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特許7048652排気ガスサンプリングシステムのためのインテリジェントなバッグ充填
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】排気ガスサンプリングシステムのためのインテリジェントなバッグ充填
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20220329BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G01N1/22 G
G01N1/00 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020025257
(22)【出願日】2020-02-18
(62)【分割の表示】P 2018159102の分割
【原出願日】2013-05-28
(65)【公開番号】P2020079800
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】61/652,367
(32)【優先日】2012-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/791,635
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513243871
【氏名又は名称】エイヴィエル・テスト・システムズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・マーティン・シルヴィス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・パトリック・ウィリアムソン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0252864(US,A1)
【文献】特開2011-242194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 - 1/44
G01M 15/00 -15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(22)のための排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
希釈済み排気ガスを生成するために、その中で前記エンジン(22)からの排気ガスとメイクアップエアとが混合させられる希釈トンネル(12)と、
前記希釈済み排気ガスのサンプルを収集するよう構成された収集バッグ(40)を含む排気ガス収集ユニット(14)と、
前記希釈トンネル(12)と流体連通したサンプルプローブ(42,44,46)であって、テスト段階の間、前記収集バッグ(40)に対して、前記希釈済み排気ガスの一部を選択的に供給するよう機能できるサンプルプローブ(42,44,46)と、
コントローラ(18)であって、
前記テスト段階中に前記エンジン(22)がON状態であるとき、第1のサンプルプローブ(42,44,46)から前記収集バッグ(40)への前記希釈済み排気ガスの流れを許容し、
前記テスト段階中に前記エンジン(22)がOFF状態であるとき、前記少なくとも一つの収集バッグ(40)への前記メイクアップエアおよび充填ガス(60)の少なくとも一方の流れを選択的に抑止し、
前記テスト段階中に前記エンジン(22)がOFF状態であるとき、前記収集バッグ(40)への前記メイクアップエアおよび前記充填ガス(60)の少なくとも一方の流れを選択的に許容するよう構成されたコントローラ(18)と、
前記希釈済み排気ガスの排出濃度を特定するよう構成された分析器(20)であって、(a)前記サンプルプローブ(42,44,46)および前記収集バッグ(40)を接続する第2の流路および(b)前記収集バッグ(40)に前記充填ガス(60)を供給するための第3の流路から独立した第1の流路を介して前記排気ガス収集ユニット(14)に接続された分析器(20)と
を具備することを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18)は、前記テスト段階の補助的充填期間中、前記エンジン(22)が前記ON状態であるか、あるいは前記OFF状態であるかに関わらず、前記収集バッグ(40)への前記メイクアップエアおよび前記充填ガス(60)の少なくとも一方の流れを許容するよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項3】
請求項2に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18)は、前記テスト段階の前記補助的充填期間以外の前記テスト段階の期間中、前記エンジン(22)が前記OFF状態であるとき、前記収集バッグ(40)への前記メイクアップエアおよび前記充填ガス(60)の少なくとも一方の流れを抑止するよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18)は、前記収集バッグ内に収集されたサンプルガスの量と目標サンプル体積との比較に基づいて、前記エンジン(22)が前記ON状態であるか、あるいは前記OFF状態であるかに関わらず、前記テスト段階中、前記収集バッグ(40)への前記メイクアップエアおよび前記充填ガス(60)の少なくとも一方の流れを選択的に許容するよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18)は、
前記収集バッグ内に収集されたサンプルガスの量に基づいて、前記テスト段階の終了まで目標サンプル体積を収集するために、前記テスト段階の残り期間に関して、サンプリングをONにしなければならない前記テスト段階中のある時点を特定し、
前記時点から前記テスト段階の終了まで、前記エンジン(22)の状態に関係なく、前記収集バッグ(40)への前記メイクアップエアおよび前記充填ガス(60)の少なくとも一方の流れを許容するように構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18)は、前記分析器(20)の流量および前記テスト段階の持続期間に基づいて、目標サンプル体積を特定するよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項7】
請求項1に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18)は、
補助的充填期間以外の前記テスト段階の期間中、前記エンジン(22)が前記ON状態であるときのみ、前記収集バッグ(40)へのサンプルガスの流れを許容し、
前記テスト段階の補助的充填期間中、前記エンジン(22)が前記ON状態であるか、あるいは前記OFF状態であるかに関わらず、前記収集バッグ(40)への前記サンプルガスの流れを許容するよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項8】
請求項7に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18)は、前記補助的充填期間以外の前記テスト段階の期間中、前記エンジン(22)が前記OFF状態であるとき、前記収集バッグ(40)への前記サンプルガスの流れを抑止するよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記サンプルプローブ(42,44,46)と関連付けられた第1のバルブ(48,50,52)であって、前記少なくとも一つの収集バッグ(40)への前記希釈済み排気ガスの流れを許容する開状態と、前記少なくとも一つの収集バッグ(40)への前記希釈済み排気ガスの流れを抑止する閉状態との間で動作可能な第1のバルブ(48,50,52)をさらに備え、前記コントローラ(18)は、前記第1のバルブ(48,50,52)と通信可能であり、かつ、前記開状態と前記閉状態との間で前記第1のバルブ(48,50,52)の動作を制御するよう機能できることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記収集バッグ(40)内へのサンプルガスの流入を制御するための第2のバルブ(58)をさらに備えることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記コントローラ(18,114)は、
前記テスト段階のサンプル期間中、前記収集バッグへのサンプルガスの流れを許容するために、前記エンジンが前記ON状態であるときにのみ第2のバルブ(58)を開き、
前記テスト段階の補助的充填期間中、前記サンプルガスの流れを許容するために、前記エンジンがON状態であるか、あるいはOFF状態であるかに関わらず、前記第2のバルブ(58)を開くよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記収集バッグ(40)が前記希釈済み排気ガスを収集する間、前記メイクアップエアを収集するよう構成されたバックグラウンド収集バッグ(70)を含むバッググラウンド収集ユニット(16)と、
