(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】新生児の二酸化炭素測定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20220329BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20220329BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
A61B5/08 ZDM
G01N1/02 W
G01N33/497 A
(21)【出願番号】P 2020078819
(22)【出願日】2020-04-28
(62)【分割の表示】P 2016537922の分割
【原出願日】2014-08-29
【審査請求日】2020-05-26
(32)【優先日】2013-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514156105
【氏名又は名称】キャプニア, インク.
【氏名又は名称原語表記】Capnia,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウォンドカ, アンソニー, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】バトナーゲル, アニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ セルナ, ペドロ, イー.
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/096695(WO,A2)
【文献】特表2015-503962(JP,A)
【文献】米国特許第05383469(US,A)
【文献】米国特許第05069220(US,A)
【文献】特表2003-529766(JP,A)
【文献】国際公開第2013/095284(WO,A1)
【文献】特表2015-502830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08 - 5/097
G01N 1/02
G01N 33/497
A61M 16/00 - 16/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気被検体を、ガスサンプリングおよび測定システムを用いて測定する方法であって、
前記システムの
被検体センサを用いて、一連の呼気をモニタリングするステップと、
前記
被検体センサを用いて、捕捉するための前記一連の呼気の複数の呼気部分を決定するステップであって、前記複数の呼気部分の各呼気部分が、前記
被検体センサの応答時間よりも短い継続時間を含むステップと、
前記複数の呼気部分を、前記複数の呼気部分からなる一定量のサンプルとして収集するステップと、
前記一定量のサンプルのフローを複数の弁および
複数のポートを用いて前記
被検体センサへ向けるステップと、
前記
被検体センサを用いて、前記一定量のサンプルの被検体濃度を測定するステップであって、前記一定量のサンプルのフローが、前記
被検体センサの応答時間よりも長い継続時間を含むステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記一連の呼気をモニタリングするステップが、前記一連の呼気の各呼気のカプノメトリ信号をモニタリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
捕捉するための前記一連の呼気の複数の呼気部分を決定するステップが、通常の呼気終末プロファイルを用いて呼気を同定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
捕捉するための前記一連の呼気の複数の呼気部分を決定するステップが、非定常状態呼気、エピソード呼気、および異常呼気の1つまたは複数を除外するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被検体がCO
2である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記
被検体センサが赤外CO
2センサである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の呼気部分の各呼気部分が、150msecの継続時間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
呼気被検体を測定するためのシステムであって、
一連の呼気からデータを生成する
