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特許7048642肺、鼻、舌下および/または咽頭への送達に適した、少なくとも1つの生物活性化合物をロードした多孔質シリカ粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】肺、鼻、舌下および/または咽頭への送達に適した、少なくとも1つの生物活性化合物をロードした多孔質シリカ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/04 20060101AFI20220329BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20220329BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 11/08 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220329BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61K47/04
A61K9/14
A61P11/00
A61K31/196
A61K31/404
A61K31/4422
A61K31/496
A61K31/506
A61K31/519
A61K31/5377
A61K47/18
A61P9/00
A61P9/12
A61P11/06
A61P11/08
A61P23/00
A61P25/04
A61P29/00
A61P31/00
A61P31/10
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/20
A61P35/00
A61P37/08
A61P43/00 111
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019560246
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018061436
(87)【国際公開番号】W WO2018202818
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】1750544-7
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】513063268
【氏名又は名称】ナノロジカ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】チュンファン チョウ
(72)【発明者】
【氏名】アダム フェイレル
(72)【発明者】
【氏名】パウリーナ パシュキエビツ
(72)【発明者】
【氏名】シン シア
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/023407(WO,A2)
【文献】特表2004-522769(JP,A)
【文献】特表2004-522768(JP,A)
【文献】特表2004-522767(JP,A)
【文献】特表2005-508881(JP,A)
【文献】特表2010-533697(JP,A)
【文献】特表2010-538081(JP,A)
【文献】特表2013-540737(JP,A)
【文献】特表2011-514302(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113522(WO,A1)
【文献】特表2010-528094(JP,A)
【文献】特表2007-500209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0209285(US,A1)
【文献】LEON GRADON; ET AL,FORMATION OF PARTICLES FOR DRY POWDER INHALERS,ADVANCED POWDER TECHNOLOGY,NL,ELSEVIER BV,2013年10月11日,VOL:25, NR:1,PAGE(S):43 - 55,http://dx.doi.org/10.1016/j.apt.2013.09.012
【文献】SHAPIRO M; ET AL,AIR CLASSIFICATION OF SOLID PARTICLES: A REVIEW,CHEMICAL ENGINEERING AND PROCESSING,スイス,ELSEVIER SEQUOIA,2005年02月,VOL:44, NR:2,PAGE(S):279 - 285,https://doi.org/10.1016/j.cep.2004.02.022
【文献】Nanomedicine: NBM,2015年,11,p.1377-1385
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2012年,56(5),p.2535-2545
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの生物活性化合物がロードされている多孔質シリカ粒子の製造方法であって、
a)シリカ粒子を提供する工程、ここで前記シリカ粒子は、窒素吸着等温線により測定しそしてBET(Brunauer-Emmett-Teller)モデルを使って細孔容積と細孔径を算出した時に、1~100nmの細孔径、0.1~3cm3/gの細孔容積、および40~1200m2/gの表面積を有することを特徴とする、
b)前記粒子を分画して、0.5~15μmの空気力学的質量中央粒子径(MMAD)と2.5未満の幾何学的標準偏差(D84.1/D15.91/2(GSD)を有する粒子を取得する工程、
c)得られた前記粒子に少なくとも1つの生物活性化合物をロードする工程、ここで前記生物活性化合物は、結晶、又は非結晶又は油性化合物である、および
・前記粒子に追加の生物活性化合物をロードする工程
を含む方法。
【請求項2】
前記粒子が1.5未満のGSDで0.5~3.5μmのMMADを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子が2未満のGSDで8~12μmのMMADを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子の微粒子画分(FPF)が60%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が、前記粒子を分画する前又はロードする前に前記粒子の表面を改質する追加の工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
不混和性有機溶液、油または液体ポリマーを用いたシリカ前駆体溶液の縮合反応を含むゾルゲル法によりシリカ粒子が製造され、当該ゾルゲル法において、前記溶液を攪拌または噴霧することにより液滴が形成され、次いで水性相のpHの変化および/または蒸発によりシリカがゲル化される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカ粒子が擬球状または円筒状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記シリカ粒子が、窒素吸着等温線により測定しそしてBET(Brunauer-Emmett-Teller)モデルを使って細孔容積と細孔径を算出した時に、2~50 nmの細孔径、0.5~1.5 cm3/gの細孔容積、および50~800 m2/gの表面積を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
生物活性化合物の肺への送達に適した医薬組成物であって、ロードされた粒子の総重量の0.1~80%に少なくとも1つの生物活性化合物がロードされている複数の多孔質シリカ粒子、および場合により他の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤を含み、そして場合により表面改質されており、前記粒子が、0.5~5μmの空気力学的質量中央粒子径(MMAD)と2.5未満の幾何学的標準偏差(D84.1/D15.91/2(GSD)を有することにより、前記粒子が、窒素吸着等温線により測定しそしてBET(Brunauer-Emmett-Teller)モデルを使って細孔容積と細孔径を算出した時に、1~100nmの細孔径、0.1~3cm3/gの細孔容積、および40~1200m2/gの表面積を有すること、並びに前記生物活性化合物が、結晶、又は非結晶又は油性化合物であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項10】
前記粒子が1.5未満のGSDで0.5~3.5μmのMMADを有する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
生物活性化合物の舌下、鼻および/または咽頭への送達に適した医薬組成物であって、ロードされた粒子の総重量の0.1~80%に少なくとも1つの生物活性化合物がロードされた複数の多孔質シリカ粒子、および場合により他の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤を含み、そして場合により表面改質されており、前記粒子が、5~15μmの空気力学的質量中央粒子径(MMAD)と2.5未満の幾何学的標準偏差(D84.1/D15.91/2(GSD)を有することにより、前記粒子が、窒素吸着等温線により測定しそしてBET(Brunauer-Emmett-Teller)モデルを使って細孔容積と細孔径を算出した時に、1~100nmの細孔径、0.1~3cm3/gの細孔容積、および40~1200m2/gの表面積を有すること、並びに前記生物活性化合物が、結晶、又は非結晶又は油性化合物であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項12】
前記粒子が2未満のGSDで8~12μmのMMADを有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記粒子の微粒子画分(FPF)が60%以上である、請求項9~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