前記バックグラウンド収集バッグ(70)内への前記メイクアップエアの流れを制御するための第3のバルブ(78)と、をさらに具備し、
前記コントローラ(18)は、前記エンジン(22)が前記ON状態であるか、あるいは前記OFF状態であるかに関わらず、前記テスト段階の補助的充填期間中、前記収集バッグ(40)および前記バックグラウンド収集バッグ(70)が前記メイクアップエアで満たされることを可能とするために、第2のバルブ(58)および第3のバルブ(78)を開くよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
前記収集バッグ(40)へと流れる前記メイクアップエアをベントするよう動作可能な第4のバルブ(57)と、バックグラウンド収集バッグ(70)へと流れる前記メイクアップエアをベントするよう動作可能な第5のバルブ(73)と、をさらに具備し、
前記コントローラ(18)は、前記第4のバルブ(57)および前記第5のバルブ(73)が最小サンプル体積(18)を得るために閉じられなければならない前記テスト段階中のある時点まで、前記エンジンが前記OFF状態にある間、前記第4のバルブ(57)および前記第5のバルブ(73)を開状態で維持するよう構成されることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項14】
請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、サンプルガスは、前記メイクアップエア、前記充填ガス(60)および前記希釈済み排気ガスの少なくとも一つを含むことを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【請求項15】
請求項1ないし請求項14のいずれか1項に記載の排気ガスサンプリングシステム(10,10a)であって、
補助的充填期間は前記テスト段階の終了時であることを特徴とする排気ガスサンプリングシステム(10,10a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年3月15日付けで出願された米国特許予備出願第61/791,635号明細書の優先権、および、2012年5月29日付けで出願された米国特許予備出願第61/652,367号明細書の優先権、を主張するものである。これら文献の記載内容は、参考のためここに組み込まれる。
【0002】
本出願は、排気ガスサンプリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
この背景技術の項においては、必ずしも従来技術というわけではないものの、本発明が関連する背景情報について説明する。
【0004】
排気ガスサンプリングシステムは、従来より、使用時にエンジンによって生成された排出質量を決定するために、エンジンに関連して、あるいは、内燃エンジンを備えた車両に関連して、使用されてきた。そのような排気ガスサンプリングシステムは、特定のエンジンの排出質量を決定するために、希釈された排気ガスを抽出して分析するための、一定容量サンプラー(constant volume sampler, CVS)あるいはバッグ式ミニ希釈器(bag mini-diluter,BMD)を備えることができる。
【0005】
CVSシステムの動作時には、例えば、エンジンからの排気ガスが、補充ガス(メイクアップガス)すなわち希釈剤によって希釈され、希釈済み排気ガスサンプルが、比例的に抽出され、1つまたは複数のサンプルバッグ内に格納される。エンジンサイズや車両サイズや駆動サイクルや負荷サイクルや外部雰囲気条件に応じて、補充ガスとエンジン排気ガスとの双方を含むCVS合計流量が選択され、これにより、サンプリング時に抽出される際に、また、バッグ内に格納される際に、また、サンプリング後に分析される際に、希釈済み排気ガスサンプルが水を凝縮しないものとされる。サンプルバッグが、希釈済み排気ガスによって充填された後には、格納バッグの内容物を分析することができ、これにより、特定のエンジンに関してテスト期間中に排出された排出質量を決定することができる。
【0006】
従来的な燃焼エンジン式パワートレインを備えた車両は、パワートレインの内燃エンジンを連続的に駆動し、その結果、従来的な車両パワートレインに関連した内燃エンジンは、テスト期間中にはすなわちサンプリング期間中には、連続的に駆動される。その結果、CVSシステムによる、希釈済み排気ガスの収集は、同様に、テスト期間中にわたって連続的なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両の動作時に内燃エンジンを断続的に使用する新たなパワートレインが開発されている。例えば、ハイブリッド型の電気車両は、車両のバッテリの再充電時には、内燃エンジンだけを使用することができる。そのようなパワートレインは、CVSサンプリングシステムとBMDサンプリングシステムとの双方に関して課題を課す。なぜなら、各システムが、従来より、サンプリングフェーズの全体にわたって動作するような内燃エンジンからの希釈済み排気ガスの分析のためにサンプルを収集するようにしか構成されていないからである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この項においては、本発明のすべての特徴点を開示するわけではなく、本発明の一般的な概要について説明する。
【0009】
エンジンのための排気ガスサンプリングシステムが提供される。排気ガスサンプリングシステムは、排気ガスの供給源と;排気ガスを選択的に受領する少なくとも1つの収集バッグを有した排気ガス収集ユニットと;排気ガスの供給源に対して流体連通していて、少なくとも1つの収集バッグに対して排気ガスを選択的に供給するように動作する第1サンプルプローブと;を具備することができる。排気ガスサンプリングシステムは、さらに、第1状態においては第1サンプルプローブから収集バッグに対して排気ガスを流れさせ得るように動作するとともに、第2状態においては第1サンプルプローブから収集バッグに対して排気ガスを流れさせ得ないように動作するコントローラを具備することができる。コントローラは、サンプリング期間中におけるエンジンのON時間に基づいて、第1サンプルプローブの抽出速度を決定することができる。
【0010】
他の構成においては、エンジンまたは車両のための排気ガスサンプリングシステムが提供される。排気ガスサンプリングシステムは、エンジンからの排気ガスと補充エアとを含有してなる希釈済み排気ガスの供給源と;希釈済み排気ガスを選択的に受領する少なくとも1つの収集バッグを有した排気ガス収集ユニットと;希釈済み排気ガスの供給源に対して流体連通した第1サンプルプローブであるとともに、少なくとも1つの収集バッグに対して希釈済み排気ガスを選択的に供給するように動作する第1サンプルプローブと;を具備することができる。排気ガスサンプリングシステムは、さらに、第1状態においては第1サンプルプローブから少なくとも1つの収集バッグに対して希釈済み排気ガスを流れさせ得るように動作するとともに、第2状態においては第1サンプルプローブから少なくとも1つの収集バッグに対して希釈済み排気ガスを流れさせ得ないように動作するコントローラを具備することができる。コントローラは、サンプリング期間中には少なくとも1つの収集バッグに対して補充エアを選択的に供給することができる。
【0011】
さらに他の構成においては、エンジンまたは車両のための排気ガスサンプリングシステムが提供される。排気ガスサンプリングシステムは、排気ガスの供給源と;排気ガスを選択的に受領する少なくとも1つの収集バッグを有した排気ガス収集ユニットと;排気ガスの供給源に対して流体連通した第1サンプルプローブであるとともに、少なくとも1つの収集バッグに対して排気ガスを選択的に供給するように動作する第1サンプルプローブと;充填ガスの供給源と;を具備することができる。排気ガスサンプリングシステムは、さらに、第1状態においては第1サンプルプローブから少なくとも1つの収集バッグに対して排気ガスを流れさせ得るように動作するとともに、第2状態においては第1サンプルプローブから少なくとも1つの収集バッグに対して排気ガスを流れさせ得ないように動作するコントローラを具備することができる。コントローラは、サンプリング期間中には少なくとも1つの収集バッグに対して充填ガスを供給することができる。
【0012】
本発明のさらなる応用分野は、本開示により明らかとなるであろう。この項内における説明および特定の実施形態は、例示のためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【0013】
添付図面は、選択されたいくつかの実施形態を例示するためのものに過ぎず、すべての可能な態様を図示しているわけではない。また、添付図面は、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の原理によるCVSサンプリングシステムを概略的に示す図である。
図2】本発明の原理によるCVSサンプリングシステムを概略的に示す図である。
図3】内燃エンジンのテストサイクルに関し、時間に対して、排ガス流量を示すグラフである。
図4】内燃エンジンのテストサイクルに関し、時間に対して、排ガス流量を示すグラフであって、テストサイクル時に排気ガスサンプルが採取されるタイミングがハイライトされている。
