(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】被写界深度延長及び遠見視力向上を伴う眼科インプラント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2020176479
(22)【出願日】2020-10-21
(62)【分割の表示】P 2019146997の分割
【原出願日】2015-09-08
【審査請求日】2020-10-21
(32)【優先日】2014-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2014-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504363706
【氏名又は名称】スター サージカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】ピント,カンディド,ディオニシオ
(72)【発明者】
【氏名】フェイ,コンスタンス,エリザベス
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-510041(JP,A)
【文献】特開2011-041826(JP,A)
【文献】特表2013-533027(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0057202(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1レンズ及び第2レンズにより構成され、改変された単眼視野を提供するためにそれぞれ対象の第1の眼及び第2の眼にインプラントされるように構成されたレンズ対であって、
前記第1レンズは、正の被写界深度を有し、
前記第1レンズは、非球面を含む前面と、後面とを有し、且つ透明材料を含む光学部を含み、
前記第1レンズの前記前面と前記後面とは、4ミリメートル~6ミリメートルの開口サイズを有する模型眼に前記第1レンズの前記光学部が挿入されるときに、0ジオプトリ(D)~2.0ジオプトリ(D)又は0D~2.5Dの範囲内の少なくとも90%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され、前記第1レンズの前記平均
変調伝達関数(MTF
)値は、軸上物体について明所視の視感度関数によって重み付けされ
た400nm~700nmの波長に積分された100本/ミリメートルでの
前記平均変調伝達関数(MTF
)値を含み、
前記第2レンズは、負の被写界深度を有し
前記第2レンズは、非球面を含む前面と、後面とを有し、且つ透明材料を含む光学部を含み、
前記第2レンズの前記前面と前記後面とは、4ミリメートル~6ミリメートルの開口サイズを有する前記模型眼に前記第2レンズの前記光学部が挿入されるときに、-2.0D~0D
又は-2.5D~0Dの範囲内の少なくとも90%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで0.1~0.4の
前記平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され、前記第2レンズの前記平均
変調伝達関数(MTF
)値は、軸上物体について明所視の視感度関数によって重み付けされ
た400nm~700nmの波長に積分された100本/ミリメートルでの
前記平均変調伝達関数(MTF
)値を含み、
前記第1レンズ及び前記第2レンズがそれぞれ対象の前記第1の眼及び第2の眼にインプラントされた際に、前記第
1レンズの前記正の被写界深度がより近い物体の方向における延長被写界深度を対象に提供し、前記第
2レンズの前記負の被写界深度がより遠い物体の方向における延長被写界深度を対象に提供する、レンズ対。
【請求項2】
前記第
1レンズ及び前記第
2レンズにより提供された被写界深度は、前記第
1レンズ又は前記第
2レンズの単独により提供される被写界深度よりも大きい、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項3】
前記模型眼は、Liou-Brennan模型眼、Badal模型眼、アリゾナ模型眼及びインディアナ模型眼からなる群から選択される、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項4】
前記第1レンズ又は前記第2レンズの前記
平均変調伝達関数
(MTF)値は、前記第1レンズ又は前記第2レンズの前記光学部が有水晶体構造の前記模型眼に挿入されるときに提供される、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項5】
前記第1レンズ又は前記第2レンズの前記
平均変調伝達関数
(MTF)値は、前記第1レンズ又は前記第2レンズの前記光学部が無水晶体構造の前記模型眼に挿入されるときに提供される、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項6】
前記第1レンズ及び前記第2レンズの1つ又は複数は、ハプティック部を含む、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項7】
前記第1レンズ又は前記第2レンズの前記光学部は光軸を有し、前記光軸に沿っ
て100ミクロン~700ミクロンの厚みを有する、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項8】
前記第1レンズ又は前記第2レンズの前記光学部は光軸を有し、前記光軸に沿っ
て700ミクロン~4ミリメートルの厚みを有する、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項9】
前記第1レンズ又は前記第2レンズの前記光学部は、前記光軸に沿っ
て700ミクロン~2ミリメートルの厚みを有する、請求項8に記載のレンズ対。
【請求項10】
前記開口サイズは6ミリメートルである、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項11】
前記開口サイズは4ミリメートルである、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項12】
前記第1レンズの前記前面と前記後面とは、0D~2.0D又は0D~2.5Dの範囲内の少なくとも95%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで0.1~0.4の
前記平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形される、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項13】
前記第2レンズの前記前面と前記後面とは、-2.0D~0D又は-2.5D~0Dの範囲内の少なくとも95%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで0.1~0.4の
前記平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形される、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項14】
前記第1レンズの前記前面と前記後面とは、4ミリメートル~6ミリメートルの開口サイズを有する前記模型眼に前記光学部が挿入されるときに、0D~2.0D又は0D~2.5Dの範囲内の少なくとも90%の物体のバージェンスに、位相反転なく
前記平均変調伝達関数(MTF)
値を与えるように成形される、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項15】
前記第1レンズの前記前面と前記後面とは、4ミリメートル~6ミリメートルの開口サイズを有する前記模型眼に前記光学部が挿入されるときに、0D~2.0D又は0D~2.5Dの範囲内の少なくとも95%の物体のバージェンスに、位相反転なく
前記平均変調伝達関数(MTF)
値を与えるように成形される、請求項14に記載のレンズ対。
【請求項16】
前記第2レンズの前記前面と前記後面とは、4ミリメートル~6ミリメートルの開口サイズを有する前記模型眼に前記光学部が挿入されるときに、-2.0D~0D又は-2.5D~0Dの範囲内の少なくとも90%の物体のバージェンスに、位相反転なく
前記平均変調伝達関数(MTF)
値を与えるように成形される、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項17】
前記第2レンズの前記前面と前記後面とは、4ミリメートル~6ミリメートルの開口サイズを有する前記模型眼に前記光学部が挿入されるときに、-2.0D~0D又は-2.5D~0Dの範囲内の少なくとも95%の物体のバージェンスに、位相反転なく
前記平均変調伝達関数(MTF)
値を与えるように成形される、請求項16に記載のレンズ対。
【請求項18】
前記第1レンズは前記対象の利き眼にインプラントされるように適合され、前記第2レンズは前記対象の非利き目にインプラントされるように適合された、請求項1に記載のレンズ対。
【請求項19】
前記第1レンズは遠見視力を矯正するように構成され、前記第2レンズは近見視力を矯正するように構成された、請求項1に記載のレンズ対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先出願の言及による組込み]
本願は、それぞれ2014年9月9日、2014年9月10日、2015年4月17日出願である米国仮特許出願第62/048135号、米国仮特許出願第62/048705号、米国仮特許出願第62/149481号の優先権を主張する。各優先出願の開示全体が言及によって本願明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は眼科インプラントに関し、例えば被写界深度延長を伴う眼科インプラントに関する。
【背景技術】
【0003】
図1はヒトの眼の概略図である。
図1に示されるように、ヒトの眼100は、角膜110、虹彩115、天然水晶体120、及び網膜130を含む。光は角膜110を介して眼100に入り、虹彩115中心の開口である瞳孔に向かう。虹彩115と瞳孔とは眼100に入る光量の調節を補助する。明るい照明条件では、虹彩115は瞳孔を閉じてより少ない光を取り入れ、暗い照明条件では、虹彩115は瞳孔を開いてより多くの光を取り入れる。虹彩115の後ろは天然水晶体120である。角膜110及び水晶体120は網膜130に向かって光を屈折し焦点を合わせる。視力20/20の眼100では、水晶体120は、眼の後部へと網膜130に光を集める。網膜130は光を感知し、視神経140を介して脳へと送られる電気インパルスを生成する。眼が適切に光を集めない場合は、矯正及び/又は人工レンズが用いられてきた。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部(optic)を包含し得る。また、レンズは、インプラントされたときに光学部を眼に付けるために光学部のまわりに配置されたハプティック(haptic)部も含み得る。光学部は前面と後面とを含み得る。光学部がメニスカス形状であるように、前面は凸状であり得、後面は凹状であり得る。凸状前面と凹状後面とのそれぞれには表面頂点があり得る。光学部は表面頂点を通過する光軸を有し得る。種々の実施形態において、光軸に沿った厚みは約100~700マイクロメートル(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)であり得る。さらに、前面と後面とは非球面を含み得る。
【0005】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。また、レンズは、インプラントされたときに光学部を眼に付けるために光学部に対して配置された少なくとも1つのハプティックも含み得る。光学部は前面と後面とを含み得る。光学部がメニスカス形状であるように、前面は凸状であり得、後面は凹状であり得る。凸状前面と凹状後面とのそれぞれには表面頂点があり得る。光学部は表面頂点を通過する光軸を有し得る。種々の実施形態において、前面と後面とは非球面を含み得る。前面は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動でオフセットされた円錐又は双円錐を含む非球面形状を有し得る。
