(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-28
(45)【発行日】2022-04-05
(54)【発明の名称】補助ボトム側MDヤーンを有する製紙用多層フォーミング織物
(51)【国際特許分類】
D21F 1/10 20060101AFI20220329BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20220329BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20220329BHJP
【FI】
D21F1/10
D03D1/00 Z
D03D11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020543062
(86)(22)【出願日】2019-02-04
(86)【国際出願番号】 US2019016463
(87)【国際公開番号】W WO2019156917
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-11
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512227041
【氏名又は名称】ハイク・ライセンスコ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ケヴィン
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-092268(JP,A)
【文献】特開2006-057217(JP,A)
【文献】特開2015-017340(JP,A)
【文献】特表2012-507639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 1/00-13/12
D03D 1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の繰返しユニットを備える製紙用織物であって、前記繰返しユニットの各々は、
第1の直径を有する一組のトップ側マシン方向(MD)ヤーンと、
前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する一組のボトム側MDヤーンと、
前記第1の直径を有する一組の補助ボトム側MDヤーンと、
トップ側織物層を形成するように前記トップ側MDヤーンと織られた一組のトップ側マシン横断方向(CMD)ヤーンと、
ボトム側織物層を形成するように前記ボトム側MDヤーンおよび前記補助ボトム側MDヤーンと織られた一組のボトム側CMDヤーンと、
対で配置された一組の接結ヤーンであって、前記対の前記接結ヤーンの少なくとも1本が前記トップ側およびボトム側織物層と織られている、対で配置された一組の接結ヤーンと、を備える、製紙用織物。
【請求項2】
前記補助ボトム側MDヤーンの各々は、隣接するボトム側MDヤーンの前記ボトム側CMDヤーンに対する織込み順序と同一の前記ボトム側CMDヤーンに対する織込み順序に従っている、請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項3】
前記補助ボトム側MDヤーンの各々は、すぐ隣接するボトム側MDヤーンが下にナックルを形成するボトム側CMDヤーンの下にナックルを形成するように、前記ボトム側CMDヤーンと織られている、請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項4】
前記トップ側MDヤーン、前記トップ側CMDヤーン、および前記接結ヤーンは、平織面を形成している、請求項1に記載の製紙用織物
【請求項5】
前記接結ヤーンは、CMD接結ヤーンである、請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項6】
トップ側MDヤーンの数は、ボトム側MDヤーンの数および補助ボトム側MDヤーンの数の合計と等しい、請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項7】
等しい数のトップ側CMDヤーンおよび接結ヤーン対を備える、請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項8】
接結ヤーン対の数の2倍の数のトップ側CMDヤーンを備える、請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項9】
ボトム側CMDヤーン(b)に対するトップ側CMDヤーンおよび接結ヤーン対(a)の比率は、5:2である、請求項1に記載の製紙用織物。
【請求項10】
各接結ヤーン対の前記ヤーンの両方が、前記ボトム側MDヤーンと織られている、請求項1に記載の製紙用織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年2月12日に出願された米国仮特許出願第62/629,348号の優先権および利得を主張するものであり、その開示内容は、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする。
【0002】