図5】内燃エンジンのテストサイクルに関し、時間に対して、排ガス流量を示すグラフであって、テストサイクル時に行われる補助的充填期間がハイライトされている。
図6】本発明の原理によるBMDサンプリングシステムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
様々な図面にわたって、対応する参照符号は、対応する構成部材を示している。
【0016】
以下においては、添付図面を参照しつつ、例示としてのいくつかの実施形態について詳細に説明する。
【0017】
例示としてのいくつかの実施形態は、当業者に対して本発明の範囲を伝えるようにして、提供される。本発明の様々な実施形態の完全な理解を提供し得るよう、例えば特定の構成部材やデバイスや方法といったような様々な特定の詳細が提示される。当業者であれば、それらの特定の詳細が必須ではないこと、また、例示としてのいくつかの実施形態を他の様々な態様でも具現し得ること、さらに、それら実施形態が本発明の範囲を制限することを意図したものではないことを、理解されるであろう。いくつかの例示としての実施形態においては、周知のプロセスや周知のデバイス構成や周知の技術について、詳細な説明が省略されている。
【0018】
本明細書内で使用されている用語は、特定の例示としてのいくつかの実施形態を説明する目的のみで使用されており、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書においては、「1つの」という単数形の態様は、特に断らない限り、複数形の態様をも包含することができる。「有する」や「備える」や「具備する」という用語は、包括的なものであり、したがって、記載された特徴点や数やステップや動作や構成要素や構成部材の存在を特定するものである。しかしながら、1つまたは複数の他の特徴点や数やステップや動作や構成要素や構成部材やそれらグループの存在や追加を除外するものではない。本明細書に記載された方法的ステップやプロセスや動作は、特に指定されない限り、その順序を必須とするものではない。追加的なステップや代替的なステップを使用し得ることは、理解されるであろう。
【0019】
構成部材または層が、他の構成部材または層に対して、「上に位置している」や「係合している」や「連結されている」と称された場合には、他の構成部材または層に対して、直接的に、上に位置していたり係合していたり連結されていたりすることができる、あるいは、中間に介在する構成部材または層が存在することができる。これに対し、構成部材が他の構成部材または層に対して、「直接的に上に位置している」や「直接的に係合している」や「直接的に連結されている」と称された場合には、中間に介在する構成部材または層は、存在しない。構成部材防止の間の関係を記載するために使用される他の用語(例えば、「~の間」と「直接的に~の間」、「隣接して」と「直接的に隣接して」、等)は、同様に解釈されるべきである。本明細書においては、「および/または」という用語は、関連して列挙された複数の構成部材に関しての、任意の組合せおよびすべての組合せを包含している。
【0020】
第1や第2や第3という用語は、本明細書においては、様々な構成部材や構成要素や領域や層や部分を記述するために使用されるけれども、それら構成部材や構成要素や領域や層や部分は、それら第1や第2や第3という用語によって制限されるものではない。それら第1や第2や第3という用語は、ある構成部材や構成要素や領域や層や部分を、他の構成部材や構成要素や領域や層や部分から区別するためだけに使用されている。例えば「第1」や「第2」等といったような用語は、本明細書において使用されたときには、特に指示がない限りは、順番や順序を表すものではない。よって、以下の説明においては、第1構成部材や第1構成要素や第1領域や第1層や第1部分は、例示としての実施形態から逸脱することなく、第2構成部材や第2構成要素や第2領域や第2層や第2部分と読み替えることができる。
【0021】
例えば「内」や「外」や「直下」や「下方」や「下」や「上方」や「上」等といったような空間的位置関係を表す用語は、本明細書においては、図示されたような、ある構成部材またはある特徴点と、他の構成部材または他の特徴点と、の間の位置関係を表すために使用することができる。空間的位置関係を表す用語は、図示された配向関係以外の、使用時や動作時におけるデバイスの他の配向関係をも包含することができる。例えば、図示されたデバイスの上下がひっくり返されたときには、他の構成部材または特徴点に対して「下」または「直下」として記載された構成部材は、他の構成部材または特徴点に対して「上」の配向関係となる。よって、例示するならば、「下」という用語は、上と下との双方の配向関係を包含することができる。その他にも、デバイスは、他の配向性(90°回転した配向性、あるいは、他の配向性)で配向することができる。本明細書においては、空間的位置関係を表す用語は、このように解釈されるべきである。
【0022】
図1には、排気ガスサンプリングシステム10が図示されている。排気ガスサンプリングシステム10は、希釈トンネル12と、排気ガス収集ユニット14と、バックグラウンド収集ユニット16と、コントローラ18と、分析器20と、を具備することができる。詳細に後述するように、排気ガス収集ユニット14は、希釈トンネル12から希釈済み排気ガスを収集し、分析器20に対して希釈済み排気ガスのサンプルを提供する。分析器20は、希釈済み排気ガスサンプルの排出濃度を決定することができる。
【0023】
希釈トンネル12は、エンジン22に対して流体連通可能に連結することができ、エンジン22からの排気ガスのストリームを受領することができる。一実施形態においては、エンジン(22)は、内燃エンジン(internal combustion engine, ICE)とされ、電気的に駆動されるパワートレイン(図示せず)を備えた車両において使用することができる。希釈トンネル12は、さらに、補充エア導入口24に対しても流体連通可能に連結することができる。補充エア導入口24は、希釈トンネル12に対して補充エアを供給する。補充エア導入口24は、フィルタ26を備えることができる。フィルタ26は、エアストリームが希釈トンネル12内へと流入する前に、エアストリームから不純物を除去する。
【0024】
混合プレート28を、希釈トンネル12内に配置することができる。混合プレート28は、貫通して形成された開口すなわち穴30を有することができる。開口30は、混合プレート28の本体と協働することにより、混合プレート28の開口30を通してエアが流出する際に、導出口24から希釈トンネル12内へと流入したエアを混合することができる。したがって、エンジン22からの排気ガスは、補充エア導入口24から希釈トンネル12内へと受領された補充エアと、混合される。これにより、補充エアと排気ガスとの実質的に一様な混合物が、熱交換器32へと供給される。熱交換器32は、混合プレート28の下流側に配置することができる。
【0025】
熱交換器32は、希釈トンネル12の長さに沿って配置することができる。熱交換器32を使用することにより、排気ガスと補充エアとの混合物を所望の温度に維持することができる。混合物の温度は、熱交換器32の下流側に配置された温度センサによってあるいは他の測定デバイス34によって、決定することができる。
【0026】
ポンプ36を、希釈トンネル12のうちの、補充エア導入口24とは反対側の端部のところにおいて、希釈トンネル12に対して流体連通可能に連結することができる。ポンプ36は、希釈トンネル12に対して流体圧力を印加することができる。これにより、フィルタ26を通して、補充エア導入口24内のエアを抽出することができる。補充エア導入口24に対して印加された負圧により、補充エアは、希釈トンネル12内へと流入し、エンジン22からの排気ガスと混合される。より詳細には、補充エアに対しておよびエンジン22からの排気ガスに対して印加された負圧により、排気ガスおよび補充エアは、混合プレート28のところで互いに遭遇し、開口30を通して流れる。そうすることにより、補充エアおよび排気ガスは、混合される。したがって、実質的に一様な混合物が熱交換器32に対しておよび温度センサ34に対して供給される。補充エアと排気ガスとの一様な混合物は、その後、ポンプ36の開口38を通して、希釈トンネル12から抽出される。
【0027】
さらに図1に示すように、排気ガス収集ユニット14は、希釈トンネル12に対して流体連通可能に連結することができる。排気ガス収集ユニット14は、希釈トンネル12内を流れている希釈済み排気ガス(すなわち、補充エアと排気ガスとの一様な混合物)の一部を受領することができる。排気ガス収集ユニット14は、希釈済み排気ガスが分析器20によって分析される前に、希釈済み排気ガスの一部を受領して格納することができる。
【0028】
