノッチを有する。このようにして、スエージング後に、縫合糸104は、スエージングノッチ位置から離れて試験ノッチ位置に至るまでの非常に小さい距離(例えば、1ミリメートル以下)を移動させられ得る。
【0064】
装着済み外科用縫合針を試験するために、縫合糸104は、縫合針102の近位端が試験ノッチを捕捉するまで、図7でAと指定された方向に引っ張られる。軸Aは、スエージングの運動方向及び重力の方向を示す。軸Aは、縫合糸(縫合針102に取り付けられた)が試験ノッチ内に位置決めされ、縫合針102の近位端が比較的小さい直径の試験ノッチの端部と係合した時に縫合糸104が引っ張られる方向を示す。上部プレート154は、ヒンジ156を介してヒンジ機構150に接続されるので、縫合糸104がAと指定される方向に引っ張られると、ロードセル174を介して並進させられた上部プレート154の重量は減少する。この減少負荷(すなわち、ロードセル174からの重量の除去)は、ロードセルから信号を受信する制御システム内のマイクロプロセッサを介して、毎秒数千回の速度で監視される。
【0065】
図8A及び図8Bを参照すると、一実施形態では、スエージング工具125は、好ましくは、ヒンジ機構150(図7)の上部プレート154の上面162と概ね平行な上面180を有する上端部166を有する。一実施形態では、スエージング工具は、好ましくは、スエージング操作中に縫合針及び縫合糸を受容するように適合されたスエージングノッチ182と、縫合針が縫合糸の端部に取り付けられた後で装着済み外科用縫合針を検査するために利用される、隣接する検査ノッチ184と、を含む。スエージングノッチ182及び検査ノッチ184は、望ましくは、上面180の厚さTにわたって延在する。一実施形態では、スエージングノッチ182は、スエージング工具の厚さにわたって延在して約8ミルの幅Wを有し、検査ノッチ184もまたスエージング工具の厚さにわたって延在して約4ミルの幅Wを有する。一実施形態では、Dと指定される、スエージングノッチ182と試験ノッチ184との間の距離は、好ましくは約1ミリメートル以下である。
【0066】
一実施形態では、外科用縫合針102は約7.8ミルの外径を有し、これにより、縫合針が、スエージングノッチ182内に位置決めされるが、隣接する試験ノッチ184に嵌合しないことが可能となる。縫合糸は、好ましくは、スエージングノッチ182及び試験ノッチ184の両方の内部に配置され得るように、3.5ミルの直径を有する。試験ノッチ184に対する縫合針の相対的な直径がより大きいため、縫合糸は試験ノッチ184を通過できるが、より大きい直径の縫合針は試験ノッチ184を通過できず、これによりヒンジ機構150(図7)を使用して引張り試験を実施することが可能となる。
【0067】
図9A図9Eは、スエージング工具125の上端部166の上面180内に形成された試験ノッチ184内に配置された縫合針102及び縫合糸104を含む、装着済み外科用縫合針を示す。外科用縫合針102は、試験ノッチ184の幅よりも大きな直径を有するため、比較的小さい直径の縫合糸104のみが試験ノッチ184を通過でき、一方で、より大きい直径の縫合針102は、試験ノッチの端部で捕捉される。スエージングノッチ182は、試験ノッチに隣接して配設される。縫合針102の近位端105は、試験ノッチ184の幅よりも大きい直径を有し、そのため、縫合糸104のみが試験ノッチ184を通過でき、一方で、より大きい直径の縫合針102は、試験ノッチ184の端部で捕捉される。
【0068】
図10を参照すると、一実施形態において、ヒンジ機構150は、望ましくは、上部プレート154の上面162の上に位置決めされたスエージング工具支持プレート186を含む。一実施形態では、スエージング工具支持プレートは、スエージング工具支持プレート開口部168A~168C(図6A)に挿入される突起部を含んでもよい。一実施形態では、スエージング工具支持プレート186は、スエージング工具125が内部を通過することを可能にする開口部188を含み、スエージング工具125の上端部166は、スエージング及び試験操作のためにアクセス可能となるように、スエージング工具支持プレート186の上方に突出する。スエージング工具支持プレート186は、好ましくは、スエージング及び試験操作中のスエージング工具125の一体性を支持してこれを維持する。
【0069】
図5C及び図11を参照すると、一実施形態では、マイクロプロセッサは、好ましくは、その内部に記憶された1つ以上のスエージングプログラム及び試験プログラムを収容する。一実施形態では、スエージングシステムは、様々な寸法、サイズ、特性、及び/又は構成を有する縫合針及び縫合糸をスエージング及び試験するために利用されてもよい。一実施形態では、操作者は、好ましくは、利用する特定のプログラムを選択するために、HMIのLCDタッチスクリーンと対話する。利用されるプログラムは、装着済み外科用縫合針を形成するために使用される縫合針及び縫合糸のサイズに応じて変化してもよい。操作プログラムは、好ましくは、1つ以上のマイクロプロセッサ及び/又はメモリデバイスに記憶される。一実施形態では、操作者は、データを入力するか、又はコントローラ及びアクチュエータを操作することによって、引張り試験の負荷及び時間パラメータを修正することができる。