本願は、一般的に、製紙に関し、更に詳細には、製紙に用いられる織物に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の長網式製紙プロセスでは、(「製紙原料(papert stock)」として知られる)セルロース繊維の水スラリーまたは懸濁液が、2つ以上のロール間を走行するワイヤおよび/または合成材料の織物から成るエンドレスベルトの上側走行部の上面に送給される。「フォーミング織物(forming fabric)」とも呼ばれるベルトは、その上側走行部の上面に製紙面をもたらす。製紙面は、製紙原料のセルロース繊維を水性媒体から分離することによって湿った紙ウエブを形成するためのフィルタとして機能する。水性媒体は、重量によって、または織物の上側走行部の下面(すなわち、「マシン側」)に準備された真空によって、フォーミング織物の(排水孔として知られる)メッシュ開口を通して排出される。
【0004】
フォーミング区域を出た後、紙ウエブは、製紙機のプレス区域に移送される。プレス区域において、紙ウエブは、一般的に「プレスフェルト」と呼ばれる、他の織物によって被覆された1対または複数対の加圧ローラのニップに通される。ローラの圧力によって、更なる水分がウエブから除去されるが、この水分除去は、プレスフェルトの「バット層(batt layer)」の存在によって促進される。次いで、紙は、更なる水分除去のために、乾燥区域に移送される。乾燥された後、紙は、二次加工および包装のための準備が整えられることになる。
【0005】
本明細書に用いられるマシン方向(MD)およびマシン横断方向(CMD)という用語は、それぞれ、製紙機上の製紙用織物の走行の方向と一致する方向、および織物面と平行であって走行の方向を横断する方向を指している。同様に、織物のヤーンの上下方向に関連する記述(例えば、上、下、トップ側、ボトム側、直下、等)は、織物の製紙面が織物のトップ側にあり、織物のマシン側面が織物のボトム側にあることを前提としている。
【0006】
典型的には、製紙用織物は、2つの基本的な製織技術の1つによってエンドレスベルトとして製造される。第1の技術によれば、平織プロセスによって平織りされた織物の両端が、多数の周知の接合方法のいずれかによって接合され、これによって、エンドレスベルトが形成される。周知の接合方法として、(一般的にスプライス加工として知られる)両端を一緒にほぐし、再び織る方法、またはピン継合せ可能なフラップまたは特別な折返しを各端に縫い付け、これらをピン継合せ可能なループに再び織る方法が挙げられる。現在、一部の織物に対して接合プロセスの少なくとも一部を自動化するために用いられる多数の自動接合機が市販されている。平織りされた製紙用織物では、経糸がマシン方向に延び、緯糸がマシン横断方向に延びる。
【0007】
第2の基本的な製織技術では、織物は、無端製織プロセスによって、連続ベルトの形態に直接製織される。無端製織プロセスでは、経糸がマシン横断方向に延び、緯糸がマシン方向に延びる。前述の製織方法は、いずれも当業界において周知であり、本明細書に用いられる「エンドレスベルト(endless belt)」という用語は、本明細書では、上記の方法のいずれかによって作製されたベルトを指している。
【0008】
製紙において、特に、湿ったウエブを最初に形成する製紙機のフォーミング区域の製紙工程では、効果的なシートおよび繊維の支持は、重要な検討事項である。加えて、フォーミング織物は、製紙機上を高速で走行する時に良好な安定性を示すべきであり、且つ製紙機のプレス区域に移送される時にウエブに残る水の量を低減させるために高透過性を有していると好ましい。テッシュペーパおよび上質紙(すなわち、上質印刷、炭素化、巻きタバコ、蓄電池、等に用いられる紙)の用途では、製紙面は、極めて微細に織られた構造または微細なワイヤメッシュ構造を備えている。
【0009】
典型的には、上質紙およびテッシュペーパの用途に用いられるような微細に織られた織物は、少なくとも何本かの比較的小径のマシン方向ヤーンまたはマシン横断方向ヤーンを含んでいる。しかし、残念ながら、このようなヤーンは、傷みやすく、織物の表面寿命を短縮させる。更に、小径ヤーンの使用は、織物の機械的安定性(特に、伸張抵抗、捻じれ抵抗、狭幅傾向、および剛性に関する機械的安定性)を悪化させ、織物の耐用寿命および性能の両方に悪影響を及ぼすことがある。
【0010】
繊細に織られた織物に関連するこれらの問題に対処するために、多層フォーミング織物が開発されてきている。多層フォーミング織物は、紙形成を容易にするために微細なメッシュヤーンから成る紙形成面および強度および耐久性をもたらすために粗大メッシュヤーンから成る機械接触面を備えている。例えば、微細な紙形成面およびより耐久性のあるマシン側面を有する織物を形成するために、2組のマシン横断方向ヤーンと織られる1組のマシン方向ヤーンを用いる織物が作製されてきている。これらの織物は、一般的に「2層(double layer)」織物と呼ばれる織物の分類の一部を成す。同様に、微細メッシュの紙側織物層および他の粗大メッシュのマシン側織物層を形成する2組のマシン方向ヤーンおよび2組のマシン横断方向ヤーンを備える織物が作製されてきている。一般的に「3層(triple layer)」織物と呼ばれる織物の分類の一部を成すこれらの織物では、従来より、2つの織物層は、典型的には、別の接結ヤーンによって一緒に接結されている。しかし、今日では、2つの織物層は、一組または複数組のボトム側およびトップ側のマシン横断方向ヤーンおよびマシン方向ヤーンの一部を用いて、更に多くの点において接結されている。2層織物および3層織物は、単層織物と比較して、追加的な組のヤーンを含むので、一般的に、比較し得る単層織物よりも大きいキャリパ(caliper)を有している(すなわち、厚くなっている)。例示的な2層織物は、Thompsonに付与された特許文献1に示されており、例示的な3層織物は、Osterbergに付与された特許文献2、Vohringerに付与された特許文献3、Wardに付与された特許文献4,5およびTroughtonに付与された特許文献6に示されている。