排気ガス収集ユニット14は、希釈済み排気ガスを内部に格納するための1つまたは複数のサンプルバッグ40を備えることができる。サンプルバッグ40は、1つまたは複数のサンプルプローブに対して流体連通可能に連結することができる。サンプルプローブは、希釈トンネル12に対して流体連通可能に連結されている。図1に示すように、サンプルプローブは、第1サンプルプローブ42と、第2サンプルプローブ44と、第3サンプルプローブ46と、を備えることができる。サンプルプローブ42,44,46は、互いに同じものとすることができる。よって、各サンプルプローブ42,44,46のうちの、希釈トンネル12の内部から希釈済み排気ガスの流れを受領するためのノズル(参照符号は付されていない)は、実質的に互いに同じものである。言い換えれば、それらノズルどうしは、実質的に互いに同じ直径を有しており、各サンプルプローブ42,44,46が受領する流速は、実質的に互いに同じである。これとは逆に、サンプルプローブ42,44,46は、互いに異なる直径のノズルを有することができる。その場合には、各サンプルプローブ42,44,46の内径が異なるものとされ、これにより、各サンプルプローブ42,44,46は、互いに異なるサンプル抽出流速をもたらすこととなる。最後に、サンプルプローブ42,44,46は、互いに異なる直径を有することができて、異なる抽出流速をもたらすことができるけれども、サンプルプローブ42,44,46のうちの2つを同じ直径のものとして同じ抽出流速をもたらすことができる。その場合には、3つのサンプルプローブ42,44,46のうちの、残りの1つは、異なる直径を有することとなり、異なる抽出流速をもたらす。様々なサンプルプローブ42,44,46の特定の構成にかかわらず、サンプルプローブ42,44,46は、希釈トンネル12から希釈済み排気ガスサンプルを抽出し、希釈済み排気ガスからなる抽出サンプルを、格納のためのサンプルバッグ40へと供給することができる。
【0029】
サンプルプローブ42,44,46の各々には、制御バルブを設けることができる。制御バルブは、サンプルプローブ42,44,46からサンプルバッグ40への希釈済み排気ガスの流れを制御する。とりわけ、第1サンプルプローブ42は、第1制御バルブ48に対して流体連通可能に連結することができ、第2サンプルプローブ44は、第2制御バルブ50に対して流体連通可能に連結することができ、第3サンプルプローブ46は、第1制御バルブ52に対して流体連通可能に連結することができる。制御バルブ48,50,52は、サンプルプローブ42,44,46のそれぞれからサンプルバッグ40への希釈済み排気ガスの流れを制御する。制御バルブ48,50,52は、例えばソレノイド駆動されるバルブとすることができ、開状態と閉状態との間において移動可能とすることができる。これに代えて、1つまたは複数の制御バルブ48,50,52は、ステッパバルブとすることができ、開状態から閉状態に向けて段階的に移動可能とすることができる。言い換えれば、1つまたは複数の制御バルブ48,50,52は、可変バルブとされ、完全な開状態と完全な閉状態との間において任意の数の開状態を有している。これにより、1つまたは複数の制御バルブ48,50,52に対して、調節可能性が提供されている。したがって、1つまたは複数の制御バルブ48,50,52が、ステッパバルブを備えているならば、制御バルブ48,50,52は、希釈トンネル12からサンプルバッグ40への希釈済み排気ガスの流れを計測することができ、希釈済み排気ガスの抽出流速を微細に制御することができ、究極的には、テスト期間中にまたはサンプリング期間中にサンプルバッグ40によって受領される希釈済み排気ガスの量を微細に制御することができる。
【0030】
希釈済み排気ガスは、サンプルプローブ42,44,46によって受領することができ、ポンプ54によって制御バルブ48,50,52を通して抽出することができる。より詳細には、ポンプ54は、制御バルブ48,50,52の下流側に配置することができ、サンプルプローブ42,44,46に対して負圧を印加することができ、これにより、希釈済み排気ガスを、サンプルプローブ42,44,46から、制御バルブ48,50,52を通して、抽出することができる。
【0031】
制御バルブ48,50,52を通して抽出された希釈済み排気ガスは、さらに、サンプルバッグ40によって受領される前に、流量計56を通して流れることができる。希釈済み排気ガスは、1つまたは複数のサンプルバッグ40によって受領される。この場合、それぞれのサンプルバッグ40内への希釈済み排気ガスの流れは、各サンプルバッグ40の上流側に配置された制御バルブ58によって制御される。
【0032】
サンプルバッグ40は、サンプルプローブ42,44,46および制御バルブ48,50,52を介して希釈トンネル12から希釈済み排気ガスを受領するものとして図示され説明されているけれども、サンプルバッグ40は、追加的に、テスト期間中またはサンプリング期間中の任意の時点で充填ガス60を受領することができる。充填ガス60は、サンプルバッグ40によって受領される前に、ポンプ64によって流量計62を通して抽出することができる。充填ガス60は、流量計62へと到達する前に、制御バルブ66を通して流れることができるとともに、サンプルバッグ40によって受領される前に、制御バルブ68を通して流れることができる。制御バルブ66は、流量計62に対して充填ガス60を流れさせ得る開状態と、流量計62に対して充填ガス60を流れさせ得ない閉状態と、の間にわたって選択的に移動することができる。充填ガス60は、制御バルブ68が開状態とされた際にはサンプルバッグ40へと流入することができる。しかしながら、充填ガス60は、制御バルブ68が閉状態とされた際には、サンプルバッグ40内へと流入することが禁止される。
【0033】
図1に示すように、コントローラ18を、流量計62とポンプ64と制御バルブ66とに対して通信可能に接続することができる。これにより、テスト期間中にあるいはサンプリング期間中にサンプルバッグ40に対して供給される充填ガス60の量を制御することができる。例えば、テスト期間中にあるいはサンプリング期間中にサンプルバッグ40に対して供給される希釈済み排気ガスの量が、排気ガス内に含有された排出質量を分析器20が決定するには不十分である場合には、コントローラ18は、多くの量の充填ガス60をサンプルバッグ40に対して供給し得るよう、ポンプ64を励起し得るとともに、制御バルブ66を開くことができる。充填ガス60は、サンプルバッグ40内に供給された希釈済み排気ガスに対して混合され、各サンプルバッグ40内の量を補充するように機能することができる。さらに、充填ガス60は、清浄な乾燥ガスとすることができる。このことは、サンプルバッグ40内において凝集が起こる傾向を低減する。
【0034】
排気ガス収集ユニット14によって収集された希釈済み排気ガス内に含有されている排出質量を分析器20が決定するに際しては、バックグラウンド収集ユニット16を使用することができる。より詳細には、分析器20は、補充エア導入口24から希釈トンネル12へと供給された補充エアからなるサンプルを分析することができる。これにより、分析器20は、補充エア導入口24から供給された補充エア内のバックグラウンド汚染物質をカウントすることができる。補充エア内のバックグラウンド汚染物質のカウントにより、分析器20は、補充エア内に含有されている粒状物質を排出質量の一部として不適切にカウントすることなく、希釈済み排気ガスサンプル内に含有されている排出質量の正確な測定を行うことができる。
【0035】
バックグラウンド収集ユニット16は、1つまたは複数のサンプルバッグ70と、ポンプ72と、制御バルブ74と、を備えることができる。ポンプ72は、制御バルブ74が開状態とされているときには、制御バルブ74を通してフィルタ26から補充エアを抽出することができる。ポンプ72によってフィルタ26から抽出された補充エアは、サンプルバッグ70へと供給する前に、流量計76を通して案内することができる。補充エアは、流量計76を通して流れることができ、収集のためにサンプルバッグ70へと供給される。サンプルバッグ70には、供給バルブ78が付設されている。制御バルブ78は、1つまたは複数のサンプルバッグ70内への補充エアの流入を選択的に可能とする。
【0036】
引き続き図1に示すように、分析器20は、排気ガス収集ユニット14に対して流体連通可能に連結されたものとして、および、バックグラウンド収集ユニット16に対して流体連通可能に連結されたものとして、図示されている。したがって、分析器20は、排気ガス収集ユニット14から希釈済み排気ガスサンプルを受領し得るとともに、バックグラウンド収集ユニット16から補充エアサンプルを受領することができる。
【0037】
分析器20は、ポンプ80によってユニット14,16内の流体に負圧を印加することにより、排気ガス収集ユニット14から希釈済み排気ガスサンプルを受領することができる、および/または、バックグラウンド収集ユニット16から補充エアサンプルを受領することができる。ポンプ80は、排気ガス収集ユニット14に付設された1つまたは複数の制御バルブ82が開状態とされたときには、排気ガス収集ユニット14から希釈済み排気ガスサンプルを受領することができる。同様に、ポンプ80は、バックグラウンド収集ユニット16に付設された1つまたは複数の制御バルブ84が開状態とされたときには、バックグラウンド収集ユニット16から補充エアサンプルを抽出することができる。希釈済み排気ガスサンプルあるいは補充エアサンプルは、それぞれ対応するユニット14,16から抽出することができ、分析器20へと到達する前に、制御バルブ86および流量計88を通して流れることができる。分析器20が、排気ガス収集ユニット14から希釈済み排気ガスサンプルを受領した後には、および/または、バックグラウンド収集ユニット16から補充エアサンプルを受領した後には、分析器20は、希釈済み排気ガスサンプル内に含有されている排出質量を、および/または、補充エアサンプル内に含有されている粒状物質の量を、決定することができる。