感染、炎症、COPD、喘息、癌、結核、重症急性呼吸器症候群、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ、天然痘および薬物耐性呼吸器感染を含む群より選択された、肺、鼻、舌下または咽頭の疾患の診断、予防および/または治療用途のための、請求項9~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記生物活性化合物が、抗アレルギー薬、気管支拡張薬、肺表面活性剤、鎮痛薬、抗生物質、抗感染症薬、ロイコトリエン阻害薬または拮抗薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗癌剤、抗コリン作動薬、麻酔薬、抗結核薬、心血管作動薬、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス薬、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせを含む群より選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法
【請求項16】
前記生物活性化合物が、抗アレルギー薬、気管支拡張薬、肺表面活性剤、鎮痛薬、抗生物質、抗感染症薬、ロイコトリエン阻害薬または拮抗薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗癌剤、抗コリン作動薬、麻酔薬、抗結核薬、心血管作動薬、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス薬、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせを含む群より選択される、請求項9~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記生物活性化合物が、ゲフィニチブ、ダサチニブ、イマチニブ、ボスチニブ、ジクロフェナク(ナトリウム)、フェロジピン、インダパミド、イトラコナゾール、ケチナピン、クロファジミン(NC009)、OSU-03021(NC023)および葉酸(NC026)を含む群より選択される、請求項1~8及び15のいずれか一項に記載の方法
【請求項18】
前記生物活性化合物が、ゲフィニチブ、ダサチニブ、イマチニブ、ボスチニブ、ジクロフェナク(ナトリウム)、フェロジピン、インダパミド、イトラコナゾール、ケチナピン、クロファジミン(NC009)、OSU-03021(NC023)および葉酸(NC026)を含む群より選択される、請求項9~14及び16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
肺、鼻、舌下および/または咽頭投与に適した乾燥粉末医薬組成物を充填したデバイスを生産する方法であって、前記医薬組成物が、場合により噴射剤と混合された、少なくとも1つの生物活性化合物および場合により他の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤がロードされている複数の多孔質シリカ粒子を含み、ここで前記粒子が
a)ゾル-ゲル法によりまたは噴霧乾燥法により製造することによって多孔質シリカ粒子を提供し、
ここで該粒子は1~100 nmの細孔径、0.1~3 cm3/gの細孔容積および40~1200 m2/gの表面積を有し、そして該粒子は擬球または円筒状であり、
b)好ましくは空気分級機、サイクロン分粒、水簸、沈降および/または篩分けを使うことにより、より好ましくは空気分級機を使うことにより、ローディング前に前記粒子を分画し、
それにより2.5未満の幾何学的標準偏差(D84.1/D15.91/2(GSD)で0.5~15μmの空気力学的質量中央粒子径(MMAD)および少なくとも99.0%の微粒子画分(FPF)を有する粒子を得、
c)好ましくは溶媒蒸発、含侵、噴霧乾燥、溶融、超臨界CO2充填または凍結乾燥により、より好ましくは溶媒蒸発により、前記粒子に少なくとも1つの生物活性化合物をロードし、ここで前記生物活性化合物が、結晶、又は非結晶又は油性化合物である、
それにより多孔質シリカ粒子に5%(w/w)以上の少なくとも1つの生物活性化合物がロードされ、
d)場合により前記粒子の表面を、好ましくは細孔を塞ぐことなく、好ましくはエッチングおよび/またはコーティングにより改質し、
e)場合により前記粒子に追加の生物活性化合物をロードし、
それにより医薬組成物中の多孔質シリカ粒子の濃度が、前記医薬組成物の総重量に基づいて5%(w/w)である
ことにより製造されていることを特徴とする、生産方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの生物活性化合物を含む多孔質シリカ粒子の製造方法に関し、該粒子は、前記少なくとも1つの生物活性化合物の肺、鼻、舌下および/または咽頭への送達に適している。本発明はまた、前記シリカ粒子を含む医薬組成物、並びに局所および/または全身疾患、例えば肺、鼻、舌下および/または咽頭の疾患の診断、予防および/または治療における前記シリカ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肺への生物活性化合物または薬物の投与は困難で複雑である。それらの化合物は、吸入器での使用に適しかつ吸入に適した組成物に製剤化されなければならない。
【0003】
医薬組成物は生体適合性、生分解性および崩壊性であるのが好ましい。該組成物中の粒度または粒子径は、下肺(野)に到達するために6μm未満でなければならない。吸入器を出る時の薬物の溶出と分散は、肺への薬物の送達にとって重要である。6μmより大きい粒子は下肺野、すなわち気管支と肺胞に入らない。6μmより大きい粒子は、上肺野、喉または鼻への薬物送達に適する。
【0004】
従来の薬物送達システムに比較して、吸入薬物送達システムは、呼吸器系の複雑さ故に、薬物沈着パターンと肺経由の薬物吸収の様々な局面を理解するのに非常に困難である。吸入された医薬組成物が治療効果を発揮するためには、気道に効率的に沈着して治療作用を生じ、気道-血液関門を効率的に通過して全身的作用を生じるのに利用可能である必要がある。上肺野では、肺の上皮は細胞の毛様体層を含み、細胞層の上に管腔粘液層を有する。どんな生物活性化合物でも、細胞層の内部に入るために粘液層を通過する必要がある。下肺野の肺胞では、細胞層は水性相にあり、肺表面活性物質(サーファクタント)で覆われている。生物活性化合物は、その表面活性剤層を通過して、その下の細胞層に到達しなければならない。粘液層と表面活性剤層は異なる材料で構成されているため、それらの層を透過するには異なる特性が必要である。従って、沈着部位は、肺における生物活性化合物の吸収の速度と程度に影響を与えると予想される。10μM以上の水中溶解度を有する化合物は上肺野で吸収されやすいが、下肺野では生物活性化合物の溶解度はあまり重要ではない。しかしながら、化合物の溶解度が10μM未満であると、下肺野での最大全身暴露は減少する。
【0005】
吸入された粒子の沈着(集積)は、空気力学的質量中央粒子径(MMAD)、粒子の密度と形状、および粒子の吸湿性を包含する多数のパラメーターの影響を強く受ける。広く受け入れられている概念は、効率的沈着には、MMADが1~5μmの範囲内にあるべきだということである。それより小さい粒子径の粒子は吐き出される可能性があり、それより大きい粒径の粒子は上気道に沈着する。好ましくは、狭い粒度分布を有する単分散粒子が使用される。
【0006】
粘液層または表面活性剤層における生物活性化合物の溶出は、治療効果にとって重要である。低溶解度および/または低解離定数を有する化合物は、薬物曝露が少ないため、肺では効果が弱い。幾つかの場合には、肺での保持時間が長いために、低溶解性の化合物を使用して薬物作用を延長することができる。肺疾患の場合、生物活性化合物の治療効果の律速段階は、化合物の溶出速度から気道-血液関門を通る化合物の透過速度まで変化する場合がある。肺の異なる領域での化合物の沈着も疾患により影響を受ける。喘息の症例では、健康なボランティアと比較して、より多量の薬物が上肺野に沈着する。下肺野に沈着する薬物が少なくなると、肺胞内の気道-血液関門を通過する薬物が少なくなり、これがひいては薬物の全身効果を減少させることになる。
【0007】
肺への送達に適した医薬組成物は、好ましくは制御可能な粒度および鋭くかつ制御可能な粒度分布(PSD)を有し、これは正確な肺沈着にとって有益である。粒子径は、肺の様々な領域への該粒子の沈着に影響を及ぼす。従来の組成物では、粒子は医薬組成物自体から構築され、典型的には他の添加剤または賦形剤とともに結晶形の生物活性化合物を含有する。粒子径は粒子または結晶からの該化合物の溶出速度に影響を与える。例えば、大きい粒子の方が小さい粒子よりも生物医薬活性化合物を溶出させるのにより長い時間を要する。
【0008】
組成物は湿度に対して敏感でないのが好ましい。何故なら、該組成物を凝集させてしまい、粒子の沈着パターンに影響を及ぼす可能性があるからである。
【0009】
薬物または生物活性化合物の肺への送達に適した医薬組成物は、乾燥粉末組成物である。そのような組成物はしばしば結晶質薬物の使用に限定される。その理由は、油性または非晶質化合物では、一貫した不変の投薬に使用できる乾燥粉末へと製剤化するのが非常に困難であるためである。
【0010】
肺への生物活性化合物の送達を改善するために、例えば、生物活性化合物の制御放出の改善、粒子径の制御の改善、粒子組成物への薬物のロード(担持)量の改善などのために、多孔質粒子が開発されている。生物活性化合物は、局所的、全身的、および即時または持続放出型であり得る。
【0011】
米国特許第6,740,310号明細書は、噴霧乾燥した多孔質または非多孔質粒子を含む生物活性化合物の肺深部への送達用の乾燥粉末組成物を開示しており、その粒子の55%が4.7μm未満の空気力学的中央粒子径(MMAD)および0.1 g/cm3未満の質量密度を有する。
【0012】
米国特許第6,254,854号明細書は、肺深部に生物活性化合物を送達するための生分解性粒子を含む乾燥組成物を開示しており、ここで該粒子はポリエステル共重合体から作られ、5~30μmの質量中央径(MMD)と1~5μmの空気力学的中央粒子径(MMAD)と0.4 g/cm3未満の質量密度を有する。
