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特許7048667相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20220329BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20220329BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220329BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/14
H02J3/14 160
H02J3/00 130
H02J13/00 311T
H02J13/00 301A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020091160
(22)【出願日】2020-05-26
(62)【分割の表示】P 2017546644の分割
【原出願日】2015-03-06
(65)【公開番号】P2020144930
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】517451940
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ ヨーロッパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ、マヤ
(72)【発明者】
【氏名】シュルケ、アネット
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ミシャ
【審査官】阿部 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-028720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0062195(US,A1)
【文献】国際公開第2013/084268(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/144756(WO,A2)
【文献】特開2002-010500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0259749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/14
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する方法において、各ユニットは、自己のエネルギーシステムを動作させるためにエネルギーを受け取る複数のユーティリティに接続され、少なくとも1つの動作エンティティによって、および/または、少なくとも1つのユーティリティによって、前記複数のユーティリティの第一ユーティリティの需要変更を要求する需要要求信号が提供され、
アグリゲータが
前記需要要求信号を受信し、
予測手段により、要求された需要変更の各ユニットへの割当ての影響の推定を各ユニットへ要求し、当該要求の応答として各ユニットから前記影響の推定を受け取り、前記第一ユーティリティの需要変更の各ユニットへの割当てが前記複数のユーティリティのうち前記第一ユーティリティ以外のユーティリティである第二ユーティリティの将来の動作に及ぼす影響を予測し、
最適化手段により、前記割当ての前記予測された影響を最小化するように前記要求された需要変更のユニットへの割当て実行する、
ことを特徴とする、相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する方法。
【請求項2】
割当てが動的に実時間で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最適化手段が、前記第一ユーティリティおよび/または前記第二ユーティリティの1つ以上の可能な将来の需要変更要求の予測および/または確率を考慮することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