被検体センサと、
前記データを受け取り、捕捉するための前記一連の呼気の複数の呼気部分を前記データに基づき決定するプロセッサであって、前記複数の呼気部分の各呼気部分が、前記
被検体センサの応答時間よりも短い継続時間を含む、プロセッサと、
前記複数の呼気部分を、前記複数の呼気部分からなる一定量のサンプルとして収集するチャンバと、
前記一定量のサンプルを、前記
被検体センサを通して通過させる複数の弁および
複数のポートと、を含み、
前記
被検体センサが、前記一定量のサンプルの被検体濃度を測定し、そして、前記一定量のサンプルのフローが前記
被検体センサの応答時間よりも長い継続時間を含む、システム。
【請求項9】
前記被検体センサが前記一連の呼気の各呼気のカプノメトリ信号に基づきデータを生成する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、通常の呼気終末プロファイルを用いて呼気を同定することにより、捕捉するための前記一連の呼気の前記複数の呼気部分を決定する、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、非定常状態呼気、エピソード呼気、および異常呼気の1つまたは複数を除外することにより、捕捉するための前記一連の呼気の前記複数の呼気部分を決定する、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記被検体がCO
2である、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記
被検体センサが赤外CO
2センサである、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の呼気部分の各呼気部分が、150msecの継続時間を含む、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2013年8月30日に出願された米国仮出願第61/872,415号の利益を主張しており、その内容は、全体として本明細書に組み入れられるものとする。
【0002】
本開示は、呼気測定およびモニタリングの分野に関し、特に、患者の状態をモニタリングする目的のために、患者から吐き出されたガスにおける構成要素を測定する分野に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な呼気パラメータ測定アプリケーションにおいて、現時点で最新の測定技術は、高速の呼吸パターンの間に正確な、または信頼できる測定を提供しないことがあり得るが、その理由は、用いられるセンサの応答時間が呼気パラメータを測定するのに十分なほど高速ではないからである。そのような測定アプリケーションは、連続的なモニタリングが望まれるもの、断続的なモニタリングが望まれるもの、または一回性の呼気テストが望まれるものであり得る。たとえば、カプノメトリでは、吐き出された呼気における二酸化炭素を測定するのに、赤外センサが用いられる。センサは、患者から吐き出されたガス流に沿っていることがあり得るし、または、ガス・サンプル掃気管を通じて吐き出されたガス流に結合されることがあり得るのであるが、このガス・サンプル掃気管は、典型的には、機械的換気の場合にはサンプリング・ラインと称され、自発呼吸の場合には鼻カニューレと称される。高速呼吸パターンの場合に、カプノメトリ・センサは、呼気速度を登録できるのが通常であり、その理由は、何らかの振幅の波形が各呼気に対して登録されているからであるが、このセンサは、各呼気に対してCO2の真のピーク値を登録することができない。商用のシステムに関して入手可能な製品文献を検討すると、この制約が実際に存在することがわかる。
【発明の概要】
【0004】
現在のカプノメトリ・システムでは、特に新生児カプノメトリにおいては、正確な測定を妨げる主要な技術的制約が2つ存在する。第1に、呼気サンプル収集装置が、ガスのある部分とガスの別の部分との混合を許容するために、異なる離散的な部分の同質性および純粋性が乱される。この混合は、患者インターフェース・コンポーネント、弁、フィルタ、水分トラップ、呼気センサ自体、コネクタおよびサンプリング配管において生じる。この技術的問題への解決策は、カプニアに記載されている(その内容全体が本明細書に組み込まれるカプニアによる米国仮特許出願第61/872,270号を参照のこと)。本開示において扱われる第2の問題は、用いられているセンサ技術の内在的な応答時間である。センサのこの応答時間は、患者が高速で呼吸しているとき、たとえば、毎分30回よりも呼吸が多い(bpm)場合などには、呼気におけるCO2を正確に測定できるほど高速でない。患者から得られたガスは、センサを通過して移動する。