【0013】
粒子のパラメーターは、製造および分離工程によって制御される。重要なパラメーターは、質量中央径(MMD)および空気力学的中央粒子径(MMAD)である。製造工程で生成された粒子は、しばしば直径の範囲が広く、範囲の分布はガウス曲線に従う(図6参照)。MMADの分布を定義するために用いられるパラメーターは、幾何学的標準偏差(D84.1/D15.91/2(GSD)である。図5は、空気力学的中央粒子径(MMAD)と肺沈着との関係を示す。4~5μmの粒子径を有する粒子は主に気管支に沈着し、一方、より小さな粒子(約<4μm)は気流に残り、末梢気道と下肺野の肺胞領域に搬送されることが示されている。粒子の定義に使用される別のパラメーターは、質量密度と微粒子分画(FPF)である。FPFは、5μm未満の粒子径を持つ粒子の割合である。粒子の他の重要なパラメーターは、比表面積、粒子の形状、および粒子の細孔容積である。
【0014】
所望の範囲内の粒子の選択は、通常、生物活性化合物がロードされた粒子を、例えばフィルターを使用して分離することにより行われ、それにより所望の範囲内、例えば55%が4.7μm未満の粒子径を有する粒子が得られる。
【0015】
Tartula 0.他、Drug Targeting, 2017, 19(10、p 900-914)は、界面活性剤(サーファクタント)鋳型法を使ってシリカ粒子を調製することによる、ナノテクノロジーを利用した肺癌を治療する戦略を開示している。粒子は160 nm±75の均一な粒子径で製造された。ロード後、平均粒子径は200 nm±100である。粒子の表面は最初にピリジルチオールと接合され、その後粒子にDOXまたはCISがロードされる。その後、ピリジルチオール結合体は、iRNAおよびLHRH結合体により置換される。この製造方法は、使用される生物活性化合物に特有のものであり、時間がかかり、高価である。
【0016】
国際公開(WO)第2003/011251号パンフレットは、単分散のサイズと形状の多孔質シリコーン粒子の微粒子を得るためのエッチング、濾過または粉砕により調製された粒子を開示している。粉砕プロセスの前後のいずれかに、粒子に生物学的活性物質をロードできることがわかる。狭い粒度分布を有するロードされた粒子の例は開示されていない。残念ながら、この出願の公開以来、シリコーンが肺に深刻な悪影響を引き起こしうることが知られている。
【0017】
米国特許(US)第2015224077号明細書は、噴霧を用いる粒子の調製方法を開示している。多孔質粒子を使用することができると言及されているが、ロードされた多孔質粒子の調製の例は全く開示されていない。
【0018】
英国特許(GB)第2355711号明細書は、粒子の製造の間に粒子がサイジングされる、粒子の製造方法を開示している。空気分級の使用は高価であるため、サイジングは好ましくは篩分けによって行うことが好ましい。しかしながら、両サイジング法を使用しても高度に精製された多孔質シリカ粒子を得ることができないと言及されている。
【0019】
国際公開(WO)第2008150537号パンフレットは、クロマトグラフィーで使用するための多孔質シリカ粒子の調製方法を開示している。該粒子は、使用前にサイズ調整されてもよい。粒子のロードは言及されておらず、また生物活性化合物を充填する前の粒子の粒度の分別も言及されていない。
【0020】
吸入装置には、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、およびソフトミスト吸入器(SMI)がある。DPIが最も広く使用されており、これらは低、中、高抵抗DPIに分類される。これらのデバイスで頻繁に使用される医薬組成物は、噴射剤、界面活性剤、酸化防止剤、湿度調整剤などの添加物を含む。
【0021】
これらのデバイスの効率は、1)患者が生成する気流に依存する吸気流(IAF)と、2)デバイスが生成する乱流、という2つの主な力の影響を受ける。これらの2つの力の均衡は、デバイスの最適な性能にとって重要である。IAFが高すぎると、薬物の大部分が上肺、つまり喉と気管で失われる。IAFが低すぎると、より多くの薬物が下肺、つまり気管支と肺胞に送達されるが、薬物の溶出と分散は低くなる。これらのデバイスは、肺内での組成物の溶出と分散のためにはIAFにあまり依存しないため、最も良く使用されるのは中程度の耐性を持つDPIである。
【0022】
吸入組成物用の他の技術が開発されている。固定用量の薬物の組み合わせの組成物は、特に製剤中に存在する各薬物の比率が著しく異なる場合、粉末の均質性と患者への均一用量の送達を保証する必要がある。これらの要件を満たし、肺での薬物の共沈着を達成するために、微粒子化された薬物の単純な混合に代わるものとして粒子工学が利用されている。担体粒子が粗いPearl Therapeutics(米国カリフォルニア州)は、トリプル固定用量配合製剤を調製するプロセスを使用している。該プロセスでは、最初に、DSPC(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)のエマルジョンと無水塩化カルシウムを噴霧乾燥して、多孔質微粒子を形成する。続いて、多孔質粒子と微粉化されたグリコピロレート、フマル酸フォルモテロール、およびフロ酸モメタゾンを、1,1,1,2-テトラフルオロタン(HFA)噴射剤中に共懸濁させた。薬剤微粒子は多孔質粒子表面に不可逆的に付着し、各薬物に対して送達される用量が等価である安定した懸濁液を形成する。
【0023】
トリプル固定量の組み合わせの均質組成物を調製する別の試みが、Parikh D、Burns J、Hipkiss D、Usmani O他、”Improved localized lung delivery using smart combination respiratory medicines”2012; 8(1):40-5により報告された。溶液噴霧および結晶化法(SAXTM)は、薬物が濃縮された液滴を形成した後、超音波でソノクリスタ処理を行い、核形成と結晶化を高速化する空洞形成(キャビテーション)気泡を生成する方法である。この方法は、適切な用量送達の均一性と空力的特性を持つ粉末製剤を創製する。
【0024】
他の微粉化方法が使用されている。これらの微粉化粉末の欠点は、薬物の溶出速度が粉末の粒子径と溶解度などの薬物の特性に依存することである。従って、生物活性化合物の送達は、IAFと送達デバイスにより発生する乱流に依然として依拠している。粒子の形状は、粒子の流動動態と、粒子に含まれる生物活性化合物の沈着と溶解にとって重要である。マイクロミリメートルの大きさの球状または擬球状の円筒形粒子、すなわち2μm超、または1~50μmの直径を持つ粒子を製造することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、上記課題を少なくとも部分的に解決すること、および少なくとも1つの生物活性化合物がロードされているまたは該化合物を含む多孔質シリカ粒子の改良製造方法を提供することであり、ここで前記粒子は前記少なくとも1つの生物活性化合物の舌下、肺、鼻および/または咽頭への送達に適当である。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的は、少なくとも1つの生物活性化合物がロードされている多孔質シリカ粒子の製造方法であって、次の工程:
- シリカ粒子を提供し、
- 前記粒子を分離して2.5未満のGSDで0.5~15μmのMMADを有する粒子を取得し、
- 得られた前記粒子に少なくとも1つの生物活性化合物をロードし、そして
- 所望により、前記粒子に追加の生物活性化合物をロードする
を含むまたはそれから成る方法により達成される。
【0027】
一態様では、粒子は2.5未満のGSDで0.5~5μmのMMAD、または2.5未満のGSDで5~15μmのMMADを有する。
【0028】
一態様では、粒子は1.5未満のGSDで0.5~3.5μmのMMADを有する。
【0029】
別の態様では、粒子は2未満のGSDで6~12μmのMMADまたは8~12μmのMMADを有する。
【0030】
当該方法は、生物活性化合物を付着またはロードする前に該粒子の分離を可能にする。あるいは、生物活性化合物をナノ結晶として製造し、シリカ粒子上に吸着させることができる。当該方法は製造工程の収量と効率を改善する。この方法は、粒子に生物活性化合物に付着させた後に分離を行う方法に比較して、製造コストを削減する。より多量の生物活性化合物が最終組成物中に存在することができる。
【0031】
別の利点は、化合物の方法論に関係なく当該方法を利用できることである。結晶質、油性および非晶質の化合物を粒子上に付着またはロードし、本発明の方法に使用することができる。この結果、局所的にまたは全身的に送達させることができかつ任意の疾病の治療の柔軟性を改善する粒子の調製が可能になる。それは気道疾患、例えば肺、鼻および咽頭の疾患の治療の順応性(融通性)を改善する。粒子からの化合物の溶出は、化合物の形態に無関係であり、化合物の送達部位にも無関係である。溶出は、上肺野だけでなく下肺野においても改善される。その理由は、化合物が内腔粘膜層と表面活性剤層の両方において溶出するためである。
【0032】
当該方法は、生物活性化合物の送達に重要である粒子のパラメーター、例えばMMADとGSDの制御を可能にする。上記に説明した通り、それらのパラメーターは、上肺野や咽頭(舌の舌下空洞を含む)への送達に比較して、下肺野への粒子(および生物活性化合物)の送達は困難である。当該方法は、生物活性化合物を粒子にロードまたは付着させる前に、4または2.5または1.5未満のGSDを有する粒子の(幅の)狭い粒度分布の選択を可能にする。これは粒子径の単分散を改善し、そのため肺における粒子の沈着部位を調節することが可能である。また、該粒子を含む組成物の均質性も高めることができる。
【0033】
更に、複数の生物活性化合物を、材料の実質的損失なしに該粒子にロードおよび/または付着させることができる。これは更に、粒子の製造コストを更に削減する。当該方法は当業界で既知の方法に比較して比較的単純である。
【0034】
一態様では、本発明は、少なくとも1つの生物活性化合物を含む多孔質シリカ粒子の製造方法に関し、該方法は、