【0011】
特許文献5は、三層織物を開示している。この三層織物では、接結ヤーン対がマシン横断方向に延び、実質的に製紙面の「織込み」を完結させることによって製紙面の一部を形成し、その一方、ボトム層にも織り込まれている。特許文献5に開示されるこの織物は、同数のトップ側マシン方向ヤーンおよびボトム側マシン方向ヤーンを有している。このような織物は、(特に接結ヤーンが製紙面の織込みの一部とされることによって)優れた製紙面をもたらし、層内摩耗に対処することが分かっている。特許文献7は、MD接結ヤーンを用いる同様の概念を示している。
【0012】
フォーミング織物からの水の効率的な排出は、製紙の課題である。効率的な排水をもたらすための1つの解決策が、本発明の譲受人に譲渡されたBaumannに付与された特許文献8において提案されている。この特許文献の開示内容は、参照することによってここに含まれるものとする。特許文献8は、効率的な排水をもたらすために織物内の隙間によって形成される改変された通路の使用を記載している。また、特許文献8は、排水効率を改良するための計算によって求められる「排水因子」および「通路因子」の使用を提案している。この概念を発展させる更なる織物が提供されることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4,423,755号明細書
【文献】米国特許第4,501,303号明細書
【文献】米国特許第5,152,326号明細書
【文献】米国特許第5,437,315号明細書
【文献】米国特許第5,967,195号明細書
【文献】米国特許第6,745,797号明細書
【文献】米国特許第6,896,009号明細書
【文献】米国特許第8,251,103号明細書
【発明の概要】
【0014】
第1の態様によれば、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備える製紙用織物に関する。繰返しユニットの各々は、第1の直径を有する一組のトップ側MDヤーンと、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する一組のボトム側MDヤーンと、第1の直径を有する一組の補助ボトム側MDヤーンと、トップ側織物層を形成するようにトップ側MDヤーンと織られた一組のトップ側CMDヤーンと、ボトム側織物層を形成するようにボトム側MDヤーンおよび補助ボトム側MDヤーンと織られた一組のボトム側CMDヤーンと、対で配置された一組の接結ヤーンであって、対の接結ヤーンの少なくとも1本がトップ側およびボトム側織物層と織られている、対で配置された一組の接結ヤーンと、を備えている。
【0015】
第2の態様によれば、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備える製紙用織物に関する。繰返しユニットの各々は、一組のトップ側MDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組の補助ボトム側MDヤーンと、トップ側織物層を形成するようにトップ側MDヤーンと織られた一組のトップ側CMDヤーンと、ボトム側織物層を形成するようにボトム側MDヤーンおよび補助ボトム側MDヤーンと織られた一組のボトム側CMDヤーンと、対で配置された一組の接結ヤーンであって、対の接結ヤーンの少なくとも1本がトップ側およびボトム側織物層と織られている、対で配置された一組の接結ヤーンと、を備えている。補助ボトム側MDヤーンの各々は、隣接するボトム側MDヤーンのボトム側CMDヤーンに対する織込み順序と同一のボトム側CMDヤーンに対する織込み順序に従っている。
【0016】
第3の態様によれば、本発明の実施形態は、一連の繰返しユニットを備える製紙用織物に関する。繰返しユニットの各々は、一組のトップ側MDヤーンと、一組のボトム側MDヤーンと、一組の補助ボトム側MDヤーンと、トップ側織物層を形成するようにトップ側MDヤーンと織られた一組のトップ側CMDヤーンと、ボトム側織物層を形成するようにボトム側MDヤーンおよび補助ボトム側MDヤーンと織られた一組のボトム側CMDヤーンと、対で配置された一組の接結ヤーンであって、対の接結ヤーンの少なくとも1本がトップ側およびボトム側織物層と織られている、対で配置された一組の接結ヤーンと、を備えている。補助ボトム側MDヤーンの各々は、隣接するボトム側MDヤーンが下にナックルを形成するボトム側CMDヤーンの下にナックルを形成するように、ボトム側CMDヤーンと織られている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による製紙用フォーミング織物の繰返しユニットの上面図である。
【
図3】
図1の織物の典型的なトップ側CMDヤーンの断面図である。
【
図4】
図1の織物の典型的な対の接結ヤーンの断面図である。
【
図5】
図1の織物の典型的なボトム側MDヤーンの断面図である。
【
図6】本発明の実施形態による製紙用フォーミング織物の繰返しユニットの上面図である。
【
図8】
図6の織物の2本の典型的なトップ側CMDヤーンの断面図である。
【
図9】
図6の織物の典型的な対の接結ヤーンの断面図である。
【
図10】
図6の織物の典型的なボトム側MDヤーンおよび補助ボトム側MDヤーンの断面図である。
【
図11】本発明の実施形態による製紙用フォーミング織物の繰返しユニットの上面図である。
【
図13】
図11の織物の典型的なトップ側CMDヤーンの断面図である。
【
図14】
図11の織物の典型的な対の接結ヤーンの断面図である。
【
図15】