【0006】
そうした一部の実施形態において、非球面高次関数は、少なくとも1つの偶数次項a2nr2nを含み得、nは整数、a2nは係数、rは光軸からの半径距離である。例として、非球面高次関数は2次項a2r2を含み得、a2は係数、rは光軸からの半径距離である。他の例として、非球面高次関数は4次項a4r4を含み得、a4は係数、rは光軸からの半径距離である。また非球面高次関数は6次項a6r6を含み得、a6は係数、rは光軸からの半径距離である。さらに、非球面高次関数は8次項a8r8を含み得、a8は係数、rは光軸からの半径距離である。レンズの一部の実施形態では、光学部は、光軸に沿って約100~700ミクロン(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)の厚みを有し得る。種々の実施形態において、前面は摂動でオフセットされた双円錐を含む非球面形状を有する。
【0007】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。また、レンズは、インプラントされたときに眼における光学部に対して配置された少なくとも1つのハプティックをも含み得る。光学部には前面と後面とを含み得る。光学部がメニスカス形状であるように、前面は凸状であり得、後面は凹状であり得る。凸状前面と凹状後面とのそれぞれには表面頂点があり得る。光学部は表面頂点を通過する光軸を有し得る。種々の実施形態において、前面と後面とは非球面を含み得る。後面は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動によりオフセットされた円錐又は双円錐を含む非球面形状を有し得る。種々の実施形態において、後面は摂動でオフセットされた双円錐を含む非球面形状を有する。
【0008】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。光学部には前面と後面とがあり得る。前面は非球面を含み得る。光学部が、2~6ミリメートル、3~6ミリメートル、又は4~6ミリメートルの開口サイズ(例として、開口サイズは2mm、3mm、4mm、6mm、これらの範囲内の任意の値、又はそうした値により構成される任意の範囲であり得る)を有するヒトの眼に挿入されるときに、前面と後面とが、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも90%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(modulation transfer function、MTF)値を与えるように成形され得る。平均MTF値は、軸上物体について明所視の視感度関数によって重み付けされた約400~700nmの波長に積分された100本/ミリメートルでのMTF値を含み得る。
【0009】
種々の実施形態において、ヒトの眼は水晶体を含み、水晶体の前方に光学部が挿入されるときに平均変調伝達関数値が与えられる。他の種々の実施形態において、ヒトの眼は水晶体を含まず、水晶体に代えて光学部が挿入されるときに変調伝達関数値が与えられる。レンズはハプティック部をさらに含み得る。さらに、光学部は光軸を有し得、光軸を通過する厚みは約100~700ミクロン(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)であり得る。
【0010】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。光学部には前面と後面とがあり得る。前面は非球面を含み得る。光学部が、2~6ミリメートル、3~6ミリメートル、又は4~6ミリメートルの開口サイズ(例として、開口サイズは2mm、3mm、4mm、6mm、これらの範囲内の任意の値、又はそうした値により構成される任意の範囲であり得る)を有する模型眼に挿入されるときに、また前面と後面とが、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも90%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され得る。平均MTF値は、軸上物体について明所視の視感度関数によって重み付けされた約400~700nmの波長に積分された100本/ミリメートルでのMTF値を含み得る。
【0011】
模型眼はLiou-Brennan模型眼を含み得る。代替的に、模型眼はBadal模型眼を含み得る。さらに模型眼はアリゾナ模型眼又はインディアナ模型眼を含み得る。その他の規格化模型眼又は同等の模型眼が用いられてもよい。
【0012】
一部の実施形態において、変調伝達関数値は、光学部が有水晶体構造の模型眼に挿入されるときに与えられ得る。他の一部の実施形態において、変調伝達関数値は、光学部が無水晶体構造の模型眼に挿入されるときに与えられ得る。レンズはハプティック部をさらに含み得る。さらに、光学部は光軸を有し得、約100~700ミクロン(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)である、光軸を介した厚みを有し得る。
【0013】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。光学部には前面と後面と射出瞳とがあり得る。前面は非球面を含み得る。前面と後面とは、0~2.5ジオプトリ(D)の物体のバージェンスについて、光学部の射出瞳の波面にΦ(r)=a+br2+cr4+dr6+er8によって表される放射パワー(radial power)プロファイルを提供するように成形され得、rは、前面と後面との表面頂点を通過して延びる光軸からの半径距離であり、a、b、c、d、及びeは係数である。
【0014】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。またレンズは、インプラントされたときに光学部を眼に付けるために光学部に対して配置された少なくとも1つのハプティックも含み得る。光学部は前面と後面とを含み得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。光軸に沿った厚みは約100~400マイクロメートル(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)であり得る。さらに、前面及び後面の少なくとも1つは非球面を含み得る。一部の実施形態において前面は凸状であり得る。さらに後面は凹状であり得る。
【0015】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。またレンズは、インプラントされたときに光学部を眼に付けるために光学部に対して配置された少なくとも1つのハプティックも含み得る。光学部は前面と後面とを含み得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。前面及び後面の少なくとも1つは、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動を含む非球面を含み得、それら表面の少なくとも1つは、双円錐を含む非球面形状を有し得る。一部の実施形態において前面は凸状であり得る。さらに後面は凹状であり得る。
【0016】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。またレンズは、インプラントされたときに光学部を眼に付けるために光学部のまわりに配置されたハプティック部も含み得る。光学部は前面と後面とを含み得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。光軸に沿う厚みは約100~700マイクロメートル(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)であり得る。さらに、前面と後面とは非球面を含み得る。
【0017】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。またレンズは、インプラントされたときに光学部を眼に付けるために光学部に対して配置された少なくとも1つのハプティックも含み得る。光学部は前面と後面とを含み得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。前面及び後面の少なくとも1つは、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動でオフセットされた円錐又は双円錐を含む非球面を有し得る。
【0018】
透明材料を含む、本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、透明材料はコラマー(Collamer)を含み得る。透明材料はシリコン、アクリル、又はヒドロゲルを含み得る。透明材料は疎水性材料又は親水性材料を含み得る。
【0019】
本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、前面は回転対称であり得る。前面は円錐又は双円錐項を含む形状を有し得る。前面は、円錐又は双円錐項と、非球面高次摂動項とを含む形状を有し得る。レンズの一部の実施形態において、後面は円錐又は双円錐項を含む形状を有し得る。円錐又は双円錐項は0より大きい円錐定数を有し得る。例として、円錐又は双円錐項は少なくとも1の大きさの円錐定数を有し得る。他の例として、円錐又は双円錐項は少なくとも10の大きさの円錐定数を有し得る。
【0020】
本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、後面は回転非対称であり得る。後面は、光学部の光軸を通過する異なる方向に異なる曲率を有し得る。例として、後面は、光学部の光軸の直交方向に異なる曲率を有する。後面形状は双円錐項を含み得る。双円錐項は0より大きい円錐定数を有し得る。例として、双円錐項は少なくとも1の大きさの円錐定数を有し得る。他の例として、円錐又は双円錐項は少なくとも10の大きさの円錐定数を有し得る。本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、光学部は、100~400マイクロメートルの、光軸に沿った厚みを有し得る。例として、光軸に沿った厚みは、100~300マイクロメートル、100~200マイクロメートル、200~300マイクロメートル、300~400マイクロメートル、又はこれらの範囲の任意の値により構成される任意の範囲であり得る。
【0021】
本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、光学部が、2~6ミリメートル、3~6ミリメートル、又は4~6ミリメートルの開口サイズ(例として、開口サイズは2mm、3mm、4mm、6mm、これらの範囲内の任意の値、又はそうした値により構成される任意の範囲であり得る)を有する模型眼に挿入されるときに、レンズの前面と後面とは、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも90%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され得る。平均MTF値は、軸物体について明所視の視感度関数によって重み付けされた約400~700nmの波長に積分された100本/ミリメートルでのMTF値を含み得る。模型眼には、Liou-Brennan模型眼、Badal模型眼、アリゾナ模型眼、インディアナ模型眼、又は任意の規格化模型眼若しくは同等の模型眼が含まれ得る。
【0022】
一部のそうした実施形態において、レンズの前面と後面とは、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の少なくとも95%又は98%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形される。
【0023】