- シリカ粒子を提供し、
- 該粒子を分離して、2.5未満のGSDで0.5~15μmのMMADを有する粒子を得る
工程を含むまたはから成る。
【0035】
よって、該方法は、空の多孔質粒子の送達に使用することができる。それらの粒子は疾患、例えば糖尿病、肥満の治療に有用であり、そして血中のコレステロール、特にLDLを下げることができる。
【0036】
非晶質シリカの外側表面は、該粒子の凝集が最小限になるようにすることができる。粒子の凝集の減少は、吸入器により発生される乱流と吸気流(IAF)への依存性を減少させる。これは上述した2つの力の間の均衡を改善し、よって上肺野における生物活性化合物の損失を伴わずに下肺野への生物活性化合物の送達効率を改善する。凝集は、粒子上にロードされたまたは付着された生物活性化合物に左右されうる。凝集は特定の生物活性化合物の使用により防止することができる。
【0037】
別の態様では、当該方法は分離前にまたはロードする前に該粒子を表面改質するという追加の工程を含むまたはそれから成る。一態様では、表面改質は分離の前に実施される。更なる態様では、表面改質はロードする前に実施される。表面改質、例えば化学的表面改質、例えばエッチングは、シリカ粒子の表面の改変をもたらす。これは、粒子が凝集するのを防ぐために有用となりうる。これは特に、粒子が10もしくは6μmまたはそれ未満のサイズを有する時に特に有用である。ロードする前に粒子を表面改質することは、該粒子からの生物活性化合物の溶出速度に対して影響を与えないようである。
【0038】
更なる態様では、当該方法は、製造後またはロードした後に該粒子をコーティングすることにより該粒子を表面改質する追加工程を更に含むまたはそれから成る。一態様では、コーティングは製造後に実施される。別の態様では、コーティングはロードした後に実施される。コーティングは、粒子の表面に生物活性化合物を付着させるために使用することができる。コーティングは、粒子の表面に電荷を付与し、それにより粒子の凝集を防ぐために使用することができる。これは特に、粒子が10もしくは6μmまたはそれ未満のサイズを有する時に特に有用である。一態様では、粒子は機能付与剤でコーティングされる。一態様では、粒子は界面活性剤でコーティングされる。別の態様では、粒子はL-リジン、L-アラニン、グリシン、ロイシンおよびL-チロシンを含むまたはそれから成る群より選択されたアミノ酸でコーティングされる。コーティングは、粒子中の細孔を塞ぐために実施され、またはコーティングは粒子の細孔を塞ぐことなく実施される。
【0039】
別の態様では、方法は分離前にまたはロードする前に該粒子を表面改質する追加の工程を含むまたはから成り、それにより表面改質は化学的表面改質、例えばエッチングおよびコーティング、例えば細孔非閉塞のコーティングである。
【0040】
粒子は当業界で既知の任意方法により製造することができる。一態様では、粒子は、オルトケイ酸テトラエチルをミセル構造から成る鋳型と反応させることにより製造される。オルトケイ酸テトラエチルは、鋳型として追加のポリマーと共に使用してもよい。別の態様では、粒子はゾル-ゲル法、例えばStober法により、または噴霧乾燥法により、製造される。更なる態様では、シリカ粒子は、シリカ前駆体溶液と不混和性有機溶液、オイル、または液体ポリマーとの縮合反応を含むゾル-ゲル法により製造される。該方法では、溶液を攪拌または噴霧し、次いでpHの変化および/または水性相の蒸発によってシリカをゲル化することにより液滴が形成される。ゾル-ゲル法は、それが煩雑でなく、低コストであり、GMP(製造管理および品質管理に関する基準)の下でのシリカ粒子の大量生産に適しているという点で他の方法を上回る利点を有する。
【0041】
一態様では、シリカ粒子はナノポーラスおよび/またはメソポーラスシリカ粒子である。別の態様では、粒子はナノポーラスシリカ粒子である。一態様では、粒子はメソポーラスシリカ粒子である。更なる態様では、シリカ粒子は球状、擬球状、円筒状、螺旋状、棒状、繊維状、コアシェル形の粒子である。更なる態様では、シリカ粒子は球状または円筒状である。これは、粒子の流れ動態を改善する。粒子の形状は製造法により制御することができる。これは生物活性化合物の沈着と溶出(解離)にとって重要でありうる。
【0042】
一態様では、シリカ粒子は生分解性である。一態様では、シリカ粒子は崩壊性である。一態様では、粒子は生分解性でありかつ崩壊性である。更なる態様では、シリカは合成非晶質シリカである。幾つかの用途では、シリカが生体適合性で、崩壊性でかつ生分解性であると有利である。これは、肺、鼻および喉、特に肺深部における粒子の起こり得る毒性作用を減少させることができる。
【0043】
別の態様では、シリカ粒子は1~100 nmの細孔径(ポアサイズ)を有する。更に別の態様では、シリカ粒子は0.1~3 cm3/gの細孔容積を有する。更に別の態様では、シリカ粒子は40~1200 m2/gの表面積を有する。測定は窒素吸着等温線により実施し、そしてBET(Brunauer-Emmett-Teller)モデルを使って細孔容積と細孔径を計算した。別の態様では、シリカ粒子は1~100 nmの細孔径、0.1~3 cm3/gの細孔容積および40~500 m2/gの表面積を有することができる。
【0044】
粒子は当業界で既知の任意方法により分離することができる。一態様では、粒子は空気分級機、サイクロン分離、または水簸、または沈降および/または1つ以上の篩を使った篩分けを使って分別することができる。更なる態様では、粒子は空気分級機を使って分別される。
【0045】
粒子は当業界で既知の任意方法によりロードする(loading)ことができる。一態様では、粒子は溶媒蒸発、含侵、噴霧乾燥、溶融、超臨界CO2充填、または凍結乾燥を使ってロードされる。更なる態様では、粒子は溶媒蒸発を使ってロードされる。「ロードする(loading)」という用語は、生物活性化合物が粒子中および/または粒子上に担持されること、または他の方法で粒子に付着されることを意味する。化合物を多孔質シリカ粒子にロードすることの利点は、化合物の溶出速度が細孔構造により影響を受けること、例えばシリカ粒子の粒度よりもむしろ細孔容積により影響を受けることである。粒度は、肺への粒子の沈着を決定づける重要なパラメーターである。これは、粒度に依存しない化合物の溶出動力学をもたらす。従って、化合物の溶出動態を微調整することができ、そして肺への該粒子の位置に依存しない。シリカ多孔質粒子を使用することにより、該粒子からの化合物の溶出(解離)は化合物の形態学に無関係でありかつ送達部位にも依存しない。本発明の方法を用いて、生物活性化合物の送達が該化合物の形態学にほとんどもしくは全く依存しない、または送達デバイスにより引き起こされる乱流にほとんどもしくは全く依存しない、または既知の組成物に比較して粒子により発生される吸気流にほとんどまたは全く依存しない組成物を創製することができる。
【0046】
一態様では、シリカ粒子はゾル-ゲル法を使って製造され、シリカ粒子は空気分級により分粒され、そして該粒子は溶媒蒸発を使ってロードされる。
【0047】
更なる態様では、粒子は少なくとも90%、または99%、または99.8%の微粒子画分を有する。
【0048】
肺深部への生物活性化合物の送達には、粒子は、2.5、または2.2、または2.0、または1.8、または1.5未満のGSDで、6μmまたは3μm、または0.5~5μm、または1~3.5μmのMMADを有する。
【0049】
舌下、鼻および/または咽頭腔への生物活性化合物の送達には、粒子は、4、または2.5、または2、または1.5未満のGSDで、少なくとも5、または10 μm、または5~15 μm、または6~12 μm、または8~12 μm、または7.5~11.5 μmのMMADを有する。別の態様では、GSDは1~2である。本発明の方法の利点は、幅の狭い分布(すなわち低いMMADで狭いGSD)を有する「単分散」粒子を得ることができる点である。これは、肺への粒子の沈着部位を、従来技術の粒子に比較して改善された精度で微調整できることを意味する。更に、より多数の粒子、従ってより多くの生物活性化合物を肺深部に送達させることが可能である。これは、該粒子を含む組成物の均質性も改善する。
【0050】
更に別の態様では、粒子は0.4 g/cm3未満、または0.15~0.35 g/cm3の質量密度を有する。更に別の態様では、粒子は少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%もしくは99.9%、または100%の微粒子画分(FPF)を有する。一態様では、FPFが98~100%、または99%~100%、または99.5%~100%である。MMDまたはMMDAは生物活性化合物の送達部位に応じて変化しうる。よって、下肺への送達には、MMADは3または6μmであってよく、一方で鼻腔への送達にはMMADは10μm以上であることができる。GSDは下肺野と鼻腔への送達の両方で同じであろう。あるいは、1以上の選択されたMMADを有する投薬を使用することができ、例えば、1~1.5のGSDで1~3μmのMMADを有する粒子を50%有する、または1~2のGSDで10μm以上のMMADを有する粒子を50%有する投薬を使用することができる。
【0051】
本発明はまた、生物活性化合物の肺への送達に適した医薬組成物であって、ロードされた粒子の総重量の0.1~80%、または5~50%の粒子に、少なくとも1つの生物活性化合物と場合により別の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤がロードされた、そして場合により機能付与剤がコーティングされた、複数の多孔質シリカ粒子を含むまたはから成り、前記粒子が2.5未満のGSDで0.5~5μmのMMADを有することを特徴とする医薬組成物に関する。一態様では、粒子は1.5未満のGSDで0.5~3.5μmのMMADを有する。別の態様では、粒子は上記に定義したような製造方法に従って調製されたものである。
【0052】