呼気ガスがセンサを通過して流れているとき、センサはガスの中のCO2分子に応答するのであって、この応答は、信号応答として知られている。信号応答の振幅は、ガス・サンプルにおけるCO2分子の量またはCO2濃度に依存し、対応する。しかし、センサの信号応答は瞬間的ではなく、1つの呼気サイクルからの一定量のガスにおけるCO2分子への応答をセンサが終了するには、400ミリ秒(ms)程度の時間を要し得る。したがって、センサが一定量の呼気ガスにおけるCO2分子への応答を終了する前に、患者が呼気から吸気に移動する場合には、センサの信号応答は、真のピーク値に到達しない。この技術的問題は、信号のクリッピングと称される。設計者は、センサが十分に高速である場合に信号のピークがどこで生じるのかを外挿することが可能であるが、この外挿は、厳密ではなく、患者において支配的な臨床的状況を考慮しておらず、医学的な呼気テストへの応用において用いられるべきでない。この応答時間の制約に関する例を、さらに述べることにする。
【0005】
患者が60bpmで呼吸しており、吸気/呼気の時間比率が50/50であると仮定すると、この患者の呼気時間は500msとなる。肺は50%が気道としてデッドスペースであり、呼気の流量が一定であると仮定すると、この人間は、呼気時間の半分の間、すなわち250msの間、肺胞ガスを吐き出すことになる。すると、センサが300ミリ秒の応答時間を有すると仮定するならば、呼気の終了時おいて、センサは、一定量の肺胞ガスにおけるCO2分子のすべてに完全には応答しておらず、信号応答が線形であると仮定すると、真のピーク値の83%(250/300)に到達したに過ぎないことになる。これは、センサ信号が、測定されているガスの真の振幅に到達する前に、切り捨てられることを意味するのであって、この例では、5%のCO2ではなく4%のCO2に対する読み取りとなり得る。以上の理由のために、患者の呼吸速度が40または50bpm未満である場合以外は、新生児のCO2モニタリングのためのカプノメトリは信頼できないことが医学の世界では知られているが、そのような40または50bpmという呼吸速度は、患者の年齢や症状に応じて、生じないことが多い。カプノメトリ・モニタの製造業者の中には、そのデバイスは、この理由のため、新生児に関して用いるためのものではない、と言明する者が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した制約を回避するためのいくつかの潜在的なオプションが存在する。第1に、CO2は血液においても測定可能であるが、これは侵襲的であり、したがって、好ましいテストではなく、連続的なモニタリングまたは反復的なテストには用いられない。第2に、CO2は経皮的に測定可能であるが、そのようなシステムがすべての臨床的状況で信頼性があるとは、まだ証明されていない(Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed. 2006 July; 91(4): F295-F298. Are carbon dioxide detectors useful in neonates? E J Molloy and K Deakinsを参照)。
【0007】
新生児のCO2測定に対しては臨床的必要性が存在するために、また、この測定が非侵襲的であることが強く望まれており、連続的または断続的なモニタリングというオプションを有することが望まれているので、このような患者集団のために、そして、用いられているセンサと比較すると呼吸周波数が相対的に高速であるその他の臨床的状況および人々のために、正確で信頼性の高いカプノメータに対して、依然として満たされていない重大な必要性が存在する。
【0008】
本開示はほとんどの部分が新生児のカプノメトリという観点から説明されているが、同じ開示が、O2など他の呼気マーカや新生児以外の臨床的応用にも適用されることも注意されるべきである。
本発明の目的を達成するための例示的な方法及びシステムは、次の通りである。
(1)本発明の方法は、呼気被検体を測定する方法であって、
第1のセンサを用いて、一連の呼気をモニタリングするステップと、
捕捉するための一連の呼気の複数の呼気部分を決定するステップであって、複数の呼気部分の各呼気部分が、第1のセンサの被検体応答時間よりも短い継続時間を第1のセンサにおいて含むステップと、
複数の呼気部分を全体として収集するステップと、
第2のセンサを用いて、呼気部分の収集物の被検体濃度を測定するステップであって、呼気部分の収集物が、第2のセンサの応答時間よりも長い継続時間を含むステップと、
を含む方法である。
(2)前記方法において、さらに、第1のセンサと第2のセンサとが同じセンサであっても良い。
