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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】表示パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20220329BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220329BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220329BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220329BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220329BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220329BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
H05B33/04
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/10
G09F9/30 365
G09F9/30 309
G09F9/00 338
B32B9/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020541369
(86)(22)【出願日】2019-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2019110832
(87)【国際公開番号】W WO2021017172
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】201910693009.8
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517333336
【氏名又は名称】武漢華星光電半導体顕示技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WUHAN CHINA STAR OPTOELECTRONICS SEMICONDUCTOR DISOLAY TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】305 Room,Building C5 Biolake of Optics Valley,No.666 Gaoxin Avenue,.Wuhan East Lake High-tech Development Zone Wuhan,Hubei 430079 China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】郭 天福
(72)【発明者】
【氏名】黄 静
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108878686(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109728191(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103904230(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
前記ベース基板の片側の表面に設けられている薄膜封止層と、を含み、
前記薄膜封止層は、
前記ベース基板の片側の表面に設けられている第1無機層と、
前記第1無機層の前記ベース基板から離れる側の表面に設けられている有機層と、
前記有機層の前記第1無機層から離れる側の表面に設けられている第2無機層と、
前記有機層と前記第1無機層との間、および/または前記有機層と前記第2無機層との間に、設けられている少なくとも1つの吸水積層膜層と、を含み、
前記吸水積層膜層のそれぞれが、
緻密膜層と、
前記緻密膜層の片側の表面に貼り付けられている吸水膜層と、を含み、
前記緻密膜層の材質が、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムのいずれかを含み、
前記吸水膜層の材質が、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよびアルミニウム系有機無機複合材料のいずれかを含む、表示パネル。
【請求項2】
前記吸水積層膜層の層数が2層以上である場合に、
一方の吸水積層膜層の緻密膜層が、他方の吸水積層膜層の吸水膜層に貼り付けられている請求項に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記緻密膜層の厚さが1~1000nmであり、屈折率が1.6よりも大きく、
前記吸水膜層の厚さが1~3000nmである請求項に記載の表示パネル。
【請求項4】
ベース基板を提供するベース基板提供工程と、
前記ベース基板の上面に薄膜封止層を製造する薄膜封止層製造工程と、を含み、
前記薄膜封止層製造工程は、
前記ベース基板の上面に第1無機層を製造する第1無機層製造工程と、
前記第1無機層の上方に有機層を製造する有機層製造工程と、
前記有機層の上方に第2無機層を製造する第2無機層製造工程と、を含み、
前記薄膜封止層製造工程はさらに、
前記有機層と前記第1無機層との間、および/または前記有機層と前記第2無機層との間に、少なくとも1つの吸水積層膜層を製造する吸水積層膜層製造工程を含み、
前記吸水積層膜層のそれぞれが、
緻密膜層と、