予測および/または確率が、気象、時間、季節および/または活動に依存することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第二ユーティリティの将来の動作に対する影響が、前記第二ユーティリティの1つ以上の可能な将来の需要変更要求に対する影響を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記最適化手段が、少なくとも1つのユニットからのフィードバック情報および/または履歴データおよび/または気象予報を考慮することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ユニットからのフィードバック情報が、要求された期間にわたるユーティリティの可能な最大の変更すなわち低減または増大の推定を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ユニットからのフィードバック情報は、要求された期間にわたるユーティリティの可能な最大の変更すなわち低減または増大がユニットの接続先の前記第二ユーティリティの負荷にどのように影響するかの推定を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
履歴データが、割り当てられた需要変更の量および/または時系列および/または持続時間を含む、ユニットごとの過去の割当てプロセスを含むことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記最適化手段が、需要変更および/または適時応答性のサイズまたは量に関して、少なくとも1つの所定のユニットまたは各ユニットに対して、相異なるユーティリティ間の好適に学習された相関を考慮することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記最適化手段が、活動または事象について、快適さレベルおよび/または予定された動作条件に対する動作固有の優先レベルおよび/または重要業績評価指標KPI要件を考慮することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アグリゲータが、割り当てられた変更についてユニットに通知することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
アグリゲータが、割り当てられた需要変更に従ってユニットのエネルギーシステムを直接に制御することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのユニットが建物であり、および/または、前記少なくとも1つの動作エンティティがエネルギー計画エンティティもしくはユニットであることを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
相異なるユニットへのエネルギー供給を制御するシステムであって、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法を実行するシステムにおいて、
各ユニットが、自己のエネルギーシステムを動作させるためにエネルギーを受け取る複数のユーティリティに接続され、少なくとも1つの動作エンティティによって、および/または、少なくとも1つのユーティリティによって、前記複数のユーティリティの第一ユーティリティの需要変更を要求する需要要求信号が提供され、
アグリゲータが、
前記需要要求信号を受信する手段と、
要求された需要変更の各ユニットへの割当ての影響の推定を各ユニットへ要求し、当該要求の応答として各ユニットから前記影響の推定を受け取り、前記第一ユーティリティの需要変更の各ユニットへの割当てが前記複数のユーティリティのうち前記第一ユーティリティ以外のユーティリティである第二ユーティリティの将来の動作に及ぼす影響を予測する予測手段と、
前記割当ての前記予測された影響を最小化するように前記要求された需要変更のユニットへの割当てを実行する最適化手段と
を備えたことを特徴とする、相異なるユニットへのエネルギー供給を制御するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する方法に関する。各ユニットは、自己のエネルギーシステムを動作させるためにエネルギーを受け取る複数のユーティリティ(公益事業)に接続され、少なくとも1つの動作エンティティによって、および/または、少なくとも1つのユーティリティによって、あるユーティリティの、および/または、ある形態のエネルギーの需要変更を要求する需要要求信号が提供される。また、本発明は、相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する対応するシステムであって、好ましくは上記の方法を実行するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する方法およびシステムにおいて、各ユニットが自己のエネルギーシステムを動作させるためにエネルギーを受け取る複数のユーティリティに接続されたものは当技術分野において知られている。このような方法およびシステムにおいて、少なくとも1つの動作エンティティによって、および/または、少なくとも1つのユーティリティによって、あるユーティリティの、および/または、ある形態のエネルギーの需要変更を要求する需要要求信号が提供される。