本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、光学部が模型眼に挿入されるときに、前面と後面とは、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の少なくとも90%の物体のバージェンスに、位相反転なく変調伝達関数(MTF)を与えるように成形され得る。一部のそうした実施形態において、該光学部が模型眼に挿入されるときに、前面と後面とは、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の少なくとも95%、98%、99%、又は100%物体のバージェンスに、位相反転なく変調伝達関数(MTF)を与えるように成形される。
【0024】
本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、前面は、0~1mm、1×10-6~1×10-3mm、又は5×10-6~5×10-4mmの曲率半径を有し得る。前面は、-1×106~-100、又は-3×105~-2×105の円錐定数を有し得る。後面は0~20mmの曲率半径Ryを有し得る。後面は0~20mmの曲率半径Rxを有し得る。後面は-20~20mmの円錐定数Kyを有し得る。後面は-25~0mmの円錐定数Kxを有し得る。
【0025】
本明細書に記載のレンズの一部の実施形態において、レンズは眼の天然レンズの前方に配置されるように構成され得る。レンズの他の一部の実施形態において、レンズは水晶体嚢に配置されるように構成され得る。
【0026】
本明細書に記載の所定の実施形態は、任意の実施形態のレンズのレンズインプラント方法を包含する。該方法は、眼の組織に開口部を形成するステップと、レンズを眼の天然レンズの前方に挿入するステップを含み得る。本明細書に記載の所定の実施形態は、眼の組織に開口部を形成するステップと、レンズを水晶体嚢に挿入するステップとを含む方法も包含する。
【0027】
本明細書に記載のレンズの種々の実施形態において、光学部は、約700ミクロン~4ミリメートルの、光軸に沿う厚みを有し得る。例として、光軸に沿う厚みは、約700ミクロン~3ミリメートル、約700ミクロン~2ミリメートル、約700ミクロン~1ミリメートル、又はこれらの範囲の任意の値で構成される任意の範囲であり得る。
【0028】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの左右の眼にインプラントするように構成されたレンズ対を包む。レンズ対は第1レンズを含む。第1レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。第1レンズの光学部には前面と後面とがあり得る。前面は非球面を含み得る。第1レンズの光学部が、2~6ミリメートル、3~6ミリメートル、又は4~6ミリメートルの開口サイズ(例として、開口サイズは2mm、3mm、4mm、6mm、これらの範囲内の任意の値、又はそうした値により構成される任意の範囲であり得る)を有する模型眼に挿入されるときに、第1レンズの前面と後面とは、0~2.0ジオプトリ(D)又は0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも90%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され得る。第1レンズの平均MTF値は、軸上物体について明所視の視感度関数によって重み付けされた約400~700nmの波長に積分された100本/ミリメートルでのMTF値を含み得る。
【0029】
レンズ対は第2レンズも含む。第2レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。第2レンズの光学部には前面と後面とがあり得る。前面は非球面を含み得る。第2レンズの光学部が、2~6ミリメートル、3~6ミリメートル、又は4~6ミリメートルの開口サイズ(例として、開口サイズは2mm、3mm、4mm、6mm、これらの範囲内の任意の値、又はそうした値により構成される任意の範囲であり得る)を有する模型眼に挿入されるときに、第2レンズの前面と後面とは、-2.0~0ジオプトリ(D)又は-2.5~0ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも90%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され得る。第2レンズの平均MTF値は、軸上物体について明所視の視感度関数によって重み付けされた約400~700nmの波長に積分された100本/ミリメートルでのMTF値を含み得る。
【0030】
模型眼はLiou-Brennan模型眼を含み得る。代替的に模型眼はBadal模型眼を含み得る。さらに模型眼はアリゾナ模型眼又はインディアナ模型眼を含み得る。その他の規格化模型眼又は同等の模型眼が用いられてもよい。
【0031】
レンズ対の種々の実施形態において、第1又は第2レンズの光学部が有水晶体構造の模型眼に挿入されるときに、第1又は第2レンズの変調伝達関数値が与えられるとよい。他の種々の実施形態において、第1又は第2レンズの光学部が無水晶体構造の模型眼に挿入されるときに、第1又は第2レンズの変調伝達関数値が与えられるとよい。
【0032】
レンズ対の種々の実施形態において、第1又は第2レンズはハプティック部をさらに含み得る。第1又は第2レンズの光学部は光軸を有し得、約100~700ミクロンである、光軸を通過する厚みを有し得る。その他の実施形態において、第1又は第2レンズの光学部は光軸を有し得、約700ミクロン~4ミリメートルである、光軸を通過する厚みを有し得る。一部のそうした実施形態において、光軸に沿う厚みは、約700ミクロン~3ミリメートル、約700ミクロン~2ミリメートル、約700ミクロン~1ミリメートル、又はこれらの範囲の任意の値で構成される任意の範囲であり得る。
【0033】
レンズ対の種々の実施形態において、第1レンズの前面と後面とは、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも95%又は98%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され得る。
【0034】
レンズ対の種々の実施形態において、第2レンズの前面と後面とは、-2.5~0ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも95%又は98%の物体のバージェンスに、100本/ミリメートルで、0.1~0.4の平均変調伝達関数(MTF)値を与えるように成形され得る。
【0035】
レンズ対の種々の実施形態において、光学部が模型眼に挿入されるときに、第1レンズの前面と後面とは、0~2.5ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも90%、95%、98%、99%、又は100%の物体のバージェンスに、位相反転なく変調伝達関数(MTF)を与えるように成形され得る。
【0036】
レンズ対の種々の実施形態において、光学部が模型眼に挿入されるときに、第2レンズの前面と後面とは、-2.5~0ジオプトリ(D)の範囲内の、少なくとも90%、95%、98%、99%、又は100%の物体のバージェンスに、位相反転なく変調伝達関数(MTF)を与えるように成形され得る。
【0037】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。光学部は前面と後面とを含み得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。前面及び後面の少なくとも1つは、第1部分と第2部分とを有する表面を含み得る。第1部分は光軸を中心に配置され得る。第2部分は第1部分を包囲し、第1部分とは異なる表面プロファイルを有し得る。第1部分は延長被写界深度を得るように構成され得る。第2部分は、第1部分と比較して、遠距離での向上された視力特性メトリック(vision quality metric)を提供するように構成可能である。
【0038】
一部のそうした実施形態において、距離とは無限遠~2メートルの物体を含み得、又は距離とは0Dバージェンスを含み得る。レンズの種々の実施形態において、レンズは第2部分を包囲する第3部分をさらに含み得る。第3部分は第2部分とは異なる表面プロファイルを有し得る。一部の実施形態において、第3部分は第1部分と同様の表面プロファイルを有し得る。第2部分は、第3部分と比較して、遠距離での向上された視力特性メトリックを提供するように構成可能である。例として、向上された視力特性メトリックとは、その変調伝達関数、コントラスト感度、それらの導出(derivation)、又はそれらの組合せであり得る。一部の実施形態において、第1部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線の摂動でオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。
【0039】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。光学部には前面と後面とがあり得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。前面及び後面の少なくとも1つは、第1部分と第2部分とを有する表面を含み得る。第1部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線に関する摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。第2部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線の摂動によってオフセットされない円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。
【0040】
レンズの種々の実施形態において、第1部分は光軸を中心に配置され得る。第2部分は第1部分を包囲し得る。一部の実施形態において、レンズは、第2部分を包囲する第3部分を含み得る。第3部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線に関する摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。一部のそうした実施形態において、第3部分は、第1部分と実質的に同じである、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線に関する摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を有し得る。
【0041】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。光学部には前面と後面とがあり得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。前面及び後面の少なくとも1つは、第1部分と第2部分とを有する表面を含み得る。第1部分は光軸を中心に配置され得る。第2部分は第1部分を包囲し得る。第1部分は、第2部分よりも、延長被写界深度を与える高い球面収差制御を有し得る。
【0042】
種々の実施形態において、レンズは第2部分を包囲する第3部分を含み得る。第3部分は、第2部分よりも、延長被写界深度を与える高い球面収差制御を有し得る。第3部分は、第1部分と実質的に同じ球面収差制御を有し得る。第1部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線からの摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。
【0043】
第3部分を有するレンズの種々の実施形態において、第3部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線からの摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。
【0044】