【0038】
引き続き図1を参照して、排気ガスサンプリングシステム10につき、詳細に説明する。排気ガスサンプリングシステム10の以下の動作は、コントローラ18によって行うことができる。図1には詳細に図示されていないけれども、コントローラ18は、温度センサ34と、ポンプ36,54,64,72,80と、制御バルブ48,50,52,58,66,68,74,82,84,86と、流量計56,62,76と、に対して通信可能に接続することができる。したがって、コントローラ18は、温度センサ34からおよび流量計56,62,76から、動作データを受領し得るとともに、以下の情報を使用することにより、希釈トンネル12内の希釈済み排気ガス内に含有されている排出質量の正確な測定が分析器20において得られるように、ポンプ36,54,64,72,80をおよび制御バルブ48,50,52,58,66,68,74,82,84,86を、制御することができる。
【0039】
コントローラ18は、任意の数のテスト期間あるいはサンプリング期間を有した任意の数のテスト手順を実行し得るようにプログラムすることができる。例えば、コントローラ18は、様々なポンプ36,54,64,72,80および様々な制御バルブ48,50,52,58,66,68,74,82,84,86を制御することによって、505秒間というサンプリング期間にわたって希釈トンネル12から希釈済み排気ガスをサンプリングすることができる。任意の長さのテスト期間あるいはサンプリング期間を有した任意の数のテスト手順を行い得るけれども、以下においては、505秒間という例示としてのテスト期間に関して説明する。
【0040】
コントローラ18は、時間ゼロにおいてサンプリング期間を開始することができる。時間ゼロにおいてエンジン22が動いていない場合には、コントローラ18は、バルブ48,50,52を開状態へと移動させることができ、ポンプ54を励起して、希釈トンネル12から抽出された補充エアをベントすることができる。より詳細には、コントローラ18は、エンジン22がOFF状態とされているときには、ポンプ54の下流側のバルブ57を開状態として、希釈トンネル12から抽出した補充エアをベントする(すなわち、排出する)ことができる。さらに、コントローラ18は、バルブ89を開状態としてポンプ90を励起することによって、サンプルバッグ40が完全に空であることを確保することができる。ポンプ90を使用することにより、サンプリング期間の開始前に、サンプルバッグ40内のすべてのエアを排気することができる。
【0041】
コントローラ18は、エンジン22がOFF状態の際には、ポンプ54を励起状態に維持し得るとともに、バルブ48,50,52を開状態に維持することができる。コントローラ18は、同様に、エンジン22がOFF状態の際には、ポンプ72を励起状態に維持し得るとともに、バルブ74を開状態に維持することができる。エンジン22がOFF状態の際にサンプルプローブ42,44,46によって希釈トンネル12から抽出された補充エアの場合と同様に、エンジン22がOFF状態の際にポンプ72によって抽出された補充エアは、ポンプ72の下流側に配置されたバルブ73を開状態とすることによって、ベントすることができる。
【0042】
コントローラ18は、エンジン22の動作を観測するセンサ92に対して通信可能に接続することができる。これに加えてあるいはこれに代えて、コントローラ18は、例えばテストサイクルを制御するコンピュータまたはコントローラ(すなわち、テスト自動化システム)といったような他のシステムから、あるいは、テスト中の車両のCANバスあるいはOBD(on-board data)から、エンジン22の状態(すなわち、ONあるいはOFF)を受領することができる。コントローラ18がエンジン22の状態を決定する手法にかかわらず、コントローラ18は、エンジン22がON状態であることを知らせる信号をコントローラ18がセンサ92から受領するまで、バルブ57,73を開状態に維持することができる。この時点で、コントローラ18は、バルブ57,73を閉塞することができ、これにより、希釈トンネル12から抽出された補充エアのベントを停止させることができる。
【0043】
コントローラ18は、テスト期間中あるいはサンプリング期間中には、センサ92から報告されたエンジン22がONとされた時間を記録することができる。すなわち、コントローラ18は、サンプリング時間の開始時に記録されたゼロ時間からの経過時間を決定することができ、これにより、エンジンがONとされる前にサンプリング中にどれくらいの時間が経過したかを決定することができる。コントローラ18は、詳細に後述するように、エンジン22のON時間を記録して利用することにより、所望の希釈比率でもって十分な量がサンプルバッグ40内に収集されることを確保することができる。
【0044】
コントローラ18は、サンプルバッグ40のサイズに基づいて、サンプルバッグ40に関するサンプル流速を決定することができる。すなわち、コントローラ18は、エンジン22がサンプリング時間の全体にわたって動いている場合に、サンプルバッグ40を充填するのに必要なサンプル流速を決定することができる。サンプル充填流速は、収集期間の長さ(すなわち、この例においては、505秒間)によって、および、サンプルバッグ40の容量によって、決定することができる。サンプル充填流速は、サンプルバッグ40の容量(すなわち、最大の目標充填容量)をサンプリング期間の長さ(505秒間)で割り算することによって、決定することができる。
【0045】
上述したように、コントローラ18は、センサ92によって表示されるようにエンジン22がON状態へと移行した際には、バルブ57,73を閉塞するのみである。エンジン22が動いていない場合には(すなわち、エンジン22がOFF状態の場合には)、バルブ57,73は、開状態とされ、これにより、希釈トンネル12から抽出された補充エアをベントすることができる。したがって、エンジン22がOFF状態であってなおかつバルブ57,73が開状態とされている場合には、排気ガス収集ユニット14およびバックグラウンド収集ユニット16は、それぞれのサンプルバッグ40,70内にサンプルを収集することがない。
【0046】
エンジン22がサンプリング時間の全体にわたってON状態である場合には、コントローラ18は、ポンプ54,72を同時に励起することができ、さらに、バルブ48,50,52,74を開状態とすることができる。これにより、排気ガス収集ユニット14のサンプルバッグ40は、希釈済み排気ガスサンプルを収集することができ、バックグラウンド収集ユニット16のサンプルバッグ70は、補充エアサンプルを収集することができる。エンジン22がON状態のままである場合には、ポンプ54,72は、励起状態に維持され、バルブ48,50,52,74は、開状態に維持される。
【0047】
エンジン22がON状態であることをセンサ92が知らせている場合には、コントローラ18は、排気ガス収集ユニット14のサンプルバッグ40が十分な量の希釈済み排気ガスを受領するのに必要な流速を決定するとともに、バックグラウンド収集ユニット16のサンプルバッグ70が十分な量の補充エアを受領するのに必要な流速を決定する。これに代えて、コントローラ18は、エンジン22がON状態であることをセンサ92が知らせるまでは、流速を連続的に計算して調節することができる。
【0048】
分析器20が、排気ガス収集ユニット14から受領した希釈済み排気ガスサンプルを分析し得るよう、また、バックグラウンド収集ユニット16から受領した補充エアサンプルを分析し得るよう、排気ガス収集ユニット14のサンプルバッグ40は、十分な量の希釈済み排気ガスを受領しなければならず、バックグラウンド収集ユニット16のサンプルバッグ70は、十分な量の補充エアを受領しなければならない。排気ガス収集ユニット14のサンプルバッグ40によって受領された希釈済み排気ガスの量は、希釈トンネル12内における希釈済み排気ガスの流速に基づいて、また、サンプルプローブ42,44,46の抽出流速に基づいて、決定される。コントローラ18が、エンジン22がON状態である場合にはバルブ58だけを開いて希釈トンネル12から希釈済み排気ガスを収集することのために、505秒間というサンプリング期間において、短時間だけエンジン22がON状態である場合には、不十分な量の希釈済み排気ガスしか収集することができない。
【0049】
コントローラ18は、希釈トンネル12からの希釈済み排気ガスのサンプリングがエンジン22の状態(すなわち、ONまたはOFF)にかかわらず分析器20にとって必要な最少量であることを確保する。つまり、コントローラ18は、コントローラ18によって要求された最少量が得られるよう、サンプリング期間のうちのバルブ57,73が閉状態とされる必要がありなおかつバルブ58,78が開状態とされる必要がある時点までは、バルブ58,78を閉状態に維持しなおかつバイパスバルブ57,73を開状態に維持する。言い換えれば、エンジン22がOFF状態であったとしても、サンプリング期間の開始から所定時間が経過するまでは、コントローラ18は、バイパスバルブ57,73を閉塞し得るとともにバルブ58,78を開放することができる。これにより、サンプルバッグ40を、希釈トンネル12内を流れる補充エアで充填し得るとともに、サンプルバッグ70を、補充エアで充填することができる。