図11の織物の典型的なボトム側MDヤーンおよび補助ボトム側MDヤーンの断面図である。
【
図16】3つの異なる織物において流れ抵抗を織物深さの関数としてプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図示される本発明の実施形態に基づき、本発明を更に十分に説明する。しかし、本発明は、種々の形態で実施されてもよく、本明細書に記載される実施形態に制限されると解釈されるべきはない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が十分且つ完全であって、本発明の範囲を当業者に十分に知らしめるために、提示されている。図面において、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指すものとする。いくつかの構成部品については、明瞭にするために、それらの厚みおよび寸法が誇張されることがある。
【0019】
特段の規定がない限り、本明細書に用いられる(技術用語および科学用語を含む)全ての用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。一般的に用いられる辞書に定義されるような用語は、関連技術の文脈における意味と一致している意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書に明示的に規定されない限り、理想化された意味または過度に形式的な意味に解釈されてはならないことを更に理解されたい。
【0020】
本明細書に用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図するものではない。本明細書に用いられる単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを示さない限り、複数形も含むことが意図されている。「~を備える(comprise)」および/または「~を備えている(comprising)」という用語は、本明細書に用いられる時、記載される特徴、完全体、工程、操作、要素、および/または構成部品の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、工程、操作、要素、構成部品、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではないことを更に理解されたい。本明細書に用いられる「および/または」という用語は、1つまたは複数の関連して列挙されている項目のいずれかの組合せおよびあらゆる組合せを含んでいる。
【0021】
加えて、「~の下に」、「~の下方に」、「~の下側の」、「~の上方に」、「~の上側の」、等の空間に関連する用語は、本明細書で、図面に示される1つの要素または特徴部と1つまたは複数の他の要素または特徴部との関係を示す記述を容易にするために用いられる。空間に関連する用語は、図面に描かれる方位に加えて、使用時または操作時における装置の別の方位も含むことが意図されていることを理解されたい。装置は、図示される以外の方向に配向されることもあり、(例えば、90°または他の方位に回転することもあり)、この場合、本明細書に用いられる空間に関連する用語も、これに応じて、解釈されるとよい。
【0022】
周知の機能または構成は、簡素化および/または明瞭化のために、詳細に説明されないことがある。
【0023】
以下、図面を参照すると、総称的に100で表される製紙用フォーミング織物の繰返しユニットが、
図1-5に示されている。
図1は、織物100の紙側または「トップ」側を示し、
図2は、織物100のマシン側(すなわち、本明細書において織物100の「ボトム」側とも呼ばれる、製紙機に面する側)を示している。
【0024】
図1は、織物100のトップ層102を示している。トップ層102は、12本のトップ側MDヤーン1-12、8本のトップ側CMDヤーン21-28、および8対の接結ヤーン31a,31b-38a,38bを備えている。各接結対は、互いに隣接するトップ側CMDヤーン間に位置している。トップ側MDヤーン1-12、トップ側CMDヤーン21-28、および、接結ヤーン対31a,31b-38a,38bは、互いに織り合され、トップ層102に平織面を形成している。
【0025】
図1,3から分かるように、代表的なトップ側CMDヤーン、例えば、トップ側CMDヤーン21は、トップ側MDヤーン1-12と織られる時、「上1/下1」の順序に従っている。更に具体的には、トップ側CMDヤーン21は、トップ側MDヤーン1,3,5,7,9,11の上およびトップ側MDヤーン2,4,6,8,10, 12の下を通過している。他のトップ側CMDヤーン22-28も、それぞれ、同じ順序に従っている。
【0026】
図1,4から分かるように、対の接結ヤーン31a,31b-38a,38bは、以下のパターンに従って、対応するトップ側MDヤーンおよびボトム側MDヤーンと織られている。繰返しユニットの接結ヤーンの各々は、2つの部分、すなわち、トップ側MDヤーンと織られる繊維支持部分と、トップ側MDヤーンの下を通って、図示の実施形態では、ボトム側MDヤーンと織られる接結部分とに分かれている。繊維支持部分および接結部分は、「移行(transitional)」トップ側MDヤーンにおいて分かれている。移行トップ側MDヤーンの下において、接結ヤーン対の一方の接結ヤーンは、該接結ヤーン対の他方の接結ヤーンと交差する。各対の接結ヤーンは、該対の一方のヤーンの繊維支持部分が該対の他方のヤーンの接結部分の上に位置するように互いに織り合されている。各対の一方の接結ヤーンの繊維支持部分は、5本のトップ側MDヤーンに交互に織られている(すなわち、3本のトップ側MDヤーンの上および2本のトップ側MDヤーンの下を交互に通過している)。一方、この対の他方の接結ヤーンの繊維支持部分は、繰返しユニットの他の3本のトップ側MDヤーンの上およびこれらの3本のトップ側MDヤーン間に位置する他の2本のトップ側MDヤーンの下を通過している。これらの接結ヤーンは、いずれも、移行トップ側MDヤーンの下を通過している。従って、各対の接結ヤーンは、トップ側CMDヤーンの「上1/下1」のパターンと同様の「上1/下1」のパターンに従って、6本のトップ側MDヤーンの上および6本のトップ側MDヤーンの下を通過している。
