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特許7048717風力タービンのローターのローターブレード、風力タービン、および風力タービンのローターの効率を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】風力タービンのローターのローターブレード、風力タービン、および風力タービンのローターの効率を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20220329BHJP
【FI】
F03D1/06 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020502143
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 EP2018071340
(87)【国際公開番号】W WO2019030205
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-03-10
(31)【優先権主張番号】102017117843.0
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Borsigstrasse 26, 26607 Aurich Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルブナー フロリアン
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-502623(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03176425(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0204832(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンのローターのローターブレード(1)であって、ローターブレード長さ(L)全体にわたりローターブレード根元部(4)とローターブレード先端部(5)との間に延在するローターブレード後縁(3)を有し、ローターブレード前縁(2)と前記ローターブレード後縁(3)との間に確立される翼型深さ(T)を有する、ローターブレード(1)において、
前記ローターブレード(1)が、連続的な翼型セクション(7)を有する少なくとも1つの翼型要素(6)を有し、前記ローターブレード(1)の前記翼型深さ(T)を変化させる目的で、前記少なくとも1つの翼型要素(6)を前記ローターブレード後縁(3)の領域に取り付けることができ、前記ローターブレード後縁(3)を超える前記翼型要素(6)の範囲(ΔT)が、製造時の前記ローターブレード(1)の前記翼型深さ(T)の寸法設計のための基礎となる、剪断力、乱流の発生、気候条件、空気密度、および風クラスおよび風域の基準速度を含む標準パラメータに関する標準負荷と、前記風力タービンの建設場所において確立される場所固有の、前記標準パラメータに関する負荷レベルとの間の差異に基づいて、決定される、ことを特徴とする、ローターブレード(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの翼型要素(6)が、前記ローターブレード長さ(L)にわたり少なくとも部分的に延在していることを特徴とする、請求項1に記載のローターブレード(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの翼型要素(6)が、前記ローターブレード後縁(3)の延長部において、次第に狭くなる輪郭を有することを特徴とする、請求項1および請求項2のいずれかに記載のローターブレード(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの翼型要素(6)が、前記ローターブレード後縁(3)の延長部において、一定の輪郭を有することを特徴とする、請求項1および請求項2のいずれかに記載のローターブレード(1)。
【請求項5】
前記ローターブレード長さ(L)にわたり少なくとも部分的に延在している前記翼型要素(6)が、前記ローターブレード(1)の長手方向軸に対して部分的にねじれている輪郭を有することを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のローターブレード(1)。
【請求項6】
前記ローターブレード長さ(L)にわたり少なくとも部分的に延在している前記翼型要素(6)の前記範囲(ΔT)が、前記ローターブレード(1)の前記翼型深さ(T)に応じて変化することを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のローターブレード(1)。
【請求項7】
前記翼型要素(6)が複数部品形式であり、前記ローターブレード後縁(3)の延長部に、翼型セクション(7)に隣接しておりかつ鋸歯状の輪郭を有するセクション(8)を有することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のローターブレード(1)。