【0050】
これに加えてあるいはこれに代えて、コントローラ18は、ポンプ54を停止状態に維持し得るとともに、バルブ48,50,52を閉状態に維持することができ、さらに、ポンプ64を励起して、充填ガス60をサンプルバッグ40内に流入させることができる。したがって、サンプルバッグ40は、サンプリング期間中には、充填ガス60によって充填することができる。コントローラ18は、サンプルバッグ40を希釈トンネル12からの補充エアによって充填するものとして、あるいは、サンプルバッグ40を充填ガス60によって充填するものとして、説明されたけれども、コントローラ18は、サンプルバッグ40を、希釈トンネル12からの補充エアと充填ガス60との双方によって充填することができる。また、コントローラ18は、サンプルバッグ40を、希釈トンネル12からの補充エアによってあるいは充填ガス60によって、少なくとも部分的に充填することができる。これにより、サンプルバッグ40を、分析器20がサンプルバッグ40内の内容物を分析するに際しての最少量を有したものとすることができる。分析器20にとって必要な最少のサンプル量は、分析器20の流速によっておよびサンプリング期間の長さによって、予め決定することができる。要するに、コントローラ18は、サンプリング期間中には、サンプルバッグ40に対して、希釈トンネル12からの補充エアと充填ガス60とのいずれかを供給することができる。
【0051】
サンプリング期間中における希釈トンネル12からの補充エアおよび/または充填ガス60の追加は、排気ガスサンプリングシステム10の効率を向上させる。よって、補充エアおよび/または充填ガス60を、サンプリング期間の前にあるいはサンプリング期間の後に、追加する必要がない。したがって、サンプリング期間中における希釈トンネル12からの補充エアおよび/または充填ガス60の追加は、テスト全体の効率化をもたらす。なぜなら、サンプルバッグ40に対してのガスの追加が、サンプリング期間中に行われるからであり、サンプリング期間の前後における追加的ステップが不要であるからである。
【0052】
サンプリング期間の開始時には、コントローラ18は、サンプルバッグ40の容量に基づいて、および、指示された収集時間(すなわち、サンプリング期間の長さ)に基づいて、サンプルプローブ42,44,46に関するサンプル抽出流速を決定する。サンプリング期間の開始時にコントローラ18によって決定された抽出流速は、初期的抽出流速とすることができ、サンプリング期間の長さによって制限される。例えば、サンプルバッグ40は、固定された最大容量を有している。したがって、サンプリング期間がより長い場合には、コントローラ18は、積算された際に、サンプルバッグ40の容量を超えないように抽出流速を選択する必要がある。
【0053】
動作時には、コントローラ18は、エンジン22の動作に基づいて、プローブ42,44,46の抽出流速を動的に調整することができる。すなわち、コントローラ18は、サンプリング期間中のうちのエンジン22がON状態へと移行した時間に基づく所望容量をサンプルバッグ40に対して供給するのに必要な抽出流速を連続的に計算することができる。エンジン22がまず最初にON状態へと移行した場合、サンプリング期間の終了まで、抽出流速が選択されて維持される。これにより、比例的なサンプリングが確保される。比例的なサンプリングは、希釈済み排気ガスサンプル内に含有されている排出質量を正確に計算するために、CVSシステムおよびBMDシステムの比例的サンプリング理論によって要求されている。
【0054】
上述したように、コントローラ18は、エンジン22がON状態へと移行したことがセンサ92によって通知されるまで、抽出流速を連続的に計算することにより、初期的抽出流速を最適化する。したがって、コントローラ18は、最大の抽出流が選択されることを確保する。これにより、コントローラ18は、エンジン22がON状態となっている期間中に、分析器20によって要求された十分な量の希釈済み排気ガスを収集することができる。
【0055】
抽出流速を調整することは、同様に、分析器20に対して必要最少量を提供するに際し、コントローラ18が、サンプルバッグ40に対して、希釈トンネル12からの補充エアおよび/または充填ガス60を供給する必要性を最小化する。コントローラ18は、エンジン22がON状態へと移行される前には、サンプルプローブ42,44,46の抽出流速を連続的に計算して最適化する。これにより、抽出流速を最大化する。これにより、エンジン22がON状態とされたときに、十分な量のサンプルが収集される。これにより、エンジン22がOFF状態である場合に、サンプルバッグ40を希釈トンネル12からの補充エアによってあるいは充填ガス60によって充填する必要性が、最小化されるあるいは不要とされる。したがって、サンプルバッグ40は、一次的には、希釈トンネル12からの希釈済み排気ガスによって充填され、その結果、サンプルバッグ40内に含有されたサンプルの希釈比率が最小化される。
【0056】
コントローラ18は、1つまたは複数のバルブ48,50,52を制御することにより、抽出流速を制御することができる。例えば、第1サンプルプローブ42がおよそ2lpm(liters per minute)という抽出流速を提供し、第2サンプルプローブ44がおよそ5lpmという抽出流速を提供し、第3サンプルプローブ46がおよそ5lpmという抽出流速を提供するようにして、サンプルプローブ42,44,46が異なるサイズのノズルを有している場合には、コントローラ18は、計算された抽出流速が7lpmであるときには、第1サンプルプローブ42および第2サンプルプローブ44に関連したバルブ48,50だけを開状態とする。第1サンプルプローブ42がおよそ2lpmという抽出流速を有しておりまた第2サンプルプローブ44がおよそ5lpmという抽出流速を有していることから、第1サンプルプローブ42および第2サンプルプローブ44の使用は、合計で、およそ7lpmという抽出流速を提供する。
【0057】
他方、コントローラ18が、およそ12lpmというサンプル抽出流速が必要であるといったように、より大きなサンプル抽出流速が必要であることを決定した場合(すなわち、サンプリング期間中にエンジン22がON状態へと移行した場合)には、コントローラ18は、バルブ48,50,52の各々を開放することができる。これにより、サンプルプローブ42,44,46によって提供される抽出流速を、およそ12lpmに等しいものとすることができる(すなわち、サンプルプローブ42からの2lpm;サンプルプローブ44からの5lpm;サンプルプローブ46からの5lpm)。
【0058】
上記の例は、コントローラ18が、バルブ48,50,52を制御することによってサンプル抽出流速を制御する態様を示しており、エンジン22がON状態へと移行する際にサンプルプローブ42,44,46のうちの選択されたサンプルプローブを通しての流れだけを可能とする態様を示している。制御バルブ48,50,52がステッパバルブであって、バルブ48,50,52が複数の部分開状態へと移動し得る場合には(すなわち、完全開状態と完全閉状態との間において複数の部分開状態が存在する)、コントローラ18は、サンプルバッグ40に対して提供されるサンプル抽出流速をさらに調整することができる。例えば、上記の例においては、コントローラ18が、およそ8lpmというサンプル抽出流速が必要であることを決定した場合には、コントローラ18は、第1制御バルブ48および第2制御バルブ50を完全開状態とすることができ、さらに、第3制御バルブ52については、部分的な開状態とすることができる。すなわち、第3制御バルブ52を通しての実効的な抽出流速がおよそ1lpmであるような、部分的な開状態とすることができる。したがって、この例において供給される合計の抽出流速は、第1サンプルプローブ42からの2lpmと、第2サンプルプローブ44からの5lpmと、第3サンプルプローブ46からの1lpmと、である。ここで、第3制御バルブ52は、部分開状態とされており、これにより、この第3制御バルブを通しての流れを制限することができる。さらに、1つまたは複数のバルブ48,50,52が、例えばソレノイドバルブといったような、電磁気的に制御されるバルブである場合には、電磁気的に制御されるバルブは、所望の抽出流速を得るに際し、パルス幅変調(PWM)を使用して制御することができる。サンプル抽出流速の制御態様にかかわらず、コントローラ18が、サンプル抽出流速を決定した後には、サンプリング期間の全体にわたってサンプル抽出流速が維持され、サンプリング期間中においては、エンジン22がON状態となったことに基づいて、決定される。1つまたは複数のバルブ42,44,46を制御するためにPWMが使用されている場合には、比例サンプリングが、フィードバック構成要素として機能する流量計56を使用して維持される。
【0059】
分析器20は、比例的に収集された排気ガスサンプルの排出濃度に基づいて、および、それぞれの積算されたCVS容積に基づいて、サンプリング期間中にわたっての排出質量(m)を決定することができる。以下の式(1)を参照することができる。
【0060】
【数1】
【0061】