【0070】
複数の異なるスエージング及び引張り試験プログラムを、スエージングシステムにロードすることができる。操作者は、好ましくは、スエージングシステムを操作するための1つのスエージング及び引張り試験プログラムを選択する。図11を参照すると、一実施形態では、引張り試験プログラムは、望ましくは、その間に操作者が、負荷下限及び負荷上限と、引張り試験を実施するための最小時間及び引張り試験を実施するための最大時間を有する時間制限と、を有する目標検査負荷範囲を指定又は選択する、第1の段階200を含む。一実施形態では、目標検査負荷範囲は、約95~105グラムであってもよい。一実施形態では、引張り試験を実施するための最小時間は約0.1秒であってもよく、引張り試験を実施するための最大時間は約0.5秒であってもよい。より好ましい実施形態では、最小時間及び最大時間の範囲は0.2秒~0.5秒である。一実施形態では、試験の目標検査負荷並びに最小時間及び最大時間のパラメータを確立することが重要であり得る。縫合針の縫合糸への取り付けを試験する際に、縫合糸に過大な負荷が加えられると、取り付けは弱化又は損なわれ得る。同様に、最大時間制限よりも長い間、縫合糸に負荷が加えられる場合、縫合糸は、その縫合針への取り付けから抜け出し始める場合がある。したがって、一実施形態では、アーム外科用縫合針(arm surgical needle)に加えられる負荷の量及び縫合糸が外科用縫合針に取り付けられた後に引っ張られる時間の両方の試験範囲を確立することが重要であり得る。
【0071】
202と指定される次の段階では、操作者は、上部及び下部ダイを閉鎖し、縫合針を縫合糸にスエージングするために、フットペダルを押し下げてよい。一実施形態では、段階202の間、縫合針及び縫合糸は、スエージング工具125のスエージングノッチ182(図9A図9E)内に位置決めされる。縫合糸に縫合針をスエージングするために上部及び下部ダイが閉じられた後、上部ダイ及び下部ダイは開放しており、そのため、装着済み外科用縫合針は、スエージングノッチから試験ノッチ184に移動され得る(図9D)。
【0072】
図11を参照すると、一実施形態では、204と指定されるプログラムの段階において、縫合糸の端部に固定された縫合針を含む装着済み外科用縫合針は、スエージングノッチ182から検査ノッチ184に移動される(図9D)。次いで、縫合糸104を図7でAと指定された方向に引っ張ることにより、引張り試験を開始することができる。縫合糸104が図7の左側に引っ張られると、ヒンジ機構150の上部プレート154は底部プレート152から遠ざかるように移動され、その結果、上部プレートによってロードセル174に加えられる負荷の量が低減される。206と指定されるプログラムの段階では、ロードセルの読み取り値がマイクロプロセッサに送信される。一実施形態では、10ミリ秒毎に別の負荷読み取り値が取られて、マイクロプロセッサに送信される。したがって、一実施形態では、単一の引張り試験を行うための最小時間に達するために、少なくとも20個のロードセル読み取り値がロードセルからマイクロプロセッサに送信される。負荷信号を得るために0.5秒の最大時間が使用される場合、少なくとも50個のロードセル読み取り値がマイクロプロセッサに送信される。マイクロプロセッサは、好ましくは、負荷が変化したか否か、どれだけの負荷が変化したか、測定された負荷の変化が、所定の負荷限界を超えたか否か、及び引張試験の期間を判定するために、負荷信号データを分析する。
【0073】
図11に開示されるフローチャートは、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための様々な方法及びプロトコルを開示する。#1と指定される第1のシナリオでは、引張り試験が開始される。208と指定されるプログラムの段階では、負荷の変化は検出されないため、制御システムは、引張り試験はまだ開始されていないと判定する。制御システムは、負荷の変化を検出するまで10ミリ秒毎に負荷の読み取りを実施し続け、負荷の変化が検出されると、制御システムは引張り試験が開始したと判定し、制御システムは引張り試験を継続する。
【0074】
段階212で#2と指定されるシナリオでは、マイクロプロセッサは、負荷変化が目標検査負荷範囲の上限よりも大きいという読み取り値をロードセルから受信する。一実施形態では、システムコントローラは、測定された負荷が105.1グラム以上である場合、負荷変化が超過したと判定する。負荷が超過した場合、段階214でマイクロプロセッサは信号を送信して、装着済み外科用縫合針に欠陥があり廃棄されるべきであることを示す、ステレオスコープ内の赤色光、及び可聴のブザー音を生成する。拒絶信号が送信された後の段階216では、制御システムはゼロカウントに戻る。
【0075】