前記緻密膜層の片側の表面に貼り付けられている吸水膜層と、を含み、
前記緻密膜層の材質が、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムのいずれかを含み、
前記吸水膜層の材質が、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよびアルミニウム系有機無機複合材料のいずれかを含む、表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記吸水積層膜層製造工程において、
前記第1無機層の上面に少なくとも1つの前記吸水積層膜層を堆積し、
前記有機層製造工程において、
前記吸水積層膜層の上面に前記有機層を製造する請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記吸水積層膜層製造工程が、
前記第1無機層の上面に前記緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程と、
前記緻密膜層の上面に前記吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程と、を含み、
前記緻密膜層堆積工程と前記吸水膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記吸水積層膜層製造工程が、
前記第1無機層の上面に前記吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程と、
前記吸水膜層の上面に前記緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程と、を含み、
前記吸水膜層堆積工程と前記緻密膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記吸水積層膜層製造工程において、
前記有機層の上面に少なくとも1つの前記吸水積層膜層を堆積し、
前記第2無機層製造工程において、
前記吸水積層膜層の上面に前記第2無機層を製造する請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記吸水積層膜層製造工程が、
前記有機層の上面に前記緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程と、
前記緻密膜層の上面に前記吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程と、を含み、
前記緻密膜層堆積工程と前記吸水膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記吸水積層膜層製造工程が、
前記有機層の上面に前記吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程と、
前記吸水膜層の上面に前記緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程と、を含み、
前記吸水膜層堆積工程と前記緻密膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記緻密膜層堆積工程において、
原子層堆積法により、酸化アルミニウム、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムを堆積し、
前記吸水膜層堆積工程において、
化学気相成長法、原子層堆積法または物理気相成長法により、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたはアルミニウム系有機無機複合材料を堆積する請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項12】
前記緻密膜層堆積工程において、
原子層堆積法により、酸化アルミニウム、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムを堆積し、
前記吸水膜層堆積工程において、
化学気相成長法、原子層堆積法または物理気相成長法により、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたはアルミニウム系有機無機複合材料を堆積する請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項13】
前記緻密膜層堆積工程において、
原子層堆積法により、酸化アルミニウム、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムを堆積し、
前記吸水膜層堆積工程において、
化学気相成長法、原子層堆積法または物理気相成長法により、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたはアルミニウム系有機無機複合材料を堆積する請求項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記緻密膜層堆積工程において、
原子層堆積法により、酸化アルミニウム、酸化チタンまたは酸化ジルコニウムを堆積し、
前記吸水膜層堆積工程において、