【請求項8】
前記翼型要素(6)が、単一部品形式であり、鋸歯状の輪郭を有することを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のローターブレード(1)。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の、少なくとも1枚のローターブレード(1)を有する、風力タービン(100)。
【請求項10】
ローターブレード長さ(L)全体にわたりローターブレード根元部(4)とローターブレード先端部(5)との間に延在するローターブレード後縁(3)を有し、ローターブレード前縁(2)と前記ローターブレード後縁(3)との間に確立される翼型深さ(T)を有する、少なくとも1枚のローターブレード(1)、を有する風力タービンのローターの効率を改善する方法において、
前記ローターブレード(1)の前記翼型深さ(T)を変化させる目的で、連続的な翼型セクション(7)を有する少なくとも1つの翼型要素(6)が、前記ローターブレード後縁(3)の領域に取り付けられ、前記ローターブレード後縁(3)を超える前記翼型要素の範囲(ΔT)が、製造時の前記ローターブレード(1)の前記翼型深さ(T)の寸法設計のための基礎となる、剪断力、乱流の発生、気候条件、空気密度、および風クラスおよび風域の基準速度を含む標準パラメータに関する標準負荷と、前記風力タービンの建設場所において確立される場所固有の、前記標準パラメータに関する負荷レベルとの間の差異に基づいて、決定される、ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記標準負荷と、前記確立される場所固有の負荷レベルとの間の差異が大きいほど、前記少なくとも1つの翼型要素(6)のより大きな範囲(ΔT)が選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの翼型要素(6)が取り付けられることを特徴とする、請求項10および請求項11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンのローターのローターブレードと、風力タービンとに関する。さらに本発明は、風力タービンのローターの効率を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは一般に公知であり、例えば図1のように設計されている。風力タービンまたはその構成要素の設計は、標準化された指針(例えばIEC61400)に基づいて実行され、この指針は、風力タービンの技術的一貫性を保証するための主たる設計要件に関する。この標準規格の目的は、風力タービンの計画寿命の間、危険性から生じる損傷に対する適切な保護レベルを提供することである。この場合、風力タービンの寸法設計には標準パラメータが関与し、この寸法設計は、標準負荷に依存するが、場所に固有ではない。標準パラメータは、特に、剪断力、乱流の発生、気候条件、空気密度、および風クラスおよび風域の基準速度である。ローターブレードは、その標準負荷に依存して寸法設計が行われるため、固定パラメータによる定義された翼型(例えば関連付けられる翼型極性(profile polar)を有する翼型深さなど)を有する。この定義された翼型は、負荷の計算および年間発電量(AEP)の計算の基礎となる。
【0003】
1枚または複数のローターブレードの設計は、風力タービンの騒音放射および効率の重要な側面である。風力タービンのローターブレードは、通常、吸込み側および圧力側を有する。吸込み側および圧力側は、ローターブレードのローターブレード後縁において合流する。吸込み側と圧力側の圧力差は、渦の発生につながることがあり、渦によって、騒音が発生し、またローターブレードの後縁において出力が低減しうる。
【0004】
風力タービンの設計と、結果としてのローターブレードの形成は、主として標準的な場所または標準的な負荷に基づき、この場合、場所に固有な確認/負荷も関与しうる。このようにしてローターブレードは、その最近の幾何学的形状の観点において定義される。特に、ローターブレードは固定された形状を有し、この形状に対して、後から製造工程時にローターブレード1をねじる、あるいは翼型深さTを調整することはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】“Stromungsbeeinflussung bei Rotorblattern von Windenergieanlagen mit Schwerpunkt auf Grenzschichtabsaugung”[“Flow influence at rotor blades of wind turbines with a focus on boundary layer suction(境界層の吸込みに着目した風力タービンのローターブレードにおける流れの影響)”], B. Souza Heinzelmann, http://dx.doi.org/10.14279/depositonce-2975