光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線からの摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有するレンズの種々の実施形態において、非球面高次関数は、少なくとも1つの偶数次項a2nr2nを含み得、nは整数、a2nは係数、rは光軸からの半径距離である。例として、非球面高次関数は2次項a2r2を含み得、a2は係数、rは光軸からの半径距離である。他の例として、非球面高次関数は4次項a4r4を含み得、a4は係数、rは光軸からの半径距離である。非球面高次関数は6次項a6r6をも含み得、a6は係数、rは光軸からの半径距離である。さらに、非球面高次関数は8次項a8r8を含み得、a8は係数、rは光軸からの半径距離である。
【0045】
第1部分と第2部分とを有するレンズの種々の実施形態において、レンズは、第1部分と第2部分との間で不連続性のない円滑な移行をおこなう移行部分をさらに含み得る。移行部分は、約0.1~1mm範囲の、内半径と外半径との距離を有し得る。第1部分は、約2.5~4.5mmの範囲の最大断面径を有し得る。例として、第1部分は約3.75mmの最大断面径を有し得る。第2部分は、約1~3.5mm範囲の、内半径と外半径との距離を有し得る。一部の実施形態において、第2部分は、約0.25~1.5mm範囲の、内半径と外半径との距離を有し得る。
【0046】
レンズの種々の実施形態において、光学部は約100~700ミクロンの範囲(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)である、光軸に沿う厚みを有し得る。代替的に、光学部は約700ミクロン~4ミリメートルの範囲(又はこの範囲の任意の値により構成される任意の範囲)である、光軸に沿う厚みを有し得る。種々の実施形態において、レンズは、インプラントされたときに光学部を眼に付けるために光学部に対して配置された少なくとも1つのハプティックも包含し得る。一部の実施形態において、前面は、第1部分と第2部分とを有する表面を含み得る。後面は、双円錐包絡線を有する形状を含み得る。
【0047】
本明細書に記載の所定の実施形態は、ヒトの眼にインプラントされるように構成されたレンズを含む。レンズは透明材料を含む光学部を包含し得る。光学部には前面と後面とがあり得る。前面及び後面のそれぞれは表面頂点を有し得る。光学部には表面頂点を通過する光軸があり得る。前面及び後面の少なくとも1つは、第1部分と第2部分とを有する表面を含み得る。第1部分は光軸を中心に配置され得る。第2部分は第1部分を包囲し得る。第1部分は、延長被写界深度を与えるように構成され得る。第2部分は、単焦点遠距離焦点調節を行うように構成され得る。
【0048】
一部のそうした実施形態において、レンズは、第2部分を包囲する第3部分をさらに含み得る。第3部分は、延長被写界深度を与えるように構成され得る。第1部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線に関する摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。さらに、第3部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線に関する摂動によってオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。
【0049】
第1部分と第2部分とを有するレンズの種々の実施形態において、第1部分と第2部分とのそれぞれは焦線(caustic)を有し得る。第2部分は、第2部分の焦線が第1部分の焦線と円滑に融合するように、円錐定数を有し得る。一部の実施例において、第2部分が球面を含む場合よりも、第2部分の焦線は第1部分の焦線とより円滑に融合する。第3部分を有するレンズの種々の実施形態において、第2部分と第3部分とは焦線を有し得る。第2部分は、第2部分の焦線が第3部分の焦線と円滑に融合するように、円錐定数を有し得る。一部の実施例において、第2部分が球面を含む場合よりも、第2部分の焦線は第3部分の焦線とより円滑に融合する。
【0050】
第1部分と第2部分とを有するレンズの種々の実施形態において、前面は凸状であり得る。後面は凹状であり得る。例として、光学部がメニスカス形状であるように、前面は凸状であり得、後面は凹状であり得る。他の種々の実施形態において、後面は凸状であり得る。一部の実施形態において、前面は凹状であり得る。さらに、第1部分と第2部分とを有するレンズの種々の実施形態において、第2部分は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線の摂動によってオフセットされない円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】
図2は、本明細書に記載の所定の実施形態における例示のレンズを示す。
【
図3】
図3Aは、目にインプラントされた、本明細書に記載の所定の実施形態における例示のレンズ200の超音波検査を示し、
図3Bは、
図2に示される例示のレンズの断面側面図を示す。
【
図4】
図4は、
図2に示されるレンズの光学部の断面側面概略図を示す。
【
図5】
図5Aは、例示の正メニスカス光学部の概略図を示し、
図5Bは、例示の負メニスカス光学部の概略図を示す。
【
図6A】
図6Aは、物体空間における被写界深度と、画像空間における焦点深度とを概略的に示す。
【
図6C】
図6Cは、標準的な球面レンズと理想的な過焦点眼とのデフォーカス曲線を概略的に示す。
【
図6D】
図6Dは、本明細書に記載の所定の実施形態におけるレンズの評価及び設計を行うための例示モデルを概略的に示す。
【
図7】
図7Aは、延長被写界深度を与えるように構成された第1部分と、遠見視力を向上させるように構成された第2部分とを有する光学部の、例示の前面及び/又は後面の概略図であり、
図7Bは、延長被写界深度を与えるように構成された第1部分と、遠見視力を向上させるように構成された第2部分とを有する光学部の、例示の前面及び/又は後面の概略図である。
【
図8】
図8Aは、延長被写界深度を与えるように構成された第1部分と、遠見視力を向上させるように構成された第2部分とを有する光学部の、他の例示の前面及び/又は後面の概略図であり、
図8Bは、延長被写界深度を与えるように構成された第1部分と、遠見視力を向上させるように構成された第2部分とを有する光学部の、他の例示の前面及び/又は後面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
近視(近眼)、遠視(遠眼)、及び乱視などの視覚の問題は眼鏡やコンタクトレンズを使用して矯正される。例えばレーザーによる原位置での角膜切削形成術(レーシック)などの手術法は、眼鏡やコンタクトレンズの不便性に対処するため、より一般的なものとなっている。レーシックでは、レーザーが用いられて角膜のフラップを切削し、下の組織に近づき、角膜の形状を変える。さらに、眼内レンズ(intraocular lens、IOL)は、近視や白内障(目の天然水晶体のくもり)の処置に利用するために、水晶体嚢内に固定されるように構成された偽水晶体レンズで天然レンズを置き換えて用いられている。
【0053】
視力の欠陥を処置する他の方法は有水晶体IOLを用いるものである。有水晶体IOLは、天然水晶体を取り除くことなく眼にインプラントされる透明レンズである。つまり、有水晶体IOLは角膜や水晶体と共に、網膜に物体をイメージングする光学パワーを与える(対照的に、偽水晶体IOLは、例えば上述のような白内障を処置するためにくもった天然レンズを除いた後、天然レンズを置き換えて眼にインプラントされるレンズである)。有水晶体IOLのインプラントは、近視、遠視、及び乱視を矯正するために用いられ、患者を眼鏡やコンタクトの不便さから解放し得る。また有水晶体IOLは、取り除かれて目の光学部を自然な状態に戻すか、又は、置き換えられて視力矯正の変更若しくは眼の改善の必要性に対応することが可能である。
【0054】
ひとは年齢とともに老視(近くの物体に焦点を合わせられない)を発症し、近くにある物体に適応することができなくなると、失われた屈折力をさらに得るために老眼鏡で対応されてきた。近遠方視に離散的焦点を与える多焦点コンタクトレンズやIOLも使われているが、患者の視野におけるコントラスト感度の喪失や同軸のゴースト像の存在から、こうした方法は限定的に受け入れられている。
【0055】
本明細書に記載の所定の実施形態において、延長被写界深度と視力向上を伴う、近視、遠視、乱視、白内障、及び/又は老視を非限定的に含むものの視力矯正のための眼科インプラントが有利に提供され得る。種々の実施形態において、眼科インプラントは、例えばヒトである患者の眼にインプラントされるように構成されたレンズを含み得る。そうしたレンズは、中年人口の老視及び老視発症の処置に特に有用である。
【0056】
所定の実施形態は有水晶体レンズインプラントを含み得、レンズは、角膜110と虹彩115との間などの天然水晶体120の前方にインプラント可能である。他の実施形態では、虹彩115と天然水晶体120とのあいだに配置されるように構成される。一部の例示的実施形態は、近視、遠視、乱視、及び/又は老視を処置するためのレンズを含む。
【0057】
他の一部の実施形態は、水晶体120を取り除いた後、眼に、例えば水晶体嚢にインプラントされる偽水晶体レンズを含み得る。上述のように、偽水晶体レンズは、白内障処置や屈折矯正をおこなうために使用可能である。
【0058】
図2は、本明細書に記載の種々の実施形態における例示のレンズ200である。レンズ200は光学領域又は光学部201を含み得る。光学部201は、レンズ200が受信した光を伝送し、例えば屈折させるなど焦点を合わせる。本明細書において以下により詳細に記載されるように、光学部201は、光を屈折させて焦点を合わせ、且つ被写界深度と視力とを向上させるように設計された、光学部201の1以上の表面の表面形状を含み得る。例として、一部の実施形態において、光学部201表面の表面形状は、被写界深度を拡大させるように網膜において広範囲の物体のバージェンスを得るため(例として、少なくとも約0~約2.5ジオプトリの範囲内のバージェンス、一部の適用において、少なくとも約0ジオプトリ~少なくとも約1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0ジオプトリ、又は場合により少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、若しくは0.7ジオプトリ~少なくとも約2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0ジオプトリ)、例えば20/20視力である高視力のために、光学部201が継続的に光の焦点を合わせることができるように設計可能である。さらに、一部の実施形態において、光学部201表面の表面形状は、イメージが実質的に同軸であり、且つゴースト像の存在を減少させるために実質的に同様の大きさであるように、設計可能である。
【0059】
図2に示されるように、例示のレンズ200はハプティック205も含み得る。一部の実施形態において、ハプティック205は、レンズを眼に安定させるため及びレンズ200を眼に付けるために、1以上のハプティック又はハプティック部205a、205b、205c、及び205dを包含し得る。例として、
図2において、ハプティック部205a、205b、205c、及び205dは、インプラントされたときに光学部201を眼に付けるために光学部201の周りに配置される。種々の実施形態において、レンズ及び特にハプティックは、水晶体嚢の外側に、例えば有水晶体IOL設計のように天然レンズの前方に、インプラントされるように構成される。上述のように、有水晶体IOLインプラントは虹彩と天然レンズとの間にインプラントされるように構成されるとよい。ゆえに、所定の実施形態において、光学部201がハプティック部205a~205d間のコンタクト点の位置の前方位置で眼の中心光軸に沿って配置されるように、ハプティック205は湾曲される。この構成は、光学部201と有水晶体眼の天然レンズとの間のすきまを大きくし、眼の調節時に天然レンズが収縮する。一部の場合に、ハプティック205は、インプラントされるときに天然レンズとのすきまが最小になるように構成され、天然レンズ前面と光学部201後面との間の接触を低減、最小化、又は防止する。一部の材料により、光学部201と天然レンズ前面との間の接触は許容される。一部の実施形態において、レンズ200は瞳孔、又は虹彩115の開口部にインプラントされ得、配置されると、ハプティック部205a、205b、205c、及び205dは虹彩115の下方に配置され得る。