化学気相成長法、原子層堆積法または物理気相成長法により、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムまたはアルミニウム系有機無機複合材料を堆積する請求項10に記載の表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示分野に関し、特に表示パネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルは、従来のLCDに比べて、軽量で、広視野角で、応答速度が速く、耐低温で、発光効率が高い等の利点を有する。このため、ディスプレイ業界において、次世代の新たな表示技術として認められており、特にOLEDは、フレキシブル基板上に屈曲可能なフレキシブルデバイスを形成することができ、これはOLEDに特有の大きな利点である。OLED(フレキシブル表示)のこの利点を実現するには、薄膜封止(TFE)技術は必要不可欠なコア技術である。
【0003】
表示パネルの致命的なキラーは、外部環境に存在する水分及び酸素である。外部からの水分及び酸素の侵入経路は、水分及び酸素がTFE成膜を上から下に直接透過して表示パネル内部に侵入する経路と、水分及び酸素がTFE成膜の側面から侵入してOLEDを侵食する経路とに分けられる。
【0004】
通常、表示パネルは、ガラス基板、アレイ基板、発光層、薄膜封止層を含む。このうち、薄膜封止層は、第1無機層、有機層及び第2無機層を含む、サンドイッチ成膜構造であり、現在の業界でよく見られるTFE成膜構造である。このサンドイッチ成膜構造の水蒸気透過率(water vapor transmission rate,WVTR)は、業界内で<5E-4g/m/dayとすることができる。第1無機層及び第2無機層は、主に、外部からの水分及び酸素の表示パネル内部の有機層への侵入を遮断するために使用される。有機層の膜質は多孔性であるため、水分及び酸素を遮断する能力を何ら有していない。したがって、表示パネルの水分及び酸素遮断効果は乏しい。
【0005】
従来技術では、薄膜封止構造は、酸化アルミニウム層とPP層とを用いて積層膜層を形成し、この積層膜層は、理論上、優れた水分及び酸素遮断性を有するが、実際の生産工程において、製造工程における不可避的な異物を効率的に包み込むことができないため、実際の水分及び酸素遮断効果はしばしば不十分である。
【0006】
特許文献US20150021565、US20150048331では、薄膜封止層の構成は、第1無機層/第1有機層/第2無機層/第2有機層/第3無機層を含み、第1無機層は酸化アルミニウムである。このような薄膜封止層の構成の主な欠点は、無機層と有機層とを重ねた構造が厚すぎることであり、耐折り曲げ特性が相対的に低下し、成膜層の応力が過度に大きい傾向があるため、表示パネルの下部の発光膜層が引っかけられてしまう可能性もあり、フレキシブル表示パネルの長期的な開発にとって不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、従来技術に存在する、不十分な水分及び酸素遮断性能、不十分なフレキシブル性能、及び表示パネルの正常な発光に影響を及ぼす、という技術的課題を解決する、表示パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、ベース基板と、第1無機層、有機層、第2無機層及び吸水積層膜層を含む薄膜封止層とを含み、前記第1無機層は、前記ベース基板の片側の表面に設けられ、前記有機層は、前記第1無機層の前記ベース基板から離れる側の表面に設けられ、前記第2無機層は、前記有機層の前記第1無機層から離れる側の表面に設けられ、少なくとも1つの前記吸水積層膜層は、前記有機層と前記第1無機層との間、及び/又は前記有機層と前記第2無機層との間に設けられる表示パネルを提供する。
【0009】
さらに、前記吸水積層膜層のそれぞれは、緻密膜層と、前記緻密膜層の片側の表面に貼り付けられる吸水膜層とを含む。
【0010】
さらに、前記吸水積層膜層の層数が2層以上である場合に、一方の吸水積層膜層の緻密膜層が他方の吸水積層膜層の吸水膜層に貼り付けられる。
【0011】
さらに、前記緻密膜層の厚さは1~1000nmであり、屈折率は1.6よりも大きく、前記吸水膜層の厚さは1~3000nmである。
【0012】
さらに、前記緻密膜層の材質は、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムのいずれかを含み、前記吸水膜層の材質は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよびアルミニウム系有機無機複合材料のいずれかを含む。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明はさらに、ベース基板を提供するベース基板提供工程と、前記ベース基板の上面に薄膜封止層を製造する薄膜封止層製造工程とを含み、前記薄膜封止層製造工程は、前記ベース基板の上面に第1無機層を製造する第1無機層製造工程と、前記第1無機層の上方に有機層を製造する有機層製造工程と、前記有機層の上方に第2無機層を製造する第2無機層製造工程とを含み、前記薄膜封止層製造工程はさらに、前記有機層と前記第1無機層との間、及び/又は前記有機層と前記第2無機層との間に少なくとも1つの吸水積層膜層を製造する吸水積層膜層製造工程を含む表示パネルの製造方法を提供する。
【0014】
さらに、前記吸水積層膜層製造工程において、前記第1無機層の上面に少なくとも1つの吸水積層膜層を堆積し、前記有機層製造工程において、前記吸水積層膜層の上面に有機層を製造する。
【0015】
さらに、前記吸水積層膜層製造工程は、前記第1無機層の上面に緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程と、前記緻密膜層の上面に吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程とを含み、前記緻密膜層堆積工程と前記吸水膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される。
【0016】