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明は、上述した問題点の少なくとも1つに対処するという目的に基づく。特に、本発明は、風力タービンのローターブレードの有効性をさらに高める解決策を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、風力タービンのローターのローターブレードを提案する。本ローターブレードは、ローターブレード長さ全体にわたりローターブレード根元部とローターブレード先端部との間に延在するローターブレード後縁を有し、ローターブレード後縁とローターブレード前縁との間に確立される翼型深さを有する。効率を改善する目的で、本ローターブレードは、連続的な翼型セクションを有する少なくとも1つの翼型要素を有し、この翼型要素は、ローターブレードの翼型深さを変化させる目的で、ローターブレード後縁の領域に取り付けることができ、ローターブレード後縁を超える翼型要素の範囲は、ローターブレードの翼型深さの、標準負荷に依存する寸法設計と、風力タービンの建設場所において確立される負荷レベルとに応じて、決定される。
【0008】
翼型深さの変化は、少なくとも1つの翼型要素を取り付けることによって実施され、翼型要素の範囲は、ローターブレードの製造時にローターブレードの寸法設計のベースとなった標準負荷と、場所に固有な(例えば測定された、および/または、シミュレートされた)負荷レベルとの間に存在する差異、に基づいて決定される。測定された場所の負荷が、例えば低い空気密度の理由で、ローターブレードの寸法設計のベースである標準負荷を下回る場合、過大寸法設計(overdimensioning)が存在する。この過大寸法設計によって負荷の余裕(load reserve)が生じ、この負荷の余裕は、ローターブレードの翼型深さを後から変更することによって、少なくとも一部が利用される。過大寸法設計をベースとして、これを後の段階で適合させる目的で、その場所に固有であるローターブレードの許容可能な翼型深さを決定することが可能である。少なくとも1つの翼型要素を取り付けることにより、ローターブレードの翼型深さが、翼型要素の範囲に従って変化する。翼型要素の連続的な翼型セクションは、翼型深さの方向に一定に延在する、または可変式に延在することができる。少なくとも1つの翼型要素により、既存のローターブレードにおいて、風による作用を受ける、より大きい表面を提供することが可能になり、これは、利用可能な負荷の余裕を特定の程度だけ利用することによる出力の増大に関連付けられる。
【0009】
少なくとも1つの翼型要素によって、風による作用を受ける表面を増大させる、または翼型深さを増大させる目的には、翼型要素のさまざまな形状が考えられる。少なくとも1つの翼型要素のそれぞれの範囲は、風力タービンのそれぞれの場所に依存するそれぞれの負荷の余裕に応じて、決定される。
【0010】
少なくとも1つの翼型要素は、ローターブレード長さにわたり少なくとも部分的に延在していることが好ましい。ローターブレード長さ全体にわたり連続的に延在している1つの翼型要素は、その利点として、翼型要素とローターブレードとの間に存在する遷移部(この部分で望ましくない渦が発生しうる)が少ない。一方で、2つ以上の翼型要素を設けることは、その利点として、これらの翼型要素は製造の観点から実施が容易である。さらには、ローターブレードへの取り付けを、より容易に行うことができる。少なくとも1つの翼型要素は、ローターブレード後縁の輪郭に垂直に配置されていることが好ましい。
【0011】
好ましい一実施形態においては、少なくとも1つの翼型要素は、ローターブレード後縁の延長部において、次第に狭くなる輪郭(narrowing contour)を有する。この場合、次第に狭くなる輪郭は、ローターブレードの断面輪郭に実質的に従う、すなわち例えば、ある程度狭くなるローターブレード後縁を超える、ローターブレード翼型の翼型セクションの範囲を形成する。
【0012】
好ましい一実施形態においては、少なくとも1つの翼型要素は、ローターブレード後縁の延長部において、一定の輪郭を有する。この目的のため、少なくとも1つの翼型要素を、一定の厚さを有する板として設計することができる。別の実施形態においては、次第に狭くなる輪郭、および一定の輪郭、および/または次第に広くなる輪郭、の組合せを実施することも有利に可能である。一定の厚さに関しては、これに代えて、またはこれに加えて、例えば部分的に、翼型要素は、ローターブレード後縁の延長部に、次第に減少する厚さ(すなわち次第に狭くなる輪郭)を有することができる。
【0013】
ローターブレード後縁は、鋭利な形状または非鋭利な形状とすることができ、すなわちローターブレードは、平背輪郭(flat back contour)を有することができる。少なくとも1つの翼型要素は、特に、非鋭利な後縁の場合、後縁の上に直接配置する、または、特に圧力側および/または吸込み側における後縁の領域に配置することができる。
【0014】
ローターブレード長さにわたり少なくとも部分的に延在している翼型要素は、ローターブレードの長手方向軸に対して部分的にねじれている輪郭を有することが好ましい。少なくとも1つの翼型要素は、ローターブレードのねじれに従う。したがって翼型深さが変化するにもかかわらず、元のローターブレードの固有の空力特性が少なくとも実質的に維持される。