#3と指定されるシナリオは、操作プロトコルを示し、ここで、装着済み外科用縫合針は、引張り試験を実施するための目標検査負荷範囲内、及び最小/最大時間範囲内に維持される。218と指定されるプログラムの段階では、負荷変化は、95~15グラムの範囲内であると判定される。段階220で、負荷変化が許容可能な範囲内であるとマイクロプロセッサが判定した場合、マイクロプロセッサは、ステレオスコープ内又はステレオスコープの視野内で緑色光を生成し、試験の長さを計算し始める。マイクロプロセッサは、好ましくは、10ミリ秒毎にロードセル読み取り値を得るように適合される。
【0076】
段階210では、試験を実施するための最小時間に到達していない場合、システムは、引張り試験を実施するための最小時間に達するまで、負荷読み取り値を収集し続ける。一実施形態では、引張り試験は、少なくとも0.1秒間、より好ましくは約0.2秒間実施されなければならず、引張り試験の期間は0.5秒を超えるべきではない。
【0077】
段階222では、マイクロプロセッサは、試験を実施するための最小時間に達したか否かを分析する。達していない場合、マイクロプロセッサは、0.2秒の最小時間に達するまでロードセルの読み取り値を収集し続ける。
【0078】
段階224では、目標負荷が少なくとも最小期間にわたって許容可能な範囲内に維持されている場合、マイクロプロセッサは、ステレオスコープ内で緑色光を点滅させ、3回の可聴ビープ音を生成し、これは十分な引張り試験が達成されたことを示す。装着済み外科用縫合針製品は、操作者が縫合糸を解放して、0.5秒を超えて縫合糸を引っ張り続けない限り、許容可能となる。
【0079】
段階226では、マイクロプロセッサは、負荷試験がどのくらい長く実施されたかを評価する。一実施形態では、0.5秒の時間制限は、引張り試験を実施するための最大時間である。一旦0.5秒の時間制限に達したら、マイクロプロセッサは、段階228でロードセルから別の信号を取得する。このとき、操作者が縫合糸にかかる張力を解放し、ヒンジ上部の全重量にロードセルを押し下げさせた結果として負荷の増加が検出された場合、検査は完了し、装着済み外科用縫合針製品は許容可能であると見なされる(段階230)。段階232で、負荷変化が依然として検出される場合、操作者は、所定の最大時間制限を超えて縫合糸を引く。その結果、マイクロプロセッサは、段階234で、引張り試験の長さが最大許容時間制限を超えており、製品が廃棄されるべきであることを示すために、赤色光及び可聴の拒絶ブザー音を生成する。
【0080】
図12A及び図12Bは、縫合針のプルオフ(Pull-Off)(NPO)データをプロットしたグラフであり、これは、本明細書に開示されるスエージングシステム、装置、及び方法を利用することによって取り付け力母集団の下限が除去されることを示す。
【0081】
上記の説明は本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の他の及び更なる実施形態を本発明の基本的な範囲から逸脱することなく行うことが可能であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。例えば、本発明では、本明細書で説明するか又は本明細書に参照により組み込まれる実施形態のいずれかに示す特徴のいずれかを、本明細書で説明するか又は本明細書に参照により組み込まれるがやはり本発明の範囲内に含まれる他の実施形態のいずれかに示す特徴のいずれかと組み合わせてもよいことが意図されている。
【0082】
〔実施の態様〕
(1) 外科用縫合針を縫合糸に取り付け、取り付け部強度を試験するためのスエージングシステムであって、
フレームと、
前記フレーム上に装着された底部スエージングダイと、
前記フレーム上に装着され、前記底部スエージングダイと位置合わせされたスエージング軸に沿って上下に移動可能な上部スエージングダイと、を備え、
前記底部スエージングダイは、前記フレームに装着された底部プレート、及び前記底部プレートの上に重なる上部プレートであって、前記上部及び底部プレートは、前記上部プレートが前記底部プレートに対して枢動することを可能にするために互いに枢動可能に接続され、前記底部スエージングダイは、前記スエージング軸に沿って前記上部スエージングダイに向かって延在する前記上部プレート上に装着されたスエージング工具を含む、底部プレート及び上部プレートと、前記上部プレート上の負荷を監視するために前記上部プレートと前記底部プレートとの間に配設されたロードセルと、を含むヒンジ機構を備える、スエージングシステム。
(2) 前記スエージング工具は、縫合針を縫合糸にスエージングして装着済み外科用縫合針を形成するためのスエージングノッチと、前記装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、前記スエージングノッチと隣接する試験ノッチと、を備える上面を有する上端部を含む、実施態様1に記載のスエージングシステム。
(3) 前記スエージング及び試験ノッチは、前記スエージング軸に直交する対応する長手方向軸に沿って延在する、実施態様2に記載のスエージングシステム。
(4) 前記スエージング及び試験ノッチは、前記上部プレートの上面に対して平行であり、かつ前記スエージング軸に対して垂直である対応する長手方向軸に沿って延在する、実施態様3に記載のスエージングシステム。