【0003】
頭字語リスト:
DR:デマンドレスポンス(Demand Response, 需要応答)
DRAS:デマンドレスポンス自動化サーバ(Demand Response Automation Server)
DER:分散エネルギー資源(Distributed Energy Resources)
OpenADR:オープン自動化デマンドレスポンス(Open Automated Demand Response)
RES:再生可能エネルギー源(Renewable Energy Sources)
【0004】
本明細書において、ユーティリティおよびエネルギーネットワークという用語は相互交換可能なものとして用いられる。エネルギーの形態は、例えば、電気、ガスまたは熱である。
【0005】
RESやその他の種類のDERの高度な普及によって引き起こされたエネルギーシステムにおける進行中の変化により、多くのユーティリティプロバイダやユーティリティは、エネルギー管理のための可能な手段の1つとしてDRプログラムを提示している。エンドユーザの形態でDRプログラムに加入するユニットは、低供給または高需要のために資源が不足している状況において、通常使用に比べて自己の消費を変化させることに同意する。自己の負荷を減少させるユーザがユーティリティプロバイダから取得することになる報酬の種類は経済的なものであり、詳細はDR契約で規定される。
【0006】
OpenADRは、ユーティリティプロバイダと電力顧客との間でDR信号を送受信するように設計された通信モデルを通じてエネルギー消費を管理するために策定された標準である。OpenADRはまた、通信ユニットを通じてのさまざまなDRプログラムへの顧客応答の自動化を容易にするために使用されるDRAS(デマンドレスポンス自動化サーバ)に対して、第三者がどのようにインタフェースをとるかを規定している。
【0007】
DRプログラムは通常、電気エネルギーの提供に関する。しかし、消費の時間変化を要求することを必要としているのは電気事業者だけではない。例えば、地域暖房事業者は、特に制御不可能なRESにその供給が依存している場合には、全需要に応じることができないことが起こり得る。そこで、複数のユーティリティに対するDRを考慮するシステムが現れている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0008】
特許文献1には、相異なるユーティリティに対する複数のDRプログラムに顧客が加入することが記載されている。ユーティリティごとの顧客の将来需要の予測は、ユーティリティごとのCBL(Customer Baseline Load, 顧客ベースライン負荷)計算に基づく。顧客のユーティリティ需要は、CBLを確定することによって予測される。
【0009】
特許文献2には、単一のマスタメータで消費、資源生成のコスト、複数のユーティリティタイプをモニタするとともに、施設内の個々のユーティリティシステムのモニタおよび制御を行うことにより、可能なユーティリティコスト調整量を決定して費用効果を向上させるマルチユーティリティエネルギー制御システムが記載されている。消費レートはモニタされ、理論データおよび/または履歴データと比較されることで、消費における想定外の変化を特定するとともに、ピーク需要、サージ(急増)およびサグ(急減)を特定する。また、所定のパラメータに応答して現在のユーティリティ消費を調整することによりユーティリティ消費システムを制御するソフトウェアが開示されている。
【0010】
本明細書の以下の説明において使用するため、「コスト関数」という用語が以下のように定義される。
【0011】
数学的最適化、統計学、決定理論および機械学習において、損失関数あるいはコスト関数は、事象または1つ以上の変数の値を、その事象に伴う何らかの「コスト」を直観的に表す実数に写像する関数である。最適化問題は、損失関数を最小化することを目指す。目的関数は、損失関数か、またはそのマイナス(報酬関数あるいは効用関数と呼ばれることがある)であり、後者の場合には最大化が目指される。統計学では通常、損失関数はパラメータ推定のために用いられ、問題となる事象は、データのインスタンスに対する推定値と真の値との間の差の何らかの関数である(出典:ウィキペディア http://en.wikipedia.org/)。注意:コストは、現実の金銭的コストの場合もあるが、パフォーマンスKPIの低下であってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2011/074925A2号
【文献】米国特許第6122603号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、高効率で確実なエネルギー供給を可能とするために、相異なるユニットへのエネルギー供給を制御する方法およびシステムの改良およびさらなる展開を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、上記の目的は、請求項1の構成を備えた方法および請求項15の構成を備えたシステムによって達成される。