(3)前記方法において、また、第1のセンサと第2のセンサとが共に被検体を測定することができる。
(4)前記方法において、また、一連の呼気をモニタリングするステップが、各呼気の呼気速度をモニタリングするステップを含んでも良い。
(5)前記方法において、また、一連の呼気をモニタリングするステップが、各呼気のカプノメトリ信号をモニタリングするステップを含んでも良い。
(6)前記方法において、また、捕捉するための一連の呼気の複数の呼気部分を決定するステップが、通常の呼気終末プロファイルを用いて呼気を同定するステップを含んでも良い。
(7)前記方法において、また、捕捉するための一連の呼気の複数の呼気部分を決定するステップが、非定常状態呼気、エピソード呼気、および異常呼気の1つまたは複数を除外するステップを含んでも良い。
(8)前記方法において、また、被検体がCO2であっても良い。
(9)前記方法において、また、第1のセンサが赤外CO2センサであっても良い。
(10)前記方法において、また、複数の呼気部分の各呼気部分が、それぞれの呼気の最後の150msecの実質的にすべてを含んでも良い。
(11)前記方法において、また、複数の呼気部分を全体として収集するステップが、複数の呼気部分をポンプを用いて収集チャンバの中に引き入れるステップを含み、第2のセンサを用いて呼気部分の収集物の被検体濃度を測定するステップが、呼気部分の収集物を第2のセンサに送るために前記ポンプを反転させるステップを含んでも良い。
(12)前記方法において、また、複数の呼気部分を全体として収集するステップが、複数の呼気部分をポンプを用いて収集チャンバの中に引き入れるステップを含み、第2のセンサを用いて呼気部分の収集物の被検体濃度を測定するステップが、呼気部分の収集物を第2のセンサに送るためにポンプを反転させないステップを含んでも良い。
(13)本発明のシステムは、呼気被検体を測定するためのシステムであって、
一連の呼気からデータを生成する第1のセンサと、
前記データを受け取り、捕捉するための一連の呼気の複数の呼気部分を前記データに基づき決定するプロセッサであって、複数の呼気部分の各呼気部分が、第1のセンサの被検体応答時間よりも短い継続時間を前記第1のセンサにおいて含む、プロセッサと、
複数の呼気部分を全体として収集するチャンバと、
呼気部分の収集物の被検体濃度を測定する第2のセンサであって、呼気部分の収集物が第1のセンサの応答時間よりも長い継続時間を含む第2のセンサと、
を含むシステムである。
(14)前記システムにおいて、さらに、第1のセンサと第2のセンサとが同じセンサであっても良い。
(15)前記システムにおいて、また、第1のセンサと第2のセンサとが共に被検体を測定することができる。
(16)前記システムにおいて、また、第1のセンサが一連の呼気の各呼気の呼気速度に基づきデータを生成しても良い。
(17)前記システムにおいて、また、第1のセンサが一連の呼気の各呼気のカプノメトリ信号に基づきデータを生成しても良い。
(18)前記システムにおいて、また、プロセッサが、通常の呼気終末プロファイルを用いて呼気を同定することにより、捕捉するための一連の呼気の複数の呼気部分を決定しても良い。
(19)前記システムにおいて、また、プロセッサが、非定常状態呼気、エピソード呼気、および異常呼気の1つまたは複数を除外することにより、捕捉するための一連の呼気の複数の呼気部分を決定しても良い。
(20)前記システムにおいて、また、被検体がCO2であっても良い。
(21)前記システムにおいて、また、第1のセンサが赤外CO2センサであっても良い。
(22)前記システムにおいて、また、複数の呼気部分の各呼気部分が、それぞれの呼気の最後の150msecの実質的にすべてを含んでも良い。
(23)前記システムは、複数の呼気部分をチャンバの中に引き入れるポンプをさらに備えており、ポンプが呼気部分の収集物を第2のセンサに送るようにしても良い。
(24)前記システムにおいて、さらに、ポンプが、呼気部分の収集物を第2のセンサに送るために反転されなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、呼気中のCO
2値が時間の関数として測定される従来技術によるカプノメトリの図である。
【
図2】
図2は、患者から収集されたガスをフィルタリングするのに用いられる従来技術によるフィルタの側方断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の従来技術によるフィルタの図であり、ガスがこのフィルタを通過して移動する際に生じるガス部分の混合を示す。
【
図4】
図4は、一連の呼気に対するカプノメトリ信号を時間の関数として示すグラフであるが、このカプノメータは、患者の呼気中のCO