上記の式(1)において、mは、単位をグラムとして、サンプリング期間にわたっての排出質量を表しており、Vmix は、標準参照条件(scfあるいはm)においてサンプリング期間にわたっての合計の希釈排気ガス量を表しており、ρ[emission]は、適切な化学種の密度(g/scfmあるいはg/m)を表しており、xは、ドライウェット補正およびバックグラウンド補正の後におけるサンプル内の測定された排出濃度(ppmVあるいは%)を表しており、cは、排出濃度パーセンテージに関しては12(ten-two)を表しており、単位をppmとした排出濃度に関しては16(ten-six)を表している。
【0062】
上述したように、CVS容積の積算は、サンプルバッグ40,70の充填に関連して、開始および停止しなければならない。したがって、コントローラ18は、式(1)におけるCVS容積の積算を、バッグ充填(すなわち、サンプルバッグ40,70の充填)の開始および停止と関連して、開始および停止することができる。
【0063】
コントローラ18は、同様に、バックグラウンド収集ユニット16に関連したサンプルバッグ70の充填を、排気ガス収集ユニット14に関連したサンプルバッグ40の充填に対して、関連づけることができる。したがって、コントローラ18がバルブ58を開放して、サンプルバッグ40に対して補充エアおよび/または充填ガス60を供給した際には、コントローラ18は、同様に、バルブ78を開放して、サンプルバッグ70に対して補充エアを供給する。つまり、サンプルバッグ70は、サンプルバッグ40と同時に充填することができ、これにより、サンプルバッグ70は、サンプルバッグ40と同様に制御される。
【0064】
サンプルバッグ70は、サンプルバッグ40と同じ態様で制御されるものとして説明されたけれども、そして、サンプルバッグ70は、サンプルバッグ40が希釈済み排気ガスまたは補充エアまたは充填ガス60によって充填されるのと同時的に補充エアによって充填されるものとして説明されたけれども、サンプルバッグ70は、異なる態様で制御することができる。すなわち、サンプルバッグ70は、サンプリング期間の全体にわたって補充エアを収集することができる。これに代えて、サンプルバッグ70内に収集された補充エアの容積は、充填ガス60がサンプルバッグ40に対して供給されるのと同様に、クリーンガスによって調整することができる。これにより、サンプルバッグ70内に含有された容積が分析器20による分析のために必要とされる最少量であることを確保することができる。
【0065】
要するに、コントローラ18は、排気ガスサンプリングシステム10を制御することにより、エンジンのON/OFF時間に応じて希釈済み排気ガスによってサンプルバッグ40を充填することによって、所望の(すなわち、小さい)希釈比率を達成する。さらに、コントローラ18は、サンプリング期間中に希釈トンネル12からの補充エアおよび/または充填ガス60をサンプルバッグ40に対して選択的に追加することにより、サンプルバッグ70内における目標容積を達成する。コントローラ18は、また、サンプルプローブ42,44,46によって得られる抽出流速を動的に選択することができ、エンジン22がON状態へと移行するまで、サンプリング期間中に抽出サンプル流速を連続的に調整することができる。最後に、コントローラ18は、希釈済み排気ガスや補充エアや充填ガス60がサンプルバッグ40によって受領されるのと同時的に補充エアがサンプルバッグ70によって受領されるように、サンプルバッグ70内への補充エアの流れを制御することができる。
【0066】
上述したように、コントローラ18は、サンプルバッグ40によって受領された希釈済み排気ガスの容積が、サンプルバッグ40の内容物を分析器20が適切に分析するには不十分である場合には、サンプルバッグ40が希釈トンネル12からの補充エアによっておよび/または充填ガス60によって選択的に充填されるように、排気ガスサンプリングシステム10を制御することができる。上記のシステム10は、充填ガス60の供給源を省略することにより、単純化することができる。その場合には、コントローラ18は、サンプリング期間中にサンプルバッグ40が不十分な量の希釈済み排気ガスを受領する際には、サンプルバッグ40を希釈トンネル12からの補充エアだけによって充填する。
【0067】
充填ガス60の供給源が省略された排気ガスサンプリングシステム10aが、図2において概略的に図示されている。排気ガスサンプリングシステム10と排気ガスサンプリングシステム10aとの間における様々な構成部材の構成および機能の実質的な類似性のために、同じ参照符号は、同様の構成部材を示しており、同様の参照符号は、修正を加えた同様の構成部材を示している。
【0068】
排気ガスサンプリングシステム10aの動作は、排気ガスサンプリングシステム10の場合と実質的に同じである。相違点は、コントローラ18が、サンプルバッグ40に対して供給された希釈済み排気ガスの量が、分析器20がサンプルバッグ40の内容物を適切に分析するには不十分である場合には、サンプルバッグ40に対して、希釈トンネル12からの補充エアだけを供給することである。その他の点については、排気ガスサンプリングシステム10aの動作は、排気ガスサンプリングシステム10の動作と同じである。したがって、排気ガスサンプリングシステム10aの動作に関しての詳細は、上記と同様である。
【0069】
上記のシステム10,10aは、CVSシステムのバッグ充填を最適化する。これにより、採取されたサンプルの希釈比率を最適化することができ、分析のために収集バッグ40内へと十分な量のサンプルを提供することができ、さらに、所定のサンプリング期間内において上記の目的を達成することができる。システム10,10aは、エンジン22の動作に応じてサンプルを抽出するとともに、分析のために必要な最少のサンプル容積が得られなかった場合には、収集バッグ40の容積を補充する。補充される容積は、エンジン22がOFF状態である場合には、テスト期間中に収集バッグ40に対して供給することができる。
【0070】
分析のために必要な最少量のサンプル容積を得るための1つのアプローチは、テスト期間(すなわち、テストフェーズ)中におけるバッグサンプル容積を積算することであり、テスト期間中のうちの、テスト期間の残部に対して、分析のための最少のサンプル容積を得るためにサンプル収集がONとされたままである必要があるポイントを決定することである。図3図5は、上記アプローチの一例を示している。
【0071】
図3においては、エンジン22に関するテスト期間が図示されている。テスト期間は、505秒間という実行時間を有しており、このうち、エンジン22は、このテスト期間中に191秒間にわたってON状態となっているのみである。
【0072】
350scfmというCVS流速(すなわち、抽出流速)が選択された場合には、以下の表1に示す結果は、CVS標準動作を与える。全体的な希釈比率は、大きいけれども、システムは、分析のための十分なサンプルを収集バッグ40内に有している。
【0073】
【表1】
【0074】
上記のテストにおいては、サンプリングは、エンジン22がON状態である場合にサンプルを収集することのみによって、最適化することができる。すなわち、CVSバッグサンプリングは、テスト期間中のうちの、エンジン22がON状態とされている期間中にのみ行われ、その結果、システムは、以下の表2に示すように、191秒間にわたってバッグサンプルのみを収集することとなる。最適化されたバッグサンプリングのためのサンプリング期間(すなわち、エンジン22がON状態である場合のみのサンプリング)が、図4に示されている。
【0075】
【表2】
【0076】
エンジン22がON状態である期間にだけサンプルを抽出することにより、サンプルの希釈比率が向上するけれども、収集された容積は、多くの場合、分析のために必要な十分な量のサンプルをもたらすことがない。
【0077】
上述したように、収集バッグ40は、テスト期間のうちの、エンジンがOFF状態とされたいくつかのポイントにおいて充填することができる。図5においては、この期間は、テスト期間の最後の部分に図示されている。すなわち、目標をなすサンプル容積が、分析のための十分な量のサンプルを有するために設定された場合には、制御システムは、既に収集された排気ガスの量に基づいて、テスト期間のうちの、テスト期間の終了までに所望量を収集するためにテスト期間の残部においてサンプリングを起動しなければならないポイントを認識することができる。
【0078】
以下の表3に示すように、エンジン22がOFF状態とされたテスト期間中に追加的なサンプルによって収集バッグ40を充填することにより、分析のためのサンプル容積が、34リットルから41.5リットルへと増大する。同時に、希釈比率は、分析のための十分な量のサンプルを得るためのいっていの最小限の比率に維持される。
【0079】
【表3】
【0080】
最適化されたバッグサンプリング(すなわち、エンジン22がON状態である場合のみにサンプリングを行う)を採用することにより、および、テスト期間中のうちの、エンジン22がOFF状態とされた選択されたタイミングで補充的なバッグ充填を行うことにより、CVSシステムは、分析のために必要な最少量を得ることができるとともに、CVSシステムは、最少の希釈比率と分析のために必要なバッグ容積とを同時に維持しつつ、希釈比率を最適化することができる。さらに、テスト期間中の補助的なバッグ充填は、事前または事後の充填操作の実施(すなわち、テスト期間の前のまたはテスト期間の後の、補助的なバッグ充填)を回避することができる。最後に、既存のCVSシステムを、追加的なハードウェアを必要とすることなく、上記手順を行うようにアップグレードすることができる。