【0015】
請求項1に記載の通り、本方法は以下のことを特徴とする。すなわち、アグリゲータが需要要求信号を受信し、割当てが他のユーティリティの将来の動作に及ぼす影響を最小化するための、ユニットとの交渉プロセスに基づいて、要求された需要変更のユニットへの割当てを実行する。
【0016】
請求項15に記載の通り、本システムは、需要要求信号を受信し、割当てが他のユーティリティの将来の動作に及ぼす影響を最小化するための、ユニットとの交渉プロセスに基づいて、要求された需要変更のユニットへの割当てを実行するアグリゲータを備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明によって認識されたこととして、需要要求信号を受信し、要求された需要変更のユニットへの割当てを実行するアグリゲータを使用または提供することによって、非常に確実で効果的なエネルギー供給が可能となる。このような割当ては、前記割当てが他のユーティリティの将来の動作に及ぼす影響を最小化するための、ユニットとの交渉プロセスに基づく。こうして、交渉プロセスは、関連するユーティリティ間の依存関係を考慮して、該ユーティリティの均衡化されたパフォーマンスを提供するために、割当てが他のユーティリティに及ぼす影響を考慮する。これは重要な特徴である。というのは、ユーティリティは完全に独立ではないからである。例えば、大規模な建物やスポーツ施設の暖房に用いられる電力量を低減すれば、地域暖房ユーティリティの負荷に影響し、その逆も同様であろう。あるユーティリティの消費における現在の変更が他のユーティリティに及ぼす影響は、本方法によって考慮することができる。結果として、高効率で確実なエネルギー供給を、最適化された形でユーティリティの資源を用いて実現することができる。
【0018】
好ましい実施形態において、割当てが動的に実行されてもよい。このような動的割当ては、ユーティリティの変動する境界条件および/または環境コンテクストパラメータに非常に迅速に応答して、要求された需要変更の非常に敏感で効率的な割当てが提供される。このような割当ては、所定の期間後に実行されてもよい。好ましくは、割当ては、連続的に、または、境界条件および/または環境コンテクストパラメータのモニタされている変化(例えば気象条件の変化)によって起動されて、実時間で実行されてもよい。
【0019】
さらなる好ましい実施形態において、交渉プロセスが、前記ユーティリティおよび/または他のユーティリティの1つ以上の可能な将来の需要変更要求の予測および/または確率を考慮してもよい。このような予測を考慮して、割当ては、例えば、特定のユーティリティが、予測される将来の期間内に十分な量のエネルギーを提供することができないことを考慮することができる。その場合、前記特定のユーティリティを補助的なエネルギー供給のためにこの将来の期間内に選択することは、確実で効率的なエネルギー供給のためには適切でないであろう。しかし、ユーティリティの1つ以上の可能な将来の需要変更要求の予測だけが重要なのではなく、このような可能な将来の需要変更要求の確率も重要である。このような確率を考慮することによって、さらにユニットに対する確実で効果的なエネルギー供給が得られる。
【0020】
予測および/または確率が、相異なる境界条件および/または環境パラメータに依存してもよい。好ましくは、予測および/または確率は、気象、時間、季節および/またはユーティリティ、ユニットもしくはユニットのエネルギーシステムの活動に依存してもよい。
【0021】
さらなる好ましい実施形態において、他のユーティリティの将来の動作に対する影響が、該他のユーティリティの1つ以上の可能な将来の需要変更要求に対する影響を含んでもよい。換言すれば、割当ては、前記他のユーティリティの1つ以上の可能な将来の需要変更要求に対する影響を考慮して実行されてもよい。このようにして、将来の可能な需要変更要求が割当てにおいて考慮されることが可能となる。
【0022】
非常に効率的な割当てを行うため、交渉プロセスが、少なくとも1つのユニットからのフィードバック情報および/または履歴データおよび/または気象予報を考慮してもよい。このような交渉プロセスにより、相異なる境界条件および環境パラメータを考慮することが可能となる。
【0023】
好ましくは、ユニットからのフィードバック情報が、要求された期間にわたるユーティリティの可能な最大の変更すなわち低減または増大の推定を含んでもよい。こうして、アグリゲータは、要求された期間にわたるユーティリティに対するユニットの最大可能変更範囲に関して、相異なるユニットからの相異なる情報を使用することができる。