さらに、前記吸水積層膜層製造工程は、前記第1無機層の上面に吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程と、前記吸水膜層の上面に緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程とを含み、前記吸水膜層堆積工程と前記緻密膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される。
【0017】
さらに、前記吸水積層膜層製造工程において、前記有機層の上面に少なくとも1つの吸水積層膜層を堆積し、前記第2無機層製造工程において、前記吸水積層膜層の上面に第2無機層を製造する。
【0018】
さらに、前記吸水積層膜層製造工程は、前記有機層の上面に緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程と、前記緻密膜層の上面に吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程とを含み、前記緻密膜層堆積工程と前記吸水膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される。
【0019】
さらに、前記吸水積層膜層製造工程は、前記有機層の上面に吸水膜層を堆積する吸水膜層堆積工程と、前記吸水膜層の上面に緻密膜層を堆積する緻密膜層堆積工程とを含み、前記吸水膜層堆積工程と前記緻密膜層堆積工程とが少なくとも1回実行される。
【0020】
さらに、前記緻密膜層堆積工程において、原子層堆積法により、酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを堆積し、前記吸水膜層堆積工程において、化学気相成長法、原子層堆積法又は物理気相成長法により、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム又はアルミニウム系有機無機複合材料を堆積する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の技術的効果は、無機層と有機層との間に、外部からの水分及び酸素が無機層から表示パネルの内部の有機層へ侵入することを遮断することができ、高い緻密性と吸水性を有する、吸水積層膜層が設けられることで、薄膜封止層が高い水分及び酸素遮断性を有するとともに、優れたフレキシブルな折り曲げ性を保持して、表示パネルの光透過率を向上させる表示パネル及びその製造方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1に係るOLED表示デバイスの構造概略図である。
図2図2は、実施形態1に係る薄膜封止層の構造概略図である。
図3図3は、実施形態1に係る薄膜封止層の別の構造概略図である。
図4図4は、表示パネルの製造方法のフローチャートである。
図5図5は、実施形態1に係る薄膜封止層製造工程のフローチャートである。
図6図6は、実施形態1に係る吸水積層膜層製造工程のフローチャートである。
図7図7は、実施形態1に係る吸水積層膜層製造工程の別のフローチャートである。
図8図8は、実施形態1に係る薄膜封止層の水蒸気透過率のグラフである。
図9図9は、実施形態2に係る薄膜封止層の構造概略図である。
図10図10は、実施形態2に係る薄膜封止層製造工程のフローチャートである。
図11図11は、実施形態3に係る薄膜封止層の構造概略図である。
図12図12は、実施形態3に係る薄膜封止層製造工程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
図面において、符号の説明は以下の通りである:
1 ベース基板、2 薄膜封止層、
101 ガラス基板、102 PI基板、103 画素定義層、104 発光層、
201 活性層、202 多結晶シリコン層、203 誘電体層、204 ソース・ドレイン電極、205 ゲート電極、
206 絶縁層、207 平坦化層、208 アノード電極、2011 ドープ領域、
210 第1無機層、211 吸水積層膜層、212 有機層、213 第2無機層、
221 第1吸水積層膜層、231 第2吸水積層膜層、
2111 緻密膜層、2112 吸水膜層。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明し、本発明の実施可能性を証明する。これらの実施形態は、当業者に本発明の技術的内容を完全に紹介することができる。これにより、本発明の技術的内容が、より明確で、かつ理解しやすくなる。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態の実施形態によって具現化されてもよく、本発明の保護範囲は、本明細書に言及される実施形態に限定されるものではない。
【0025】
実施形態1
【0026】
図1に示すように、本実施形態は、ベース基板1と、ベース基板1の上面に設けられる薄膜封止層2とを含む表示パネルを提供する。
【0027】
ベース基板1は、ガラス基板101、PI基板102、薄膜トランジスタ、画素定義層103及び発光層104を含む。
【0028】