2の真のピーク値を測定することができないのであって、これが、本開示が解決する課題である。
【
図5】
図5は、患者ガスを収集して測定するのに用いられる本開示の空気力学システムの概略図である。
【
図6】
図6は、
図5のシステムの図であって、たとえば呼気終末部分などのガスの所望部分が、それを他のガスから分離するために、分離チャンバの中にシャントされている。
【
図7】
図7は、
図5および
図6のシステムの図であり、所望のサンプルが分離チャンバに完全に配置され、正確に、チャンバへのインレットと整列している。
【
図8】
図8は、
図5から
図7のシステムの図であり、3つの別個の所望の呼気からのガスの所望部分が、部分の間にスペースを生じることなくチャンバを満たすように、分離チャンバの中にシャントされている。
【
図9】
図9は、
図5から
図8のシステムの図であり、分離チャンバにおける一定量のガス・サンプルが、測定のために、センサに向かって方向転換されている。
【
図10】
図10は、一連の呼気に対する時間の関数としてのCO
2呼気波形図と、分析のために選択される呼気の選択および不適合のためのしきい値基準とである。
【
図12】
図12は、
図10に示された所望の呼気からの所望の呼気終末サンプルを収集し分離する目的のための、
図5のシステムの弁動作のタイミング図である。
【
図13】
図13は、
図9のシステムからと、センサによって測定されたときの
図10に示された呼気からとの一定量のサンプルのセンサCO
2信号のグラフであり、また、
図9のシステムの弁動作を示す弁タイミング図が、同じ時間スケールで示されている。
【
図14】
図14は、例示的な装置の使用を時間の関数として示したグラフであり、呼気速度の報告がCO
2レベルの報告によって挿入されており、反復されている。
【
図15】
図15は、別の空気力学的構成の空気力学的概略図であって、収集の後の一定量のサンプルが、フロー生成器の方向を変更せずに、測定のためにセンサに向けて方向転換されている。
【
図16】
図16は、第1の選択された呼気からの第1のサンプルがサンプル分離チャンバに入る様子を示す
図15のシステムの図である。
【
図17】
図17は、
図15および
図16のシステムの図であり、複数の選択された呼気からの複数のサンプルが、現在、サンプル分離チャンバを占有している。
【
図18】
図18は、
図15から
図17のシステムの図であり、一定量のサンプルが組成分析のためにセンサに向けて方向転換されている。
【
図19】
図19は、別の空気力学的構成の空気力学的概略図であって、フロー生成器の方向が一定に維持されており、患者からのフローがこのシステムを通過して引き入れられている様子が示されている。
【
図20】
図20は、
図19のシステムの図であり、所望の呼気からのガスの所望のサンプルをシャントして保存するために、ガスが第2の分岐に向けて方向転換されている。
【
図21】
図21は、
図19および
図20のシステムの図であり、残存する不所望の患者ガスを除去するために、周囲空気がシステムの中に引き入れられている。
【
図22】
図22は、
図19から
図21のシステムの図であり、周囲空気が、一定量のサンプルを測定のためにセンサに向けて方向転換させるように引き入れられ、システムの外に排気するために別の周囲ポートから引き出される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、幼児ではない患者に対して用いられるときのカプノメトリを、グラフにより説明している。典型的には、呼吸周期(BP)、呼吸速度および呼気時間(TE)は、カプノメトリ・センサからのCO
2信号100が呼気サンプルにおける実際のCO
2102の完全な振幅を登録するのに十分なほど低速であって、正確なetCO
2の結果(呼気終末CO
2)が報告される。カプノメトリ曲線は、7つの部分に分割され得る。その間はカプノメータからの信号応答が基本的に存在しない呼吸曲線の吸気部分1と、その間はやはりカプノメータからの信号応答が基本的に存在しない呼気の開始2と、センサの感知素子によって見られる呼気ガスにおける第1のCO
2ガス分子にセンサが応答する前の短いラグ期間または遅延であるセンサ・ラグ時間3と、肺のより深い位置からのガスが追い出されるときに追い出されるCO
2の増加するパーセンテージ5に起因する呼気の中間における増加信号4と、肺胞ガスとCO
2分子の濃度に完全に応答するための時間をセンサがいつ有するかを表すプラト6と、呼気が終了して吸気が開始するときのCO
2レベルの低下に応答するセンサからのラグ時間または遅延7と、CO
2の不存在に反応するセンサの応答時間に対応する信号の低下8とである。「実際のCO