【0024】
さらに好ましくは、ユニットからのフィードバック情報は、要求された期間にわたるユーティリティの可能な最大の変更すなわち低減または増大がユニットの接続先の他のユーティリティの負荷にどのように影響するかの推定を含んでもよい。この情報は、他のユーティリティに対する影響を最小にして、要求された需要変更を非常に効率的に割り当てるのに役立つ。
【0025】
好ましい実施形態において、履歴データが、割り当てられた需要変更の量および/または時系列および/または持続時間を含む、ユニットごとの過去の割当てプロセスを含んでもよい。このような履歴データは、将来の状況におけるエネルギー供給を確実に予測するのに役立つ可能性がある。
【0026】
別法として、または追加的に、交渉プロセスが、好ましくは割り当てられた需要変更および/または適時応答性のサイズまたは量に関して、少なくとも1つの所定のユニットまたは各ユニットに対して、相異なるユーティリティ間の好適に学習された相関を考慮してもよい。このような相関は、将来の状況の現実的な予測を提供する。
【0027】
交渉プロセスにおいて、ユニットの個々の境界条件を考慮することができる。好ましくは、交渉プロセスが、好ましくはユニットに関する活動または事象について、快適さレベルおよび/または予定された動作条件に対する動作固有の優先レベルおよび/または重要業績評価指標KPI要件を考慮してもよい。
【0028】
非常に確実なエネルギー供給を行うため、アグリゲータが、割り当てられた変更についてユニットに通知してもよい。このような割り当てられた変更は、ユニットとの交渉プロセスの結果である。
【0029】
好ましい実施形態において、アグリゲータが、割り当てられた需要変更に従ってユニットのエネルギーシステムを直接に制御してもよい。割り当てられた需要変更を実施するさまざまな方法が可能である。ユニットのエネルギーシステムの制御のためにさまざまな通信システムを使用することができる。
【0030】
ユニットはさまざまなエンティティによって実現可能である。好ましい実施形態において、少なくとも1つのユニットが建物であってもよい。複数のユニットが建物キャンパスを構成してもよい。
【0031】
需要要求信号は少なくとも1つのユーティリティによって提供され得る。しかし、さらに好ましい実施形態において、需要要求信号は、少なくとも1つの動作エンティティによって提供されてもよい。このような動作エンティティは、エネルギー計画エンティティまたはユニットの1つであってもよい。こうして、例えばユニット内の再配置が実行された場合に、ユニットは需要要求信号によって割当てを開始することができる。これは、例えば、ユニットに対するさらなるエネルギーシステムの追加、または、建物に対するさらなる部屋の追加であってもよい。
【0032】
本発明の実施形態の重要な側面は以下のように要約される。
【0033】
本発明の実施形態は、複数の独立に動作するエネルギー管理ユニット間のマルチユーティリティエネルギー制御アグリゲータのための動的分配方法およびシステムを含み得る。本方法およびシステムにおいて、
・エネルギー変更要求が、外部のユーティリティシステムから、および/または、接続されたユニットの内部エネルギー管理システムから取得されることが可能であり、
・上記のエネルギー変更要求は、アグリゲータと、接続された動作ユニットとの間で通信されることにより、ユニットは、
・ユーティリティごとに変更許容範囲を交渉し、
・適用可能な制御システムまたはエネルギーシステムの情報を提供し、
・個々のユニットは、適切な制御システムまたはエネルギーシステムに対するアグリゲータ作動施行を許可し、
・アグリゲータは、
(1)サイズ、量、適時応答性等の変数に関して、各ユニットおよび接続されたユニット群に対する相異なるユーティリティ間の学習された相関、
(2)各ユニットの変更適応(サイズ、時系列、サービスレベル、持続時間に関する応答性/容量)の履歴、
(3)動作固有の優先レベル(例えば活動/事象について、例えば快適さレベル、予定された動作条件に対するKPI要件)、および、
(4)同一または異なるユーティリティの、ユニット群に対する今後の変更要求(気象、時間、季節、活動等のフレキシブルなコンテクストに依存する)の予測
を考慮した最適化分配モデルに従い、制御システムまたはエネルギーシステムの作動を実行し、オプションの今後の制御信号によりシステムのパフォーマンスを予測するステップと、複数の自律的に動作するユニット間の最適化された分配方式を計算するステップとを含む。
【0034】
ユニット群へのマルチユーティリティDR要求分配のための方法およびシステムの好ましい実施形態は、以下の特徴を備える。
【0035】
本方法は、以下のステップを備える。
1)所与のユーティリティに対して低減を要求するDR信号を受信する。