【0027】
接結ヤーン対32a,32bによって例示されている
図4において、各接結ヤーンは、5本のトップ側MDヤーンと織られ(すなわち、3本のトップ側MDヤーンの上および2本のトップ側MDヤーンの下を交互に通過し)、1本のボトム側MDヤーンの下を通過している。例えば、接結ヤーン32aは、トップ側MDヤーン2,4,6の上およびトップ側MDヤーン3,5の下を通過し、且つ(以下に述べるように)、ボトム側MDヤーン46の下を通過している。一方、接結ヤーン32bは、トップ側MDヤーン8,10,12の上およびボトム側MDヤーン9,11の下を通過している。従って、接結ヤーン32a,32b(および他の各接結ヤーン対)は、一緒になって、接結ヤーン32a,32bに続いて「上1/下1」の順序で織り込まれる1本のトップ側CMDヤーンと同等の機能を果たすことになる。その結果、トップ側MDヤーン1-12、トップ側CMDヤーン21-28、およびトップ側MDヤーンと織られる接結ヤーン31a-31b-38a,38bの部分は、一緒になって、トップ層102に平織面を形成する。このようなトップ面の構成は、周知であり(例えば、Wardに付与された米国特許第5,967,195号に例示されており)、ここでは詳細に説明しないことにする。なお、この文献の開示内容は、ここに含まれるものとする。
【0028】
図2を参照すると、織物100のマシン側は、ボトム層101を形成するために、8本のボトム側MDヤーン41-48と、4本の補助ボトム側MDヤーン42a,44a,46a,48aと、8本のボトム側CMDヤーン51-58とを備えている。説明のための例として、(トップ側MDヤーン1-12と同様の太さを有し、従って、ボトム側MDヤーン41-48よりも細い)補助ボトム側MDヤーン42a,44a,46a,48aは、それぞれ、ボトム側MDヤーン42,44,46,48と対にされ、これらの対にされたボトム側MDヤーンの織パターンと同一の織パターンで織り込まれている。ボトム側MDヤーン41-48および補助ボトム側MDヤーン42a,44a,46a,48aは、「上3/下1/上3/下1」の順序に従って、ボトム側CMDヤーン51-58と織られている。(なお、参照のために、本明細書における「上」および「下」という用語は、
図1および
図3-5に示されるように、織物10の紙側を「上」とし、マシン側を「下」とした場合に基づいているので、
図2の底面図において他のヤーンの「上」を通過しているように見えるヤーンは、実際には他のヤーンの「下」を通過していることを理解されたい)。例えば、ボトム側MDヤーン44は、ボトム側CMDヤーン51-53の上、ボトム側CMDヤーン54の下、ボトム側CMDヤーン55-57の上、およびボトム側CMDヤーン58の下を通過している。補助ボトム側MDヤーン42a,44a,46a,48aは、それぞれ、ボトム側MDヤーン42,44,46,48に同じように織られている。
【0029】
図2,5を参照すると、各ボトム側MDヤーンは、ボトム側MDヤーンによって形成された「ナックル(knuckle)」によって4枚破れ斜文織パターンをボトム面にもたらすように、そのすぐ隣接するボトム側MDヤーンから位置ずれしている。例えば、ボトム側MDヤーン41は、ボトム側CMDヤーン52,56の下を通過し、ボトム側MDヤーン42は、ボトム側CMDヤーン53,57の下を通過し、ボトム側MDヤーン43は、ボトム側CMDヤーン51,55の下を通過し、ボトム側MDヤーン44は、ボトム側CMDヤーン54,58の下を通過している。残っているボトム側MDヤーン45-48も、同様の位置ずれパターンに従っている(
図2参照)。
【0030】
また、ボトム層101は、接結ヤーン31a,31b-38a,38bによってボトム側MDヤーン41-48および補助ボトム側MDヤーン42a,44a,46a,48aの下に形成されたナックルを備えている。これらのナックルは、4枚破れ斜文織パターンを形成している。例えば、接結ヤーン31a,31bは、ボトム側MDヤーン41,45の下にナックルを形成し、接結ヤーン32a,32bは、ボトム側MDヤーン42,46の下(同様に、補助ボトム側MDヤーン42a,46aの下)にナックルを形成し、接結ヤーン33a,33bは、ボトム側MDヤーン44,48の下(同様に、補助ボトム側MDヤーン44a,48aの下)にナックルを形成し、接結ヤーン34a,34bは、ボトム側MDヤーン43,47の下にナックルを形成している。同様のパターンが、接結ヤーン35a,35b-38a,38bに対して繰り返されている(
図2,4参照)。
【0031】
当業者であれば、接結ヤーン対31a,31b-38a,38bの各々の両方の接結ヤーンがトップ側MDヤーンと織られると共にボトム側MDヤーンの下に織られているが、いくつか実施形態では、対の一方の接結ヤーンのみがボトム側MDヤーンの下に織られ、該対の他方の接結ヤーンは、織られる代わりにトップ側およびボトム側MDヤーン間に通されてもよいことを理解するだろう。この所謂「見掛け(phantom)」の接結ヤーンは、例えば、Wardに付与された米国特許第7,931,051号に記載されている。この文献の開示内容は、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする。