【0015】
ローターブレード長さにわたり少なくとも部分的に延在している翼型要素の範囲は、ローターブレードの翼型深さに応じて変化することが好ましい。ローターブレードの空力特性を維持する目的で、翼型要素の幅は、ローターブレードの翼型深さの輪郭によって変化してよい。ローターブレードの翼型深さに依存することに代えて、またはこれに加えて、範囲は、ローターの半径方向における位置に依存してもよい。
【0016】
特に好ましい一実施形態においては、翼型要素は、複数部品形式であり、ローターブレード後縁の延長部において、翼型セクションに隣接しておりかつ途切れた輪郭を有するセクションを有する。翼型要素は、2部品形式であることが特に好ましい。翼型セクションは、これに関してすでに記載したように、板として設計されていることが好ましい。翼型セクションに隣接するセクションは、単一部品形式または複数部品形式とすることができる。このセクションの途切れた輪郭は、鋸歯形状であることが好ましい。鋸歯状の形状は、ローターブレード後縁における流れの挙動を改善するのに役立つ。鋸歯状に途切れているこのセクションの輪郭により、ローターブレード後縁に発生する渦を低減することが可能になる。さらに、このようなセクションは、騒音放射を低減するのに役立ちうる。
【0017】
特に好ましい一実施形態においては、少なくとも1つの翼型要素は、単一部品形式であり、好ましくはローターブレード後縁とは反対側に鋸歯状翼型を有する。翼型深さの増大を達成する目的で、ローターブレードの翼型深さを、その場所に固有な許容可能な翼型深さに適合させるために、鋸歯状部の、翼型深さの方向における深さ、および/または、ローターブレードの長手方向における幅を、存在する負荷の余裕に応じて相応に変化させる。これに対応して、風による作用を受けるローターブレードの表面が拡大される。鋸歯状翼型は、少なくとも1つの翼型要素の翼型セクションに隣接している、または翼型セクションの一部を形成している、すなわち翼型要素は、1つの部品において翼型セクションに隣接している鋸歯状部を有する。
【0018】
さらに、複数部品構造の場合における鋸歯状に途切れている輪郭、および1部品構造の場合における鋸歯状の輪郭は、ローターブレード後縁を超えて延在しており、この場合、鋸歯状部の特徴(すなわち特に、長さ、幅、および/または形状)が、ローターブレードの翼型深さの、標準負荷に依存する寸法設計と、風力タービンの建設場所において確立される負荷レベルとに応じて、決定および最適化されることが好ましい。
【0019】
さらには、本発明に係る少なくとも1枚のローターブレードを有する風力タービン、好ましくは本発明に係る3枚のローターブレードを有する風力タービン、を提案する。
【0020】
さらには、風力タービンのローターの効率を改善する方法を提案する。ローターは少なくとも1枚のローターブレードを備えており、このローターブレードは、ローターブレード長さ全体にわたりローターブレード根元部とローターブレード先端部との間に延在するローターブレード後縁を有し、ローターブレード後縁とローターブレード前縁との間に確立される翼型深さを有する。これに関して、ローターブレードの翼型深さを変化させる目的で、連続的な翼型セクションが設けられた少なくとも1つの翼型要素を、ローターブレード後縁の領域に取り付け、ローターブレード後縁を超える翼型要素の範囲は、ローターブレードの翼型深さの、標準負荷に依存する寸法設計と、風力タービンの建設場所において確立される負荷レベルとに応じて、決定される。風力タービンの稼働運転中に実際の負荷レベルを推定できるようにする目的で、発生する条件に関する情報を記録および評価する。少なくとも1つの翼型要素を取り付けることによって、標準負荷に依存する寸法設計に基づいて想定される設計負荷と、建設場所において実際に決定される風力タービンの稼働率との間に確立される負荷の余裕を、利用することができる。
【0021】
結果として、記載されているローターブレードの少なくとも一実施形態による関係、説明、および利点が得られる。
【0022】
特に、場所に固有な確立される負荷レベルに起因する、標準負荷に依存する寸法設計を下回る程度が大きいほど、少なくとも1つの翼型要素のより大きな範囲を選択することができる。
【0023】
少なくとも1つの翼型要素が組み込まれることが好ましい。少なくとも1つの翼型要素による、ローターブレードの特定の改造によって、風による作用を受ける表面が大きくなり、結果として年間発電量へのより大きな貢献を達成することができる。
【0024】
以下では、本発明について、一例としての例示的な実施形態に基づき添付の図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】風力タービンを斜視図において概略的に示している。
図2】ローターブレード前縁およびローターブレード後縁を有するローターブレードの概略図を示している。
図3a】少なくとも1つの翼型要素が上に配置されているローターブレード後縁の一部の概略図を示している。