2)可能な最大の低減または増大と、その結果としての他のユーティリティに対する効果とを問い合わせるために、ユニットと通信する。
3)将来のDR低減/増大要求およびそれらの確率を予測する。
4)可能性の高い将来の要求に対する影響が最小になるように、現在の低減または増大の量を最適に割り当てる。
5)ユニットに対して、それらに割り当てられた低減/増大量を通知する。
6)ユニットのユーティリティ制御システムを通じてユーティリティ作動を施行する。
【0036】
本発明は、マルチサイト環境において複数のユーティリティに対するDR信号を同時に管理することにより、要求達成率を最大化し、他のユーティリティに対する副作用を最小化することができる。これは、要求分配の過程で、将来の可能性の高い要求を考慮することによって実現される。
【0037】
本発明の実施形態は、複数の協調するユニットにわたりエネルギー制御管理を行うシステムおよび方法を提案する。本システムおよび方法は、可能な将来のDR要求の予測と、あるユーティリティの消費における現在の変更が他のユーティリティに及ぼす影響とを考慮した需要応答要求分配を通じて、需要低減/増大制御を実施する。需要応答要求の分配は、需要応答プログラムに加入し、電力、温水暖房、ガス、水道等の複数のユーティリティプログラムを同時にサービスする機会を提供するユニット群のメンバー間で考慮される。高い要求達成率を実現するために、本方法は、ユニットへのDR要求を交渉し割り当てる際に、直近の変更要求に対する高い確率を考慮する。
【0038】
以上ではアグリゲータおよびマルチユーティリティシステムについて検討したが、あるユーティリティに対して要求された負荷変更が他のユーティリティに対する将来の要求に及ぼす影響をどのように最小化するかは未解決である。これは重要な問題である。というのは、ユーティリティは完全に独立ではないからである。例えば、大規模な建物やスポーツ施設の暖房に用いられる電力量を低減すれば、地域暖房ユーティリティの負荷に影響し、その逆も同様であろう。本発明の実施形態においては、現在の割当てが可能な将来のDR信号に及ぼす効果を考慮することにより、複数のユーティリティに対するDR信号を分配するアグリゲータの要求達成率を最大化することを目標とする。
【0039】
本発明の実施形態において、「交渉」という用語は、好ましくは、当技術分野において規定される通信プロトコルおよびそのメカニズム(例えばOpenADR)を通じて情報を交換することに適用される。これにより、アグリゲータおよびユニットは、どの程度、およびどの期間に、ユニットがエネルギー変更要求を充足することができるかについて合意に達することができる。交渉は、1回以上の通信交換からなることが可能である。注意:最も広い意味で、アグリゲータがある特定の期間にある量だけエネルギーを低減するようユニットに指示することもまた、交渉とみなされる。
【0040】
本発明を好ましい態様で実施するにはいくつもの可能性がある。このためには、一方で請求項1に従属する諸請求項を参照しつつ、他方で図面により例示された本発明の好ましい実施形態についての以下の説明を参照されたい。図面を用いて本発明の好ましい実施形態を説明する際には、本発明の教示による好ましい実施形態一般およびその変形例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明によるDR要求分配により相異なるユニットへのエネルギー供給を制御するシステムの実施形態を模式的に示す図である。
図2】本発明による、変更要求分配を行う方法の実施形態を説明する図である。
図3】相異なる施行の実施形態におけるアグリゲータの最適化決定の作動施行を模式的に示す図である。
図4】本発明によるアグリゲータサーバとユニットとの間の可能な通信を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明による相異なるユニットへのエネルギー供給を制御するシステムの実施形態を模式的に示している。図1は、複数の(相互に関係のある)エネルギー次元に関してフレキシブルな独立のエネルギー制御ユニットの集合の下で分配されるエネルギー変更要求に(例えばDR信号を通じて、キャンパス内スケジューリングユニットを通じて)サービスするアグリゲータを通じて収容された、マルチユーティリティエネルギー制御管理機能のためのシステムを示している。変更要求は、通信ネットワーク、好ましくはインターネットを通じて、m個の相異なるユーティリティに対してアグリゲータに到来する。最終顧客(ここではユニット)は、上記のユーティリティへのネットワーク接続を有する。アグリゲータは、ユニットから受信されるフィードバック、履歴データ、および気象予報等の追加情報に基づいて、要求される低減/増大の量をどのように割り当てるかを決定する。アグリゲータにおけるエネルギー制御管理機能の主目標は、