本発明はまた、生物活性化合物の舌下、鼻および/または咽頭への送達に適した医薬組成物であって、ロードされた粒子の総重量の0.1~80%、または5~50%に、少なくとも1つの生物活性化合物と場合により別の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤がロードされた、そして場合により機能付与剤がコーティングされた、複数の多孔質シリカ粒子を含むまたはから成り、前記粒子が2.5未満のGSDで5~15μmのMMADを有することを特徴とする医薬組成物に関する。一態様では、粒子は2未満のGSDで8~12μmのMMADを有する。別の態様では、粒子は上記に定義したような製造方法に従って調製されたものである。
【0053】
医薬組成物は1または複数の生物活性化合物の局所および/または全身送達に利用することができる。
【0054】
医薬組成物は1または複数の生物活性化合物の即時放出および/または持続放出のために利用することができる。組成物の中の粒子中にまたは粒子上に複数の生物活性化合物が存在する場合、1つの生物活性剤を局所的に送達させ、第二の生物活性剤が全身作用を有することができる。また、異なる生物活性化合物が異なる速度で粒子から放出されてもよい。
【0055】
更に別の態様では、生物活性化合物は結晶質、非晶質または油性化合物である。一態様では、生物活性化合物は非晶質化合物である。本発明の組成物は、生物活性化合物の溶解度に関係なく、一定/均一な薬剤量を送達させることができる。言い換えれば、溶出速度は生物活性化合物の形態学により影響を受けない。化合物の治療用途がもはや化合物の形態または溶解度に依存しない場合、多数の生物活性の高い化合物を開発することができ、それは新薬の開発や患者の診断と治療における順応性(融通性)を改善する。併用療法においても、投与量の均質性が確保され、そして複数の生物活性化合物の均一用量を患者に投与することができる。
【0056】
更に別の観点では、生物活性化合物は、欧州薬局方第9版(Ph. Eur 9th Ed)に従って10 mg/mL以上の25℃での水溶解度を有する。生物活性化合物の一例は、pH 6.8の緩衝液中10 mg/mLの溶解度および水中>6 mg/mLの溶解度を有する、メトクロプラミドであることができる。
【0057】
別の態様では、生物活性化合物は、欧州薬局方第9版に従って1~10 mg/mL以上の25℃での水溶解度を有する。一態様では、生物活性化合物は欧州薬局方第9版に従って1mg/mL以下の25℃での水溶解度を有する。多孔質粒子は水に難溶性の生物活性化合物、すなわち10 mg/mL以下の25℃での水溶解度を有する生物活性化合物の溶出動力学を強化することができる。生物活性化合物の一例は0.225 mg/LまたはOSU-03012(水不溶性)の溶解度を有するクロファジミン、または1.6 mg/Lの溶解度を有する葉酸であることができる。
【0058】
当該粒子を用いることにより、既知組成物に比較してより多量の生物活性化合物をその送達部位に送達させることができる。これは、投与頻度が削減され、それにより治療の有効性と効率並びに医療費を削減できることを意味する。シリカ粒子は大部分の添加剤と適合性であり、大きな問題を引き起こすことなく別の添加剤と混合することができる。しかしながら、本発明の組成物はより少数の添加剤を必要とするため、組成物の製造コストが削減される。更に、シリカ、特に非晶質シリカは、現在の(喘息などの)吸入者において用いられている乾燥結晶粉末組成物に比較して、湿度に敏感でない。これは、該粒子の凝集のリスクを減らし、ひいては本発明の方法に従って製造された粒子を使用することにより、装置内でのIAFと乱流への依存性を減らす。粒子のロード量は従来技術の粒子に比較して増大する。また、(ナノ)ポーラスシリカへの生物活性化合物のローディングは、安定な非晶質状態の化合物を提供し、それは分解動力学と制御放出を強化する。これらの粒子は、該粒子が複数の生物活性化合物を含むときでも改善された均質性を有する。
【0059】
肺における生物活性化合物の沈着効率の改善は、より正確な肺送達を可能にし、よって局所的および全身的の両方での化合物の治療効果を高める。肺、咽頭または鼻への生物活性化合物の暴露が増加される。更に、シリカ粒子は特定部位への高用量の送達を可能にする。
【0060】
別の態様では、生物活性化合物は、抗アレルギー薬、気管支拡張薬、肺表面活性剤、鎮痛薬、抗生物質、抗感染薬、ロイコトリエン阻害薬または拮抗薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗癌剤、抗コリン作用薬、麻酔薬、抗結核薬、心血管作動薬、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス薬、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせを含むまたはから成る群より選択される。一態様では、生物活性化合物はタンパク質またはペプチド、例えばトリペプチド、成長因子またはオリゴヌクレオチドである。
【0061】
更なる態様では、生物活性化合物はゲファニチブ、ダサニチブ、イマチニブ、ボスチニブ、ジクロフェナク(ナトリウム)、フェロジピン、インダパミド、イトラコナゾールおよびクエチアピンを含むまたはから成る群より選択される。
【0062】
一態様では、生物活性化合物は、クロファジミン(NC009)、OSU-03021(N023)および葉酸(NC026)を含むまたはから成る群より選択される。
【0063】
本発明は更に、場合により噴射剤と混合された、上記に定義した医薬組成物を含むまたはから成る、少なくとも1つの医薬活性化合物の肺、鼻、舌下および/または咽頭への送達に適した送達デバイスに関する。一態様では、噴射剤は、定量吸入器の作動時に効率的にエアロゾルを発生するのに十分な蒸気圧を有する炭化水素、フッ化炭素、水素含有フッ化炭素またはそれらの混合物を含むまたはから成る群より選択される。一態様では、医薬組成物は噴射剤を含まないかまたはそれから成るものではない。本発明の組成物は、吸入デバイスの同時開発の必要性を低減する。送達デバイスは、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)またはソフトミスト吸入器(SMI)であってもよい。送達デバイスは、乾燥粉末吸入器(DPI)、特に中抵抗性のDPIであり得る。この送達デバイスは、化合物の送達のIAFへの依存性、および肺内での化合物の解離と分散のための該デバイスの乱流を更に減少させる。
【0064】
定量吸入器では、医薬組成物は溶液または懸濁液として液体の形で存在する。粒子からの生物活性化合物の溶出を防ぐことまたは粒子から化合物の漏出を防ぐことは難しい。通常、薬物粒子の懸濁液を安定に保つために、溶媒または界面活性剤が選択される。通常、この化合物は使用する溶媒への溶解度が低い。化合物をシリカ粒子にロードすることにより、安定した化合物懸濁液を調製することができる。シリカ粒子は様々な溶媒に対する分散性が良く、標的部位または肺への送達前に、溶媒中への薬物の溶出または漏出を防ぐために、例えば粒子をコーティングすることにより、更に改質することができる。シリカ粒子にロードする利点は、広範囲の化合物を薬物懸濁液として製剤化できることである。更に、大部分の製剤は粒子あたりの化合物/薬物濃度が制限される一方で、当該シリカ粒子は高い薬物ロード量を有する。その上、任意の形態の化合物を粒子にロードし、デバイスで使用することができる。
【0065】
本発明は更に、上記で定義した医薬組成物の診断的、予防的および/または治療的使用に関する。一態様では、上記で定義した医薬組成物は、感染症、炎症、COPD、喘息、癌、結核、重症急性呼吸器症候群、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ、天然痘および薬剤耐性呼吸器感染症を含むまたはそれから成る群より選択される、肺、鼻、舌下腔または咽頭の局所および/または全身疾患の診断、予防および/または治療に使用することができる。一態様は、感染、炎症、COPD、喘息、癌、結核、重症急性呼吸器症候群、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ、天然痘および薬剤耐性呼吸器感染を含むまたはから成る群より選択された、肺の局所および/または全身疾患の診断、予防および/または治療に関する。一態様は、前記疾患が癌でありそして前記化合物がゲフィチニブ、ダサチニブ、イマチニブ、ボスチニブから選択される、肺の局所および/または全身疾患の診断、予防および/または治療に関する。
【0066】
本発明は、医薬組成物の胚、鼻、舌下および/または咽頭投与に適した乾燥粉末デバイスであって、前記医薬組成物が、場合により噴霧剤と混合された、少なくとも1つの生物活性化合物、および場合により他の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤がロードされた複数の多孔性粒子を含むまたはから成り、ここで前記粒子が
- 好ましくはゾル-ゲル法によりまたは噴霧乾燥法によって製造することにより、多孔質粒子を提供し、
該粒子は1~100 nmの細孔径、0.1~3 cm3/gの細孔容積および40~1200 m2/gの表面積を有し、そして該粒子は擬球または円筒状であり、
- 好ましくは空気分級機、サイクロン分粒、沈降および/または篩分けを使うことにより、より好ましくは空気分級機を使うことにより、ロードする前に前記粒子を分離し、
それにより2.5未満のGSDで0.5~15μmのMMADおよび少なくとも99.0%のFPFを有する粒子を得、
- 好ましくは溶媒蒸発、含侵、噴霧乾燥、溶融、超臨界CO2充填または凍結乾燥、より好ましくは溶媒蒸発により、前記粒子に少なくとも1つの生物活性化合物をロードし、
それにより多孔質シリカ粒子に5%(w/w)以上の少なくとも1つの生物活性化合物がロードされ、
- 場合により前記粒子の表面を、好ましくは細孔を塞ぐことなく、好ましくはエッチングおよび/またはコーティングにより改質し、
- 場合により前記粒子に追加の生物活性化合物をロードし、
それにより医薬組成物中の多孔質シリカ粒子の濃度が、前記医薬組成物の総重量に基づいて5%(w/w)である
ことにより製造されている、前記乾燥粉末デバイスに関する。
【0067】
生物活性化合物は、ゲフィチニブ、ダサチニブ、イマチニブ、ボスチニブ、ジクロフェナク(ナトリウム)、フェロジピン、インダパミド、イトラコナゾール、クエチアピン、クロファジミン(NC009)、OSU-03021(NC023)および葉酸(NC026)を含むまたはから成る群より選択される。