(5) 前記スエージングノッチは第1の幅を有し、前記試験ノッチは前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有し、前記縫合針は、前記スエージングノッチの前記第1の幅以下であり、かつ前記試験ノッチの前記第2の幅よりも大きい直径を有し、前記縫合糸は、前記スエージングノッチの前記第1の幅及び前記試験ノッチの前記第2の幅よりも小さい直径を有する、実施態様2に記載のスエージングシステム。
【0083】
(6) 前記スエージングノッチの前記第1の幅が約203.2μm(約8ミル)であり、前記試験ノッチの前記第2の幅は約101.6μm(約4ミル)であり、前記縫合針の前記直径は約190.5μm(約7.5ミル)であり、前記縫合糸の前記直径は約88.9μm(約3.5ミル)である、実施態様5に記載のスエージングシステム。
(7) 前記ロードセルによって測定された負荷信号を受信するために前記ロードセルと通信する少なくとも1つのマイクロプロセッサを有する制御システムを更に備え、前記マイクロプロセッサが、前記ロードセルによって測定された前記負荷信号の変化を検出するように適合されている、実施態様2に記載のスエージングシステム。
(8) 前記制御システムが、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、その内部に格納された1つ以上の引張り試験プログラムを備え、各前記引張り試験プログラムは、所定の負荷下限と負荷上限とを有する許容可能な負荷範囲と、所定の時間下限と時間上限とを有する許容可能な時間範囲と、を含む、実施態様7に記載のスエージングシステム。
(9) 各前記引張り試験プログラムは、前記マイクロプロセッサによって負荷変化が検出されたときに、人間操作者が引張り試験検査を開始することを可能にし、前記検出された負荷変化が前記所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ前記検出された時間が前記所定の時間下限と時間上限との間である場合は、各前記引張り試験プログラムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であることを示し、前記検出された負荷変化が前記所定の負荷上限を超える場合は、各前記引張り試験プログラムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示し、前記検出された負荷変化が前記所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ前記検出された時間が前記所定の時間上限を超える場合は、各前記引張り試験プログラムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示す、実施態様8に記載のスエージングシステム。
(10) 装着済み外科用縫合針の引張り試験検査中に、前記制御システムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であるか又は許容不可能であるかを示す可視信号又は可聴信号を生成する、実施態様9に記載のスエージングシステム。
【0084】
(11) 前記制御システムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容可能である場合は可視の緑色光及び可聴のビープ音を生成し、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能である場合は可視の赤色光及び可聴のブザーを生成する、実施態様10に記載のスエージングシステム。
(12) 外科用縫合針を縫合糸に取り付け、装着済み外科用縫合針の取り付け部強度を試験するためのスエージングシステムであって、
フレームと、
前記フレーム上に装着された底部スエージングダイと、
前記フレーム上に装着され、前記底部スエージングダイと位置合わせしているスエージング軸に沿って上下に移動可能である、上部スエージングダイと、を備え、
前記底部スエージングダイは、
前記フレームに装着された底部プレートを含むヒンジ機構と、
前記底部プレートの上に重なる上部プレートであって、前記上部及び底部プレートは、前記上部プレートが前記底部プレートに対して枢動するのを可能にするために互いに枢動可能に接続されている、上部プレートと、
前記スエージング軸に沿って前記上部スエージングダイに向かって延在する前記上部プレート上に装着されたスエージング工具であって、前記スエージング工具は、縫合針を縫合糸にスエージングして装着済み外科用縫合針を形成するためのスエージングノッチと、前記装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、前記スエージングノッチと隣接する試験ノッチと、を備える上面を有する上端部を含む、スエージング工具と、
前記上部プレート上の負荷を監視するために、前記上部プレートと前記底部プレートとの間に配設されたロードセルと、を備え、