(1)ユニットの変更適応(例えばサイズ、時系列、サービスレベル)の履歴、
(2)同一または異なるユーティリティの、ユニット群に対する今後の変更要求(好ましくは気象、時間、季節に依存する)の予測、
(3)サイズおよび量に関するユニット固有のマルチユーティリティ相関の学習、および
(4)動作固有の優先レベル(例えば快適さレベルに対するKPI要件)
を考慮して、受信される変更要求を高いレートで達成し、複数のユニット間で動的な分配方式を実現することである。
【0043】
本発明では、ユーティリティの要求された低減/増大量を分配しながら今後のエネルギー変更要求を予測し、現在の変更割当てが近い将来の変化を必要とする可能性のあるユーティリティに及ぼす効果を最小化しようと試みることを提案する。提案される方法の主要な考え方を図2に示す。
【0044】
以下の記述では、現在主要な関心のあるDR信号によって実現される消費変更要求のみに関わる本発明の一例を説明する。変更要求の他の出所としては、例えばキャンパスエネルギーネットワークにおけるエネルギー計画エンティティが挙げられる。
【0045】
アグリゲータは、ユーティリティkおよびユーティリティkが低減されるべき期間を所望の低減量とともに指定するDR要求を受信する。このDR信号に応じて、アグリゲータは、各ユニットに対して、指定された期間にわたるユーティリティkの最大可能低減量の推定と、この低減がユニットの接続先の他のユーティリティの負荷にどのように影響するかの推定を要求する。このフィードバックは、あるユーティリティにおける低減が他のユーティリティにどのように影響するかをモデル化することが可能なDRモジュールによって提供される。アグリゲータはまた、現在の要求に関連する期間にわたって起こり得る将来のDRと、これらの事象の確率を予測する。これは、履歴データおよび気象予報に基づいて行われる。これらすべてのデータが用意されると、次のステップで、アグリゲータは、ユーティリティkにおける低減をユニットに割り当て、近い将来の(低減)要求の対象となる可能性が高いユーティリティに対するその効果を最小化しようとする。この要求は、本発明により、施行されるべき対応する制御コマンドに変換される。最後のステップで、アグリゲータは、ユニットに対して要求された低減についてユニットに通知し、ユニットのユーティリティ制御システムの制御施行が実行される。
【0046】
アグリゲータとユニットとの間で発生する通信プロセスをステップごとに図4に示す。第1ステップで、アグリゲータは、到着した集約されたDR要求の指定をすべてのユニットへ送信する。この指定は、低減される必要のあるユーティリティ(k)、低減が要求される期間(tstartからtendまでで与えられる)、および所望の低減量Aを含む。各ユニットiは、ユーティリティkの最大可能低減量(uk_max )と、この低減がすべての他のユーティリティに及ぼす影響の推定(u ,...,u として与えられる)を返送する。最後のステップで、アグリゲータは、各ユニットiへ、その割り当てられた低減量α*uk_max (ただしα∈(0,1))を送信する。
【0047】
好ましい一実施形態において、各ユニットは、相異なるユーティリティに関連する相異なる制御可能なシステムに接続される。各ユニットの制御モジュールはアグリゲータと対話し、代理施行(DELEGATE ENFORCED)モードにおける管理情報[ctrl(α*uk_max )]を取得し、当技術分野で規定された通信プロトコルを通じて直接的に、または、中間の相互接続されたシステムを通じて間接的に、制御可能システムを作動させる[act(α*uk_max )]。
【0048】
別の好ましい実施形態において、制御可能システムはアグリゲータに直接に接続される。すなわち、アグリゲータは、当技術分野で規定された通信プロトコルを通じて制御可能システムを制御することが許可される。本実施形態の場合、アグリゲータ制御ユニットが、作動を通知するために管理情報[ctrl(α*uk_max )]をユニットの制御モジュールへ送信してもよい(またはこれは省略してもよい)が、アグリゲータサーバから直接施行(DIRECT ENFORCED)モードで制御可能システムを[act(α*uk_max )]によって直接に作動させるか、または、遠隔施行(REMOTE ENFORCED)で、ユニットの場所に遠隔収容されたアグリゲータ制御ユニットを通じて作動させる。詳細は図3を参照。
【0049】
本発明の変形例において、ユニットがアグリゲータとの通信を開始し、例えば指定された時間範囲にわたり必要なエネルギーの追加または低減についてアグリゲータに通知することが可能である。この情報は、過去のエネルギー使用統計、エネルギー予報等に由来してもよい。そしてアグリゲータはこの情報を用いて、本発明に規定されるように、アグリゲータに接続された他のユニットに対して適切なエネルギー変更を要求する。
【0050】