【0068】
1つの特徴の任意区間を、本明細書に言及されるのと同じ特徴の別の区間により置き換えることが可能である。
【0069】
ここで、本発明の様々な態様の説明によりそして添付図面への参照により、本発明を更に詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1図1は、多孔質シリカ粒子の製造、分離およびローディングの工程の流れ図である。
【0071】
図2図2は、空気分級前後のNLAB-シリカのマープル・カスケード・インパクタ(Marpe Cascade Impactor)による粒度分布測定を示す。
【0072】
図3図3は、生物活性化合物としてのNC009とNC023が封入されたNLABシリカのTGA結果を示す。
【0073】
図4図4は、空の(naked)NLABと生物活性化合物が封入されたNLABシリカのMarpe Cascade Impactorによる粒度分布測定を示す。
【0074】
図5図5は、空気力学的粒子径と肺沈着との間の関係を示す国際放射線防護委員会モデルを示す(Kobrich R, Ann Occup Hyg, 1994, 38, 588-599)。
【0075】
図6図6は、粒度分布に使用されるパラメーターの図解である。
【0076】
図7図7は、37℃の下でのSLE中のNLAB-シリカ粒子の分解動力学を示す。
【0077】
図8図8は、37℃の下でのSLF中の種々の細孔構造を有するNLAB-シリカ粒子の分解動力学を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
定義と測定方法
本明細書中で用いる場合、「生物活性化合物」は、ヒトなどの哺乳動物の体に対して抑制、予防または治療効果を有する医薬(生物)活性化合物を意味する。生物活性化合物は、タンパク質、ペプチド、抗体等のような生物学的に活性な化合物でありうる。
【0079】
本明細書中で用いる場合、「疾病」という用語は、疾患、状態またはそれの任意同等物を含むものと意図される。
【0080】
用語「ロードする(またはローディング)」は、生物活性化合物が粒子の内部および/または上部にロード(担持)されること、または他の方法で該粒子に付着されることを意味する。
【0081】
用語「持続放出」は、即時でない、すなわち化合物の少なくとも80%の放出が30分以内である、生物活性化合物の任意放出を意味する。
【0082】
本明細書中で用いる場合、用語「患者」は、哺乳動物、例えばヒトを指す。
【0083】
本明細書中で用いる場合、用語「実質的に」または「約」は、言及された数を中心とした値の偏差を指し、例えば実質的にまたは約5は値が4~6であることを意味する。
【0084】
本明細書中で用いる場合、用語「コーティング」は、細孔の閉塞を伴っても伴わなくてもよい表面の被覆を指す。
【0085】
本明細書中で用いる場合、用語「表面改質」は、表面の物理的および/または化学的性質の改変、変更を指す。
【0086】
本明細書中では、用語「療法」は、それに反する特別な指示がない限り、「予防」も包含する。用語「治療の」および「治療的に」もそれと同様に解釈されるだろう。本発明の範囲内での用語「治療」は、急性もしくは慢性の現存の病気状態または再発した状態のいずれかを緩和するために、本発明の化合物の有効量を投与することを更に包含する。この定義は、再発状態の防止のための予防療法と、慢性疾患の継続療法も包含する。
【0087】
本明細書中で用いる場合、用語「任意の」または「場合により」は、それに続いて記載される事象または状況が必ずしも起こらなくてよいことを意味し、その記載がその事象または状況が起こる場合とそれが起こらない場合とを包含することを意味する。
【0088】
本明細書中で用いる場合、用語「化合物」は、天然または合成化合物に加えて任意の天然または合成の生物学的化合物、例えばペプチド、成長因子、オリゴヌクレオチド等を指す。
【0089】
NC009は、クロファジミン、すなわちN,5-ビス(4-クロロフェニル)-3-プロパン-2-イルイミノフェナジン-2-アミン(CAS 2030-63-9)を意味し、N023はOSU-03021、すなわち2-アミノ-N-(4-(5-(フェナントレン-2-イル)-3-(トリフルオロメチル)-1H-ピラゾール-1-イル)フェニル)アセトアミド(CAS 742112-33-0)を意味し、そしてNC026は葉酸、すなわちN-(4-{〔(2-アミノ-4-オキソ-1,4-ジヒドロプテリジン-6-イル)メチル〕アミノ}ベンゾイル)-L-グルタミン酸(CAS 59-30-3)を意味する。
【0090】
水銀(Hg)圧入法は、多孔度(空隙率)を測定する標準法である。この方法では、負荷圧のもと、細孔中に水銀が圧入される。しかしながら、3.2 nm付近に下方細孔径限界があり、それ以下では水銀は浸透することができない。1~50 nmのメソスケール範囲に細孔径を有する多孔質材料の場合、細孔径と細孔容積を評価するには窒素(N2)収着が汎用される。窒素収着技術は、多孔質材料の利用可能な表面積を測定する。細孔容積と細孔径を算出するためには経験的モデルが用いられる。BET(Brunauer-Emmett-Teller)およびBJH(Barrett, Joyner & Halenda)モデルがシリカ粒子の細孔の多孔度を計算するのに使用されている。
【0091】
多孔性粒子の画像を取得するのに走査型電子顕微鏡(SEM)を利用することができる。SEMを使って粒子径を求めることができる。
【0092】
多孔質粒子は、シリカ種と、有機テンプレート(鋳型)、例えばカチオン界面活性剤、例えば様々な炭素鎖長を有するアルキルトリメチルアンモニウム鋳型と対イオン、例えば塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTA+Cl-またはCTAC)または臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTA+Br-またはCTAB)、または非イオン性種、例えばジブロックポリマーとトリブロックポリマー種、例えばポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシド、例えばプルロニック123界面活性剤、との共同的な自己集合により製造することもできる。メソポーラスシリカ粒子の形成は、シリカ前駆体(これは溶液中またはケイ酸ナトリウム溶液中でのアルキルシリケート、例えばオルトケイ酸テトラエチルTEOSまたはオルトケイ酸テトラメチルTMOSを含みうる)の加水分解と縮合の後に起こる。メソポーラスシリカ粒子径は、シリカ種の加水分解と縮合に作用する適当な添加剤、例えば無機塩基、メタノール、エタノール、プロパノールを含むアルコール、有機溶媒、例えばアセトンを添加することにより制御することができる。細孔径は、反応混合物の熱水処理、例えば100℃までまたはそれより高温への加熱により、および界面活性剤ミセル鋳型を膨張させる有機油または有機液体の形の膨張剤の添加により、影響され得る。シリカ基材の縮合後、鋳型界面活性剤(サーファクタント)を、典型的には500℃から650℃までの温度で数時間のか焼(calcination)により除去することができる。この処理は、有機鋳型を焼き尽くして、シリカの多孔質母材を生成する。あるいは、鋳型は適当な溶媒、例えば有機溶媒または酸性もしくは塩基性溶液での抽出と洗浄により除去してもよい。
【0093】
多孔質シリカ粒子は、シリカ前駆体溶液例えばケイ酸ナトリウムまたはエマルジョンとしてのシリカナノ粒子の水性懸濁液と、不混和性有機溶液、油または液体ポリマーとの縮合反応を含むゾル-ゲル法により製造することができ、ここで例えば溶液を攪拌または噴霧した後にpHの変化および/または水性相の蒸発によるシリカのゲル化により、液滴が形成される。ここで不混和性の第二相の存在による排除によりまたは蒸発の最中のシリカナノ粒子の詰め込み(jamming)により、粒子の多孔性が形成される。粒子は加熱処理によりシリカ母材の凝縮を誘導し、そして洗浄して不混和性の第二相を除去することにより更に処理することができる。シリカ母材を強化するために粒子をか焼(焼成)により更に処理してもよい。
【0094】
多孔質粒子は、ホウケイ酸ガラス(SiO2-B203-Na20など)の相分離法を経て多孔質ガラスとして製造され、その後ゾル-ゲル法を通して形成された相のうち1つの相を液体抽出することにより;または単にガラス粉末を焼結することにより製造することができる。典型的には500℃~760℃の熱処理中に、相互浸透構造が構築され、これは、ナトリウムに富むホウ酸塩相とシリカ相のスピノーダル分解から生じる。
【0095】
多孔質粒子は、ヒュームド法を使用して製造されてもよい。この方法では、四塩化ケイ素を酸素-水素炎の中で燃焼させて溶融シリカの微小液滴を生成させ、三次元の第二粒子中で非晶質シリカ粒子に融合させ、その後それを第三粒子へと凝集させることによって生成される。生成する粉末は、かさ密度が非常に低く、比表面積が大きい。
【0096】
図1は、少なくとも1つの生物活性化合物がロードされたまたはそれを含む多孔質シリカ粒子を製造するための本発明の方法の流れ図を示す。「ロードする(ローディング)」という用語は、生物活性化合物が粒子内および/または粒子上に担持されるか、または他の方法で粒子に付着されることを意味する。得られた粒子は、前記少なくとも1つの生物活性化合物の肺、鼻、舌下および/または咽頭への送達に適する。この方法は、以下に概説する工程を含むかまたはそれから成る。
【0097】
第1工程では、シリカ粒子が提供される。本発明は特定の製造方法に限定されない。製造方法の例は、国際公開(WO)第2009/101110号パンフレットに開示されている。他の方法は上記に記載の通り。
第2工程では、粒子を分離して、2.5未満のGSDで0.5~15μmのMMADを有する粒子を得る。
【0098】