図2に示されるハプティック205は、延長された角部の形状の4つのハプティック部205a、205b、205c、及び205dを含むが、ハプティック又はハプティック部の形状、サイズ、及び数は特に限定されない。
【0060】
種々の適用において、例えば、レンズは、天然レンズを取り除いた後に水晶体嚢内にインプラントされるように構成される。そうした偽水晶体レンズは、インプラント後に水晶体嚢内で配置と向きとを確実にするために適切な形状、サイズ、及び/又は数のハプティックを含むとよい。
図3Aは、眼にインプラントされた、本明細書に記載の所定の実施形態の例示レンズ200の超音波検査である。
【0061】
光学部201は透明材料を含み得る。例えば、透明材料はコラーゲンコポリマー材料、ヒドロゲル、シリコン、及び/又はアクリルを包含し得る。一部の実施形態において、透明材料は疎水性材料を含み得る。他の実施形態において、透明材料は親水性材料を含み得る。その他の既知の、又はまだ開発されていない材料が光学部201に使用可能である。
【0062】
光学部201の所定の実施形態は、例えば、カリフォルニア州、モンロビアのSTAAR(登録商標)サージカルカンパニーによるコラマー(Collamer)(登録商標)IOLに使用される材料と同様の、コラーゲンコポリマー材料を有利に含み得る。例示されるコラーゲンコポリマー材料は、例示されるコラーゲンコポリマー材料は、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)/ブタコラーゲン由来生体適合性ポリマー材料である。コラーゲンコポリマー材料はヒト水晶体のものと類似する特徴を有し得るので、本明細書に記載のレンズの所定の実施形態は、天然レンズと光学的に同様におこなわれることができる。例として、一部の実施形態において、反射防止特性と約40%の含水量のため、コラーゲンコポリマー材料製のレンズ200は、天然ヒト水晶体と類似する光を透過可能である。眼内ではより少ない光が反射され得、その他のレンズ材料製のレンズと比較して、より鮮鋭で明瞭な視覚がもたらされ、グレア、ハロ、又は夜間視力低下の発生が低減される。
【0063】
コラーゲンコポリマー材料製のレンズ200の一部の実施形態において、レンズ200は可撓性であり得、眼に容易にインプラントすることができる。さらに、コラーゲンコポリマー材料はコラーゲンで作製されるので、レンズ200の種々の実施形態は眼に対して生体適合性がある。一部の実施形態において、レンズ200は、眼に自然に見い出だされる物質であるフィブロネクチンを引き付けることができる。フィブロネクチン層はレンズ200周りに形成され得、レンズ200への白血球接着を阻害する。フィブロネクチンのコーティングは、レンズ200が異物であるとされることを退ける助けとなる。さらに、含有されるコラーゲンのように、レンズ200の種々の実施形態はわずかな負電荷を帯び得る。眼のタンパク質も負電荷を帯びていることから、これら2つの負の力がレンズ200の境界沿いで出会うとき、電荷反発がレンズ200からタンパク質を押し離すことに寄与し得る。そのように、レンズ200は自然にそれ自体を清浄且つ明瞭に保つことができる。
【0064】
さらに、一部の実施形態において、レンズ200は紫外線(UV)ブロッカーを包含し得る。そうしたブロッカーは、害のあるUVAやUVB線が眼に進入することを防ぐ助けとなり得る。つまり、所定の実施形態はUV関連眼疾患の発症防止に寄与し得る。
【0065】
一部の実施形態において、ハプティック205(又は1以上のハプティック部205a、205b、205c、及び205d)も、光学部201と同様の材料製であり得る。例として、ハプティック205はコラーゲンポリマー、ヒドロゲル、シリコン、及び/又はアクリル製であり得る。一部の実施形態において、ハプティック205は疎水性材料を包含し得る。他の実施形態において、ハプティック205は親水性材料を包含し得る。その他の既知の、又はまだ開発されていない材料もハプティック205に使用可能である。
【0066】
レンズ200は、ダイヤモンド旋削、塑造、又は当該分野において既知の、若しくはまだ開発されていない他の技術によって製造可能である。コラーゲンコポリマー材料で製造されたレンズ200の一部の実施形態において、レンズ200は乾燥状態において機械で作製され、次にレンズ200を安定化するために水和反応が行われる。類似の手法が他の材料についても用いられ得る。
【0067】
図3Bは、
図2に示される例示のレンズ200の断面側面図であり、
図4は、レンズ200の光学部201の断面側面概略図である。光学部201には前面201aと後面201bとがある。光学部201にはまた、レンズの光軸が通過する中心と、光軸に沿う中心における厚みTcとがある。光軸は前後面201aと201bとの表面頂点を通過する。光学部201の正確なサイズは、患者の瞳孔サイズ、レンズ200の材料、及び患者の処方に応じたものであり得る。一部の実施形態において、例えば、有水晶体レンズについて、光学部201中心の厚みTcは比較的薄く作製され得る。例として、光学部201中心の厚みTcは、約100~約700マイクロメートル、約100~約600マイクロメートル、約100~約500マイクロメートル、約100~約400マイクロメートル、約100~約300マイクロメートル、又は約100~約200マイクロメートルであり得、レンズ200は、患者や他の人には比較的気づかれにくいものであり得る。より薄いレンズにより、例えば角膜等の目の組織を介するレンズ挿入工程が簡易化される。例として、光学部は、約110、115、120、130、140、若しくは150~約200、300、若しくは400マイクロメートルの光軸沿いの厚み、これらの厚みの任意のもののうちの任意の値、又はこれらの厚みの任意のものにより構成される任意の範囲を有し得る。故に、光学部201中心の厚みT
cは、上述の値のうちの任意の厚みであり得、例えば、100マイクロメートル、110マイクロメートル、115マイクロメートル、120マイクロメートル、130マイクロメートル、140マイクロメートル、150マイクロメートル、200マイクロメートル、250マイクロメートル、300マイクロメートル、350マイクロメートル、400マイクロメートル、450マイクロメートル、500マイクロメートル、550マイクロメートル、600マイクロメートル、650マイクロメートル,又は700マイクロメートルのいずれかの間の範囲の厚みであり得る。
【0068】
他の一部の実施形態において、例えば、レンズ201が天然水晶体を置き換える偽水晶体レンズについて、光学部201中心の厚みTcは有水晶体レンズのものより厚くなり得、例として、約700マイクロメートル~約4mm、約700マイクロメートル~約3mm、約700マイクロメートル~約2mm、約700マイクロメートル~約1mm、そうした範囲の任意の値、又はこれらの範囲の任意の値により構成される任意の範囲が挙げられる。例として、光学部201中心の厚みTcは、約700マイクロメートル、約800マイクロメートル、約900マイクロメートル、約1ミリメートル、約1.5ミリメートル、約2ミリメートル、約2.5ミリメートル、約3ミリメートル、約3.5ミリメートル、若しくは約4ミリメートル、又はそれらの間の範囲であり得る。しかしながら、偽水晶体レンズについても、レンズはより小さい厚みTc、例えば約300マイクロメートル~700マイクロメートルの厚みを採用し得、例として、300マイクロメートル、400マイクロメートル、500マイクロメートル、600マイクロメートル、若しくは700マイクロメートル、又は300~400マイクロメートル、400~500マイクロメートル、500~600マイクロメートルなど、それらの間の任意の範囲であり得る。
【0069】
本明細書に記載の所定の実施形態によると、光学部201がメニスカス形状であるように、前面201aは凸状であり、後面201bは凹状である。
図5Aと
図5Bとは、メニスカス形状の光学部201の例示断面側面図である。メニスカス形状光学部201は、例えば有水晶体レンズに用いられるときに非常に有利であり得る。例として、虹彩の後方(又は後部)、且つ天然レンズの前方(又は前部)にインプラントされるとき、凸状である光学部201の前面201aは、該表面201aに隣接する虹彩の摩擦を防ぐのに有用であり得、凹状である光学部201の後面201bは、例えば白内障をもたらし得る、該表面201bに隣接する天然レンズの損傷を防ぐのに有用であり得る。
【0070】
メニスカス形状光学部は正又は負のいずれかとして特徴づけられ得る。
図5Aに示されるように、正メニスカス光学部301は、凹状面301bよりも急勾配の曲線である凸状面301aを有し、端部T
eよりも(光軸が通過する)中心T
cにおいて厚みが大きい。対照的に、
図5Bに示されるように、負メニスカス光学部401は、凸状面401aよりも急勾配の曲線である凹状面401bを有し、中心Tcよりも端部Teにおいて厚みが大きい。所定の実施形態において、正メニスカス光学部は遠視を処置するために用いられ得る一方で、他の実施形態において、負メニスカス光学部は近視を処置するために用いられ得る。
【0071】
種々の実施形態において、光学部201はメニスカス形状ではない。例として、一部の実施形態において、光学部201が平凹状であるように、前面201aは実質的に平面であり、後面201bは凹状である。他の実施形態において、前面201aと後面201bとは光学部201が両凹状であるように凹状である。さらなる実施形態において、光学部201が平凸状であるように、前面201aは凸状であり、後面201bは実質的に平面である。よりさらなる実施形態において、前面201aと後面201bとは光学部が両凸状であるように凸状である。
【0072】
所定の実施形態において、光学部201の前面201a及び/又は後面201bは、非球面を含み得る。例として、光学部201の前面201a及び/又は後面201bは、球形の一部ではない表面形状を含み得る。種々の実施形態において、前面201a及び/又は後面201bは回転対称であり得る。例として、非球面形状の表面プロファイル又はサグは少なくとも円錐項を含み得る。円錐項は、
【0073】
【数1】
として与えられ得、cは表面の曲率(又は半径の逆数)、kは円錐定数、及びrは表面頂点からの半径距離である。
【0074】
一部の実施形態において、非球面形状は、例えば表面頂点からの半径距離の高次関数を含む摂動によりオフセットされた円錐を含み得る。このように、非球面形状のサグは円錐項と表面頂点からの半径距離の高次関数とを含み得る。高次関数は、円錐項から非球面摂動を与えることができる。一部の実施形態において、高次関数は、少なくとも1つの偶数次項a2nr2nを含み得、nは整数、a2nは係数、rは表面頂点からの半径距離である。例として、非球面形状は、円錐項と、(例えば偶数次非球面を与える)偶数乗多項式項とを用いて、
【0075】
【0076】
例示の数式2において見受けられ得るように、高次関数は、少なくとも2次項(a2r2)、4次項(a4r4)、6次項(a6r6)、及び/又は8次項(a8r8)を含み得る。一部の実施形態において、高次関数は、1以上の奇数次項を含み得る。例として高
次関数は、奇数次項のみ又は偶数次項と奇数次項との組合せを含み得る。
【0077】
数式2においても見受けられるように、表面形状は円錐定数kに依存し得る。円錐定数k=0の場合、表面は球形である。このように一部の実施形態において、kは少なくとも0の大きさを有して、│k│≧0となる。一部の実施形態においてkは0よりも大きく、│k│>0となる。種々の実施形態において、kは少なくとも1の大きさを有して、│k│≧1となる。一部の実施形態において、│k│≧2、│k│≧3、│k│≧5、│k│≧7、又は│k│≧10である。例として、k≦-1、k≦-2、k≦-3、k≦-5、k≦-7、k≦-10である。ゆえに、種々の実施形態において、表面は双曲線形状である。しかしながら、所定の実施形態において、円錐定数の大きさは、例えば0≦│k│≦1など、1より小さいとよい。
【0078】