複数の建物に対するDRの場合の具体的実施形態
m個のユーティリティのDRプログラムに加入し同じアグリゲータによって連携されたn個の大規模な建物B,...,Bがある場合、ユーティリティkを量Requestedだけ期間(tstart,tend)の間に低減する信号を受信した後、アグリゲータは、各建物の最大可能低減量(建物iに対してuk_max で表す)と、この低減の結果として他のユーティリティに生じるコストu ,...,u について問い合わせる。結果のコストu は、ユーティリティkをuk_max だけ低減することがどの程度ユーティリティjに影響するかについての、建物iの推定である。u の値は、ユーティリティkにおける低減によって引き起こされる影響に依存して正にも負にもなり得る。ユーティリティkにおける低減がユーティリティjにおける増大につながる場合、値は正になるであろう。しかし、ユーティリティkおよびjが第3のユーティリティによって置換され得るプロセスの入力として互いに結合されている場合には、逆の可能性もある。
【0051】
次のステップで、アグリゲータは、履歴データおよび、おそらくは気象予報に基づいて将来のDR事象を予測する必要がある。この予測は、期間(tstart,tend)にわたるユーティリティkにおける低減によりユーティリティが影響される期間のみに制限される。可能性のある事象に加えて、アグリゲータは、その確率も予測すべきである。この種の予測のために、ベイジアンネットワークを使用可能である。このようにして、可能性の高い事象の集合とそれらの確率が得られる(E={(e,p),...,(e,p)})。あるしきい値pborderを用いて、pborderよりも高い確率を有する事象を、可能性が高いものとして考慮することができる。ユーティリティhにおける低減を要求する事象eの確率pが少なくともpborderであるようなすべてのユーティリティインデックスhの集合をHで表す。
【0052】
この段階で、ユーティリティkにおける低減を建物に割り当てるために、アグリゲータは、下記の最適化問題を解く必要がある。制御変数はα,...,αであり、建物B,...,Bに対して要求される最大可能低減量uk_max ,...,uk_max の割合をそれぞれ表す。この問題を解くために、遺伝的アルゴリズムや疑似アニーリング等の標準的な最適化方法のいずれも使用可能である。この具体的実施形態の場合、問題の定式化が線型なので、それを解くために線型計画法が使用可能である。
【0053】
問題の定式化:
目的関数:
【数1】
【0054】
目的は、近い将来に低減が要求される確率が高いユーティリティ(h∈H)に対して、要求された低減が及ぼす影響を最小化することである。wは、相異なるユーティリティに相異なる重要度を与えるために用いられる重み因子である。重み因子は、具体的な応用事例に応じて選択されるべきであるが、1つの選択肢は、事象確率pを相対的重要度の尺度として使用することである。ユーティリティhに対するコストは、
【数2】
として推定される。ただしαは制御変数(建物Bに対して要求される低減量α*uk_max を決定する)であり、u は、建物Bにおけるユーティリティkの低減uk_max に対するユーティリティuにおけるコストである。この関数は、ユーティリティiにおけるコストが、ユーティリティkの低減とともに線型に増減すると仮定してコストの推定を行う。
【0055】
制約:
所望の低減量全体を次のように割り当てることを試みるべきである。
【数3】
ただし、εは、要求された低減量からの許容されるずれを表す。要求された低減が達成不可能な場合によりよく振る舞うもう1つの可能なアプローチは、この絶対値に、重み因子付きで目的関数を加算することである。制約を用いたアプローチは、問題が実行不可能な場合に、要求される値を低くした問題の再実行を必要とする。
【0056】
制御変数が範囲[0,1]に属することを要求するさらに2つの制約群がある。
1)すべてのiについてα≧0
2)すべてのiについてα≦1
【0057】
問題が解けた後、各建物Bを受け持つユニットは、要求された低減量α*uk_max について通知され、それに従って建物管理システムを制御する。本実施形態の変形例において、アグリゲータは、最適化問題を解いた後、建物管理システムを直接に制御することが許可される。その場合、個々のユニットごとに低減要求を通知することは省略可能である。
【0058】
上記の説明および添付図面の記載に基づいて、当業者は本発明の多くの変形例および他の実施形態に想到し得るであろう。したがって、本発明は、開示した具体的実施形態に限定されるものではなく、変形例および他の実施形態も、添付の特許請求の範囲内に含まれるものと解すべきである。本明細書では特定の用語を用いているが、それらは総称的・説明的意味でのみ用いられており、限定を目的としたものではない。
図1
図2
図3
図4