2」曲線102と「カプノメトリ信号」曲線100との間の差が、センサの応答時間がサンプル測定に対して有する効果を示す。これらの効果は、多くの臨床的応用例において些細であって重要ではないことがあり得るが、新生児への応用など他の場合には、これらの効果が有害となる場合があり得る。グラフの下には、患者から引き出されるガスの部分が、サイド・ストリーム・モニタリングの場合に、吸い込まれた周囲空気110、吐き出された気道空気112、および吐き出された肺胞空気114として、グラフとして示されている。
【0011】
図2および
図3には、呼気の肺胞ガスと非肺胞ガスとの混合の問題が例示されている。インライン・フィルタの効果が例として示されている。そのようなフィルタは、多くの場合、サンプルを患者から引き出すのに用いられるサンプリング配管の一部分に沿って、患者からの湿気またはバクテリアをフィルタリングによって除去するのに用いられる。
図2では、異なる主たる呼気ガス部分(肺胞114、上部気道112および周囲110)が、サンプリング経路122に沿ってフィルタ120のインレットまでパケットとして移動する様子が示されている。第1の呼気からのガスがフィルタに入る様子が、示されている。フィルタは、おそらくは、先に浄化され周囲空気で満たされている、または、単に内部の周囲空気をベースライン条件としており、よって、フィルタのアウトレット側のコンジットと同様に、周囲空気108で満たされることが示されている。
図3においては、患者の第1の呼気、吸い込まれた周囲空気110、気道空気112および肺胞空気114からの異なるガス部分がフィルタを通過して移動するにつれて、これらの部分がフィルタにおける周囲空気と混合して、混合されたガス130を生じ、周囲空気で希釈された状態でフィルタから出ることにより、汚染された気道空気サンプル132と希釈された呼気終末サンプル134とを生じる。数回の呼吸の後で、呼吸パターンが定常状態である場合には、希釈が定常状態に到達するが、結果的に、入ってくるサンプルがフィルタにおいて希釈され汚染されて、もはやその純粋な元の状態ではない状態でフィルタから外に出る。この問題への解決策は、別のカプニアによる特許出願である第61/872,270号に記載されており、その全体が本明細書に組み入れられる。
【0012】
図4は、センサ信号の応答時間の問題と、センサがピーク・ガス・レベルを測定することは潜在的に不可能であることを示している。この場合でも、カプノメトリが例として用いられているが、測定が他の被検体であることもあり得る。示されている呼気速度は、60bpmである。肺胞ガスの呼気時間は、約250から275msecである。センサの応答時間は、275msecより長い。ピーク・センサ信号は3.8%を登録し、他方で実際のピーク・パーセンテージは5.0%である。よって、このシステムは、これらの臨床条件の下では、CO
2を測定することができない。次に、残りの図面を参照して、
図4に記載されている問題への解決策が説明される。
【0013】
図5から
図14には、新規な呼気ガス・サンプリングおよび測定システムが記載されている。応答時間の制約という問題を克服するために、このシステムは、複数の呼気からの吐き出されたガスの適切な部分を保存し、複数サンプルという一定量を、センサを通過して送る。たとえば、この一定量が、それぞれの継続時間が150msecである2回の呼気からの終末ガス・サンプルで構成され得る場合には、結果的に組み合わされるサンプルは、したがって、継続時間が300msecということになる。このユニークな設計および方法により、センサは、いまやその長さが150msecに過ぎないのではなく300msecであるために、その一定量におけるCO
2の完全な振幅を登録するのに十分な時間を有することになる。
【0014】
図5には、患者インレットPt、インレット弁V1、周囲インレットamb、呼気被検体センサS、サンプル収集コンパートメント140、バイパス・チャネル142、サンプル収集コンパートメントへのインレットにおける弁V2、サンプル収集コンパートメントへの他端における弁V3、ポンプPおよび排気口Eによって構成される装置150の空気力学が記載されている。弁V1、V2およびV3は、それぞれが、3つのポートa、bおよびcを有し得るが、cポートは常に開状態であり、システムは、収集およびテスト・シーケンスの最中に、ポートaとポートbとの間でトグルする。
図5では、患者からのガスは、真空ポンプPによって、たとえば装置の患者インレットPtに取り付けられた鼻カニューレまたはサンプリング管を通過して、装置の中に引き込まれる。患者ガスは、ターゲットとなる呼気からの終末サンプルがセンサSによって同定されて弁V2に到着するまで、(弁V2のポートbから弁V3のポートbまで)バイパス142を通過して、サンプル収集領域140を迂回するように移動する。この時点で、