ガラス基板101は、従来技術におけるガラス基板である。PI基板102は、主にポリイミド(Polyimide,PI)を材料とするフレキシブル基板であり、光透過率を効果的に向上させることができる。それぞれの薄膜トランジスタは、活性層201(P型ドープ)、多結晶シリコン層202、誘電体層203、ソース・ドレイン電極204、ゲート電極205、絶縁層206、平坦化層207、アノード電極208を含む。具体的には、活性層201には、P型不純物又はN型不純物がドーピングされて、ソース・ドレイン電極204に接続される、MOSトランジスタのソース・ドレイン電極の接続領域を形成するためのドープ領域2011が設けられている。多結晶シリコン層202は、MOSトランジスタのゲート電極を形成する接続領域であり、ゲート電極205に接続される。誘電体層203は、ソース・ドレイン電極204とゲート電極205とを絶縁し、両電極間の接触により、短絡現象の発生を防止する。絶縁層206は、活性層202、誘電体層203及びゲート電極層205の上面に設けられて、ソース・ドレイン電極204を貫通している。平坦化層207は、ソース・ドレイン電極204及び絶縁層206の上面に設けられている。アノード電極208は、平坦化層207の上面に設けられている。平坦化層207は、通常、ポリメチルメタクリレート又はナノ粒子複合材料で形成され、耐熱性に優れている。画素定義層103は、アノード電極208及び平坦化層207の上面に設けられている。発光層104は、画素定義層103の上面に設けられており、カソード電極(図示せず)が発光層104に設けられている。
【0029】
図2図3に示すように、薄膜封止層2は、第1無機層210、有機層212及び第2無機層213を含む。第1無機層210がベース基板1の上面に設けられ、有機層212が第1無機層210の上面に設けられ、第2無機層213が有機層212の上方に設けられている。
【0030】
本実施形態において、薄膜封止層2は、第1無機層210と有機層212との間に設けられる吸水積層膜層211をさらに含む。
【0031】
吸水積層膜層211のそれぞれは、緻密膜層2111及び吸水膜層2112を含む。緻密膜層2111の材質が、酸化アルミニウム、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムのいずれかを含み、これらの材質が緻密性に優れている。緻密膜層2111の厚さは1~1000nmであり、屈折率は1.6よりも大きいため、薄膜封止層に良好なフレキシブル性を持たせ、表示パネルの光透過率を向上させることができる。
【0032】
有機層212の膜質は多孔性であり、水分及び酸素を遮断する能力がないため、外部からの水分及び酸素が第1無機層210又は第2無機層213から表示パネル内部の有機層212内に侵入する。したがって、第1無機層210の上面又は有機層212の上面に緻密膜層2111を設けることにより、有機層212の緻密性を向上させることができ、それによって有機層212の水分及び酸素遮断性を高め、薄膜封止層2の性能を向上させることができる。吸水膜層2112の材質は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよびアルミニウム系有機無機複合材料のいずれかを含み、吸水膜層2112の厚さは1~3000nmであり、薄膜封止層2は、良好な吸水性及びフレキシブル性を有する。外部からの水分及び酸素が薄膜封止層2に侵入すると、水分及び酸素の有機層212への侵入を防止することができ、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させることができる。
【0033】
図2に示すように、緻密膜層2111を第1無機層210の上面に設け、吸水膜層2112を緻密膜層2111の上面に設けることで、吸水積層膜層211の表面に緻密性の高いメタアルミン酸塩を形成させ、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させる。
【0034】
他の実施形態において、吸水膜層2112をさらに第1無機層210の上面に設けてもよく、緻密膜層2111を吸水膜層2112の上面に設けてもよく、それは、本実施形態と同様の技術的効果を有する。
【0035】
本実施形態の改良実施形態において、第1無機層210と有機層212との間に複数の吸水積層膜層211が設けられ、複数の緻密膜層2111と複数の吸水膜層2112とが交互に配置される。図3に示すように、吸水積層膜層211が2層である場合に、第1無機層210と有機層212との間に、2層の緻密膜層2111と2層の吸水膜層2112とが交互に配置される。
【0036】
同時に複数の吸水積層膜層を使用する技術的手段は、吸水積層膜層の表面に緻密性の高いメタアルミン酸塩を形成させることで、吸水積層膜層に良好な吸水効果を持たせ、1つの吸水積層膜層のみを使用する技術的手段に対して、さらに薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させる。
【0037】
図4に示すように、本実施形態は、さらに、次の工程S1~S2を含む表示パネルの製造方法を提供する。S1ベース基板提供工程:ベース基板を提供する。S2薄膜封止層製造工程:前記ベース基板の上面に薄膜封止層を製造する。
【0038】
図5に示すように、S2薄膜封止層製造工程は、次の工程S211~S214を含む。
【0039】
S211第1無機層製造工程:ベース基板の上面に第1無機層を製造する。具体的には、前記ベース基板上に、化学気相成長(CVD)法、物理気相成長(PVD)法等により、第1無機層を堆積する。前記第1無機層は、厚さが2μm未満であり、その材質が窒化ケイ素(SiN)、酸窒化ケイ素(SiON)、一酸化ケイ素(SiO)等の無機化合物であってもよい。前記第1無機層は、外部から侵入する水分及び酸素を遮断するとともに、表示パネルの性能を向上させることができる。
【0040】
S212吸水積層膜層製造工程:前記第1無機層の上面に少なくとも1つの吸水積層膜層を堆積する。前記吸水積層膜層が緻密性の高いメタアルミン酸塩を有し、外部からの水分及び酸素の侵入を遮断することができる。吸水積層膜層製造工程は、緻密膜層堆積工程と、吸水膜層堆積工程とを含み、両者の実施順序は交換可能である。
【0041】