種々の実施形態において、前面201a及び/又は後面201bは回転非対称であり得、光学部201の中心及び/又は光軸を通過する種々の方向に異なる曲率を有し得る。例として前面201a及び/又は後面201bは、光学部201中心の直交方向に異なる曲率を有し得る。そうした所定の実施形態は、種々の方向(経線)の矯正が望まれ得る乱視の処置に有利であり得る。
【0079】
一部の実施形態において、回転非対称表面のサグは少なくとも双円錐項を含み得る。双円錐面は、x方向とy方向とに異なる円錐定数k及び半径を有するトロイダル面と類似し得る。双円錐項は、
【0080】
【数3】
として与えられ得、c
xはx方向の表面曲率(又はx方向の半径の逆数)、c
yはy方向の表面曲率(又はy方向の半径の逆数)、k
xはx方向の円錐定数、k
yはy方向の円錐定数である。
【0081】
一部の実施形態において、非球面形状は、表面頂点からの半径距離の高次関数を含む摂動によりオフセットされた双円錐を含み得る。このように、数式2と同様に、非球面形状のサグは双円錐項と高次関数とを含み得る。高次関数は、少なくとも1つの偶数次項、例えば少なくとも2次項(a2r2)、4次項(a4r4)、6次項(a6r6)、及び/又は8次項(a8r8)を含み得る。例として、数式2と同様に、高次関数はa2r2+a4r4+a6r6+a8r8・・・であり得る。
【0082】
一部の実施形態において、高次関数は1以上の奇数次項を含み得る。例として高次関数は、奇数次項のみ又は偶数次項と奇数次項との組合せを含み得る。
【0083】
ゆえに、本明細書に記載されるように、光学部201の前面201a及び/又は後面201bは、(高次関数あり若しくはなしの)円錐項又は(高次関数あり若しくはなしの)双円錐項を含む形状を有し得る。
【0084】
老視及び/又は乱視のための視力矯正の一実施例には、共に非球面を有する前面201a及び後面201bが包含される。前面201aの非球面は、2次項、4次項、6次項、及び8次項を含む摂動によりオフセットされた円錐項を含む形状を有し、後面201bの非球面は双円錐項を含む形状を有する。例示の非球面前面201aのサグは、
【0085】
【数4】
として与えられ得る。さらに、双円錐であり得る例示の後面201bのサグは、
【0086】
【数5】
として与えられ得、これは数式3と類似する。そうしたレンズの所定の実施形態は、限定されるものではないが、メニスカスレンズであるとよい。
【0087】
その他の実施例も可能である。所定の実施形態において、光学部201の特定の形状(例えば、前面の曲率、後面の曲率、円錐定数、高次関数の係数など)は患者の処方に応じたものであり得る。
【0088】
一部の実施例のように、0~約2D円柱面、0~約3D円柱面、又は0~約4D円柱面を伴う、約-18D~約6D球面の公称屈折力を有するレンズでは、以下の非限定的例である設計パラメータが所定の実施形態において用いられ得る。前面の半径R(例えば曲率の逆数)は、約-100mm~約100mm、約-50mm~約50mm、約-10mm~約10mm、又は約-5mm~約5mm、であり得る。一部の実施例において、前面のRは、約-1mm~約1mm、又は0~約1mmであり得る。例として、前面の半径は、0~約1×10-2mm、約1×10-7~約5×10-3mm、約1×10-6~約1×10-3mm、又は約5×10-6~約5×10-4mmであり得る。
【0089】
本明細書に記載されるように、種々の実施形態において、前面のkは0よりも大きく、│k│>0となり得る。一部の実施形態において、kは少なくとも1の大きさを有して、│k│≧1となる。一部の実施形態において、│k│≧2、│k│≧3、│k│≧5、│k│≧7、又は│k│≧10である。例として、k≦-1、k≦-2、k≦-3、k≦-5、k≦-7、k≦-10である。一部の実施形態において、k<<-10である。例として、一部の実施形態において、kは、約-1×106~-100、約-5×105~約-5×104、又約-3×105~約-2×105であり得る。
【0090】
ゆえに、種々の実施形態において、前面の円錐定数と前面の曲率半径との比率の大きさは、種々の実施形態において、104~1014、106~1012、108~1011、109~1011、108~1010、109~1010であり得る。
【0091】
種々の実施形態において、前面の2次項の係数a2は0~約1であり得る。例として、a2は0~約0.5、約0.001~約0.3、又は約0.005~約0.2であり得る。
【0092】
種々の実施形態において、前面の4次項の係数a4は約-1~0であり得る。例として、a4は約-0.1~0、約-0.05~約-1×10-4、又は約-0.01~約-1×10-3であり得る。
【0093】
種々の実施形態において、前面の6次項の係数a6は0~約1であり得る。例として、a6は0~約0.1、0~約0.01、又は約0.0001~約0.001であり得る。
【0094】
さらに、種々の実施形態において、前面の8次項の係数a8は約-1~0であり得る。例として、a8は約-0.001~0、約-0.0005~0、又は約-0.0001~0であり得る。
【0095】
さらに、0~約2D円柱面、0~約3D円柱面、又は0~約4D円柱面を伴う、約-18D~約6D球面の公称屈折力を有するレンズでは、以下の非限定的例である設計パラメータが所定の実施形態において前面に用いられ得る。y方向の後面半径Ry(例えば、y方向の曲率の逆数)は0~約20mmであり得る。例として、後面の半径Ryは0~約15mm、約2mm~約13mm、又は約3mm~約14mm、又は約4mm~約10mmであり得る。
【0096】
種々の実施形態において、後面のkyは、約-20~約20、約-18~約15、又は約-15~約5であり得る。一部のそうした実施形態において、後面のkyは、少なくとも1の大きさを必ずしも有するわけではない。例としてkyは約-1~約1であり得る。種々の実施形態において、│ky│は0より大きい。
【0097】
x方向の後面半径Rx(例えば、x方向の曲率の逆数)は0~約20mmであり得る。例として、後面の半径は0~約15mm、0mm~約12mm、又は0mm~約10mmであり得る。
【0098】
種々の実施形態において、後面のkxは、約-25~0、約-20~0、約-18~0、約-17.5~0、又は約-15.5~0であり得る。種々の実施形態において、│kx│は0より大きい。
【0099】
上述の所定の公称屈折力を有するレンズの例示的設計パラメータR、k、a2、a4、a6、及びa8は前面に与えられ、例示の設計パラメータRy、ky、Rx、及びkxは後面に与えられるが、R、k、a2、a4、a6、及びa8の値の範囲は後面に用いられ得、Ry、ky、Rx、及びkxの値の範囲は前面に用いられ得る。さらに、前面は高次非球面摂動項(例としてa2、a4、a6、及びa8)を含むものの、高次非球面摂動項(例としてa2、a4、a6、及びa8)は、前面ではなく後面、又は前面と後面との両方に、用いられ得る。これらの範囲における任意の1以上の値がこれらの設計のいずれかに用いられ得る。
【0100】
さらに、本明細書に記載されるように、種々の実施形態の特定の形状が、被写界深度を拡大させ、且つ視力を上げるように設計され得る。
図6Aに示されるように、被写界深度は、焦点が合っているように見える、物体空間の対象の前の距離及び対象を超える距離として示され得る。焦点深度は、イメージの焦点が合っているイメージ空間においてレンズの背後にどれだけの距離があるかの大きさとして示され得る。被写界深度を拡大させるため、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、広範囲の物体のバージェンスのために、光線の焦点が網膜に合う、又は網膜に十分に近接するように構成される。視力を上げて、且つゴーストを低減するために、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状はまた、軸上物体のイメージが実質的に軸上にあり、互いに類似する大きさであるように構成される。
【0101】
そうした所定の実施形態において、画像焦線は約0~約2.5ジオプトリ以上のバージェンス範囲のために形成され得るが、この範囲はより大きくても小さくてもよい。
図6Bに示されるように、一部の実施形態において、画像焦線は、光線の格子によって生成され
る包絡線として示され得、錯乱円は、点光源をイメージングするときに完全には焦点が合わないレンズからの光線円錐によってもたらされる光学スポットとして示され得る。このように、錯乱円が、光軸に沿う長手位置範囲で類似するサイズを有して実質的に安定して、比較的小さくなるように、画像焦線は形成され得る。この設計では、その他の長手位置で錯乱円をより大きくすることができて、光軸に沿う長手位置範囲で類似サイズの錯乱円を提供するという結果を得るため、光軸に沿う一部の長手位置で錯乱円のサイズが犠牲にされ得る。
【0102】
所定の実施形態において、前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、画像焦線が眼の過焦点平面あたりに形成されるように決定され得る。一部の実施形態において、過焦点距離は、許容可能な最大錯乱円を無限遠に配置する焦点距離、又は最大被写界深度を生成する焦点距離として示され得る。ゆえに、所定の実施形態において、被写界深度を拡大させるために、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、過焦点距離に光線の焦点が再び合うように構成され得る。
【0103】
種々の実施形態において、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、レンズのデフォーカス曲線を用いて評価及び設計され得る。デフォーカス曲線は、種々のバージェンスの関数として、コントラストなどの網膜像特性パラメータの反応を表すことができる。無限遠の物体は0ジオプトリのバージェンスを有する。
図6Cは標準球面レンズと理想的な過焦点眼とのデフォーカス曲線を示す。図に示されるように、コントラストは低下し得る(曲線領域の維持のため)が、理想的な過焦点眼は、バージェンス範囲において安定的又は実質的に安定的な(例えば類似する又は実質的に一定である)コントラストを有する。
【0104】
所定の実施形態において、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、最高矯正遠見視力(BCDVA)条件下などで、Liou-Brennan模型眼を用いて評価及び/又は設計され得る。
図6Dでは、Liou-Brennan模型眼を用いてモデル化された、本明細書に記載の所定の実施形態による例示の有水晶体レンズの概略図が示される。
図6Dに示されるように、レンズ200は模型の虹彩515と「天然」水晶体520の前との間に配置され得る。また
図6Dに示されるように、模型は、角膜510、レンズ200、及び「天然」水晶体520を介して網膜530に向かって眼500に進入する光線をシミュレートし得る。模型は、約400ナノメートル~約700ナノメートルの範囲の多色波長に用いられ得る。また模型は、(例えば乱視をモデル化するために)デュアル屈折率分布型レンズプロファイルと共に用いられることもできる。本明細書に記載の所定の実施形態による偽水晶体レンズも、「天然」水晶体520に代えて配置されたレンズを備えたLiou-Brennan模型眼を用いてモデル化可能である。
【0105】
当該技術において既知であるか又はまだ開発されていないその他の模型も用いられ得る。例として、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、Badal模型眼、アリゾナ模型眼(アリゾナ大学模型)、インディアナ模型眼(インディアナ大学模型)、ISO模型眼、又は任意の規格化模型眼若しくは同等の模型眼を用いて評価及び/又は設計され得る。さらに、当該技術において既知であるか又はまだ開発されていない光線追跡法及び/又は設計ソフトウエアを用いて、シミュレーションが行われ得る。ソフトウエアの一例として、ワシントン州レッドモンドのZemax社によるZemaxデザインソフトウエアが一部の実施形態に用いられ得る。環境における物理的制限、例えば天然レンズ前方のIOL配置は、有水晶体レンズ設計のシミュレーションを行うために有用である。そうしたシミュレーションでは、複数バージェンスについての性能(例えば、全瞳孔のRMS波面誤差)を共に評価可能であり、最適化されたメリット関数における様々なバージェンスの寄与を含み得る。このように複数波面が共に評価されて、光軸に沿う配置範囲において実質的に類似のサイズの錯乱円が得られる均衡のとれた設計が行われる。様々なバージェンスについて変化する瞳孔サイズも採用され得る。