図6に示されるように、呼気終末サンプルはサンプル収集領域140の中に入ることが許可され、その領域において適切に整列され位置決めされると、患者ガスは、もう一度、
図7に示されているように、バイパスを通過して、この領域を迂回するように方向転換される。結果的には、サンプル収集領域は、
図8に示されるように、2以上の呼気からの2以上の終末サンプルで満たされる。最後に、
図9に示されているように、ポンプの方向が反転され、弁V1において患者インレットが閉じられ周囲ポートambが開かれて、一定量のサンプルが、センサSを通過して押し戻されるのであるが、周囲空気がその背後の排気口Eから生じて、弁V1の周囲ポートbから外に出る。センサSは、一定量のサンプルにおけるCO
2を、そのサンプルがセンサSを横断する際に測定して、etCO
2値を登録する。
【0015】
次に
図10を参照すると、そこから複数の呼気終末サンプルが収集される呼気は、非定常状態の呼吸、エピソード的な呼吸または異常呼吸の場合には、非連続的な呼気に由来する場合があり得る。たとえば通常の1回の呼吸量の呼気など一定の呼気タイプを表す呼気を目標とするために、そして、それ以外の呼気を排除するために、呼気パターン・アルゴリズムが用いられ、それにより、測定のために求められる呼気のタイプとして真に同質な一定量のサンプルが得られる。特定の状況のために何が正常で何が正常でないかを確立するために、呼気測定しきい値とそれ以外の呼気基準とが、将来に向かって、リアルタイムで、もしくは遡及的に、またはこれらの組合せで、定義される。
図10に示されているように、呼気9、14および19は基準に合格し、受け入れ可能であると見なされ、サンプル収集の目標とされる。
図8に戻ると、これらの3つの目標とされる呼気からの呼気終末ガス・サンプルが、収集され、サンプル・コンパートメント140に保存されることが示されている。
【0016】
図11では、
図10からの呼気9が、より詳細に示されている。この例では、複数の呼気から、最後の150msecの吐き出された呼気を取得して測定することが望まれる。最後の150msecということにより、非常に高速の呼気速度である場合にも、このサンプルが深肺サンプルであり、血液の中に何が存在するかを表すものであることが保証される。この時間はデフォルト値であり得るのであって、または、臨床的応用および/もしくは支配的な呼吸パターンに基づいて、自動的にもしくは手動で、構成可能であり得る。
図12は、これらのサンプルをシャントし、分離し、サンプル収集領域に保存して、これらのサンプルと他のガスとの混合を回避するための、また、十分な容量の呼気終末の深い肺胞ガスの一定量のサンプルの同質性を保証するための、
図5から
図8における弁V2およびV3のタイミングおよび動作を説明している。ターゲットとされる最初および最後の呼気の終末サンプルがサンプル収集領域からオーバフローし、サンプル1の開始部分がサンプル収集領域から飛び出し、サンプル3の終端部分がサンプル収集領域に僅かに侵入していないように、弁を制御することが有益である場合があり得る。この「過剰に満たす(オーバーフィリング)」という技術は、サンプルにおけるターゲットとされるガスの濃度を汚染するように作用し得る呼気終末ではないサンプルを、サンプル収集領域がまったく含まないことを保証するのに役立つ。
図13は、一定量の呼気終末サンプルがセンサに送り戻されるときの、
図9に示された動作ステップの弁タイミングおよび動作を示し、また、その一定量のサンプルへのセンサの対応する信号応答を示す。見ることができるように、センサは、この場合、その一定量における被検体レベルに応答するために十分な時間を有し、正確な測定が行われ、報告され得る。
図11から
図13では、150msは、捕捉対象として望まれ選択されたサンプルの継続時間であり(呼気の最後の150msec)、t0は、最初の適切なサンプルの呼気の最終部分がセンサSから出る時刻であり、t1=t2-150msecであり、t2=t0+Xxmsecであり、XXmsecはガスがセンサSアウトレットからV2のインレットまで移動する時間である。
【0017】
図14では、例示的な実施形態を用いる例が示されている。たとえば、呼気速度は、「クリップされた」カプノメトリ信号を用いて、報告され得る。これは、たとえば1分間の間、生じ得るのであるが、その間に、複数のターゲットとされる呼気からの複数の呼気終末サンプルが収集され保存される。次に、その1分の期間の後では、呼気速度の報告が約3秒から15秒の間一時的に中断され得るが、その間に、一定量の呼気終末サンプルがCO
2センサに送られ、CO