分離は、空気分級機を使用して実施することができる。空気分級機は、サイズ、形状、密度の組み合わせにより粒子を分離する産業用機械である。この機械は、分離する予定の原料粒子を、上昇気流のカラムを含むチャンバーへと搬送することにより稼働する。分離チャンバーの内側では、粒子への空気抵抗が上向きの力を供給し、この力が重力に対抗し、分別する予定の粒子を空気中に持ち上げる。空気抵抗は粒子のサイズと形状に依存するため、移動する空気カラム内の粒子は垂直方向に分粒され、この方法で分離することができる。適切な空気分級機の例は、ステージ・ノンバイアブル・カスケードインパクター(Stage Non Viable Cascade Impactor)、マープルミラー・インパクター(Marple Miller Impactor)、またはマルチステージ・リキッドインピンジャー(Multi-stage Liquid Impinger)である。
【0099】
分離は、空気分級機、サイクロン分粒、水簸、沈降および/または1もしくは複数の篩を使った篩分けによっても行うことができる。
【0100】
第3工程では、第2工程で得られた粒子に、少なくとも1つの生物活性化合物がロードまたは付着される。複数の生理活性化合物を同様にロードすることができる。粒子は、フルオロフォア、造影剤、放射性物質などのバイオマーカーを使用して機能化することもでき、それらのマーカーは粒子上に/粒子中に付着されるかまたはロードされうる。
【0101】
粒子には、溶媒蒸発、含浸、噴霧乾燥、溶融、超臨界CO2充填または凍結乾燥などの様々な技術を使用してロードすることができる。溶媒蒸発は、生物活性化合物の濃縮溶液とシリカ粒子とを混合し、次いで溶媒を除去しそして/またはサンプルを乾燥した後、サンプルを更に処理することを含む。
【0102】
多孔質シリカ粒子のロード量(担持量)は、約5%(w/w)以上、または約15%、20%、25%、30%、40%、50%、75%、80%、85%、90%であってよい。
【0103】
必要に応じて、第二のまたは後続のローディング工程が実行される。これは、第3工程で1以上の生物活性化合物のロード量を増やすために行うことができ、または第3工程で得られた粒子に第二のまたは後続の生物活性化合物をロードするために行うこともできる。異なる生物活性化合物を多孔質粒子と混合することができ、そして/または異なる生物活性化合物を多孔質粒子中におよび/または粒子上にロードすることができる。本発明は、これらのいかなる組み合わせにも限定されない。
【0104】
当該方法は、ロードする前の分離工程の前に粒子の表面改質という追加の工程を含むかまたはそれから成ってもよい。表面改質はロードする前に行うことが好ましい。表面改質はエッチングなどの化学的改質であってよい。エッチングは、シリカ粒子を塩基中で煮沸し、次に酸中で煮沸して、粒子の外表面上に-S-OH結合を形成させることにより行うことができる。適切な塩基の例は、KOH溶液、水中のn-プロパノール、NaOHまたはN2CO3の溶液とアンモニア、またはNaBH4、またはHFである。適切な酸の例は、HClおよびH2SO4である。
【0105】
当該方法は、製造後またはロードした後に粒子をコーティングするという追加の工程を含むかまたはから成ってもよい。コーティングは好ましくはロードする前に行われる。好ましくは、コーティングによって細孔は閉塞されない。全粒子の少なくとも一部がコーティングされていてもよい。コーティングは、味のマスキング用コーティングまたは粘膜付着性コーティングであってもよい。コーティングは、親水性または親油性を改善するために使用することもできる。コーティングを使用して表面の粒子を帯電させることもできる。
【0106】
適切なコーティング剤は、アミノ酸、界面活性剤、ポリマー、脂質、セルロースまたはその誘導体、糖類、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸塩、ペプチド、タンパク質およびナノ粒子を含むまたはから成る群より選択される機能付与剤であることができ、それらは多孔性であってよい。アミノ酸の例は、L-リジン、L-アラニン、グリシン、ロイシンおよびL-チロシンであることができる。
【0107】
シリカ粒子は、ナノポーラスもしくはメソポーラス、またはそれらの混合物であってもよい。シリカ粒子は、1~100 nm、または1~80 nm、または2~50 nm、または2~25 nm、または5~15 nm、または実質的に12 nmの細孔径を有することができる。
【0108】
シリカ粒子は、0.1~3 cm3/g、または0.2~2 cm3/g、または0.5~1.5 cm3/g、または0.7~1.2 cm3/g、または0.5~1.0 cm3/g、実質的には8.5 cm3/gの細孔容積を有することができる。
【0109】
シリカ粒子は、40~1200 m2/g、または60~1100 m2/g、または100~1000 m2/g、または50~800 m2/g、または50~600 m2/gの表面積を有することができる。本明細書で使用される粒子は、上記の間隔の任意組み合わせを有してもよい。例えば、シリカ粒子は2~100 nmの間の細孔径、0.1~3 cm3/gの細孔容積、100~1000 m2/gの表面積を有することができる。シリカ粒子は、2~50 nmの細孔径、0.5~1.5 cm3/gの細孔容積、および50~800 m2/gの表面積を有することができる。
【0110】
シリカ粒子は異なる形状を有していてもよい。粒子の形状は製法によって制御でき、球状、擬球状、円筒状、らせん状、棒(ロッド)状、繊維状、コアシェル状の粒子またはそれらの混合物であることができる。シリカ粒子は、実質的に球または擬球状であってもよい。
【0111】
シリカは任意のシリカであってよい。シリカは生分解性および/または崩壊性であることができる。シリカの例は非晶質シリカまたは合成非晶質シリカである。
【0112】
提供される粒子のMMADは0.5~15μmであることができる。肺深部への生物活性化合物の送達には、粒子のMMADは0.5~5μm、または0.5~3.5、または0.6~4、または0.75~3.5、または1~3μmであり、GSDは2.5未満、または2.2未満、または2.0未満、または1.8未満、または1.5未満、または1.2未満であり、そして少なくとも99.5%以上のFPFを有する。
【0113】
上肺、鼻、舌下または咽頭への生物活性化合物の送達には、粒子のMMADは、少なくとも5μm、または0.1~15μm、または5~12μm、または6.5~8.5、または7.5~9.5、または8.5~10.5、または9.5~11.5μmであり、GSDは2.5未満、または2.2未満、または2.0未満、または1.8未満、または1.5未満、または1.2未満であり、そして少なくとも99.0%のFPFを有する。
【0114】
粒子のGSDは、送達部位に左右されず、0.75~4、または1~2.5、または1~2、または1~1.5であることができる。
【0115】
質量密度は0.4未満、または0.15~0.35 g/cm3であることができる。
【0116】
微粒子画分(FPF)は、少なくとも60%、75%、80%、85%、90%、95%または99%であることができる。FPFは95~99%の間、または98~100%の間、または99.5~100%の間、または99.8~100%の間であることができる。
【0117】
本発明の方法で得られた粒子は、生物活性化合物の肺、鼻、舌下および/または咽頭への送達に適合した医薬組成物において使用することができる。
【0118】
医薬組成物は、0.01~85%、または0.05~80%、または0.1~70%、または10~60%、または25~58%少なくとも1つの生物活性化合物がロードされた複数の多孔質シリカ粒子を含むかまたはそれから成ることができ、ここでその百分率はロードされた粒子の総重量に占める割合である。上述のように、複数の生物活性化合物を粒子にロードしてもよい。あるいは、1つ以上の生物活性化合物を粒子の内側にまたは粒子の内側と表面上にロードしてもよい。
【0119】
医薬組成物中の多孔質シリカ粒子の濃度は、医薬組成物の総重量に基づいて5%(w/w)以上、または15%、20%、25%、30%、40%、50%、75%、85%、90%(w/w)であってもよい。
【0120】
診断目的には、シグナル伝達またはイメージング化合物が粒子の外表面上に存在するかまたは粒子の外表面に付着している粒子を使用することが有利な場合がある。イメージング化合物は、ガンマシンチグラフィー、または単光子放出コンピューター断層撮影法またはポジトロン放出断層撮影法(PET)、核磁気共鳴画像法(MRI)または蛍光イメージング等での画像化に適した標識薬剤またはトレーサーであることができる。
【0121】
医薬組成物は、吸入具で使用されてもよい。本発明は、特定の吸入具に限定されるものではなく、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)またはソフトミスト吸入器(SMI)であることができる。医薬組成物は、吸入具の内側で噴射剤と混合されてもよい。噴射剤は、炭化水素、フッ化炭素、水素含有フッ化炭素またはそれらの混合物を含む群より選択することができ、定量吸入器の作動時に効率的にエアロゾルを形成するのに十分な蒸気圧を有する。医薬組成物は、噴射剤を含まなくてもよく、または実質的に含まなくてもよい。
【0122】
組成物は、他の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤を更に含むか、またはそれから成ってもよい。例えば、界面活性剤、膨張剤、増量剤、接着改質剤、例えば、糖、脂質、アミノ酸、界面活性剤、ポリマー、吸収促進剤などを使用することができる。適当な医薬品賦形剤(担体、希釈剤、添加剤とも呼ばれる)は、「Pharmaceuticals - The Science of Dosage Form Designs」、M.E. Aulton、Churchill Livingstone、1988に記載されている。賦形剤の例は、PH-101などの微結晶セルロース、(例えば低置換度の)ヒドロキシプロピルセルロース、糖類、例えばマンニトール、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウムおよびシクロデキストリンである。医薬組成物は添加剤を含有しなくてもよくまたは実質的に添加剤を含まなくてもよい。
【0123】