図3b図3aに示した翼型要素の断面のさまざまな例を概略的に示している。
図3c図3aに示した翼型要素の断面のさまざまな例を概略的に示している。
図3d図3aに示した翼型要素の断面のさまざまな例を概略的に示している。
図3e図3aに示した翼型要素の断面のさまざまな例を概略的に示している。
図4】ローターブレードの翼型深さが変更される前の、鋸歯状の輪郭を有するセクションが上に配置されているローターブレード後縁の一部の概略図を示している。
図5】翼型要素が上に配置されている、図4によるローターブレード後縁の一部の概略図を示している。
図6】翼型要素として形成されており鋸歯状の輪郭を有するセクションを有する、ローターブレード後縁の一部の概略図を示している。
図7図6によるローターブレード後縁の一部の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
異なる実施形態の、同じではないが類似する要素は、可能な場合には同じ参照符号によって表してあることに留意されたい。
【0027】
図面を参照しながら例に基づいた本発明の説明は、相当に概略的であり、説明を理解しやすくする目的で、各図において説明対象の要素は図中で誇張されていることがあり、それ以外の要素は簡略化されていることがある。例えば図1は、風力タービン自体を概略的に示しており、したがってローターブレードに設けられている鋸歯状の後縁を明確に見ることができない。
【0028】
図1は、タワー102を有しかつナセル104を有する風力タービン100を示している。ナセル104には、3枚のローターブレード108を有しかつスピナー110を有するローター106が配置されている。運転時、ローター106が風によって回転し、これにより、ナセル104の中の発電機を駆動する。
【0029】
図2は、ローターブレード前縁2およびローターブレード後縁3を有するローターブレード1の概略図を示している。ローターブレード1は、ローターブレード根元部4からローターブレード先端部5まで延在している。ローターブレード先端部5とローターブレード根元部4との間の長さを、ローターブレード長さLと称する。ローターブレード前縁2とローターブレード後縁3との間の距離を、翼型深さTと称する。風による作用を受けるローターブレード1の表面は、本質的にローターブレード長さLおよび翼型深さTによって決まる。
【0030】
図3aは、少なくとも1つの翼型要素6が上に配置されているローターブレード後縁3の一部の概略図を示している。翼型要素6は、板状の翼型セクション7を有する。翼型セクション7は、ローターブレード後縁3の延長部において、例えば図3c~図3eに示したように、次第に狭くなる断面輪郭を有する。図3cは、圧力側および吸込み側から均一に狭くなる断面輪郭を示しているのに対して、図3dおよび図3eは、翼型要素6の側面の一方のみから(すなわち圧力側または吸込み側の表面から)次第に狭くなる断面輪郭を示している。これに代えて、または部分的に、翼型セクション7は、ローターブレード後縁3の延長部において一定の断面輪郭をさらに有することもできる。この目的のため、翼型セクション7は、図3bに概略的に示したように、実質的に直方体状断面を有することができる。他の断面輪郭(例えば凹状、凸状など)と、および図示した輪郭の組合せも考えられる。
【0031】
翼型要素6は、ローターブレード1の長手方向において、ローターブレード後縁3の輪郭に適合されており、結果としてこの翼型要素は、自身において湾曲しておりさらにねじれているローターブレード後縁3の輪郭に従う。翼型要素6は、ローターブレード後縁3の部分的な延長部を形成している。
【0032】
ローターブレード後縁3を超える翼型セクション7の範囲(後の段階でローターブレード後縁3の上に翼型要素6が配置されたとき、この範囲によって翼型深さTが増大する)を、ΔTで表す。この場合、ローターブレード長さLにわたり少なくとも部分的に延在する翼型セクション7の範囲ΔTは、例えばローターブレード1の翼型深さTに応じて変化させることができる。図示した実施形態においては、翼型要素6は、単一部品形式であり、ローターブレード長さLにわたり少なくとも部分的に延在している。複数の翼型要素6を分割式に配置することも考えられる。この目的のため、複数の翼型要素6が、ローターブレード後縁3の上に互いに隣り合って配置される。この場合、複数の翼型要素6の間の遷移部は、好ましくはスカーフ継ぎ形式(scarfed form)であるが、遷移部の別の構造も可能である。
【0033】
図4は、ローターブレード1の翼型深さTが変更される前の、鋸歯状の輪郭を有するセクション8が上に配置されているローターブレード後縁3の一部の概略図を示している。セクション8は、ローターブレード後縁3に垂直に配置されており、すなわちセクション8は、ローターブレード1の翼弦(profile chord)の延長部を実質的に形成している。鋸歯状部9が設けられているセクション8は、ローターブレード後縁3における流れの挙動を改善する役割を果たす。鋸歯状部9の最も外側位置としての鋸歯先端部12と、ローターブレード後縁3の開始位置との間の距離を、参照符号Zで表す。2つの隣り合う鋸歯状部9の間それぞれに位置する最下点は、鋸歯基部11と称する。距離Zは、ローターブレード後縁3の側のセクション8の側面(すなわちセクション8の開始位置)と鋸歯基部11との間の領域と、さらに鋸歯基部11と鋸歯先端部12との間の距離とを含む。鋸歯状部9の鋸歯基部11と鋸歯先端部12との間の各距離を、鋸歯状部高さHと称する。鋸歯状部高さH、および/または、2つの鋸歯状部9の間の距離、および/または、鋸歯状部9自体の形状は、ローターブレード後縁3の輪郭に沿って変化してもよい。この例では、V字状に延びる鋸歯状輪郭を有するセクション8を示してある。V字状に延びる図示した形状に代えて、またはこれに加えて、全体または一部分が丸みを帯びた輪郭、さらには正弦曲線状の輪郭も考えられる。