【0032】
図6-10を参照すると、総称的に200で表される本発明の実施形態によるフォーミング織物の繰返しユニットが示されている。繰返しユニット200は、12本のトップ側MDヤーン201-212と、8本のトップ側CMDヤーン221-228と、4対の接結ヤーン231a,231b-234a,234bと、8本のボトム側MDヤーン241-248と、4本の補助ボトム側MDヤーン241a,243a,245a,247aと、8本のボトム側CMDヤーン251-258とを備えている。以下、これらのヤーンの織込みについて説明する。
【0033】
図6を最初に参照すると、織物200のトップ面が示されている。トップ側CMDヤーン221-228および接結ヤーン231a,231b-234a,234bは、2本のトップ側CMDヤーンに1対の接結ヤーンが続く交互パターンに従って配置されている。
図6に例示されるように、トップ側CMDヤーン221,222が接結対231a,231bに続き、次いで、接結ヤーン対232a,232bがトップ側CMDヤーン222に続いている。「接結ヤーン対/2本のCMDヤーン」のこのパターンは、繰返しユニットの全体に及んでいる。
【0034】
トップ側CMDヤーン221-228の各々は、「上1/下1」の順序でトップ側MDヤーンと織られている。2本のトップ側CMDヤーンは、1対の接結ヤーン間に位置しているので、トップ側MDヤーンの上を交互に通過する。このパターンは、
図8に示されている。図示されるように、トップ側CMDヤーン222は、トップ側MDヤーン202,204,206,208,210,212の上を通過し、トップ側CMDヤーン221は、トップ側MDヤーン201,203,205,207,209,211の上を通過している。
【0035】
各接結ヤーン231a,231b-234a,234bの繊維支持部分は、隣接するトップ側CMDヤーンが下を通過するトップ側MDヤーンの上および隣接するトップ側CMDが上を通過するトップ側MDヤーンの下を通過する。例えば、
図9に示されるように、接結ヤーン232aの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン201,203,205の上およびトップ側MDヤーン202,204の下を通過し、接結ヤーン232bの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン207,209,211の上およびトップ側MDヤーン208,210の下を通過している。接結ヤーン232a,232bは、いずれも移行トップ側MDヤーン206,212の下を通過している。残っている接結ヤーン対は、同じように織られるが、隣接する接結ヤーン対から3本のトップ側MDヤーンの分だけ位置ずれする。このようにして、接結ヤーン231a,231b-234a,234bおよびトップ側CMDヤーン221-228は、トップ側MDヤーン201-212と織られ、平織パターンを形成することになる(
図6参照)。
【0036】
図7,10を参照すると、織物のボトム面が示されている。ボトム側MDヤーン241-248は、「上7/下1」のパターンに従ってボトム側CMDヤーン251-258と織られている(
図7は、織物200の底面図であり、
図6の図と逆であり、ボトムMDヤーンが4本のボトム側CMDヤーンの「上」を通過するという記述は、
図9の「上」および「下」の方向ではなく、むしろ
図6および
図8-10の「上」および「下」の方向を基準とすることに留意されたい)。例えば、ボトム側MDヤーン241は、ボトム側CMDヤーン251,252の上、ボトム側CMDヤーン253の下、およびボトム側CMDヤーン254-258の上を通過している(
図10参照)。残っているボトム側MDヤーンは、同様のパターンに従い、各ボトム側MDヤーンは、その隣接するボトム側MDヤーンから位置ずれし、2破れ斜文織パターンを形成することになる。
【0037】
補助ボトム側MDヤーン241a,243a,245a,247aは、「上5/下1/上1/下1」の順序または「上2/下1/上4/下1」の順序のいずれかに従って、ボトム側CMDヤーン251-258と織られている。補助ボトム側MDヤーンの各「下1」のナックルは、該補助ボトム側MDヤーンを挟むボトム側MDヤーンの「下1」のナックルと真っすぐに並んでいる。例えば、補助ボトム側MDヤーン241aは、(該補助ボトム側MDヤーン241aのいずれかの側に位置する)ボトム側MDヤーン241,242が下にナックルを形成するボトム側CMDヤーン251,253の下にナックルを形成している(
図10参照)。残っている補助ボトム側MDヤーンも同様に、それらの隣接するボトム側MDヤーンによって形成されたナックルと真っすぐに並ぶナックルを形成することになる。
【0038】
また、接結ヤーン231a,231b-234a,243bの各々の接結部分は、2本のボトム側MDヤーンの下に織られ、この場合、対の接結ヤーンは、2本のボトム側MDヤーンの分だけ互いに分離したボトム側MDヤーンの下に織られる。例えば、
図9に示されるように、接結ヤーン232aは、ボトム側MDヤーン246,247の下を通過し、接結ヤーン232bは、ボトム側MDヤーン242,243の下を通過している。互いに隣接する対の接結ヤーンは、2本のボトム側MDヤーンの分だけ互いにオフセットされている。
【0039】