生物活性化合物の肺送達用の医薬組成物は、ロードされた粒子の総重量の0.1~80%、または5~50%に少なくとも1つの生物活性化合物がロードされている複数の多孔質シリカ粒子、および所望により他の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤を含むことができ、そして所望により機能付与剤で表面改質されてもよく、ここで該粒子のMMADは0.5~5μmで、GSDは2.5未満、およびFPFは少なくとも99.5%である。該粒子は0.5~3.5μmのMMAD、1.5未満のGSD、および少なくとも99.8%のFPFを有することができる。
【0124】
生物活性化合物の舌下、鼻および/または咽頭への送達のための医薬組成物は、ロードされた粒子の総重量の0.1~80%、または5~50%に少なくとも1つの生物活性化合物がロードされている複数の多孔質シリカ粒子、および所望により他の医薬賦形剤、希釈剤または添加剤を含むことができ、そして所望により機能化剤で表面改質されてもよく、ここで該粒子のMMADは5~15μmで、GSDは2.5未満、およびFPFは少なくとも99.5%である。該粒子は8~12μmのMMAD、2未満のGSD、および少なくとも99.8%のFPFを有することができる。
【0125】
生物活性化合物の舌下送達のための医薬組成物は、ロードされた粒子の総重量の0.1~80%、または5~50%にロードされた複数の多孔質シリカ粒子と、少なくとも1つの生物活性化合物を含み、それにより前記シリカ粒子のMMADは少なくとも5μmで、GSDは2.5未満、およびFPFは少なくとも99.5%であり、および低置換度の多糖、例えばマンニトール、ステアリン酸塩、例えばステアリン酸マグネシウムおよびシクロデキストリンから選択された添加剤を含有するまたはそれから成ることができる。
【0126】
その剤形での生物活性化合物の総量は1~100 mg、または1~50 mg、または5~50 mg、または5~25 mgの間であることができる。
【0127】
剤形は必要な時にまたは1日1回もしくは2回投与することができる。
【0128】
生物活性化合物は、結晶質、非晶質または油性化合物でありうる。生物活性化合物は、溶媒、塩などに応じて結晶形と非晶質形の両方で存在することがある。少なくとも1種の生物活性化合物は、欧州薬局方第9版(Ph.Eur 9th Ed)に従って、10 mg/mL以上の25℃での水溶解度、または欧州薬局方第9版に従って1~10 mg/mlの25℃での水溶解度、または欧州薬局方第9版に従って1mg/mL未満の25℃での水溶解度を有することができる。複数の生物活性化合物が使用される場合、水溶解度は異なっていても同じでもよい。
【0129】
医薬組成物は、肺疾患の診断に使用できる。組成物は、局所および/または全身診断、疾患の予防および/または治療に使用することもできる。任意の肺疾患が適応症に含まれる。疾患は肺、鼻または咽頭の疾患であってよい。任意の肺疾患が適応症に含まれる。疾患(または疾病または状態)は、感染、炎症、COPD、喘息、癌、結核、重症急性呼吸器症候群、呼吸器合胞体ウイルス、インフルエンザ、天然痘、並びに薬剤耐性の呼吸器および全身感染症を含むまたはからなる群より選択することができる。
【0130】
生物活性化合物は、抗アレルギー薬、気管支拡張薬、肺サーファクタント、鎮痛薬、抗生物質、抗感染薬、ロイコトリエン阻害薬または拮抗薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、抗コリン薬、麻酔薬、抗結核薬、心血管作動薬、酵素、ステロイド、遺伝物質、ウイルスベクター、アンチセンス剤、タンパク質、ペプチドおよびそれらの組み合わせを含むまたはからなる群より選択することができる。生物活性化合物は、β2-アドレナリン作動薬、コルチコステロイド、非ステロイド薬、抗炎症薬、抗生物質、抗コリン作用薬、抗ウイルス薬、粘液溶解薬、プロスタサイクリン、β-遮断薬、抗感染薬、禁煙補助薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬、麻酔薬ペプチドおよびそれらの任意の組み合わせを含むまたはから成る群より選択することができる。
【0131】
生理活性化合物の例としては、フォルモテロール、フマル酸フォルモテロール吸入液、γ-フォルモテロール吸入液、サルブタモール、サルブタモール吸入液、(γ-サルブタモール)吸入液、ピルブテロール、硫酸メタプロテレノール、クレンブテロール、メタプロテレノール、テルブタリン、サルメテロール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、ビトルテロール、フェノテロール、ツロブテロール、アテノロール、サルメテロール(γ-サルブタモール)、ベクロメタゾン、シクレソニド、ブデソニド、ブデソニド吸入懸濁液、フルチカゾン、フルチカゾン吸入懸濁液、フニソリド、フルオコチンブチル、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン/フォルモテロール、フルチカゾン/サルメテロール、臭化イプラトロピウム/サルブタモール、フェノテロール/臭化イプラトロピウム、クロモリンナトリウム、トブラマイシン吸入液、コリスチン吸入液、アズトレオナム吸入液、モメタゾン、トブラマイシン、プランルカスト、ネドクロミル、アムレキサノクス、臭化チオトロピウム、臭化イプラトロピウム、エナラプリラート、エナラプリル、ザナミビル、リバビリン、臭化イプラトロピウム、テルブタリン
組換えヒトDNase、高張食塩水吸入液、クロモグリク酸ナトリウムまたはN-アセチルシステイン、またはそれらの混合物。
イロプロスト、メトプロロール、プロプラノロール、ペンタミジン、ニコチン、ロサルタン、セボフルラン、デスフルラン、エンフルラン、ハロタン、イソフルラン、またはそれらの混合物。
【0132】
生物活性化合物の例を下記の表1に列挙する。
【0133】
【表1】
【0134】
生物活性化合物は、ゲフィチニブ、デサチニブ、イマチニブ、ボスチニブ、ジクロフェナク(ナトリウム)、フェロジピン、インダパミド、イトラコナゾールおよびクエチアピンを含むまたはから成る群より選択される。生物活性化合物はクロファジミン(NC009)、OSU-03021(NC023)および葉酸(NC026)であってもよい。
【実施例
【0135】
実験
粒子の製造
ナノポーラスシリカの典型的合成は次の通りである:鋳型(テンプレート)としてのプルロニック123(トリブロック共重合体、E020P070E020、Sigma-Aldrich)(4 g)および膨張剤としての1,3,5-トリメチルベンゼン(TMB)(メシチレン、Sigma-Aldrich)(3.3 g)を、室温(RT)で3日間攪拌しながら127 mLの蒸留水と20 mLの塩酸(HCl、37%、Sigma-Aldrich)に溶かした。その溶液を40℃に予熱した後、9.14 mLのTEOS(オルトケイ酸テトラエチル、Sigma-Aldrich)を添加した。その混合物を500 rpmの速度で更に10分間攪拌し、次いで40℃で24時間維持した後、100℃のオーブン中で更に24時間熱水処理した。最後に、混合物を濾過し、洗浄し、室温で乾燥した。生成物をか焼して界面活性剤鋳型と膨張剤を除去した。1.5℃/分の昇温速度で600℃に加熱することによりか焼を行い、600℃で6時間維持した後、周囲条件にまで冷却した。得られる生成物は多孔質シリカ粒子を含む白色粉末である。
【0136】
粒子の分離例
100 gの原料のナノポーラスシリカを、53~42 m3/hに空気流が調整されそして2475~13500 rpmの速度に調整された空気分級機に供給し、11 gの微粒子(GSDの約10%未満のサイズを有する粒子)および8 gの粗粒子(GSDの約90%より上のサイズを有する粒子)を収集した。粒度分布D90/D10が4.5から1.8に狭められた。
【0137】
図2に示す通り、空気分級後にGSDは2.28から1.8に狭められ、これは空気分級機を使うことによって幾何学的標準偏差(GSD)が微調整できることを意味する。図4は、生物活性化合物がロードされたシリカ粒子のGSDが、未封入または空の(naked)シリカ粒子のGSDよりも狭くなることを示す。
【0138】
薬剤のローディング例
2 gのナノポーラスシリカを、2 gのNLAB化合物NC026を含む100 mLの濃メタノール溶液中に添加した。その混合物を40℃に加熱し、30分間攪拌した。メタノールを真空下で蒸発させた。質量でのローディング濃度は50%であった。
【0139】
2つの生物活性化合物を順番に同一粒子にロードした。生物活性化合物NC009とNC023がシリカ粒子中に好結果にロードされた。図3は、両生物活性化合物が多孔質シリカ粒子中にロードされたことを示す、熱重量分析(TGA)の結果を示す。
【0140】
実施例1:
100 mgのNLAB-シリカ粒子を、100 rpmの振盪速度で37℃にて浸透しながら500 mLの模擬肺液(SLF)に添加した。幾つかの時点でサンプルを採取し、ろ過した。Siの濃度を誘導結合プラズマ-原子発光分析法(ICP-AES)により測定した。
【0141】
異なる粒子径を有するが類似した細孔構造を有する図7のサンプルを比較し、粒子径がどのようにシリカの分解(崩壊)に影響を及ぼすかを調べた。12μmと3μmの粒子が同様な多孔度で同じ分解動力学を有することが分かった。
【0142】
実施例2:
500 mgのNLAB-シリカ粒子を、100 rpmの振盪速度で37℃にて浸透しながら500 mLの模擬肺液(SLF)に添加した。幾つかの時点でサンプルを採取し、ろ過した。Siの濃度を誘導結合プラズマ-原子発光分析法(ICP-AES)により測定した。
【0143】
図2は、異なる細孔構造がSLF中でのシリカの分解速度にとって重要なパラメータであることを示した。ケイ素のヒドロキシル基は、SLF中でのシリカの分解速度にわずかな変化を与えた。シリカの95%が24時間以内に完全に分解しうる。
【0144】
実施例3:
5~20 mgのロードした粒子または未ロードの粒子に、1つの1回分吸入器中に充填し、次いで模擬吸入デバイスにおいて吸引を行った。吸引前後にカプセル質量を量り、カプセル中に付着している粒子の残量を調べた。表2に示す通り、アミノ酸でコーティング(被覆)された粒子は、カプセル中に残存する粒子の量を大幅に減少させた。
【0145】
【表2】
【0146】
本発明は、開示された態様に限定されず、添付の特許請求の範囲内で変更または改変することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8