【0106】
所定の実施形態において、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、軸上の物体からの光が、可視波長について、実質的に類似する大きさで、実質的に約0ジオプトリ~約2.5ジオプトリの範囲内で網膜に、実質的に軸上に焦点を合わせるように有利に評価及び設計され得る。網膜に近接する光軸に沿う種々の長手位置の焦線について実質的に類似するサイズ断面を得るために(例えば数式2の高次非球面項に相関し得る)球面収差の種々の次数を制御して、乱視のある患者の処置に必要とされるときにはトーリックバランス及び矯正(例えば数式3の双円錐項)を含むことで、レンズ200の放射パワープロファイルは、
【0107】
【数6】
として与えられ得、a、b、c、d、及びeは実数である。さらに、種々の実施形態において、光学部201の前面201aの表面形状及び/又は後面201bの表面形状は、スタイルズ‐クロフォード効果に対応するように評価及び設計され得る。またさらに、表面形状は、照明及び/又は物体のバージェンスで変化する瞳孔サイズを考慮して設計され得る。
【0108】
レンズ200の性能を示すために、変調伝達関数(MTF)が一部の実施形態において用いられ得る。例としてMTFは、物体からイメージへ特定の解像度でコントラストを伝達するレンズ200の能力を示すことができる。レンズ200の種々の実施形態において、前面201aと後面201bとは、光学部201が眼に挿入されるときに、少なくとも約0ジオプトリ~約2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、若しくは2.5ジオプトリ(又は~約2.6、2.7、2.8、2.9、3.0)の範囲の、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の物体のバージェンスのために、約100本ペア/ミリメートルの空間周波数で約0.1~約0.4である(例えば20/20視力)、(明所視、暗所視、及び/又は薄明視分布によって重み付けされた)約400ナノメートル~約700ナノメートル範囲の波長のMTF値を与えるように成形され得る。例として、眼は、例えば2~6ミリメートル、3~6ミリメートル、又は4~6ミリメートルなど、少なくとも約2ミリメートル、少なくとも約3ミリメートル、少なくとも約4ミリメートルの開口径を有するヒトの眼であり得る。このように、MTF値は0.1、0.2、0.3、若しくは0.4、又はそれらの間の任意の範囲であり得る。さらに、種々の適用において、前記光学部が、2~6ミリメートル、3~6ミリメートル、又は4~6ミリメートルの開口サイズを有する模型眼に挿入されるときに、前面と後面とは、0D~2.5Dの範囲内(又は代替的に2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.6、2.7、2.8、2.9、若しくは3.0ジオプトリ)の、少なくとも90%、95%、又は97%から、98%、99%、若しくは100%の物体のバージェンスのため、位相反転なく変調伝達関数を与えるように成形される。一部の実施形態において、ヒトの眼が水晶体を含む場合、そうしたMTF値は、光学部201が水晶体前方に挿入されるときに与えられ得る。その他の実施形態において、ヒトの眼が水晶体を含まない場合、そうしたMTF値は、光学部201が水晶体に代えて挿入されるときに与えられ得る。MTF値は平均MTF値を含み得、明所視、暗所視、薄明視分布のいずれか又はそれらの組合せによって重み付けされた波長範囲に積分して算出されるとよい。
【0109】
他の実施例として、眼を、ヒトの眼自体とは対照的にヒトの眼をモデル化した模型眼(例えばLiou-Brennan、Badal、アリゾナ、インディアナ、ISO模型眼、又は任意の規格化模型眼若しくは同等の模型眼)とすることもできる。例として、一部の実施形態における模型眼はLiou-Brennan模型眼をも含み得る。一部の実施形態において、そうしたMTF値は、光学部201が有水晶体構造の模型眼に挿入されるときに与えられ得る。その他の実施形態において、そうしたMTF値は、光学部201が偽水晶体構造に挿入されるときに与えられ得る。
【0110】
本明細書に記載の種々の適用には、例えば角膜の後方など、眼にインプラントされることができる単屈折レンズが含まれる。所定の適用において、屈折レンズは虹彩と天然レンズとの間にインプラントされるように構成される。その他の適用において、屈折レンズは、天然レンズを取り除いた後、水晶体嚢にインプラントされるように構成される。種々の適用において、屈折レンズは回折レンズではなく、その表面には回折格子がない。種々の適用において、屈折レンズは離散的に間隔のあいた焦点を有しない。前面と後面とは、例えば、従来の多焦点レンズのように、光の焦点が実質的にあまり合わない領域で互いに隔てられたレンズの光軸に沿って光が焦点を合わせる離散的焦点を生成しないように、成形される。離散的焦点を伴うそうした多焦点設計には、光軸の様々な位置で焦点エネルギー又はエネルギー密度の複数のピークがある。
【0111】
本明細書に記載の種々の適用により、レーザー手術又は老眼鏡を必要とすることなく老視の初期発症及び進行の処置を行うことができる。適用において、約2.0Dの近方視及び中間方視が与えられ得る。5.0mm開口に2Dを超える範囲の被写界深度が得られ得る。
【0112】
種々の実施形態は、単眼視野の改変解決手法を提供するために用いられ得る。例えば、0~2.0D又は0~2.5Dを超える物体のバージェンスのために延長焦点深度を有するように第1のレンズが提供され、-2.0~0D又は-2.5~0Dを超える物体のバージェンスのために延長焦点深度を有するように第2のレンズが提供される。これらの各レンズは、患者の利き眼と非利き目とにそれぞれインプラントされ得る。すると患者には、右眼と左眼とのそれぞれに異なる延長被写界深度が与えられ得る。しかしながら、複合被写界深度は、第1又は第2レンズのうちの1つと共に与えられるものより広い。そうしたレンズの設計詳細はその他の点では上述のものと類似し得る。
【0113】
本明細書に記載のように、種々の実施形態に、延長被写界深度を有するレンズが包含される。例として、本明細書に記載のレンズ200に関して(例えば
図2~4に示されるように)、レンズ200は、被写界深度を拡大するように設計された形状を備えた前面201a及び/又は後面201bを有する光学部201を包含し得る。所定の実施形態において、光学部の前面及び/又は後面は、遠見視覚を向上させ(例えば遠見視力の向上)、さらに延長被写界深度を与えるように設計された部分をも包含し得る。
【0114】
図7A~7Bは、そうした光学部の例示の前面及び/又は後面の概略図である。前面と後面とには表面頂点があり得る。光学部は表面頂点を通過する光軸を有し得る。例示の光学部700の前面及び/又は後面は第1部分701と第2部分702とを有する表面を包含し得る。第1部分701は延長被写界深度を与えるように構成され得、第2部分702は単焦点距離矯正及び焦点調節を行うように構成され得る。
図6Cに示されるデフォーカス曲線を参照すると、第1部分701は、「理想的」過焦点デフォーカス曲線のものと形状が類似するデフォーカス曲線を有し得、第2部分702は、標準球面(単焦点)レンズのものと形状が類似するデフォーカス曲線を有し得る。ゆえに、第1部分701は延長被写界深度を与えるように構成され得、第2部分702は遠見視覚又は遠見視力を向上するように構成され得る。例として、延長被写界深度を与えるように構成された第1部分70
1は、焦点範囲にわたって(例えば遠方又は遠距離、中間方、近方)、第2部分702にほぼ等しい視力、又は少なくともそれを超える視力を与え得、一方で第2部分702は、第1部分701と比較して遠距離において視力特性メトリックを向上させ得る。視力特性メトリックの向上は、遠く(例えば0.0Dで又はほぼ0.0D)の物体の性能指数であり得る。無限遠と2メートルの間(例えば、無限遠~2メートル、無限遠~3メートル、無限遠~4メートル、無限遠~5メートル、無限遠~6メートル、無限遠~7メートル、無限遠~8メートル、無限遠~9メートル、無限遠~10メートル、又はこれらの範囲のいずれかの任意の範囲)の物体が遠距離であると考えられる。性能指数は変調伝達関数(MTF)、コントラスト感度(CS)、コントラスト、それらの導出(derivation)、又はそれらの組合せであり得る。その他のメトリックも、(レンズのベースパワー又はラベルパワーと対応する)遠距離焦点又は遠くの物体のイメージの質を評価するために用いられ得る。一部の態様において、向上された視力特性メトリックは、第1部分701よりも第2部分702について値がより高いものであり得る。
【0115】
図7Bは、第2部分702を通過する光線が遠見視覚焦点においてどのように焦点に合うかを示す(0として分類)。(上述のように、この遠見視覚焦点はレンズのベースパワー、ラベルパワー、又は距離パワーに対応する。)一方で、第1部分701を通過する光線は、遠(0)、中間(1)、又は近(2)平面における単一の鮮鋭な焦点とは対照的に、遠(0)、中間(1)、及び近(2)焦点を介してほぼ一定直径の焦線を形成し、延長被写界深度が与えられる。
【0116】
図7A~
図7Bに示されるように、第1部分701は光学部700内に中心に配置され得る。一部の場合には、第1部分は光軸を中心に配置される。第1部分701は、約2.5~4.5mmの範囲(例えば、2.5mm、2.75mm、3.0mm、3.25mm、3.5mm、3.75mm、4.0mm、4.25mm、4.5mm、又は任意のそれらのサイズの任意の範囲)の最大断面径を有し得る。より大きい又は小さいサイズもまた用いられ得る。第1部分701は、延長被写界深度を与えるため、光学部201に関して本明細書に記載されるような表面プロファイルを有し得る。例えば、第1部分701には、延長被写界深度を与えるために球面収差が導入され得る。そうした一部の実施例において、本明細書に記載されるように、第1部分701は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線からの摂動でオフセットされる円錐又は双円錐包絡線を含む形状を有し得る。数式2では、円錐項及び偶数乗多項式項を用いた例示の形状が与えられる。他の例や組合せも可能である。例として、第1部分701は、双非球面包絡線を含む形状を有し得る。双非球面包絡線は、2直交方向に2つの非球面断面を含み得る。一部の態様において、双非球面包絡線は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動でオフセットされ得る。
【0117】
第2部分702は第1部分701を包囲し得る。第2部分702は第1部分701から光学部700の端部に延び得る。ゆえに、一部の実施形態において、第2部分702の幅は第1部分701の外周と光学部700の端部との距離であり得る。例として、第2部分702は、約1.0~3.5mmの範囲(例えば1.0mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2.0mm、2.25mm、2.5mm、2.75mm、3.0mm、3.25mm、3.5mm、又は任意のこれらのサイズの任意の範囲)の幅(例えば内半径と外半径との距離)を有し得る。これらの範囲外のサイズもまた可能である。
【0118】
第2部分702は、第1部分701と異なる表面プロファイルを有し得る。第1部分701は、第2部分702よりも、延長被写界深度を与える高い球面収差制御を有し得る。一部の場合において、第2部分702は実質的に球面収差制御を有しないか、又は延長焦点深度を与える収差制御を少なくとも有しなくてもよい。例として、第2部分702は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動でオフセットされない円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。一部の場合において、第2部分は球形状を有し得る。
【0119】