2レベルが、上述した方法によって報告され得る。そして、たとえば、1分間の呼気速度報告、etCOの報告のための10秒間、1分間の呼気速度報告、etCOの報告のための10秒間というように、以上のシーケンスが反復される。
【0018】
図15から
図18は、別の空気力学サンプリングおよび測定システムを説明している。この別の例では、ポンプの方向を反転させる必要がないのであるが、これは、一定のタイプのポンプ技術において有益であり、滑らかで一貫したポンプ速度およびガス流量動作が保証される。
図15では、装置は、バイパス管142に結合された追加的なインレット弁V5、周囲インレット・ポートamb2を有するV5、反転フロー弁V4、プッシュ管144および反転管146を備える。
図15に示されているように、患者からのガスは、患者インレットPt、弁V1、センサC、弁V5、弁V3、ポンプP、弁V4および外部排出口Eを通過して、システムに入る。
図16に示されているように、サンプリングが望まれる呼気が同定されると、V2およびV3は、呼気終末サンプルをサンプル収集管140の中にシャントするように切り換わる。同定されターゲットとされる複数の呼気終末サンプルは、
図5から
図9に示された場合と同様に、サンプル収集領域に、収集され、適切に整列され、位置決めされる。
図17に示されているように、次には、弁V1がambインレットに切り換えられることにより、サンプル収集領域以外のガス経路の様々な部分における患者ガスは、弁V1を通過して引き込まれる周囲空気により、C、V5、バイパス管142、V3、ポンプPおよびV4を通過して、一掃される。システムを一掃した後には、V2、V3、V4およびV5が
図18に示されるように切り換わることにより、周囲空気は、この時点で、V5のポートbから引き入れられ、V3のポートbおよびポンプから引き入れられ、V4のポートcおよびポートbを通過してサンプル収集領域に押し込まれて一定量のサンプルをV2のポートcおよびポートbを通過して押し出し、センサCを通過し、V1から周囲空気に至る。本明細書に記載されているシステムは、(a)当初の呼吸パターン測定およびサンプル・ターゲティングと(b)一定量の複数サンプルにおける被検体測定との両方を実行するための単独のセンサを含むことがあり得るし、または、たとえば、(a)のための1つのセンサと(b)のための第2のセンサというように、複数のセンサを含むこともあり得る。
【0019】
図19から
図22は、追加的な空気力学的構成を示す。
図19に示されるように、患者ガスは、Pt、v1、S1、v5、t1、v2、v3、P、v4を通過し、Eから外に出る。
図20に示されるように、ターゲットである呼気からの終末サンプルがv2に到達すると、弁v2およびv3が切り換わり、呼気終末サンプルがサンプル収集管141の中に入ることを許容し、次には、これらの弁が元のように切り換わり、部分143を通過して流れることを許容して、呼気終末サンプルを分離する。次に、
図21に示されるように、サンプル収集管141が、複数のサンプルからの呼気終末ガスで十分に満たされると、周囲インレットamb3から弁t1を通じて周囲空気が引き込まれて、不所望の患者ガス部分をシステムの各所から一掃する。
図22では、amb3からの周囲空気は、一定量の呼気終末サンプルを、v4、v3、v2およびt1を経由してv1にプッシュして、センサS1を通じてv5経由で排気口E2から排出する。
【0020】
異なる空気力学的分岐構造と、弁およびポンプの異なる組合せおよび位置とが考察されるが、共通するテーマは、呼気終末サンプルが十分な呼気終末サンプルが収集されるまで保存されなければならない、ということに注意されるべきであり、また、捕捉された呼気終末サンプルのそれぞれの継続時間が、相互に加算されると、一定量のサンプルにおいてガスを測定するのに用いられているセンサの信号応答時間に少なくとも近接している、好ましくはそれに等しい、最も好ましくはそれよりも長い継続時間にならなくてはならない、ということにも注意されるべきである。
【0021】
本明細書に記載されているシステムは、呼気の他の部分からのサンプルだけでなく、呼気終末ガス・サンプルを収集して測定するのに有用であり得る。このシステムは、たとえば呼気中のCO2を測定するのに用いられ得るし、または、CO、H2、NOおよびそれ以外などの他のガスを測定するのに用いられ得る。このシステムは、気体であるマーカだけでなく、呼気中の他の非気体状の物質を測定するのにも用いられ得る。開示されているシステムは、周期的、断続的、半連続的、または連続的な測定およびモニタリングに用いられ得る。以上の説明を通じて高速の呼吸パターンを克服することが用いられているが、本開示は、他の呼吸パターンによる課題を克服するのにも適用され得る。