図11-15を参照すると、総称的に300で表される本発明の実施形態によるフォーミング織物の繰返しユニットが示されている、繰返しユニット300は、12本のトップ側MDヤーン301-312と、6本のトップ側CMDヤーン321-326と、4対の接結ヤーン331a,331b-334a,334bと、8本のボトム側MDヤーン341-348と、4本の補助ボトム側MDヤーン342a,344a,346a,348aと、4本のボトム側CMDヤーン351-354と、を備えている。以下、これらのヤーンの織込みについて説明する。
【0040】
図11を参照すると、織物300のトップ面が示されている。トップ側CMDヤーン321-326および接結ヤーン331a,331b-334a,334bは、1本のトップ側CMDヤーンに1対の接結ヤーンが続き、次いで、2本のトップ側CMDヤーンに他の対の接結ヤーンが続くパターンに従って配置されている。
図11に例示されるように、トップ側CMDヤーン321に接結対331a,331bが続き、次いで、2本のトップ側CMDヤーン322,323に接結ヤーン対332a,332bが続いている。「1本のトップ側CMDヤーン/接結ヤーン対/2本のトップ側CMDヤーン/接結ヤーン対」のこのパターンは、繰返しユニットの全体に及んでいる。
【0041】
トップ側CMDヤーン321-326の各々は、「上1/下1」の順序に従ってトップ側MDヤーンと織られている。このパターンは、
図13に示されている。図示のように、トップ側CMDヤーン321は、トップ側MDヤーン301,303,305,307,309,311の上およびトップ側MDヤーン302,304,306,308,310,312の下を通過している。
【0042】
各接結ヤーン331a,331b-334a,334bの繊維支持部分は、隣接するトップ側CMDヤーンが下を通過するトップ側MDヤーンの上を通過し、隣接するトップ側CMDヤーンが上を通過するトップ側MDヤーンの下を通過している。例えば、
図14に示されるように、接結ヤーン331aの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン302,310,312の上およびトップ側MDヤーン301,311の上を通過している。一方、接結ヤーン331bの繊維支持部分は、トップ側MDヤーン304,306、308の上およびトップ側MDヤーン305,307の下を通過している。接結ヤーン331a,331bは、いずれも移行トップ側MDヤーン303,309の下を通過している。残っている接結ヤーン対も同様に織られるが、これらの接結対は、隣接する接結対から位置ずれし、2破れ斜文織パターンを形成する。このようにして、接結ヤーン331a,331b-334a,334bおよびトップ側CMDヤーン321-326は、トップ側MDヤーン301-312と織られ、平織パターンを形成することになる(
図11参照)。
【0043】
図12,15を参照すると、織物のボトム面が示されている。ボトム側MDヤーン341-348は、「上3/下1のパターン」に従って、ボトム側CMDヤーン351-354と織られている(
図12は、織物300の底面図であり、
図11の図と逆であり、ボトム側MDヤーンが4本のボトム側CMDヤーンの「上」を通過するという記述は、
図12の「上」および「下」の方向ではなく、むしろ
図11および
図13-15の「上」および「下」の方向を基準とすることに留意されたい)。例えば、ボトム側MDヤーン342は、ボトム側CMDヤーン351-353の上およびボトム側CMDヤーン354の下を通過している(
図15参照)。残っているボトム側MDヤーンも同様のパターンに従い、各ボトム側MDヤーンは、その隣接するボトム側MDヤーンから位置ずれし、2破れ斜文綾パターンを形成することになる。
【0044】
補助ボトム側MDヤーン342a,344a,346a,348aは、「上3/下1」の順序に従ってボトム側CMDヤーン351-354と織られている。補助ボトム側MDヤーンの各「下1」のナックルは、対になる隣接するボトム側MSヤーンの「下1」のナックルと真っすぐに並んでいる。例えば、補助ボトム側MDヤーン342aは、対になるボトム側CMDヤーン342が下にナックルを形成するボトム側CMDヤーン352の下にナックルを形成している(
図15参照)。残っている補助ボトム側MDヤーンも、同様にそれらの隣接するボトム側MDヤーンによって形成されるナックルと真っすぐに並ぶナックルを形成することになる。
【0045】
また、接結ヤーン331a,331b-334a,334bの各々の接結部分は、1本のボトム側MDヤーンの下に織られ、この場合、対の接結ヤーンは、3本のボトム側MDヤーンの分だけ互いに分離したボトム側MDヤーンの下に織られる。例えば、
図14に示されるように、接結ヤーン331aは、ボトム側MDヤーン348(および補助ボトム側MDヤーン348a)の下を通過し、接結ヤーン331bは、ボトム側MDヤーン344(および補助ボトム側MDヤーン344a)の「下」を通過している。隣接する接結ヤーン対は、互いに位置ずれし、2破れ斜文綾パターンを形成している。
【0046】
当業者であれば、6本のトップ側CMDヤーン、4対のCMD接結ヤーン、および4本ののボトム側CMDヤーンの合計は、ボトム側CMDヤーン(すなわち、ボトム側CMDヤーンの数)に対するトップ側CMDヤーン(すなわち、トップ側CMDヤーンの数+接結対の数)の有効な比率である5:2をもたらすことを理解するであろう。例えば、Wardに付与された米国特許第8,196,613号において検討されているこの比率は、浸透性、繊維支持、安定性、および摩耗量を含む優れた特性バランスを有する織物を提供することを可能にする。特に、CMD繊維支持は、2:1の比率を有する織物によっても改良されるが、その理由は、単位長さ当たりのトップ側CMDヤーンの数が多いからである。いくつかの実施形態では、5:3の比率が用いられてもよい。