前記ロードセルによって生成された負荷信号を受信し、前記負荷信号の変化を検出するために前記ロードセルと通信する少なくとも1つのマイクロプロセッサを有する制御システムであって、前記制御システムが、装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、1つ以上の引張り試験プログラムを備え、各前記引張り試験プログラムは、所定の負荷下限と負荷上限とを有する許容可能な負荷範囲と、所定の時間下限及び時間上限を有する許容可能な時間範囲と、を含む、制御システム、
を備える、スエージングシステム。
(13) 各前記引張り試験プログラムは、前記少なくとも1つのマイクロプロセッサによって負荷変化が検出されたときに引張り試験検査を開始し、前記検出された負荷変化が前記所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ前記検出された時間が前記所定の時間下限と時間上限との間である場合は、各前記引張り試験プログラムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であることを示し、前記検出された負荷変化が前記所定の負荷上限を超える場合は、各前記引張り試験プログラムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示し、前記検出された負荷変化が前記所定の負荷下限と負荷上限との間であり、かつ前記検出された時間が前記所定の時間上限を超える場合は、各前記引張り試験プログラムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能であることを示す、実施態様12に記載のスエージングシステム。
(14) 装着済み外科用縫合針の引張り試験検査中に、前記制御システムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容可能であるか又は許容不可能であるかを示す可視信号又は可聴信号を生成する、実施態様13に記載のスエージングシステム。
(15) 前記制御システムは、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容可能である場合は可視の緑色光及び第1の可聴音を生成し、前記試験された装着済み外科用縫合針が許容不可能である場合は可視の赤色光及び第2の可聴音を生成する、実施態様14に記載のスエージングシステム。
【0085】
(16) 前記スエージング工具の前記上面における前記スエージング及び検査ノッチを見るために、前記フレーム上に装着されたステレオスコープを更に備え、前記ステレオスコープは、前記緑色可視光及び前記赤色可視光を生成するための少なくとも1つの発光ダイオードを含む、実施態様14に記載のスエージングシステム。
(17) 前記ヒンジ機構は、
前記上部プレートと前記底部プレートとを枢動可能に接続するために、前記上部プレート及び前記底部プレートの隣接する側面を相互接続するピンを更に備え、
前記底部プレートは、前記ピンと反対側の前記底部プレートの側面に位置するガードを備え、前記ガードは、操作者が前記上部プレートの上面に不注意に接触することを防ぐために、前記上部プレートの前記上面の上方に延在する上端部を有する、
実施態様12に記載のスエージングシステム。
(18) 前記ヒンジ機構の前記底部プレートは凹部を有し、前記ロードセルは前記凹部内に配設されている、実施態様12に記載のスエージングシステム。
(19) 前記ロードセルは、前記ロードセルの上端部から突出する調節可能な止めねじを有し、前記上部プレートは、前記ロードセルの前記止めねじにアクセスするために、前記上部プレートの前記上面でアクセス可能な止めねじ開口部を有する、実施態様18に記載のスエージングシステム。
(20) 外科用縫合針を縫合糸に取り付け、取り付け部強度を試験するためのスエージングシステムであって、
フレームと、
前記フレーム上に装着された底部スエージングダイと、
前記フレーム上に装着され、前記底部スエージングダイと位置合わせしているスエージング軸に沿って上下に移動可能である、上部スエージングダイと、を備え、
前記底部スエージングダイは、
前記フレームに装着された底部プレートを含むヒンジ機構と、
前記底部プレートの上に重なる上部プレートであって、前記上部及び底部プレートは、前記上部プレートが前記底部プレートに対して枢動するのを可能にするために互いに枢動可能に接続されている、上部プレートと、
前記スエージング軸に沿って前記上部スエージングダイに向かって延在する前記上部プレート上に装着されたスエージング工具であって、前記スエージング工具は、縫合針を縫合糸にスエージングして装着済み外科用縫合針を形成するための、前記上面でアクセス可能なスエージングノッチと、前記装着済み外科用縫合針に対して引張り試験を実施するための、前記スエージングノッチと隣接する、前記上面でアクセス可能な試験ノッチと、を備える上面を有する上端部を含み、前記スエージング及び試験ノッチは、前記スエージング軸に直交するそれぞれの長手方向軸に沿って延在する、スエージング工具と、
前記上部プレート上の負荷を監視するために前記上部プレートと前記底部プレートとの間に配設されたロードセルと、
を備える、スエージングシステム。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
図12A
図12B