【0034】
図5は、鋸歯状セクション8が隣接している翼型要素6が上に配置されている、図4によるローターブレード後縁3の一部の概略図を示している。翼型要素6は、ローターブレード後縁3と鋸歯状セクション8との間に配置されている。翼型セクション7の範囲ΔTまたは幅によって、ローターブレード1の翼型深さTの変化が決まる。翼型セクション7に隣接する鋸歯状セクション8は、同様に後の段階において翼型要素6の上に配置することもできる。セクション8が翼型要素6の構成部分である構造が好ましい。
【0035】
図6は、ローターブレード1の翼型深さTが変更される前の、翼型要素として形成されており鋸歯状の輪郭を有するセクション8を有する、ローターブレード後縁3の一部の概略図を示している。
【0036】
図7は、図6によるローターブレード後縁3の一部の概略図を示している。この実施形態では、幾何学的寸法に関して変更されており鋸歯状輪郭自体を有するセクション8’が、翼型要素6を形成している。ローターブレード1の翼型深さTを変更する目的で、距離Zが範囲ΔTだけ拡大されている。この目的のため、セクション8’の開始位置と鋸歯基部11との間の領域に、翼型セクション7として機能する追加の間隔10が設けられている。これに代わる形態では、鋸歯基部11とセクション8’の開始位置との間の距離を同じままで、鋸歯状部高さHおよび/または幅を拡大する。翼型深さTを変更する目的で、ローターブレード後縁3の上に配置されているセクション8がセクション8’に置き換えられている。
【0037】
風力タービン100の設計、またはローターブレード1の寸法設計および構造は、標準的な場所または標準負荷に基づく。この方式では、風力タービンの運転の信頼性を確保する目的で、発生する負荷ピークを考慮に入れる。このようにしてローターブレード1は、その幾何学的形状に関して定義される。結果としてローターブレード1は固定された形状を有し、後から製造工程時にローターブレード1をねじる、あるいは翼型深さTを調整することはできない。
【0038】
ローターブレードの設計の場合、風力タービンの寸法設計には標準パラメータが関与し、この寸法設計は、標準負荷に依存するが、場所に固有ではない。標準パラメータは、特に、剪断力、乱流の発生、気候条件、空気密度、および風クラスおよび風域の基準速度である。風力タービンの計画寿命の間、危険性から生じる損傷に対する適切な保護レベルを提供する目的で、ローターブレード1はこれらの情報に基づいて寸法設計される。実際に発生する運転条件は、設計のベースとなったこれらの標準パラメータから頻繁に逸脱する。したがって、例えばローターブレード1の設計のベースとなった風密度(wind density)よりも低い風密度の理由で、負荷の余裕が生じることがある。この負荷の余裕(過大寸法設計から生じる)が、その場所に固有である、ローターブレード1の許容可能な翼型深さTを決定するためのパラメータとして使用される。場所に固有である許容可能な翼型深さTが、実際に発生する負荷に基づいて決定されているならば、この翼型深さTから、翼型要素6の可能な追加の範囲ΔTを決定することが可能である。したがって、風力タービンの年間発電量を最適化する目的で、風による作用を受ける表面(ローターブレード長さ、ローターブレード1の翼型深さ、および翼型要素の範囲ΔTによって決まる)が、場所に固有な方法で適合化される。
【0039】
なお当然ながら、翼型要素6は、さらなる有利な用途を有することもでき、したがって負荷の最適化に限定されないことに留意されたい。例えば1つまたは複数の翼型要素6によって、誘導係数(induction factor)の分布を最適化するために、この設定を使用することができる。この目的のため、ローター面における空気流の軸方向の減速または半径方向の減速によってローターの効率を表す軸方向誘導係数aおよび半径方向誘導係数a’を考慮することがしばしばある(例えば非特許文献1を参照)。軸方向の誘導係数aは、ローター面から遠い風速uと、ローター面における風速uとを使用して以下のように定義される。
【0040】

【数1】
【0041】
最適な運転点は、理想的な場合、aの1/3の値によって特徴付けられる。局所的な半径位置において局所的な先端部の速度比λlocalを導入すると、接線方向の誘導係数a’は以下のように定義することができる。
【0042】

【数2】
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4
図5
図6
図7