第2部分702は、システムの周辺光線を大きく制御可能であり得、第2部分を通過して伝播する光線が高い割合で網膜に焦点を合わせて、例えば無限遠など遠距離における物体について他のメトリックにより測定されるように、第1部分と比較してコントラストを増大させるか、又は視覚特性を向上させ得る(例えば、約+6~-18Dの距離パワー又はラベルパワー)。このため、遠距離において、より明確な焦点(場合によっては遠距離物体の遠距離平面におけるより小さいスポット)が可能になり、さらに第1部分701により与えられる延長被写界深度を得る。このように、第2部分702は、応答性遠見視覚特性を向上させ、遠距離物体の焦点合わせを向上させ得る。この遠見視覚の向上は、例えばコントラスト感度(CS)など脳が好む「正の」メトリックの増大として患者に知覚され得る。
【0120】
さらに、第1部分701が延長被写界深度を与えるように構成されるとき、焦点範囲にわたって(又は物体距離の範囲に)、第2部分702とほぼ等しい視力若しくは視覚、又は少なくともそれより高い視力若しくは視覚を提供可能である。遠、中、及び近点における、スポットサイズ、レンズの波面、及び特性(例えばMTF又はCSなど性能指数によって測定されるようなもの)は実質的に類似する。しかしながら、この構成では標準的計測法を用いたレンズパワーの評価に困難があり得る。従来のガウス分布測定方法を用いた患者の術後の臨床評価も困難が伴い得る。任意数の焦点が有効なベースパワーとして分類及び認識される(例えば距離又はラベルパワー)。所定の実施形態において、周辺光線の環を遠距離焦点位置に方向づける第2部分702により、距離パワーにさらに密接に対応する反復可能な測定が行われ得る。同様に、第2部分702は、インプラント又は非インプラントレンズにおける従来のベースパワーの測定に有用であり得、また業界標準の測定方法を用いてレンズパワーを正確に測定する能力において有用であり得る。このように、本発明に記載の所定の実施形態により、負のパワー、正のパワー、トーリック、又はそれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない、延長被写界深度を備えたレンズの標準的測定を可能にする。
【0121】
本明細書に記載の種々の実施形態において、第1部分701は、インプラントされた眼の射出瞳近傍点のそれぞれで全波面のバランスをとるために、球面収差の種々の次数の使用、及び円錐、双円錐、又は双非球面ベースカーブの使用を可能にし得、第2部分702は、遠見視覚の向上及び/又は単焦点距離焦点調節と、標準測定法の使用とを可能にし得る。
【0122】
種々の実施形態において、光学部700の前面及び/又は後面はその他の部分を包含し得る。例として、光学部700の前面及び/又は後面は、第1部分701と第2部分702との間で不連続性のない円滑な移行をおこなう移行部分(図示せず)をさらに包含し得る。移行部分はまた、さらなる波面最適化を可能にし得る。一部の実施形態において、移行部分は、約0.1~1mm範囲(例えば0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、又は任意のこれらのサイズの任意の範囲)の幅(例えば内半径と外半径との距離)を有し得る。これらの範囲外の値も用いられ得る。一部の態様において、第1部分701と第2部分702との曲率の移行は十分に円滑なものであり得、移行領域は望まれない。
【0123】
図8A~
図8Bは、延長被写界深度を与えるように構成された第1部分と、遠見視力が向上されるように構成された第2部分とを有する光学部の他の例示の前面及び/又は後面の概略図である。この例において、光学部700の前面及び/又は後面は、
図7A~
図7Bのように第1部分701と第2部分702とを包含し得る。
図8A~
図8Bに示される
ように、光学部700の前面及び/又は後面はまた、第2部分702を包囲する第3部分703を包含し得る。一部のそうした実施形態において、第1部分701は、約2.5~4.5mmの範囲(例えば、2.5mm、2.75mm、3.0mm、3.25mm、3.5mm、3.75mm、4.0mm、4.25mm、4.5mm、又はこれらの任意のサイズの任意の範囲)の最大断面径を有し得る。第2部分702は、約0.25~1.5mm範囲(例えば、0.25mm、0.5mm、0.75mm、1.0mm、1.25mm、1.5mm、又はこれらの任意のサイズの任意の範囲)の、内半径と外半径と間の幅を有する環形として示され得る。さらに、第3部分703は、第2部分702から光学部700の端部に延び得る。ゆえに、一部の実施形態において、第3部分703の幅は第2部分702の外周と光学部700の端部との間の距離であり得る。例として、第3部分703は、約0.5~3.5mmの範囲(例えば0.5mm、0.75mm、1.0mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2.0mm、2.25mm、2.5mm、2.75mm、3.0mm、3.5mm、又は任意のこれらのサイズの任意の範囲)の幅(例えば内半径と外半径との距離)を有し得る。これらの範囲外の値もまた用いられ得る。
【0124】
図8Bは、第2部分702を通過する光線が遠見視覚焦点においてどのように焦点に合うかを示す(0として分類)。一方で、第1部分701と第3部分703とを通過する光線は、遠(0)、中間(1)、及び近(2)焦点を介して連続的に焦点を合わせて、延長被写界深度が与えられる。上述のように、第1部分701と第3部分703とを通過する光線は、遠(0)、中間(1)、及び近(2)平面において、ほぼ一定の断面又はビーム直径を有する焦線を形成する。しかしながら、このビーム直径は、第2部分702のみを介して伝播する光線により形成された遠方イメージ平面(0)における焦点スポットサイズより大きい可能性があり得る。
【0125】
第3部分703は、第2部分702と異なる表面プロファイルを有し得る。例として、第3部分703は、第2部分702よりも、延長被写界深度を与える高い球面収差制御を有し得る。一部の実施例において、第3部分703は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動でオフセットされた円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を含む形状を有し得る。
【0126】
一部の実施形態において、第3部分703は、第1部分701と類似の表面プロファイル及び/又は実質的に同様の球面収差制御を有し得る。例として、第3部分703は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む包絡線に関する摂動でオフセットされた、第1部分と同様の円錐、双円錐、又は双非球面包絡線を実質的に有し得る。
【0127】
本明細書に記載されるように、第1部分701及び/又は第3部分703は、光軸からの半径距離の非球面高次関数を含む摂動でオフセットされた円錐、双円錐、双非球面包絡線を含む形状を有し得る。種々の実施形態において、非球面高次関数は、少なくとも1つの偶数次項a2nr2nを含み得、nは整数、a2nは係数、rは光軸からの半径距離である。例として、非球面高次関数は2次項a2r2を含み得、a2は係数、rは光軸からの半径距離である。非球面高次関数は4次項a4r4を含み得、a4は係数、rは光軸からの半径距離である。非球面高次関数は6次項a6r6も含み得、a6は係数、rは光軸からの半径距離である。さらに、非球面高次関数は8次項a8r8をさらに含み得、a8は係数、rは光軸からの半径距離である。非球面高次関数は、これらの高次項、及び場合によりさらなる項の、任意の組合せを含み得る。
【0128】
種々の実施形態において、光学部700の前面及び/又は後面は、第2部分702と第3部分703との間で不連続性のない円滑な移行をおこなう移行部分(図示せず)をさらに包含し得る。移行部分はまた、さらなる波面最適化を可能にし得る。一部の実施形態において、移行部分は、約0~1mm範囲(例えば0mm、0.1mm、0.2mm、0.
3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、又は任意のこれらのサイズの任意の範囲)の幅(例えば内半径と外半径との距離)を有し得る。これらの範囲外の寸法も用いられ得る。一部の態様において、第2部分702と第3部分703との曲率の移行は十分に円滑なものであり得、移行領域は望まれない。
【0129】
一部の実施形態において、第2部分702の焦線は、第1部分701の焦線及び/又は第3部分703の焦線と円滑に融合するように(又はより円滑に移行するように)形成され得る。例として、
図8Bに示されるように、第2部分702の下方焦線包絡線は、第3部分703の下方焦線包絡線と円滑に融合しないことがあり得る(例えば、焦線交差部近傍の不連続性を参照)。ゆえに、一部の実施形態において、より円滑に焦線を移行するために、第2部分702の円錐、双円錐、又は双非球面包絡線の円錐定数が、第1部分701の焦線及び/又は第3部分703の焦線とより円滑に融合するように(例えば、第1部分701の光線包絡線とより緊密に適合する及び/又は第3部分703の光線包絡線とより緊密に適合するように)与えられ得る。例として、一部の実施形態において、第2部分702は、第2部分702の焦線が第1部分701の焦線と円滑に、例えば第2部分が球面を含む場合よりも円滑に融合するように、円錐定数を有し得る。さらに、一部の実施形態において、第2部分702は、第2部分702の焦線が第3部分703の焦線と円滑に、例えば第2部分が球面を含む場合よりも円滑に融合するように、円錐定数を有し得る。より円滑な焦線移行を行うことにより、インプラントの外科的配置におけるわずかなずれは患者の視力において気づかれるような影響をあまり与えないということ予期され得る。さらに、より円滑な焦線移行により、ゴーストの重ね合わせが低減される可能性があり得る。
【0130】
本明細書に記載の光学部201に関する種々の開示は
図7A~
図7Bの種々の実施形態にも適用され得る。例として、
図7A~
図7Bの所定の実施形態は本明細書に記載されるような有水晶体又は偽水晶体レンズインプラントに用いられ得る。有水晶体レンズインプラントに用いられる実施形態において、光学部700は、約100~700マイクロメートル、約100~約600マイクロメートル、約100~約500マイクロメートル、約100~約400マイクロメートル、約100~約300マイクロメートル、又は約100~約200マイクロメートル(例えば、100マイクロメートル、200マイクロメートル、300マイクロメートル、400マイクロメートル、500マイクロメートル、600マイクロメートル、700マイクロメートル、そうした範囲の任意の値、又はそうした値で構成される任意の範囲)の、光軸に沿う厚みを有し得る。偽水晶体レンズインプラントの実施形態において、光軸に沿う厚みは、約700マイクロメートル~約4ミリメートル、約700マイクロメートル~約3ミリメートル、約700マイクロメートル~約2ミリメートル、約700マイクロメートル~約1ミリメートル、そうした範囲の任意の値、又はそうした範囲の任意の値で構成される任意の範囲であり得る。他の実施例のように、
図7A~
図7Bの実施形態は、インプラントされたときに光学部700を眼に付けるために光学700に配置された少なくとも1つのハプティックを含むレンズに用いられ得る。さらに一部の態様において、第1部分701は光学部の前面にあり得、第2部分702は光学部の後面にあり得る。同様に、一部の態様において、第1部分701は光学部の後面にあり得、第2部分702は光学部の前面にあり得る。
【0131】
本明細書に用いられる「約」及び「実質的に」という用語は、記載の量と等しい量又は記載の量に近似する量(例えば、尚所望の機能を果たすか又は所望の結果を得られる量)を表す。例として、記載されていない限り、「約」及び「実質的に」という用語は、記載の量の10%内(例えばそれより多い又は少ない)、5%内(例えばそれより多い又は少ない)、1%内(例えばそれより多い又は少ない)、0.1%内(例えばそれより多い又
は少ない)、又は0.01%内(例えばそれより多い又は少ない)の量に関し得る。
【0132】
本発明の種々の実施形態が本明細書に記載されている。本発明はこれらの特定の実施形態について記載されているが、該記載は本発明の例示を意図し、限定する目的ではない。当業者は、本発明の真の趣旨及び範囲から出ることなく種々の変形及び適用を行い得る。