図6に示すように、S212吸水積層膜層製造工程は、工程S2121~S2122を含む。
【0042】
S2121緻密膜層堆積工程:前記第1無機層の上面に緻密膜層を堆積する。原子層堆積法により、前記第1無機層の上面に緻密膜層を形成する。前記緻密膜層の材質が、酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化ジルコニウムを含むことで、前記緻密膜層は、緻密性に優れる。前記緻密膜層の厚さは1~1000nmであり、屈折率は1.6よりも大きく、これにより、薄膜封止層は良好なフレキシブル性を有し、表示パネルの光透過率を向上させることができる。
【0043】
S2122吸水膜層堆積工程:前記緻密膜層の上面に吸水膜層を堆積する。化学気相成長法、原子層堆積法又は物理気相成長法により、前記緻密膜層の上面に吸水膜層を形成する。前記吸水膜層の材質は、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム又はアルミニウム系有機無機複合材料を含み、前記吸水膜層の厚さは1~3000nmである。堆積プロセスにおいて、前記吸水膜層は、緻密で均一な成膜層を形成することができ、良好な吸水効果を有し、水分及び酸素が有機層に侵入することを防止することができ、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させることができる。
【0044】
ユーザーは、必要に応じて、S2121緻密膜層堆積工程及びS2122吸水膜層堆積工程を少なくとも1回実行して、少なくとも1つの吸水積層膜層を生成することができ、複数の吸水積層膜層は、より優れた吸水効果を有し、水分及び酸素が有機層に侵入することを防止することができ、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させる。
【0045】
S214有機層製造工程:前記吸水積層膜層の上面に有機層を製造する。前記吸水積層膜層の上面に、インクジェットプリンタ(IJP)、化学気相成長(CVD)又は蒸着等の方法を用いて、有機層を形成する。前記有機層の材質は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、アルミニウム系有機無機複合材料(アルコン(Alucone))、エポキシ樹脂、アクリル系、シリコン含有有機物であってもよい。したがって、前記有機層は、堆積工程で発生した異物を包み込み、前記第1無機層に発生する応力を緩和し、さらに表示パネルパッケージのフレキシブル性を向上させることができる。
【0046】
S215第2無機層製造工程:前記有機層の上面に第2無機層を製造する。化学気相成長(CVD)法、物理気相成長(PVD)法等により、前記有機層の上面に第2無機層を堆積する。前記第2無機層は、厚さが2μm未満であり、材質が窒化ケイ素(SiN)、酸窒化ケイ素(SiON)、一酸化ケイ素(SiO)等の無機化合物であってもよい。前記第2無機層は、外部から侵入する水分及び酸素を遮断するとともに、表示パネルの性能を向上させることができる。
【0047】
図7に示すように、他の実施形態において、S212吸水積層膜層製造工程は、次の工程S2221~S2222を含んでもよい。
【0048】
S2221吸水膜層堆積工程:前記第1無機層の上面に吸水膜層を堆積する。S2222緻密膜層堆積工程:前記吸水膜層の上面に緻密膜層を堆積する。S2221吸水膜層堆積工程及びS2222緻密膜層堆積工程が少なくとも1回実行されることで、吸水積層膜層に良好な吸水効果を持たせ、水分及び酸素が有機層に侵入することを防止することができ、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させることができる。
【0049】
図8に示すように、本実施形態に係る第1薄膜封止層10の水蒸気透過率(water vapor transmission rate,WVTR)を、従来技術の第2薄膜封止層20の水蒸気透過率と比較すると、本実施形態の第1薄膜封止層10の水蒸気透過率が著しく向上していることは明白であり、薄膜封止層は、優れた水分及び酸素遮断効果を有し、表示パネルの封止効果を向上させる。
【0050】
実施形態2
【0051】
図9に示すように、本実施形態は、実施形態1に係る表示パネルの技術的特徴の大部分を含み、実施形態2において、吸水積層膜層211が、第1無機層210と有機層212との間に設けられることなく、第2無機層210と有機層212との間に設けられていることを特徴とする表示パネルを提供する。
【0052】
図9に示すように、表示パネルにおける薄膜封止層2は、下から順に、第1無機層210、有機層212、吸水積層膜層211及び第2無機層213を含む。
【0053】
吸水積層膜層211のそれぞれは、緻密膜層2111及び吸水膜層2112を含む。緻密膜層2111を有機層212の上面に設け、吸水膜層2112を緻密膜層2111の上面に設けることで、吸水積層膜層211の表面に緻密性の高いメタアルミン酸塩を形成させ、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させる。
【0054】
他の実施形態において、吸水膜層2112をさらに有機層212の上面に設けてもよく、緻密膜層2111を吸水膜層2112の上面に設けてもよく、それは、本実施形態と同様の技術的効果を有する。
【0055】
本実施形態の改良実施形態において、第2無機層213と有機層212との間に複数の吸水積層膜層211が設けられ、複数の緻密膜層2111と複数の吸水膜層2112とが交互に配置される。
【0056】