【0081】
とりわけ図6には、他の排気ガスサンプリングシステム100が示されている。排気ガスサンプリングシステム100は、BMDサンプリングシステムを提供する。この場合、排気ガスサンプルは、固定された希釈比率でもって希釈され、エンジン102からの排気ガス流に比例して収集される。図6の構成においては、エンジン102は、内燃エンジン104と、ハイブリッド車両(図示せず)のための推進ユニットをなす例えば電気モータといったような他のエンジン106と、を備えている。エンジン106は、車両の一次的な推進ユニットとすることができる。その結果、車両の動作期間においては、エンジン104の後方パイプ108を通して内燃エンジン104がごくわずかしかあるいは全く排気ガスを排出しない期間が存在する。
【0082】
排気ガスサンプリングシステム100は、サンプリングユニット110と、排気ガス収集ユニット112と、コントローラ114と、分析器116と、を備えることができる。サンプリングユニット110は、サンプルプローブ118に対して流体連通することができ、混合器120を備えることができる。サンプルプローブ118は、後方パイプ108内に収容することができ、これにより、サンプルプローブ118は、エンジン102からの排気ガスサンプルを収集することができる。排気ガスサンプルは、ポンプ122によってサンプリングユニット110内へと抽出することができ、サンプルプローブ118とポンプ122との間に配置された流量計124によって測定することができる。
【0083】
排気ガス収集ユニット112は、サンプリングユニット110に対して流体連通することができ、1つまたは複数のサンプルバッグ126と、サンプルバッグ126内へと希釈済み排気ガスサンプルを抽出するためのポンプ128と、を備えることができる。希釈済み排気ガスは、サンプリングユニット110から抽出することができる。その場合、サンプルプローブ118からの排気ガスは、希釈剤130に対して混合される。より詳細には、希釈剤130は、流量計132を通して流れることができ、その後、サンプリングユニット110の混合器120によって受領される。混合器120は、希釈剤130と、サンプルプローブ118からの排気ガスサンプルと、を混合することができ、これにより、希釈済み排気ガスサンプルを生成することができる。希釈済み排気ガスは、ポンプ128によってサンプリングユニット110から抽出することができ、排気ガス収集ユニット112の複数のサンプルバッグ126によって収集することができる。サンプルバッグ126による希釈済み排気ガスの収集は、サンプルバッグ126のそれぞれに対応した一対をなす制御バルブ134によって、制御することができる。
【0084】
分析器116は、分析のためにサンプルバッグ126から希釈済み排気ガスサンプルを受領することができる。より詳細には、ポンプ136は、サンプルバッグ126から希釈済み排気ガスサンプルを抽出することができ、希釈済み排気ガスサンプルを制御バルブ138および流量計140を通してポンピングすることができ、その後、希釈済み排気ガスサンプルを分析器116へと送ることができる。分析器116は、希釈済み排気ガスサンプルを分析することができ、これにより、排気ガス内に含有されている排出質量を決定することができる。
【0085】
排気ガスサンプリングシステム10,10aの場合と同様に、サンプルバッグ126は、分析器116が希釈済み排気ガスサンプルを適切に分析し得るよう、十分な量を有していなければならない。サンプリングユニット110から受領した希釈済み排気ガスサンプルの量がサンプルバッグ126を充填するのに不十分なものである場合には、流量計144および制御バルブ146を通して1つまたは複数のサンプルバッグ126へと充填ガス142を供給することができる。
【0086】
引き続き、図6を参照して、排気ガスサンプリングシステム100の動作について詳細に説明する。排気ガスサンプリングシステム10,10aの場合と同様に、任意の数のテストを、排気ガスサンプリングシステム100を使用して行うことができる。さらに、テストのうちのいくつかは、実質的に持続期間を有したテスト期間すなわちサンプリング期間を有することができる。排気ガスサンプリングシステム100は、多数回のテストに関して、および、実質的に任意の長さのテスト期間すなわちサンプリング期間に関して、使用し得るものではあるけれども、以下においては、505秒間という例示としてのサンプリング期間に関して説明する。
【0087】
コントローラ114は、エンジン102の状態を識別するためのセンサ148または152と通信することができる。すなわち、センサ148は、エンジン102がON状態であるかあるいはOFF状態であるかを識別することができる。センサ152が使用される場合、センサ152は、排気ガス流を測定することにより、ON状態またはOFF状態を測定する。エンジン102の状態にかかわらず、コントローラ114は、ポンプ122を励起することによって、サンプルプローブ118を通してサンプリングユニット110内へと排気ガスサンプルを抽出することができる。排気ガスサンプルは、混合器120によって希釈剤130と混合することができ、これにより、希釈済み排気ガスサンプルを生成することができる。マスフローコントローラ150は、排気ガス流量計152と通信することができ、サンプルバッグ126に対して供給される希釈済み排気ガスの量を制御することができる。エンジン102がON状態である場合には、希釈済み排気ガスは、コントローラ114がバルブ134を開放することに基づいて、収集バッグ126内に受領される。他方、エンジン102がOFF状態である場合には、コントローラ114は、バルブ134を閉塞するとともに、バイパスバルブ129を開放する。コントローラ114は、また、バルブ129の下流側に配置されたポンプ131を励起することにより、希釈済み排気ガスをベントすることができる。
【0088】
排気ガスサンプリングシステム10,10aの場合と同様に、サンプルバッグ126に対して供給された希釈済み排気ガスの量が、必要とされる最少量に届かずに不十分なものである場合には、テスト期間すなわちサンプリング期間中に、充填ガス142を、サンプルバッグ126に対して追加することができる。テスト期間すなわちサンプリング期間中にサンプルバッグ126に対して充填ガス142を追加することにより、排気ガスサンプリングシステム100の効率を向上させることができる。なぜなら、サンプリング期間の前におけるあるいはサンプリング期間の後における追加的な操作が不要であるからである。より詳細には、充填ガス142がサンプリング期間中に追加されることのために、サンプリング期間の前後におけるサンプルバッグ126に対しての充填ガス142の追加が不要である。
【0089】
サンプルバッグ126が十分な量の希釈済み排気ガスによって充填された後に、排気ガス収集ユニット112に関連した制御バルブ154を開放することができ、分析器116は、分析のために希釈済み排気ガスサンプルを受領することができる。
【0090】
コントローラ114は、排気ガスサンプリングシステム100の各構成部材に関連して図示されていないけれども、コントローラ114は、センサ148や;ポンプ122,128,136や;制御バルブ138,146,154や;流量計124,132,140,144,152や;マスフローコントローラ150;に対して連通することができる。したがって、コントローラ114は、センサ148および様々な流量計124,132,140,144,152から受領した情報に基づいて、ポンプ122,128,136および制御バルブ138,146,154を制御することができる。
【0091】
様々な実施形態に関する上記の説明は、例示の目的のためのものに過ぎない。上記の説明は、本発明を制限することを意図したものではない。特定の実施形態に関する個々の構成部材や特徴点は、一般に、特定の実施形態に限定されるものではなく、適用可能である限りにおいては、互換的なものであって、特に例示されていなくても、他の選択された実施形態において使用することができる。実施形態は、様々に変形することができる。それら変形例は、本発明の範囲を逸脱するものではなく、それらすべての修正は、本発明の範囲内に属することが意図されている。
【符号の説明】
【0092】
10 排気ガスサンプリングシステム
10a 排気ガスサンプリングシステム
14 排気ガス収集ユニット
16 バックグラウンド収集ユニット
18 コントローラ
20 分析器
22 エンジン
40 サンプルバッグ(収集バッグ)
42 第1サンプルプローブ
44 第2サンプルプローブ
46 第3サンプルプローブ
48 第1制御バルブ(バイパスバルブ、第1バルブ)
60 充填ガス
100 排気ガスサンプリングシステム
110 サンプリングユニット
112 排気ガス収集ユニット
114 コントローラ
116 分析器
118 サンプルプローブ
126 サンプルバッグ
128 ポンプ
130 希釈剤
142 充填ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6