【0047】
当業者であれば、種々の太さのヤーンが本発明の織物実施形態に用いられてもよいことを理解するだろう。例えば、トップ側MDヤーン、トップ側CMDヤーン、補助ボトム側MDヤーン、および接結ヤーンは、約0.10mmから0.20mmの間の直径を有しているとよく、ボトム側MDヤーンは、約0.18mmから0.40mmの間の直径を有しているとよく、ボトム側CMDヤーンは、0.20mmから0.50mmの間の直径を有しているとよい。本発明の実施形態による織物のメッシュが変更されてもよい。例えば、トップ面のメッシュの縦横比(epcm×ppcm)は、約20×30から30×50に変更されてもよく、全メッシュは、60×45から90×75に変更されてもよい。更に具体的には、織物100,200に用いられるヤーンは、表1に記載されるように選択されるとよい。
【0048】
【0049】
図11-15の繊維300の特定の実施形態におけるパラメータは、表2に記載されている。
【0050】
【0051】
織物100,200,300の織パターンは、前述のBaumannの特許に記載される種類の改変された排水通路をもたらすことができる。しかも、これは、ボトム側MDヤーンの本数が、トップ側MDヤーンの太さを有するヤーン(すなわち、補助ボトム側BMヤーン)によって、主ボトム側MDヤーンの本数よりも多くなっている織物によって、達成される。このように構成することによって、(紙側CMDヤーンの本数を維持するかまたは増大させながら)マシン側MDヤーンの本数に対する紙側MDヤーンの本数を相対的に減少させ、これによって、織物の排水を改良することができるBaumannの特許に記載される排水通路と同程度の排水通路が得られるまで、紙側開口領域を増大させ、マシン側開口領域を低減させることができる。一例を挙げると、
図16は、織物の厚みに対する流れ圧力を示すグラフである。「織物3」の符号が付された線は、
図11-15の織物を表している。この織物3は、同様の先行技術による織物と比べて織物の紙側およびマシン側のいずれにおいても排水圧が減少していることを示している。また、流れ速度は、織物の紙側において減少している。
【0052】
また、紙側CMDヤーンの本数および/または直径を減少させることなく紙側開口面積を増大させることによって、表面摩耗および内部摩耗を維持または改良することができる。これによって、特に長浮きボトム織の織物に対して、該織物の安定性およびシーム強度が改良される。また、これによって、マシン側MDヤーンの本数に対する紙側MDヤーンの本数の比率が1よりも大きい場合、これらのMDヤーンの設計柔軟性を著しく増大させることができる。
【0053】
本発明の織物に利用されるヤーンの形態は、最終的な製紙用織物の所望の特性に応じて変更可能である。例えば、ヤーンは、モノフィラメント糸、ここに記載される扁平モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸、マルチフィラメント撚糸またはモノフィラメント撚糸、スパン糸、またはそれらの任意の組合せとすることができる。また、本発明の織物に用いられるヤーンの材料は、製紙用織物に一般的に用いられるものであればよい。例えば、ヤーンは、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン、ポリプロピレン、アラミド、等から形成されるとよい。熟練の職人であれば、最終的な織物の特定の用途に応じてヤーン材料を選択することになるだろう、特に、ポリエステルまたはポリアミドから形成された丸形モノフィラメント糸が適しており、前述したように、ボトム側MDヤーンとしてのモノフィラメント糸の使用は、特に適している。
【0054】
各実施形態では平織のトップ面を備えているが、他の実施形態では、綾織、サテン織、等を含む種々の織パターンを有するトップ面を備えていてもよい。加えて、織物のボトム面は、サテン織、綾織、等を含む他の織パターンを有していてもよい。また、異なる数および異なる比率のトップ側およびボトム側MDヤーンおよびトップ側およびボトム側CMDヤーンを有する更なる織パターンも、本明細書において検討した概念から有益である場合もある。更に、いくつかの実施形態では、接結ヤーンは、CMD接結ヤーンでなく、MD接結ヤーンであってもよい。
【0055】
本発明の他の態様によれば、製紙方法が提供される。これらの方法によれば、本明細書に記載される例示的な製紙用フォーミング織物の1つが準備され、次いで、紙原料をフォーミング織物に供給し、紙原料から水分を除去することによって、紙が作製されることになる。紙原料がフォーミング織物に供給される方法および水分が紙原料から除去される方法の詳細は、当業者によってよく理解されているので、本明細書ではこれらの態様に関して、これ以上説明しないことにする。
【0056】
以上述べた実施形態は、本発明の例示にすぎず、本発明を制限すると解釈されるべきではない。本発明の例示的な実施形態について説明してきたが、当業者であれば、本発明の新規の示唆および利点から実質的に逸脱することなく、これらの例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するだろう。従って、このような修正の全ては、請求項に記載される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明は、以下の請求項によって規定され、請求項の等価物は、請求項に含まれるべきである。