同時に複数の吸水積層膜層を使用する技術的手段は、吸水積層膜層の表面に緻密性の高いメタアルミン酸塩を形成させることで、吸水積層膜層に良好な吸水効果を持たせ、1つの吸水積層膜層のみを使用する技術的手段と比較して、さらに薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させる。
【0057】
さらに、図4に示すように、本実施形態は、次の工程S1~S2を含む表示パネルの製造方法を提供する。S1ベース基板提供工程:ベース基板を提供する。S2薄膜封止層製造工程:前記ベース基板の上面に薄膜封止層を製造する。
【0058】
図10に示すように、S2薄膜封止層製造工程は、次の工程S221~S224を含む。
【0059】
S221第1無機層製造工程:前記ベース基板の上面に第1無機層を製造する。
【0060】
S222有機層製造工程:前記第1無機層の上面に有機層を堆積する。
【0061】
S223吸水積層膜層製造工程:前記有機層の上面に少なくとも1つの吸水積層膜層を堆積する。
【0062】
S224第2無機層製造工程:前記吸水積層膜層の上面に第2無機層を製造する。
【0063】
前記工程S221~S224は、実施形態1に記載の工程S211~S214と比べて、実施形態2に係る表示パネルの製造方法において、有機層製造工程の後に、吸水積層膜層製造工程を行うことを特徴とする。各々の工程の技術的効果は、実施形態1において対応する工程の技術的効果と実質的に同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0064】
本実施形態は、表示パネルに良好な水分及び酸素遮断性、柔軟な折り曲げ性能を持たせて、表示パネルの光透過率を向上させることができる表示パネル及びその製造方法を提供する。
【0065】
実施形態3
【0066】
図11に示すように、本実施形態は、実施形態1に係る表示パネルの技術的特徴の全てを含む表示パネルを提供するものであり、実施形態3において、前記吸水積層膜層が第1無機層210と有機層212との間に設けられるとともに、第2無機層210と有機層212との間にも設けられている。
【0067】
図11に示すように、吸水積層膜層211は、第1吸水積層膜層221及び第2吸水積層膜層231を含む。表示パネルにおける薄膜封止層2は、下から順に、第1無機層210、第1吸水積層膜層221、有機層212、第2吸水積層膜層231及び第2無機層213を含む。
【0068】
吸水積層膜層のそれぞれは、緻密膜層2111及び吸水膜層2112を含む。第1無機層210及び有機層212の上面に緻密膜層2111がそれぞれ設けられ、吸水膜層2112を緻密膜層2111の上面に設けることで、吸水積層膜層211の表面に緻密性の高いメタアルミン酸塩を形成させ、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させる。
【0069】
他の実施形態において、第1無機層210及び有機層212の上面に吸水膜層2112がそれぞれ設けられ、緻密膜層2111が吸水膜層2112の上面に設けられてもよく、それは、本実施形態と同様の技術的効果を有する。
【0070】
本実施形態の改良実施形態において、第1無機層210と有機層212との間、又は第2無機層213と有機層212との間に、複数の吸水積層膜層211が設けられており、複数の緻密膜層2111と複数の吸水膜層2112とが、交互に配置されている。
【0071】
同時に複数の吸水積層膜層を使用する技術的手段は、吸水積層膜層の表面に緻密性の高いメタアルミン酸塩を形成させることで、吸水積層膜層に良好な吸水効果を持たせ、1つの吸水積層膜層のみを使用する技術的手段と比較して、さらに薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させる。
【0072】
さらに、図4に示すように、本実施形態は、次の工程S1~S2を含む表示パネルの製造方法を提供する。S1ベース基板提供工程:ベース基板を提供する。S2薄膜封止層製造工程:前記ベース基板の上面に薄膜封止層を製造する。
【0073】
図12に示すように、S2薄膜封止層製造工程は、次の工程S231~S235を含む。
【0074】
S231第1無機層製造工程:ベース基板の上面に第1無機層を製造する。
【0075】
S232第1吸水積層膜層製造工程:前記第1無機層の上面に少なくとも1つの第1吸水積層膜層を堆積する。
【0076】
S233有機層製造工程:前記第1吸水積層膜層の上面に有機層を堆積する。
【0077】
S234第2吸水積層膜層製造工程:前記有機層の上面に吸水積層膜層を製造する。
【0078】
S235第2無機層製造工程:前記第2吸水積層膜層の上面に第2無機層を製造する。
【0079】
前記工程S231~S235は、実施形態1に記載の工程S211~214と比べて、実施形態3に係る表示パネルの製造方法において、有機層製造工程の前後に、吸水積層膜層製造工程を実行することを特徴とする。各々の工程の技術的効果は、実施形態1において対応する工程の技術的効果と実質的に同じであるので、ここでは説明を省略する。
【0080】
本実施形態に係る表示パネル及びその製造方法において、第1無機層と有機層との間、及び第2無機層と第2無機層との間に、吸水積層膜層を設ける技術的手段は、実施形態1又は実施形態2の技術的手段と比較して、2層以上の吸水積層膜層を設けて吸水効果がよりよくなり、水分及び酸素の有機層への侵入を防止し、薄膜封止層の水分及び酸素遮断性を向上させることができる。
【0081】
上記は、単に本発明の好ましい実施形態に過ぎず、当業者にとっては、本発明の趣旨から逸脱することがない限り、更なる改良及び変形を行うことができ、これらの改良及び変形も本発明の保護範囲と見なされるべきであることに留意されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12